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こんなに期待していた新国立の公演も、昨今では少なかったように思います。なんたって、大野和士が指揮で、デイヴィッド・マクヴィカー演出。タイトルロールの一方に、S.グールドも出るし。ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」【指 揮】大野和士【演 出】デイヴィッド・マクヴィカー【トリスタン】ステファン・グールド【マルケ王】ギド・イェンティンス【イゾルデ】イレーネ・テオリン【クルヴェナール】ユッカ・ラジライネン【メロート】星野 淳【ブランゲーネ】エレナ・ツィトコーワ【牧童】望月哲也【舵取り】成田博之【若い船乗りの声】吉田浩之【合 唱】新国立劇場合唱団【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団歌手はよかった。グールドは、英雄でありながら‘愛の力の前に無力な男’というところが、声に滲みでていたように思います。テオリン・・・声はよく出ていました。しかし、最初から最後まで同じ。バイロイトでも、この調子だったんでしょうか?クルヴェナールのラジライネン、ブランゲーネのツィトコーワは共に艶のある声で、安定した歌唱。特にツィトコーワは、時として女主人を凌駕する感情表現を見せて、なかなか堪能しました。オケは、(失礼な言い方ながら)東フィルにしては頑張っていました。ただ、大野さんなら、もっとケミストリーを作ってくれるかと勝手な期待をしていたのも事実です。時として、からだの周りにまとわりつくような、あのワーグナーの旋律の妙味を味わえる瞬間もなくはなかったですが、東フィルが大野さんについてはゆけてなかったような気がします。そして、総合力もさりながら、オーボエとかのソロももっと力を発揮してほしい。ミスなく演奏するだけでは、ワーグナーはキツイでしょう。マクヴィカー演出も期待はずれでした。最初は「わあ、キレイ」と思いました。テイストとしては、とても好みだったのです。シンプルで静謐。しかし・・・全編を通じてほとんど変わらないとは思わなかった。月の色・大きさ・ポジションが変わることに意味があるんでしょうけど、そこまでは思い至りませんでした。新国立オペラの初日は低空飛行、というのが定説なので、これからすごく良くなるんでしょうか?「だから次は○日に観るつもり」という会話が聞こえてきました。激変するなら、新年にもう一度観てみたい。だけど、ちょっと調子がよくなるくらいなら今日だけでいいなあ。だれか、「尻上がりにすごくよくなる」と保証してくれないかな。ワグネリアンは集結しているはずなのに、そして彼らはワーグナー作品にはナーバスに接するし、感動したときの感情表現もただならない・・・といつも思ってきましたが、心なしか若干さっぱりしたカーテンコールでした。その心は、私と同じなんじゃないかしら。。。
2010.12.25
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イヤなことがあったので、仕事を振り切って東劇へ。平日なのに、思いのほか人が入っていて驚きます。年々観客が増えてますね。指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:オットー・シェンク出演ノリーナ:アンナ・ネトレプコエルネスト:マシュー・ポレンザーニマラテスタ:マリウシュ・クヴィエチェンドン・パスクワーレ:ジョン・デル・カルロ(ネトレプコとクヴィエチェン)私的にはクヴィエチェンがよかった。以前から達者な人だったけど、大劇場に出るようになって、さらに磨きがかかってます。ジョン・デル・カルロと2人で早口での二重唱なんか、すごすぎる。歌いくちが明晰なだけに、ジョン・デル・カルロよりクヴィエチェンの方が、テクニックが際立つ感じでした。2人は、ノリにノッて、幕間にアンコールもしてくれました。バリトン好きな私には、この2人だけで十分なんですが、芸達者なネトレプコと甘い声のポレンザーニが華を添えます。ネトレプコは、こういう役柄だと、より一層演技力が発揮されます。腹筋も十分あるようで(笑)。幕間のインタビューには、次回作出演者も出てきます。「ドン・カルロ」のアラーニャとキーンリサイドです。METらしい豪華な組合せ。現地にいたら日参しちゃいそうです♪インタビューも面白かった。フランス語版とイタリア語版の違いを2人が話してる。アラーニャはイタリア語版への出演が初めてだとか。言葉が違うとオペラの雰囲気も変わる。フランス語版はロマンティックで、イタリア語版は勇壮だとも。面白いなーと思ったのは、アラーニャはインタビューに答える内容もすでにエモーショナルな感じで、自分が演じる役を感情から捉えている。一方で、キーンリサイドは、舞台となる国・時代の中で登場人物の設定を捉えていて、客観的で社会的、かつ分析的。これって役柄のせいだけでなく、2人の元々の性格も出ていると思われ。私は理知的なキーンリサイドが好き♪なんだか、観たオペラよりもインタビューの方が感想が長くなってしまったけど、私へのインパクトの強さもそのとおりでした。このオペラへの思い入れが、あまりないせいかもしれません。
2010.12.09
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レオ・ヌッチの声質が、とても好きなんです♪コンサートお休みを決めた後も、この公演にだけは行こうと決めていました。トスティ:君なんかもうヴェルディ:乾杯レオンカヴァッロ:4月プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」間奏曲(ピアノ)ベッリーニ:歌劇「清教徒」から「ああ、永遠におまえを失ってしまった」ロッシーニ:「老年のいたずら」第9巻から「私の最後の度のための思い出と行進曲」(ピアノ)ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」から「私は町の何でも屋」ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」から「終わりの日はきた」 歌劇「仮面舞踏会」から「お前こそ魂を汚すもの」ドーン:「イル・トロヴァトーレ」のファンタジア(ピアノ)ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」から「ユダヤの神よ」 歌劇「椿姫」から「プロヴァンスの海と陸」スミス:「ラ・トラヴィアータ」の華麗なるファンタジア(ピアノ)ヴェルディ:歌劇「リゴレット」から「悪魔め、鬼め」(アンコール)ヴェルディ:歌劇「シチリアの晩鐘」から「富を腕にして」デ・クルティス:夜の声ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」から「祖国の敵」ディ・カプア:オー・ソレ・ミオ何年か前に聴いたときには調子が悪く、「そろそろ年齢のせいもあるよね」と失礼なことを思ったものですが、今回は快調ですねえ。なんかうれしい。最初からヌッチ節は飛ばしていましたが、前半最後の「私は町の何でも屋」で中締めの盛り上がりでした。後半は、「ドン・カルロ」からスタート。「プロヴァンスの海と陸」は、周囲のお客さんも皆待ってた感じで、「プロヴァンスよ!」とか囁き合う声が聞こえました。意外に(?)女性ファンが多いんですよね。私も低音に弱い方なので、意外ではないのかも。あぁ、そして心待ちにしていたのはやはり「悪魔め、鬼め」。私にとって、リゴレットのスタンダードはヌッチなので、誰を聴いても彼と比べてしまう。そうすると当たり前だけど、常に物足りないんですよね。ヌッチが歌うと、そこに突然ストーリーが生まれる。リサイタルとはいいながら、何重にもおいしい公演でした。
