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先般、新国立劇場で『ヘンリー六世』を観た記憶がまだ新しい。近いうちに続編とも言える『リチャード三世』を観たいなと思っていたので、原作を日本に読み替えているとは言え、これはいい機会だった。[作]河合祥一郎 [演出]野村萬斎[出演]野村萬斎/白石加代子/石田幸雄/大森博史/小田豊/山野史人/月崎晴夫/じゅんじゅん/すがぽん/泉陽二/若松力/中村美貴/時田光洋/坂根泰士/平原テツ/入月謙一/大竹えり/黒川深雪/高島玲[囃子方]梅屋小三郎(囃子)/福原友裕(笛)/古寺正憲(囃子)実はこの舞台は2年前にも観ている。記憶は定かではないのだが、そのときは芝居そのものより、人間関係がえらくわかりにくかった。誰と誰が親戚で、赤薔薇と白薔薇はどう対決しているのか、舞台からは把握しにくかったのだ。しかし、『ヘンリー六世』を観た今となっては、主要な家系も歴史的背景もわかってきたので、ぐっと入り込むことができた。悪三郎(=リチャード三世)を演じる萬斎さんと女性4人を演じわける白石加代子さんが圧巻。どちらもおどろおどろしく、とてもデフォルメされている。それがために、悪三郎が悪者で当然なように思われてしまい、彼の心象風景を感じるようなことはなかったのが、ちょっと残念。
2009.12.12
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ダブルヘッダーで夕方からはシアターコクーンへ。午後はオーチャードホールでキエフ・バレエだったので、Bunkamuraで1日を過ごすことになってしまった。作:レジナルド・ローズ訳:額田やえ子演出:蜷川幸雄出演:中井貴一、筒井道隆、辻 萬長、田中要次、斎藤洋介、石井愃一、大石継太、柳 憂怜、岡田 正、新川將人、大門伍朗、品川 徹、西岡徳馬 1957年製作の有名な映画を2回ばかり観たことがあるけど、大まかなストーリーしか覚えていなかった。先頃のロシア版の映画も観てないし。演出が蜷川さんなのと出演者が豪華だという、芝居好きな人には軽薄と言われそうな理由で観にいった。十二人の陪審員が父親殺しの16歳の少年の罪について、密室でずっと討論する。最初は「有罪11票VS.無罪1票」だったのが、最後には全員一致で無罪に。陪審員が話し合うための密室なので、中央にテーブルだけ(お手洗いは付いてる)という簡素なセット。テーブルを乗せた舞台を四方から客席が囲み、俳優さんが正面を意識しなくていいので、リアル感がある。十二人のキャラが見事に立っているし、テーマの割には硬派すぎもせず、とても面白かった。そしてキャストは豪華であるだけでなく、役にぴったりの配置。たった1人で「無罪」の立場に立って、クールに証拠や証言を検証していく建築士には、中井さんがよく似合っていた。自分の子どもとの確執を感情的に投票に反映してしまう父親を、西岡徳馬さんがちょっと哀愁を感じさせて好演。充実した時間を過ごせたな、と思える芝居でした。
2009.11.28
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会社を15:30で早引きし、同僚2人と歌舞伎座へ♪ヒマそうだねーなんて言われそうだけど、仕事はパンパン(苦笑)。3人とも仕事の憂さを晴らしたいことがあって、先週に急遽意思決定したのだった。おかげでいつもの3階2500円席でなく、1階花道脇の(私には)贅沢席になってしまった。だけど・・・舞台がはねたあと、21時すぎから銀座で仕事の打ち合わせが入っていたので、楽しさは半減ではあった(涙)。