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「カリオストロの城」 1979年 日本映画監督 宮崎 駿 作画監督 大塚康生声の出演 島本須美 山田康雄 小林清志 井上真樹夫 増山江威子 納谷悟朗 なんかアメリカ映画ばかり紹介してきたので、たまには日本映画をということで、一番好きな日本映画を紹介します。といっても、大変有名な作品なので、あらすじとかは書きません。 皆さんご存知、ルパン三世シリーズの劇場版第二弾です。仕掛けやアクションがたっぷりな作品ですが、何といっても、一番いいのは、ヒロインのカリオストロ公国王女クラリスです。控えめで、おとなしそうな美少女ですが、時には、車を奪って逃走したり、敵の銃の前で盾になったり、シンがしっかりした気丈な子です。それでいて、礼儀や感謝の気持ちを表すことは忘れない子です。まさに「可憐だ。」の一言です。ちょっと思いこみが激しすぎて泥棒になろうとしたところはいけません。お嬢様育ちなので、少し世間知らずなのはしょうがないですが、泥棒の「おじさま」に惚れてはいけません。しかし、このクラリスこそ、ジブリのヒロインの原型なのです。 そう、この映画は紛れもなく、ジブリ作品です。というか、「ハイジ」や「コナン」(名探偵ではない)や「ホームズ」や「パンダコパンダ」と並ぶ、ジブリ以前の宮崎作品の最高傑作なのです。 しっかり者の美少女のヒロイン(クラリス)と、その願いをかなえるために奮闘するヒーロー(ルパン)という、宮崎作品の典型の図式がここにもあるのです。(「ナウシカ」と「千と千尋」は、ヒーローに当たる男の子がちょっと弱くて、ヒロインが自分で奮闘してしまいます。)ルパンは、コナンやトトロやパズーやアシタカやハウルと同じようにヒロインを守るために戦うのです。一番似ているのは「天空の城ラピュタ」です。悪役と結婚させられそうになるヒロイン、その結婚には国の再建がかかっていて、ヒーローが仲間(今回は銭形も含む)と共にそれを阻止する、といったところです。「ルパン三世」のファンがこの作品に違和感を感じるのはそこでしょう。 ところで、「ルパン三世」のアニメは、4種類あります。大人向けアニメの最初のTVシリーズ(通称旧ルパン)、アクション色の強い第2.3のTVシリーズ(通称新ルパン)、SF系アクション大作のカリオストロ以外の映画・TVシリーズ、そして、宮崎映画の「カリオストロの城」の4つです。そもそも「ルパン三世」は大人向けアニメでした。なんと放送時間は夜の10時半です。確か日曜日だったと記憶しています。だから主題歌が渋いんですね。原作は青年誌の「漫画アクション」掲載ですから当然です。ちなみに、「クレヨンしんちゃん」も同じく「漫画アクション」掲載です。もともと大人向け漫画ですから、下ネタ満載なのも納得です。 余談ですが、「アニマックス」の「新ルパン」のCMは、「狙った獲物は逃さない…」というような宣伝文句で紹介していますが、「旧ルパン」を知っている人は、「あれ???」と思いますよね。まあ、「新」だからいいか。
2011.07.31
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「ランボー」 First Blood 1982年 アメリカ映画監督 テッド・コッチェフ主演 シルヴェスター・スタローン ベトナム帰還兵の悲哀を描いた反戦映画です。ヒットが今一つだったせいで、続編からは単純な戦争アクション映画に変わっているようです。(だから僕は観ていません)しかし、この第1作は、スタローン主演ですから、アクション色が強いですが、「ディアハンター」や「タクシードライバー」と並べて評されるべきベトナム反戦映画です。(深みがだいぶ違いますけど) ベトナム帰還兵のジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)は、戦友を訪ね、ある田舎町にやってきますが、戦友はベトナムでの科学弾の後遺症で、がんで亡くなっていた。途方にくれ、とりあえず食事でもしようと町をうろついていると、保安官に声をかけられます。保安官は、反抗的な態度をとるランボーを逮捕します。 警察署でランボーは、差別的な扱いを受け、ベトナムでの拷問シーンがフラッシュバックし、暴力をふるって、逃げ出し、山にこもってしまいます。 保安官は、州兵も駆り出し、山狩りをします。その中で、ヘリコプターに乗り出した狙撃手が、ランボーの攻撃により、転落して死んでしまうという不幸な事故もあったが、ランボーは追手を常に1対1で攻撃し、傷つけるだけで、決して殺すことはなく退けていきます。ランボーは元グリーンベレーの優秀な隊員でした。保安官は、連絡を受け駆けつけた元上官の忠告にも耳を貸さず、引き上げることをしません。 旧炭鉱にこもったランボーに対し、山狩り隊は、州兵のロケット砲で入り口を壊し、やっつけたと思い引き上げます。 別の入り口から旧炭鉱を抜け出したランボーは、軍のトラックを奪い、街へ戻ってきます。