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次の日、朝の目覚める前に夢を見た仁美。彩香から少し離れ、仁美にはまだ入れないが、ささやくだけのことは出来る。少しだけ癒えた体の中でMが少しの間、仁美に伝えたい事があった。M:[…彩香は頑張ってくれている、君が元気に学校に来てくれるのを楽しみにしているよ、だから、これだけは言いたくて。学校に行く途中、何があっても、彩香に会う事だけを考えて、もちろん、僕にもね…]そう言い残して、夢から覚めた。人を危めるのは簡単だが、癒すまでにいくのはかなりの時間を要する。Mは、彩香があそこまでしてくれなかったら、仁美に夢を見せる事すら出来なかっただろう。彩香の自宅には、母が心配して彩香が目覚めるのを待っていた。母:「何も言わないからこの子。」保健室の先生からは、具合が悪かったのは軽い貧血という事になっていた。だが、知っていながら母に嘘の連絡をしているのだ。先生にもあの一件の事を知っていた。それは、あの赤津先生が情報流しているからだ。赤津先生の秘密とは?そしてその目的は一体何か?目が覚めた彩香は、目の前にいた母を見つけ、彩香:「何してんの?びっくりするじゃん」母:「先生が心配していらっしゃってたよ、大丈夫かって」彩香:「そんなん、大丈夫に決まってるじゃん、変なの」彩香は、理解出来ないまま、いつものように、パンを加えながら玄関を出た。母は、何故か、貧血の事が言えなかった。彩香が貧血なんて今までなかったからだ。それに、貧血なんてありえないと思い、その時は気も止めずに母:「ま、大丈夫っしょ」と、仕事に行く準備をしていた。彩香は、学校のある駅に降りる時、改札口を出る仁美を見つけた。彩香:[彩香、出てきたンだ]話し掛けようとした時、仁美の様子が違っていた。何やら耳障りな仕草をしながら、俯き加減で歩いていた。そっと、仁美の肩を叩いて、彩香:「おはよ」すると、仁美:「淋しかった…」と言って、彩香を抱きしめた。彩香:「どした?なんかあった?」仁美:「え、ええ…」彩香:「ああ、わかったわかった、頑張ったね」仁美:「?」仁美は何も言ってないのに、彩香の反応が妙に思ったが、すぐに安心した気持ちになって、肩を並べて学校に向かった。彩香は、仁美にやはりろくでもない噂が立ち並んでいたことを知ったのだ。それを仁美に言わせまいとしたのだ。Mがついてから、人の心が読めるようになって、1週間が経過した。使い方にも慣れ、相手を傷つけない程度の受け答えも出来るようになった。辛いのはやはり、知りたくない心も知ってしまう事。知られたくない気持ちは誰にだってある。それを思うだけなら何も怨まれない。それを口にしただけで、どうなるかなんて誰にもわからない。人気blogランキングへ
2007.04.19
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赤津先生とは、高校1年生の時の担任だった。彩香達は現在新3年生となり、国語の授業も3年目を迎える。赤津先生はとても生徒の気持ちに熱心で気を使っている方だった。だから生徒からは、信頼性の高い部類に入っている。むしろ、偉い先生ほど信頼性が薄く、校長の話しなどほとんど耳に入っていないかもしれないくらいだ。中で信頼性の低い、副校長には、「簡単ではありますが…」と言っておきながら校長より長い話しをする事と、セクハラ疑惑が噂されていたのだ。しかしながら、噂でしかないので、これといった証拠もなく、証言もない。噂とは、気に入るか気に入らないかで決まってしまう可能性もあるので、それだけで判断される、人間が決められてしまう、ある意味、恐るべき武器なのだ。彩香は、彼の言葉をすぐに信じるわけにはいかなかった。即効な先入観だけで人を判断したら、単なる悪い噂の発端に成り兼ねないし、それだけで人を失うかもしれない。彼の能力が、人の心に入るという事は、確かに噂と一致するのかもしれないが、思っている事が悪い事なら、それを実際に行動にするかしないかの判断はつくはずだ。地球上にいる全ての人間の心の中には必ず悪い事が芽生えているから、だれでも罪を犯すチャンスはあると思うが、ただそういうケースを思うだけで実行しない方がほとんどである。こうしたら結果が見えている人、それに対して、先が見えていない人。その違いが犯罪を生む事になるのだ。彩香も彼も、[噂]自体、罪だと考えていた。彼が彩香を選択したのもそれが理由だった。しばらくすると、彼は、[…やはりこの事態は、リセットに踏み込むしかなさそうだね…]彩香:[何、前もそんなこと言ってたわね][…ああ、そうだったね、それには覚悟も必要だとも言ったっけ?…]彩香:[ええと、そうだったかな?]彩香はごまかしながら話していたが、[…あんた、僕を誰だと思う?…]彩香:[何急に?][…仁美が作り出した人間って言ったが、本当は選ばれたんだ…]彩香:[どこかから来たって事?][…そう、でも、理想の彼氏にはかわりはないよ…]彩香:[仁美が作り出したわけじゃないんだ?][…いや、作り出してくれないと現れないんだ…]彩香:[ややこしいけど、派遣みたいなものね][…ああ、その言い方でいいよ、ある意味、任務見たいなものだからね…]彼の任務とは、当然ながら、仁美の心をケアすることだ。仁美に悩みがあり、それから逃れたい、何かに縋りたい気持ちが発生した時、派遣ではないが、指令のスイッチが入り、仁美の思い描いた、「心の友」を呼んでいた。彩香:[名前はあるの?][…ないけど、皆が、Mと呼んでた…]皆とは?そしてMとはどういう意味か?人気blogランキングへ
2007.04.18
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彩香は、ひそかに仁美にメールを送っていた。だが、返事がまだない。彩香:「この噂、どうやって食い止めればいいのかなあ?」そう思いながら、とりあえず、教師達を探ってみることに。そういえば、声の彼が最近彩香にいなくなっている。すると、突然、仁美からメールが届いた。仁美:[ゴメンね、あたし、自信喪失になっちゃって、何もしたくなかったの、でも、さっき、あたしの心の中でささやいてくれた人がいたの、信じてもらわなくてもいいけど、なんか勇気をもらったような気がして]メールはそこで終わっていた。彩香にはわかっていた、あの彼は、入りにくくなっていた仁美に何とかわかるように、伝えられたんだと。仁美の心が少し治まったのはいいが、地区で広まった噂をどうするか?保健室の柚木先生は、生徒の心のケアを診察する精神的分野の医師免許を持っていた。相談に来る生徒を一人一人診断して、その場でアドバイスをしてくれる、とても生徒から信頼を受けている。仁美も相談をしていた1人で、他の生徒より多く診てもらっていた。柚木先生は、仁美の事を心配して、その後の対策を考えていたのだ。彩香も力になろうと先生に持ち掛けたが、柚木先生:「たとえ親友でも、踏み込めない場所があるわ、先生としては、その部分と接触するのは危険だと思ってる。」彩香:「触れない程度にやるから」柚木先生:「触れなくても勘が働くものよ、だから、あなたの気持ちだけで充分よ」彩香:「……」彩香はがっかりした、が、仁美のためだと思い、影で応援することに。ふとした時、M:[…やあ、またしばらく…]彩香:[仁美はどうしたの?]M:[…知ってたか、仁美はとりあえず大丈夫、ただ問題がある…]彩香:[何?]M:[…仁美はあの保健室に何回か通ったみたいだけど、怪しいんだよね…]彩香:[どういう事よ?]M:[…さっきあんたに入る直前に感じた事があってね、昨日、保健室にいったでしょ?…]確かに昨日は気分が悪くて保健室に行っていた。M:[…あんとき僕が入ってたらすぐにわかったんだけどなあ。残念だ…]彩香:[意味がわかんないよ、いたら何がわかったの?]M:[…噂をもらしている犯人さ…]彩香:[何だって?!]彩香は彼を真っ先に疑い、耳を、心を閉ざした。保健室の先生というより、会いに来た赤津先生が怪しいと判断していたのだ。彼を信じるか、それとも、先生を信じるか?少なくとも、仁美が作り出した幻想を信じられるかどうかだった。人気blogランキングへ
2007.04.17
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数日後、急に仁美が学校に来なくなった。学校中に広まっている仁美の噂は更に悪い方向に向かっていたのだ。全校に広まっている噂は、とうとう学校以外にまで発展していたのだ。家から出ると、親どうしで会話しているのを見つけた。その噂は、やはり多人数で、ないことまで話しが進んでいたのだ。自殺未遂した親の子供とか、火事で野宿しているとか、ひどいのは、自分が悪いのに仁美達の責任にする人まで現れ、人間の悪い所が出てしまっている。悪い部分を数えればきりがないのが人間。良い事を10回やっても、悪い事が1回でもあればおしまいだ。何故噂が増殖していくのか、学校側も深刻に考え、街に調査を始め、いろんな角度から噂の根源を探ろうとしていた。彩香は、学校中の噂がまる聞こえだったが、根源はどうやってもあばけない。次第に頭が痛くなってきて、吐き気がするようになってきた。彩香:「先生、ちょっと気分が悪くて…」と言って、保健室へ行くことに。1階の片隅にある保健室に向かう。ノックをすると、「どうぞ」という先生の声。彩香:「失礼します、あの…」保健の先生:「わかってるわよ、早くここで休みなさい」彩香:「?」言わなくてもわかるのは、やはり彼の言っていた能力からきているものか。ベッドに横になり、カーテンを閉めた。しばらくすると、もう1人、保健室を尋ねて来た人がいた。「失礼、どうだい、調子は?」彩香:[これは国語の赤津先生だ。何の用なんだろ?][………]会話が途切れて、聞こえてこない、一体どういう事だ?彩香が頑張っても聞こえて来ない会話があるのか、不安げにカーテンの隙間から覗いてみると、2人はさりげなくキスを交わしていたのだ。彩香:[なるほど、そういう事ね]と、納得した彩香は、再び頭痛がしてきたので、もう一度横になった。ところが、このあとに、不思議な事が起きたのだ。彩香が気が付かない方法でこの先生達、何やら秘密の会話が交わされていたのだ。この一件、どうも学校内部も視野に入れなければならないと気が付いていたのは、あの彼だ。彼は自分の体を元から持っていないために、心を通じて誰かの協力がなければ実行出来なかった。彩香が立ち直るのを待つしかなかったのだ。保健室での密会は、仁美の件を含め、更なる事件への引き金となっていくのである。人気blogランキングへ
2007.04.16
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仁美だけが素のままだった。人の心を盗むようなことも、憎むこともなかった。[今あたしは仁美を助けるはずなんだけど、何だか仁美の表も裏も素直なんだよなあ]ギャップはあるものの、どちらも仁美そのものだった。それが性格であり、彼女を作り出していた。すると、[…しばらくだね…][あ]仁美が様子を伺い、「どした?」「いや、何でもないよ」[どっちが監視されてるんだか…]突然戻ってきたあの彼は、[…仁美の両親を見て来たが、どうやら自殺未遂と放火では捕まらないようだよ…]彩香はそれを聞いて、病院側が下した結果となると、無罪にはなるけど、通院する可能性があるって事が理解できた。彩香:「仁美って今そういえば、今どこにいるの?」仁美:「叔母さんちだよ、あの商店街の八百屋の叔母さんち。知ってるでしょ?」彩香:「ああ、わかった、あの2階の部屋でしょ、昔遊んだとこ」仁美:「そう、昔のまんまだよ」仁美は笑いながら、「そこに住むなんて夢にも思わなかったよ…」目には涙が溜まっていた。[…彼女、かなり参ってるようだね…]謎の声は一体何なのか、何処から来たのか?彩香は今度こそ聞き出そうとした。[…今は仁美が相手…]といって、逃げていた。思いやっている仁美の心には、なぜか窮屈なものを感じる。常に無理してるって事なのだろうか。クレープを食べ終わり、改札へ向かい、またいつものように、仁美:「また明日ね」と、反対方向に歩き出した。しばらくすると、あの声が、[…実は、僕、仁美が作り出した彼氏像なんだ、思い続けているうちに、仁美の心の中で、知らないうちに意志を持つようになった。そしたら、急に仁美の体に居づらくなった。それで、外に出て見たら、ずっと仁美の心しか判らなかったのが、突然、人の心が見えるようになった。しかも複数がイッペンに。…]彩香はそれを聞いて、思わず吹き出した。[あんたが仁美が理想している彼だってぇ?笑っちゃうなあ][…馬鹿、笑ってる場合じゃない、僕がここにいるって意味がわかるかい?…][何よ?][…彼氏がいないって事さ…]彩香は納得していた。[…あれ、怒るかと思ったのに、意外と強いんだね…][そういうの強いって言わないでしょ、ということは…][…?…]彩香は勿体ぶった言い方で、彼を困らせた。彩香には好きな男性がいたがまるっきり片思いだった。しかも違う学校だったため、会う事も少ない。[あたしが理想の男性を思えば、あんたは消えちゃうのかな?][…消える場合は、実在しない理想を立てた時、でもあんたは、実在する彼氏を思っているから消えないんだ…][それを知ってて来たわけ?][…そうかもね、でも勘違いしないでね、消えるというよりは、変わると言ったほうが正しいかな…]彼は声だけでもかなりのパフォーマンスぶりを見せていた。人気blogランキングへ
