PR

コメント新着

masashi25 @ コメント失礼します☆ ブログ覗かせてもらいましたm(__)m もし…
美歩鈴 @ Re[1]:【アシュ千】 発熱 その3(終)(12/02) あやめのめさん  どうやって自分の感…
あやめのめ @ Re:【アシュ千】 発熱 その3(終)(12/02) アシュヴィンもっと素直にならないとダメ…
美歩鈴 @ Re[1]:【アシュ千】 発熱 その1(11/30) あやめのめさん  あやめのめさんが思…
あやめのめ @ Re:【アシュ千】 発熱 その1(11/30) 確かに、アシュが不機嫌になると一番の被…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2010年03月07日
XML
 友雅はふと、手にした杯を置いた。
 空にかかる十六夜の月が気にかかった。

(まったく……)

 小さな姫君という縁も得たのだから、そんな心配など無用のものだと思うのに、今夜のように月の明い夜は小さな不安がよぎる。

 春の朧に霞む月。乙女が空を割って落ちてきた。
 向こう側に、迎えの車が透けて見えはしないか。
 杞憂だと思うのに、目を凝らしてしまう。唇が名を呼ぶ。

「あかね……?」

 命婦ネコが心得顔ににゃあんと鳴いた。

「どうしたの? 命婦。」

 愛しい影。駆け寄り、抱きしめたいのを堪える。ふっと薄く笑い、また、杯を手に取った。
 にゃあんと鳴く声が得意げに響く。ご褒美だと顎の下をくすぐれば嬉しそうに身じろぎする。ごろごろと喉をならし、心地よさげ寝そべる。

 命婦に導かれて近づいてくる温もり。

「私を呼んだんじゃなかったの?」

 猫に向かって無邪気に伸びる手。抱き上げようとする手を友雅は逃さなかった。奪い取るように捉え、強く引き寄せれば、愛しい重みは膝の上に落ちる。乱れた袿で包み込んだ。不意をつかれた体が暴れる。強く抱きしめればそれは徐々に静まり、甘くとろけた瞳がじっと友雅を見つめる。幸福で胸がいっぱいになる。

「呼んだよ……」

 頬を近寄せ、口づける。求め合う唇は離れてもまた互いを探す。あかねの腕が友雅の頸に巻き付く。引き寄せ、引き寄せられ、飽くことなく互いを求め、求められ……。

「愛してる……」

 耳元に囁きこまれる愛の言葉。暖かく体を流れるものは、友雅の知らなかったもの。突き動かされるように更に固く抱きしめた。あかねの唇から小さなあえぎが漏れた。煽られる。狂おしいほどの口づけ。

「愛しているよ……」

 どこにもいかないで。ずっと、私のそばに……。


 あかねが、くすりと笑った。

「変な友雅さん。私の居場所はここなのに。」

 自ら懐深く潜り込んできた。細い腕が胴にまかれ、ぎゅっと抱きしめられる。愛される喜びが全身を駆けめぐる。満たされる。
 抱きしめ合い、溶け合ってしまうかに思えるほどの……陶酔。

「酔ってるの?」
「ああ……そうかもしれないね……。」


     ……君に。


 囁く声に耳元まで赤く染まる。可愛い、愛しい、何ものにも代え難いもの。


 傾く月に、梅の香が香る。
 神子はもう、月には帰らない……。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年03月07日 16時14分42秒
コメント(1) | コメントを書く
[遙かなる時空の中で] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


コメント失礼します☆  
ブログ覗かせてもらいましたm(__)m
もし差し支えなければ見に来て下さい♪
http://ameblo.jp/sapurimania/
マメ知識とかも書いてます!
http://sapuri.shop-pro.jp/
ちなみに愛用してるお店です☆
いつの間にか常連になってました(笑) (2010年03月18日 12時51分09秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: