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最近どうやら中国052D駆逐艦のダメコン能力について、何やら意見が出てきたようです。
中国駆逐艦のダメコン能力は最低限!なんていうのは簡単ですが、事実に基づいて発言すべきです。
図1 中国052D駆逐艦
引用URL:https://www.xinghuozhiku.com/wp-content/uploads/2023/05/91683853496.jpg
一応艦船技術者として、多少は知識と現場経験を重ねたものとしての意見です。
中国海軍のダメコン能力は向上してきて悪くないが、良くもないという意見です。
(関係記事):『 【中国海軍】052D型駆逐艦の厨房から見えてくる技術思想! 』
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(1)水密扉と配管・電線処理を見ればレベルが分かる!
最近大増産されているのが、中華版イージス艦の052DL型です。
図2 5隻建造中
引用URL:https://twitter.com/Aurora107E/status/1665136160149057536/photo/1
なんだか色々な話が飛び交って、ダメコン能力を疑問視する声があるようです。
1.1 日米のダメコン能力が異常なだけだよ!
はっきり言うと、日米の艦船ダメコン能力が異常なまでに発達しすぎたから他の国が貧弱に見えてしまうのかもしれません。
図3 駆逐艦コール
引用wiki
船腹に大穴を開けられても生き残った、米海軍駆逐艦コールが良い例でしょう。
海上自衛隊も、日本海軍での血の教訓を糧に大幅にダメコン能力を増強したといえます。
1.2 上部構造物だけでもダメコン思想が読み取れる
中国052DL駆逐艦が海外にて一般公開され、艦内を見た識者がダメコン能力に疑問符を付けているという情報が流れてきました。
図4 ダメコン
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/FGwvsifUcAEnfU3?format=jpg&name=4096x4096
まあダメコンは結構特殊技術でもあるため、パッと見で道具が見当たらないから能力が低い!なんていうほど簡単なものではありません。
(関連記事):『 【海自】ダメコン応急工作は奥が深いよ〜! 』
いろんな準備と共に、設計段階から丁寧に細部のぎ装を考慮すべき話です。
1.3 水密ハッチと配管・電線を見ろ!
一般公開にて見過ごされがちなのが、水密ハッチと配管・電線の配置状況です。
特に区画をまたぐときに、配管と電線がどのように貫通しているかで設計思想が分かります。
図5 護衛艦いずも艦内
引用URLhttps://www.glico.com/assets/images/medium/0I9A1461vsd__1.jpg(グリコHPから)
この写真は、護衛艦いずもの艦内を捉えた映像です。
グリコの宣伝写真の中に、ちょうどよい画像がありました。
海上自衛隊の護衛艦などは、こんな感じでちょっとごちゃごちゃしています。
これもダメコンを考慮した、設計とぎ装になっています。
この中で隔壁を貫通している配管と電線に注目すると、中国海軍のダメコン能力を比較できます。
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(2)中国はダメコン能力は向上したがまだまだ問題がある
以前の051型(旅大級)駆逐艦については、ダメコン能力はひどいものでした。
図6 キッチン
引用URL:http://k.sinaimg.cn/n/sinakd20100/200/w640h360/20200621/4515-ivffpct0226437.jpg/w700d1q75cms.jpg
炊飯釜を上甲板に置くなど、とてもダメコンを考慮したとは言えませんでした。
2.1 052Dは改善されてきたね!
そんな中で2010年代に登場してきた、052D駆逐艦はダメコンも考慮されてすっきりしてきました。
図7 艦内配管
引用URL:https://www.youtube.com/watch?v=0ApBrnosK3E
一応はスマートな艦内設計になっているように見えますが、この映像を見たときに少し違和感を覚えました。
配管を、隔壁や構造物金物に貫通させるときに貫通金物をちゃんと通しているのは正解です。
ただし、
・逆止弁(ぎゃくしべん)や閉鎖バルブを設置せずに、配管を長くするのか?