2010.12.06
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仕事は今日は少し手をつけただけで、上野に向かいました。オペラの引っ越し公演で、それもこの価格帯で、「大入」看板が出ていることに感心しました。ネトレプコ効果でしょうか。指揮:アントニオ・パッパーノ演出:ロラン・ペリー美術:シャンタル・トーマスギヨー・ド・モルフォンテーヌ:ギ・ド・メイド・ブレティニ:ウィリアム・シメルプセット:シモナ・ミハイジャヴォット:ルイーゼ・イネスロゼット:カイ・リューテル宿屋の主人:リントン・ブラックレスコー:ラッセル・ブラウン警官:ドナルドソン・ベル、ジョン・ベルナイスマノン・レスコー:アンナ・ネトレプコ騎士デ・グリュー:マシュー・ポレンザーニ伯爵デ・グリュー:ニコラ・クルジャルロイヤル・オペラ合唱団 / ロイヤル・オペラハウス管弦楽団主役2人が圧巻でした。第1幕~第2幕は、「少女」のネトレプコに違和感がありましたが、第3幕~第4幕にかけては彼女の本領発揮でした。マノンは本当に彼女のキャラに合ってます。第3幕のサン・シュルピス修道院で、神父になったデ・グリューを誘惑し、→見事に陥落させます。ネトレプコのマノンは、教会の片隅で横たわって、思い切り秋波を送っていました。うらやましいくらい(!)の手腕・手管でした。先般の神奈川音楽堂での大野和士さんのオペラ・レクチャーを聞いていて、今回は予習もバッチリ!第1幕のマノンの「パリ・・・」のシーン(デ・グリューに対する恋心より大都会パリへの憧れが勝っている)とか、第3幕の神父デ・グリューを籠絡させる音楽とか・・・聞き逃しませんでした。そして、ネトレプコはこれらのどのポイントも十二分に押さえていたことに、かなりびっくりしました。今をときめくスター・ソプラノに対して失礼ですが、もっと力技でねじふせて聞かせているような印象があったもので。。。ボレンザーニは、悪い印象は持ってなかったものの、あまりどんな歌手だったか覚えていませんでした。しかし、今夜はしっかり記憶に刻みました。甘くて張りのある艶やかな声。そして(声の)演技がすごい。第5幕でマノンを抱きしめて泣くところなど、思わず目が潤んでしまいました。やっぱり‘すがりつく’男に弱いようです(笑)。マスネの音楽はちょっとね・・・と言っていたオペラ仲間の知人も、この終幕には涙が出てきたと皆さんおっしゃっていました。そして、今や座付きの歌手というものがほとんどいない以上、引っ越し公演らしさはオケが体現すると思うのですが、ロイヤル・オペラのオケは雄弁でした。それでいて、決して歌手の邪魔をしない・・・。当たり前ですが、そんなことに感心し、パッパーノにも思い切り拍手をしました。ちょっといまいちだったのは装置。シャンタル・トーマス?デザイナーでしたよね?時代の読み替えは大した影響はない範囲でしたが、地味で見にくい舞台でした。舞台には関係ないですが、客席はかなり暑かった。文化会館の冷房は効いていませんでした。寒がりの私が言うんだから、他の観客には苦痛だったろうとお察しします。コスト削減策なんでしょうか??
2010.09.11
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職場はお盆ムード。7-9月の間に夏季休暇を取ればいいのだけど、やはりこの時期に集中する。上司がいないと、早く帰れるのは事実(笑)で、今日は私も早々に職場から抜け出しました。METライブビューイングの「カルメン」は、最初の上演時には体調が悪くて観に行けなかった。それが残念で、この再上演期間になんとか観たい・・・と思っていました。指揮:ヤニック・ネゼ=セガン 演出:リッチャード・エア出演:エリーナ・ガランチャ(カルメン)バルバラ・フリットリ(ミカエラ)ロベルト・アラーニャ(ドン・ホセ)テディー・タフ・ローズ(エスカミーリョ)久々に「カルメン」に満足!「カルメン」って、本当に何度も観ているから、いまやちょっとやそっとでは感動しなくなっています。それなのに今回のこの「カルメン」を観たので、また当分は誰を観ても納得できなくなりそうです。アラーニャはこういう‘すがりつく男’系をやらせたら、すごく似合いますね。甘さが残る声も張りがあるし、少しスリムになって若く見えるのもグッド。以前にガランチャのカルメンを観た人が「彼女は知的すぎてカルメンは似合わない」と言っていましたが、なかなかのファムファタールぶりでした。幕間のインタビューで、アラーニャのテンションに引っ張られているようなことを言っていましたが、そういうのをケミストリーと言うのでしょう。演技はもとより、ダンサーと一緒に踊れるところにもびっくりしました。主役級の力量がオペラ全体にとても響く演目ですが、現在のガランチャとアラーニャほど、カルメンとドン・ホセにピッタリの組合せはないように思えました。ミカエラにフリットリを持ってくるというのも、なんとも贅沢すぎて重い(?)です。演出の中で、カルメンとドン・ホセに見立てたダンサーが踊るのですが、それは多分マリア・コウロスキーとマーティン・ハーヴェイではなかったでしょうか?振付はクリストファー・ウィールドン。さすがMETというか、オペラの一部のダンスにこういう布陣をしてくるなんて、ため息が出てしまいます。3,000円のもとは十分に取ったライブビューイングでした。
2010.08.12
