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30日のNYMEX/WTIは、予想外の米ガソリン在庫減少を主因として4.58ドル上昇し、バレル当り126.77ドルとなった。ゴールドマンサックスが年末までにはWTI価格が149ドルになると予想したことも効いたようだ。これまでの経緯からしても大投資銀行がそのような予想をするのは勝手だが、投機資金は沸いた。ガソリン在庫の減少については、専門家の予想に反したということであるが、ガソリン需要が減少していれば当然のことだと思われる。製油所の生産計画も減少を見込んだものとなるだろう。むしろ、需給上では溜出油の在庫が増加していることに着目すべきであろう。因みにガソリン価格が4ドルを切ったことでドライバーのマインドが変わったのではないかとの推測もあったが、先週のガソリン需要は減少している。増えたという確証はない。まあ、そんなことである。以前に急落も落ち着いて見る必要があると書いたが、この急騰も落ち着いて見る必要がありそうだ。ICEブレントは127.10ドルと逆転現象は相変わらずである。
2008年07月31日
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29日のNYMEX/WTIは、米国の石油需要減退に嫌気をさしたファンド筋が資金を引き上げたことを主因として2.54ドル安のバレル当り122.19ドルとなった。ICEブレントは3.13ドル下げたものの122.71ドルに止まり、WTIを上回るという逆転現象が続いている。 アナリストの中には、今回の史上最高値からの大幅下落をタイトな需給ファンダメンタルズに変化があったからと見るのは単純であり、ファンド資金が引き上げ始めたからであると見るべきであるとの見解を述べているものがいる。もともと需給のファンダメンタルズがそれほどタイトではなかったと見ているものからすれば、何を戯言を言っているのだということになる。むしろ、その筋による「創られた供給不安という幻影」に資金が踊ったと糾弾するものからは、そのような見方があるから価格が上昇してしまったのだと糾弾されてもおかしくない。 しかし、少し下がって冷静に見てみると、両者ともに正しいと言える。 2004年以降の石油需給情勢を見れば、現実の需給のファンダメンタルズに問題が無いにも係わらず投機資金の流入などにより原油価格が異常な水準まで高騰してしまったと非難する後者は需給実績をつぶさにみればその限りにおいて正しい。需要が伸びると予想されるのに供給に不安があるとする先行き見通しをもとに供給不安を感じるというのであれば、前者が正しいということになる。ただし、この場合、そもそも見通しは見通しに過ぎないし、タイトな状況についての統一した見解が無いということを考えておかなければならない。更に、普通の需給見通しからすればこの供給不安はOPECからの安定した供給が望めないということが前提になる。OPECが主張しているようにOPECが安定的に供給を行なうとなれば、この論も絶対ではなくなる。要は前者の場合にはOPECの政策動向にその結論が左右されることになる。 この際、石油は無くなるというオイルピーク論は論外としておこう。オイルピーク論はそもそも石油生産がピークを迎える時期に関する理論であり、石油が有限な資源である以上、当然議論をし、冷静に考えなければならないことである。しかし、それはまだ市況に影響を与える段階ではないと考えるからである。
2008年07月30日
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28日のNYMEX/WTIは、ナイジェリア、イランというジオポリティックス要因の再登場で1.47ドル上昇して124.73ドルとなった。武装勢力がナイジェリアシェルのパイプラインを爆破したとするものであるが被害の状況は未だ定かではない。イラン問題ではアハメディネジャド大統領が核開発を進めていると発言したことを嫌ったことが懸念材料となったが、同時に米国との交渉については否定的な発言はしていない。ジオポリティックス要因の影響度はもう少しじっくりと見守る必要があろう。今の時期は、ハリケーンの動静が気にかかるところである。また、末端価格が下落して3ドル台となった米国のガソリン価格が需要期にどのような影響を出すのかも気になるところだ。他方、ICEブレントは1.32ドル高の125.84ドルとWTIを上回る逆転現象が続いている。
2008年07月29日
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心に残る風景として生憎デジカメに収めていないものもあるが、それは大体リゾート地であることが多い。マヨルカ(昔はマジョルカと言った)島もそうである。人からはコロンボの夕陽が一番だと聞いたことがある。それは、湾が西を向いているからというのが一つの理由だそうだ。マヨルカのパルマもそうだった。また、その入り江には、真っ白い砂浜が一面に広がっていて、青い空、青い海とのコントラストを鮮やかにしていた。この白砂は、海外のどこかから運ばれたものだとも聞いたが、とにかく美しかった。夕陽が落ちる時は、また、格別だった。夕陽が落ちてやがて暗闇となると、いきなり、通りを隔てたところにあったバーらしいところから若い男女が飛び出して来て、海に飛び込んだ。まだ宵の内だというのに奇声を上げていたのは既に酔っていたのだろうか。確か、二人とも全裸だったのを覚えている。そんなことを思い出したが、また、パリに戻ろう。この夕焼けも美しい。セーヌ川クルーズでたまたま私の好きなノートルダム寺院が見えたのでシャッターを切ったものだ。パリにはグレードなど様々な中華料理店が多いが、ここは庶民的な中華料理レストランだ。とりわけ、ここのウェートレス、主人が庶民的で暖かい人柄で救われる。料理は安くて上手い。ビールはもちろん青島ビールである。 庶民的なレストランだったので、シンガポールなどではごく普通にある私の好きな庶民的な鴨料理があるかもしれないと思って入ったのだが、メニューには無かった。それを、説明して注文してみたら、一生懸命に聞いてくれて特別に作ってくれたのがこれである。そうじゃない、ほらあのご飯の上に鴨肉を乗せているあれだよと言いたかったが、まあ、この方がフランスらしく洗練されているのかもしれないなどと思いとどまった。味は良かった。初めは庶民的レストランとは言っても、パリだなと落胆していたが、最後は大満足だった。何よりも、一生懸命に相談に乗ってくれた人柄が嬉しかった。 近頃都に流行るものではなくて、「近頃パリで流行るもの」はエセ日本料理店である。とにかくその数は多い。この店も看板は、赤坂とか広島とか(赤坂と広島では大違いだがお許し願いたい)なっていたが、料理内容はほぼ焼き鳥屋さん程度である。味は悪くはないし、日本酒も飲めるが、経営者、従業員ともに日本人がいないケースもある。因みに、この従業員は全て日本人ではない。このあいだ、日本政府が正統派日本料理を公認性にしたのも頷けるところがある。ただ、高いだけ高くて味もたいしたことのない日本料理店が多い中、安くて取り敢えずほっとできる店があることには救われることもある。要は、偽らず美味しい日本料理を提供そればそれで良いのだと思う。別に、私は、日本料理だからと言って日本人には拘らない。味が勝負だと思っている。その点、この店はまあまあ及第点だった。それに比べ、ウィーンにはひどいところがあった。店名は赤坂だったか広島だったかとにかく思わず引き込まれる名前で店構えもそれなりだった。しかし、もちろん、日本人はいなかったし、ラーメンなどは程度の悪い即席ラーメンをそのまま出しているのではないかと思われるようなところだった。「日本料理」を馬鹿にするなと言いたくなる。 最後に、口直しにフランスらしいところを一枚。パリから少し離れて恐縮だが、あの有名なモネの家にある、絵にも書かれた睡蓮の池の写真を一枚。ノルマンディーは本当にパリから近い。半日で行けるが帰りにパリのラッシュアワーと重なると悲劇である。パリに帰っているというのに、そこから解散までの時間が随分とかかって、お腹が空いてしまうはめになってしまう。馬鹿みたいである。
2008年07月27日
