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当院では開院以来、怠ることなく常に設備投資を続けています。それは進化の激しい眼科医療の世界では極めて大切なことです。検査機械は新しく更新しなくてもそれなりの診療はもちろん出来るのですが、少しずつ全国標準の眼科医療レベルからは乖離してしまうことになります。 私は八幡浜地域の皆様に常に全国レベルの眼科医療を提供したいと願っており、開院2年目には糖尿病網膜症などの治療で使用する「レーザー光凝固機械」を緑色単色のものから緑色と赤色の2色が打てるもの(赤色は白内障があってレーザーが入りにくい患者様に使用)に買い換えましたし、3年目の今年はこのブログでも以前から紹介しているOCTと言う機械を新規に購入しました。 そして今月に入って、更にまた新たな機械を当院に迎え入れることが出来ました。日本のトーメー社製の光干渉眼軸長測定装置の「OA-1000 Advance」です。 これは白内障手術前の検査に使う機械で、具体的には目の表面から奥までの長さ(眼軸)を正確に測るものです。旧型のOA-1000も以前にデモさせて頂いたことがあったのですが、今回購入したのはその進化版のOA-1000 Advanceです。旧型機に較べると新しい「カタラクトモード」というものが搭載されていて、白内障が進行してしまっている患者様での測定可能率が上がっています。 シンプルで極めて使いやすい機械です。白内障手術前の検査精度が更に上がるものと期待しています。
2011.03.29

今、家で夕食を食べながらテレビを見ていると、バラエティ番組で「世界一飛び出る女性」と言う方が登場していました。 同じような方を以前にも何度もテレビやネットで見たことがありますが、 こういった意図的に目の玉を外に押し出すような行動は圧力の変化が激しくなるので、目の神経を痛めて緑内障を引き起こす可能性があると以前から眼科専門医として心配しています。 なので、皆様は絶対に真似しないで下さいね。
2011.03.22

さて大変勉強になった「眼科診療アップデートセミナー2011 in 京都」ですが、最も印象に残ったのが緑内障の講義でした。 この日記でも緑内障の診断にOCT(3次元眼底撮像装置)と言う機械が抜群の威力を発揮することは何度も書いてきましたし、当院でも今年度、既に日本のトプコン社の 「3D OCT-2000」 という名機を導入済みですが、 今回もこのOCTについての講義がありました。 中でも非常に印象に残ったのが、「OCTの利用率を上げるのが大事」という話でした。これはなるべく多くの患者様に一度はOCT検査を受けて戴くことが大切ということです。 何故かと言うと、緑内障の方の視神経というのは極めてバラエティに富んでいるので、眼底(目の底)を我々眼科専門医が見ても「緑内障があるかないかはっきりしない。黒か白か良く分からない。」ということが正直頻繁にあるからです。そういった場合にOCTを撮ると、診断の助けになる多くの情報が得られるんですね。 ↑ 例えばこの患者様は、目の神経を見ただけでははっきりとした緑内障はありませんが、OCT検査では異常がバッチリと検出されています。 ↑ また、この患者様はまだ視野検査では異常は全くありませんが、OCTでは初期の異常が鋭敏に捉えられています。 更にOCTは、上記のような「紛らわしい症例」だけに役立つわけではありません。 ↑ これは全く正常の患者様ですが、OCTを撮ると、「あなたは視神経が完全に正常で、つやつや元気なので絶対に大丈夫です。」と確信を持って説明できます。これは凄いことなんですね。 ↑ また、これは中等度に進行した緑内障の患者様ですが、OCTを撮ると目の神経の下側が元気なので将来的には上側の視野は長く残るし、まだまだ目の神経に余力があることが分かります。つまり、 「予後の予測」が出来る んですね。 このようにいまやOCTというのは、緑内障の診断のためには必要不可欠な機械になっているのです。講師の先生は日本を代表する緑内障治療の大家でしたが、 「もう、私達緑内障専門医よりもOCTの方が正確な部分もあるんだよね。」とポツリとつぶやかれていたのがとても印象に残りました。 緑内障の診断が我々眼科専門医の経験と勘に頼っていた時代は終わりました。 いまやOCT無しには緑内障診断の暗い夜道を歩くことは出来ない、いやむしろ歩いてはいけない時代 になったのです。 私はこの時代の変化に即応するため、自らのOCT読解技術をより上げることに全力を注いでいます。そのため昨年の12月にも大阪で第一回OCTセミナーに参加し、また今月も東京での第二回OCTセミナーに参加を予定していましたが、それは残念ながら東日本大地震の影響で延期となりました。 これからも進化の早い眼科医療のスピードに負けないように、毎日しっかり勉強していこうと思っています。
2011.03.20

さてここからは「眼科診療アップデートセミナー2011 in 京都」で勉強した中で、特に印象に残ったことを自分のメモ代わりに簡潔に書いていきます。 セミナーでは角膜移植に関する講義が複数あったのですが、この中では、「角膜移植は全層移植から、悪い部分だけを交換するパーツ移植の時代になった」、という話が印象的でした。 角膜移植というのは長い間、角膜全部を入れ替えるPKP(ピーケーピー)と言うやり方が一般的だったのですが、このやり方には、術後の乱視が強い、縫った部分からばい菌に感染することがある、拒絶反応が強い、移植した角膜が長持ちしにくい、などの欠点がありました。 それに対して最近では、角膜の表面側が悪い場合には輪部移植やDALK(ダルク)、角膜の裏側が悪い場合にはDSAEK(ディーセック)などというように、「悪い部分だけを取り替える」パーツ移植が出来るようになってきているのです。その中でも特にDSAEKが有望な手術法として広まろうとしています。 このDSAEKは、角膜内皮(+後部実質)という角膜の裏側の部分だけを入れ替えるもので、縫わなくて済むので乱視が少なく術後早期から視力が出る、感染が少ない、などの大きな利点があります。更にこのDSAEK、以前よりも術式が改良されてきており、かなり魅力的な手術になってきていることが実感できました。 眼科の手術と言うのは常に少しずつ進歩しています。それは角膜分野でも例外ではないんですね。
2011.03.18