ガソリンスタンドと銃砲店を爆破し、保安官事務所の周りの電柱を攻撃し停電させ、事務所に忍び込みます。保安官を傷つけ倒したところで、やってきた元上官になだめられ、やっとランボーは投降するのです。 元グリーンベレーのランボー、その戦いは見事です。山の中では、草木に隠れて敵に近づき、1対1で殺さずに確実に倒していき、旧炭鉱の中では、閉じ込められてもあわてず、捕まえたイノシシの肉を食らい、たいまつを巧みに作り、別の出口をさがして脱出し、市街戦では、目標の周りをまず停電させ、敵の自由を奪ってから攻撃する、まさに戦いのプロフェッショナルです。演じるスタローンも、水を得た魚のように上手なアクションです。しかし、この映画では、珍しく長ぜりふを話すスタローンに出会えます。説得に来た元上官に、ベトナムから帰ってから、いかにつらかったかを語り、号泣します。うまくはないですが、言いたいことは十分に伝わります。ここら辺が、ただのアクションものと違うところです。反戦映画だったのです。 ところで、元グリーンベレーの隊長のたびたびの忠告を聞き入れず、無謀な攻撃を続ける保安官には腹が立ちます。でも、こういう人って、実は身近によくいます。自分の価値観でしか物事を判断できず、人の意見には耳を貸さず、自分の意見に意固地になり、とことん失敗するまで反省しない。ダメな上司の見本のような人ですね。
2011.07.30
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「太陽の帝国」 Empire of the Sun 1987年 アメリカ映画監督 スティーヴン・スピルバーグ出演 クリスチャン・ベール ジョン・マルコヴィッチ 伊武雅刀 片岡孝太郎 ガッツ石松 山田隆夫 第2次世界大戦を描いた戦争映画ですが、戦闘シーンはほとんど出てきません。それは、子どもが主人公だからです。子役時代のクリスチャン・ベール扮するジェイミーが、両親とはぐれ、捕虜収容所でたくましく生きていく姿を描いた感動作です。 ジェイミーはお坊ちゃんでした。使用人や運転手に囲まれ、日中戦争のさなか仮装パーティーに参加し、人ごみの中を自動車で避難するようなお金持ちのお坊ちゃんでした。ゼロ戦にあこがれ、「日本軍に入ってゼロ戦に乗る」なんてことを平気で言うお坊ちゃんでした。そんなお坊ちゃんが、両親とはぐれ、不良アメリカ人のベイシー(ジョン・マルコヴィッチ)の使いっ走りをして、捕虜収容所で暮らす中で、成長していくのです。 そんなジェイミーを演じるクリスチャン・ベールがいいんです。見事に成長していく少年を演じきっています。心なしか、映画の最初と最後では、身長も伸びているように思えます。(撮影に何年かかかって本当に伸びているのかもしれませんが。) 印象に残っているのは、収容所に隣接している日本軍基地の飛行場から、特攻隊の兵士が3人出陣式をしているのを見送るシーン。金網越しにジェイミーは、直立不動で敬礼し、美しいボーイソプラノで賛美歌を歌います。特攻隊の意味までは理解してはいないと思いますが、敵でありながら、その敬虔な雰囲気に思わずとった行動でしょう。 その次のシーン、飛び立ったゼロ戦は、空中で爆発します。その直後、連合軍の爆撃機が数機飛んできて、日本軍を攻撃します。基地は爆撃され、壊滅状態です。結局、その後日本軍は撤退していくわけですが、そんな中、興奮状態で叫びまわるジェイミーだが、勉強を教えてもらっていたイギリス人の医師になだめられ、ふと我に返ると泣き出します。「パパとママの顔が思い出せない……」。興奮状態が収まり現実にもどり、彼なりに収容所生活の終わりを自覚したのでしょうか。思わず涙してしまう名シーンです。 そして、最後の両親と再会するシーン。両親とはぐれてしまった子供たちの集団の中にジェイミーはいます。対面するのは、自分の子を探している親たち、一人、また一人と、見つかり抱き合っていく中、ジェイミーは暗い顔で、ボーとした表情です。お父さんが横を通ってもわかりません。(お父さんにがっかり)お母さんに呼ばれ、やっと気づくのです。(お母さんも半信半疑)2人は抱き合いますが、ジェイミーに笑顔も涙もありません。わずかに安堵の表情を見せますが、何か、明後日の方を見つめています。ジェイミーにとっては、お金持ちのお坊ちゃんの生活よりも、活気があって生き生きしていた収容所の生活の方が楽しかったのかもしれません。両親との再会はうれしいんだが、今後のことを思うと不安を感じずにはいられない、といった微妙な表情です。やられましたね、この顔には。 この少年が成長し、苦悩する正義の味方や、反乱軍の頼もしいリーダーや、不眠に悩む狂気の男や、キレキレのボクシングトレーラーを見事に演じるようになるのです。子役から上手に成長し、演技派の役者になっていくのを見るのはうれしい限りです。あとはジョディ・フォスターぐらいですかね。テイタム・オニール(大好きでした)や、ブルック・シールズや、「ホーム・アローン」の子(名前忘れた)は、どうしたんでしょうか。「ジュマンジ」を見た後、「スパイダーマン」を見たときはちょっとうれしかったです。 この映画、日本人の役者もたくさん出ています。伊武雅刀は、日本軍軍曹で、収容所の所長(?)という重要な役で、日本の軍人らしい重厚な演技を見せています。片岡孝太郎は、ジェイミーと心通わせる若い兵士の役で、いい味を出しています。ガッツ石松(OK牧場)と山田隆夫(座布団運び)も兵士の役で、ちょっと出ています。三遊亭円楽(楽太郎)によると、山田隆夫は、いまだにハリウッド映画に出たことを自慢しているようです。困ったものです。 しかし、ひとつわからないことがあります。それは題名です。「太陽の帝国」って、日の丸(日章旗の方かな)の国、つまり日本のことですよね。日本軍が中心じゃないんだけど。