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25日のNYMEX/WTIは米経済の減速、需要低迷を主因として2.23ドル安のバレル当り123.26ドルとなった。ここのところの乱高下からすれば今日の低下幅は大幅とは言い難いが、異常な高価格という感覚を維持するために、今日のタイトルでは敢えて大幅低下という表現をとってみた。 これで、7月3日に記録した史上最高値、145.29ドルからは約22ドルも低下したことになる。ブレントは124.50ドルと相変わらずWTIを上回る異常な状態を保っている。 昨日米上院では、共和党が投機の行き過ぎ法案の成立に歯止めをかけた。投機家の取引数量を制限することを主目的としたこの法案は僅差で否決されたが、共和党の国内の石油生産を増加し省エネを推進しようという法案とともに、修正などを含め更に議論が続けられることになろう。ただ、民主党主導の議会では、ほぼ同時に下院で同種の法案が成立したし、上院でもこれまでに共和党を含め圧倒的多数で可決した投機の行き過ぎ防止法案も数多くあり、議会の流れは、投機の行き過ぎ抑制にあることには変わりがない。 米株式市場は、昨日、幾分上げたが、米経済の低迷、金融不安からすれば、安心出来る状態からはほど遠い。投機筋は、昨日の原油価格低下を見て「最後の救いだった商品もそうではなくなるかもしれない」と嘆いた。繰り返しになるが、これまで暴利を貪ったものに、そんなことで嘆いて欲しくない。先物市場を取り締まるCFTCはオランダのトレーダーを昨年3月に市場操作をしたとして告発した。議会での投機行き過ぎ防止法案などを「石油高価格のスケープゴート探し」と批判するアナリストもいるが、このような瑣末な告発こそが「スケープゴート探し」のお手本と言えるのではないか。きっと、大物はその陰でほくそえんでいることだろう。これをみて少しは反省、もしくは自制すれば、まだしも、そのようなことをするかは疑わしい。「スケープゴート」に惑わされてはいけない。「本丸」を攻撃すべきであろう。そうでなければ決して問題の解決にはならない。
2008年07月26日
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原油価格はドルで表示される。原油は、バレル当り何ドルということで国際的に取引されているからである。あなたの会社が産油国から原油を買おうとすれば、ドルを買ってそれで支払わなければならないのである。関係者、専門家の間では原油価格を話す時バレル当り何ドルで話が通じてしまう。NYMEXは米国にあるからそれで良いが、何で欧州の指標原油であるブレントまでドルで表示されなければならないのかと考える人が出てもおかしくはないが、それが決まりなのであるから仕方が無い。 これは、ドル価値の変動に悩まされてきたOPECが長年取り組んできた問題でもあった。OPECは、幾つかの通貨をバスケットにして決めようとか、SDRを使おうとか、随分議論されてきたが、結局、未だにドルから離れることは出来ていない。ここのところの、ユーロの強さに鑑み、ユーロ建てでという意見も有力になってきてはいるが、それを思い切るまでには至っていない。その一つの理由には、大産油国であるサウジアラビアがドルペッグであり、他通貨への切り替えに積極的ではなかったこともあげられるかもしれない。 6月15日には、ドルが対ユーロ最安値である1.6038を付けたとのことで、今後、議論が活発化するのではないかと思われる。それでは、ドル安の影響というのはどの程度のものなのであろうか。ユーロで考えてみよう。昨年9月末はドルが高く1.4150ドル程度だった。計算しやすく、それぞれ1.4ドルと1.6ドルとすれば、約14.3%の価値上昇ということになる。これも分かりやすく仮に1.4ドルの時に100ドル原油だったとしたら、現在価値は114.30ドルということになる。実際は昨年9月末には80ドル程度にしか過ぎなかったのでユーロから見た現在価値は91ドル強ということになる。ドル減価と言っても短期間で対比すればその程度のものに過ぎない。確かにドル安をヘッジするために原油に資金が流入したのであろうが、ドル減価を上回る収益を上げたことになるのではないだろうか。とても、ドル減価だけで150ドル原油を正当化することは出来ない。
2008年07月25日
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24日のNYMEX/WTIは1.05ドル高のバレル当り125.49ドルで終了した。市場筋からはようやく安定したとの見解も出されている。しかし、2004年以前であれば大幅上昇と言える1ドルを超える上昇も、これまで4ドルを超える乱高下を繰り返して来たので、確かに安定したとの表現が適切なように聞こえてくる。誠に不思議なものである。その点では、100ドルを超える原油価格も同様だ。125ドルと聞いても、150ドル近い価格水準を経験した後では、高いという感覚が出てこない。少しづつ感覚が麻痺して行っているようだ。麻痺しないのは、イカ釣り漁船など燃料価格高騰の影響を直接受ける人だけなのか。その点、昨日も書いたが、米議会の議員達は感覚が麻痺していないと言える。 原油価格が低迷していた時にはOPECの価格目標は25ドルだった。確かにそれは安かった。その時にOPEC側のオイルエコノミストは80ドルが合理的水準と主張したが、誰もそれが実現するとは思っていなかった。これが、OPECにとっての密やかな目標だったと言える。世界のオイルエコノミストは、OPECのそのような主張を無視していたが、その水準を超えると、驚くことに未だに世界経済の中に占める石油コストはそれほど高くは無いとして、何を思ったかインフレ調整すれば未だに過去の市場最高値を超えてはいないなどと主張した。この水準が103.76ドルとされた。しかし、この水準もOPECが増産決議をしなかった3月初めには超えた。そして、ようやく、オイルエコノミスト達は、現在の石油価格は高く世界経済に悪影響を与える、今は第三次石油危機にあると言ってよいと発言し始めたのである。 このような定見の無い人々が専門家に多い実情を見るにつけ、透徹した哲学、真実の声を発する人が世界に見られなくなったと嘆くべきなのだろうかと考えこんでしまう。
2008年07月25日
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23日のNYMEX/WTIは、米石油製品在庫の増大を主因として3.98ドル安のバレル当り124.44ドルとなった。限月が異なっているので直接対比は出来ないが、終値の最高値7月3日の145.29ドルからは20.85ドル安である。 基本的に需給情勢には変わりが無く、敢えてファンダメンタルズから変わったといえば、供給不安要因が多少減少したというくらいで、相変わらず現実の需給からは遊離した状態にあると言えよう。 このような状況は、米議会で盛んに行なわれている投機の行き過ぎに対する議論をより正当化させることになるのではないかと思われる。米議会では本格的な夏休み前に、石油価格問題に関する作業部会を開くなど異例の熱心さを示している。また、2008年投機行き過ぎ防止法案も圧倒的多数で上院を通過し、上院エネルギー資源委員会委員長はブッシュ大統領に対しこの法案の意義を解説し対処を求める親書を出した。 投機筋は、ますます「風が吹けば桶屋が儲かる理論」に頼らざるを得なくなってきている。
2008年07月24日
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22日のNYMEX/WTIは、ハリケーンに対する懸念が減少したことを主因として3.09ドル下落してバレル当り127.95ドルになった。これで8月限りの取引が終了し、明日23日からは9月限りとなる。因みに9月限りは3.4ドル安の128.42ドルで終了している。ICEブレントは3.52ドル安の129.09ドルとおかしな状況が続いている。 現段階でのハリケーン懸念はおかしいと昨日書いたが、その通りの展開となった。他の軟化要因としては、FRBフィラデルフィア議長が利上げを仄めかしたためのドル高があげられているが、既述の限月切り替えに伴う売りの影響もあったと思われる。 いずれにしても、市場筋では、これは修正に過ぎずハリケーンシーズンにある今は基本的に強気要因が残るとしているものが多い。確かにそうかもしれないが、現在は異常な高値にあるという認識が未だに出ないのは不思議でならない。市場筋はこんな調子だから、市場から価格崩壊が起きることは望めないのだろう。外部から相当のショックが無いといけないということか。それはいつ起きるのだろうか。世界経済全般に浸透している石油高値の影響は相当なものである。まともな経済アナリストの登場が待たれるが、基本的に経済的に優位な立場にいる人々にはピンと来ないことが多い。困ったことである。いつも、暴利の陰で困らせられるのは庶民なのである。自分達に関係の無いことなら良いが、そのつけを払わされるのではたまらない。まだ、「なぜ、儲けていけないのか」と嘯いた村上ファンドの方が罪がないと言えるのではなかろうか。こんな言い方をしてはいけないのだろうが、現在の石油先物市場はそうでも言いたくなるおかしな状況にある。
2008年07月23日