2007.04.12
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自分自身は救えない、それは一体どういうことか?彩香にとって謎めいた事が起きている。外部では火事の件、噂話しの流れや、友達の意味。そして謎の声の存在だ。一体、どこから、どうやって、なぜ彩香なのか?[この前言ってた、リセットとかで仁美を救えるって事?][…そのはずだったけど、今となっては数が多過ぎるな…][あんときやっとけばまだ2人、今は……え、全校!?][…仁美一人を救うために、あんたも全校を敵にまわすか、それとも…]言いかけた声は突然消えた。[何処?どうして黙るのよ]不安になってきた彩香は、リセットする意味を考え直していた。人間の表と裏、どちらも同じにしている人は少ない。妬む人、憎む人をリセットしたら、本当に仁美は助かるのか?リセットされた人はどうなるのか?授業にも気が入らない中で、彩香はぎくしゃくしながらもクラスメイトにしがみつき、浮かないように、目立たないようにしているはずだった。だが、意識すればするほど気配を感じ、視線を感じ、勉強をするという感じではなかった。その状況は、仁美にも同じ感覚に曝されていることを彩香は視野に入れておかなければならない。[なんか、丸裸にされたみたいな…]噂と視線が行き交う教室で、彩香は、[リセット・・・・]を初めて意識しだしていた。彼が言っていたことを思い出そうとしたが、ここでは全てをアピールすることになる。放課後を待ち、我慢しながら授業を受けるしかない。彩香の気持ちは仁美の気持ち、それは、表向きと裏側のギャップの大きさをしらしめるバロメータで、頭に強く焼き付くくらいの濃度で表示されている。まるで監視するかのように。[仁美はこのことに気付いているのかな]どう思っても仁美とは会話が出来ない、つまり、対象には直接手が出ないって事なのか?放課後になって、彩香は仁美に話しかけた。彩香:「ねぇ、クレープ食べに行かない?」仁美:「あそこのだったら行かないわ」彩香:「え、じゃあ、裏側の所は?」仁美:「そこならいいかな」仁美は例のクレープ屋には佳代と亜子が行きつけであることを知っていた。歩きながら彩香は、仁美の気持ちを探っていた。それに気付いていないにも関わらず、タイミングよく、仁美:「あたしさあ、学校辞めるかもしれないな」彩香:「え、急に何?」彩香がびっくりしたのは、発言したことより、読めなかった事だ。そんな事を考えていたとは思えない。仁美:「嘘だよ、びっくりした?」[!?]人気blogランキングへ
2007.04.11
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[一体、仁美に何が起きているの?][…あの火事は、仁美が出掛けた後に発生したって言ってたよね、あれ、無理心中だったんだ…][え、何で、どうして!][…本当は、あの家庭はとっくに事業を失敗してた、けど、お金持ちというプライドが捨てきれずに、無理矢理セレブな生活を続けていたばっかりに、とうとう底を着いてきたんだ…][詳しく知りたい、もっと][…いいけど、これ以上知ると、同情か、イイキミか、後で面倒くさい事になるかもしれないよ…]彩香は、深呼吸してから、[いいわ、あたしは絶対仁美の味方だから!][…それを口にして安心していいかな…][何よ、疑ってるの?][…だから、あんたの中に居て、出任せは効かないんだよ…]「そうだったぁ!」また周りの人に注目された。家に戻ると、平凡な家庭である彩香の家は、両親が働いていたため、夕飯は彩香が作る。妹の怜はまだ小学生なので、面倒を見る必要もあったので、高校生の段階で既に家事、養育等の経験をしていた。彩香:「今日はコロッケだよ、怜」怜:「え、こないだもコロッケだったよ」彩香:「うるさい、食べれるだけましでしょ」彩香はまだ料理のレパートリーが少なく、どうしても揚げ物や、冷食中心となってしまう。便利になってきた調理でも、逆にマイナスになる点が多く、好きな食べ物ばかり傾いてしまいがちな栄養のバランスや、調理しなくてもいい冷食などで、ますます料理が作れない人が増加している。経験を積むしかないが、やはり最終的には母親の怠慢とされてしまう。彩香は、自分のため、俊のために働いているんだと胸に込めて、小さな家庭に貢献していた。[…皆がその気持ちでいたら素晴らしいだろうな…][何関心してるのよ、いつでも必死なんだからね][…そうだったね、やはりあんたを選んで正解だったよ…][選んだ?また訳判らないこと言ってるし]彩香は謎の声との会話も慣れ、普通に生活を熟すようになった。ある日、学校に仁美が現れた。皆が様々な噂をしている中をくぐり抜けながら、彩香のいる教室へと向かう。職員室で挨拶を済ませ、礼儀正しいいつもの仁美をアピールした。しかし、その行為が、火事の一件で、ますます悪い印象へと発展していった。[…まずいな、このままじゃ、あの子、耐えられなくなるぞ…][確かに、まわりのブーイングが倍増しているみたい][…ここまでくると、からかうのも、同情するのも同じになっちゃう、だから、あの時やっとけば……][え、あたしのせい!?][…友達だからって気持ちはわかるけど、友達を失うより辛い目に合っているのは仁美のほうだよ、ああやって無理して振る舞っているのを放っておけるかい?…][じゃあ、どうして仁美ん中に行かなかったのよ]謎の声は、渋々答えた。[…自分の中で自分は助けられないんだ…]
2007.04.10
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いったい、仁美は誰のために我慢していたのか?[…あの子、家系が家系だから、家族に認めてもらおうと必死だった、家族の中では一番落ちこぼれだった自分が、そこまでやる理由は、家族の中で何か問題があったようだね…][何でそこまで知ってるの?っていうか、あんた誰?]すると、突然声が聞こえなくなった。すぐに、後ろから、「彩香、何してるん、帰る?」亜子と佳代だった。彩香はすぐにさっき聞いた噂話しが頭を過ぎった。彩香:「う、うん、いこっか」仲良くしているが、本当は何を考えているのか、疑うようになった。そんな気持ちでこれから付き合っていくのかと思えば、何だかぎこちない気もしたが、彩香はそれを乗り越えようと思った。駅前のクレープ屋で好きなクレープを買い、駅構内にあるベンチで一休み。すると、亜子が、亜子:「ねえ、仁美って今どうしてるん?」彩香:「えっ、さあ」佳代が、「何だ、かわいそうなんじゃん、こっちがなんかしたほうがいいんじゃない?」急に、彩香の心を読むように喋りだした佳代。すると、亜子:「え、仁美はそんなことまで考えてた?嘘みたい」次々と明かされる仁美の情報。彩香はようやく気付いた、仁美の話題が心で相手とリンクしたとたん、お互いの思いがスルー(表に抜ける)になることを。逆に、彩香:「佳代って、仁美にひどい事考えてない?」佳代:「急に何言い出すのよ、そんなこと思ってもいないよ」佳代が嘘をついた瞬間だった。彩香の頭に名前が表示され、[佳代…心の罪…重罪][?!]不思議に感じた彩香は次の項目に進ませたら、[判定…リセット…決断は彩香]リセット?彩香にはさっぱりわからなかった。[あいつ、あたしを何だと思ってんだ?]すると、佳代:「彩香、どうしたん?そんな怖い顔しちゃってさ」亜子:「そうだよ、仁美の事が心配なんだよね、きっと」彩香は話題を変えたくて仕方なかった。打ち消せば、元に戻るだろうと思った。亜子:「ね、今から仁美に電話してみようよ、こっちも心配だからさあ」するとまたあの表示が。[亜子…心の罪…重罪…判定……[もう、いらいらする!]変えたくても変わらない話題にいらついた彩香は、彩香:「このクレープあげるから、ちょっと用事思い出したあ、またね!」と、逃げ出すようにその場を去った。訳がわからなかった彩香に、またあの声が、[…逃げ出すくらい辛かったようだね、ちゃんと説明しなきゃ…]「なんなの?このままじゃ、友達無くすどころか、人間不信になっちゃうよぅ」思わず声に出してしまった。まわりの人が彩香を一斉に見た。[ああ、やだ!こんなの!][…頼むから落ち着いてくれよ…][落ち着けるわけないじゃん、消えろ!]怒りが頂点に達した彩香は、とっとと改札を抜けた。[…仁美なんだけど…][!]
2007.04.09
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彩香は、間違いなく声を聞いた。これは耳鳴りなんかじゃない。[授業中なんだから話し掛けないでよ]心の中で呟いてみた。すると、[…わかった、1つだけ、皆はあんたの考えが見えるんだ、今はね。じゃ、後でね…][何それ]心に思っただけで会話が出来る。しかし、謎の声とのやり取りには気付かない。彩香の気持ちだけのようだ。ところが、彩香にも信じられない能力がうまれた。[何?このざわめき!さっきまで静かだったのに]突然、何やら人の噂話しのような言葉が耳に入ってきた。まるで、わざと聞こえるように喋っているようだ。その中で、仁美の悪口らしき噂が入ってきた。[家庭円満に限ってあんな事件が起こるのよね][金持ちなんだからすぐに立て直せるじゃん][なんか同情できねぇなあ、いい君だぜ]間違いなく、仁美は敵を作っていたようだ。普段は大人しいが、成績は優秀だし、代表者に選ばれたり、部活動ではメインのレギュラーになったり、極めてトップに立つケースが多かったが、大人しくしているわりに、そんな待遇でどうしても目立ってしまうのは仕方なかった。だから、羨む人、讃える人もいたが、中にはよく思ってない人も少なくない。噂というものは、真実も嘘も全てその人の話題だから、複数の人が1人の事を話すという事がどれだけ重苦しいか、仁美は感じていたのだろうか。[悪口を言ってる奴は誰だあ?]彩香がそう思った瞬間、頭の中にその人達がリストアップされた。[え、何、この頭?!おかしくない?]そう思っている間に、なんと80名ほどの名前が挙げられた。別のクラスからも、そしてこのクラスにも当然いたが、もっとも親しいはずの佳代や、亜子まで入っていた。[こりゃああんまりだよ、あの2人がそんなこと…信じられない!]彩香はこんな能力いらない、早く元に戻してほしかった。授業が終わり、部活動のない日だった。帰宅しようとしたら、[…やあ!…]あの声だ。[何の用?あの能力を消してくれるの!?][…スループットか?それは僕のせいだけど、聞こえるのはあんたのせいだよ…][どういう事よ?][…それは、あんたが聞きたがっているからさ…][!]彩香は何も言えなかった。確かに仁美のことを言っている内容を気にしていたことは事実だ。でも、あんな悪口まで聞こえてくるのは予想外だった。[…結局、皆からどう思われても動じないのが、本当の意味での代表者であり、慕われる。彼女はただ躍らされていただけって事さ…][ひどい言い方ね、ちゃんとやってるじゃん!][…やってるさ、そりゃあ、言われた事も、嫌いな事もね、でもね、あの子は、自分のためにやってたんじゃないよ…]人気blogランキングへ
2007.04.08
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仁美の家の火災事件は、学校でも公表され、同情するものとしないものが必ずしも現れる。当然ながら、同情しないのは自分の事しか考えていない者の特徴である。"自分は大丈夫、関係ない。"仁美は、耳に入ってくる応援の言葉と、耳打ちする内容との対比に驚き、人間は外観だけでは難しいと思っていた。副校長に報告したあと、担任である田中先生と共にクルマで家へ向かった。仁美:「先生、うちね、本当は上手くいってなかったの」田中先生:「何突然、どういう事?」仁美は自然に話していた。まるで、被っていたものを削ぎ落としたかのように。仁美:「実はね、表向きは仲がいいと思われているのが辛くて……」田中先生:「どうしたあ?」涙をこらえながら、仁美:「本当は夫婦の中が最悪で、毎日喧嘩や暴力でひどかった。私には何もなかったけど、それより、父と母が対立しているのを見ているだけで辛かった。」溢れ出している涙が、仁美の顔を濡らし、どうしようもなくグシャグシャになっていた。田中先生は、外面のいい、調子にのっている親を何人もみてきたが、ここまで極端なのはおそらく始めてだ。大体の親は、少なくとも表裏はあるが、それは、礼儀とした基準や、その場の空気にも依ることもあり、決して見せ掛けの範囲ではなく、最低限のマナーとして考えれば普通の行動と言える。仁美のように、仲がよいと噂されていただけに、そのギャップに潰されそうになって、精神的苦痛に喘いでいた、被害者は子供の方にある。田中先生は、火災の一件の発端が何となくわかってきた。それでも何故、仁美が出掛けた後に発生したかはまだ謎だ。ハンカチを渡して、田中先生:「よくうち明けたね、それで拭け、ここはしっかりしなきゃ」田中先生は、カーオーディオに電源を入れた。---------------------------------------------------------------------------------------------5時間目の授業、彩香は、仁美の事ばかり考えていた。見つめられた時のあの目を思い出し、何かを訴えていたような気がした。そこへ、[…その思いはきっと正しいよ…]またあの声が聞こえた。今度は周りに友達がいる、だけど、聞いたことのない、甘い男性の声。彩香:「そんなカッコイイ声、ここにいないしなあ…」と独り言を言っていると、「彩香、彩香!」「え!」「前、前!」睨みつけている英語の由香里先生にようやく目に入った。彩香:「何でしたっけ?」由香里先生は、「何でしたっけじゃあないよぉ、仁美の事が気になるのはみんな一緒だよ、あんたが深刻になったってどうしようもないじゃん」なんでわかったんだ?考えていたことが。[…教えてあげようか…]人気blogランキングへ