五段目 山崎街道鉄砲渡しの場 同 二つ玉の場六段目 与市兵衛内勘平腹切の場七段目 祇園一力茶屋の場十一段目 高家表門討入りの場 同 奥庭泉水の場 同 炭部屋本懐の場 両国橋引揚の場【五・六段目】 早野勘平 菊五郎 女房お軽 時 蔵 母おかや 東 蔵 千崎弥五郎 権十郎 不破数右衛門 段四郎 判人源六 左團次 斧定九郎 梅 玉 一文字屋お才 芝 翫 【七段目】 大星由良之助 仁左衛門 遊女お軽 福 助 赤垣源蔵 松 江 富森助右衛門 男女蔵 矢間重太郎 宗之助 中居おつる 歌 江 斧九太夫 錦 吾 大星力弥 門之助 寺岡平右衛門 幸四郎 【十一段目】 大星由良之助 仁左衛門 小林平八郎 歌 昇 竹森喜多八 錦之助 赤垣源蔵 松 江 佐藤与茂七 萬太郎 矢間重太郎 宗之助 富森助右衛門 男女蔵 大星力弥 門之助 原郷右衛門 友右衛門 服部逸郎 梅 玉 仁左衛門の由良之助にやはり大きな存在感を感じる。由良之助なのに華やかさがあり、舞台のどこにいても目が行く。一力茶屋の場面は、遊び慣れた風情に妙にドキドキ。同行した同僚は実は同年代の男性2人なので、私のように仁左衛門にときめいたりはしなかっただろうけど。幸四郎の寺岡平右衛門は、やっぱり大げさなんだけど、平右衛門だからまあいいか。大物2人が絡むのは、さすがに顔見世だわ。十一段目の幕が上がると、46人がせいぞろい。思わず「おぉ!」と声を上げる。なぜだかよくわからないが、そして忠臣蔵がことさら好きなわけでもないのに、感心する。隣の席の同僚が「自分が日本人だなぁと感じる」とつぶいやいた。ちょっと同感。これから討ち入り、と思うとわくわくする。仇討を無事終えて、思わず拍手。観劇するときに友人と一緒がいいとも思ってないが、歌舞伎はそうでもないわ、と思った。
2009.11.17
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三部一挙上演日で11時~22時20分まで(休憩を除くと実質9時間!)全部観劇する予定だった。今週は毎日何かに出かけていたので、仕事は溜まるし(自業自得だけど)、体力は相当消耗してたし・・・で、目が覚めたら第一部開演のAM11時(苦笑)。初台は1本で行けるので、すぐに準備すれば12時くらいからは観れたかもしれないけど、そこからの長丁場を考えるとひるんでしまい、「第二部からでもいいや」ということにしたのだった。(ジャンヌ・ダルクは第一部しか出てこないのが残念ではあった。)【作】ウィリアム・シェイクスピア【翻訳】小田島 雄志【演出】鵜山 仁【美術】島 次郎【照明】服部 基【音響】上田 好生【衣裳】前田 文子浦井健治 : 王ヘンリー六世 中嶋朋子 : マーガレット 渡辺 徹 : リチャード・プランタジネット、のちのヨーク公 村井国夫 : サフォーク伯 ソニン : 乙女ジャンヌ、エドワード(皇太子) 木場勝己 : トールボット卿、ウォーター・フィットモア 中嶋しゅう : グロスター公 上杉祥三 : ウォリック伯 立川三貴 : レニエ、ジャック・ケード、王ルイ 木下浩之 : 皇太子シャルル、オクスフォード伯 久野綾希子 : オーベルニュ伯爵夫人、エリナー・コバム 鈴木慎平 : バーガンディー公、クリフォード卿、ペンブルック伯 今井朋彦 : エドワード 金内喜久夫 : ベッドフォード公、ロジャー・ボリングブルック 菅野菜保之 : エクセター公、ソールズベリー伯 勝部演之 : ウィンチェスター司教、枢機卿ボーフォート 鈴木瑞穂 : エドモンド・モーティマー、セイ卿 岡本健一 : リチャード 水野龍司 : サマセット公 青木和宣 : ウェストアラモンド伯 渕野俊太 : ソールズベリー伯、モンタギュー侯 那須佐代子 : エリザベス・グレー夫人 浅野雅博 : クリフォード卿の息子(のちのクリフォード卿) 石橋徹郎 : ノーサンバランド伯 清原達之 : ジョン・トールボット、リヴァーズ伯 城全能成 : オルレアンの私生児、ヘースティングズ卿 関戸将志 : バッキンガム公 篠原正志 : ノーフォーク公 松角洋平 : エクセター公 内田亜希子 : ボーナ 前田一世 : アランソン公 高橋郁哉 : ラットランドすごい数の出演者。