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2016.02.25
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『陰翳礼讃』をゲットしたのです。
待つこと3日の超速ゲットになったわけで・・・・
このような古い名作は狙い目なのかも♪



谷崎

谷崎潤一郎著、中央公論新社、1995年刊

<「BOOK」データベース>より
【目次】
陰翳礼讃/懶惰の説/恋愛及び色情/客ぎらい/旅のいろいろ/厠のいろいろ

<読む前の大使寸評>
横尾忠則が『陰翳礼讃』を絶賛していたので、気になるのです。

図書館に予約していたが、待つこと3日の超速ゲットになったわけで・・・・
このような古い名作は狙い目なのかも♪

<図書館予約:(2/15予約、2/18受取)>

rakuten 陰翳礼讃


文豪が、老境の交際関係を語っています。
p155~157
<客ぎらい>
 それに私は、近頃老齢に達するにつれて、一層年来の孤立主義を強化してもよい理由を持つようになった。なぜかというと、いくら私が交際嫌いであるからと云って、六十何年の間には相当に知人が殖えており、若い時代に比べれば、既に現在でも交際の範囲が非常に広くなっているのである。

 若い時代には一人でも多くの人を知り、少しでも多くの世間を覗く必用があるかも知れないが、私の場合は、この先何年生きられるものかも分からないし、大体生きている間にして置こうと思う仕事は、ほぼ予定が出来ているのである。その仕事の量を考えると、なかなか生きている間には片付きそうもないくらいあるので、私としては自分の余生を傾けて、それをぽつぽつ予定表に従って片端から成し遂げて行くことが精一杯で、もうこれ以上人を知ったり世間を覗いたりする必用は殆どない。

 他人に対して願うところはただ少しでも予定の実行を狂わせたり、邪魔したりしてくれないように、と云うことに尽きる。尤もこう云うと、さも勉強家のように聞え、寸陰を惜しんで始終仕事に熱中しているように聞えるかも知れないが、実際はそれの反対で、若い時から人並外れた遅筆家であった私は、老来種々なる生理的障害・・・たとえば肩が凝るとか、眼が疲れるとか、神経痛で腕が痛むとか云ったような、・・・が加わるに及んで、いよいよその習性がひどくなり、原稿用紙1枚書くのにも、間で庭を散歩するとか座敷を歩き回るとか云う合の手を入れなければ、根気が続かない有様なので、仕事中と云っても正味執筆している時間は割合に少なく、ぼんやり休養している時間の方が遥かに多い。

 つまり、1日のうちで緒条件の備わった、順調にすらすら筆が動いている時間はほんの僅かしかないのであるから、それだけになお邪魔が這入ると被害が大きいことになる。ほんの5分か3分でよいからお目に懸りたい、などと云って来る人があるが、その3分か5分のために折角の感興が中断されると、再び書斎に戻って行っても直ぐには油が乗って来ないので、30分や40分は忽ち空に消えてしまい、どうかすればそれきり書けないでしまうことがあるから、邪魔される分には時間の長い短いは大して関係がないのである。

 そこで、昨今の私は出来るだけ交際の範囲をちぢめ、せめてその範囲を現在以上に広げないようにし、新しい知人をなるべく作らないようにしている。昔は交際嫌いと云っても美人だけは例外で、美しい人に紹介されたり訪ねて来られたりすることは、この限りではなかったのであるが、今はそれさえもあまり有難いとは思わない。

 と云うのは、今日でも美人が好きであることに変わりはないのだけれども、年を取ってからは美人に対する注文が大変面倒になって来ているので、普通の美人と云うものは、殊に今日の尖端的タイプに属する美人と云うものは、私には少しも美人とは映らず、却って悪感を催すに過ぎない。

 私は私で、ひそかに佳人の標準を極めているのであるが、それに当て嵌る人と云うものはまことに暁天の星の如くであるから、そんなものが無闇に出現しようとは思ってもいない。むしろ私は今日までに知ることを得た何人かの佳人との間に、今後も交際を続けて行かれれば満足であり、老後の私の人生はそれで十分花やかであって、それ以上の刺激は欲しくないのである。

それ以上の刺激は欲しくないたって、谷崎さん。
佳人とよろしく交際するだけだなんて・・・それはかなり欲張りではないかと思うのです。


文豪が、日本の女の陰鬱な美しさを述べています。
p46~48
<陰翳礼讃>
 鉄漿(おはぐろ)などと云う化粧法が行われたのも、その目的を考えると、顔以外の空隙へ悉く闇を詰めてしまおうとして、口腔へまで暗黒をかませたのではないであろうか。今日かくの如き婦人の美は、島原の角屋のような特殊な所へ行かない限り、実際には見ることが出来ない。しかし私は幼い時分、日本橋の家の奥でかすかな庭の明りをたよりに針仕事をしていた母の佇まいを考えると、昔の女がどう云う風なものであったか、少しは想像出来るのである。

 あの時分、と云うのは明治20年代のことだが、あの頃までは東京の町家も皆薄暗い建て方で、私の母や伯母や親戚の誰彼など、あの年配の女達は大概鉄漿を付けていた。着物は普段着は覚えていないが、余所行きの時は鼠地の細かい小紋をしばしば着た。