2007.04.05
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仁美を捜しに行こうと、戻ろうとした時、目の前に仁美が現れた。仁美:「おっはよ、どうしたん?」彩香:「えっ、仁美知らないのぉ?!」仁美:「何が?」すると先生が、「お前の家が火事だって連絡が来たんだ、お前んとこに電話入らなかったのか?」仁美:「マジで!?そんなん、ええっ!?」動揺する仁美を支えて彩香は、彩香:「何かの間違いだよ、こんなに幸せな仁美がそんな目に合うわけないよ!」すると、仁美はその言葉に反応するかのように、仁美:「彩香って、やっぱりそんな目で私を見ていたんだ」彩香:「!?…」彩香は何が何だかわからなかった。彩香を振り切って、家に帰ろうとした時、先生:「今戻ってもしょうがない、連絡を待つんだ」仁美:「ほっとけって事!?」先生:「そうじゃない、お前が今行っても怪我されたら困るからだ」仁美:「それは違うね、困るのは先生の方でしょう!」仁美は涙を吹き飛ばしながら、先生にあたった。彩香:「仁美、なんか気に触るような事言ってゴメン、お願いだから一緒にいよう」すると、仁美は、仁美:「どうせ、イイキミだと思ってるでしょ」彩香:「なんでそんなこと言うの?」彩香は、仁美より動揺している中、仁美からそんな言葉を発する事が信じられなかった。しかし、その動揺した心のどこかで、羨む気持ちが悪いように表に出ていたのかと思えば、そう言われるのも無理ないとも思った。表向きとはいったいなんだろう?仁美の言葉は、仁美自身が彩香に対する意識そのものだった。人が切羽詰まっている時、相手の気持ちが読める一瞬がある。被害妄想が作り出す言葉とは相手の気持ちより自分自身がどう思うかで変わってくるのだ。ふだんは大人しくて優しいのに、本当は恐ろしい事を考えているとか、相手にそれが判ってしまう隙を見せてしまうのが被害妄想なのだ。意外にも冷静だった仁美は、先生に、仁美:「このままじゃ授業受けても頭に入らないよ、何をどうしたら…」先生:「そうだな、よし、副校長と掛け合って見るか」彩香も、「アタシにも何か協力したい」と仁美に声をかけた。仁美:「ありがとう、彩香、でも、私だけで大丈夫だよ」彩香:「そっか」そう言って仁美は先生と一緒に教員室へと向かった。この時だった、彩香の中で変わり始めていた。[…ねえ、あんた、今とても寂しいと思っただろ…]「え、何?」彩香に聞こえた謎の声。甘い感じの男性の声だった気がした。周りを見ても校庭には誰もいなかった。彩香は耳鳴りだと思い、聞き流した。それは、この章の最大のテーマに繋がる一歩にすぎない。人気blogランキングへ
2007.04.04
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たわいもない会話が続く中、彩香は、必ずしも一度は仁美の生活感らしき言葉を耳にする。仁美:「うちはさあ、いつも朝ごはんはパン食で、たまには和食なんかもいいんじゃないって家庭で議論になったりするの、変だよねぇ」彩香:「えっ、いいことなんじゃないかなあ、それって大事だよ、うちだって、ああじゃないこうじゃないって、うるさいもん」というパターンが多く、彩香はそれが普通の家庭なんだと思いでつい見栄を張って嘘を言ってしまう。本当は、両親なんかひとりも起きやしないのに。でも、そうさせていると自分を責めていた彩香は、はらがたつとまではいかないまでも、このままでも困らないし、両親に朝くらいは楽にさせたいと、言い聞かせていた。駅が近づくと、改札を抜けて、仁美:「じゃーね、また明日」彩香:「バイバイ」2人は逆方向に分かれた。仁美は、自然が好きだという父が決めた山が近い場所に住んでいた。そのために、家のまわりの環境には恵まれ、親が設計したセンスのいい家だという。家庭にも恵まれ、一流とまでにはいかないが、ちょっとしたいい企業に勤めているらしい。家族は兄と弟がいて、母は専業主婦。生活用品、映像機材、外車からゲーム機も一通り持っていた。ただ1つ不便なのは、家が遠い事。6時から家に着く頃には8時過ぎで、それでも皆と食事をするというから、彩香にとっては完璧であり、参考にしたい事ばかりだった。彩香:「あーあ、なんでこんなに違うのかなあ、同い年で、同じ学校に行き、同じ日本人で…どこから違うんだろ?」彩香は仁美を羨ましいと思いながらも、どこかで負けたくないという意志が働いていた。そういう意味でも、失いたくない親友でいたかった。しかし、彩香の思いは、やがて、ある事件がきっかけで、とんでもない事が起ころうとしていた。ある月曜日、いつものように学校へ向かう彩香。学校の近くまで来た時、校門から先生が駆け寄り、先生:「彩香、お前、仁美の事知ってるよな?」彩香:「どうしたんですかあ、いきなり?」先生:「さっき、電話があってな、仁美の家が火事になったって報告が入ったんだ!」彩香:「う、うそぉ!」彩香はびっくりして耳を疑った。先生:「どうも、仁美が学校に出かけた後みたいなんだ、だから、あいつ知らないよなあって」彩香:「ケータイに連絡してみたら?」彩香は、学校どころではないというくらい、焦りと胸の高鳴りを感じた。「幸せな家庭が…!」
2007.04.03
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朝ごはんを食べる事の重要さをどれだけの人間が知っているか?おそらく、大体の人は知っていること。でも、知りつつも朝ごはんを抜くというのは、時間がないからという理由が大半だろう。家庭の生活リズムの種類は、それこそ数え切れないパターンがあると思われる。彩香は、いつもと変わらない生活感に何となく興味を持つようになる。しかし、その何となく興味を抱くきっかけがはっきりしていない。「同じ行動っていうのは、変える必要がないって事かなあ?」学校に向かっている途中、きっかけもなく、ただいきなりそんなことを考えていた。「何考えてんだろ、どうでもいいよねぇ」土壇場で考えるのを止めた。授業が始まり、朝礼のあと、親友の仁美に、「今日さあ、朝ごはん食べたらマズくって、話しになんないよぉ、彩香んちはおいしいの?」彩香は、「えっ?ええ、まあ」「いいやねぇ、ていうか、母さんがマズイの作っちゃあおしまいだよぉ、うち最悪!」「朝ごはんかあ…」彩香は朝ごはんを食べる習慣がなかった。それでも昔はちゃんと食べていたこともあったが。「そういえば、いつから食べなくなったのかなあ…」彩香の家族は、母、父、妹の4人構成。父は中小企業の印刷会社の中にあるデザイン部門に勤め、給料は安定はしているものの、横線状態が数年続いていた。子供が大きくなるに連れて、進学などで資金がかかるようになり、母もパートで働くようになっていた。「それからかあ」彩香は、朝ごはんを食べなくなった原因を思い出した。「あたしのせいだね…」稼ぐために働く、その言葉の中身には、とても大切な事が隠されている。生活感は今のままに普通でいられること、つまり、普通を保つために働くという意味であり、安定、教育、そして、家族の幸せを願う事が隠されているのだ。彩香は母に頼り過ぎていたのかもしれない、仕事の疲れから朝ごはんが作れなかったことを恨む前に自分自身はどうなのか確認すべきだろう。放課後、彩香は、仁美と帰るために教室で1人待っていた。仁美が部活から戻るのはだいたい6時過ぎる事もあったくらい、バスケ部ではレギュラーでもあり中心格だった。彩香はというと、スポーツは苦手でテニスを何ヶ月かやったが続かず、結局暇つぶし的に写真部に付いていた。ようやく仁美が部活から帰って来ると、「まったあ!?じゃあ帰ろっか」「う、うん」いつも通っている学校と駅までの間。かなりの距離があったが、2人でお菓子を食べながら話しをするにはちょうどよかった。
2007.04.02
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テレビドラマを見て、あなたはその生活ぶりに憧れるだろうか?既にドラマのような絵に書いたような家庭かもしれない。それなりに幸せな日々をおくっているのかもしれない。世間一般には、家庭の事情、世間体とか、家柄、外観からではわからない事情が家庭内には様々な形として受け継がれ、それはしきたりだったり、家訓だったり、厳しい家庭もあれば暗黙の了解な家庭もある。産まれてくる子供がどの家庭に巡り会うのか、これは最初にして最大の運命の分かれ道。もし、貧困の差があり、勝ち組と負け組が歴然とする世の中であるならば、一体どちらに産まれて来るのが幸せなのだろうか?そして、もし、家庭の状態が悪化した所で子供が産まれてしまった時、それを乗り越えていけるか、それとも、なかった事にするのか……。ここでは、ある平凡な家庭に産まれた、1人の女子高生を追っていく。世間で騒がれている、イジメや虐待、事件を起こす学生の内情など、時代が作り出した現象をたどる。家庭によって、どれほどの決まりや生活感が違うのか、違いによって、生き方がどう変わってきているか。女子高生の身の回りに不思議な現象が次々と起こる、現実と出会い、幻想とも出会うことも。---------------------------------------------------------------いつものように、朝が来た。彩香は、寝起きが悪く、毎日母に起こされていた。「早くしないと遅刻するわよ!」モソモソしていた彩香は10分くらい経ってようやく布団を捲くり上げた。「うーん…チェッ、もうこんな時間かあ…」仕方ない気持ちで起き上がる。そうしている間にもう3分経ち、着替え終わったら、更に5分。「チッなんで朝って時間が経つのが早いんだぁ?さっき起きたばかりじゃん」彩香は毎日毎朝同じような行動をしている。感覚がマンネリ化していたのだ。人間の慣れていうのは、2通りある。行動を縮めて時間を作り出す事。やり方さえ覚えれば、自分なりの動きが出来るから、僅かな時間の中でも数多く熟す事が出来る。しかし、もう一つの慣れがある。時間を縮める感覚を作り出す事。いつも決まった行動が遅くても、それが普通の感覚で動いている。だが時間だけは何処へ行っても動くペースは変わらない。その人の行動パターンによって、1分になり、10分にもなるのだ。彩香の場合は、後者となり、「いけね、遅れちゃう!じゃ行ってくる!」となる。朝ご飯を食べない習慣が付いてしまった家庭が増えてきているが、それも家庭によって理由がマチマチなのだ。人気blogランキングへ
2007.04.02
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ふつうの女子高生が、妙な事になるお話。仕立ては学園ドラマだが、ただの学園モノではなく、ある世界からやってくる者によって明かされる今日問題となっている「イジメ」や「差別」とい名の、発端と根源をうち砕く。それは、ある者から与えられた「リセット」から始まる。4月2日からスタート。
2007.03.23
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あれから一年。昭和を思わせる平和への振興と、文化の発展は、穏やかに、そして、最適な方法で進化し、忌まわしい急激な進化は、必要性ある医学だけに絞られた。強制的で不必要な進化は、時間を持て余し、争いに繋がり、生活していく上では何も支障がない場合、むやみな開発は法律で罰せられることとなった。人間、そんなに頭はよくない。だから楽をする事だけは一人前だ。そこだけを取り上げたらきりがない。新しい聖地で新しい住職を務めるシンは、訪れる人に勇気と陽気を与えるために、定期的にセータ達を呼んで、いいところと悪いところを指摘しあい、コミュニケーションを絶やさないようにしていた。シンの教えは、人間、ひとりではない、ひとりでは生きられない、という項目を、題目に加え、上手く仏教を通じながら広めていった。その教えは、シンだけで考えたのではなく、セータ、サーヤ、イオン、サク、そして、ウインによって教えられた事だ。リセットは決して正しい選択とは言い難い。しかし、本当の最悪に出会い、どう対処するか考えなければ、リセットをする意味がないのだ。何も考えないで、リセットするものなら、確信が持てないまま何回も繰り返すに違いないのだ。2007年、この時代は、意味のない技術と、無駄な時間を使い、バブルを懐かしんでいる者が、見た目だけのバブルを築き、品質改善や見直しを無視する傾向にある。中身のない技術が、世界を翻弄させているのだ。その根本的な原因は、少子化にも関連がある。人が足りない、経済的に厳しいから結婚出来ない、だから子供が増えないし、環境が変化したから、産みたくても産めなかったりする。人材も減少し、年功序列めいた会社が増え、若者が育たない会社となれば、多くの高給取りが存在する以上、給料も上がらないから内部でやり繰りしながらコストを下げる、行き着く方法は手を抜くことしかない。食生活や教育や施設にも過大な変化をもろに受けて、どれもこれも変わり過ぎた。一人一人が冷静に考える時間があれば、見えない事までもっと見えてくる。会社の都合か、政府の勝手なのかわからないが、誰が急がせているわけではなく、もう少し自分自身にリセットしたらどうだろうか?世間の叫びを受け入れ、努力するまでに時間がかかるしお金がかかるように、まず政治家の特権を世間に使うかどうかがカギのようだ。それでもどうしようもないと政府が判断を降した時、正義の味方が登場するのか、それとも、リセットか?[END]リセット