2011.07.29
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「ガープの世界」 The World According to Garp 1982年 アメリカ映画監督 ジョージ・ロイ・ヒル主演 ロビン・ウィリアムズ ジョン・アーヴィングのベストセラー小説の映画化ということですが、僕は不勉強で、小説については全く知りませんでした。いい映画だという評判は知っていたので、見てみました。確かに、暗くなりがちなテーマをジョージ・ロイ・ヒル監督(「明日に向かって撃て」「スティング」)の軽快な演出と、ロビン・ウィリアムの笑顔で、明るい家族愛に満ちたお話に仕上がっていました。ネタばれは承知で、あらすじを。 看護婦のジェニーは、抱いている赤ん坊を見て不思議がる両親に語ります。子どもはほしいけど結婚は嫌だから、瀕死の兵士に自分からまたがってできた子だ、と。父親の顔は知らないけど名前はわかるから、この子はS.T.ガープ(三等曹長ガープ)よ、と。 高校生になったガープ(ロビン・ウィリアムズ)は、読書好きの少女ヘレンと出会います。ヘレンに作家と結婚するのが夢と聞かされ、ガープは作家を目指します。ジェニーも看護婦をやめ本を書くと言い出し、2人はニューヨークへ引っ越します。ジェニーのシングルマザーの半生を描いた本はベストセラーになり、ガープも作家デビューしたことで、ヘレンと結婚します。 ガープ夫妻が、長男のダンカンを連れ、一人暮らししているジェニーを訪ねると、多くの女性と暮らしていました。ジェニーの本に共感したフェミニストの女性が集まってくるのです。その中の性転換した元フットボールの選手ロバータとは仲良くなり、その後も家族ぐるみでいろいろとお世話になります。ガープは筆談で話す奇妙な女性たちが気になります。それは、男に襲われ舌を切られた女性エレンを支援するため、自ら舌を切った女性たちでした。 次男ウォルトも生まれ、ガープの本もベストセラーになり、幸せな一家でしたが、大学の教壇に立っているヘレンは、教え子のマイケルと不倫をしてしまうのです。同じ教え子の女の子の手紙でそのことを知ったガープは、2人の息子を連れ、家を出、夜になっても帰りません。真っ暗の家に帰ってきたヘレンは、置手紙を見て、別れようとマイケルに電話しますが、車で家にやって来たマイケルの口車にのせられ、車の中で、いやらしいことをさせられます。どうにも気の収まらないガープは、家に電話するが出ないので、急いで息子たちを連れて帰りますが、勢いよく家の駐車場に入っていくと、そこにはマイケルの車があったのです。 事故でウォルトを亡くし、ダンカンは片目を失い、ガープもヘレンもけがをし、マイケルは大事なところをなくしました。一家は、ジェニーの家で静養しますが、関係はギクシャクしています。ジェニーの説得もあり、体の傷がいえたころ夫婦は仲直りします。 3人目の女の子も生まれたころ、ガープはエレンのことを本にします。自ら舌を切って抗議する女性たちをやめさせたかったのです。一方、ジェニーはフェミニストの旗手として、女性知事候補の演説会で応援演説に立ちます。しかし、その場で男性の銃弾に倒れます。ジェニーの葬儀は、その支援者たちの力で、男子禁制で行われ、息子であるガープはやむなく女装で参加しますが、見つかり追い出されます。その時、手を貸して逃してくれたのが、ガープの本に感謝しているエレンでした。 最愛の母を亡くしたガープですが、ロバータの友情や、家族の愛に支えられ立ち直り、ヘレンの父の跡を継ぎ、母校でレスリングのコーチを始めました。その練習中、突如乱入してきた、フェミニストで母の葬儀にもいた、幼馴染の女性プーの銃弾に倒れます。練習を見学していたヘレンとともにヘリコプターで運ばれるガープは、妻の腕の中で息を引き取ります。 意外と長くなってしまいましたが、言いたいことを理解してもらうには、必要なので、すみません。 気になったことひとつめは、ガープはなぜヘレンを許せるんだ、ということです。どう考えても、ヘレンが不倫に走る理由が分からない。そのころ、ガープの作家の仕事は軌道に乗り、一家の生活は順調だったはずで、何が不満なのだろうか。それとも、マイケルがそんなに魅力的だったのか?無記名のアンケートとはいえ、授業の提出物に、「先生と寝たい」と書いてくるような男が。