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さて前回の日記の続きですが、最終的には日本アルコン社の「インフィニティ」というマシンを購入しました。 このインフィニティは、白内障手術機械の歴史上最も多く売れ、現在世界で最も多く使用されているマシンです。発売は2003年と古く既にモデル末期なのですが、この8年間続々と新機能が搭載され、絶え間なくアップグレードされてきたことにより未だに高い戦闘力を誇っています。その最大の特徴は、 通常の白内障手術機械が、水晶体を削るための超音波が縦にしか出ないのに対して、このインフィニティは横にも出るということです。 そして横に出る超音波というのは、縦に較べて効率が良い上に目へのダメージが少ないのです。ただ、横発振だけでは機械が詰まったりすることもあったのですが、 数年前にOzil IP(オジールアイピー)と言って、横発振だけでは無理な場合に必要な時のみに縦発振を入れることが出来るようになり、その欠点もほぼ解消しました。 ここで何故私が最終的にインフィニティを選んだのかをまとめておきます。 1. どのマシンもそれぞれに特色があり選択は困難だったが、発想を変えて「もしも値段が全部一緒だったら自分はどれを買うだろう?」と考えたときに、インフィニティが一番だった。総合力で他社を上回った。 2. インフィニティは発売後8年が経過し、その間に欠点・弱点を一つずつ潰してきておりとにかく完成度が高い。良く「輸入車買うなら、熟成度の高いモデル末期を買え!」みたいな話があるが、まさにそれと同じ状況だった。 3. 私の開業しているエリアは高齢化率が極めて高く、そのために白内障が非常に進行した患者様が多い。そういった進行した「固い核」に対して、やはりインフィニティが他社に対して相対的に優れていた。 ということでした。ただ、他社のマシンにもそれぞれに良い所はありました。ボシュロム社のステラリスは通常の核の固さの症例であればその前房(目の中の手術スペース)の安定性は驚異的でインフィニティを全く寄せ付けないレベルでしたし、アボット社のシグネイチャーもスペックが高くダブルポンプ搭載で本当に良いマシンでした。また唯一の国産ニデック社のフォルタスも基本性能に磨きをかけ実力のあるマシンでした。 最終的にはボシュロム社のステラリスと日本アルコン社のインフィニティの2つが残り、最後の最後まで悩みました。率直に言えば、通常レベルの白内障であれば、手術の快適度・ストレスの少なさはステラリスに軍配が上がると感じました。ステラリス、本当に驚異的に良いマシンと思いました。ただ進行した白内障になるとインフィニティに軍配が上がることと、ステラリスはデモさせていただいた期間が短くて自分用のセッティングを煮詰めきれないまま最終判断せざるを得なかったこともあり、今回はインフィニティを選びました。 ディーラーの吉田メディカル様、アーガス様、また機械メーカーの日本アルコン社様、アボット社様、ボシュロム社様、ニデック社様、本当に有難う御座いました。私はこれからニューマシンを得て、今まで以上に安全な白内障手術を提供できるように頑張って行きたいと思っています。
2011.09.29

さて当院では、この半年程をかけて様々なメーカーの新型白内障手術機械をデモさせて戴きながら新規購入を検討してきたのですが、この度ついに購入マシンが決定しました。 購入候補は、日本アルコン社の「インフィニティ」 アボット社の「シグネイチャー」 ボシュロム社の「ステラリス」 唯一の国産、ニデック社の「フォルタス」 の4つでした。どのマシンも現在私が使用しているCV7000よりは様々な意味で大きく進化しており、その選択は楽しくも苦しいものでした。 そして、私がこのいずれも魅惑的な4つの中から最終的に買ったマシンは、、、、、、(続く)
2011.09.27