2007.03.15
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住職は旅立ち、この地に新たなる平和が訪れる。住民達も、社会も、目が覚めたかのように動き出し、今までの時間を取り返すくらいの意気込みで活発さを取り戻していた。まるで昭和初期の戦後の慌ただしさを思わせる。寺院の片隅で再起不能に陥ったドンを見つけ、施設へと送られた。このリセットには、最悪が深過ぎるドンに関しては、最良にする作用を施すためにほとんどの記憶を消去する必要があったために、キルどころか、チップとしての機能まで失ってしまったのだ。だが、ドンは、「…夢…」と、記憶の破片で持っていた譫言のように繰り返していたという。夢を持たない人は沢山いるが、実現するには数々の道を通らなければならない。早いか遅いかは別としても、どういう形で通るかで結果は変わってくるはずだ。キルには、その夢を欲望として実現するために一番早い方法を見つけだす能力があった。結果が全てであり、それが最悪な方法だろうが、キルが最良、最短はアバウトに判断されて動き出す。サクもシンも今まではそうだった。だが、あの瞬間リセットの影響で、世の中が一掃されたように、悪という部分は消し去られた。キルはもう、キルではなかった。サーヤは、サクとシンの行方を気にしていた。しばらくすると、通信機に声が聞こえてきた。[…セータだ、聞こえるか…]サーヤが飛び上がるくらい喜び、[…今どこにいるの?無事だったら早く連絡しなさいよ!…]サーヤは、喜びながらも厳しい言葉をかけた。それは最愛だった3人を思うからこそだった。[…住職は?…][……][…やはりそうか…]セータはサーヤの気を読み、全て悟り、しかも後継者の事までわかった。[…これからそちらに向かう…]と言ってすぐに通信を切った。あまりにも衝撃的であまりにも悲しかったからだ。セータは今後継者の事をシンに伝えようとした。サクもキルの機能は失っていたのでセータの考えを読む事ができない。セータ:「ねえ、シン、あのね…」するとすぐ、シン:「しゃべるな!こいつは危険かも」突然とシンが言葉を拒否した。サクにも同じ反応で、2人で目を閉じ、深刻な表情を見せた。セータは、2人が変わり始めているのを感じた。記憶が吹っ飛ぶのではなく、新たな機能に生まれ変わるためのバックアップが始まったのだ。シンとサクにそれぞれの記憶が戻り、2人の表情が普通に戻った。シン:「セータ、さっきは悪かった、変化の途中で外部からの情報を入れると、一部でも塗りかえられてしまう危険性があってね、別の人格になってしまう可能性があったからねぇ」サク:「別の人格でもよかったんじゃないの?」きつい冗談だった。セータは安心したと同時に、伝えようとした事はもうシンの頭に入っていた。「…住職かあ…」人気blogランキングへ
2007.03.15
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サーヤは、ベッドの前でしゃがみ込んだ。住職は、自らの命を振り絞り、外を見ながら座禅を組んでいたのだ。サーヤ:「もう、終わったの、だから…」そう言いかけて、住職の背中を軽く触った時、サーヤは、住職の気持ちを感じていた。---------------------------------------------「…寺院は安全、そして神聖な場所に移り、セータはサクと共にやがて戻ってくるだろう。後継者をシンとし、新しい記憶と時間の流れが、きっと彼をサーヤの希望を叶えてくれるであろう…]---------------------------------------------それは、意志を体の表面に浮き彫りにさせた住職の伝言だった。サーヤは涙を浮かべて、これが住職の遺言となった事を受け止めた。シンには記憶がないこともわかり、悲しみが増したが、サーヤ:「告白しないまま記憶がなくなるって事は、あたしなんかまったくわからないということかあ、もっと早く出会って告白しとけば覚えてくれたかも…」サーヤのつぶやきは、この後の展開で思わぬ事実が待っていることになる。ウインとイオンにすぐ住職の事を説明し、手を合わせ、ウイン:「よくやってくれたよ、そこまでしてようやく手にした自然なんだ、きっと永遠に保つ事が住職への恩返しなんだ」サクとシンは、ドンとの格闘の末に、墓穴となったあのリセットについて複雑な心境を抱いていた。サク:「勝ったことより、こうなることを知っていたのでは?」シン:「ああ、私もそう思っていた。でもそうだとしたら、ドンにもそんな一面もあったという事になるなあ」身を投げた形に終わったこの一件、2人にとって、最低限の記憶として最初に残されるはずだったが、2人のキルの作用は、記憶をある程度とどめる機能を新たに残し、それを最後に、「キル」という名のチップだけが消えていった。2人の中には、チップを越える何かが変化していたのだ。そんなことは2人には気づくはずもなかった。シン:「思い出したが、アジトは元からなかったと言っていたけど、もしかしてキルには、他に何かすごい機能が隠されている事じゃないかあ?」サク:「有り得るな、でもドンがどうやったのかわからない」サクが考えている間に、シンは、自然に寺院の事を感じていた。寺院が移動した事の気を感じて、アジトの件をリンクさせていた。シン:「ドンには夢を持っていた、しかもしっかりとした夢だ、最悪といえども、夢は抱ける。ただ、通った道を間違えただけなんだなあ」サク:「言っている意味がわからんが?」シン:「だから、どんな人にも夢を持っているけど、目指し方が人それぞれって事だ」そんな発言をするシンを見つめながら、サク:「おまえ、なんか住職みたいな事言っているなあ」シン:「ああ?」シンの言葉には確かに住職の気が宿り始めていた。ドンの夢とは、大きな屋敷に住むという、悪な金持ちが抱くような夢を具現したのがあのアジトだという。人類全てが具現するか実現させるかは別としても、夢への思いの深さによっては、実現させるために結果として現れる事もあるのだ。そして、悪も善もなく、幅広い考えを持つ大切さを身につけたシン。一方、永遠の旅に出た住職を、サク達を除く一同は、彼らのいる、自然へと帰っていくに相応しい寺院の新たな聖地となった森林で天へ見送ることを誓った。人気blogランキングへ
2007.03.14
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住職の言葉に圧倒されたのか、ドンは、口を開かなかった、というより、キルの作用から麻薬まで、毒素となる成分が全て消去されたことのほうが致命的だろう。自分からリセットしたために、後悔に包まれていたドン。そのドンにも、変化が起きていた。他のキルと同様に、浄化が始まっていたのだ。軽い犯罪から重罪までに浄化されるレベルがあるらしく、ドンの場合は、かなり密度のある重罪であることから、単なる浄化でなく、記憶までもがリセットされる可能性があった。それはもう、一度死んだも同然の記憶による死刑といっても過言ではなかった。かつては、いいも悪いも全てが一律なリセットが基本だった。現代では、世の中に起こる事件や事故、あるいは最悪の事態が起きた後には全国一律のルールが生まれる。それは罪のない住民をも道連れにした、一律な考えであり、罪を犯していない人にまで縁のなかった分野でも縛られることは間違いなく、罪人を恨む気持ちが生じる。しかし、いい部分を延ばし、毒素を根本的に消去して、悪い部分をなかったことにするという、これがまさに、寺院の伝統が生んだ、究極のリセットといっても過言ではない。悪い所をなかった事にするというのは聞こえが悪いかもしれない。過去に起きた事件を記録に残して罪の重さを考える事も大切だが、そうはとらない人物もいるのだ。普通であれば、悪い部分というのは、その事件、犯罪が解決したからといって、まずそこで終わったケースはない。必ず形態が変わっても次に考えられていく罪の繰り返しは必至だ。前の事件を参考に、連鎖的や便乗的な犯罪も発生してしまう。いい部分はよりよくのばして発展の貢献にあてる、寺院が行ってきた、最終の願いなのだ。サク、シン、そしてドンは、キルの運命を背負って、毒素の記憶の消失を前提に、全ての記憶も道連れになる事を覚悟しなければならなかった。セータは、セータ:「サクとシンまでが、俺達を忘れる、いや、なかった事になるなんて!」心で叫ぶ事しか出来なかった。リセットは霧が晴れるかのように終了した。あたりは静かになった。寺院は、山のしげみにあった。森林に囲まれた幻想的な場所。小川が流れ、鳥がさえずるこの場所は、まるで神や仏の聖地かのように、神秘というか、神が選んだ場所のようだ。イオン達は、セータ達の反応が心配だった。ウインは、キルの追跡をしていたが、それはもう使い物にはならなかった。一番心配していたのはサーヤだ。シンの事、サク、そしてセータの身体に異変がないだろうかと。イオンは廃墟のホテルの外に出てみた。そこにはまだ見たことのない光景が広がっていたのだ。サーヤは、ベッドに休ませていた住職の様子を見に行った。その時、サーヤが見たものは?人気blogランキングへ
2007.03.13
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その声が聞こえた後、セータに物凄い勢いで何か空気のようなものを感じた。セータ:「何だかホッとする、気持ちがよくなってきた…」その空気は、サクとシンにも向けられ、同じ気持ちを得られた。ドン:「ば、馬鹿な、あいつら、笑ってやがる…」あれだけの事を受けていながら、まるで癒されていた。サク:「何だか痛みを感じなくなった、こりゃあ一体?…」シン:「大事なのは、癒し系だな…」力が甦ってきた3人。体制を整えて、ドンに立ち向かった。その間、血迷ったドンは、持っていたリセットボタンを押した。「…!」一瞬にして、寺院もろとも、跡形もなくなった。瞬間リセット。それは、瞬間移動を利用した、人工リセット。その特徴は、瞬時にその場の危機から逃れたりするための手段だが、ドンの目的と寺院の代々伝わる瞬間移動の効果がミックスされてしまい、移動中、変化が起きていた。ドンにも予想のつかない事態に発展していくのだった。ドンの計画では、キルの機能である音波に乗せながら寺院のある場所、「鬼門」を起点に、麻薬の流れを拡散移動させる作戦だった。鬼門からは、拡散がバランスよく行き渡り、キルの力が注がれるために、簡易的とはいえ、全ての住人にキルが備わるのと同じタイプになる予定だった。そして一方の寺院の代々伝わる瞬間移動は移動というより、何もなかったことにするタイプ。即ち、なにもかも変わらなかった事にするものだった。失敗や不幸を迎える事が今後のステップアップのための踏み台に出来ない、引きずったまま悩みを抱えて生きている住人のために、この寺院に訪れた者に気を与え、瞬時に気持ちを入れ替えために伝えてきた。鬼門だった場所からのドンの瞬間移動は、光となって効率的に拡散していき、ドンの思いとはま逆に、空気中の麻薬を消し去っていった。まわりの草木も清浄され、全ての悪性を取り除いていった。その瞬間移動の要素に、新たに住職の思いも加わっていた。薬など不要、ただ声だけはかけて欲しいコミュニケーションを重視した。住人にも何か力が加わっていた。ドンにも、今何が起こっているのかわからないまま、空間移動し続けた。寺院もろとも。その間、新たな光が加わり、寺院をまるごと覆い囲んだ。ドンも、サクも、そしてシンやセータも、ただその光を見ているしかなかった。その光は、紛れも無く住職が放ったものだったのだ。何も喋る事が出来ない中、光は、寺院にいる皆に声をかけた。[…もう無駄な事に手を延ばす事もなかろう、ドンよ、あなたも所詮同じ人間であることにかわりはない、だから、違う事に力を注ぐなら、もっと人の事に向ければよかったものを。身をもって洗礼を受けるがよい。それに、皆に言える事だが、この世にチップなど無意味な物、何も変わらん。変わるのは人格だけ。人格も個性があるから触れなくても生きていく上では問題ないのだよ。更なる強制が必要なら真面目に集中すればいいこと、チップはきっと人間のためにはならない、欲望の塊になるだけ。それだけ言いたかった…]ドンは記憶が飛びかかっている間、この言葉だけが頭に焼き付いていった。人気blogランキングへ
2007.03.12