はっきりいって、ヘレンのわがままでしかない。しかも、マイケルにのせられたとはいえ、別れようとしているのに家の前でいやらしいことしている女なのに。おかげで子どもひとり亡くしているのに「私だって辛いのよ」と開き直る女なのに。確かに、笑顔が素敵で、しっかり者で、いい女だけど、最初に不倫した次のシーンで、ガープとダンカンとロバータと一緒にフットボールして楽しそうに遊んでいるシーンが出てきて、「えーっ!!!ウソーーっ!!!」と思いました。 次に、ジェニーもガープも銃で死ぬということ。確かに2人とも本を出していて有名人なんだけど、銃で撃たれて死ぬなんて、「アメリカだ……。」と思いました。アメリカの銃社会の汚点ですよね。本を読んで、気に食わない考えだからといって、すぐに殺してしまおうと思うのだろうか、犯人の考えが、いまひとつ分からないので何とも言えませんが、身近に銃がある世界ってこんなものなのだろうか、と思い、怖くなりました。きっと、アメリカ人は、こうは思わないんでしょうね。 でも、全体としては、いい映画なのかなと思います。とりわけ、元フットボール選手の性転換女性ロバータ(ジョン・リスゴー)が、190cmぐらいの長身で、アゴが青くて、がっしりしているんだけど、何かと気を使って、ガープ一家を支えていて、いい味を出していたなと思いました。アカデミー賞の助演男優賞(?)にノミネートされたそうで、納得です。ちなみにジェニー役のグレン・クローズ(「マーズ・アタック」の大統領夫人)も助演女優賞候補だったそうですが、これは?です。
2011.07.27
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「ダークナイト」 The Dark Knight 2008年 アメリカ・イギリス映画監督 クリストファー・ノーラン出演 ヒース・レジャー クリスチャン・ベール アーロン・エッカート ゲイリー・オールドマン マギー・ギレンホール ご存知、バットマン映画です。しかし、全編ジョーカー(ヒ-ス・レジャー)のペースで話が進んでいきます。ジョーカーが仕掛けた悪事に、バットマン=大富豪ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)、ゴッサム市警のゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)、新任の地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)の3人が振り回されるというお話なのです。 一応3人には見せ場が用意してあります。バットマンは、香港に逃げ帰っていたマフィアとつながっている中国富豪ラウを一晩で連れ帰ったところ。ハービー検事は、ゴッサム市のマフィアを一網打尽にし、全員いっしょに裁判にかけ、留置場にぶち込んだところ。ゴードン警部補は、死んだふりしてジョーカーを罠にかけ、いったんは逮捕したところ。しかし、ジョーカーが捕まったのはわざとで、ラウを手に入れるためで、市警を爆破し、見事に逃げられてしまいます。大量に捕まったマフィアも、市民を脅すために利用されるのです。 とにかくジョーカーの切れ具合がすごい。ピエロのお面の強盗団、役目を終わった仲間を次々と殺していく。最後に残った一人がお面を取ると、おなじみのピエロメイクのジョーカーの顔が。この冒頭の銀行強盗シーンを皮切りに、警察署から逃げるために手下のおなかに爆弾を仕掛けたり、マフィアを脅すために山積みの札束に火をつけたり、看護婦に化けて(あんな見え見えの変装に何で誰も気づかないの)病院を爆破したり、もうやりたい放題です。警察やバットマンは、後手後手で、バタバタするばかりです。 しかし、意外と計画的なジョーカーです。銀行強盗の逃亡には、時間を考えスクールバスを用意したり、警察に捕まるときも、署から逃げる方法(前述の手下の腹爆弾)を用意してからだし、めちゃくちゃやっているようで、とても大胆で、賢い計画を立てているのです。 ジョーカーには目的があるのです。それは持論を証明することです。正義の味方も追い詰められれば悪に落ちていくという持論を。もちろんそれはバットマンのことです。バットマンのルール、相手が悪人でも決して殺さない、というルールが気に食わないのです。そして、新たに目の前に現れたゴッサムの希望・光の騎士ハービー・デント検事も同じく目標です。 ハービー・デント検事は、恋人のレイチェル(元ブルースの恋人)を殺され、自らも顔を半分なくすという重症を負わされたことにより、2人を拉致したマフィアのボスたちを殺し、ゴードンの家族を拉致するのです。光の騎士は、見事に悪に落とされたのです。 バットマンも、ジョーカーの次々に仕掛けてくる波状攻撃に、市民の携帯を盗聴するという失態を見せ、最後には、ゴードンの家族を人質に取るハービーを突き落として殺してしまうのです。 題名のダークナイトとは、法に基づいて悪をさばく光の騎士ハービー・デント検事に対し、夜の闇の中で悪に制裁を加える闇の騎士(The Dark Knight、暗い夜Dark nightではない)、つまりバットマンのことですが、題名にバットマンと入っていないのは、主役が悪役に食われているので、堂々と名乗れなかったためだ、と思ってしまうのは、勘ぐりすぎでしょうか。 ヒース・レジャーは、今回の演技が各方面で絶賛され、最初で最後のアカデミー助演男優賞をはじめ、数多くの賞を受賞しています。主役なのに食われたクリスチャン・ベールは今年のアカデミー賞で助演男優賞(ザ・ファイター)を受賞し溜飲を下げています。 この映画の完成を見ずに急逝したヒース・レジャーのご冥福をお祈りいたします。