これでも貴族+αに絞り込んでUPしている。ちょっと差別(笑)。それと1人の俳優がいくつもの役を兼ねているのも特徴。家系図を見ながらでないと、混乱しそうだ。この「ヘンリー六世」は、シェークスピアの他の作品~4大悲劇~のように、人間の内部的なものを追求してはいず、ほとんど権力闘争の歴史物語(薔薇戦争をなぞる)なので長くても全然飽きさせない。戦闘シーンも多く、舞台が単調にならない。それどころか、‘チャンバラ’シーンではリチャード役の岡本クンがさすがの運動神経を見せて、なかなかに見応えがあったりした。力量のある俳優をそろえ、他のシアターのようにアイドル系を出演させてセリフ回しが微妙ということがない。そういうところは国立劇場の余裕を感じて、ありがたい。第二部から観た私としては、村井国夫さんのサフォーク伯、中嶋しゅうさんのグロスター公、上杉祥三さんのウォリック伯が際立っていたと思う。女優ではやはり中嶋朋子さん。権力を求めての戦いばかりの中で、唯一(9時間もあるのに)のラブシーンが王妃マーガレットとサフォーク伯の不倫のみ。それも別れるはめになった際の愁嘆場。こういう男の色気が必要なシーンの村井さんてホントにすごい。あの声でささやかれたら、グラッときそうだわ。。。でもサフォーク伯は王妃に「捨てないで!」としがみつき、王妃は(自分を王妃に押してくれた相手なのに)「さよなら」宣言をするのだった。中嶋朋子さんという女優さんがそれほど好きではなかったけど、どんどん権力争いに主体的に(?)巻き込まれ、とうとう自分で兵を率いて出陣するほどまでになった王妃マーガレットを好演。歴史上の人物が乗り移ったのかと思うほどの熱演は、大竹しのぶさん路線か。 あ、リチャード(後のリチャード三世)を演じた岡本健一くんもとても良かった。せむしでびっこで醜いリチャードを岡本くんが演じるなんて・・・と思ったが、頭に白薔薇を差し、権力と戦いのウィルスに‘イッチャッて’いる感じが似合っていた。続けて「リチャード三世」で主演すればいいのに。頼りな~い感じがヘンリー六世にぴったりの浦井くんにはキャスティングの妙を感じ、渡辺徹さんには「もしかしてホントは王様?」という貫禄を感じた。長かったけど、面白く見られた。味を占めて、来年3月の彩の国での「ヘンリー六世」(一般発売だった)のチケットを予約してしまった。こっちはもっと短いとか。
2009.11.14
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ほんとに久々の歌舞伎。海老蔵の今(というか頑張り?)をちゃんと見ておこうと思ったのだった。石川五右衛門:市川海老蔵茶々:中村七之助前田利家:片岡市蔵百地三太夫:市川猿弥霧隠才蔵:市川右近豊臣秀吉:市川團十郎海老蔵は座長として仕切っている‘貫禄’みたいなものを感じる。演目は、漫画家の樹林伸氏による新作。だけど、こんなに他の演目で見たような見どころが詰まっているとは思わなかった。山門の場とか、鯱と格闘した後の六方とか。そして、五右衛門の逸話も満載。「絶景かな!」とか「浜の真砂・・・」等々。最後はかつてのスーパー歌舞伎もどきの宙乗りも出てくる。海老蔵サマの見せ場を最大にするために組まれた特別公演なんですね、これは。そう思えば、確かにその意図は100%具現化されていたし、海老蔵がこれだけのことをやり遂げたことに、今後の可能性も感じる。笑っちゃうようなオチも、まあうまくオチたとは思うし。七之助の茶々はすごい美女でした!それでも、二幕目~三幕目しか茶々は出てこない。ここまでになると思わなかったからか?とても惜しい。そして、團十郎はさすがで、黙って南禅寺の中に座っているだけで、天下人の風情。海老蔵の引き立て役にはとどまらないのに、決して主役を越えないところはさすが。幕切れは、五右衛門の宙乗りで花吹雪が散りました。帰り道に一緒になった年輩の女性が、「こんなに花びらを集めたのよ」とたくさんプログラムにはさんであったのを見せてくれました。そういう気にさせるような、ちゃんと花びらの形に切り取った花吹雪でした。