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声は紛れも無く、ドンだった。瞬間移動の先は寺院だった!先を越され、しかも、ここに来た理由は、既に住職の考えを読んでいた事になる。ドン:「残念だったなあ、上には上と考えていただろうが、更に上がいるとは思わなかったようだなあ、ここの最終手段はもう封印した、あとは私自身の問題だ」シン:「あの野郎、いったいどこまで知ってるんだ?」サク:「もうこれまでかあ!」セータ:「よく考えて、感じなかったのはキルって事は、キル向けに作られた何かって事だよね」サク:「それがどうした!?」セータ:「だから、キル以外のチップには向いていない、ということは、勝ち目があるのは、俺だけかも?」サク:「何いうかと思えば、そんな事かあ、キルに向いているからって勝てるという根拠あるのかあ?」サクは、セータの言っている事がよくわかっていた。ドン:「そろそろ終わりにしようか、君達にはいい墓場になりそうだなあ、俺が寺院でやることはわかってるんだよなあ」セータ:「ああ、瞬間リセットだ」サク:「瞬間リセット?!」ドン:「素晴らしい、お前のチップにはとても予想できない何かを秘めている、もったいないから死んだ後摘出してキルの開発にあてるかな」寺院代々だった術はドンには解読済みであり、チップとの組み合わせでより可能性を広げることもわかっていた。キルがキルの考えに踏み込めないのは、キル特有の磁力が外部の信号をお互いに発しているために、セキュリティがない替わりに、意志を持ち込めないスクランブル式になっていた。キル同士、同じ考えを持たないのではなく、持てないのだ。干渉はあっても、入り込む事ができるが意味が通じないのだ。だからドンを読む事が出来なかった。唯一、対抗出来るのはセータただ一人。ドン:「セータ君だけは予想外なチップだったな。だが、その若さでは止められないだろうなあ」サクとシンは、セータに頼るしかなかった。シン:「しょうがない、力仕事しか役にたちそうもないなあ」ドンにとっての宿敵は、セータのサーヤ特製チップ。しかしユーザーが若すぎるために、ドンには見下されていた。サクが攻撃を仕掛けたがすぐにあの超音波を発して、サクとシンの攻撃を絶った。ドン:「それじゃあ足手まといになるだけだなあ、どうする、セータ君」セータは考えた。[…キルにキルは入り込めない、じゃあ、セータのチップからは?…]セータ:「え、住職?」何か声が聞こえたように感じたが、ヒントになったようだ。セータは最大限の力を振り絞り、ドンのキルだけを考えた。そして今、新たな機能が追加された。ドン:「ん?何!何だ、この痛みは?!」セータの能力に加わったのは、機能をリッピングする事だった。しかし、かなりの力を消化するため、ドンにダメージを与えるのに限界があった。ドン:「クッ、痛いが、身体に支障がない、やはり素晴らしいチップだ。それを付けているのはセータ君には相応しくない。宝の持ち腐れってやつだなあ」セータ:「ここまでかあ…!」セータも既に限界がきていた。そこにまた、声が聞こえた。[…力をやろう、これで終わりだ…]人生をリセットしたいあなたに
2007.03.09
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環境の変化で花粉症がますます進化をしている。現在、日本人の約20%が花粉症ともいわれ、その人口は年々増え続ける。というか、どちらかというと、人間がある意味変化してきている。急激な社会現象の変化は、経済面で見れば、めざましい進化を遂げている。しかし、それに追いつかない人間は、対応しようとして無理をしている。進化に付いていけず、体質を退化させているのだ。花粉症患者が急激に増えた原因に、戦後の国の造林計画によってスギ花粉が増加したこと、そして、車の排気ガスや工業化による大気汚染の影響で、鼻の粘膜が弱ったこと。最近では、腸の免疫システムの崩れも花粉症に関係していることが認められ、特に小腸は、食べ物を消化・吸収する臓器であると同時に、体全体の約60%の免疫細胞や抗体を持つという。体質以前に、免疫の退化といってもいいだろう。昭和時代までは、少なくとも日本食がメインだった。しかし、食物は欧米化し、体の中身も日本人離れしてきている。それも踏まえたら、今と昔とでは、ギャップが大きすぎる、しかも、社会は進化し、体は退化、完全に逆方向に向かっている。遅すぎた環境保護、変わりすぎた社会、それに対応する体は地球上には存在しないと思う。進化もいいけど、内容を考えないと、もうリセットが効かないところまできているかもしれない。
2007.03.08
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サクとシン、そしてセータは寺院へと向かい、代々伝わるという瞬間移動の術に挑戦する。サク:「いいか、住職の気持ちを重んじるんなら、身を削るつもりじゃないと無理だろう、しかし、住職にはないこのチップが判断を降す可能性も高い。だから…」シン:「わかってるよ、住職の経験値とチップの判断で造られる奇跡ってやつでしょ」そう、それは、住職にも予想出来ないチップによる偶然が含まれていた。機械を多く取り入れるやり方もあるが、奇跡は起こらない。発達、進化を止めないエレクトロニクスの分野では、開発の中に奇跡を起こす可能性も秘めている。偶然からくる開発も技術陣が歓喜を抱く瞬間でもある。しかし、恐ろしいのは望まれて出来た奇跡よりも、仕組まれた偶然なのだ。率直にいうと、「罠」である。うまくいく背景には、偶然か、金か、それにかける時間である。時間があれば、丹精込めた力作が生まれ、理想のハードが完成するにちがいない。時間がないという状況は、納期が決まっていて、時間内に完成させるという場合は、ごくマイナーなパーツ的なグレードアップか、バグ処理で賄うぐらいにしかならない。問題なのは、金によって開発費用を、よりすぐれた人材に宛て、優れた逸品を造らせる。金によるという部分が、後に価格に反映されるから、買う立場においても限られた者しか味わえない技術となる。金をかければいいもの、というのがひっかかる部分で、安価な物はそれなりと判断するのが自然だ。チップを経由した術には、金はかからないが、技術と時間を要する。基本的には高度なやり方なのにボランティア的な行動。世界を救うのに金などかける意味がない。金をかければいいという事ではないのだ。最終的な判断は開発陣の気持ち次第。サク、シン、セータには金という文字は一切頭にはなかった。それだけの熱意を感じた。寺院に到着すると、3人は同時に気を感じた。セータ:「何だかいやな予感がする」サク:「俺もだ、何かいけないものを感じる」シン:まさかなあ…」そのまさかが、目の前にあるのか?3人はバラバラになって、寺院のまわりから探り、左右から寺院を入った。しかし、何も起こらないまま、中央の本堂に3人はたどり着いた。サク:「おかしいな、確かに感じたんだがなあ」セータ:「今でも感じてるよ、ここに何かあるよ」セータだけが特に強い気を感じた。サクとシンのキルには反応がなかった。これはどういうことか?「それは、開発者がキル使いだからだよ、諸君」
2007.03.07
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住職もやはり、環境の変化と、術の影響からかなりの体力を長年負担していた。そのために、身体にかかわるほとんどの免疫が吹っ飛んでいたのだ。セータは更に、セータ:「これから、風邪一つかかってしまったら、その時は、かなりの負担となり、その……」イオン:「言うな、いまはやめとけ」以前から癌はあった。それは体質や遺伝といった要素もあるが、環境が変わってくれば体質を変えてしまうこともある。それがどう影響を与えるかはとても判断できず、予想もつかない。偶然が重なって、適応していく体質や性格は、長年続いた生活習慣から来る場合と、一瞬で変えてしまう場合がある。前者は、先祖代々からくる習慣、職業、生活が成り立ってきたもの、勿論、途中で変わることもあるが、それは、生活していく上で適応するために必要性があるからだ。では後者は、どちらかというと、人間にとっては突如起きた出来事や、環境の変化によって、身体に予期せぬ変化を及ぼす。ところが、身体にはやはり準備する時間があり、長き年数をかければ適応出来る事が、予期出来ないまま変わってしまうのはかなりリスクを背負う。それは大半は良性とはいえない方向にいってしまうのだ。住職は、職業柄僧侶でありながら、多様な出来事に染まりたがら、環境の変化についても苦労して住人に尽くして来た結果が、自分の身を犠牲にしていまうという皮肉な事になってしまった。誰かがやらなければならないのも事実だが、犠牲にならなくては環境を変えていけないほど重傷にしてしまった世間が何もしてあげられないという悲しい現実。住職は、目が覚めてすぐ立ち上がろうとしたが、すぐによろめき、近くにいたサーヤが支えた。サーヤ:「まだ駄目ですよ、後はサク達に任せていいんじゃない?」住職:「そうだな、だが、引き継ぎもまだしてないし、しないとこの先の行動に影響するんだが」サーヤ:「あなたは少し安静にしたほうがいいんです、そうしないと、逆に引き継ぎが難しくなりますよ。」住職:「では、用件だけでも伝えなければ…」サーヤ:「大丈夫、あの2人はもう行動に出ていますよ」住職:「何と?!…」サーヤ:「忘れてたんですかあ?チップの存在を」サクとセータは、普段はしたくはなかった詮索を必要性があるこの時に、詮索回路を調整した。そして住職の心を読み、即行動に入った。その瞬間、行動の意味が、後継者を決める事である事も理解していたのだ。住職:「そうか、もうすでに後継者として動き出したんだなあ…」自分の身体に終わりが近づいていることを、時間刻みで感じていた。人気blogランキングへ
2007.03.06
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シンがたどり着いたその場所には、昨日まで存在していたアジトが跡形も無くなっていた。跡形も。シン:「マジで?有り得ない!」幻だったのか、逃亡したのか、どちらにせよ、消えるという事自体、考えられない。シンの頭脳の中で、痕跡を探索する機能を見つけ、起動。消えた時間はいつか、何かが残されていないか計算していた。すると、とんでもない答えがかえってきた。しばらくして、サク達が追い付いた。サク:「何だ、どうした?」シン:「無いんだ」サク:「そういえば、ここは…」セータ:「アジトが消えてる?」シン:「いや…」サク:「…??!」シンが出した答えは、シン:「最初からなかった…んだよ」サク:「…え?」シン:「だから、ここには元々何もなかったんだ。」セータ:「幻の中にいたって事?」今度はサクが答えた。サク:「それも違うなあ、あった事は事実だ。でも今はない」ウイン:「瞬間移動…?!」ウインが真っ先に導き出した言葉は、サクにもセータにも記憶があった。時空を飛ばして現代の中のみ、瞬時に移動する装置、チップとの組み合わせにより、機能が変わるのだ。リセットの応用ともいわれ、かなりの知能がないと生み出せない、究極の方法なのだ。サク:「このままこうしていても、らちがあかない。ドンがどのように行動するのか、瞬間移動のタイミングも見破る必要がある。」ドンのキルは痕跡や行き先を阻む、今までのセキュリティタイプとはわけが違う。シンは、真っ先に来た甲斐もなく、追い付込めなかったのがとてもくやしいようすだった。ウインによると、瞬間移動を使用すると、力の消耗が激しく、そう繰り返し出来るものではないという。キルを利用したとしても、キル自体にも何らかの負担は免れないはずだ。サク:「もしその予想が外れたら、ドンは化け物って事か」セータは、限りなく薄いが、ドンのキルらしき形跡をキャッチしたが、まわりにいた刺客の反応もあり、あてにならない。セータ:「でも、今はそれで捜すしかないようだなあ」住職が、「ちょっと待て、寺院代々の技がある、しかし、寺院に戻らないと不可能なのだが…」サーヤ:「またあ、そういって1人で何とかしようとするんだから」サーヤが突っ込むと、住職:「いやあ、図星だなあ、瞬間移動なんだがなあ」イオン:「…?」サク:「師匠、先代からそんな技術があったのか?」住職:「技術ではなく、術だよ」イオン:「そんな題目があるとでも?」住職:「あるんだ、だが、1人しか実行出来ない」サク:「だからあ、あんたが行ってさよならなんて事じゃあないよなあ?」住職:「まあ聞け、この術は、本来、僧侶がまったく人間が踏み込む事の出来ない場所にある薬草や食物などを採取するというのが使い道なのだ、これも住人の苦しかった時期を乗り越えて来た証となったのだ、だが今回は目的が違う、だから私が行ってもしょうがないのだ」サク:「そこでチップの投入ってわけだろ?」サクは、その時、やる気満々だった。ドンに馬鹿にされたまま、引っ込んでいるような我慢強さは持ち合わせていないのだ。住職:「一つだけ言っておくが……」住職は言いかけたが、くらっとめまいがしたせいか、よろめいた。サク:「おい、師匠、大丈夫かあ!」住職:「…い、いかんな、もう末期か…」イオン:「何言ってるかわかんないよ!」イオンが叫んだ後、セータが肩を叩いて、セータ:「センコー、住職、癌にかかってるよ」イオン:「…?!」人気blogランキングへ
2007.03.05