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21日のNYMEX/WTIは、ハリケーンに対する懸念を主因として、2.16ドル上昇してバレル当り131.04ドルとなった。また、案の上、ここでも触れたイランの核開発問題に進展が見られなかったことも効いたとのことである。ICEブレントは2.73ドル上昇して更にWTIに水を空け、132.92ドルとなった。ロンドンの抜け穴は相変わらずである。 先週、急落した相場に顔色を失った投機筋の中には、正直に130ドルを下回ると困ると白状するものも出た。これまでぼろ儲けしたものに、そんなことを言われてはこっちが困るが、そんな心情を反映した昨日のリカバリーにはほとほと困らせられる。そこで、イラン問題はともかく、ハリケーン懸念について一言触れておくこととする。 今回のハリケーンはドーリーという名前である。話は横道にそれるが、ハリケーンの名前は女性の名前をとり、アルファベット順で付けられる。ハリケーンの名前に女性の名をつけるというのは誠に米国らしい。米石油業界は、これまでハリケーン被害に悩まされて来たが、特に2004年のアイバン、2005年のカトリーナ、リタに大打撃を受けた。ニューオリンズの下町に壊滅的被害を与えたカトリーナの名前は、鮮明に耳に残っていることと思われる。従って、その名の示すとおりピークシーズンはまだまだこれからと言える。ここで再三書いて来たとおり要注意である。少なくとも9月中旬までは気を抜けない。 そうではあるが、今回のドーリーの進路は、取り敢えずメキシコの生産には影響を与えそうもない方向だし、メキシコ湾岸の主要な米石油施設を直撃する気配も無い。従って、現段階での今回の上昇には首を傾げざるを得ない。既述の投機家の言葉が想起されて仕方が無い。困った話である。まず、そのことを気に止めるべきだろうと思われる。それに、決してハリケーンの影響を軽視してはいけないが、米石油業界は上記アイバン、カトリーナ、リタの経験を十分に生かし、ソフト面、ハード面での改善を行なっていることも念頭に置く必要がある。沖合い生産施設、パイプラインのグレードアップ、緊急時対応マニュアルの改善、それにバックアップ設備の充実などなど、被害を最小限、短期間に食い止めるべく様々な対策を施した。しかし、物事に万全ということはないことも事実である。政府の緊急時対応も含めて、今年のハリケーン対策の効果が一段と注目される。特に、果たして投機を抑制することに繋がるのかどうかという点で注目されるのである。
2008年07月22日
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NYMEXの開場までにはまだ時間がかなりある。太陽がまだ日本の上空にあり、やがて西に去ると米国の空が朝焼けとなってくる。それでも、ニワトリが鳴くくらいで活動が本格的に始まるのには時間を要する。ましてや、終値となると明日の朝にカバーとならざるを得ない。 そんなことで、今度は、原油価格と天然ガス価格の関係について触れてみよう。異なるエネルギーの価格を正確に比較するには、様々な要因を勘案しなければならない。例えば、暖房についてみれば、その部屋の密閉度、使用機器のエネルギー効率等詳細に比較する必要があるだろう。ここでは、そのようなことをするつもりは無い。 皆が、関心を持ってみつめているNYMEXのWTIと天然ガス価格を簡単に比較してみよう。18日の両者の終値は、WTIがバレル当り128.88ドル、天然ガス価格が100万Btu当り10.570ドルであった。これを比較してみよう。 ここでバレルについては既によくご存知の筈であるから天然ガスの単位であるBtuについて説明しておこう。BtuとはBritish Thermal Unitの略で発熱量である。従って、WTIのバレル当り発熱量が分かれば、容易に同じ発熱量での価格が算出できることになる。WTIの発熱量は性状表を見れば詳細に判るであろうが、取り敢えず米エネルギー省エネルギー情報局が米国産原油の平均発熱量を5.8百万Btuとしているのでこれを引き合いに出すことにする。頭の良い、あるいはインド人のように二桁の暗算が出来る人はそうしても良いが、普通の人は、5.8ではなくバレル当り発熱量を6百万Btuと考えた方が計算易しくなる。そのようなアバウトなことでは嫌だという人もいるであろうが、6百万Btuとすれば、天然ガス価格を6倍すれば良いので、至って簡単である。私の暗算では63ドル強ということになる。天然ガス価格も計算しやすいように10.500ドルと丸めてしまったからである。否、四捨五入なら10.600ドルではないかという方はそれでも結構だ。そもそもWTIの場合米国の平均より発熱量が高いかもしれないし、まあ、どうでも良いことかもしれない。要は、圧倒的に現在の原油価格が天然ガス価格を上回っているということが分かればそれで良いと思う。因みに、より正確には天然ガスと競合しているのは一般家庭で天然ガスと暖房油を同時に使えるバーナー(デュアルバーナー)を有している家庭であり、それぞれを発熱量で厳密に比較する必要がある。まあ、しかし、その結果を見るまでもないだろう。天然ガスの競争力は圧倒的に高まっている。それでも天然ガス価格の推移に詳しい人に言わせれば今は高くなったと感じていることであろう。これまでのところ、ハリケーン被害のあった2005年夏から2006年初めにかけての異常事態を除き、天然ガスが8ドルというと高いなという感覚であった。その意味では、この水準でも原油価格暴騰の影響を受けていると言える。8ドルとすれば、これは原油価格では一体何ドルになるのだろうか。簡易計算をマスターした貴方は即座に48ドルと応えるはずである。そうなのだ。50ドル以下なのだ。 天然ガス市場はかってBPのトレーダーによる市場操作があったし、あのエンロン問題もあった。その後、石油よりは投機の影響が減じられている。それが全てではないとは思うが、今は、投機の影響を石油に比べれば受けていないと言えるのではないかと思われる。
2008年07月21日
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NYMEXで行なわれている取引をイメージするのはなかなか難しい。そこで、少々分かり難くしているその独特の単位、バレルから復習しておこう。1バレルは159リットルである。159リットルというのはちょっとした量である。まずは、それをしっかりとイメージしてみよう。 ミネラルウオーターのペットボトルの大きな方は1.5リットルである。角ばった2リットル入りのものもあるが、外国製のものを中心として1.5リットルが多い。1バレルというのは、このミネラルウオーターで106本ということになる。1.5リットルの場合には1ダース入りのダンボール箱があるが、それが8箱と後10本ということである。また、都会ではあまり灯油を使わなくなったからポリ容器を見る機会はあまりないかもしれないが、使っている人は、このポリ容器で考えてみるとピンとくることであろう。灯油のポリ容器は18リットルのものが多いから、159リットルを入れるには9個用意しなければならない。これが1バレルである。 NYMEXの最小取引単位は、1000バレルでこれを一枚という。以上の通り1バレルでさえ、多いのにその1000倍である。仮に実際自分の家で使おうと思ったら、大変である。気が遠くなるほど多い。まあ、腐るものではないのでとっておけるが保管場所の確保に悩むことになる。個人投資家はそれをイメージした方が良いと思われる。ミネラルウオーターが10万6000本、う~ん、買ってしまったら、夢でうなされそうだ。 ガソリンでイメージするとどうなるか。まず1バレルをイメージしてみよう。普通乗用車で大きなタンクが大体60リットルであろう。空にすることはないだろうから、SSに三回程度行くことを考えれば良い。個人の場合には、せいぜい月2回だろうから一月半分である。それの1000倍。1500ヶ月ということは、125年間か。孫の代まで使える量だ。その時にはそれこそ石油があることやらと普通は考えてしまう。 更に、NYMEXでは、凄い量の取引が行われている。例えば、18日の出来高を見てみると、期近ものだけで約38万枚であった。これは3億8000万バレルであるから、一日の世界の消費量の約4.4倍である。米国では国会議員が先物市場の取引を実際使用するものに限定しようなどと言い出すのはこのような現実があるからである。因みに全米の石油消費量は約2000万バレルだから、19倍の出来高ということになる。米国の一流経済誌のジャーナリストの中には先物市場の暴走について投機とはそのようなものだ、やがて市場がすべて解決してくれるなどと言っているものもいるが、本当にそんな感覚で放置して良いものだろうかと訝しく思われて仕方が無いのだが・・・