2009.08.23
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山本耕史さんのドリアン・グレイに興味があってSEPTへ。[作] オスカー・ワイルド[構成・演出] 鈴木勝秀[出演] 山本耕史/須藤温子/伊達暁/米村亮太朗/三上市朗/加納幸和ストーリーはすごく端折られている・・・気がする。原作を読んだことはないのだけど、ポンポンと展開した後で「実はこうだった」と登場人物に話させているので、これはかなりトバシているなと。いいんですけどね。山本さんがお目当てだったし、耽美的な(?)山本さんが見られれば。だけど、そう妖しくも美しい彼を見られたわけでもなかった。なんとなく山本さんに‘こなれてない’感があるのは2日めだからかな。そして・・・彼を舞台で見たことがなかったのだけど、すごく顔が小さいのに思ったよりからだつきがガッチリしている。そのせいもあって、貴族的な優雅さをほんのちょっと欠いた気がした。(贅沢な物言いだけど)量産派の鈴木勝秀さんの演出はどうだったかというと、とりたててどうということはなかった。いつも演出に驚かせてほしいと思っているわけではないが、「きっとこうするんだろうな」と思っていた範疇を出ないというのも、何だか。。。あ、はっきり「NG」と思ったのはピアノ伴奏。(ミュージカルじゃないんで、伴奏じゃないですね。効果音かしら。)曲はすべてラヴェルなんですかね?そこまではよくわからなかったけど。せっかくの生演奏なのに、美しくなく、どっちかと言うと乱暴。料金を払ってこれを耳にするのか、と自問してしまった。バックミュージックとしては、どうかすると芝居の持ち味を損ねていたと思います。
2009.08.22
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さよなら公演らしく、派手でよく知られている演目が並んだ。そうなると出かけてみたくなるのが人情。一、倭仮名在原系図 蘭平物狂(らんぺいものぐるい)奴蘭平実は伴義雄:三津五郎 在原行平:翫雀 水無瀬御前:秀調 一子繁蔵:宜生 与茂作実は大江音人:橋之助 女房おりく実は妻明石:福助二、歌舞伎十八番の内 勧進帳武蔵坊弁慶:吉右衛門 源義経:梅玉 亀井六郎:染五郎 片岡八郎:松緑 駿河次郎:菊之助 常陸坊海尊:段四郎 富樫左衛門:菊五郎三、三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場 お嬢吉三:玉三郎 和尚吉三:松緑 夜鷹おとせ:新悟 お坊吉三:染五郎◆「蘭平物狂」派手だわ~。ここまで長丁場で高難度の立廻りというのは歌舞伎でも珍しいのでは?花道での梯子使いが消防の出初め式のよう。梯子のてっぺんから逆さまになって「ハッ!」と手を広げるところなどが。3階席からはちょっと見づらくて残念。奥庭井戸の屋根の上でも、立廻りは続く。すごい人数。三津五郎自身も屋根から石灯篭の上に飛び降り、思わず「おおっ」と声を上げてしまった。下手にいる捕手が、刀を屋根の上にいる仲間に投げる。それは、取りやすいように、弧を描いて投げてよこすのではなく、ブンと一直線に投げてきて、受け取る方も、投げられてくる進行方向で刀を握りとる。ここでも「おーっ」と声を上げた(笑)。なんかしつこいほど長い立廻りのあと、やっと蘭平はお縄。その役目は幼い息子が指名される。息子はどこにいたのか?立廻りの最中、息子の名前を呼ばわる三津五郎の姿は涙を誘う。結局、蘭平は許されてお家再興はかなうのだが、あれだけいっぱい追っ手を殺傷しておいてなんで許されるのか、とても不思議。