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ドンのアジトからすぐ近くにある小さなホテルの廃墟にいたセータ達。一晩が経ち、イオンがサーヤとシンの様子を見に行くと、ベッドにシンの姿がなかった。イオンは慌ててサーヤを起こし、事情を聞いたが、熟睡していまい、全く覚えていなかった。サーヤが寝ていたベッドの脇に手紙のような物が置いてあった。サーヤはそれを読んで、涙を流し始めた。イオン:「何て?」サーヤは黙ったままイオンに見せた。[誰だかわからないが、感謝する、あなたの近くで安心して眠る事ができた、おかげで、私の体と頭はパワーを増した。ありがとう]イオン:「サクの野郎、言ってたのと全然違うじゃん」サーヤ:「どういう事?」イオン:「ああ?噂とは違って、ロマンチストだって事さっ!」サーヤ:「ええ」サーヤはますます惚れ込んだ様子だ。イオン:「てことは、まずい展開だな、皆に言わなければ!」サクとセータ、ウインにその事を伝えると、サク:「あいつひとりでいいとこ見せようとしたって駄目だ、いくぞ!」「ちょっと待て!」「…」止めたのは住職だ。住職:「やみくもに行ったってまた同じ目に会うだけだ、シンはおそらく何かを根拠に動いたとみえるが」サク:「あの手紙のとおりであれば、パワーの源が蓄えられれば、進化すると判断出来るかも」何度も繰り返された驚き、怯え、闘い、逃走。今までの事を考えたら、安らぐ時間などなかった。欠けていたこと、それは、シンの説によると、どうやら癒されること、体を休める事が、力の源であり、属に言う、パワーアップに繋がる事だった。人間、何のために働き、学び、闘うのか。生活のため?出世のため?それともお金のため?全てにおいて、欠かせてはならないのは、一息つく時間を作る事、食事をする事、そして睡眠を捕る事だ。それらを抑えて生活しようものなら、結果的には、遅かれ早かれ支障が出てくる。死ぬ事さえあるのだ。シンの手紙によって、改めて癒しの重要さを噛み締めた一同。サク:「あいつは、元々が悪だったわけでも、ちゃらんぽらんだったわけでもなかったんだ。ただ不器用だっただけだよ。体も心も気も休めず、突っ走っただけなんだ。ここまでよくなったのは変わったんじゃなくて、癒された事で成長したって事だよ」サクは、ウインの説明を聞いて、自分がこれまでやってきた事より、シンが重ねてきた努力が実って、ここにきた。そして自らパワーアップする術を覚えた事に、サク:「彼の方がよっぽど大人だ…」一同は、癒しを胸に抱き、シンの後を追う。人気blogランキングへ
2007.03.02
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シンとの抗戦の中、ドンは、シンの強さと能力に感激していた。ドン:「お前、なかなかいい素質を持ってるなあ」シン:「ふざけんな!金なんかいらないんだ、俺には目的があってここにきた、あんたよりも可能性のある事がここにあるからだ!」ドン:「…?」ドンはそれがキルのことだとすぐにわかり、ドン:「そんなすんなりと渡せるものではない、ビジネスとして、この世界を変えるためにやっとたどり着いた結果なのだ!」シン:「ビジネスだと?世界の為?何言ってんだ、こいつぅ」シンは更にバシバシ拳を連発し、ドンもそれをかわし、格闘が更に激しくなる一方だが、2人はどちらも引かず、劣らず、スタミナの消費だけの問題だった。サク達が来る気配がしたとき、ドンは、シンの執拗な攻撃の間に、自分自身のキルに問い掛け、命令していた。ドン:「怪音波を放て…」シン:「…?!」[キューン]シン:「しまった…」先に仕掛けられたシンのキルは、超音波に刺激されて激痛が走った。もがき苦しみ、更にドンの攻撃を浴びるように受けて、倒れ込んだ。これで気を失う方がまだましだった。激しい痛みはやまず、シンはただもがき苦しみ続けた。-----------------------------------------------------------気がついた時、シンはいつの間にか気を失っていたのかわからなかった。「場所が変わっている、いったい…」暗い部屋にただ1人、いや、そこにもう1人、シンをずっと看病していた人物がいた。サーヤだった。シン:「一晩中ここにいたのか…」眠っていたサーヤを見ながら、シンは安らぎを感じて、再び眠った。サクとセータは、チップのメンテの一画であるリハビリをしていた。考える力、覚える力、そして、自分を守る力に調整をした。セータ:「あのドンの最大の武器っていうか、超音波なやつ、シンの所に向かうまでにどのくらいのレベルを感じた?」サク:「そうだな、放ったというくらいはわかったが、痛みとか、そういう感じにはならなかったなあ」すると、ウインが、ウイン:「これは、確定ではないが、キルの能力の一つでもある追尾というのがあるが、それを応用すると、超音波でも操作可能ってありえないだろうか?」サク:「それも可能性あるな、特定の人だけに集中させ、痛みを何倍にも注ぎ込むやり方。ああ、怖いねぇ」イオンも案を言い出した。イオン:「逆もできるってことだよな?」ウイン:「そう、拡散させて多人数にも対応できる、でも、拡散のほうがむしろ危険だ。なにしろそこにいる全員が喰らうからね」サク:「じゃあ、あいつに勝つ方法って、誰かに集中させといてスキを作らせるって事だろ?」すると、住職:「それしかないのであれば、私が盾になろう」イオン:「住職!」住職:「この役目を果たせば心置きなくどうにでもなる、だから…」人気blogランキングへ
2007.03.01
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ドンは、ドン:「そいつがもし女なら、出してやってもいいぞ。」それに対して、サーヤ:「皆とここにいるわ、あんたといたってしょうがないでしょ!」ドン:「立場考えて言葉を選んでくれよなあ、あんたらは犯罪者なんだよ」イオン:「どっちが犯罪者だあ!あんたがやっている事が意味あんのかあ!?」ドン:「あるさあ、この頭と金があれば、豊かな世界にする力がある。サポートは大胆で単純なものでないと住民には理解してもらえないだろ!」イオン:「それはあんたが楽して指揮りたいだけじゃないのかあ?」ドンは口答えするのが気に入らず、カギを開け、牢獄から無理矢理サーヤだけを引っ張り出し、すぐにカギを閉めた。セータ:「何すんだよ、ネエチャンを返しやがれ!」ドン:「それは、問題発言をしたダレカサンに聞いてくれぇ、わしゃあ知らん、フフフ…!そういって、追求された発言を却下させ、封じ込められた。ドンは奥の部屋へとサーヤを連れて行く通路の途中、一人の男と遭遇した。シン:「そいつはいただけないねえ」ドン:「あんたあ、さっきのお!」シン:「ああ、取引成立して、あんたをお見送りした時な、ちょっと仕組ませてもらったんでねえ」サーヤ:「あなたが、サクの?」シン:「なんだ、ご存知で?」ドン:「何が狙いだあ?」すると、ドンからサーヤを引っ張り出し、シン:「とりあえずこういう事だろう、取引した金をどう使おうが関係ないが、女をそんなふうに使うんじゃ話しは別だあ」サーヤは一瞬、「カッコイイ・・・・」と思っていた。シン:「あんたは、これを持ってサクん所へ行くんだ、急いで!」潔く、サーヤはカギと何かを受け取り、サク達の所へ戻った。一方、牢獄では一悶着に発展していた。イオン:「サーヤをいったいどうする気なんだろ?」サク:「よくてメイド、悪くて…」イオン:「それ以上いうなよ!サクッ」イオンは妹として誰よりも心配している時に、サクの失言は、異様な空気を生んでしまった。サク:「謝るよ、悪かった。許せ」イオン:「軽々しい謝罪なんかいらねぇよ」サク:「どうしたらいいんだ?」イオン:「サーヤを助けに行け!」サク:「私もそうしたい、けど、どうやって開けるかわからない!」イオン:「チップでなんとかならないのかあ?」サク:「そんな威力あるんならとっくに……?!」そう言ったとたんに、突然扉が開いた。イオン:「お前、やったのか!?」サク:「い、いや、まだ…!」扉が開いたその向こうにサーヤが立っていた。サクは、それを見て、一瞬、喜び、手を上げようとしたが、寸前で抑えこんだ。イオン:「さ、サーヤじゃないか!お前、あいつやっつけたのかあ!?」サーヤ:「サク、これ」サク:「…!」サクはサーヤから受け取った物を見て、ビクッとした。それは、キルのカケラだった。サク:「あいつ、そこにいるんだな!?」サーヤ:「そうよ、早く行かなくちゃ」サク達は急いで牢を出た。通路の向こうで物音がする。あきらかに格闘の気配。サクは、サク:「悔しいが、あいつはとにかく、強い…」仕方なく話したサクに、サーヤ:「カッコイイじゃない・・・・」サク:「気に入ったのか、あいつを?」サーヤ:「ズバリ、好みが一致したわ」それはまさにサーヤの恋がほのかに芽生えた。為岡そのみ為岡そのみ『記憶リセット』
2007.02.28
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政治家のやっている事って、何故あんなにむずかしくするのか?政治家の血を引く人間はそういう環境の中で生まれ育ち、後を継いでいくが、素人同然の人間が政権をすればどうなるのか?ある程度の政治の知識と、環境を踏まえていれば、後は自分から知っていけばいいし、考えていけばいいと思う。難しい言葉でわざわざ発言したところで、住民が着いてこれるわけがない。カッコイイから?それとも住民を見下しているのか微妙な意味合いな存在なのが政治家だ。その割には、お金の事になると、桁はちがうが、普通の人以下になったりする。談合だとか、選挙の時期だけ大騒ぎするが、結局呑みたいだけの地域のお祭りと変わらない気がする。セータ達の中から僧侶が誕生するのも、まるで知識を持たない者ばかり。だがこの中から決まるのは間違いないようだ。知識も大事だが、そんな人間に限って、人間を知らないし、地域も知らない。ただの金喰い虫だ。政治家の知識を持ちながら、それを利用して、一番自分の醜い部分をさらけ出し、欲の塊となり、好きな事しか出来ない、知らないことは捩伏せる最悪の結集、それが、ドンそのものなのだ。住民がどう生活していようが、どうなろうが関係ない。自分が思ったように空気が動く、どうにでもなるという考え方だ。これは最近に見る政権となんら変わらない。「ドン」の存在は、全ての世界で起きている悪い所取りなのだ。妙に知識だけがあることに、余計な事ばかり思い付く、しかも他人には何にもメリットのないことばかりなのは、自分の立場しか考えていないから。ドンという存在を、現段階の政権に通ずる何かを訴える意味合いで見立てているのだ。どんな内容でも発言は大事だが、普段格好つけている政治家ほど、ボロが出る、その一言だけで命取りとなる。牢獄でのドンの発言は、まさに影での彼の本性であり、表向きとは正反対な、光と影の生き方しかできない。逆の立場からみれば、案外可哀相な人間かもしれない。何故なら、世間体に流されて仕方なく政治している人間、後に引けなくなって、悪い方向へ導かれる人間とは、そういう生き方しか出来ないという選択肢の無さが、生きていく中で一番不幸なことかも知れないからだ。セータ達がドンを可哀相な人間とは思わないだろう。それは、セータ達が今真っ向で被害を受けている最中だから。でも、過去の事となったとき、それが初めてドンの存在を哀れむ時と感じるのだろう。変わりたい日本人変わりたくない日本人
2007.02.27
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セータはシンから状態を探っていた。シンも今、違う気を感知して、そちらに切り替えて、状態を伝えた。シン:[…サクに着いてる者だね、あんたは、俺達の事は知らないようだな…]セータ:[…全くわからない、でも、昔一緒にいたんだね…]シン:[…あんた、ガキか?…]セータ:[…ガキで悪いかぁ…]セータは応答を辞めようとした、が、シンから、シン:[…待て、今遮断されたらわからなくなる、このままの状態を保ってくれ…]セータ:[…わかった…]サクが混乱から癒えた時、セータの立腹ぶりを見て、サク:「変わってねぇ所もあるみたいだな」安心と不安がまだ定かではなかった。セータにも、シンの本当の心が読めないが、わかった事は、自分達を捜しているという事だ。サクにもそれを伝えると、信用できないような顔でシンに問い掛ける。サク:[…なにしに来た?テメェはあんときの事を知ってて来たんだろうなあ?!…]すると、シン:[…やっと繋がったかあ、お前、変わったみたいだなあ、実は俺もここに来る間に変わってきてるみたいなんだ、今でもなあ…]サク:[…今でも?…]シン:[…ああそうだ、それが不思議でさあ、気分が交互に入れ代わるみたいに揺れ動くんだあ…]サク:[…それは、テメェが優柔不断なのが治ってねぇ証拠だあ!…]記憶は留めていても、性格は変わってきているのはサクもセータも同じ事だ。ただ性格の違いで進化したり退化するのが学習チップの特性でもある。サクにしてみればシンの登場はあまりにもきつかった。だが、過去を引きずるサクには、切り捨てるシンがいるほうがちょうどいいのかもしれない。沈黙漂う牢獄に、あのドンが先に帰ってきた。サク:[…何も考えるな…]イオンが断ち切るかのように、イオン:「なあ、トイレってここにあるのか?」ドン:「よく使う手だな、したければそこでしな」サク:「レディの前で失礼な事いうなよ」ドン:「いたのか、女が、この中にいるのは男でも女でもない!」最悪な男はやはり最悪の言葉を発する。この世界を最悪に導こうとしている源となるのだ。空気は澄んでいるはずだった。森林はイキイキとしていたはずだ。そして水や食料や、人間の体も、健全であったはずだ。ここには確かにあった、その時間が。しかし、この男たった1人のために、全てが犠牲になろうとしていた。いや、もう始まっているのだ。自然が作り出した流れを止める権利などない、自然があるから人間は生きていける、自然は何も言わないのをいいことに、好き勝手をすれば、たちまち、危機に曝される。そのことを皆人ごとだと勘違いしているのだ。その結集たる存在が、ドンそのものなのだ。60歳からの脳内リセット!
