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電気溶接の仕事を眼を保護せずにすると、人工光源から出るUVC(波長が非常に短くて眼に有害な紫外線)による、電気性眼炎(でんきせいがんえん)という状態を引き起こしてしまうことがあります。 具体的には、上記の写真のように黒目(角膜)の表面に細かい傷が入ってしまいます。かなり強い眼痛を伴うので、多くの患者様が慌ててクリニックに駆け込んで来られます。 先日もこの電気性眼炎の患者様が来院されたのですが、眼を拝見すると黒目(角膜)のキズだけでなく、白目(結膜)も異常なくらい充血しています。 私が「これはよっぽど目を擦られたのですか?」と質問すると、患者様が、 「職場の上司が、 すぐに目に牛乳を入れると良い というので、そうしました。」 とのことでした。 電気性眼炎に牛乳、これは眼の表面が痛んで感染に弱くなっている状況に追い討ちをかけることになるので、治すどころかむしろ危険と思います。なので、皆様も溶接で目を焼いてしまった時には、牛乳を入れるのではなくすぐに眼科専門医を受診する、ようにして下さいね。
2011.11.30

もうすぐ12月ですね。当院ではスタッフが頑張ってくれて、昨日から冬のイルミネーションを開始しました。 昨年との違いですが、クリニック側面の奥にいたトナカイが、 この1年でツタが成長して埋もれて隠れてしまうので、国道沿いに移動しました。 皆様もご覧になったら、イルミネーションの感想を是非また聞かせてくださいね。
2011.11.25