2008年07月20日
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4日間連続で下げたNYMEX/WTIは、閉場後も30セント程度下げバレル当り128.50ドル程度となっている。 明日21日の開場後、5日間連続で下げることになるのかどうか注目される。イランの核開発問題については、米国も加わって話し合いが行なわれたものの、十分な成果が上がったということではないようだ。投機筋は、ブラジルの新たなスト予告とともに、これを梃子にしてくるものと思われるが一体どうなるか。 さて、休場で一息ついたので、ここで少し詳しくなって恐縮だが、これまで何回か触れてきた乱高下の話を少し整理しておきたい。以前、4ドル以上の変化が9回、短期間のサイクルで10ドル以上が8回と書いたが、ちょっとややこしかったことと思う。本人は分かったつもりで書いていたが、少し補足すればこういうことである。 4ドル以上の変化とは、日々の変化である。これは前日比であるから分かりやすい。 分かりにくいのは「短期間のサイクル」である。これを具体的に示せば分かりやすくなる。 まず、今年に入ってからの大きな上下動を全部示せば次の通り11回である。この中には小刻みな上下動はあるが、大きな流れとして下記の通り捉えられる。1.1月2日から1月23日にかけて12.63ドル下落2.1月23日から3月13日にかけて23.34ドル上昇3.3月13日から4月1日にかけて9.35ドル下落4.4月1日から4月22日にかけて18.39ドル上昇5.4月22日から5月1日にかけて6.85ドル下落6.5月1日から5月21日にかけて20.65ドル上昇7.5月21日から6月4日にかけて10.87ドル下落8.6月4日から6月6日にかけて16.24ドル上昇9.6月6日から6月10日にかけて7.23ドル下落10.6月10日から7月7日にかけて13.98ドル上昇11.7月7日から7月18日にかけて16.41ドル下落 この内、10ドルを超すものが見た通り8回もあったということである。 乱高下とは、英語でVolatilityが高いと称され、高価格とともに問題とされているものであり、価格水準では産油国、消費国でそれぞれ思惑があり、絶対水準は定まらないが、このような乱高下については、産油国、消費国ともに避けたいと思っている。ここが先物市場で投機を行なうプレーヤーと大きく異なる点である。困ったことに、彼等にすれば、激しい値動きは、ぼろ儲けのチャンスなのである。
2008年07月20日
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18日のNYMEX/WTIは、2007年12月以来の4日間連続の下落で41セント安のバレル当り128.88ドルとなった。これで下落幅は計16.30ドルとなった。今月3日の最高値からの下落幅は16.41ドルである。この下落は、基本的には米国経済の先行き懸念、世界的な石油需要低迷(米国の石油需要減少、世界石油需要見通しの下方修正)、ナイジェリア、イランの緊張緩和から来たものとされているが、ようやくサウジの増産分の影響が出始めたと見る人も出てきた。そうだとすれば、ジェッダエネルギー会合まで開催したサウジのイニシアティブが実を結びつつあるということで大変結構なことだ。また、これはドイツ銀行のアナリスト・ジーメンスキーの言ったことでもあった。彼は、ジェッダ会合直後にサウジの増産分が市場に着くまでには時間がかかるものであり、すぐに効果が出るというものではないとしていた。他には、ブッシュ政権の発表した沖合い開発の推進も効いたという人もいる。人様々であるが、私は単に投機筋が資金を引き上げ始めたからだと見ている。投機資金は、他の金融商品に魅力が無いから石油市場に流入していたわけであり、逆も真なりかもしれないが、他市場での損失が激しいので、それをカバーするために利益を確定したかったのだと見られないこともないのでないかということである。 ただ、米国経済の低迷には強い懸念を持っている。90年代後半は開発途上国並みの成長を遂げた米国経済には、それが石油需要の急伸にも繋がったことから強い懸念というか、憤りに近いものまで感じていたが、目下の低迷は、金融政策の破綻、経済低迷、インフレの昂進により、いわゆるスタグフレーションという状況となっており、逆の懸念を持たざるを得なくなっている。長引くイラク戦争、経常赤字、ドル安と不安は多い。原油高価格を放置してきた責任は大きいのではないかと思われる。かっての幾多の大帝国は戦争による大出費、財政破綻で衰退したケースが多かった。米国はそうなっていないだけ、救われてきたわけであり、その意味では大変な国である。今のうちにインフレ対策などの方向転換をした方が良いのではないだろうか。米政府にはその気になれば原油価格を左右する力があると思っている。 ところで、早速、あのゴールドマンサックスのアナリストは、石油需給は相変わらずタイトで何かが起これば原油価格は上昇するという環境には変わりが無いと近々の再上昇を顧客に訴えているが、2004年以降、実際の需給には関係のないところで乱高下してきたので、私には大変空々しく聞こえる。ただ、そういうことであるから、大量の資金が戻ってくれば上昇してしまうことも事実である。CFTCは、昨日、当業者、投機の区分けを一部修正したと発表したが、投機の行き過ぎを抑制するためには議会における議論の進展、立法が必要であり、それは一歩前進と思われるものの未だ道遠しとの感が強い。
2008年07月19日
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17日のNYMEX/WTIは、米国経済の先行き懸念を主因として、前日比5.31ドル安のバレル当り129.29ドルになった。これで、三日間連続、計15.89ドルの大幅下落で7月3日に記録した最高値からは丁度16ドルの下落となる。この下落幅は、今年1月に経験した12.63ドルを上回るものである。 今年は10ドルを上回る乱高下のサイクルを8回も経験しており、先行き見通しの不透感を増している。また、大幅に下落したとは言え、今年の最安値は1月23日に記録した86.99ドルであり、まだまだ異常に高い水準が続いている。 投機筋は、ハリケーン被害に期待しているが、確かにハリケーンシーズンはまだまだ続くので注意が必要と思われるものの、2005年のカトリーナ、リタによる大被害の教訓に学んだものも多いことに留意すべきだろうと思われる。また、新たなジオポリティックス要因の発生に期待を寄せているようだ。アンテナを張ってくれるのはそれなりに結構なことだが、誠に困った人達である。
2008年07月18日
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16日のNYMEX/WTIは、予想外の米石油在庫増を主因として前日に続く大暴落で4.14ドル安のバレル当り134.60ドルになった。繰り返しになるが、NYMEX創設以来、4ドルを超える値動きがあったのは、原油価格が高騰を始めた2004年以前では湾岸危機に絡んだ時しかなかったのである。今年は、既に、これで9回目である。高価格も異常なことではあるが、このような乱高下も異常なことなのである。乱高下があると、上手く立ち回れば、投機でぼろ儲けが出来る。値動きが少なくては、利幅が少ないのは当然のことである。価格が安定することが投機の利益と相反するというのは、誠に困った宿命である。二日間で10.58ドル安も驚きであるが、今月7日、8日も二日間で9.25ドルの下落を記録している。 ICEブレントは、2.56ドル安の136.19ドルに止まっており、またまたWTIと逆転した。今回は、米石油在庫増を主因としたが、米石油需要の減退にも注目すべきであろう。米石油需要は、今年に入って1月以降、毎月前年同月を下回って推移してきており(1月~4月までは確報、以降は速報)、終に上半期(1月~6月)では、対前年同期比3.3%減となった。総需要量も日量2002.4万バレルと辛うじて2000万バレルを維持している状況である。特に主力製品であるガソリンが908.2万バレルと低迷していることが注目される。
2008年07月17日
