神経ガイド分子セマフォリン3Aの新たな作用メカニズムを解明
2014年10月31日、横浜市立大学は、東京女子医大、横浜国立大学との共同研究により神経ガイド分子セマフォリン3Aがアクチン骨格を制御する分子機構を解明したと発表しました。
研究成果はNature communicationsに10月31日からオンライン版で公開されています。
神経ガイド分子は神経突起を導く誘引因子と遠ざける反発因子の2つに大きく分類されます。
反発因子の一つであるセマフォリン3A(Sema3A)は、神経の伸びを阻止します。
神経突起の先端には、成長円錐と呼ばれる動きに富む構造があります。成長円錐は神経ガイド分子を感知して神経突起が伸びる方向や速度を決めます。この運動には成長円錐内のアクチンなどの細胞骨格とよばれるタンパク質の急速な骨組みの変化が伴います。
CRMP1からアクチン骨格のコントロールに至る仕組みが不明でした。我々はその間をつなぐ分子を検索してアクチン結合蛋白質の一つであるフィラミンA(Filamin-A)が、CRMP1と結合してこれらのタンパク質の構造を大きく変えてアクチン骨格をコントロールしている事実を発見しました。
モデル生物の線虫を用いてCRMP1(線虫ではUNC-33)と相互作用する分子を検索し、アクチン結合蛋白質Filamin-1(脊椎動物ではFilamin-A)を見いだしました。
脊椎動物を用いた検討を行い、Filamin-AはCRMP1と結合することや、この相互作用がSema3A情報伝達に関わることを明らかにしました。
私たちは原子間力顕微鏡というナノサイズの分子を見ることのできる顕微鏡を用いてFilamin-Aの分子形態を観察し、CRMP1が結合すると形が大きく変わることを見いだしました。さらにSema3A刺激に伴いFilamin-AはCRMP1と複合体を形成してアクチン骨格から解離することを明らかにしました。
このためFilamin-Aによる架橋を失ったアクチン骨格は脆弱化し、崩壊すると推測されました。今回の研究によりSema3A反発作用の分子機構に、CRMP1とFilamin-Aを介したアクチン骨格制御が存在することが明らかになりました。
Sema3AやCRMP1は神経回路形成に関わるだけでなく、アルツハイマー病や神経損傷後の軸索再生を阻害する因子としても知られています。今回の研究においてCRMP1とFilamin-Aの相互作用部位を詳しく調べています。今後は2者の相互作用を抑制する薬物を見いだし、Sema3Aの反発や軸索阻害作用を打ち消して新たな治療薬の開発へと発展させていきたいと考えています。
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