さて、平成23年11月6日(日)は、地元愛媛県松山市で開催された愛媛県眼科学術講演会に参加してきました。この日記ではあまり地元での勉強会については言及してきませんでしたが、もちろん以前から時間の許す限り積極的に参加しています。 特にこの講演会は事前に郵送されてきたプログラムの内容を見た瞬間に素晴らしい内容であることを確信し、「その日、自分の葬式でない限りは絶対に参加しよう!」と楽しみにしていたのです。今日はその内容をレポートしてみたいと思います。 なお、一部に専門的な内容を含んでいますことを御了承下さい。 特別講演が3題あったのですが、どれも明日からの日常診療にすぐに役立つ実践的で素晴らしい内容でした。1題目は「緑内障性紙神経症の診断と経過観察 コツと落とし穴」でした。ここで抜群に勉強になったのは以下の内容でした。 1. OCT(光干渉断層計)がないと診断できない視神経障害というのは確実に存在する。ただし、「ノンコン高眼圧症」ならぬ「OCT緑内障」の診断を下してしまうリスクもはらんでいる。それを避けるためにはOCT検査結果の「左右非対称性(緑内障のほとんどは左右非対称)」、また視野検査結果との「相応性」を確認することが大切である。(自分もOCT緑内障を量産しないように肝に銘じなくてはと思いを新たにした。) 2. OCTは素晴らしい器械だが、緑内障の進行判定に使うのはまだ危険。進行判定にはやはり視野検査が頼りである。そしてその視野検査をどの程度の頻度で施行すべきかについては、2008年のBJOに掲載された論文等から考えて、初回検査から緑内障の進行具合を示すグラフである「MDスロープ」を引ける5、6回目までは4ヶ月に1回が推奨される。進行スピードを把握できたらその後は6ヶ月に1回で良い。(以前から視野検査の頻度に悩んでいた。今回クリアカットに教えて頂いて本当に助かった。) 2題目は「フルオレセイン染色による眼表面疾患の見かた」でした。ここで特に勉強になったのは以下の内容でした。 1. フルオレセイン染色検査では、水滴を良く切って眼瞼縁にソッとつけるようにして無駄に涙液量を増やさないように意識することが検査の正確性を保つために大切である。(基本事項だが忘れがちと感じた。) 2. Blue Free Filter(BFF)というフィルターを使うと、通常のコバルトフィルターでは見えないものまで観察できる。具体的には結膜の上皮障害が良く分かる。このBFFはほとんどのメーカーの細隙灯顕微鏡に装着できるので是非使ってみて欲しい。(後で講師の先生に聞くとフィルターは12万円くらいするとのことで、ちょっとぷちぼったくり気味かなと思ったが、早速自分のクリニックでも注文した。) 上記のBFFフィルターですが、早速当院でも注文して装着しました。 このBFFフィルターを通すと、今まで観察しにくかった結膜上のSPK(細かいキズ)がはっきりくっきり色鮮やかに見えて、ドライアイ患者様の診察にものすごく役立ちます。まだ装着されていない先生には強力にお勧めできるアイテムと思います。 勉強会の話に戻りますが、3題目は「外来でできる! 眼形成小手術のあれこれ」でした。ここで格別に勉強になったのは以下の内容でした。 1. 霰粒腫の切開では挟瞼器を使わないやり方もある。その方がトータルの出血量が少ないし、指で挟んで取り切れたかを確認しやすい。また鋭ヒをガーゼでくるんで取り残しがないかを確認すると良い。(自分も一度挟瞼器を使わずにチャレンジしてみようと思った。) 2. 涙小管炎は見逃されやすいが日常臨床で意外に多い。涙洗で通水は可能だが出血がある、涙点付近に炎症がある、そういった症例では綿棒2本で涙点を圧迫すると菌塊が出てくることがあるので、意識して診察すべきである。(自分もかなり見逃していると思った。明日から気をつけたい。) このように3題とも本当に勉強になり、明日からの毎日の診療ですぐに役立つエクセレントな内容でした。頑張って八幡浜から出かけて良かったです。
2011.11.23
先日のことですが「遠くも近くも見えないので眼鏡屋さんで何回もメガネを作り変えたんだけど、どうしても合わないので、ぴったりのメガネの処方箋を出して欲しい」との訴えで、高齢の女性が受診されました。 「とりあえず、今お持ちのメガネを見せていただきましょう。」と言うと、出るわ出るわ、メガネが4つも5つも出てきます。「これは遠近両用で作ったけど、頭がクラクラと痛くなるので使っていない」、「これはアーケードの中の人気のあるお店でしばらく前に作って一番マシだけど、でもやっぱり満足はしていない」、「これは近所に移動眼鏡屋さんが来てくれたので、行ってみたらメガネ作ってくれたんだけどあんまり合わない」、「これは大手チェーンの眼鏡屋さんで最近作って貰って、その時に合わないようなら眼科に行って処方箋を出して貰ったら無料でレンズを交換してあげると言われたやつなんだけど、キツイ感じのするメガネで使っていない」など、1つ1つチェックして見たのですが、どれも度数にそれほどの差があるわけではなく似たようなメガネです。 そこで目の方を診せて頂くと、白内障が高度に進行してしまっておりそれで目の力が落ちて、どのメガネをかけても見えない状態になっていたのでした。患者様は「見えないのはメガネが悪いせいだ」と思い込まれていたのですが、悪かったのはメガネではなく目の方だったんですね。こういう患者様は本当に良くいらっしゃいます。 眼鏡屋さんに行って「メガネが合わないんだけど」と言えば、眼鏡屋さんは喜んでいくらでもメガネを作ってくれます。なぜならそれが仕事だからです。 でもそれは、 床屋さんに行って「ねえ、髪の毛切ったほうがいいかな?」と質問するのと同じかもしれないのです。 床屋さんは髪を切るのが仕事ですから「切ったほうがいい」と答えるに決まっていますよね。(笑) つまり、メガネで目の全ての問題が解決するわけではないということです。何回もメガネを交換しても見え方が良くならない時には、ぜひ眼科専門医の受診も検討してくださいね。
2011.11.18

今日の日記は、久々に第65回日本臨床眼科学会参戦記の続きです。 さて歴史ある第65回日本臨床眼科学会のプログラムも全て終了しました。学会終了の開放感と安堵感、高揚感に包まれながら、私は銀座の街に出てブラブラとランチスポットを探します。 穏やかな秋の日差しを受けて幸せな気分になりますね。 歩いていると、贈答用のフルーツで有名な銀座千疋屋(せんびきや)に偶然辿り着きました。 ランチをしているようなので早速入ってみました。 珍しいメニューもありましたが、保守的な私は普通にランチを注文します。(笑) ランチメニューの「エビとアボガドのトマトクリームスパゲティ」も美味しかったですが、 食後に付いていたミニパフェが絶品でした。流石、銀座千疋屋ですね。 美味しい御昼御飯を済ませて、もう少し銀ブラを続けます。(臨眼参戦記は後少しだけ続きます)
2011.11.13