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15日のNYMEX/WTIは、主にバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の景気の現状報告、先行き見通しに嫌気をさして、6.44ドル下落、バレル当り138.74ドルとなった。この下落幅はNYMEX史上二番目の大きさだった。最大は、1991年1月17日の10.56ドルである。湾岸危機で急騰した原油価格を抑制するために米政府がSPR(戦略石油備蓄)の放出を発表したための急落であったが、この時は、32ドルから21.44ドルまで一気に下がった。率にすると33%と昨日の下落幅4.4%を大幅に上回る。なお、昨日最安値は9.26ドル安の135.92ドルであった。高値が146.73ドルであったから一日の値動きは10.81ドルとなった。ここのところ、値動きが激しいが、昨日は、特に激しい値動きであった。 他の弱気要因には、OPECが昨日公表した石油市場報告で今年の石油需要見通しを更に日量10万バレル下方修正したことも入っているが、これは米エネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)、IEA(国際エネルギー機関)に続くもので特に新しいというものではない。ただ、石油需要減退という弱気要因を確認することに貢献したことは事実である。ナイジェリ・シェブロンが武装勢力により破壊されたパイプラインを復旧したこと、同シェルがフォースマジュール(不可抗力による契約義務の免除)を解除したことも弱気要因であった。また、昨日も、ペトロブラス(ブラジル国営石油会社)経営者側がストの影響による供給減をカバーしたと紹介したが、更に、「ストの影響は無く、正常の生産である」と発表したことも寄与した。しかし、この最後の件については、このようなことが2004年以降何度となく起きて、原油価格を一時的に引き上げては、その後下落させてきたことを思い出さざるを得ない。しかるべき筋から、早めに正確な情報、あるいは冷静な対応を促す情報が流されるべきではなかったのかと残念に思われてならない。
2008年07月16日
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週明けのNYMEX/WTIは、ペトロブラス労組(ブラジル国営石油会社)が5日間のストに入ったことを受け、10セント高のバレル当り145.18ドルになった。トレーダー達の強気ムードに変化はない。他方、ICEブレントは57セント低下し、143.92ドルとなった。当のペトロブラス経営側は、その後、既にストに入った生産分の幾つかはカバーしたと発表している。 相次ぐジオポリティックス要因、ハリケーン被害に対する懸念などを払拭するためには、国民を納得させる米政府の思い切った政策の発表が必要だろうが、自由市場、市場に解決を委ね、放任しているブッシュ政権からそのような対策が発表されるわけもない。せいぜい、沖合い開発の促進、北極野生生物保護区の開放を訴えるくらいがせきのやまだろう。既に、米国では夏休みモードに入っており、ハリケーンシーズンの終わる秋まで根本的な解決策は先送りになりそうだ。誠に困った状況である。 ここで、最近頻繁に触れている「エンロンの抜け穴」について簡単に紹介しておこう。 「エンロンの抜け穴」とは、具体的には、2000年12月にクリントン大統領が署名した商品先物市場改革法(Commodities Futures Modernization Act of 2000)に係わるもので、特定の取引を政府の規制対象から外したものである。法的に詳細に入ると説明が難しくなるので、それは専門家に任すとして、次にエンロン事件を内側から描いた書籍から一節を抜書きする。極めて分かりやすいし、普通にはこれで十分と思われる。 「1992年、レイ*はテキサス選出上院議員のフィル・グラム**の再選委員会の会長を務めて、上院金融委員長として力を持つ彼のために尽くした。・・中略・・その翌年の一月、フィル・グラムの妻ウェンディは、コモディティ先物取引委員会の会長として、エネルギー・ディリバティブやその関連のスワップ類を政府の監督対象から外した。これによってエンロンが高利益事業として力を入れていたトレーディングー単純にガスを売買するのではなく、ガスの市況に基づいて金融取引をすることーが、全く規制なしに行なえることになった。」(「エンロン内部告発者」82ページ ミミシュワルツ、シャロンワトキンス著 酒井泰介訳 ダイヤモンド社2003年10月30日刊)文中の*、**は私の付した注である。*ケネス(ケン)・レイ、当時エンロンCEO(最高経営責任者)**共和党、現在、マケイン次期大統領候補の経済アドバイザー
2008年07月15日
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ロンドンはドル高を受けて原油価格が142ドル台まで低下したようだ。WTIもつられて142ドル台となったようだが、その後143ドル台まで上昇したとのことだ。ところで、ブラウン英首相が月曜日の記者会見でヤラデュア・ナイジェリア大統領に対し、英国がいつでも油田地帯の安定に寄与する用意があると伝えたことを明らかにしたとのことだ。前は、武装勢力がこれに反発して英国の施設を攻撃すると発表して原油価格を引き上げてしまった。普通の感覚では、内政干渉にならない限り、大変結構なことだとなるのだが・・・さて。 NYMEXはまだ開いていないし、終値は明日の朝フォローということになるので、今日は、ウィーンの心温まるレストランを紹介することにした。 ウィーンにはまるでトンカツのような料理がある。日本を離れているとトンカツが懐かしくてつい食べたくなってしまう。これがそのトンカツである。パン粉がないけど味はトンカツそっくりだ。チーズ、ホイリゲで白ワインも良いが、これもお勧めだ。そこに大変ウィーンにしてはめずらしい愛想の良い看板娘?がいた。無事、トンカツが注文できたのは彼女が根気よく注文を聞いてくれたからだった。私は大変な寒がりだと言ったら、表に出る時に気の良いマスターが強いリキュールを一杯サービスしてくれた。ウィーンの冬は寒い。気を使ってくれたのが嬉しかった。看板娘とともに人柄の良さで持っているようなレストランだった。暗がりだったせいでちょっとボケているのが残念。是非また行ってみたいものだ。
2008年07月14日
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NYMEXという言葉が世界的に著名となった。原油が150ドル近くなり、世界中がその動向に関心を持つようになったからである。既に、NYMEX/WTIがそのように注目される理由については述べた。ここでは、NYMEXとは何かそしてそれに連れて引き合いに出されるICEとは何かについてその歴史的経緯などを簡単に触れてみよう。 NYMEXは、今を去る135年前の1872年に設立された歴史と伝統のある先物取引所である。最初は、当時混乱していた乳製品の販売に秩序と標準化を齎すために乳製品の取引業者が集まってバター、チーズ取引所として発足した。その後、取引商品の拡大に連れ、10年後の1882年に現在の名称へと変更された。そのような長い歴史を持った取引所ではあるが、これに先立つ1730年(享保15年)には大阪堂島の米取引所が幕府により公認され、先物取引を開始している。世界的にはこの堂島の米取引所が先物取引の発祥とされている。ちょっと話が横道にそれてしまった(笑い)が、NYMEXに戻ると、NYMEXと石油との係わりは比較的新しい。 1973年に暖房油が上場されたのが嚆矢である。当時米国では石油産業が全般的に規制されていたため、現物の受渡しは価格規制の及ばないロッテルダムで行われていた。1978年に暖房油の規制が撤廃されると暖房油先物の受渡場所がニューヨークに移り、取引高も次第に増加して行った(NYMEXのサイトで、この1978年に石油取引が開始されたと紹介されているのはこの時点を指したものと思われる)。1981年には有鉛ガソリン先物、1984年には無鉛ガソリンが上場された。WTIは1983年に上場され、1985年頃から世界の原油取引の価格指標として幅広く採用されるようになった。WTI先物はその価格指標性が高まるにつれて取引高も急増して行き今日に至ったわけである。 ICEの前身はIPE(国際石油取引所)であるが、ロンドンにあったことからロンドン国際石油取引と言われることもあった。より長い歴史を持つロッテルダム市場(OTC=相対取引中心のスポット市場)とともに欧州における石油取引の中心の一つであった。IPEには1981年に軽油先物がまず上場された。1983年11月にはブレント先物が上場されたが取引は停滞気味であった。それが、取引条件の変更(現物受渡physical deliveryから現金決済cash settlementへの変更)が行なわれた1988年6月以降、急成長を遂げた。このIPEは2001年4月30日、米国のインターネットを使用した石油取引の会社であるIntercontinental Exchange(ICE; 2000年5月設立)の買収を受け入れると発表した。