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さて大変勉強になった第34回眼科手術学会が終了して愛媛に戻った私は、学会場で聞いた「ベガモックス点眼液を白内障手術終了時に前房(目の中)に投与して安全性をみた論文がフィリピンの先生から出ている」という話を元にその論文を捜し求めました。 これがその論文です。それによると65人の患者様に白内障手術終了時に0.1mlのベガモックス点眼液を直接前房(目の中)に投与したが、視力・前房反応・角膜の厚さ・角膜内皮細胞密度(手術でダメージがあると減る)の点で非毒性(害がない)であったということでした。 しばらく前の日記でも書いたように、白内障手術後には500~2000例に1例の割合で眼内炎という感染症が発症し、最悪の場合には失明につながることもあることが知られています。またこの眼内炎は最近主流となっている角膜切開という手術法によって以前より増えてきているという報告も多くあります。 この怖い眼内炎を予防するために我々白内障手術医は以前から様々な工夫を凝らしてきたのですが、つい最近までは多数の論文解析で唯一効果があると判定されたのは「ポピドンヨード(いわゆるイソジン)による眼表面の消毒」のみでした。しかも、そのエビデンスレベルは「中等度の臨床的推奨(B)」に過ぎず、我々白内障手術医は、恐ろしい術後眼内炎に対してほとんど有効な対策を持てずにいた、というのが本当のところだったのです。白内障手術前後の抗菌剤の点眼、術後の抗菌剤内服、こういった現在の標準的な治療は眼内炎発症阻止には残念ながら無力だった、ということなのです。 こういった厳しい状況の中で、ヨーロッパから2006年に画期的な発表がありました。数千人規模での研究であったESCRS眼内炎研究班によると、白内障手術終了時に前房(目の玉の中)にセフロキシムという抗菌剤を投与すると、怖い怖い眼内炎の発症率が5分の1になった!というのです。 私も「そんなに安全なら是非自分もしたい!」と思いましたが、実は大きな問題がありました。というのはこのセフロキシムというのは本来は全身薬であり、眼に入れるためには煩雑な操作で濃度を調整する必要があるのです。調整に失敗すると中毒性前眼部症候群(TASS)という病態を発症する事もあり、そのため現在のところは日本ではあまり広まっていなかったのです。またこのセフロキシムは眼専用に作られた抗菌剤ではないので、その作用範囲があまり広くないなどの弱点もありました。 (続く)
2011.02.24

さて今日の日記は1月末に京都で行われた「第34回眼科手術学会」の番外編です。。。 学会も終了し、私は地元の愛媛県に帰るために大阪伊丹空港に到着しました。着いたのは夜の6時半くらいだったでしょうか? 先ほど京都の錦市場であれほど買い食いしたのにもうお腹が空いています。 このようにすぐにお腹が空いて燃費が悪いのが私の最大の弱点なんですね。 私は伊丹空港では、いつも「551蓬莱」という肉まんで有名な中華料理屋さんでご飯を食べます。この日ももちろんそこで食べました。 ↑ この海鮮やきそばが私のお気に入りです。 ↑ もちろん看板商品の肉まんも食べます。ふんわりしてとっても美味しいんですね。 店内は夕食時ということもあり非常に混んでいます。お客さんは入れ替わり立ち替わり次々とやってきて完全に満席です。 ふと気付くと、空いた隣の席に「予約席」という札が立てられました。私が「へー、ここって予約ができるんだ」と思いながら肉まんを頬張っていると、男性3人、女性1人の4人組が入ってきました。かなりきらびやかな服装の集団です。 その中のリーダー格の男性はお笑い芸人のサンドイッチマンの突っ込み担当の伊達みきおさんを色黒にしたような威圧感のある方でした。4人の内の1人はウーロン茶ということで、店員さんを大声で呼ぶと、 「ビール3つ、超クイックリーで!」 と注文します。 私は、 「クイックリー、副詞か。なかなか斬新な日本語の使い方だな。」 と思いながら、淡々とご飯を食べていました。 その後サンドイッチマンさんのグループは色々と料理を注文し、ガンガン飲み食べています。すると、サンドイッチマンさんが店員さんを呼び、 「あと3人来るからさー、この横もうすぐ帰るから、そしたらテーブルくっつけてよ。」 と大声で要求します。 「この横」というのは、私がまさに座っている席のことなので、(ま、確かに食事は終わりかけてはいたのですが、) さすがに驚いてサンドイッチマンさんのグループの方に思わず目線を向けてみると、女性の方は、 なんと、テレビタレントの小倉優子さんでした。 お店に入ってきたときにもチラッとは見たのですが、その時は大きなマスクをされていたので気付かなかったんですね。 私は、 「そうか、芸能界というのはこれくらいは押しが強くないと生き抜けないんだな。凄い世界なんだろな。」 と思いながら席を立ちました。 すると、サンドイッチマンさんが、 「なんだか急がせたみたいで悪いね。」 と優しく声を掛けてくれます。私は思わず苦笑して 「いや、私はもう食べ終わったので。ごゆっくりどうぞ。」 とお店を後にしました。 私が所属する眼科の世界も、競争も進歩も激しい気を抜くとすぐに全国水準の医療から置いていかれる厳しい世界なのですが、 「芸能界にもまたきっと違った厳しさがあるんだろうな。私も気合を入れてこれからも毎日頑張らなくてはいけないな。それにしても小倉優子さん、綺麗な人だったな。」 と感じながら伊丹空港を後にしました。こうして私の眼科手術学会は印象深く終わったのでした。(眼科手術学会体験記 終わり)
2011.02.22

