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令和5年度の政策評価にてついに、次世代護衛艦建造の射撃戦闘指揮システムなどの開発が始まるようです。
FCS-3も開発開始から40年を超えるため、2030年代以降の戦闘システムとして適切な開発時期でしょう。
図1 FCS-3
引用wiki
ただ、FCS-2・FCS-3の開発遅延の教訓をどれだけ生かせるか見ものとなります。
FCS-3もボロクソ言われたけど、FCS-2の開発遅延はもっとひどかったんだからね!
(前回記事):『 せ戦争じゃあ・・令和6年度概算要求を見た感想【防衛省】 』
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(1)ついに新護衛艦3点セットが登場だ!
令和5年度の政策評価にて、令和13年度護衛艦(13DD?FFG?)に搭載される開発品が発表されました。
図2 高速高機動目標対処レーダー
引用URL:https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2023/pdf/jizen_12_honbun.pdf
ついに新時代の護衛艦開発が始動したと言ってもいいでしょう。
1.1 FCS-3などの3点セットを思い出すなあ
今回の令和6年度からの研究開発は、
・高速高機動目標対応レーダの開発(FCS-4になるのかな?)
・新艦対空誘導弾(能力向上型)(ESSM後継国産弾)
というように、令和13年度(2031年)護衛艦に搭載する装備の開発を進めるものです。
図3 新戦闘指揮システム
引用URL:https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2023/pdf/jizen_02_honbun.pdf
かつての、FCS-3を含む3点セットATECS(FCS-3・ACDS・RIM-4)を彷彿とさせるものです。
もう新時代の開発を行う時代になったのだなあ、という感慨深いものがあります。
1.2 HGV対処研究はかつてのASMDを思い出す。
研究の主眼に置かれたのは、現用のFCS-3では難しいHGV(極超音速滑空兵器)への対処を行うものです。
図4 HGV
引用wiki
最近の流行であるHGV対処を急ぐのは、かつて1970年代以降にASMD(対艦ミサイル防御)対処を急いだ時代に重なるものがあります。
かつてのゲームチェンジャーだった対艦ミサイルも、HGVにはかなわない状況です。
今後の流行として、HGV対処を主眼としてレールガン搭載も視野に入るでしょう。
1.3 予定通りに開発完了できるかなあ?
ただFCS-3に関わったものとしては、どれだけ開発遅延を縮小して予定通りに開発できるかが心配です。
図5 GFCS-1
引用wiki
すでに全機が退役したGFCS-1(72式射撃式装置)ですが、開発開始は1960年で制式化に12年かかりました。
(途中でFCS-0(68式射撃式装置)はできたが、さらに実用化に6年かかった)
射撃式装置や艦載レーダーの開発は、開発遅延との闘いです。
今回は、どれだけ早期に開発完了できるかが見ものでしょう。
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(2)FCS-3・FCS-2の遅延は艦艇建造にも影響した
搭載装備品の開発遅延は、護衛艦建造に重大な影響を与えることになります。
図6 謎護衛艦
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/CrlLV3GVYAA82ce.jpg:medium
たまに出てくる謎護衛艦のポンチ絵は、FCS-3を搭載する予定だった「たかなみ型(10DD)」の残影です。
2.1 FCS-3はACDSの遅延が響いた
開発についてボロクソに言われるFCS-3について、最大の開発遅延の要因だったのはACDSです。
図7 ACDSの概要
引用URL:https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_05.pdf?contentNo=5&alternativeNo=
平成4年に試作を開始して、平成10年に実用試験を終了する予定でしたが2年の開発遅延となりました。
対潜情報処理装置(ASWCS)との連接や、FCS-3・RIM-4との連接に手間取ったのが原因です。
10DD(たかなみ型)の1番艦から搭載する予定が、4番艦(12DD:すずなみ)に延期されさらに16DDH(ひゅうが)まで搭載が延期される結果となります。
FCS-3のレーダ素子も1990年代には最新鋭だったガリウムヒ素(GaAs)半導体が、2000年代には陳腐化してしまいました。
図8 ガリウムヒ素半導体
引用URL:https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/img/rf-device/rf-column_01-04.jpg
あきづき型護衛艦(19DD)からは、窒化ガリウム(GaN)に変更してようやく何とかなった状態です。
たかなみ型護衛艦からFCS-3を搭載できていれば、今とは違った艦隊になっていたかもしれません。
2.2 FCS-2は4年の遅延で危うく国産化断念の瀬戸際だった
現在の護衛艦にて、いまだに主力として活躍しているのがFCS-2(81式射撃式装置)です。
図9 FCS-2
引用wiki
護衛艦の多くに見かける名品ともいえる射撃指揮装置ですが、開発当初4年の開発遅延があったことは知られていません。
図10 護衛艦しらね
引用wiki
FCS-2は1970年(昭和45年)に開発を開始して、1975年(昭和50年)に開発完了をする予定でした。
まあそれが洋上での技術・実用試験で不具合連発により、50DDH(しらね型)への搭載を断念することになります。
急遽暫定の短SAM管制用FCSとして、シグナ—ル社(現タレス社)のWM-25を搭載することになります。
実用試験では、7回の大規模改修を行い4年の遅延をすることになります。
(開発当時に、プロジェクト管理(LCC)があったとっくに中止だったでしょう)
図11 改修後のくらま
引用wiki
(「しらね」・「くらま」は2000年代にWM-25をFCS-2に換装)
当時すでに1977年(昭和52年)には、FCS-2搭載を前提した「はつゆき型」「いしかり型」護衛艦の発注が行われておりました。
1978年には 「これがダメならFCS-2計画は放棄して、海外製WM-25を搭載する」という最終リミットが示されます。
官民一体となって猛然と海上試験を行い、ようやく1979年に制式化して国産FCSは生きながらえます。
もしかすると、国産FCSが途絶えた世界があったかもしれません。
2.3 FCS-3改はまだよい方だった
FCS-3改(今のひゅうが搭載用)の改修試験が難航したとき、「FCS-2の時よりはまだましだから!」とナゾの励ましの上でX帯イルミネーターの試験は予定通りに完了しました。
SPY-1Fを19DDに搭載しろ〜!というナゾの圧力に負けず、FCS-3AやOPY-1/2の系譜につながったのはよかったといえます。
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(3)2030年代にどれだけ間に合うかな?