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昨日に引き続き、トリノの「椿姫」です。お目当てはもちろんナタリー・デセイ。指揮:ジャナンドレア・ノセダ演出:ローラン・ペリヴィオレッタ:ナタリー・デセイアルフレード:マシュー・ポレンザーニジェルモン:ローラン・ナウリフローラ:ガブリエッラ・スボルジアンニーナ:バルバラ・バルニェージガストン子爵:エンリーコ・イヴィリアドゥフォール男爵:ドナート・ディ・ジョイアドビニー侯爵:マリオ・ベッラノーヴァグランヴィル:マッティア・デンティデセイに本当に感動しました。そのテクニックによるところも大きいですが、なんというかものすごく‘共感’しました。椿姫は何度も観ているし、今さらストーリーに目新しさもないのですが、「自分がヴィオレッタだったら、きっとこう考え、こう行動するだろう」とデセイの椿姫を観て、初めて思いました。これまで「椿姫」のどこを観てきたんでしょう?第一幕の恋に気付き愛に目覚めるところからして、「そうよねえ・・・言い寄られたからってすぐにはその気にはなれないわ」→「この恋に踏み出してみるのはコワイけど、なんだか彼が唯一の人と定められていた人という気がする」という心の揺れまでを、リアルに感じました。よくある言い方をするなら‘等身大’に感じられる、ってことでしょうか?読み替えというほどではないけれど、デセイの立ち居振る舞いが現代的だったところや、字幕のセンスの良さも影響したかもしれません。「オペラで泣くことはない」私でしたが、今日は初めてぐすぐすしてしまいました。それも第一幕で、というのだから、自分でも変な感じです。。。ボレンザーニ、ナウリともにすばらしい声&演技で、今回はキャストを想定して演出が組まれたんだな、と実感します。まあ、この演出では、ヴィオレッタはデセイ以外にはできませんね(笑)。ノセダ&オケもドラマティックでした。椿姫の音楽にしては緩急がすごく付いていましたが、ドラマ性を浮き立たせていました。引っ越し公演が「椿姫」だと聞くたびに「え~また?」と思ってしまうのですが、オペラは歌手や指揮者や演出次第でまだまだ発見があるんだなと実感しました。終演後に、文化会館いっぱいに歓声とブラヴォが響いたのも、当然の出来栄えだったと思います。
2010.08.01
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オペラの引っ越し公演が少なかったこの1年、スター歌手の生の声に飢餓感がありました。「ラ・ボエーム」というのがちょっとひっかかりますが、フリットリとアルバレスというのはプレミアな期待を持たせます。今日は睡眠もバッチリ!体調は万全で臨みました。指揮:ジャナンドレア・ノセダ演出:ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィミミ:バルバラ・フリットリロドルフォ:マルセロ・アルバレスムゼッタ:森麻季マルチェッロ:ガブリエーレ・ヴィヴィアーニショナール:ナターレ・デ・カローリスコッリーネ:ニコラ・ウリヴィエーリベノワ/アルチンドーロ:マッテオ・ペイローネアルバレス・・・色気のある艶やかな声が大好きだったのですが、それはまだ残存してはいるものの、客席を圧倒するほどではありませんでした。おまけに「冷たい手を」で最高音を出さないとあって、盛り上がりも少々。旬は過ぎつつあるんですかねえ。。。今日のところはフリットリの存在が圧倒的かなと思ったのですが、なんだかミミっぽくはないです。丁寧で繊細な歌唱なんですが、プリマドンナとしての貫禄(体型ではない)が、ちょっと邪魔しているように思いました。脇は達者な歌手で固められていました。ヴィヴィアーニ、デ・カローリスとあってはくずれようもない。森さんはムゼッタに合っていると思いますが、これだけの歌手陣の中では、違和感がありました。ともあれ、始まるまでワクワクドキドキだったもので、「うーん、それほどではなかったかな」と思うというだけで、通常国内で聞ける公演とはかなり違ったレベルで楽しめたのは事実です。
2010.07.31
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朝一で会社の健康診断。体重は変わらないのに、脂肪率だけは年々1%づつ増えている。10年前までダンサー並みの数字だったのに、今は見る影もないというか。。。その後、ずっと外部で打合せ。会社で懸案事項がどうなっているか不安でしたが、金曜って「明日は会議もプレゼンもない」(=ハードな交渉や、その準備がない)というだけで解放感いっぱい。なんとなれば、土日で追い込めばいいし・・・という楽天的な気持ちもなくはない(笑)。それで夕方は社に戻らず、まっすぐ初台へ。【原 作】三島由紀夫【指 揮】沼尻竜典【上演台本】鵜山 仁【演 出】鵜山 仁【作 曲】池辺晋一郎【影山悠敏伯爵】与那城 敬【同夫人 朝子】腰越 満美【大徳寺侯爵夫人 季子】坂本 朱【その娘 顕子】安井 陽子【清原永之輔】宮本 益光【その息子 久雄】小原 啓楼【飛田天骨】早坂 直家【女中頭 草乃】大林 智子【宮村陸軍大将夫人 則子】薗田 真木子【坂崎男爵夫人 定子】三輪 陽子【合 唱】新国立劇場合唱団【管弦楽】東京交響楽団日本のオペラは観ない主義でしたが、三島原作が気にいっていたし、劇団四季で以前観た芝居が印象的だったので、このオペラを観ることにしたのでした。今日のキャストの若手の歌手陣も興味を持っている人ばかりだった、ということあります。日本語のオペラ・・・やっぱり音楽と合わなくて不自然だし、そもそも日本語の発音が聞き取りにくいし。不満に思っていたら、舞台上方に字幕がありました。しばらく気付かないくらい上でした(笑)。そして池辺さんの音楽は、前半はちょっとツラかった。前半が長い(90分)というのもあるけど、場面はほとんど動かないし、前述のようにテキストと抑揚のない(?)旋律なので、忍耐を強いられたのは事実です。しかし、後半は一転してドラマティック。軍楽とワルツの調べが重なるあたりが、オペラの背景と登場人物の心理を雄弁に現していました。歌手では腰越さんがよかった。凛としていて、それでいて元芸者という‘あだ’な雰囲気も出ていました。最初、裾をひく和服姿で出てきたときには、女優でなく歌手だとわかっているのにそのたたずまいに見惚れてしまいました。与那城さんは声は悪くないけど、いまひとつ歌唱に雑なところが残っている気がします。坂本さん・安井さん・宮本さんもとても健闘していて、役柄に合っていました。鵜山さんの演出は、今回かなり冴えていたと思います。(合唱=コロス的な扱いはちょっとうっとおしかったですが。)何といっても三島の原作が優れているので、このオペラを観おわったあと、音楽的充足よりは演劇的満足の方が勝ってしまいました。(少なくとも私には)そして、劇団四季で観たときと、かなり鑑賞後の印象が違いました。四季で私が観たときの影山伯爵は日下武史だった記憶していますが、そのとき一番共感したのが彼でした。政治的立場などでなく愛情の問題として‘敵’を葬ったわけですが、そのやり方は徹底していて、彼の心の奥深く潜むものに戦慄を覚えたものです。しかし、今回はその辺はさらりとしていて、演じる方の解釈なのか、演出の差配なのか、最後がもうひと押し心理描写が微妙だとよかったのにと思いました。
2010.06.25