さて3月4日から5日にかけて行われた、「眼科診療アップデートセミナー2011 in 京都」体験記の続きです。 3月5日の土曜日は朝早起きして少し京都観光をしました。今まで行ったことがなかった「国宝三十三間堂」に立ち寄ったのですが、 歴史の重みと迫力を感じる、数百年の昔にタイムスリップしたような錯覚に囚われる、重厚な空間でした。 その後はいよいよ待望のセミナー開始です。会場は「ウェスティン都ホテル京都」でした。落ち着くいいホテルでしたね。 会場はホテルの大きな会議室の一つでした。 豪華な講師陣を誇るプレミアム感の溢れるセミナー(参加費も30000円と超高額!)なので、会場は多くの眼科医で大入りです。 私は会場の最前列に座り、極限の集中力を持ってセミナーに臨みます。 いよいよセミナーが始まります。 (続く)
2011.03.16

さて先週の金曜日~日曜日は、京都市で行われた「眼科診療アップデートセミナー2011 in 京都」へ参加してきました。 これは、角膜・ぶどう膜・緑内障・網膜・神経眼科・眼形成などの眼科の各専門分野の日本のトップの演者の先生が集結して、最新の話題・知見を講義してくれると言う夢のような内容で大変勉強になるものなのです。 私は3月4日の金曜日に大阪伊丹行きの最終便の飛行機に乗るために松山空港に到着しました。到着してみると飛行機の出発まで少し時間があります。お腹も空いていることなので何か少し食べようと思ってレストラン街(と言うほどのものでもないのですが、5つくらいのお店があります)をウロウロします。 ただ、実はウロウロしても私が入るのは大抵は「そば吉」というお蕎麦屋さんです。 それは何故かと言うと、 ↑ この「そば焼酎のそば湯割り」が美味しく、また非常に安価で魅力的だからです。なんと一杯200円なんですが、普通の焼酎のお湯割りを頼むと400円か500円はするので、どうしてこの「そば湯割り」だけがこんなに安いのかは疑問です。きっと蕎麦屋さんならではのサービス価格なのでしょう。また、お酒のおつまみも豊富かつ値段が安いので、それでどうしても毎回「そば吉」に吸い寄せられてしまうんですね。 今回もつくね芋とろろや天ぷらをお供に、「そば焼酎のそば湯割」を戴きます。そば湯はビタミンB2(角膜・結膜などの目の粘膜を正常に保つ働きがある)やルチン(ビタミンPとも呼ばれるポリフェノールの一種で、目を含む全身の血管を丈夫にする作用や、老化防止に役立つ抗酸化作用がある)が豊富で、非常に目に良いものなんですね。とっても美味しいので、1杯で済まずついお代わりまで。。。。 さて、飛行機の出発の時間が近づいてきました。今回のセミナーでどんな勉強が出来るのかを楽しみにしながら松山を後にします。 (続く)
2011.03.10

さて先日の日記の続きです。怖い怖い「白内障術後眼内炎」の発症予防には、手術終了時に前房(ぜんぼう:目の中)に抗菌剤を投与するのが効果的であるという2006年のヨーロッパでの発表は我々白内障手術医に大きな希望を与えました。 そして今回の論文で患者様に投与されたベガモックス点眼液は、 最新の第4世代フルオロキノロン系抗菌剤で、様々なばい菌をやっつけてくれる広域スペクトルと最小発育阻止濃度(MIC)を誇る、現段階で「眼科最強」の戦闘力を持つ目薬なのです。更に防腐剤無添加の目薬なのでTASS(中毒性前眼部症候群)のリスクも極めて低く、投与法も目薬をそのまま目の中に入れるだけという簡単さです。 論文によると、ベガモックス0.1mlを前房内に投与するとその濃度は952μg/mlとなります。ベガモックスが眼の中でばい菌をやっつけてくれる濃度であるMIC中央値は3μg/ml以下なので、単純に考えると絶対に必要な濃度の300倍の濃さで手術終了時の眼の中が満たされることになります。これは凄いですね。眼の中の水(房水:ぼうすい)というのは自分で作っているのでだんだん入れ替わっていくのですが、それでもこの濃度だと術後最低5時間は安全なMIC濃度を保つことが出来ます。 また別の報告では、このベガモックスを目の中専用のBSSという液で10分の1の濃度に希釈して手術終了時に投与する(この場合は前房と言う部分を全置換)というやり方も紹介されていましたが、この場合でも濃度は450μg/ml程度と十分です。 理論的にはこれらは眼内炎予防に驚異的に効果がありそうです。ただこの論文ではベガモックス投与の安全性を実証しただけで、その効果の検討はまさにこれからの課題ではあります。
2011.03.01
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