いろんな前触れが省略されているので、そもそものコトの起こりはわかりにくいのだが、主人の在原行平が蘭平親子の情にほだされたというより、絶対ここで許さないとバランスが取れないような‘裏’があったと思わせる。まずは、夜の部の出だしは躍動感があってよかった。◆「勧進帳」もちろん、一番観た回数の多い演目なのだが、弁慶:吉右衛門、義経:梅玉、富樫:菊五郎と聞いて、一も二もなく「観に行こう!」と決心した組合せ。それになんたって、四天王が、染五郎・松緑・菊之助・段四郎。超豪華。「若手3人は将来、主役3役で組むんだろうな」と噂する後ろのオジサマたち。そういう日は来るんだろうけど、やはり今、吉右衛門と菊五郎の演技には、度肝を抜かれた。歌舞伎にはそんなに通っていないけど、それでも何度も見ている演目なのに、今回はかつて観たことがないような完成度だった。「丁々発止」というのはこういうことだろう。ニセの勧進帳をいかにも本物のように読み上げる弁慶と、それを疑い覗き込む富樫。それに気付いてからだを翻す弁慶と、ちょっとバツの悪い富樫。一瞬一瞬でからだの向きを変えてお互いに踏み込む緊張の一瞬などは、思わず息を止めていた。弁慶の威容と、富樫の抑制の利いた正義感に、これまでになく感動したのだった。◆「三人吉三巴白浪」この前の「勧進帳」であまりにも盛り上がったせいか、ちょっと心情的には落ち着いてしまった。和尚吉三の松緑がはまりだと思ったが、扮装はあまり似合わない。お坊吉三の染五郎はこういう役が合っているが、もっとくずれた色気が出てくると、もっとすごみが出てくるのに惜しい。お嬢吉三の玉三郎は、立ち姿が遠目にもいまだに美しいが、男性としての発声に切り替わるとなんだかムリがあるように感じた。それと・・・あとの2人とのバランスも取れない。役者が発散するキラキラ感というか。。。「勧進帳」のように、役者のバランスってやっぱり必要と思った。
2009.02.22
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NODA・MAPだから観にいくというより、松たか子&宮沢りえという旬の女優2人を観にシアターコクーンへ。作/演出:野田秀樹出演:松たか子、宮沢りえ、橋爪功、大倉孝二、北村有起哉、小松和重、田中哲司、佐藤江梨子、コンドルズ、野田秀樹一昔前の日本のSFのような設定。今から約1,000年後の火星移民(火星からさらに移民した金星人も登場)たちの物語。新天地としての火星の開発から滅亡(に至りそうになるが、最後に復活?)までが描かれる。その頃、移民たちの故郷の地球では、とっくに人類は滅亡していることになっているので、これは現在の地球への警告のメッセージかな。文明批評ともとれる。そんな火星に住む、ある意味力強い姉妹を、松たか子、宮沢りえの二大女優が演じる。ストーリーが‘有りがち’と思う割には、珍しく面白く観れた。野田作品は、最近はひねりが少なくて、私にもとっつきやすくなってきた。どうやら、それを寂しく思うファンもいるようだけど。私は、やはりお目当ての2人にすごく満足。どちらも滑舌がよくて声そのものもいいし、体当たりの演技なのにがむしゃらすぎないところがいい。観ていて、‘賢い’人たちなんだな、と思う。役のキャラがすごく立っているけど、そのキャラを作っているかのような2人。特に宮沢りえは、これまでのイメージを裏切って、最初はドスの利いた低音でしゃべっていたので、久本雅美かと思ったくらい(笑)。圧巻なのは、荒れ果てた火星の様子を、この2人が早口で掛け合いのように語るシーン。目に見える映像や装置は何もない。だけど、戦災や震災の後を歩いているかのように、その風景を語る語る・・・。その緊張感がすごくて、速くて膨大な量の掛け合いのセリフを、息を止めて聞いてしまった。オペラなら、この後に「ブラヴォ!」と声を掛けるところだ。