 母は至ってせいが低く、五尺に足らぬほどであったが、母ばかりでなくあの頃の女はそのくらいが普通だったのであろう。いや、極端に云えば、彼女たちには殆ど肉体がなかったのだと云っていい。私は母の顔と手の外、足だけはぼんやり覚えているが、胴体については記憶がない。それで想い起こすのは、あの中宮寺の観世音の胴体であるが、あれこそ昔の日本の女の典型的な裸体像ではないのか。

 あの、紙のように薄い乳房の付いた、板のような平べったい胸、その胸よりも一層小さくくびれている腹、何の凹凸もない、真っ直ぐな背筋と腰と臀の線、そう云う胴の全体が顔や手足に比べると不釣合いに痩せ細っていて、厚みがなく、肉体と云うよりもずんどうの棒のような感じがするが、昔の女の胴体は押しなべてあああ云う風ではなかったのであろうか。

 今日でもああ云う恰好の胴体を持った女が、菖弊な家庭の老婦人とか、芸者などの中に時々いる。そして私はあれを見ると、人形の心棒を思い出すのである。事実、あの胴体は衣装を着けるための棒であって、それ以外の何者でもない。胴体のスタッフを成しているのは、幾襲ねとなく巻き付いている衣と綿とであって、衣装を剥げば人形と同じように不恰好な心棒が残る。が、昔はあれでよかったのだ。

 闇の中に住む彼女たちに取っては、ほのじろい顔一つあれば、胴体は必要がなかったのだ。思うに明朗な近代女性の肉体美を謳歌する者には、そう云う女の幽鬼じみた美しさを考えることは困難であろう。また或る者は、暗い光線で胡麻化した美しさは、真の美しさでないと云うであろう。

 けれども前にも述べたように、われわれ東洋人は何でもない所に陰翳を生ぜしめて、美を創造するのである。「掻き寄せて結べば柴の庵なり解くればもとの野原なりけり」と云う古歌があるが、われわれの思索のしかたはとかくそう云う風であって、美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。夜光の珠も暗中に置けば光彩を放つが、白日の下に曝せば宝石の魅力を失う如く、陰翳の作用を離れて美はないと思う。


次に、文豪お奨めの大和路めぐりを見てみましょう。
p173~175
<旅のいろいろ>
 なおまた、これだけは大阪地方の読者諸君にそっとお知らせしたいのであるが、私は実は、桃の花の咲く時分、関西線の汽車に乗って春の大和路を眺めることを楽しみの一つに数えているのである。御承知の通り、あの方面を走っている電車は花見頃にはいずれの線も超満員で無理な人数を収容し、無理なスピードを出すせいか、毎度間違いを起こすのであるが、そう云う時、試みに湊町を出て、先年地すべりのあった何とか云う村のトンネルを通り、柏原、王子、法隆寺、大和小泉、郡山等の小駅を経て奈良へ行く汽車に乗ってみ給え。大軌で四五十分で行くところを、この線の普通列車だと1時間と12,3分はかかるのであるが、急行に乗っては意味がないので、御丁寧に一つ一つ停まって行く列車がよいのである。

 乗ってみてまず驚くのは、電車の方はあんなに雑沓しているのに、汽車は殆どがら空きで、1台に数えるほどしか乗っていない。三等でも大概そうだが、二等に乗れば間違いなしである。ところで、そのゆっくりとした座席に足を投げ出して、ガタンと停まってはまたガタンと動き出す悠長な車に揺られながら、霞にけぶる大和平野の森や、丘や、田園や、村落や、堂塔などの、武陵桃源風なけしきを窓外に送り迎えていると、いつの間にか全く時間と云うものを忘れてしまう。

 窓の外にはいつまでも霞む平野が続きながら、日の暮れる時がないような気がする。私は殊に、春雨の降る日の午後にこの汽車に乗ることを好むのであるが、そう云う時は体がだるくものうくて、ついうとうとと眠たくなるままに居眠っていると、おりおりガタンと動き出す拍子に眼を覚まされる、すると窓ガラスが水蒸気で曇っていて、外の平野には猫の毛のような細かい雨の脚が霞よりも暖かそうに濛々と立ちこめ、遠くの方の塔や森を包んでいる、そうして奈良へ着くまでの1時間あまりと云うものが、無限にのどかに感ぜられる。

 もしも時間に余裕があれば桜井線を迂回して、高田、畝傍、香具山のあたりを通り、桜井、丹波市、櫟本、帯解等の緒駅を経て奈良へ出て見給え。大和めぐりなどと云って、忙しい思いをして方々を見て歩くよりも、結局この汽車の中の数時間、しかも無限の悠久を感ずる数時間の気分が第一等であり、真に千金にも換え難い味があることを悟るであろう。然るに、ほんの僅かな時間と賃金の差を惜しんで、あれだけの人が電車へばかり殺到するのが、私には不思議でならないのである。


早春の大和路めぐりは、大使にとっても定番行事である。
大和路めぐりの醍醐味は、文豪が説くように時間から開放される悠長さではないでしょうか♪





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Last updated  2016.02.25 01:16:44
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