さて1月28日(金)~1月30日(日)に京都で行われた第34回眼科手術学会体験記の最終回です。学会最終日1月30日午前中のセッションでは、 「白内障術中トラブル対処法」という教育セミナーが勉強になりました。私は常日頃から「トラブルが起こったときにこそ術者の技量・精神力が問われる」と考えていて毎日勉強を積み重ねています。その意味ではこのセミナーでは「知らない話」というのはなかったですが、頭の整理・復習という意味で非常に有意義なものでした。 さて、学会は昼過ぎには終わりました。大阪伊丹空港から私の地元の愛媛県の松山空港に戻る飛行機は最終便を予約していたので(この日は非常に寒く雪が散らつく天気で、結果的に最終便というのはかなりやばかったのですが)、それまでにはかなりの時間があります。 そこで、「京都人の台所」と言われているという、甘いお菓子からお酒のおつまみまで京の味がすべて楽しめる「錦市場」に少し足を延ばしてみました。 400メートルほどの細いアーケードですが、100以上のお店がひしめきあっていて凄い活気です。 ↑ 焼きたてのおせんべい。 ↑ 自家製うなぎ巻き。美味しいものばかりで買い食いが止まりません。 更に歩いていると、 ↑ 「うなぎのキモ」を売っています。夜暗い所で物を見る力を改善する作用を持つビタミンAが豊富な食べ物ですし、これは眼科専門医としては是非食べなくては、、、、 ↑ ということで早速これまた食べました。非常に美味しかったです。 こうして、京都での第34回眼科手術学会は終了したのでした。(終)
2011.02.18

さて昨日の手術から実際に新型白内障手術機械CV-30000(通称フォルタス)を使い始めたわけですが、 使ってみての最初の印象は「とにかく前房(ぜんぼう:目の中のこと)が安定している!」ということでした。私の現在の愛機CV-7000もかなり前房の安定性が良いマシンなのですが、CV-30000は確実に1レベル~2レベル上にいます。後嚢(こうのう:水晶体の袋の後ろの部分のこと。これを破らないように我々白内障手術医は日々死力を尽くしている)が微動だにしない感じで、手術時の安心感がグッと増しています。 それ以外では吸引系も明らかに良くなっています。このCV-30000、基本性能を徹底的に鍛え上げてきたのが使ってすぐに分かる、滅茶苦茶良いマシンに仕上がっています。これは欲しいですね。。。 手術が終わった後には、自分に合わせて更に機械の設定を微調整して貰いました。 来週も、まだ四国では販売実績がないという(これだけ良いマシンなのにそれも不思議ですが)新型機、CV-30000を使って実際に白内障手術をします。楽しみで待ちきれないですね。
2011.02.17

私は開業以来この3年間、日本の二デック社のCV-7000という白内障手術機械を使って手術をしてきました。このマシンは極めて基本性能が高くかつ信頼性と耐久性抜群(開業以来トラブル0)で現在でも特に不満はないのですが、今回ニデック社様及びディーラーの吉田メディカル様の御好意で、その後継機の新型マシンCV-30000(通称Fortus:フォルタス)をデモさせて頂けることになりました。そして、実際のマシンが今日当院へ搬入されました。 操作画面が旧型のCV-7000に較べてかなり洗練されていますね。明日から実際の手術で使うので、今日はDVDなどで機械について勉強をしていました。 細かな改良を積み重ねて、より安全で安定したマシンに仕上がっているようです。 元々極めてよいマシンだったCV-7000がどれほどの進化を遂げているのか、明日からが楽しみです。
2011.02.15