さて、いよいよその発売が迫ってきたドライアイの大型新薬、ムコスタ点眼液ですが、先日ようやくサンプルを戴けたので実際に試してみました。 ユニットドーズ製剤と言って、使いきりタイプの点眼剤です。早速開けてみましょう! おぉ、白色の濁り液です。うーん、これは溶けにくくてお薬の成分を目薬に仕上げるのに苦労したでしょうね。。。大塚製薬の開発者の方、お疲れ様でした。では早速点眼してみます。大型新薬ですので、院長の私はもちろんスタッフの皆も挑戦してくれました。その感想は、、、、 点眼した後、1分くらい目がかすんで見えない。 鼻から口にかけてかなりの苦味が来る。 あたりの、ネガティブな意見が最初に多く出ました。 添付文書にも苦味が多いということは書いてありましたし、ホリエモンではないですが、まあ「想定の範囲内」ですね。(笑) ただ、点眼後しばらく経つと、 なんだか目がスッキリした。 目がしっとりと潤ってきた。 目が暖かい感じで調子が良くなった。 など、やはりムコスタ点眼液のパワーを実感させるポジティブな感想が多く出ました。ムコスタ点眼液は、対照薬となった参天製薬の歴史的名薬の0.1%ヒアレイン点眼液に対して有意差を持ってドライアイ症状を改善するというデータが出ていますし、やはり力はありますね。 私の個人的な感想を言うと、「点眼直後のかすみや苦味は確かに弱点だが、それを上回る効果は間違いなくある! 少なくとも重症のドライアイに苦しむ患者様はトライする価値のある目薬である。」というものでした。 またこのムコスタ点眼液は、先行して発売されている同じ「ムチン産生促進薬」のジクアス点眼液とは作用の仕方が違うとの事なんですね。 添付文書には色々と難しいことが書いてあるのですが、ムコスタ点眼液が実際にどういう理屈で効くのかはまだ分かっていないとの事です。 ただ、ムコスタはジクアスの作用点であるP2Y2受容体には影響を及ぼさないことは分かっており、もしかすると、ジクアス点眼液とこのムコスタ点眼液を併用すると1+1=2のように、ドライアイにもっと効くのではないか?という期待も膨らんでしまいます。 いずれにしても、近い将来のムコスタ点眼液の登場が本当に待ち遠しいですね。
2011.11.09

しばらく前に朝のニュース番組をテレビで見ていると、「常識チェンジは何故起こる?」という興味深い特集をしていました。 この中では新しく常識になった例として、ハチに刺されたらおしっこをかけるのではなく冷やして病院へ行くこと、鎌倉幕府が開設されたのは1192年(イイクニ)ではなく1185年(イイハコ)に変わったこと、などが紹介されていました。 私も「へーえ」と思いながら見ていたのですが、その中で偶然眼科の話がありました。それは、「水泳後の目の洗浄はほどほどに」というものでした。その内容を具体的に見てみましょう。 番組ではあるスイミングスクールで、子供たちが水泳後に目を洗わないことが常識となっていることがまず報告され、それに出演者が驚いて「どうして?」と疑問を持つという流れでした。 そこで眼科学会の偉い先生が登場し、 プール後の目の洗いすぎが良くない理由を説明しました。 我々の眼の表面と言うのは、上から油層、水層、ムチン層(分かりやすく言うと納豆のネバネバのような層。眼の表面を守るのに重要な役割をしている)の3層があるのですが、目を洗いすぎるとこのムチン層が剥がれ落ちてしまい、 そこにバイキンが付きやすくなってしまうのです。 そのため大切なことは、水泳をする時には必ずゴーグルをつけて雑菌の多いプールの水が目に入らないように予防した上で、目の洗浄はほどほどにする、ということなんですね。 ただこの話で難しいのは、実は学校の教育現場では「水に慣れさせる」目的でゴーグルの使用を禁止し、付けずにプールの中で目を開かせる、という我々眼科専門医からすると卒倒しかねないような、危険で野蛮な行為が平気で現在でも行われているという事実があるからなんですね。ゴーグルを付けずにプールに入るのであれば、その後に軽く洗眼することは理にかなっている部分があります。 本当はゴーグルさえしていれば「水泳後の目の洗浄は不要」が正解なのですが、学校現場の実態を踏まえて「水泳後の目の洗浄はほどほどに」を正解としているのです。 ちなみに、私の日記ではすでに2009年の4月に、プール後の洗眼は悪影響 という題で、水泳をした後に目を洗うことは効果が無いばかりか逆に危ないということをお伝えしています。 以上をまとめると、 1. プールに入るときは必ずゴーグルをする。その場合は洗眼は不要。 2. 学校の先生が「ゴーグルしたらダメ!」と言うときは、仕方が無いのでプールを出た後に軽く目を洗う。 のが正解ということになります。皆様もこの「眼科の新常識」、是非覚えて置いてくださいね。
2011.11.07