という疑問が出てきて、中国のダメコン対応能力に疑問符が付きます。
流血の教訓から、日米艦艇は配管にこれでもかとバルブを設置して流出防止をしています。
2.2 おいいい!電線処理が甘いぞ!
052D駆逐艦の艦内公開映像を見て、ダメコン設計がまだ途上と感じたのは電線処理のところです。
図8 艦内電線処理
引用URL:https://www.youtube.com/watch?v=0ApBrnosK3E
艦内の隔壁を貫通する電線について、貫通部に防炎・防熱の隙間充填処理がされていない!
完全に、ダメコン設計は考慮されているけどぎ装までしっかりとできていない証拠です。
海自護衛艦や艦艇でこんなことをすると、ぎ装員や主任検査官から激詰めされる案件です。
(そうれはもう、アツく激しく罵倒の嵐になるでしょう)
ダメコンを少しでも知る人間なら、難燃性電線は溶け落ちるモノと認識するはずです。
2.3 1982年イギリス海軍シェフィールドの教訓
1982年に発生したフォークランド紛争にて、駆逐艦シェフィールド火災沈没が有名になりました。
図9 シェフィールド火災
引用URL:https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/styles/768x461/s3/publication/Hundimiento_del_destructor_HMS_Sheffield_ccexpress.jpeg?VersionId=qrUShAf4Q.hdKdFdtiBsegpjuhVosJNV&h=94757312&itok=zdCmvdk7
駆逐艦シェフィールド大火災の原因は、アルミ製上部構造物のせいといわれています。
実際は、火災発生により隔壁を貫通していた配管や電線が焼け落ち隣接区画に延焼拡大したためです。
その後世界各国の海軍は、徹底的に隔壁貫通の配管・電線処理に留意するようになります。
中国にもその教訓は伝わっているはずですが、ぎ装まで徹底できなかったのでしょう。
流血の教訓を体感できていないから、不十分なダメコン設計になったのかもしれません。
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(3)中国海軍ダメコン能力は悪くないが良くもない
結論として、中国海軍のダメコン能力は2000年代以降向上しているとは言えます。
しかしながら、まだまだ向上の余地があるといえるでしょう。
ダメコン用具が視界に入らないから、能力に問題があるとかそんな簡単なもんではないですよ!
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中国海軍艦艇は、間違いなくダメコン能力が向上しており2000年代以降に登場してきた艦艇の設計は目を見張る者があります。
ただ、設計が良くても「流血の教訓」を獲得する機会が無かったため細部における甘さがあると言えます。
厨房関連は、流血の教訓から正常な進化をしています。
日本はダメコン対策に心血を注ぎすぎて、乗員生活環境配慮が後回しになってきました。
米海軍は長期展開を前提に、生活環境もしっかりしています。
インド洋派遣から長期展開が常態化する海自にも、今後は閉塞感を解消する壁材設置など早急に実施すべきでしょう。
ダメコン重視の無機質な壁が心理的圧迫となり、新隊員が艦艇を降りてしまう原因にもなっているのを医務官や心理幹部から指摘されています。
ダメコンの観点から、余計な装飾不要!と考えてしまう海自の設計思想にもメスを入れる時期かもしれません。
(フランスSSBNのインテリアは衝撃でした)
太平洋で特に火災で多くのフネを失った日米がダメコンに秀でているのは自明ですが、実際に乗ってみるとその殺風景さも印象に残ります。戦うフネである以上、それは当然だとも言えるのですが、おしゃんてぃ(死語)な欧州のフネとかを見ると乗員への配慮も必要なのだなとも思います。特に印象に残るのが、Le Redoutable Class SSBNのインテリアですね。
https://twitter.com/MikiAV8BHarrier/status/1462385711743647747?s=20
先日、日本へ寄港したFrancesco Morosiniもそうでしたが、本邦もそろそろダメコン一辺倒ではなく、乗員にも優しい造りを配慮しても良いかなとも思います。