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コヴァルスキーが出るというだけでオーチャードに向かいました。指揮:ロベルト・ツェルツァー管弦楽:ウィーン・シェーンブルン宮殿劇場管弦楽団合唱:ウィーン・シェーンブルン宮殿劇場合唱団演出:フォルカー・フォーゲルガブリエル・アイゼンシュタイン:ペーター・エーデルマンロザリンデ:エリザベート・フレッヒルアルフレード:ヴァレリー・ゼルキンアデーレ:ハイディ・ヴォルフファルケ博士:アルフレード・ベルクフランク(刑務所長):クレーメンス・スロヴィオツェックイーダ:ウルスラ・スザメイトオルロフスキー公爵:ヨッヘン・コヴァルスキーブリント博士(公証人):ダヴィット・アメルンフロッシュ(看守人):フランツ・スーラーダ「こうもり」はどんな団体で上演されてもあまり不満がないくらい好きなんですが、今回は「うーーむ」と最初から唸ってしまいました。思い切り、オケと歌唱が合ってない。ずれてる・・・。ここまでなのは珍しい。気を取り直して聴き続けましたが、オーチャード3階にいたせいかもしれないけど、ロザリンデのエリザベート・フレッヒル以外は、皆さんあまり声量がない。こうなると楽しくないんですよね。コヴァルスキーはまあ、想像の範囲ではありました。書き割以外の主な装置(小道具?)が木製の折りたたみイスというのもツライ。(チラシの雰囲気とはエライ違い)第二幕で失礼して、職場に仕事に戻りました。。。
2010.06.10
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最近、以前にも増して休日の午前は起き上がれません。それでも今日bedから這い上がったのは、いくつかチケット取りをしようと思ったから。あ、そういえばズービン・メータ&イスラエル・フィルの発売も今日だったわ、と少し遅れてNBSのHPに行ってみました。え?D席が12,000円なんですか・・・。もはや手が出ないですねえ。気を取り直して新国立に向かいました。【指 揮】エーリッヒ・ヴェヒター【演出・美術・衣裳・照明】ドニ・クリエフ【皇帝】ミヒャエル・バーバ【皇后】エミリー・マギー【乳母】ジェーン・ヘンシェル【霊界の使者】平野 和【宮殿の門衛】平井香織【鷹の声】大隅智佳子【バラク】ラルフ・ルーカス【バラクの妻】ステファニー・フリーデ【合 唱】新国立劇場合唱団【管弦楽】東京交響楽団皆さんがおっしゃているとおり、女声3人がすばらしかった!乳母のジェーン・ヘンシェルはちょっと金切りになっていましたが、皇后のエミリー・マギーとバラク妻のステファニー・フリーデは最高でした。あまりこのオペラを知らなかったので、タイトルの「影のない女」とは‘皇后’のことだと思いましたが、主役はバラク妻なんですね。音楽的にはそうだけど、そんな風には見えなかった。カーテンコールになって、最後にフリーデが出てきたので、「ああ、そうなのか」と思ったくらい。男声陣は、この3人に比べるとインパクトが薄い。もともとそうなのか、今回の歌手がそうなのか、わかりません。今回は予習もしてなかったので、逆にこれから他の映像を観てみようと思います。ところで・・・この演出は「すべてバラク妻の‘妄想’」らしい!パンフを読んで初めて知りました。演出家の意図を説明されないとわからない舞台ってどうなんでしょう?私には、皇后も乳母も十分に現実を生きているように見えました。存在感がないのは皇帝ですかね。バラクも‘いかにも脇’という感じ。演出意図のせいでしょうか、装置がチープだったのは。黒子が書き割の家を運んで舞台転換をするのを、演出家は「日本的美学」と言ってましたが、私はガッカリです。2階後方からは舞台はよく見えるのですが、「なんだろう?あの針金は。」と思ったのは、よくよく見ると動物や鳥を象ったものでした。2階で見えない装置って厳しいですよね・・・。視覚的にはいまいちでしたが、東響の頑張りもあって音楽的には充実していました。オケの紡ぎだす音楽が‘オペラ’していて、ときどきその牽引力に気付かされるシーンがありました。こちらは結構満足しました。
2010.05.29
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指揮:リッカルド・フリッツァ 演出:メアリー・ジマーマン出演:ルネ・フレミング(アルミーダ)ローレンス・ブラウンリー(リナルド)ジョン・オズボーン(ゴッフレード)バリー・バンクス(ジェルナンド/カルロ)コービー・ヴァン・レンズブルグ(ウバルド)第3幕で、アルミーダ、リナルドともに見せ場があり、このオペラはここのためにあるんだ、と実感しました(笑)。第3幕まで主役級の歌手がパワーをセーブしていたこともあり、第1幕とかはちょっと眠気も・・・。それでも、ローレンス・ブラウンリーは結構見なおしました。いえ、以前が良くなかったわけではないですが、「チェネレントラ」の王子サマ役があまりに似つかわしなかったので、トータル評価が下がっていたんですよね。今日は‘英雄’リナルドだったので、力強く張りのある声がとても役柄に合っていたように思います。本当は「6人」いるはずのテノールは代役が2人(そのうち1人は兼務なので結局テノールは5人)でしたが、なかなかの迫力ある舞台になりました。幕間には恒例のインタビューとともに、2010-2011シーズンの予告と新プロダクション「ニーベルングの指輪」のメイキング紹介がありました。前回から差し挟まれていたのかもしれませんが、ここのところ1-2回、このMETライブビューを観ていなかったので、これも興味深かったです。「指輪」の「ライン」「ワルキューレ」、「ドン・カルロ」という新作がさっそくライブビューで観られるのはうれしい限り。「指輪」は結構大掛かりな装置のようで、すごく楽しみです。
2010.05.23
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走りました。錦糸町で18:30開演に間に合うために。指揮:クリスティアン・アルミンク演出:田尾下哲ペレアス:ジル・ラゴン メリザンド:藤村実穂子ゴロー:モルテン・フランク・ラルセンアルケル:クリストフ・フェル ジュヌヴィエーヴ:デルフィーヌ・エダンイニョルド:アロイス・ミュールバッヒャー(聖フローリアン修道院少年合唱団/オーストリア)医師、羊飼いの声:北川辰彦合唱:栗友会合唱団CGでの背景がすごく美しい!「視覚的なことは二の次でしょ」と言われるのはわかっていますが、ペレメリはあまり盛り上がりのない旋律。コンサート・オペラだと厳しいかもね・・・と覚悟していたのでした。陳腐ですが「幻想的」と言える背景がいろいろ写しだされて、その前で立って歌うだけで、中途半端な装置よりずっといい。少なくとも私の好みの雰囲気でした。先年のパリ・オペラ座公演の映像より、ずっとずっといい。その視覚効果に目を奪われて、音楽に傾倒しかねたのですが、透明感あふれる音はこのオケのお得意ですね。メリザンドの藤村実穂子さんのシンのある声が、3階の私のところまでよく通りました。ホールの音響がいいのかもしれませんが、感心しました。今日の出演者の中では、藤村さん以外の歌手を知りませんでしたが、どの歌手も一定以上のレベルで、バランスの取れた配置でした。「知っている」ことだけをMyスタンダードにしてはいけませんね。特に、イニョルドをやった少年の声に魅了されました。それにしても、ドビュッシーだと完売しないんですねえ。こんなにいい公演だったのに、3階もかなり余裕があったのが残念です。
