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2021.01.27
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『文豪と食』という本を手にしたのです。
漱石は蕎麦、芙美子はうどんというのが、いかにもというか、東西の対比が表れているでえ。
文豪の食道楽や偏愛的味覚が載っているうようで・・・面白そうである。






長山靖生著、中央公論新社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
子規が柿を食した時、聞こえたのは東大寺の鐘?潔癖症の鏡花は豆腐を豆府に!鴎外は肉食を弱肉強食の闘争に譬え、独歩は和洋折衷・官民融和の理想を重ねた。江戸っ子の漱石は蕎麦、西国出の芙美子はうどんと好みは生まれも反映、美食の追求かと思えば偏食に拘る者も。露伴、荷風、谷崎、芥川、久作、太宰など食道楽に収まらない偏愛的味覚を探る。

<読む前の大使寸評>
漱石は蕎麦、芙美子はうどんというのが、いかにもというか、東西の対比が表れているでえ。

rakuten 文豪と食


泉鏡花の「湯どうふ」を、見てみましょう。
p159~161
<湯豆腐「湯どうふ」>
 昨夜は夜ふかしをした。
 今朝…と云うがお午ごろ、炬燵でうとうとして居ると、いつも来てさえずる、おてんばや、いたずらっ児の雀たちは、何処へすっ飛んだか、ひっそりと静まって、チイチイと、甘えるように、寂しそうに、一羽めじろが鳴いた。

 いまが花の頃の、裏邸の枇杷の樹かと思うが、もっと近い。屋根には居まい。じき背戸の小さな椿の樹らしいなと、そっと縁側へ出て立つと、その枇杷の方から、斜にさつと音がして時雨が来た。

 椿の梢には、つい此のあいだ枯萩の枝を刈って、その時引残した朝顔の蔓(つる)に、五つ六つ白い実のついたのが、冷く、はらはらと濡れて行く。

 考えてもみたが可い(いい)。風流人だと鶯を覗くにも行儀があろう。それ鳴いた、障子を明けたのでは、めじろが熟と(じっと)して居よう筈がない。透かしても、何処にもその姿は見えないで、濃い黄に染まった銀杏の葉が、一枚ひらひらと飛ぶのが見えた。
 懐手して、肩が寒い。

 こうした日は、これから霙(みぞれ)にも、雪にも、いつもいいものは湯豆腐だ。…昔からものの本にも、人の口にも、音に響いたものである。が、…此の味は、中年からでないと分からない。

 誰方(どなた)の児たちでも、小児で此が好きだと言うのは余りなかろう。十四五ぐらいの少年で、僕は湯どうふが可いよ(いいよ)、なぞは(説明に及ばず)親たちの注意を要する。今日のお菜(おかず)は豆腐と云えば、二十時分のまずい顔は当然と言って可い。

 能楽師、松本金太郎叔父てきは、湯どうふはもとより、何うした豆腐も大のすきで、従って家中が皆嗜んだ(たしなんだ)。その叔父は十年ばかり前、七十一で故人になったが、尚おその以前…米が両に六升でさえ、世の中が騒がしいと言った。

 諸物価の安い時、月末、豆腐屋の払が七円を越した。…どうも平民は、すぐに勘定にこだわるようでお恥かしいけれども、何事も此の方が早分かりがする。…豆腐一挺の値が、五厘から八厘、一銭ないし二銭の頃の事である。
(中略)

 催し、稽古なんど忙しい時だと、ビールで湯どうふで、見る見るうちに三挺ぐらいぺろりと平らげる。当家のは、鍋へ、そのまま箸を入れるのではない。ぶつぶつと言うやつを、碗に装出して、猪口のしたじで行る(やる)。

 何十年来馴れたもので、つゆ加減も至極だが、しかし、その小児たちは、皆知らん顔をしてお魚(とと)で居る。勿論、そのお父さんも、二十時代には、右同然だったのは言うまでもない。


ウーム 湯どうふは腹一杯食べるほどコスパが良かったようですね♪ でも京都の湯どうふは値が張るでえ(美味いけど)。

『文豪と食』1





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Last updated  2021.01.27 00:05:54
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