これを受け、ICE側は、最新のインターネット取引環境を使用してIPEの流動性を高めるべく検討し、2000年6月にはICEを傘下に入れ、名称もICE futureと改めた。2005年4月には伝統的な立会い取引を閉鎖して完全にインターネットを利用した取引のみに限定している。その取引端末は米国内にもあり、これが米国の規制を受けないことからロンドンの抜け穴(エンロンの抜け穴をもじったもの)として先般米議会で問題にされたわけである。 今日、その圧倒的な取引数量、取引高から世界に君臨するようになった両取引所も、その発展過程は順風満帆というわけでもなかった。NYMEXにおいては、2000年5月から中東高硫黄原油(オマーン、ドバイ)も上場されたが、その後上場が廃止された。2001年4月からはブレント原油先物が上場されたが取引量は一向に増えなかった。その後、eNYMEXで、ドバイ原油を上場したが、これも結局失敗に終わった。ただし、これは、現在のDME(ドバイ商業取引所)への参加という形で実を結ぶことになる。米国ではこのDMEにおける規制も監視しようとの動きにあることは既に述べた。IPEではもっと失敗が多かった。1990年9月ドバイ原油先物、1991年4月ナフサ先物、1992年1月ガソリン先物が上場されたが、1992年5月にはナフサ先物、同年11月にはドバイ原油先物の上場が廃止された。1996年10月には重油先物が上場されたが、1991年10月には上場が廃止された。 この簡単な歴史からも今日の論点が浮き彫りになる。先物取引所の光と影、prosとconsである。また、それは哲学的には資本主義の是非とも一致する。簡単に言えば、自由は必須であるものの、行過ぎた自由は問題であり全体の福祉に逆行することもあるということである。特に、上記現物決済という制約を取り去ったために取引量が急速に増えたという点は、注目すべきところである。これは、必ず買った商品を引き取るという条件を付した場合には投機が完全に抑制される傍ら取引所の活性を殺ぐことになるのである。簡単に言えば、石油を実際使用するものに取引が限定されることになるわけで、一大論点になる。結局、石油は他の商品とどう異なるのか、世界の経済、福祉を考えた場合に石油を先物として取扱うのが良いのか悪いのかという議論にも繋がってくる。やはり、最後は、自由とは、適度な規制とは何かに議論が集中することになるのではないか。
2008年07月13日
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11日のNYMEX/WTIは3.43ドル上昇してバレル当り145.08ドルとなった。ブラジル国営石油会社のスト問題、ドル安などもこの上昇の要因とされているが、要は、多量の資金が先物市場に流入したためである。一時は、日中最高値を更新する147.27ドルまで上昇したが、その後、投機家達の利益確定の売りもあり、結局、今週は、7月3日に記録した終値ベースの最高値145.29ドルを目前にして終了した。ICEブレントは、147.50ドルの日中最高値を記録したものの、終値はWTIを下回る144.49ドルで終了した。 ゴールドマンサックスなど大投資銀行のロビー活動が活発化してきていることもあり、米議会は夏休みなどとっている暇は無い筈と思ってはみても、そうはいかないのも事実である。ここは一つ、選出区に戻っての議員達のキャンペーンの高まり、精気を養った後のより集中した議論、効果的な立法に期待したいものだ。石油、穀物価格の高騰は庶民の生活を直撃するので、投機の行き過ぎを特定し、投機を抑制する方向が望ましい。勿論、健全な先物市場は維持されるべきであろうが、今後のOPECシェアの高まり、主としてOPEC地域での紛争、政争、混乱を考慮すれば、どのような形なら健全さを維持できるのかを、各国首脳は真剣に考えるべきだろうと思われる。NYMEXを抱える米国の適切な対応が望まれるが、何度も触れる通り、ゴールドマンサックス出身の財務長官を擁するブッシュ政権には多くを期待できない。DOE/EIAはブッシュ政権そのものであるし、IEAも大投資銀行の息がかかっているようだ。低下したとは言え米政権のG8を始めとする所謂西側の政府、諸機関に対する影響力は強い。そう考えると、政府にはあまり期待できないとうことか。一体どうすれば良いのだ。誠に困った状況にある。そう認識した方が良い。
2008年07月12日
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10日のNYMEX/WTIは史上2番目の上げ幅である5.6ドルを記録してバレル当り141.65ドルへと急騰した。5ドル以上の急騰は今年に入ってから5度目のことであり、今年は2005年9月に記録した4.39ドルの急騰を上回る値上がりを他に2回経験しており、未曽有の急騰を計7回記録したことになる。昨日は、開場以来、それまでの下落ムードで推移していたが、閉場間際で一気に上昇したとのことである。主因は、英国が武力介入するとの報道に反発したナイジェリア武装勢力が休戦を止め、英国関連施設に対する攻撃を行なうと発表したこととされている。加えて、またまた皮肉なことにIEAの需給タイト見通しの発表が高騰に寄与してしまった。商いが薄い中での投機家の影響がいかに大きいかが再認識された。また、ここのところICEブレントはWTIより高く相場を引き上げる役割を演じている。因みに、昨日のICEブレントは142.03ドルであった。 米国では大投資銀行、投機家のロビー活動が活発になり、米議会の投機抑制の動きを牽制するという危険な動きが高まってきている。少なくとも、今は、大投資銀行、投機家はこれまで通りの「自由な活動」を続けられる。こんな時は、目下の価格暴騰は投機のせいではなく、需給タイトのせいだと唱える、多くのオイルアナリスト、学者達は、自説を信ずるばかりに結局価格高騰を招く結果になっていることに留意すべきであろう。昨日の高騰にはOECD諸国の民間石油在庫が低水準となったことも効いたとのことであるが、OECD諸国の石油需要は米を中心に減退しているとのことである。そのような中在庫の積み増しが行なわれる筈もないし、余計な在庫を持たないというのが経営の鉄則である筈だ。発表する際には、そのような説明も必要であろう。そんなことはないと思うが、万一、石油供給に懸念が生ずるような場合にはそのために積上げている政府の戦略石油備蓄を放出すれば良いことである。その意味で私は「専門馬鹿」には気をつけなければならないと思うのだがいかがなものであろうか。投機を支援する意図的な発表は論外である。
2008年07月11日
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9日のNYMEX/WTIは前日の1セント高、バレル当り136.05ドルとなった。開場直後は、イランのミサイル訓練、予想以上の米原油在庫減などを受け、2ドル近く上昇したが、ナイジェリア・シェルの復旧、フォースマジュール解除などにより、結局、前日比横ばいで終了した。その後、135ドル程度となったようであるが、昨日、一昨日のような大幅下落とはなっていない。ゴールドマンサックス出身者を財務長官に持つブッシュ政権が主のG8では投機抑制問題には大した成果を上げられる筈もなく、その米国では、目下、米ガソリンシーズン入り直前でハリケーンシーズンでもあり、そんなところかもしれない。誠に困ったものである。
2008年07月10日
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前回に続き、食べ歩きを少し紹介したい。ドイツのビール、ソーセージ、ウィーンのワインなども記憶に残るが、何と言っても欧州の二大グルメ地、パリ、ブラッセル(ベルギー)のレストランは出色である。パリのフランス料理には圧倒されるが、ここでは、一風変わった北アフリカ料理のレストランの一こまを掲載する。パリはさすがに国際都市である。カルチェラタンにはこんなところもあった。勿論、クスクスも出る。 愛想の良い店員さんもいた。アフリカからやってきたのか、あるいは植民地時代につれてこられた人の子孫か。アラビックなポットが目をひいた。 所変わって、ブラッセルの食物横丁には、ベルギー王室御用のレストランがあった。王室御用とは言ってもここは庶民的で行き易い。お勧めはムール貝である。量が多く、美味しい。何しろバケツに一杯でるのだから凄い。
2008年07月09日