2007.02.26
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取引を終えたシンの行動は、かつては、自ら装着し、更にはサクにまで騙して装着させた過去を持つ、悪友か、裏切りかはっきりしない繋がりがある。サクを陥れたのがきっかけっなった、あの透明なリセットを引き落とし、悪の心はそのまま引き受けているものの、リセットを期に幾度か変貌を繰り返していたのだ。その変貌とは、シンの中にあるキルが、リセットと環境変化などが繰り返され、思考力が減ったり増えたりしながら、退化した部分もあり、逆に進化した部分もあるという、シンの性格である、優柔不断さが物語っていた。サクの決断とシンの優柔不断との組み合わせが絶妙な、最悪コンビだったという意味では、今後の展開に大きな影響力を秘めていたのだ。現に、シンは、ドンの持つ金の入ったトランクには、チップ状の探知器を仕掛けていた。これこそ、これからのシンの行動をいらしめる一歩となるカギである。サクとセータは、考えた末、思い付いた事を話した。すると、2人とも、1カ所を指さして、サク:「何だよ、私と同じ事考えてたのかあ、ある意味凄いねぇ」セータ:「お、俺が先に思い付いたんだぞ」サク:「ルセェ、どうでもいい事イウナヨ」イオンは、イオン:「ホントだ、セータ、どうでもいいよ、それより、指さしている場所が弱いって事なんだろ?」セータ&サク:「……そう」2人の考えを悟った教師は、胸を張って言った。しかし、壁が弱いと知ったはいいが、どうやって突き破るか?すると、サクに少しだけだが、頭に過ぎった物を感じた。サク:「何?いまさら?有り得ない…」しかし、段々その過ぎるものが強く感じるようになり、サクの勘は確実性を増した。サク:「助かるかもしれない…」イオン:「どうした?助けるために見つけたんだろ?」イオンは改まっているサクに聞いた。その様子を見たセータが、セータ:「センコー、もしかしたら、外からの力が必要かもしれないって事だよ」イオン:「…?」セータの言葉に意味不明な表情をみせたイオン。それもそのはず、まさかこの近くで、サクを捜しながらサクのキルを利用してコンタクトをとっているシンの存在を信じるはずもなかった。サク:「あいつ、変わってきている」こんな時に現れるとは思いもしなかっただけに、サクは過去の仕打ちと、現在の気持ちが全く信じられない筋書きとなって記憶を揺るがせていた。サク:「あいつ、いったいどっちなんだ?何しに来た?」セータは、サクとシンの過去をひもといてみようと試みたが、荒れているサクの記憶に立ち入る事が出来ない。しかし、遠回しにシンからの記憶から先に感じ始め、想像もつかない筋書きをキャッチしたのだ。
2007.02.22
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単なる賞金稼ぎから足を洗い、研究熱心な、元最悪の男、今、現在の最悪の男、ドンとの取引が始まる。いつもの倉庫に準備されたテーブルに、彼がドンを待つ。ノッソリとトランクを片手に持ったドンが入ってきた。軽く会釈をしたが、すぐに厳しい顔になり、彼の前に来た。ドン:「今日はよろしく、いい取引が出来る事を、期待していますよ」男:「そうですねぇ、ミスター・ドン。」ドン:「一応伺うが、キルの使い道は決まっているのかな」男:「ああ、概ね。部下に着けて、迅速なる軍隊に作り上げる事で…あります」ドン:「ふん、軍隊ねぇ、軍にキルは使っちゃあダメでしょ」男:「……」ドン:「軍というのは、団体の中にあって、自分自身の感性を持って、その人、その国のために尽くすもの、キルはそのような働きをする物ではありませんぞ」彼は、完全に嘘を見破られていた。キルに見せ掛けは通用しないのだ。ドン:「まっ、使い道はどうでもいいですな、それでは、キル20という約束でしたな」男:「…ああ、そうだな」後味が悪い彼の心の中は、やはり、「こいつ、殺す…」という気持ちで一杯だった。ドンの部下は全てキルを持つが、決して団結しているわけではなく、基本的には個人主義だ。だが、ある使命が一致した場合、一緒にいるだけで、あくまで個人レベルで判断し、相手や味方すら関係ない、味方がどうなろうが関係ない、敵味方がないのだ。単独では100パーセントの力も、集団としては70パーセント程度しか発揮されないのは、人の事を考えて行動している時。キルは、欲望のカタマリである。人に気遣う事、人のためになる事は全て失敗作だという。彼は、金があるか確認し、ドンもキルの数を再確認した。男:「金はこれです、確認を」ドン:「確認させていただきます」ごくふつうに取引されているが、これが最悪の一歩となるのか、それとも、また違った展開となっていくのか。一方、サク達は、この牢獄を出る方法を考えていた。セータもまた違った角度から探っていた。サーヤは、そんな彼等を見て、チップの力を改めて確認していた。成功と後悔の渦の中でさ迷うサーヤの心に、イオンは肩を叩いて思いやる事しか出来なかった。イオン:「今はこいつらが必要なんだよ、後悔じゃなくて、進歩した形で見守るのが相応しいんじゃない?」兄妹として精一杯の言葉に、サーヤ:「そうね、この2人にかけるしかないよね」救世主になるかどうかの瀬戸際で、また新たな展開が待っていた。取引が無事に終わり、ドンを見送る彼。その彼こそ、救世主達を揺るがす人物。男:「さてと、サクを見つけないとなあ」取引成立の証明書を片手に、20のキルを引っ提げて、建物を出た。その証明書の署名には、[シン]と書いてあった。
2007.02.21
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通勤時間の一番ピークの満員電車に、子連れの家族を見かける事がある。おとなしい子は平然と座っているが、泣き叫ぶ子もいる。その違いって何だろう?おとなしくしている子は特に慣れているというわけでもなく、普通にしている事が平気なだけなのかもしれない。でも、泣き叫ぶ子は、座らせようが、外を眺めようが、関係ないらしい。お客さんがたくさんいるという圧迫感か、車内が暑くなっているかという状況が嫌なのだろう。もしくは、じっとしていられず、よく喋る子供に多いと思われ、各家庭の育て方の違いも意味がありそうだ。この時点で、その子の性格というものが誕生し、それが固定されるのか、変わるのかは、やはり家庭の環境で決まるのだと思う。よく喋り、動き回っている子供は、じっとしている状況も経験せずに生活してきた、おそらく、自分勝手に、自由にさせていた可能性がある。自由とはいい響きだが、放っておくと大変な事になるだろう。ただの親の怠慢にも成り兼ねない。教育は難しい、今の時代、ゆとり教育という教師怠慢のための法律がありながら、更に手を抜こうとしている教師がいるくらい杜撰できている。もとの教育法に戻すか、専門家でないといけない域にあるのかもしれない。しかし、そんな知識なんかより、身近にいる親を超える者はいないはずだ。
2007.02.21
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誰ひとりとして、文句を言う事も、政治を引っ張る事も、悪を止める理由もない、この世界は、誰も指摘しない、咎めないから決して話題にもならない、取り上げられない、滲み出ている悪の組織そのものがとうとう表沙汰に出没しようとしていた。囲む刺客こそ、この世界で1番最初にこの地を立った悪なのだ。今更興味を示さない住人、関知しない警察、触れない政権、そして、動き出すドン。まさに、最悪の帝国が築かれようとしていた。単なるマフィアではなく、世界を動かし兼ねない最悪の人物にほかならない。サクは今、あの男の悪を見破りながらも、ここまで勢力のある最悪の人物とまで気付けなかった自分を責めていた。あの時解っていれば、あの時食い止めていれば…。鋭い反応でセータが、セータ:「しょうがないよ、キルの創設者だよ、気を消す位簡単だったんだ」住職:「それに、やはり私がけじめをつけるという、サダメなんだよ」住職が付け加えた。セータ:「ああ、ありがとよぉ、そんなことより、今の状況ってかなりヤバイんじゃあないかあ?」イオン:「住職、降伏するのか?それとも…」イオンが心配そうに話した。住職は決断を強いられた。ドンからの刺客達は、更に輪を狭めて、一同の動きを封じ込み、選択肢を与えた。刺客:「降伏し、ドンの下で一生尽くすか、それとも、ここでジ・エンド?」全ての手段を失った一同には、もはや勝機がなかった。刺客達は、目の前一例を開けて、後ろから来ていたドンを前に通した。ドン:「サクだな、この前は助かったよ、最初はびびったんだけど、それ以上にびびってたあんたには本当に感謝するよ。あとは僕に任せておけばいいさ。」サク:「て、テメェ…」一同は、あっけなく完璧に手足を縛られ、大きめのワゴン車に乗せられた。更に目隠しまでされて、アジトが解らないようにしている。ドンは、サク達を牢に閉じ込めてから、すぐにキルの出荷に向かう。また新たな客との取引が待っているようだ。ドンは自らもキルを使い、キルを操り、世界の鈍さを利用して、麻薬とキルに支配される環境を構築することが目的である。サーヤが手がけた草木はまたもとの麻薬地帯に戻り、追い撃ちをかけるように、以前よりも念入りに薬漬けにした。空に舞う粒状の成分も、その草木から放たれる光合成に影響されて、量が増えていた。住人がますます無知な生き物となっていくのだ。全てが振り出しに戻っていた・・・。ドンが相手をする客は、幾度か重い罪を犯していたが、彼はまた違った目標があってこの世界に来た。キルの以前と現在のモデルを調べた上で、最悪のチップと究極のチップとの組み合わせを考えて、今まで長い間研究していたのだ。しかし、彼は素人であり、最初は金が目当てで始めたが、気持ちが変わり、今は、本気でチップの掛け合わせの研究まで考えていた。それを自分自身に装着するのがなによりの夢となった。「ここにあいつがいるんだな」人気blogランキングへ
2007.02.21
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外にいるキルを搭載した刺客が幅広く出回っている事が、サクとセータによってキャッチされた。注意することは、格闘が巧みであること、そして洗脳や、追従機能が高性能だということ。住職の勘と、サクやセータの能力が、刺客からの被害を受けにくくするはずだ。住職:「キャッチはあっちのほうが早いはずだ。こっちがキル狩りをしていることもな、まず攻撃してくるだろう」サク:「ああ、そうだな、イオンは、サーヤとウインを守るに徹してくれ、サーヤも、そのカプセルをいつでも使えるようにスタンバってくれよぉ」セータ:「OK!」頼もしくなったサクの変貌を歓迎するかのように、皆が信用し、納得する。これはチップを越えた輪が、忘れかけていた思いを一体感という形で甦っていた。セータが、セータ:「来る!」サク:「どっちだ!?」セータ:「後ろだ!」住職がすぐに後ろに回り、点火したブラックボックスを投げた。ちょっと古くさいやり方だったが、これが伝統というものか。刺客は、一瞬勢力を弱めたが、ウインの脚を掴み、離さない。ウイン:「サーヤ、頼む!」カプセルを刺客の前に投函すると、すぐに気を失い、横たわった。イオン:「なんだこりゃ、単純だなあ」効果はあった、キルを無効にする方法は、今後実用化に向けて、寺院の中で記録として残される事になる。刺客がやられたことで、キャッチした刺客が次々と来る事が予測される。時代を重ねてきた伝統の黒い箱がうなりはじめた。イオン:「束で来たらやばいんじゃあないかあ!?」住職:「うーむ、展開が変わってきたか・・・」珍しく不安を見せた住職。セータが、セータ:「前と左から3人ずついっぺんに来る!」住職もサーヤもスタンバるその瞬間、サクとセータに襲い掛かるものがあった。セータ:「うっ、なんだ、頭が割れそうに痛む!」サク:「わたしもだ、こりゃあ、刺客から、いや、キルから放たれている、超音波かなんかだ、すげぇ痛むぅ」撹乱していくサクとセータは、刺客のキャッチが出来なくなり、住職も何個も火を焚いたり、サーヤも薮から棒にカプセルを投入した。しかし、ヒットしなくなり、焦りを見せた。その焦りに付け込むように、サーヤの頭脳を洗脳してきたのだ。サーヤは気を失いかけた拍子で、よろめいた。サク:「住職、ヤバイぞ!」住職:「おのれ、時代とともに継承してきた黒い箱はもはやこの時代には通用しないのかもしれない。」住職は、1つだけだが、赤い箱を隠し持っていた。しかしこれは住職にとって最終のアイテムだった。住職:「これは広範囲に煙幕をしいて、複数の相手を吹き飛ばす威力を持っている。だが、今は使いたくなかったが…」サク:「それで住職もろともって考えてるな、どのみち死んでもうまくいかないさ。使うなよ、俺達が何とかするさ」セータ:「しかし、もう、とんでもない事になってる!」サク:「何!?」数は3人や6人では済まされない。イオン:「完全に囲まれた…」ドンの存在感を思い知るにはあまりにも壮絶な瞬間だった。その刺客の数、見ただけでも100人……。
2007.02.19