2010.05.21
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バルトーク作曲 弦楽のためのディヴェルティメントバルトーク作曲 歌劇『青ひげ公の城』op.11(演奏会形式)指揮:井上道義青ひげ公:イシュトヴァーン・コヴァーチ*ユーディト:イルディコ・コムロシ吟遊詩人:押切英希本番前に「イルディコ・コムロシは不調だけど歌う」というアナウンスが。これって親切なんでしょうか?エクスキューズされているようで、なんかすっきりしない。もっとも、コムロシはちゃんと歌い切りましたが。地を這うような音楽だけど、どこかスッキリして都会的でした。井上みっちーの指揮のせいかもしれません。今回の公演は、一般に使われている楽譜に加筆したとのことだったけど、それがどこかわかりませんでした。オルガンを使う、後半ですかね?(詳しくないのがまるわかり・・・)吟遊詩人が最初に語るところは日本語だったので、心理劇としての印象が強くなりました。男と女・・・望むものも、自分の中に内包するものもこんなに違うんですよね。でも、相手のことをとことん知ろうとするのが幸せなのか、とか女性は男性の通過点であると言っているのかしら・・・とかいろいろ思いを巡らせてしまいました。じっくりと聴かせてくれて、総じて満足なのですが、惜しむらくは、空席が目立ったことでした。
2010.04.08
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楽しみにしていたパルジファルでした。なんと言っても、日本での上演は少ないですから。指揮:ウルフ・シルマーパルジファル:ブルクハルト・フリッツクンドリ:ミヒャエラ・シュスターアムフォルタス:フランツ・グルントヘーバーグルネマンツ:ペーター・ローズクリングゾル:シム・インスンティトゥレル:小鉄和広聖杯騎士:渡邉澄晃、山下浩司侍童:岩田真奈、小林由佳、片寄純也、加藤太朗魔法の乙女たち:藤田美奈子、坂井田真実子、田村由貴絵、中島寿美枝、渡邊 史、吉田 静アルトの声:富岡明子管弦楽:NHK交響楽団合唱:東京オペラシンガーズ児童合唱:東京少年少女合唱隊思ったより空席が目立ち、びっくりしました。休日での上演はこの日だけだったので、チケットは争奪戦になるかと思いましたが、よくよく考えてみたら《パルジファル》にそこまでワクワクして出かけるなんて、メジャーではありませんよね。。。ローエングリンはパルジファルの息子であるだの、この前の引っ越し公演はバレンボイム&ベルリン国立歌劇場だっただのという話題が周囲でかわされていたので、それなりのワーグナー愛好家が集結していたのかも。歌手はクンドリのミヒャエラ・シュスターがダントツで、パルジファルのブルクハルト・フリッツ、グルネマンツのペーター・ローズの健闘も光る、歌唱が牽引した演奏会でした。アムフォルタスのフランツ・グルントヘーバーも、お年を召しましたね・・・という哀しさはありましたが、味のある歌唱。合唱の東京オペラシンガーズはさすがでしたが、ここは少数でも声量が大きいと思っていたのに、あれ・・・今日はたくさんの人数がそろっているな、と思いました。期待してたほどではなかったかも。ワーグナーとあれば何をおいても出かけたいと思っているのですが、正直言うと、この《パルジファル》は苦手な方です。ストーリーがわかりにくくて、入り込めない。なんというか、キリスト教や聖杯伝説の本質的なところで、きっと私がわかってないことがあると思うんです。そういう‘腑に落ちない’感がいつもあるんですよね。まあ、ちょっとだけいつもより親近感が湧いたのは、先般アーサー王のことを調べてて、パルジファルが円卓の騎士だと発見したばかりだったので、「あ、そんなところにつながるんだ」という嬉しさがありました。しかし、そうすると、パルジファルはブリテンからスペインまで聖杯を探しに行ったんですね。。。深くは考えないことにします。
2010.04.04
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3/21はパリ・オペ「ジゼル」を観に行くことにしたため、この日に変更しようとしたらS席の、それも左端の1枚しか残ってなかった。でも、今日はところどころに空席があったのを発見。なんで~と思いました。。。【指 揮】ダン・エッティンガー【演 出】キース・ウォーナー【ジークフリート】クリスティアン・フランツ【ブリュンヒルデ】イレーネ・テオリン【アルベリヒ】島村武男【グンター】アレクサンダー・マルコ=ブルメスター【ハーゲン】ダニエル・スメギ【グートルーネ】横山恵子【ヴァルトラウテ】カティア・リッティング【ヴォークリンデ】平井香織【ヴェルグンデ】池田香織【フロスヒルデ】大林智子【第一のノルン】竹本節子【第二のノルン】清水華澄【第三のノルン】緑川まり【合 唱】新国立劇場合唱団【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団今日の殊勲賞はテオリンです。ここまで歌い通してくれて、とても満足。りっぱな体型ではあっても、ブリュンヒルデはこうあってほしいという凛とした外見もよかった。フランツも調子がよかったと思いますし、脇もみなレベルが揃っていました。グンターとハーゲン役の歌手は名前も知りませんでしたが、よく歌えていたと思います。そういえば、前回の上演のときはグンターはロマン・トレーケルでした。金髪&長身で新国立版お坊ちゃんグンターのイメージを定着させ、女性観客の心を騒がせましたが、それは彼の属人的な特徴ではあっても、演出の要請した人物像だったんだなと納得しました。そして、テオリンと同じくらい感動したのは合唱です。ギービヒ家の一族郎党が現れてくるところはすごい迫力でした。圧倒されました!演出は細かいところは忘れていました。改めて「へえ」と思うところも。そういえば、前回の上演のときも「演出が尻すぼみ」と思いましたが、辻褄合わせをしたかのような最後のオチとかはやはり残念ではあります。全体としてのメッセージはさておき、物語は登場人物を通して進むので、感情移入はどうしてもそちらがまず先になります。演出のせいか字幕のせいかわかりませんが、今回ジークフリートがすごくキライになりました。第二幕でギービヒに到着したブリュンヒルデに追求されて、もごもご言い訳するところがどうも周囲の男性と似ているような気が。。。この演出では、ブリュンヒルデはジークフリートにヤラれてしまっていると私は信じているし、それをジークフリートは十分認識しててごまかそうとしてノートゥングという証拠作りをした、と思っています。それが英雄のすることなの?!と、もはやこの物語の根幹のストーリーに対して憮然とします。そうなると、他人の力で妻を得ようとしたくせに、その功労者を殺した罪からは真っ先に逃げる姑息なグンターなんか眼中にありません。。。改めて何言ってるの?