2011.07.23
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「エスター」 Orphan 2009年 アメリカ映画監督 ジャウム・コレット=セラ 行きつけのレンタルビデオ屋で店長のおすすめコーナーにそれはありました。少女のupのみのパッケージ、その少女の尋常じゃない表情が、とても印象的でした。この映画については全く知りませんでした。いかにも怖そうなその表情に、ホラー系の苦手な僕は手に取ることはできませんでした。しかし、どうにも気になるので、後日、裏面の解説を読むと、どうやらホラーではなくサスペンスのようです。思い切って借りてみました。そして、はまってしまいました。 ケイトとジョンは、思春期でちょっと反抗期の息子ダニエルと難聴で手話と読唇術で会話する娘マックスの2人の子どもがいます。3人目を流産してしまったことからアルコール依存症になった過去のあるケイトの心をいやすため、夫妻は養子をもらうことにします。施設の庭では子どもたちが元気に遊んでいました。その子は2階でひとり絵を描いていました。愛想がよく聡明で大人びたエスターを、ふたりは気に入り、引き取ることにしました。それが一家崩壊の始まりとは知らずに。 というお話です。この後、傷害、殺人、誘惑、放火など、一家の周りでいろいろなことが起こり、エスターの恐るべき正体が明らかになるのですが、幽霊や超能力といった超常的な展開はありません。エスターは愛に飢えているのです。その不幸な生い立ちから、歪んだ形で、愛を求めてしまうのです。たくさん語りすぎるとネタばれしてしまい、この記事を読んで観てみようと思った方に悪いので、このくらいにしておきましょう。 とにかく、エスター役の子がすごいです。すごい魅力的な笑顔を見せるかと思えば、凍りついたような冷たい表情もできます。末恐ろしい限りです。 最後に、この映画のラストですが、一見ハッピーエンドなのですが、子どものトラウマ、ケイトの性格など加味し、今後の一家のことを考えると、ちょっと恐ろしく思ってしまうのは、僕だけでしょうか。
2011.07.20
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今、なでしこジャパンが世界一になりました。やったね。「フルメタル・ジャケット」 Full Metal Jacket 1987年 アメリカ映画監督 スタンリー・キューブリック 今まで、SF系ばかりだったので、今回は戦争映画です。 この映画は、2部構成です。前半部分は国内での海兵隊の新兵の訓練の描写、後半はベトナム現地での市街戦の場面です。 新兵たちを訓練するのは鬼教官です。常に汚い言葉で、罵倒と叱責の連続です。軍隊の訓練ですから、もちろん肉体的に非常に厳しい訓練です。その上、教官から罵倒され精神的にも追い込まれます。肉体・精神の両面で極限状態に置かれ、思考停止状態にもっていく、洗脳の常とう手段です。こうして命令に忠実に従う殺人機械を作っていくのです。なんとこの鬼教官、役者ではなく、本物の海兵隊の元教官だそうです。こういう訓練が現実の軍隊でも行われていたのではないでしょうか。 訓練生のひとりレナードは、肥満体で、顔に締まりがなく、不器用で動きが鈍かったため、鬼教官から「微笑でぶ」と呼ばれ、目の敵にされていました。彼が厳しい訓練についていけず失敗するたび、連帯責任で全員にペナルティを科します。ある時、飲食厳禁の寝室のレナードの荷物からドーナツが発見され、連帯責任で全員罰を受けます。その夜、訓練生たちはレナードをベッドに縛り、全員でリンチします。次の日からレナードの目つきが変わり、射撃訓練の意外な好成績で鬼教官にほめられるレナードの眼には狂気がうかんでいます。卒業前日、班長の「ジョーカー」はトイレでライフルに実弾をつめるレナードを発見し、鬼教官と一緒になだめようとしますが、レナードは鬼教官を撃ち殺し自殺してしまうのです。 後半はベトナムです。報道部の「ジョーカー」は、前線の取材を命ぜられ、同期の「カウボーイ」の部隊に同行して、敵が撤退したはずの破壊された市街地に、確認に向かいます。トラップにひっかかり指揮官を失い、謎の敵から狙撃を受け、部隊は混乱します。多くの仲間を失いながら、何とか狙撃手のいるビルにたどり着いた「ジョーカー」たちは、敵を倒します。狙撃手はたった一人のベトナム人少女でした。