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8日のNYMEX/WTIは、昨日に続き大幅に下落、前日比5.33ドル安のバレル当り136.04ドルとなった。これは絶対額で見た場合、史上2番目の暴落となる。史上最大は、湾岸戦争が始まった1991年1月17日に記録した10.56ドルの暴落であった。この時は、32ドルから21.44ドルへの下落だった。原油価格が130ドルを超えている現在とは比較にならないほど大幅な下落だが、5ドル台の下落は、他には、1983年4月以来の長いNYMEXの歴史の中で1990年10月22日しかない。 原油価格が大暴騰した今年は価格の上下動が特に激しい。今年は4ドル台の下落を6回も経験したが、4ドル台の下落は他には1990年の8月と11月にあったきりである。逆の暴騰について言えば、5ドル台の暴騰は、4回全て今年に記録されたもので他には例を見ない。また、6月6日には10ドルを超える暴騰があったが、これは未曽有の出来事であった。 各方面に多大な影響を及ぼしているこの大暴騰、大変動、現実の石油需給から遊離した異常な高価格水準はそろそろ終焉となって欲しいものだ。バブルが弾けると大損をする人も出るだろうが、傷口を少しでも小さくするためには早めの大暴落が望ましいのだが・・・
2008年07月09日
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7日のNYMEX/WTIは、ドルの上昇、イラン絡みの緊張緩和、ハリケーンの懸念解消を主因として6月19日以降最大の下げ幅である3.92ドルを記録しバレル当り141.37ドルとなった。しかし、上下動の激しい相場展開であることには変わりが無い。投機筋は、150ドル台への早期の上昇を期待している。比較的穏やかで石油市場を熟知しているドイツ銀行のジーメンスキーでさえ12月限りWTIが150ドルになる確率は2週間前の41%から51%へと上昇したと発言しているようだ。彼の発言は大投資銀行、投機家の発言よりは傾聴に値する。 しかし、何が起きようが、どうなろうが決しておかしくはない。それは、需給のファンダメンタルズが現在の高価格水準をサポートするものではないと考えられるからだ。しかし、それも危機管理体制不在、自由放任主義の世界では、ハリケーン被害、イランを始めとするOPEC強硬派の発言、はたまたイスラエルのイラン攻撃発言などによる供給懸念にはたちまち圧倒されてしまう。ヤマニ元石油相の言うように、それが論理的とはとても思えないが、イスラエルがイランを攻撃するようなことがあれば、直ちに200ドルへと上昇することであろう。そのようなことがなくても、ちょっとしたことで、ジーメンスキーの言うように150ドルを超える可能性は高い。他方、常識的にはドライビングシーズンが終わり、ハリケーンも収束に向かう9月には原油価格が弱含みになる筈である。イラク、ナイジェリアの石油生産が回復すればそれに拍車をかけることになる。そのような場合に大投資銀行、投機家は一体どう対処しようとするのであろうか。興味ある展開である。
2008年07月08日
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今日もまだNYMEXは開いていないので、昔とった写真を覗いてみた。このシリーズでは、風景を紹介しているのであるが、今回は、印象に残った料理を掲載させてもらうことにした。格好良く言うとグルメであるが、何のことはない、その土地土地の郷土料理、変わったレストランを次から次へと訪れただけである。中でも何度も訪れることになったのはここである。それはオランダのハーグにあるオランダ料理レストランだ。どうしてそうなったのかとつらつら考えてみると、勿論美味しいということはあるが、ハーグの場合、他にはこれと言った行きたいところがなかったせいもあるのではないかと思っている。オランダ料理は、スープに特色があり、家庭料理もそれが中心とのことである。ヨーロッパでは美味しい家庭料理を食べたければオランダ女性を嫁にしろといわれている所以である。また、このレストランの魚が美味しい。ハーグならここと言いたい。 これは表の看板であるが、いかにもヨーロッパらしい風情がある。 ハイネケンの看板も見えるが、ビールはオランダの看板かもしれない。とにかく種類が多い。皆美味しい。また、グラスも良い。お伽の国にいるような気もしてくる。あたりをみるとまるでカンパリのような鮮やかな赤い色をしたビールがあった。試しに飲んでみたが、美味しかったものの、甘くてちょっとついていけなかった。女性好みとのことであった。
2008年07月07日
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明日からの洞爺湖サミットを前に福田首相はブッシュ米大統領と会談をするとのことだ。大問題山積であろうが、特に高原油価格対策への積極的な対応を望みたい。しかし、これまでの経緯、背景からすれば、あまり多くを望めないとも言える。 一つは、鍵を握る行過ぎた投機の抑制については、米財務長官があのゴールドマンサックス出身であること、EUも含めてここのところ、急に投機糾弾の手が緩みつつあることである。消費国としてのスタンスは供給タイトを齎しているOPECに増産を求める方向に移っている。ジェッダ会合、世界石油会議もそうであったが、その中では、立場の異なる産油国と消費国という構図が再現され、いやますます対立が深まってきているとも言えそうだ。OPEC内もサウジ、クウェート対その他産油国、得にアフリカなどの強硬派、という対立の構図が見えてきている。対話の時代に対立の激化という皮肉な結果なのである。サミットではそんなことに気が付いて、高原油価格に対する短期的対策を打ち出すことは可能だろうか。 恐らく、開場では、むしろG8外の中国などから高原油価格への対策が要求されるかもしれない。そんな時に、G8は、高値はお前のせいだなどとは考えずに、謙虚に対策を検討して欲しいものだ。 まあ、しかし、せいぜい高値を認識しつつ省エネなど長期的対策、これまで通りおきまりのJODIによる市場の透明化を訴えるのがせきのやまだろう。誠に困ったことだ。 温暖化対策に対する「前向き」な取組は大変結構だが、超長期の政策目標、削減目標にも合意出来ない状況には唖然とさせられる。その点、米次期大統領候補はいずれも相当の政策を携えており、来年からは相当に変わる可能性がありそうだ。
2008年07月06日
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4日のNYMEXは独立記念日で休場であった。ただし、ロンドンは開いていた。しかし、ここのところロンドンの抜け穴ICEの活動が活発でニューヨークをリードしたのではないかと既に触れたが、休みになってみるとやはりNYMEXの存在の大きさが感じられた。基本的に商いが薄いのである。 そんな中、ロンドンは揺れた。イランが核疑惑解消に向けて前向きな姿勢を示したことがその大きな要因だそうだ。これで中東不安が和らいだとの判断で、ICEブレントは1.66ドル下がってバレル当り144.42ドルとなった。因みに、ICE/WTIも1.44ドル下がって143.85ドルとなったが、これは参考値と考えた方が良さそうだ。 また、テクニカルチャート中心の分析によれば、強気一辺倒で数日中には150ドルになるとの話も出ている。そんな分析は勝手にやってくれと言いたいが、見過ごせないのが今風になった。誠に困ったものである。それで資金が大量に流入して原油価格が吊り上げられたのでは堪らない。しかも、それらの資金が投機家、大投資銀行のもので無いとすれば、米議会の批判の主流となっていて今後立法化される可能性の高い、行き過ぎ投機抑制法案の効き目も限定されてしまう。まあ、それでも平和であれば良いが、それが結果的に全ての原油価格、石油製品価格の上昇に繋がっていることを考えれば良しとして見過ごすことは出来ないだろう。また、一般的に最後に泣きを見るのは個人投資家のケースが多いが、そんなことにならなければ良いがと憂慮している。 いずれにしても、週明けの市場を待たなければならない。そんなことで、本日は少しゆっくりできている。そうなったので、ぼんやり考えてみると、昔、海外調査をしていた時に驚かされたことを思い出した。海外調査には文献調査と現地調査があるが、当時は文献調査には限界があり、現地調査にすぐるものはなかった。まさに「百聞は一見に如かず」の世界であった。それで、現地調査を実施するのであるが、その際、当然のことながら訪問先を決め、アポをとることになる。最も肝心なことが相手のスケジュールを尊重することである。そして、初めて夏休みの随分長いことに驚かされたのである。日本ではようやく土曜日が休みになるなどと喜んでいたが、夏休みはせいぜい1週間それもまとめてとることは難しかった。それなのに米国は7月後半には休みに入って9月までは避けた方が良いということだった。日本では大体年度に入ってからプロジェクトを動かすわけだから、夏休み前にアポをとるためには急がなければならない。ただ訪問するわけではないから、準備におおわらわになった。懐かしい思い出だ。 投機抑制法案が圧倒的多数で米下院を通過して上院に回されたものの、すぐに独立記念日がらみで6月28日から7月6日までの9日間がお休みになった。夏休みは8月9日から9月7日までである。勿論、これを夏休みとは言わずに選挙区(州)に戻って活動としているが、実質は夏休みである。しかし、その他の国民からすれば、短い方であるから、それでも良しとしなければならない。まあ、こう考えれば、米国は、豊かなゆとりを持った国でなないかと思われる。本格的活動は秋からと考えた方が良い。