と知人に言われましたが、なんだか今回は妙にひっかかるのでした。ブリュンヒルデは自分を欺いた人間すべてに怒るけれども、実行犯(?)のジークフリートを罰すればいいことにする。だけどジークフリートが死んだら彼を英雄視し、愛する彼の後を追うわけです。それを件の知人は「自分勝手だ」と言っておりましたが、私はわかる気がします。一番許せないのは愛した人の裏切りですからね。個人的決着もつけないと(笑)。最近いろいろ思うことがあるので、ちょっと感情的になってしまいました。そうそうスクリーンに投影されている・・・あのひからびた羊(みたいなもの)はいったいなんなんでしょう?これは前回同様、皆目意味がわかりません。周囲も誰もわからないみたいだし、誰かに教えていただきたいものです。カーテンコールで指揮者にブーイングが起きましたが、「先日のよりは大人しかった」らしい。これまた「なんで~?」という気持ち。確かに遅めだけれども。そして、「オケが主役」と言えるほどの重厚感は全然感じませんでしたが。それでも、ブーという抗議の意思表示には共感しないままでした。少なくとも、前回のN響&メルクルにさらわれた出番を東フィルが取り返しただけのことはあったのではないでしょうか。
2010.03.27
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いろんな仕事を振り捨てて、サントリーホールへ。今回が最後のホール・オペラと聞いて、これはこれでなかなか手頃なシステムだったのにと残念に思いました。フィオルディリージ:セレーナ・ファルノッキア(ソプラノ)ドラベッラ:ニーノ・スルグラーゼ(メゾ・ソプラノ)グリエルモ:マルクス・ヴェルバ(バリトン)フェルランド:フランチェスコ・デムーロ(テノール)デスピーナ:ダヴィニア・ロドリゲス(ソプラノ)ドン・アルフォンソ:エンツォ・カプアノ(バス)指揮&フォルテピアノ:ニコラ・ルイゾッティ演出:ガブリエーレ・ラヴィア管弦楽:東京交響楽団合唱:サントリーホール オペラ・アカデミー舞台装置:アレッサンドロ・カメラ衣裳:アンドレア・ヴィオッティ今回の歌手の中では、私はなんと言っても、マルクス・ヴェルバが好きなのだけど、事前の評判の高かったフランチェスコ・デムーロも楽しみにしてました。彼のコンサートを聴いた知人一同がベタ誉めだったものですから。確かにそれだけのことはある、甘い声でした。女声陣も粒が揃っていたと思います。そして、舞台横に座ったので、ルイゾッティと東響がよく見えたのですが、ルイゾッティの指揮がノリノリな割にはキレがよくて、舞台と舞台奥のオケの両方が見えると、舞台奥の方に目が惹かれてしまいました。そして、東響の弦楽器も艶やかな音を出していて、ついつい聴き惚れるほどでした。演出はシンプルでなかなかよかったです。最初は舞台の上に何もなくて(ホントに何1つない状態でした・・・)心配しましたが、そのうち、たくさん登場する道化師たちがいろいろ大道具・小道具を運んでは取り去っていきました。それは秀逸なアイディアでしたが、こういうときは正面から見た方がいいですね。なんか、わさわさした感がありました。このサントリーホールのホール・オペラは、平日だとこんなに空いていたのかと思いました。これまでも平日に来たことがありましたが、ここまで空席が目だったのは初めてです。。。
2010.03.17
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久しぶりの東フィル。定期会員ではないが、ゼッダの『ウィリアム・テル』とあらば、オペラ仲間は集結しておりました。(というか知り合いをたくさんロビーで見かけた、というだけですが。)指揮:アルベルト・ゼッダソプラノ:イアーノ・タマーテノール:シー・イージェバス:牧野 正人合唱:新国立劇場合唱団チラシもHPも『ウィリアム・テル』だったのに、パンフは『ギヨーム・テル』。フランス語上演だったんですね。会場に着いてから気付くという準備の少ない聴衆でしたが、できれば事前にもっと告知してくれると、ありがたみも増したのに。ゼッダの指揮は小気味いい感じでした。以前聴いたときほどではないけれど、歌心を感じました。それに指揮姿も結構格好良い。歌手も健闘していました。私はうまいor下手ということにあまり関心がなく、どっちかっていうと声質に好き嫌いがあります。それで言うと、タマーはこもったような声が好きでなく、イージェは思ったより甘い声がなかなか気に入りました。イージェは前半はなんか声が上がりきらない歌い方だったので、後半のアリアのためにパワー温存かと疑っていました。ほんとにそうだったかどうかはわかりませんが、あの有名なアリアはクリアし、なんとなくホッとしました。こういう声のテノールが減ったので、今後もっと表舞台に出てきてほしいです。超サマライズされた‘ハイライト’でしたが、先般の『アーサー王』よりはストーリーを追えたのでよかったです。(笑)
2010.03.07
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前回の「カルメン」を見逃したしドミンゴ・ガラにも行けなかったので、これはなんとしても観たいと思っていました。指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ジャンカルロ・デル・モナコ出演:プラシド・ドミンゴ(シモン・ボッカネグラ)、エイドリアン・ピエチョンカ(アメーリア)、マルチェッロ・ジョルダーニ(ガブリエーレ)、ジェイムズ・モリス(フィエスコ)ドミンゴがバリトンのシモン・ボッカネグラを歌う、というのが結構話題だったが、私には全然違和感がなかった。そして、ドミンゴの演技力にも圧倒された。第1幕第2場の最後で、ドミンゴが「呪われよ!」とパオロに言葉をぶつけるところは、ほんとにすごい迫力。「うわあ・・・」と声を出してしまいそうになりました。さすが長老!それにしても全世界向けとはいえ、キャストもすごい。アメーリアにピエチョンカ、ガブリエーレにジョルダーニ、そしてボッカネグラと対峙するフィエスコにジェイムズ・モリスだなんて観る前からワクワクした。第3幕など、私には珍しく涙ぐみました。フィエスコがJ・モリスでよかった。。。難を言えば、ジョルダーニの声はまあまあなのに、棒立ち気味で大根役者なことくらいでしょうか。装置や衣装はオーソドックス以外の何者でもなく、最近はそうでない傾向に慣れてきつつあったけれど、ここまで豪華にリアルにセットが作られていると、やはりオペラの醍醐味を感じます。(上↑の写真)そしてレヴァインが振ると、音楽もイキイキ。ヴェルディ節が冴えていました。なんか、久しぶりにオペラを観る充実感や楽しさを満喫できたという感じ。その昔、「いやあ、映画っていいもんですねえ」と言ってた映画評論家がいらしたけれど、「オペラっていいなあ」と改めて素直に思えたのでした。
2010.03.05