橋爪功はいい味を出したお父さん役だったが、そのお父さんを籠絡した佐藤江梨子の役は、誰が演じてもよかったような気がした。そもそもサトエリとも気付かないくらいだし。野田秀樹も、そろそろ自分で演じるのは止めておいてもいいんじゃないの?と私は思う。あのかん高い声や学生芝居っぽい演技がいいという人がいるけど、彼がうまいかどうかは別として、私は彼が出てくると自分が学生時代に小さくて汚い(すみません・・・)芝居小屋で観た先輩たちの芝居を思い出して、あんまりうれしくない。あの頃とは共感するものが違うので、やっぱりもっと極めたものが観たい。。。とは言え、この「パイパー」は観て面白いと感じた舞台だったし、松たか子はやっぱりすごい女優だし、宮沢りえも目が離せないと思うのだった。
2009.01.18
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雪の北陸から羽田に降りると、すでに春になったかのような快晴。あったかい。体感温度は発表されてる気温以上にあると思う。帰省してその足で新橋演舞場へ。一、歌舞伎十八番の内 七つ面(ななつめん)元興寺赤右衛門 海老蔵 二、恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)~封印切 亀屋忠兵衛 獅童 傾城梅川 笑三郎 槌屋治右衛門 寿猿 丹波屋八右衛門 猿弥 井筒屋おえん 門之助三、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)~白浪五人男 ~序 幕 雪の下浜松屋の場 稲勢川勢揃いの場 ~大 詰 極楽寺屋根立腹の場 同山門の場 滑川土橋の場 弁天小僧菊之助/青砥左衛門藤綱 海老蔵 南郷力丸 獅童 鳶頭清次 市川右近 忠信利平 段治郎 浜松屋幸兵衛 右之助 日本駄右衛門 左團次新春なので若手の歌舞伎を観たいと思った。 久しぶりに端正な海老蔵の顔も見たいな、とも。「恋飛脚大和往来」はどうも性に合わない。忠兵衛と梅川のいちゃいちゃも冗長だし、挑発されて見栄をはっちゃう狭量な男に惚れてる梅川にも共感しないし。罪を犯して共に大和へ落ちていくのに、花道でうろたえたりしている。オペラのマノンが、逃げる前に宝石をかき集めていたのを思い出した。「弁天娘女男白浪」がお目当てなんだけど、ここまでお約束ごとをわかって構えていると、注文が多くなる。もろ肌脱いだ海老蔵弁天は、ちょっとふっくら系?彼は発音があまりいいとは言えないので、ときどき聞き取れないし、女装での騙りがバレて開き直った途端の男言葉が乱暴すぎて、「まだ頭数にも入っていない」はずの駆け出し悪党なのに、兄貴分の南郷力丸より威張っているみたいに見えた。でもそれは、獅童の南郷力丸のせいでもあるかもしれない。面構えはさておき、ワルとしての押し出しがいまいち弱い。この2人の物足らなさは、ファンじゃないと厳しいかもしれない。それもあって、左團次が日本駄右衛門として締めているのだろう。それでも、5人揃って紫の晴れ着姿での「稲勢川勢揃い」は毎度ながらカッコイイ。お正月らしい晴れやかな気分。海老蔵はこの次の「極楽寺屋根立腹の場」で、弁天小僧として‘切った張った’をこなしていて、運動神経のよさそうな彼はちゃんとやれていたので、ホッとする。そして海老蔵は、大詰めで青砥左衛門藤綱としても登場。端正な侍姿がやはり似合うなあ・・・と演技はさておき、オペグラでうっとりと観てしまう。実は今回は2階の左桟敷席の上の2列目で、花道は全然見えない。だが、座席上方にモニターがあって、なんと花道を役者が通るときだけ映し出されるのだった。リニューアル後はこうなってたの?かなりありがたい。オペラやバレエも見切れる席はこうだったらいいのにな。
2009.01.03
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