2008年07月05日
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3日のNYMEX/WTIは、これと言った需給上の要因も無く1.72ドル上昇して、バレル当り145.29ドルとなり史上最高値を更新した。閉場後には145.85ドルの値が付き、さらに史上最高値が更新された。このような異常な高騰の背景には、やはり、ここで再三問題として触れたIEAの中期見通しの影響が感じられる。しかし、それにしても米原油在庫減少など既に織り込み済みの要因ばかりの中で、ドルも回復したのに解せない。すべて、投機のなせる業だ。また、相変わらずロンドンの抜け穴ICEブレントはWTIを上回る1.82ドルの上昇で、更にWTIに水をあけ、146.08ドルとなった。時差の関係で先に市場の開く、より規制の緩いロンドンがニューヨークをリードしたことは明らかだ。これも米議会で散々議論した通りのことで、米下院では抜け穴解消法案を圧倒的多数で可決し既に上院に送ったことは既に紹介した。 株安など他の金融商品に魅力がないためというのも2004年以来言い古されたことだ。ブッシュ政権の政策不在というよりも、容認の姿勢には民主党主体の米議会から非難の声が上がっている。その議会も独立記念日でお休みだし、そろそろ夏休みで心もとない。世界の消費者の悲鳴が聞こえてくる。誠に困った展開となった。 一方、米国内の石油製品小売業者からは今のままではSSを閉じなければならないという悲鳴が上がっている。そのような彼等に対してさえ、トータルな石油産業として高原油価格でぼろ儲けをしているのではないかとの批判が出ているという。これには彼等は憤然としている。当然のことだ。コストが上昇して収益は激減しているどころか存続の危機にあるというのが彼等の大半の声だからだ。クレジット社会の米国ではSSでもカードを使う客が多い。小売業界のクレジット会社への支払いも過度の負担になっているようだ。なんと、最近では、現金払いには値引きするなど現金支払いを増やそうとするSSも急増しているとのことだ。一体、誰がぼろ儲けをして世界の多くの人を困らせているのか?真剣に考えて欲しい段階にあると思われるのだが・・・
2008年07月04日
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2日のNYMEX/WTIは、予想を上回る原油在庫取り崩しなどを主因として2.60ドル上昇し、バレル当り143.57ドルとなった。連日の史上最高値更新は、IEAの発表の影響の大きさを検証した形ともなった。なお、日中最高値も144.15ドルと史上最高値を更新した。また、ICEブレントが3.59ドル吹き上がり、144.26ドルとなって再びWTIを上回った。ロンドンの抜け穴を再認識させる結果となった。 米国の石油需要が大きく減少しており、特に主力の輸送用燃料の減退は予想を上回る減少となっていることからすれば、原油在庫を増やしたくないというのは経営戦略上、極めて当然のことである。全てそのようなもので、解釈、論理というのは勝手なものと考えなければならない。オイルエコノミストは、供給が減少すれば価格が上昇するという極めて常識的な論理を展開するが、価格が上昇すれば需要は減退するというこれまた極めて常識的な論理には口を閉ざす。そんな発表が国際会議で通用してしまうようでは困りものと思われるがいかがなものだろうか? イスラエルのイラン攻撃については、米国防総省幹部の発言に様々な意図が読み取れると昨日書いたが、イスラエルの側にも同国内の選挙対策という意味合いが読み取れる。イランは、単にそれに対して強硬派らしい発言をすれば良い。それだけで、原油価格は上昇してしまう。 誠に困った構図である。過去二つの石油危機もそうだったが、危機管理対策の重要性、難しさを思い知らさる。過去の石油危機は本当に供給断絶となった。しかし、それ以上に、懸念が制御不能なほど高まって必要異常な価格高騰を招いたことも事実である。まあ、パニックというのはそういうものかもしれない。もっと前の米騒動もそうだった。情報の取り扱いの重要性を再認識せざるを得ない。さらに、今は、かっこ良く言えばニューエコノミーの旗手たる投機家、大投資銀行がそれを煽る構図となっていることが庶民にとっては悲劇的である。
2008年07月03日
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7月1日のNYMEX/WTIは需給タイトが続くとのIEAの中期石油需給見通しの発表、イスラエルがイランを攻撃する危険性が高まっているとの米国防総省幹部の発言を受け、前日比97セント上昇して140.97ドルとなり、終値ベースでの史上最高値を更新した。日中最高値は143.33ドルに止まり、6月30日に記録した143.67ドルには及ばなかった。 イスラエルがイランを攻撃する危険性が高まったとする米国防総省高官の発言には様々な意図が読み取れるが、IEAの中期石油需給見通しの発表にはその市場に与える影響を考慮しないお粗末さしか感じない。否、お粗末で済まされない大問題があるような気がする。 IEAは緊急時対応機関である。その発表の市場に与える影響を考慮しながら、発表内容、発表の仕方を考えるなどの慎重さが欲しいのではないだろうか。おまけに原油価格高騰の真の理由は需給タイトによるなどとのコメントを見ると呆れてしまう。米議会で徹底的に攻撃されているブッシュ政権、DOE/EIA、CFTCを援護しているのではないかとでも勘ぐりたくなってします。考え過ぎかもしれないが、IEAのトップは日本人がとっているものの、次席は米政権出身者であり、IEA事務局内部でのその影響力は強い。また、IEAマフィアには投機、投資と係わりの深いアナリストも多い。そのようなことが全く関係無い発表となれば、IEAのオイルアナリストがファンダメンタリストの一人としての心情を吐露しただけということになり、「真面目馬鹿」のそしりも免れないだろう。繰り返しになるが、緊急時対応機関として情報管理に気を付けなければならないIEAとしては、そのような心情を、目下、原油価格が史上最高値を更新し、米議会において投機抑制が民主党を中心として真面目に論議されている中で、何のチェックもなく発表させたとすれば、その存在意義上大問題だろうと思われる。 因みに、IEAは従来から月次石油市場報告、2年に一度大幅改正を行なう長期見通しを発表してきており、両者とも著名であり、世界的な権威となっている。この中期見通しは、この両者の間を埋めるものとして各界からの要望を入れ、3年前から始まったばかりのものである。試行錯誤で始まったわけであるが、徐々に定着しつつある。中期見通しは、その影響力からして策定発表するには相当の勇気がいることが、短期、長期があって中期の見通しが存在しなかった理由と推定されるが、策定、公表を思い切った以上、そのような経緯からしても、もともとその発表内容、仕方にはそれなりの慎重な扱いが必要なものである。
2008年07月02日
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6月30日のNYMEX/WTIはここ数日間の展開を改め先週末比21セント安のバレル当り140ドル丁度へと低下した。ロンドンの価格暴騰により一時は143.67ドルまで上昇し、日中の史上最高値を更新したものの、米国における石油需要減退を懸念して下落に転じたとされている。 なお、ICEブレントは、一時は143.91ドルとWTIを上回る記録を残したが、終値では139.83ドルとなり、ようやくWTIを下回った。 米国では、下院民主党を中心に投機抑制法案の成立に向け動きが活発であるが、今度は共和党、民主党を含む9人の上院議院が、上院民主党、共和党の各リーダーに対し上院内に危機的状況を打破するためのエネルギー政策を検討する超党派の緊急会合を開催するよう要請した。ただ、民主党内の急進派は、ブッシュ政権が投機抑制法案に反対で石油価格高騰を黙認しているとの批判を展開しており、今後、方法論の対立も予想され、そのような会合が実現するかどうか不透明である。
2008年07月01日
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