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久々に睡眠を十分にとることができて、機嫌良く横浜・桜木町へ。最近はあまりオペラを観に行ってなかったので、ほんと久々にオペラで知り合ったお仲間にも会えた。【音楽監督・指揮】エルヴェ・ニケ【演出】伊藤隆浩【キャスト】アナ・マリア・ラビン(ソプラノ)シャンタル・サントン=ジェフェリー(ソプラノ)マーク・キャラハン(バリトン)アーウィン・エイロス(カウンター・テナー)ジョアン・フェルナンデス(バス)【管弦楽・合唱】ル・コンセール・スピリテュエルル・コンセール・スピリテュエルは、昨年オペラシティで爆音の古楽演奏を聞いた記憶がある。金管の音程の狂いにびっくりしていたら、「古楽の金管はこういうもの」だと知人に諭されたものだった。その時は、「珍しいものを聴いた」というので納得しておいたのだが、今回はさすがにそんなことはない。耳馴染みはないけど、ニケとオケの作り出す音楽はいきいきしてる、と最初はご機嫌なままでした。しかし・・・この公演の印象を決定的にしたのは演出でした!陳腐でチープ。きわどい個所があるのもわかるけど、「そのままじゃありません?」というような映像が映し出され、そこまで視覚化されなくてもわかるわよ!と心の中で思いました。そして、現代日本へのムリヤリな読み替え(?)。この程度なら自分で連想しますってば、とやっぱりイライラしました。「アーサー王」という題材にも実は心ひかれていたのに、アーサー王はあまり活躍せずガッカリ。円卓の騎士も、王妃とランスロットのロマンスもナシ。(まあそれはそうだろうとは思ったけど。)プログラムの中で「美術館の中の絵のように」とニケが言っているけど、筋がなくてバラバラという意味だったんですね。。。総じて、ちょっと満足度は低めでした。
2010.02.27
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久々のオペラ。指揮:ロベルト・リッツィ=ブリニョーリ演出:白井 晃 オテロ:福井 敬 デズデモナ:大山亜紀子 イアーゴ:大島幾雄 エミーリア:金子美香 カッシオ:小原啓楼 ロデリーゴ:松村英行 ロドヴィーコ:小鉄和広 モンターノ:村林徹也 伝令:須山智文 合唱:二期会合唱団管弦楽:東京都交響楽団4階L2列め前方なのに舞台がよく見えたのは、右手に向かって床が斜めに高くなっている構造の装置だったからかも。おまけに前の席に座っている人がいませんでしたし。本来なら、ご機嫌・・・のはずでした。しかし、舞台寄りのバルコニー前方って、オケピの音がまっすぐ上がってくるんですね。最初はそんなの平気、と思いましたが、耳ざわりなほどの大音量で音源そのままの音が聞こえるというのも、すごくツライものでした。なんか音が雑に聞こえる。2階Rにいた知人は「そんなことない」と言ってたので、これは座席のせいでしょう。そもそもオペラで都響を聴くことがなかったので、慣れてなかったのかもしれない。評判はよかったこのプロダクションですが、私はやはり福井さんのオテロの‘なんか違う’感が最後まで払拭できませんでした。カラフやメフィストフェレスなら気にならない福井さんの声質が、どうしてもオテロに思えません。感情移入できなかったのはデズデモナもイアーゴも然り。大山さんは声は悪くないけどそれ以上でもなかったし、大島さんはあの悪者メイクでひいてしまったからかも。装置はなんか汎用性を感じさせ、それがどうもチープな気がしましたが、最初から人がよく動くので、さすが白井晃の演出と思いました。この盛り上がりに欠けた感想は、ひとえに自分が疲れていたからだろうとは思っています。。。
2010.02.20
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久々の新国立劇場。最近、チケットを持ってても行けないことが多かったもので。でも東京リング再演とあらば、私としては絶対にはずせません。【指 揮】ダン・エッティンガー【演 出】キース・ウォーナー【ジークフリート】クリスティアン・フランツ【ミーメ】ヴォルフガング・シュミット【さすらい人】ユッカ・ラジライネン【アルベリヒ】ユルゲン・リン【ファフナー】妻屋秀和【エルダ】シモーネ・シュレーダー【ブリュンヒルデ】イレーネ・テオリン【森の小鳥】安井陽子【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団6年前の初演後、映像でも観てなかったと思うのに、そんなに昔に観たという感じがしません。強烈な印象をずっと保っていたからか。それでもやはりまずは演出に気をとられて、その次に歌手に気が回り、ダン・エッティンガー&東フィルにまであまり注意を向けられませんでした。キース・ウォーナーの演出は情報量が多いので、初演時はあまりいろいろなことに気がつかず、後で他の方の指摘を聞いて「ああ、そうだったのか」と情報を補完していました。さすがに2回目になると、とんでもないインスタントな剣の鍛え方などをつぶさに見ることができました(笑)。2階正面という席は本当に舞台がよく見えるもので、さすらい人とジークフリートの一騎打ち(?)でさすらい人の槍が最初から折れていて、それを必死でつなげて持ち上げていたのは、周囲の客席でも皆気付いていて、ちょっと笑いを誘っていました。歌手も、つぶが揃っていました。今回はミーメのヴォルフガング・シュミットと、さすらい人のユッカ・ラジライネンが特に良かったと思う。立派(すぎるほど)な声と演技のミーメでしたし、の彼とタイマンを張るさすらい人にも迫力がありました。前2回では、ラジライネンが役の割には線が細いと思いましたが、今回は存在感を感じました。あ、そうそう出ずっぱりのタイトルロールのクリスチャン・フランツも調子が悪くありませんでした。まあ、いつもどおりにジークフリートを演じてくれたかな、と。ブリュンヒルデのイレーネ・テオリンも、迫力のある声と容姿でなかなか似合っていました。ダン・エッティンガーは、それほどエモーショナルな演奏をするというわけでもなさそうでした。全体的なテンポの遅さが、そう思わせているかもしれません。ただ・・第三幕はかなり熱を帯びてきて、‘青少年の性の目覚め’を激しく感じることができました。すっかりウォーナーのテイストにも慣れ、久々にそれなりのレベルでワーグナーが聴けたということで、まあまあ満足した1日でした。
2010.02.11