「ジョーカー」は虫の息の少女に涙をにじませながらとどめを刺します。 多くのベトナム戦争映画に描かれている泥沼のジャングル戦はありませんが、この戦争の悲惨さ無意味さは、リアルに十分に伝わってきます。前半の訓練所の過酷さは、ベトナム帰還兵が精神的におかしくなっていく原因は、戦闘の悲惨さだけではないのではないかと思わせます。後半の戦闘場面では、とっくに撤退していた敵の幻影を恐れ、命を落としていく無意味さを描いているのではないでしょうか。さすがキューブリック監督と思わせる一編です。「博士の異常な愛情……」の変な博士や、「2001年宇宙の旅」のボーマン船長や、「時計じかけのオレンジ」のアレックスや、「シャイニング」のジャック・ニコルソンなど、狂気的なものを描かせたら天下一品です。 ちなみに例の如くアカデミー賞では、作品賞・監督賞はじめ、すべての賞でノミネートされていません。
2011.07.18
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「クローバーフィールド/HAKAISHA」 Cloverfield 2008年 アメリカ映画製作 J・J・エイブラムス監督 マット・リーヴス ニューヨーク・マンハッタンを正体不明の怪獣が襲い、人々が逃げ惑う様子を、全編、被害者自身の手持ちカメラの映像で撮った、ドキュメント風作品。 面白いといううわさを聞いて、DVDで見てみたら、やられた、こういうやり方があったのか、という感じで、はまってしまいました。 なにがすごいって、とにかく被害者の手持ちカメラの映像そのまま、という設定に、とことん徹底していること。以下、どう徹底しているか述べていこう。 まず、合衆国国防総省、事件目撃記録、暗号名クローバーフィールド、回収地点かつてセントラルパークとよばれた公園、というテロップで始まること。冒頭から意表を突かれます。カメラの持ち主は無事じゃないなと思わせます。 次に、主人公ロブと彼女のベスのデート場面がところどころ出てくること。これは、カメラの持ち主がロブで、デートのテープの上に重ね撮りしていることと、撮影者のハッド(ロブの友人)が、カメラの操作がよくわかってなくて、止めるときに録画だけ止めてテープを動かしているからでしょう。 それから、最初、ロブの兄ジェイソンと彼女のリリーの買い物と、ジェイソンがハッドにビデオ係を頼むところから始まり、日本に転勤になるロブの送別パーティの様子がこれでもかと20分近くにわたって映っていること。これが長すぎるという声があるが、この場面があることで、主要人物の関係や性格がよくわかり、サイドストーリーのロブとベスの恋愛がよくわかるのです。 そしてなにより、全編にわたって手ぶれだらけ、画面が斜めで、ときには足元や中空を映し、観客が一番見たい怪獣の姿はよくわからず、ハッドの空気の読めない発言を聞かされ続けることです。でも、そのおかげで、まさに事件の当事者のような臨場感が得られ、感情移入できるので、いいと思います。これこそ、この映画の醍醐味ではないでしょうか。 結局、ロブたちは、最後軍隊のヘリに乗ることができ、助かるかと思いきや、セントラルパークで……。怪獣の全形や正体、退治できたのかなど、事の顛末は、わからないまま、ビデオテープが終わるとともに映画も終わります。何もかも謎のままです。観ている人は、キツネにつままれた感じで終わるのです。 今回、この記事を書くにあたって、ネット上の意見など調べてみましたが、消化不良とか、結末がないとか、続編で謎が明かされるんだとかの意見がありました。しかし、この映画はこれでいいんだとか、モンスターの正体はどうでもいいとかの意見もありました。 ぼくも、謎が明かされる続編はないと思います。実際災害にあった人の状況ってこの通りだと思います。何が起こったのか分からないまま逃げ回り、何だかわからないまま被害に合う、そこに臨場感があるわけだし、それを描くのが、この映画の目的だから、こういう手法をとったのだと思います。謎を明かす続編は興ざめですよ。続編があるとしたら、ロブたちとは違う場所で被害にあった人の、同じような手持ちカメラの映像でしょう。でも、今更それは、二番煎じみたいで面白くないかな。 しかし、邦題だけについている「HAKAISHA」という副題、必要かね?Wikipediaで調べたら、J.J.エイブラムスプロデューサーが、わざわざ日本側につけてくれと頼んだようですね。わけわからん。
2011.07.17