今日の日記は眼科専門医向けのやや特殊な内容となっております。ご了承下さい。 さて、この数年のことですが、前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)というおしっこの出方が悪くなる病気で、治療のためにα1遮断剤というお薬を飲んでいる患者様が激増しています。具体的には「ハルナール、フリバス、ユリーフ」などの商品名のものが多いのですが、これらが日本では現在なんと年間で8億個!も処方されています。 泌尿器科の先生にとってはありふれたお薬で、非常にカジュアルに気軽に処方されているのですが、これらの薬を飲んでいると白内障手術時に40%の確率でIFIS(アイフィス:術中虹彩緊張低下症候群)というやっかいな合併症を起こすことが知られています。 これは、お薬の影響で虹彩(茶目)がフニャフニャになってしまい、術中の水の流れでうねったり縮んだりして手術が難しくなることを言うのですが、その症状がシビアな場合には手術の安全性に関わることもあり、我々白内障手術専門医の大きな悩みの種となっています。 これはα1遮断剤が「瞳孔散大筋のブロック」を起こすからなのですが、α1受容体を選択的に活性化させる「フェニレフリン」という薬剤でこのIFISは予防できることが知られるようになってきました。ただし、そのためにはミニムスという使いきりタイプの点眼剤を個人輸入しないといけません。また、一般的な散瞳剤の「ミドリンP」にもフェニレフリンは入っていますが、原液でないと前房(目の中)内濃度が足りないし、そのミドリンPには防腐剤が入っているので原液使用は無理です。 ただ、身近なところで出来る範囲でもこのIFISを予防する手段は色々あります。今日はその対策を個人的メモ書きとしてまとめておきます。 1. そもそも白内障手術前に、α1遮断剤を飲んでいないかをしっかり確認する。割と「そういえば泌尿器科の先生に内服開始を勧められている」ということも多く、その場合は先に手術をさせて貰えば良い。また、現在α1遮断剤を内服中の場合、休薬してもIFIS発症は予防できないというデータが多いが、個人的な臨床体験からは「休薬すると少なくともパワフルなIFISはほとんどない」のも事実であり、症例の難易度によっては可能であれば一時的な休薬をお願いすることも魅力的なオプションだと思う。 2. 実際の手術に際して1番効果があるのはこれ。新品のネオシネジン点眼液(フェニレフリン)を1mlシリンジに吸っておいて、手術の洗眼後に結膜下注射しておく。その量は0.1mlくらい、感覚としては少し結膜が膨れるくらいで十分で、これでIFIS発症率を大幅に減少させることが出来る。 3. 散瞳不良症例はIFIS発症の可能性が高いので、必要に応じてBSS2.5mlにMP1滴入れてそれを前房内投与する。(ただし想定リターンがリスクを上回る場合のみ) 4. それでも無理で術中にパワフルなIFISを起こした場合には、前房形成能の高いヒーロンVを適宜使用する。(ただし個人的にはヒーロンVにはあまり過度な期待を抱かない方が良いと考えている) 以上です。これからもより安全で効果的なIFIS対策を追い求めて行きたいと考えています。
2011.09.25

1000万人以上の使用者がいると言われる、コンタクトレンズ。その購入形態は様々で、眼科専門医で処方されている方もいれば、インターネットの通販で安く購入されている方もいます。ネットで購入されている方の中には、「そういえば、もう何年も眼科にはかかってないや。」という場合が意外に多くあるのですが、コンタクトレンズというのは目に直接入れる高度医療機器であり、常にばい菌が付く感染症のリスクが伴っています。 特に日本というのは年間の寒暖さが激しく四季のある国です。季節に応じて様々な感染症が我々の大切な目を襲います。 そのため、 コンタクトレンズを使っている方は、季節の移り変わりごと、具体的には3ヶ月に1回程度は眼科専門医を受診して頂いて、目に異常が出ていないかを確認することが大切です。 かけがえの無い目の健康を守るため、是非覚えて置いてくださいね。
2011.09.20

さて、現在最も目に安全な「究極のソフトコンタクトレンズ」、ジョンソン&ジョンソン社のワンデーアキュビュートゥルーアイですが、いよいよ本日より、-0.5D~-6.0Dという良く出る度数が出荷可能となります。今までは一般的な度数でも出荷停止中のものがあり患者様に大変申し訳なく思ってきたのですが、今回の改善で状況はかなり良くなります。 復習になりますが、この「ワンデーアキュビュー・トゥルーアイ」 は、 「世界初のシリコーンハイドロゲル素材の1日使い捨てコンタクトレンズ」であり、競合他社は今のところまったく追随することが出来ていないことから、「世界で最も安全なソフトコンタクトレンズ」の名声を欲しいままにしています。 今回の出荷改善を機に、是非より多くの患者様にワンデーアキュビュートゥルーアイの別次元の快適さ・安全性を実感して戴きたいと眼科専門医として考えています。
2011.09.13