さて学会には、医学書の専門書店がたくさん出張していて色々な本を見ることが出来るのも楽しみの一つなのですが、今回も良さそうな本をいくつか買ってきました。 その中で、 と言う本が非常に出来が良かったです。帯に「この本で上達しなかったら手術を諦めて下さい!!」まで、書いている割にはなんだか貧相なペラペラの本で値段も10000円以上もするし、買うべきかかなり悩んだのですが買ってよかったです。 手術手技以前の「器具の動かし方、ベクトルを意識した3次元操作」の大切さと具体的な方法を強調した本で、他の手術教科書とは一味違う仕上がりの名書でした。特に第1章と3章が良かったです。白内障サージャンでまだ未読の方は是非一度手にとって見てください。 さてこの日の夜は、 京野菜カレーを食べました。京都は野菜の美味しい街ですね。 手術学会2日目の夜はこうして過ぎていきました。。。。
2011.02.14

さて京都市で行われた、第34回眼科手術学会体験記を続けます。素晴らしい特別講演が終わると、1月29日(土)夕方は、 「今日の白内障手術の論点」というシンポジウムに参加しました。 この中では、 「眼内炎の現状、予防と治療」という講演が非常に勉強になりました。 角膜切開という手技で手術を行うと、眼内炎の頻度が強角膜切開(私の手術手技でもある。安全性が高いという長所があるが、その反面手術時間が余分にかかると言う大きなデメリットもある)に較べて3.36倍になる。 白内障手術終了時に、セフロキシムという抗生物質を前房(ぜんぼう。目の玉の中)に投与すると、眼内炎の頻度が5分の1になる。 など、豊富なデータを元にした発表で非常に分かりやすかったです。 セッション終了後に抗生剤の前房内投与に関する具体的な方法を講演された林先生に直接質問してみると、 「投与する抗生物質は、ベガモックス点眼液(防腐剤フリーの現在日本最強レベルの抗菌点眼薬)の方が良いかもしれない。フィリピンの先生から安全性に関する論文が出ているし、安全性さえ担保されるのならばそれがベストかもね」とのことでした。 これは非常に良い話で、早速地元の愛媛に戻ってからその論文を探すことにしました。このように学会場では日本トップレベルの先生に直接質問することが出来るので、本当に勉強になるんですね。
2011.02.11

さて1月29日(土)午後の特別講演は、 私が所属する愛媛大学医学部眼科学教室のボスである、大橋教授による「白内障術後眼内炎ーEvidence Based Preventionの時代へ」でした。 白内障手術というのは日本国内で年間に100万例前後が行われているというメジャーな手術ですが、その術後には500~2000例に1例くらいは眼内炎という感染症が発症することが知られています。この眼内炎になると最悪の場合失明につながることもあるため、我々白内障手術医は「いかに眼内炎のリスクを減らせるか?」を常に考えて続けているのです。 今回の大橋教授の特別講演は、この怖い眼内炎予防のために大切な現時点での最新の知見が散りばめられた本当に素晴らしい内容でした。 この講演の中ではいい話が多かったのでちょっとまとめておきます。眼科医以外の方にはやや難しい内容かもしれないですがご了承ください。 1. 手術前にアジスロマイシン点眼(内服薬のジスロマックというニューマクロライド系抗生剤を目薬にしたもの。アメリカではすでに何年も前から発売中だが、日本では未だに治験中で個人輸入でしか使えない。この新薬の承認が遅いという「ドラッグ・ラグ」は日本医療の大きな問題点の一つだが、眼科でもそれは同じ。本当に何とかして欲しい。)を使うことの有用性を指摘。 2. 白内障手術終了前のI/A(アイエー)という目の中の洗浄手技のときに、Tapping(タッピング)といって眼内レンズを傾けながら粘弾性物質(目の中を保護するゼリー状の物質)を吸い取る手技を左右で5秒間×4回、合計で20秒すると、BHL(ビハインド・ザ・レンズという眼内レンズの裏側を吸うやや上級者向けの手技)とほぼ同等の効果があることをスジャータスタディで実証。 3. 術後早期(手術終了直後)からの抗菌点眼薬開始が大切である、何も次の日まで待つ必要はないということ。 4.破嚢(はのう。水晶体の袋の一部が破れること。平均4%の症例に起こる)などのハイリスクイベントが発生した症例に対しては、抗菌薬の前房内投与が必要なこと。 私もこれからも眼内炎を極力起こさないような、より安全な手術手技を求めて努力していきたいと、改めて思いました。
2011.02.07