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「マーズ・アタック」Mars Attacks! 1996年 アメリカ映画監督 ティム・バートン出演 ジャック・ニコルソン グレン・クローズ アネット・ベニング ピアーズ・ブロスナン ダニー・デヴィート サラ・ジェシカ・パーカー マイケル・J・フォックス トム・ジョーンズ ロッド・スタイガー ナタリー・ポートマン ジム・ブラウン ジャック・ブラック他スターの皆さん 豪華キャスト総出演のSFコメディです。突然火星人が空飛ぶ円盤(UFOではありません、もう確認できているから。)に乗って攻めてきて、ジャック・ニコルソンがのりのりで演じる大統領を中心にバタバタする人々を次々殺していくが、偶然発見された弱点により退治され、地球が救われる。という話です。 全編確信犯的な、おふざけ満載映画ですが、数ある宇宙人侵略物SFの中で、一番好きです。 好きな理由はいくつかありますが、1つめに、すべてが確信犯的おふざけに徹しているところですね。非常事態の最中にホワイトハウスでの社会見学や、ラスベガスの歌謡ショーを普通にやっているとか、トム・ジョーンズ御一行だけうまい具合にギリギリ助かっていくとか、元ボクサーのバイロンはどうやって助かったんだとか、突っ込みどころ満載なんですが、そのすべてが確信犯だろうと思うと何にも言えなくなってしまいます。 2つめに、非常にアメリカ的な好戦的人々や、政治家、軍隊など鼻につく人々はことごとく死んでいき、好戦的な一家の中にあって一人だけおばあちゃん思いで優しい次男坊リッチーや、ホワイトハウスの中で一人だけ普通ぽくって冷めている大統領の娘タフィ(ナタリー・ポートマンです、まだ小娘なので初めは全く気がつきませんでした。) や、遠く離れて住んでいる家族を思いながらおとりになってトム・ジョーンズたちの飛行機を逃がしてあげる元ボクサーバイロンなど、心優しい人々は助かっていくところです。とりわけ、ピアーズ・元007・ブロスナン演じるナントカ教授が、火星人につかまり人体実験で首だけ人間にされてしまうことですね。突然やってきた火星人のことを知ったかぶりして、大統領やTVカメラの前でエラそうに解説したり、サラ・ジェシカ・パーカー演じる、お色気過剰な尻軽美人キャスターとイチャイチャしたりして、一番鼻についたからです。きっと火星人もTVを見ていてこいつで実験してやろうと思ったんでしょう。 3つめに、おふざけ満載映画なのに、結末が、非常に科学的で理にかなっているところです。偶然火星人の弱点が見つかり退治できてしまうんですね。それはリッチーのおばあちゃんが聞いていた古いカントリーミュージックでした。ちょうどその周波数は、火星人には耐えられず、頭が破裂してしまうわけです。何、そのご都合主義?と思う方もおられるかと思いますが、これが実に理にかなっているのです。異星人というのは、われらが地球とは全く異なる環境で進化し、生活しているわけです。この地球には全く普通にある光や音や電波や元素や病原体など、われわれ地球人には全く害がないものが、その異星には全く存在せず、猛毒になるということは非常に科学的だと思います。そういえば、「宇宙戦争」も同じでしたね。「宇宙戦争」は、その解決の仕方があまりにもあっけなかったので、一般的には不評だったということですが、ぼくは、さすがH.G.ウエルズ、と思いました。 しかし、なぜ火星人はいきなりやって来たのでしょう。この映画の中で、例の鼻につくナントカ教授は、「高度な文明をもつ生物が、友好的でないわけがない。」というようなことを言っていました。その意見には僕も賛成です。しかし、それは、相手がこちらを対等な高等知的生物と認めていて、初めて成り立つことです。きっと、火星人は、退屈しのぎに地球に遊びに来たのではないでしょうか。暇だったので、地球の下等生物でもいじめて遊ぼうか、と思ったのではないでしょうか。ちょうど子どもが、アリの巣をつついて遊ぶように。 ティム・バートンは、地球人よ、おごれるな、と言いたいのかもしれませんね。でも、好戦的で、つけ上がった人たちはいなくなったので、劇中のアメリカは、これからは本当に民主的でいい国になるかもしれません。監督、おふざけ映画なんて言ってごめんなさい。いい映画です。
2011.07.16
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「2012」 2009年監督 ローランド・エメリッヒ主演 ジョン・キューザック 最近のヒット作なので、ご存知の方も多いでしょう。公開当時、TVで盛んにCMをやっていて、ど迫力のCG映像に魅せられて、観たいなと思っていたんですが、あれやこれやするうちに公開も終わり、DVDレンタルの出るのを待って、やっと最近見ることができました。よかった、間に合ったと肩をなでおろしたところです。(笑) とにかく街が崩壊していくところは迫力満点ですね。しかも、自動車と飛行機とダブルで、ギリギリ助かっていくところなんて、なかなか見どころがあってよかったと思います。CGの力は偉大だということでしょうか。 しかし、気になったところが色々とありましたので、大小入り混じりますが、箇条書きしてみましょう。・ジョン・キューザック御一行は、なぜ、あんなにことごとくギリギリで助かっていくのか。山でも、町でも、自動車で、飛行機で、最後にシャトルに乗るときでも……。1回ぐらい余裕で助かるところがあってもと思いました。まあ、主役だからといえば元も子もないですが。