アラ還の独り言

アラ還の独り言

2017年11月04日
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カテゴリ: 妄想
体内時計の研究がノーベル賞を取ったので、体内時計の研究がでてきて喜ばしい限りです。

私が日内変動に関して最初に直面したのはウラシルの代謝です。

フルオロウラシルの代謝に関して、分解系であるウラシル分解酵素の働きが夜に盛んになるという文献が20年以上前に出ました。

その頃のフルオロウラシルの使い方は24時間持続点滴法が主流でした。持続点滴しているのに血中濃度が変化することを見つけた人がいて、これは代謝酵素の日内変動によるものであろうということでした。

同時期にフルオロウラシルの分解阻害剤の研究が盛んに行われていました。その中で人間に使われていて、指標になっていたのが5-ブロモビニルウラシルでした。

その時に大事件が起こりました。ソリブジン事件です。ソリブジンは腸内細菌で分解されて5-ブロモウラシルになります。これは多分申請資料の中の代謝の項をみれば記載されていると思います。

ソリブジンは帯状疱疹に関して現在も使われているアシクロビルよりも少量で有効であることから非常に期待されていた薬剤ですが、基礎の段階でフルオロウラシルと併用すればフルオロウラシルの分解を止めて、有効性と毒性が一挙に増加することはフルオロウラシルの研究をしている人間にとっては当たり前のことでした。

しかも帯状疱疹は癌化学療法によって免疫が落ちたときによくでます。そして、その頃の化学療法はフルオロウラシルの経口剤や24時間持続点滴が有効である事が話題になっている時期でした。

そこで、フルオロウラシルを飲んでいる人にソリブジンを投与して、重篤な血液障害を起こし、死亡例が15例でました。これは治験中にも死亡例が発生ており、しっかりとデータを検討していれば避けられたかもしれない事件でした。しかも死亡例がでたということを知った日本商事の社員が、ソリブジンの発売で上昇した自社株を、高値で売り抜けたことでインサイダー取引でも逮捕されるという、前代未聞の薬害でした。

この薬害を受けて、申請資料、機構による審査過程、審議会の議事録が公開されるようになりました。

その後、イレッサという肺がんを対象とした薬剤での間質性肺炎での死亡例が問題となりましたが、これは薬害にとはよばれていません。審査過程で間質性肺炎の発現が因果関係は不明ですが、報告されていました。また、肺がんであれば効果の確認に肺のX戦やCTがある程度定期的に行われることから、間質性肺炎は比較的早期に発見されるはずでした。

しかし、マスコミが夢の薬のような報道を行ったことから、肺がん以外での使用が相次ぎ、子宮頸がんや大腸がんにも用いられたことから、間質性肺炎が見逃されて、死亡例が多発しました。しかし、公開されている資料をみれば、間質性肺炎だけではなく、他の重篤な副作用も発現しており、けっして「夢の薬」
ではありませんでした。

そのため、イレッサによる間質性肺炎に関しては厚生労働省と製造販売会社に責任がないことが最高裁で確定しています。つまり、薬害ではなく、使用した医者とマスコミの記事を鵜呑みに肺がん以外の患者でイレッサを使って下さいと要求した患者に問題があったということです。

患者さんの問題は今のようにインターネットは発達して折らず、新聞が「夢の新薬」とかけば使ってみたくなるので、新聞を始めとするマスコにも大きな責任があると思います。

成長因子の抗体医薬品がでるまでは、実は日本発の薬が海外で評価されて海外では標準治療、日本では使われないという変な事態が起こったことも思い出しました。その薬剤名はイリノテカンです。(イリノテカンの場合には黄色人種では重篤な下痢がでやすいという問題もあったことが後からの研究で分かりましたが)

現在も、マスコミでよく効くと言われる制がん剤がでてきます。高薬価が話題のオプジーボなどがその例でしょう。効果があるが高薬価というのがはやり言葉ですが、標準治療との比較試験では、特殊な人だけに効果がある事が分かりました。オプジーボの免疫回避抑制機能を必要としているがんには100人の患者を集めて、比較してみると50番目に死ぬ人の生存期間を3か月ぐらい延ばすことが分かっています。これを有効とするかどうかは医者と患者の哲学に基づくものであり、けっして、血液がんの寛解と言えるような状態が得られたわけではありませn。

制がん剤の効果をは先ほど述べたように、50番目に死んだ人の生存期間がどれぐらい延びているかで薬剤は評価されて、世に出てきます。実際には、2年たてば両薬剤とも全員が死亡していても効果があるということで、高薬価で承認されています。

2年生存率や5年生存率で薬剤の最終的な効果が検討できればいいのですが、この方法ではもしかした聞くかもしれない薬が世に出るのが遅れてしまいます。しかし、薬剤の再審査時までには8年あるので、その薬剤と発売時点の標準治療の比較試験を行い、再審査できちんと評価すべきだと思います。抗体医薬の場合には後発医薬品は規模は小さいとは言え、患者を用いた臨床試験が必要なことから、あまり薬価も安くできません。

2年生存率を有意に上昇させなければ薬価を大幅に切り下げればいいわけす。海外では短期間で死亡した場合に高薬価のものに対しては、製造販売会社に払い戻しを求める制度も試行的に行われています。





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最終更新日  2017年11月04日 21時41分07秒
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