さて学会の楽しみの一つはランチョンセミナーです。これは「お弁当を食べながら講演で勉強できる」一石二鳥の楽しい時間なのですが、この日のランチョンは、 緑内障管理のセミナーを選択しました。 上品なお弁当でとっても美味しかったです。というか、学会場で食べる御飯と言うのは「飛行機の機内食」みたいな感じでちょっとわくわくして常に旨いんですね。 肝心のセミナー内容ですが、視野検査機械使用時の注意点(30-2という通常のプログラム以外にたまに10-2という中心視野を調べるモードも入れないと、初期の緑内障そのものや緑内障の進行を見逃すことがある)や、検査結果の細かい見方を教えてくれるもので、非常に役立ちました。 あと、講師の女性の先生がゆっくりとした口調で分かりやすく話されていたのが非常に印象的でした。私は外来中忙しくなってくるとつい早口になってしまう悪い癖があるので、これから気をつけなくてはいけないな、と感じました。
2011.02.03

さてホテルで朝ごはんを食べて、 学会場に出発です。 国際京都会館は地下鉄の最終駅。ちょっと不便な場所ですね。 1月29日(土)午前中のセッションの目玉は、 「難症例に対する白内障手術」。日本を代表するトップ白内障術者集結の豪華なセッションです。ただ、私はその前の他のプログラムに参加していて会場への到着が遅れてしまい、着いてみるとすでに満席&立ち見ぎっしり!でした。 「困ったなあ」と思いながら、会場の最前列まで行ってみると(満席と思っても、一番前のほうに空席があることが意外と多いので)、 最前列まで全てぎっちり満席なのですが、唯一「座長席」だけが空いています。だめもとで「ここ、座ってもいいですか?」と会場スタッフの方に聞いてみると「あ、いいですよ」とのこと。ラッキー。最前列での参戦です。 白内障では浅前房(せんぜんぼう)という、目の中の作業スペースが少ない方は手術が難しいのですが、「チン氏帯(水晶体をつないでいる筋肉)が弱いが故の浅前房が多い」とか、「CTR(カプセルテンションリングという、チン氏帯が弱い患者様に使う特殊な器具)を使う際には後ろの穴に10-0ナイロン(という細い糸)を絶対にレスキュー用に通しておいたほうが良い」など、ハッとしたり、なるほど、というためになる話が満載でした。座っているだけでどんどん賢くなる感じです。やっぱり学会はガンガン参加しないと駄目だな、と改めて思いましたね。。。
2011.02.02

さて、来たる1月28日(金)~1月30日(日)に京都で開催された、第34回日本眼科手術学界総会に参加してきたわけですが、今日から数回に分けてその体験記をお届けしたいと思います。 1月28日(金)は、夕方遅くになって京都のホテルに到着しました。 泊まったのは「ホテルモントレ京都」。ヨーロピアンテイストの小粋なホテルでした。女性客の方が多かった印象ですね。 ホテルに到着後はもうお腹が空いたので、パソコンで近くの美味しそうな御飯屋さんを検索します。 この日は「まゆめ」というおばんざい屋さんに行ってみました。 店内に入ると、 いかにも「京都」という感じの、バーンと長く張ったカウンターに美味しそうなおかずがずらりと並んでいます。まずは目の前にあった「明太糸こんにゃく」を戴きます。 柔らかくて優しい味わいが長旅で疲れた体に染み渡ります。 肉じゃが シーザーサラダ 白ハマグリの酒蒸し(ハマグリは愛媛県ではあまり見ない食材なので嬉しい) 自家製さつま揚げ どの料理もしっかりとした上質の仕事で、お酒がいくらでも進みます。 締めは、アサリの塩ラーメン。 スープにアサリの旨味が染み出ていて抜群の満足度です。 美味しい料理とお酒。京都の夜は更けて行きます。。。。(続く)
2011.02.01
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