さて第65回臨眼参戦記の続きです。10月10日(月)の続いてのインストラクションコースは、 「緑内障専門医養成講座 正常眼圧緑内障診断力のブラッシュアップ」でした。大変人気のある講座で立見の人もたくさんいましたね。 緑内障の診断には近年飛躍的に進歩したOCTという器械が絶大な力を発揮します。OCTの凄さについては 以前の日記 でも書いていますので、是非ご覧下さい。ちなみに当院では日本のトプコン社の名機3D OCT-2000を昨年導入済みです。 その早期診断力は抜群で、率直に言って我々眼科専門医の能力を既に超えています。そのため、緑内障診断で一番大切なことは「緑内障センサー」をアップさせて、少しでも怪しいと思ったらすぐにOCT検査をする、ということになっています。この1・2年で劇的に変化した部分ですね。 それ以外では、視野検査データを徹底的に読み込む技術 患者様が疲れたり寝てしまったりして(視野検査というのはしんどい上に単調で眠くなるんですね)きちんと正確に検査できなかった場合の視野結果のバリエーションの解説など、バラエティ豊かな内容でとっても勉強になりました。(続く)
2011.11.04

さて学会は10月10日(月)の最終日となりました。最初に参加したのは、 「レーシック術後集団感染の事例から倫理を考える」というインストラクションコースでした。 数年前に東京の某眼科で屈折矯正のレーシック手術の術後に多数の感染性角膜炎が発症したという事例があったのですが、それに関してどのような倫理上の問題があったのか?を分析するものでした。 手術に絶対はありませんし、不幸にも術後に感染症を発症する可能性というのはどうしても0%にすることは出来ませんが、上記の施設では感染症発生後も感染源の原因究明をせずに5ヶ月間に渡って手術を続けて被害を拡大させたこと、手術の利点・欠点を説明する「インフォームドコンセント」を全く行っていなかったことが問題だったとの指摘がありました。私も自ら手術をする立場ですし、これからも常に最善を尽くし細心の注意を払って行かなければならないと痛感しました。 さて、今日はそのレーシック手術の利点・欠点をまとめておこうと思います。 まず利点ですが、 1. 手術の痛みがほとんどなく、完成度の高い術式であること。 2. そのため術直後より良好な視力が出ることが多いこと。 3. メガネ・コンタクトレンズから開放されること。 4. 初期コストは高いが、長期的に見るとメガネやコンタクトに較べて割安になること。 5. 視力の長期予後も悪くないこと。 あたりかと思います。 次に欠点ですが、 1. 手術できる方には限界があること(近視が強すぎたり、円錐角膜といって黒目の形が特殊な方は危険が高くてできない)。 2. 術後にドライアイ症状が悪化することがあること(角膜知覚の低下による。ただし一般的には6~12ヶ月で回復する)。 3. 角膜拡張症(keratectasia)という、術後に黒目の一部が飛び出てくる重篤な合併症を起こすことが稀にあること。 4. 術後に感染症を起こす可能性が今回の事例のように0ではないこと。また角膜の一部を削り取ってしまう術式のため、術後には元の状態に戻せないこと。 5. 角膜が薄くなるので、術後に眼圧測定値が低く出る(平均2~5低下)ようになること。それにより将来的に緑内障を見逃されたり、緑内障の治療効果の判定が困難になる可能性があること。 などがあります。 いずれにせよ、レーシック手術と言うのは健康な状態の眼にメスを入れる、美容外科的な要素の強いものですので、しっかりした実績・十分な説明と同意・術後のしっかりしたメンテナンス体制のある施設で受けることが必要と思います。
2011.11.02
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