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改自衛隊で奏でた交響曲を書いていると、皆さまのコメントにいろいろ気づかされることも多くあります。
この前は、FFM進水とダメコンの話でいろいろなコメントをいただきました。
省人化はダメコンを切り捨てることと同義語か?という問題など結構興味が出てくる分野です。
戦闘と同レベルで重要な、ダメコンの本質についてご紹介いたします。
(前回記事):『 【中級課程】図上演習のため東京へ移動! 』
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(1)ダメージコントロールトは何か?
海上自衛隊や世界の海軍において、戦闘と共に重要視されているのがダメージコントロール(通称:ダメコン)です。
図1 スターク
引用wiki
ダメコンの世界は、一度はまると面白いですよ〜!
1.1 防火防水だけじゃない!
ダメコンと言うと、防火や防水を行う映像が多く使われます。
図2 防水
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/ccf1/1ed/ikazuchi/topic/20090627/index.files/image008.jpg
ダメコンのわかりやすい事例として、浸水を防ぐ防水作業などがあります。
そのほか、船にとって一番怖い火災に対処する消火作業を行うのもダメコンの範囲です。
図3 防火
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/oominato/gallery/setogiri/img/3005/5-45.jpg
火災において果敢に消火作業を行う応急班の勇気は、日ごろの訓練の成果です。
ただ、ダメコンは単に防火や防水を行うだけの仕事と思われてしまう一面があるでしょう。
艦艇の省力化省人化において、ダメコン要員(応急王作員)を削減して自動化すればよいというものではありません。
1.2 応急工作の本質!
ダメコンの本質としては、
?@艦艇の戦闘損傷を局限して、戦闘を継続させること。
?A修理を行い基地に帰投する能力を維持すること。
この2点に尽きるでしょう。
どんなに乗員の数が削減されても、この2点が軍艦のダメコンの本質です。
応急工作では、溶接作業や潜水作業で修理も行います。
図4 溶接作業
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/D6WWRdHUIAAlhQD.jpg
機関科に所属する応急工作員の中には、潜水員の訓練を受けさらに水中溶接という難しい技術を習得した要員もいます。
図5 水中溶接
引用wiki
船を動かし続けるために、あらゆる手段を尽くすのが応急工作の本質です。
1.3 事前準備がダメコン作業の9割を占める!
ダメコンについては、事前準備がダメコン作業の9割を占めるとされています。
図6 角材
引用wiki
日ごろから、応急資材消火機器の事前蓄積・水密気密処理の徹底・教育訓練の実施が重要であるとされています。
実際に被害が発生したときの処置作業・修理作業は、応急工作作業の1割であるとまで、言い切っています。
日常から準備しておけば、いざというとき対処できるのです。
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(2)応急工作員だけでダメコンをやるわけじゃない!
ダメコンは、応急工作員だけで行っており何人も応急工作員がいると思われるかもしれません。
実際は、応急工作員が中核となり運用員・電機員など各所の人間が集まり応急班が作られます。
2.1 200名の護衛艦で40〜50人が標準!
1艦での応急班及び応急指揮所については、その船の特性に合わせて人員が増減します。
図7 応急指揮
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/mocs/mocs/news/education/sub19/img/01.jpg
はつゆき型護衛艦では、戦闘時にダメコンに従事するのは40〜50名程度になります。
前中後部応急班に応急指揮所・艦上救難班などが合わさった状況です。
ヘリを多く搭載するDDHだと、応急班や艦上救難班の人数が多くなるでしょう。
この人数が多いか少ないかは、一概に言えませんがあらゆる対応ができるようにするのがダメコンです。
さらに当該被害箇所で負傷がいたら救助して、応急手当ができる安全な箇所まで連れ出すのもダメコンの仕事です。
「機器の自動化で人数を削減できるじゃないか!」という反論も出てきそうですね。
2.2 複合化した被害対処ができるのは人力しかない
ある局面を想定してみましょう。
『応急指揮指揮官として、あなたは自動化が進んだ応急指揮所でダメコン指揮をしている』
『戦闘中において、ミサイル破片が被弾して浸水・火災の警告灯が点灯した』
『監視カメラで確認すると、浸水と共に機器から電気火災(C火災)が発生』
『火災を起こした機器の近くにまだ生きている負傷者が倒れている』
『数人がまだいたはずだが状況が確認できない』
『手元では自動海水消火機器ボタンと二酸化炭素消火ボタンがあり操作ができる』
『すぐ近くには応急班が待機しており被害箇所への進入可能』
『あなたがこの場合行うべき行動は何か?』
選択肢としては、3択となるでしょう。
?@区画閉鎖を確認して、自動消火ボタンを押す。
?A区画の電源を遮断して、機器火災を局限する。
?B応急班の進入・状況偵察及び防水防火処置を行う。
正解は?Bになります。
浸水と火災が発生しているのであれば、まずは浸水対処を優先すべきでしょう。
火災についても、電気火災であるものA火災(一般火災)の発生も起きているかもしれません。
負傷者が生きているのに、二酸化炭素消火器を作動させるなんてもってのほかですが自動化で人員がいない場合は、消火を優先してボタンを押すべきでしょう。
しかし浸水に対処できなくなり、やがて区画水没処置をとらざる得なくなります。
自動化が進んでも、複合化した被害対処にはやはり人力が何よりも勝ります。
特に防水作業は、非常に労力と酸素を使いますので、空気確保が必要になります。
図8 防水作業
引用wiki
安易に何も事前準備を行わず、ダメコン要員を削減すると防水作業もままならなくなります。
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(3)少人数化=ダメコン放棄じゃない!
