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analog純文

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2025.03.09
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『沖で待つ』絲山秋子(文春文庫)

 わたくし、このお話は二度目の読書なんですね。
 前回読んだ時の読書報告もありまして、ちょっと読み直してみると、基本的にはこの度の私の感想と同じようなことを書いています。
 どう書いているかというと、まー、戸惑っているんですね。

 それは、作品がわからないから戸惑っているんじゃないんですね。分からないようなところはまるでありません。(そんな意味でいえば、分からないところがなさすぎるから戸惑うのだといったら、それは、まー、少しは合っているように思います。)
 はっきり書いてしまうと、この作品が芥川賞を受賞したことに戸惑っているんですね。なんでこの小説が芥川賞なの? と。

 ついでに先に書いておきますと、この小説(もう少し正確に書きますと、本文庫には3つのお話が収録されていて、そのうちの総タイトルにもなっている「沖で待つ」が芥川賞受賞作で、とりあえずこの小説)は、読んでいて軽快で心地よい、筆者の物語づくりや描写力のとっても達者さが感じられる、スマッシュヒットのような青春小説だと私は思ったんですね。

 ひさびさにウォームフルなお話を読んだなあ、と。
 でも、芥川賞って、本当に今までこんなお話を選んでいたの?
 こんなお話は、(短すぎるけど)選ぶなら直木賞じゃないの?……と、まー、戸惑ったというわけであります。

 しばらく考えたのですが、わたくし、反省いたしました。
 芥川賞云々はこの際関係ないことにしよう、そこに拘っていてもわからない。要は、この小説をどう読んだかの読書報告である、と。

 と、そうは考えたのですが、実は一回目の読書以降、わたくし同作家の別の作品を二つ読んだんですね。どちらも本ブログに報告していますが、『御社のチャラ男』『末裔』です。で、この二作は、(この度の読書で思い出して)いかにも芥川賞受賞作家の作品という感じがするじゃないか、と。

 しかし、まぁ、そんなことを言っても、例えば筒井康隆氏みたいな方もいらっしゃいますからねぇ。やはり芥川賞を取ったから(あるいは取ったのに)どうのこうのというのは(暇つぶしに考えたらそれなりに面白かったりはしますが)、やはり作品の本質としてはどうでもいいものなんだろうということにしておきます。

 というわけですが、そんな風に考えると、ちょっとくり返しになりますが、この「沖で待つ」は、私としてはさわやかファンタジー青春小説、ってところで、特に、ストーリーとして、とても小説的面白さがある(ハードディスクの壊し合い約束なんてのですね)作品でした。

 また、最後までうっとおしい展開(うっとおしい展開というのは、何というか、いかにも「純文学」的うっとおしい展開)にならずに読み終えることができて読後感のさわやかな、わたくし的には近年まれにみるという感じの、お話づくりのできる作家の作品だと思いました。

 さて、上記にあるように、本書には3つのお話が入っているのですが、最初にある「勤労感謝の日」という短編。本当は好みでいえば、私はこちらのほうが好きであります。

 「沖で待つ」と合わせてこの二作品、主人公は共に三十代後半くらいの女性勤労者という設定ですが、どちらもほぼ作者自身とかぶっているのか、巻末の解説文によると、1986年男女雇用機会均等法施行から4年目あたりの大卒総合職希望就職、となるそうです。
 作品はその時代の、つまりはバブル期真っ盛りの、いわば最前線のビジネスパーソンの実体の上に話を展開しています。

 読んでいて、私も驚いたのですが、なんかすごい古臭い感じがしました。なんか遥か昔の話のような感じがしました。
 これは作家のせいではなくて、いうならば、作品素材のせいでありましょう。
 24時間働くことのどこがおかしいの、と日本人みんなが思っていそうな時代の労働環境の雰囲気と、もっと即物的に言えば、おそらくスマホ(インターネット)のあるなしのせいでしょうか。ちょっとついていけないような古臭さを感じました。

 (これはついでの話ですが、このインターネットと同じような次の世界の画期的ゲームチェンジャーが、AI技術なんでしょうかね、まー、私はよく知りませんけれども―。)

 ただ、これも、小説という形態の特徴の一つで、1986年の労働風俗は古臭く感じても、明治の漱石の作品風俗は古臭く感じないというのは、多くの読者が実感するところであります。

 というわけで、ざっくり青春小説とまとめてしまいました。
 でも、同じ労働環境を描いて、より現代的課題に触れていると私も思う同作家の『御社のチャラ男』の原型が、なるほどここにあったのかと感じられたのは、2度目の読書のおかげでありました。

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Last updated  2025.03.09 11:38:59
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Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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