・主役御一行が、飛行機に乗ってひと段落のところで、日本らしきところの崩壊の場面が挿入されますが、もちろん世界的に起こっているということを表現しているんだろうけど、はっきりいって、アメリカ西海岸よりも日本の方が先に起こるだろ、世界的な地殻変動なら。火山いっぱいだし、プレートが3つ集まってるし、でかい海溝がすぐ近くにあるし。まあ、アメリカ映画だからね。・最後、チベットらしき高原地帯にシャトルが用意されていて、世界中から避難してくるわけですが、チベットでいいんでしょうか。世界で一番高いから、津波が来るわけないということかと思いますが、確か、アフリカからインドを乗せたプレートがアジアにぶつかったためにできた世界一高い山脈ですよね、ヒマラヤ山脈は。世界的な地殻変動の中、最も危ない場所ではないでしょうか。巨大大陸のど真ん中のモンゴルの砂漠あたりの方が安全ではないでしょうか。・主役御一行は、彼と元妻、二人の子どもと、元妻の現恋人です。この5人で必死の思いで避難してきたわけですが、最後のシャトルに乗り込む段になって、不運にも元妻の現恋人が命を落としてしまいます。その現恋人が亡くなった直後、彼女は、元旦那と抱き合ってキスしてお互いの無事を喜び合います。元旦那を頼りがいがあって見直したということなのでしょうが、命をかけてみんなを助けた現恋人の立場は???と思ってしまいました。彼が飛行機を操縦できたおかげでここまで辿りつけたのに、少しは悲しんでやれよ、と思ったのは僕だけ??? 以上、いま思いつくだけでも、突っ込みどころ満載ですが、世界が崩壊していく様子、その中を主役たちがギリギリ助かっていく様は、迫力満点で、一見の価値ありです。 なお、マヤ文明では、2012年に世界が滅亡するという予言はしていません。マヤ暦が2012年(一説には2011年)に終わるというだけです。
2011.07.15
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はじめまして、クロサウルスと言います。オヤジです。映画大好きです。映画を観るといろいろと思うのですが、誰も聞いてくれないので、ブログに書くことにしました。非常に自分勝手な映画評ですが、反論などありましたら、返していただけるとちょっと幸せです。2001年宇宙の旅 2001:a space odyssey 1968年監督 スタンリー・キューブリック 第1回は、やはり自分のBEST1から。 何といっても、映像がすごい。半世紀近く前の映画なのに、現在のCGバリバリのものに全く引けを取らない美しさがあります。 ほとんど病的なほど、徹底的に細部にこだわっています。これどうやって撮ったのという場面の繰り返しです。宇宙船とか月基地とか、ミニチュアやセットのはずなんだけど、全く感じさせない。宇宙ステーションの映像の窓の中で人が動いてるし。もちろんCGはない時代です。 科学考証も徹底しています。月へ行くシャトルの中や、ディスカバリー号の中の描写など見事です。とりわけ、圧巻なのはシャトルのCAの描写ですね。「美しき青きドナウ」が流れる中、磁力シューズを履いて現れ、一歩一歩磁力を感じさせる歩きでぐるっと回ってさかさまになり運転席に入っていく場面、時間にして5分ぐらいなんだけど、その徹底ぶりにすごいと思いました。まあ確かに、テレビ電話や宇宙食やCPの描写は古臭いですが、ディスカバリー号や宇宙服のデザインは、現在でも新しくてかっこいいですね。これがまだ人類が月に立つ前の映像なんですから、驚かされるばかりです。(アポロ11号は1969年です。) ストーリーは、とにかく難解ですね。何しろアカデミー賞の審査委員が全く理解できず作品賞にノミネートされなかったぐらい難解です。(皮肉です。)1回観ただけでは誰も理解できないでしょう。(監督の言うとおりです。) 僕が初めてこの映画を観たのは高校生の時でした。リバイバル上映を見に行きました。そのころすでに映画ファンになっていた僕は、難解だけどすごい映画らしいという評判を聞いていたので、続けて2回観たのです。(当時は可能でした。) 宇宙の旅なのに、始まっていきなり猿人が現れ、20分ぐらいセリフなしという展開 (猿人だから当たり前) に面食らいましたが、すぐに美しい宇宙空間に魅せられ、後半のサスペンスにハラハラし、最後のボーマンの暴走に混乱し、1回目を観た後は呆けていました。2回目は余裕をもって見れたおかげで、考えることができ、「ラストの赤ん坊は孔子暗黒伝と一緒だ。あの猿とボーマン船長はアートマンなんだ。」と思うことができました。でも、板の正体とか、ディスカバリー号の目的とか、最後のあの部屋は何だとか、疑問はいっぱいでした。(諸星大二郎「暗黒神話」「孔子暗黒伝」参照。) その後、様々な解説を見たり、ビデオやDVDを見たりして、理解できるようになりました。 結局全くアカデミー賞に縁がないまま1999年に亡くなったキューブリック監督のご冥福をお祈りします。
2011.07.14
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