艦艇の少人数自動化については、ダメコン放棄と考える人が結構いるようです。
その発想は、応急工作の本質を知らず防火防水の場面しか知らない人の発想といえます。
3.1 事前準備を万全にすることで、少人数化できる!
応急工作の本質である「事前準備が9割!」を徹底することにより、艦艇の少人数化自動化は可能と考えます。
今後人口減に対応するため、少人数化は避けられません。
もがみ型護衛艦(FFM)についても、相応の応急班編成が行われて事前準備作業を陸上で準備する形になるでしょう。
決して少人数化=ダメコン放棄ではありませ〜ん!
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>結果として非常に扱いにくいフネ及び部隊になっているのではないか
FFMについては確かに、全くの新型となったためどうなるかが焦点です。現職の方が「マーク持ちしか乗れない船になるかもしれない」との懸念が正鵠を得ていると思います。
陸上施設での訓練充実など、今までと違ったアプローチを行うべきでしょう。(掃海隊群の訓練用艦橋シミュレーターなど)
>クルー制の試験導入
こちらについては2017年から音響測定艦においてクルー制度が導入されて効果を上げています。
ノウハウについてはある程度積みあがっていますので、IPD23におけるFFM「くまの」の派遣の中で、クルー総入れ替えなどの実働検証が予定されているかもしれません。
(シンガポールで行われるIMDEX asia2023はクルー交代制の絶好の検証機会となるでしょう)
2000年代の構想研究(33DD→30DEXと呼称されていた時代)から、少子化による省人化を前提で各種研究を進めてきました。
研究の結晶として、FFMが登場してきたといえます。
何事も段取り八分と申しますし、訓練や教育も含めた事前の準備が重要なのはごもっともですが、それに関して最近ちょっと疑問と懸念がございます。
一つには、研究や準備や計画が大切なのはもちろんとして、その計画を予定通り滞りなく完遂するのももちろん大切ですが、自衛隊の場合、完遂すること自体が目的になっていやしないかということ。つまり自己目的化してはいないかという懸念です。
具体的に言うと新型FFMですね。確かに人手不足は喫緊の問題でありその対策として機械化自動化つまり省人化の推進とクルー交代制の導入は必然だと思います。しかし傍から見ていますとそれ自体が目的化してしまい、フネとしての設計や出来上がりも、艦内の体制も余裕を失い、結果として非常に扱いにくいフネ及び部隊になっているのではないかという疑いです。
ニ点目はそのクルー制ですが、こちらは逆に充分に研究検討、あるいは掃海隊や特務艦で試験導入してしっかり検証したのか?という疑問です。省人化という命題の元、どうにも聞こえの良さとやってます感を出す為に見切り発車で導入したように思えてなりません。だとしたら拙速にも程があるのではないかと。
以上二点、素人の取り越し苦労であればよいのですが…
>火災と浸水の同時発生では、優先すべきは消火作業ではないでしょうか?
う〜む、ダメコンでは絶対にこちらが優先というのはありません。
状況次第では、弾薬庫や燃料タンクなど可燃物近くで火災と浸水が起きたときには消火優先となるでしょう。
軍艦沈没の多くで艦内火災が延焼して総員退艦となった例があります。(巡洋艦モスクワも火災を鎮火
出来ずに総員退艦となった可能性があります。)
浸水箇所の状況判断(浸水量や破壊口の大きさ)によっては、消火優先の判断も取れるでしょう。
消火しないと、浸水発生個所にたどり着けない場合もあります。
しかし消火のみを優先させると、段々と浸水量が増えて気付いた時にはトリム復元不可能な状況となってるかもしれません。
ここがダメコン指揮官の腕の見せどことです。
一番重要なのは、船を沈めない・戦闘力を喪失させないことです。
火災と浸水の同時発生では、優先すべきは消火作業ではないでしょうか?
掃海艇も結構ダメコンは頑張っていますが、対機雷戦ではどうしようもありません。
震災の時は、漂流物で船腹をぶち破られたときにダメコンが大いに活躍しました。
哨戒艦も、事前準備である程度行う感じになるでしょう。
MEKO型も一時期注目されましたが、ダメコン面ではいまいちだったのが販売不振となった理由でしょうね。
護衛艦ではない掃海艇の場合だと掃海中に触雷してしまった場合、船のサイズと合わせてほぼ即死コースなので
ダメコン配置自体を放棄、機関などは極力遠隔操縦にして要員は出来る限り上甲板に上げて置く場合もあるそうなのですが
要員が30名程度の哨戒艦もこの形の割り切り方になりそうな感じですかね。
ドイツが輸出してるMEKO型辺りですと輸出先の海軍ではそもそもダメコンに当たる人材の練度があてにならない、
更に他船の支援も来るか怪しいので頑丈な船体の桁部分に配線通して
弾片程度では極力破損しない用気を付けてシステムダウンだけはなんとしても防ぐ事で
致命傷になりえないチープキル対策と最悪の場合における乗員の脱出時間稼ぐのに注力する……
といった前時代染みた設計になってるそうですが
今までの自衛艦の設計見る限りこっち方面にはそうそういかないでしょうし