⇒ 【第6話:お金は工場の煙に消ゆ】 からの続き
【第7話:お金は自由との引換券】
<現代>
メルクリス
『おかえりなさい。』
『あらあら…難しい顔しちゃって。』
真知
「…もう学校なんて信じられない…。」
メルクリス
『…何があったか聞かせて?』
真知
「工場長と政府の人が言ってました。」
「工場労働者を育てるために学校を作るって。」
「命令に従順だったり組織に忠実だったり。」
「国に都合のいい人材を作るため…。」
メルクリス
『政府が主導するからにはそうね。』
真知
「私、邪推しちゃったんです。」
メルクリス
『邪推?』
真知
「学校でお金のことを教える理由なんてないんです。」
「お金の知識を持つ人が増えたら困るから。」
メルクリス
『…知らない人が多い方が都合がいいかもね。』
真知
「社会の安定は、経済活動し易くして利益を得るため。」
「自らの権力や信用を盤石にして、その座に居続けるため。」
「もちろん私たちはそのおかげで生きてます。」
「けどそれは鳥カゴじゃないですか?」
「もっと利益、もっと労働って!」
「人生には”ラットレース”しか道がないの?!」
メルクリス
『…極端な時代を見せすぎたわね。』
『それが資本主義よ。』
真知
「やっぱり…。」
メルクリス
『確かに学校でのお金の教育は不十分。』
『真知が邪推するのも仕方ないわ。』
『たとえそのおかげで今があるとしても。』
真知
「感謝と、裏側への不信感がぶつかるんです。」
メルクリス
『そう…やっぱりあなたを連れて行ってよかった。』
真知
「どういうこと?」
メルクリス
『真知は周囲が避けがちな”お金の話”を疑った。』
『悩み考え、お金のことを少し知った。』
『あなたの知見は広がっているはずよ?』
真知
「知ったら苦しいことまで知ってしまったけど…。」
「お金や社会の見方が変わりました。」
メルクリス
『それでいいの、自分なりの答えを探してね?』
『それに真知も気づいているはずよ。』
『時代は変わってきている。』
真知
「最近はお金の話をしても大丈夫な空気ですね。」
メルクリス
『そうね、時代の必要性に迫られてはいるけど…。』
『お金の知識を得るチャンスが無限にある時代よ。』
真知
「…私、お金は自由との引換券だと思うんです。」
メルクリス
『引換券?』
真知
「人生の自由な選択肢を買うんです。」
メルクリス
『自由な選択肢を買う…ね。』
真知
「パパとママが働くのはお金のためじゃない。」
「お金で自由との引換券を得て…。」
「幸せな人生を送るため。」
「なのに、お金への誤解が幸せを邪魔してる。」
「お金は苦労の対価とか長時間労働とか。」
「パパやママや先生が悪いわけじゃない。」
「誰も知らないから教わる機会がなかっただけ。」
メルクリス
『…そこまで考えられるあなたなら大丈夫。』
『お金に好かれる幸せな未来が待っているでしょう。』
真知
「私、残りの高校生活で考えます。」
「お金で得た自由でどう幸せになりたいか。」
メルクリス
『それを考えてくれたら、商業神として最高に嬉しいわ。』
………。
いつの間にか
真知の歩く先の霧が晴れていました。
家までもう少し。
真知はあたたかな夕陽に包まれながら決めました。
真知
「今日はパパとママ早く帰って来るかな?」
「おいしい料理作って待ってる!そして…。」
「ありがとうって伝えるの!」
ーーーーーENDーーーーー
⇒他作品
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『国教「頑張れ教」』 全4話
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