当院では、眼科手術補助薬のトリアムシノロンアセトニド(商品名マキュエイド硝子体内注用40mg)を採用しました。 このマキュエイドは「硝子体(しょうしたい)手術時の硝子体可視化」に用いるものです。具体的には白内障手術時に後嚢破損(こうのうはそん)という合併症が起こった場合に使用します。 後嚢破損が起こると、硝子体という目の奥の組織をうまく処理しないといけないのですが、この硝子体というのは透明から半透明のゲル状のものであるためなかなか見えにくいという問題があります。今までは経験と勘と処理する機械が硝子体を吸い込む音などを頼りに対処していたのですが、このマキュエイドを振り掛けると見えなかった硝子体が可視化されるので、より確実に安全に硝子体を処理できるようになります。 本当はこのマキュエイドが登場しないのが一番良いのですが、手術と言うのは「常に何があるか分からない」ものですし、これからも万全の備えを持って白内障手術に臨んで行きたいと考えています。
2011.09.06
私がクリニックを開業している四国・愛媛県八幡浜市にもいよいよノロノロ台風が近づいてきました。今、診察室から外の国道を眺めても凄い風が吹いているのが分かります。 こんな日は当然のことですが、患者様の来院は極端に少なくなります。眼科は命に関わる診療科ではないので、受診動向に天気の影響がとっても大きいんですね。(笑) 今日は今までの手術記録をまとめたりとのんびりと過ごしています。台風上陸は明日なので、明日の方が更に外来は空いているだろうと思います。
2011.09.02
私は名古屋出身で昔から中日ドラゴンズの大ファンなのですが、今日は心配なニュースが流れました。以下に引用します。 プロ野球の加藤良三コミッショナーは1日、中日の井端弘和内野手(36)に 「アンチ・ドーピング規則違反」があったため、けん責の処分を科したと発表した。 日本人選手の規則違反は2007年に検査が本格導入されて以来、初めて。 球団には制裁金300万円を科した。禁止物質を含む内服薬の申請を2009年に 一度はしたが、球団が申請期間失効後の反復申請を怠っていたため今回の処分となった。(引用終わり) 井端選手はその技術だけでなく人格も素晴らしい選手で、ドーピング違反などするはずはありません。ネットの情報を総合すると、井端選手は元々強度の近視でコンタクトレンズを装用して試合に出ていたのだが、イニング間に目薬を点しても試合終盤には間に合わなくなるほどの極度のドライアイでもあり、視力矯正のために2008年からレーシック手術を3回受けた。しかし視力は思ったように改善せず、逆に角膜を削りすぎてほとんど無くなってしまい、すぐに炎症を起こして視力が落ちるような状態になってしまった。そのため球団に申請の上で、炎症を強力に抑えるステロイドの目薬を使用していたが、球団が反復申請を怠っていたため、ドーピング違反になってしまった、ということのようです。 なので、今回の事件はドーピング違反などというような大げさなものではなく球団の単純ミスであり井端選手が責められる様なことではありませんが、眼科専門医としては、ネット上の情報が正しいと仮定すると井端選手がレーシック手術を受けられたことに対していくつかの疑問があります。それは、 1. レーシック手術後は、角膜の知覚神経の一部が切れてしまうためどうしてもドライアイ症状が出やすくなる。井端選手が「イニング間に目薬を点しても試合終盤には間に合わなくなるほどの極度のドライアイ」だったのだとすると、そもそもレーシックを受けられるような角膜の状態だったのかに謎がある。 2. レーシックは角膜の一部を削ることによって視力回復を目指す手術だが、削れる量には限界があるため(全体の20%程度まで)、あまりにも近視が強い場合には手術の適応が無い。井端選手は強度近視だったこと、更に普通は1回で済むはずの手術を3回も受けていることから、角膜を無理して削りすぎて角膜拡張症(エクタジア)という、レーシック治療後に角膜が突出してきてゆがみが出ることにより近視・乱視が進行してしまうやっかいな状態になってしまったのではないかとも考えられる。つまり、近視の度数・角膜の分厚さから考えて安全にレーシックを出来るような目の状態だったのかに謎がある。 ということです。皆様もレーシックを検討される場合には、是非信頼できる眼科専門医に御相談下さいね。
2011.09.01
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