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最近はとても疲れてて、化粧も落とさず&コンタクトもはずさず・・・気付いたら朝になってることが時々ある。週末で気がゆるんだせいか、今日もそう。情けない。。。気を取り直して、前日に続けて銀座東劇へMETライブビューイングを観に行った。指揮:エド・デ・ワールト演出:ナサニエル・メリル出演:ルネ・フレミング(元帥夫人)スーザン・グラハム(オクタヴィアン)クリスティーネ・シェーファー(ゾフィー)クリスティン・ジグムンドソン(オックス男爵)トーマス・アレン(ファーニナル)METならではの豪華さと大味なところがあったけど、まあいいのではと思った。映像で観ているのでもあるし。ルネ・フレミングは庶民的で親しみやすい侯爵夫人。ドイツ語の発音はどうなんだろう?私には‘らしくない’と思えたのだけど。しかし、衣装映えはすばらしく、特に第三幕の薄紫のドレスなど、すごく似合っていた。スーザン・グラハムはちょっと声の調子が悪かったかも。しかし、第二幕冒頭の銀のばらとともに現れるところ(↓)は、貴公子然としてやっぱり圧巻。シェーファーのゾフィーが私的には一番しっくりこなかった。登場してすぐは、声に張りがなかったように思う。若々しくなかったというか。それに、顔がスクリーンにUPになると、かなり違和感のあったのも事実。悲しいけれど、やはり女性歌手はそれなりに対策がいるんじゃないかなあ。。。ジグムンドソンがいやらしいオックス男爵を好演していたが、インタビューで素顔を見て、知的でダンディなのにびっくり。であれば、オックス男爵は、貴族らしくもうちょっと粋でもいいのではないかと思った。ファーニナルはトーマス・アレンが演じてて、やっぱり上品で上手い。これはすごくもったいなかった!全編を通じて気になったのは、豪華でオーソドックスなセットの割に、歌手の立ち居振る舞いが現代的なこと。METだからだろうか。惜しい、と思った次第。
2010.01.30
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話題のMET《ホフマン物語》。もともと好きなオペラだし、銀座での上映最終日でもあるので、珍しく「NO残業宣言」を出して銀座東劇へ。指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:バートレット・シャー出演:ジョセフ・カレーハ(ホフマン)キャスリーン・キム(オランピア)アンナ・ネトレプコ(アントニア/ステラ)エカテリーナ・グバノヴァ(ジュリエッタ)アラン・ヘルド(リンドルフ、コッペリウス、ミラクル、ダッペルトゥット)ケイト・リンジー(ニクラウス/ミューズ)睡眠不足なので第一幕はボーッとしてしまった。でも・・・オランピアのキャスリーン・キムはよく通る声で、彼女の声で目が覚めた。拍手!!!アントニアのネトレプコは熱演。だけど・・・なんというか、ルチアのように気張られても、「唯一の主役じゃないんだから」とバランスが悪い気がしてしまう。声そのものが魅力的でない分、演技でカバーしている(とご本人は思ってないだろう。私がそう感じるだけ。)とも思えてしまうし。インタビュアーのデボラ・ヴォイトが、意図的かどうかはわからないけど、「すばらしい演技と歌」と幕間で誉めていた。「そうよね、まず演技に目が行くわよね!」と一人合点した。ジュリエッタのグバノヴァと悪役4役のヘルドはそれなり。ホフマンのカレーハは、私の記憶にある以前の歌唱よりかなりよかった。ニクラウスのリンジーは健闘していたけど、演出上での扱いがちょっとうっとおしいかも。舞台の豪華絢爛さを感じるけど、全体が見えるようで見えない。いつになくカメラワ-クにフラストレーションを感じたりもした。
2010.01.29
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銀座東劇で19時から上映。ライブビューイングは、いつもは週末であってもそれなりの入り。今日ははじめて、フロアにまんべんなく観客が座っている状態というのを見ました。フィギュア・スケートで有名になったあの曲の効果なのかしら???指揮:アンドリス・ネルソンス 演出:フランコ・ゼフィレッリ出演:マリア・グレギーナ(トゥーランドット)マリーナ・ポプラフスカヤ(リュー)マルチェッロ・ジョルダーニ(カラフ)サミュエル・レイミー(ティムール)チャールズ・アンソニー(皇帝)ゼフィレッリの演出は豪華で、大スクリーンで観ると圧倒的。それに大舞台なのに、細かい演技もちゃんと付いているところがいい。舞台上の大勢の人間が、一人ひとりちゃんと動いている。グレギーナとジョルダーニは「METでは初役」と言ってた。特にグレギーナはこのMETのプロダクションの前にバレンシア(と言ってたような・・・)でやっただけとか。トゥーランドットは金切り声になってしまう歌手が多い中、ことさらグレギーナが叫んでいたとも言えないけど、ちょっとグレギーナらしくない声に聞こえた。もっとも、声がどうのこうのというよりも「歌いたいから歌う」とグレギーナはインタビューで答えていたが。私はジョルダーニの声が苦手だったのだけど、カラフは悪くない。却って、彼の声の強靭さや甘さが強調されてよかったと思う。第三幕で「誰も寝てはならぬ」を歌うのに、その前の休憩にインタビューとはなかなかの自信だと思った。もちろんうまくいき、オケも彼のこのアリアの後はちょっと間をおいて、観客からのブラヴォや拍手を受け止めさせていました。今回の殊勲賞は、リューのマリーナ・ポプラフスカヤかな。一番情感豊か。この役、私は「カルメン」のミカエラと同じくらいすごくキライ(笑)なんだけど、珍しくその自己犠牲に涙しそうになりました。インタビューで興味深かったのは皇帝のC.アンソニーで、METの舞台に上がって50年(覚え違いでなければ)だとか。F.コレッリやレオンタイン・プライスの名前が出てくるところは、歴史を感じさせました。
2010.01.16
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今年はじめてのオペラ。お目当てはもちろんデジレ・ランカトーレでした。 アディーナ:デジレ・ランカトーレネモリーノ:ロベルト・イウリアーノベルコーレ:マリオ・カッシドゥルカマーラ:マッテオ・ペイローネジャンネッタ:ディアナ・ミアンベルガモ・ドニゼッテイ劇場管弦楽団/合唱団[指揮]ステファノ・モンタナーリ[演出]フランチェスコ・ベロットドニゼッテイは好きだけど、このオペラはあまり好きじゃない。子どもっぽい男性が「好きなあのコが自分のこと愛してくれないかな~」とうじうじしてて、お相手の女性はそれをわかってて引きずり回してる。最後にはハッピーエンドとはいえ、主役の男女の性格がどっちも好きじゃない(笑)。それはさておき、ランカトーレは幕が進むにつれて調子がよくなり、2幕の最後はなかなか聴かせました。高音も通るけれど、中音も柔らかく響き、以前より粗さがなくなった。彼女一人が圧倒的であることは事前予想と違わないが、ネモリーノのイウリアーノもまあ頑張っていた。「人知れぬ涙」は緊張したのか、それほど声が伸びてなかったと思うが。だが、何よりドゥルカマーラのペイローネがよかった。中欧のオペレッタ劇場のように歌って踊って演技するという活躍をしてくれて、あらゆるシーンが引き締まった。B級的な仕上がりでまずまずだったのだが、5階バルコニー席1列めで1万4千円という値段が、私的にはちょっと総合満足度を下げてるかな。
2010.01.09
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