令和13年度護衛艦(13DD?FFG?)は、計画通り新型FCS−4が完成しないかもしれません。
しかしながら、開発遅延を可能な限り圧縮することで成功の可能性はあります。
3.1 たかなみ型代替艦という認識で良いのかな?
もがみ型護衛艦は、掃海艇・あさぎり型・あぶくま型護衛艦の代替として12隻建造となりました。
図11 もがみ型
引用wiki
今回登場したのは、2035年以降に退役が始まる「たかなみ型」護衛艦の代替艦と考えるのが適切でしょう。
多少開発が遅延しても、装備換装で対応できるように設計も考慮されるかもしれません。
FCS-4の研究開発は、多少開発遅延を覚悟しても実施していくべきことでしょう。
FFM22隻の整備が終了後に登場する、13DD?を楽しみに待ちましょう!
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順当にいけば、令和13年度護衛艦はむらさめ型から交代させていくのが正しいかもしれません。
ただ、31中期防で2027年(令和9年)までに「はたかぜ」「しまかぜ」を退役させる計画が発表されました。
むらさめ型の4艦については、順次練習艦隊に移籍させ新型FFMや13DDD?で充当していくのを優先させるかもしれません。
練習艦「かしま」も令和12年度(2035年)で艦齢40年を超えることになるので、専用艦建造を行うか「むらさめ型」4艦での練習艦隊編成を考慮しているのかもしれませんね。
(練習艦隊も新編から10年ほどは、専用練習艦が無かった)
ただ、DDGの2隻増勢(防衛力整備計画が策定された令和4年12月の概ね10年後とあるので令和15年度末までに2隻目が就役?)とFFMの2隻追加(11年度計画で15年度末就役?)で、その前におそらくむらさめ型4隻が護衛艦籍から外れることを考えると、就役期間が40年になると言われているむらさめ型も、一部の艦は早期に除籍や転籍となっていくことになるんでしょうか?
何とかRIM-4の仇討ちを、新艦対空誘導弾(AD-SAM)(能力向上型)にて取ってくれることを祈っています。
また新型FFM2隻追加建造ととDDG2隻純増など、色々変化も起きていますね。
1個護衛隊群8艦8機体制から転換して、9隻ぐらいの編成になるかもしれません。
もしくは、新編がウワサされる掃海・両用戦群への防空網提供としてDDGを配属する可能性もあります。
今後のどのような編成になるか、予想してみるのも面白いかもしれませんね。
FCS-3改で苦しんだメンツが、ちょうど現在海幕の班長・主担当班員になっておりノウハウを生かすことができたようです。
今後も、何とか予定通りに開発が進んで欲しいものです。
(しかし予定外が連発するのが研究開発の常道・・・)
今回も本当に興味深いお話しで何度も読み直してしまいました。
FCS-3シリーズの相棒となるべきXRIM-4が流れてしまったのは残念でしたが、国産誘導弾が新艦対空誘導弾として逞しく復活してくれたのは感慨深いです。開発終了と同時に新型にも着手しているのも素晴らしいです。
一部の報道によると新型FFMは当初の10隻が12隻に変更となったという話しもあるようです
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/186c4b9a5ba15becf0fc1b3d795cba8dcbbfc238
防衛力整備計画ではイージス護衛艦10隻化の為、DDが18隻になるかと思ったらFFMに2隻分枠を譲って16隻になるのでしょうか。護衛隊群あたり1隻ずつのDDの削減なので各群のバランスは取れているとは思いますが、新型FFM追加2隻分と増勢DDG2隻分の配属先が気になりますね