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動きが止まったこの世界で、どよめくように動き出す悪の気流。ドンの目指すものは、決して放っておけるものではない。少なくとも麻薬を用いた手口は、最悪の産物であり、それを堂々と使われているこの世界にも落ち度がある。住職には時間がなかった。10年という周期にあたる今、あの寺院を受け継ぐ者を選択しなければならないのだ。もしそれを怠るとどうなるのか?寺院にはいくつかの秘密がある。世界を支える秘密、情勢によってかわる空気、悩まされる人間と満足する人間との気の波、それらを位置と方位、地形の関係で、寺院があるこの場所は、そういったあらゆるバイオリズムが点で結ばれる唯一の鬼門となっているのだ。そのため、限られたよき心を持った者だけがここに訪れる傾向を作り出す気流を作り、黒い箱に用いた香の威力でその悩み事をえぐり出すように、駆け込み寺のような存在でもある。しかも、慣わしで、お金も差し入れなども一切求めてはいないため、自給自足の手段も心得なければならない。そんな対偶に住職が務まる人間を選ぶには、厳しい立場であり、選ばれる方も半端では済まされないのだ。自分の代で起きた事は自分自身で綺麗な状態にしてから受け渡す、それが住職の主義であった。ドンを捜すには、キルの流出をたどるのが近道だった。ビルにあるキルを絶滅させてから、今度は外で出回るキルを探る。住職は取引先にいたので、ある程度のドンの輪郭を知っている。サク:「でも、どうして、あの取引先で、あんな危険なことまでやれるんだ?しかも、私にまで存在を隠すとは」住職:「それは、仏に仕える身でありながら行う事ではなかったからだよ、しかし、私の代というのはもうとっくに過ぎているのだ」サク:「期日があるのか?」住職:「さよう。かれこれ三月は経っているかな」サク:「でもさっきは後継がいるって」住職:「ああ、いるとも、この中にな」サク:「!!」一同はびっくりした。このメンバーの中に、僧侶になる者がいるとは。出家となれば、生活感も何もかもが変わるのだ。普通に暮らしていたら、そうかんたんにはいかないはず。住職:「いるんだよ、相応しいのが、後で発表するから、それまでは私がやる事なのだよ」過去にも事件はあった、だが、これほど深刻で最悪な事件はなかっただろう。しかも、明るみに出ていない事件だけに、まだ起きてもいない事件を食い止めなければならないとは、異様である。イオンが言っていた、普通に考える事、チップのいらない自由な世界にするとなると、かなりの時間を要するわけで、もうそれを実現するものは、あの伝説しか残されていないだろう。人気blogランキングへ
2007.02.19
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政界も警察も不能、この世界でまともなのは仏界だけだった。だが、他の仏界もどうなっているかは定かではないが。政界と仏界。いまいちはっきりしないのが、やはりお金の件だろう。神聖な政界も仏界も、現代に至っては、かなり荒れてきているといっていいだろう。パソコンを使うようになった僧侶も存在し、もう神聖という境界はない。身近といえばそれまでだが、やはりそれなりの地位があってもよかった。その現代のウミとなる、陰謀・金・欲望・・それらの結集ともいえるのがこの世界での住職としての平和奪回をかけた最後の任務なのだ。しかも、今が過去最悪であると住職は語る。セータ:「ということは、次期住職のめぼしい人物はどこにいるの?」住職:「その件は後回しだ、今はやらねばならない事がある」住職の言葉に、セータが、セータ:「それでこの黒い箱ってわけかあ」イオン:「だから、この箱が何なんだ?」住職が用意したと思われる、謎の箱は、不燃性の特別な紙で出来ており、中には、お香のような粉が入っているだけだった。住職:「これを焚くと、キルの効果を狂わせ、ごく普通に近い状態とする。これはあの寺院に引き継がれる、経を唱える時に使う焼香から情勢に合った数々の木の皮を調合している。」サーヤ:「情勢に合わせた調合だってぇ?!」更に驚かされたサーヤは、自分が開発したボタンとかぶった事を気にしていたが、住職:「サーヤ殿、心配するな、ちゃんと役に立つから」サーヤ:「ホントに!?」住職:「ああ、本当だとも」これは気遣いではなく本当の事だった。住職の箱は、キルの勢力を抑える、そして、サーヤのボタンでキルの効果を消す。いわば、とてもマッチした組合せになっていた。住職:「ここにあるキルは全部で20あまりある。それをまず黒い箱に入れていくのだ」そういってすぐに黒い箱の中に火を点火していった。次々に煙がたちはじめ、住職は経を唱え始めた。サク:「これこそ、住職らしいやり方かあ」サーヤもボタンを用意し、住職の指示を待つ。香の香りが部屋全体に広がっていく。皆、その香りを嗅いで、とてつもない癒しを感じた。サクとセータは、チップを経由して、ノーマルとは違う反応を見せた。サクもセータも経を心の中で唱え始めたのだ。知らない宗派なのにだ。セータ:「こんな気持ちになれるなんて思ってもみなかった、何だかチップを付けていることを忘れるくらいに」サクもセータも同じ気持ちになっていた。そして、煙を焚かれたキルは、ただの無力な金属の破片と化した。ウインは、この黒い箱に興味を持ち、住職に研究資料として持ち帰りを許可してもらおうとしたが、住職はそれを拒み、住職:「この箱の詳細を伝えるのは、次期住職に限らせて戴く。申し訳ないが。」ウイン:「そう言うと思った。それでは、キルの残骸は?」住職:「その破片を持ち帰っても、何も生まれないだろう、おそらく、生まれたとしても、ただの絶望感だけだ。少なくとも、いいことはない」と断言している。黒い箱の驚異を確認出来た、次は、いよいよ、キルの創設者といわれる、ドンの身元を突き止め、キルそのものを打ち消す。
2007.02.15
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セータ達は、追い詰めた男を見て、ガク然としていた。しかも、追跡していた男を骨抜きにしている。セータは通信にようやく応答した。セータ:[…わかるよね、いやあ、ちょっとねえ…]サーヤ:[…何?意味がわかんないよぉ…]セータ:[…来ればわかる…]落ち着いて話すセータに少し安心したサーヤだが、イマイチ、ピンと来ないまま、例のビルに到着。ウイン:「ひどいなあ、地震来たら一発だな、サーヤ、後で地震予知しとけよ」サーヤ:「冗談言ってる場合じゃあないでしょ」追い詰められた男は、手にしていたチップをサクに渡した。男:「よくきたな、あなた達はやはり、私が見込んだだけはあったわけだ。」サク:「急にいなくなるなんておかしいでしょ、住職さんよぉ!」びっくりしたのは、後方から来たサーヤとウインだった。サーヤ:「な、なるほどねぇ、こりゃあ黙るわね」住職、いったい彼は何者だろうか?皆を集めて、この世界に疑問を持ちながら、対策を練りながら修業していた、白いリセットがもたらした出会い。サク:「いったい、何のつもりでこんなことやってるんだあ?しかも住職の身でありながら!」すると、男=住職:「住職だからだよ、サク殿。」サク:「!?」みんな、理解出来なかった。それもそのはず、仏に仕える人物が麻薬取引のような行為をする自体おかしいからだ。住職:「よく聞いて欲しい。今はあまり話している時間がないが、これだけは言っておく。キルは絶対に広めてはならない、壊滅させねばならない。最悪を止めない限り、私の任務ははたせないのだ。だから、やることをやってからみんなに出会うはずだったのだが・・・」サク:「それが住職の任務かあ」住職:「そう、歴史に残るかつての僧侶達は、平和、平穏を残して去っていったのだ、その歴史を絶やしてはならないからだ」引き継ぎは10年に1回とされているこの節々の意味。それこそ、世の中の風習そのものだった。過去から、歴史の流れには周期があり、その時代の全盛期があれば、衰退期もある。その流れは規則的な周期があるというのだ。仏界ではこの流れを分析すると、約10年だとよんでいたのだ。その10年間こそが、修業であり、いいときも悪いときも平常心を失わず多くの住人を支え、環境を見て、政界にも掛け合いながらも、最悪の発生を防いできた。ここで事件が起きると、継ぐための舞台には成り立たない。サク:「わかったけど、あんたがもっと住職やっていればいいことなんじゃないかなあ?」住職:「そういう気持ちがいけないのだ、誰かがやるからと思っているから先が見えない、だから私自身がこうしているのだよ。今の住人を見なさい、ここまで追い込んでしまったのは、我々仏の心が甘くなってきた証拠。一線を越えたら切り替えなければならない時期を見失ってしまっている。それを修正し、気付かせなければならないのだ」人気blogランキングへ
2007.02.15
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セータがキャッチした情報は、サクの目の前に起きていた。セータ:「サクッ、何がいたんだ!?」サク:[……]通信は繋がっていた、しかし、応答がない。セータ:「こりゃあ、何かあったというか、驚いてるか、怖がっているかだな」急いでサクの場所へ向かった。セータは、何だか変な予感を感じた。セータ:「どこかで感じたような…」イオンにも、ノーマルな頭脳でさえも、何かを感じた。今まで全くなかった気が、充満しているかのように、一気に吹き出していた。セータ:「こ、この気配は…!」イオン:「あ、ああ、あいつだ!」そして、サクの場所に来た2人は、突き止めた男の姿を見て、呆然となり、座り込んだ。研究所では、ある程度成果がでてきたところで、再び寺院に向かう事にした。あるアイテムを持って。それは、ウインとサーヤの力作でもあり、自信作でもある。麻薬で汚染された世界を清浄し、人間の心を浄化する、そして、ウインが唱えていた環境擬似効果を、チップであるキルに充てるための技術を盛り込んだのだ。地形、建物、進化、人間と平和を除く最悪な物といえば、チップと環境となれば、環境擬似効果の使う道は、環境にではなく、チップそのものしかなかった。車で寺院に向かい、殺風景となった寺院に誰もいないことを確認すると、まず、寺院の真ん中にあたる本堂に、丸い物体を置き、すぐにスイッチを入れた。すると、たちまち煙が噴き出し、本堂を白く染めていったのである。2人はすぐセータの居場所を通信回路で探り、突き止める。その間に、各地の森林にさっきの物体をセッティングしていった。その発明した物体とは、サクが持ち帰ったリセットのエイリアスがヒントとなっている。リセットボタンそのもので、その中には、麻薬を中和させる液と、環境擬似効果をもたらす薬剤が混じったものであるが、完成に時間がかかったのは、2つの液を混ぜなければ発揮しない化学反応があり、混ぜる割合が物凄く困難だった。通信回路は、セータに繋がり、反応はしているが、普通の状態ではない。サーヤは心配になって、急いでセータの場所に向かった。サーヤ:「何があったみたい、急がないと間に合わないんじゃない?」ウイン:「そうだね、だが、我々も取り乱さないようにしなければならないぞ、この先は、成功か失敗か全く予測出来ないからね」サーヤ:「わかってますって!」車を進めながら、大量に作ったカプセルをセットしていく。最悪と最良の狭間を今、科学者が切り開き、高知能者が実行し、そして、住人が流れを作っていくのだ。そのために今、再び、仲間は集結する。人気blogランキングへ
2007.02.14
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椅子に座っていたのは、何と、追い掛けていたドンの手下の方だった。しかも、この椅子は、あのマシンになっていた。サク:「まてよ、マシンに座らせただけでも手間なのに、どうやって…?」座っている男は死んではいなかったが、かなり衰弱しており、しかも、気が読めない。サク:「こいつ、記憶を消されている!」」いくら格闘家でも、記憶が無ければただの人。キルには、莫大な悪を詰め込んだ最悪のチップとされていたが、意外にも、記憶の消去には対抗出来ないようだ。サク:「じゃあ、逆にやられると思っていたあの男って、一体?」そこへ、セータとイオンが入って来た。イオン:「あっちにも黒い箱がいっぱいあった。ありゃあ何だ?」セータはマシンに座っている男を見て、セータ:「あ、こいつ、キルじゃなくなってる!」イオン:「どういう事だあ?」サク:「記憶がないのは、消去したんじゃない、チップを抜かれたままだ。キルは外にあるんだ」イオン:「何だかキモいな、抜いてどうするんだ?」サク:「まだなんとも言えないけど、多分、この部屋のどこかにキルがある、そしてそれに何かをしようとしていた。」イオン:「そこに俺達が来た、まずいと思ってキルを持ったまま身を隠している、そんなところかあ?」更に別の部屋へ行くと、何と山積みになった黒い箱が立ち並んでいる。あの男は何者か?そして、黒い箱は何を意味しているのか?他の部屋にも、また黒い箱が。サク:「ブラックボックスと呼んでやろうか、あの男わ!」サクは更に奥へと潜入して行った。セータ:「待って、キルを持ち歩いているなら、キルのある部屋があるんじゃない?」サク:「それもそうだな、ブラボは取引もしてるくらいだからな、コレクターかあ?」そう言って奥へ消えて行った。セータが言ったのは、キルのある部屋、即ち、何がしたいかがわかる部屋という事だ。それに黒い箱との関連もわかるだろう。無謀なサクとは違い、慎重なセータは、今一度、キルに集中した。これだけ痛んだビルなら、情報が貫通するかもしれない。イオンは、すっかりチップが板についたセータを見て、イオン:「お前、高校生やりたくなかったっけ?何だか淋しいよなあ」セータ:「こんなときに言わなくても…」集中が途切れ、セータはまた学校を思い出していた。セータ:「それをいうなら、あんときのセンコーがかっこよかったなあ」イオン:「…ルセェ…」イオンはそれを最後に高校生の話しをしなくなった。あの頃を捨てて、ここに集まり、そして、あの頃のような世界に戻す、それしかないのだ。セータはもう一度集中した、サクの居場所がキャッチ出来た、サクのすぐ近く…、いや、サクの目の前!?人気blogランキングへ
2007.02.13
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つかの間の安らぎだった。しかし、ここは紛れも無く危険地域のど真ん中。先ほどの男にしろ、キルの増発にしろ、いいネタはない。サクは、セータが言ったことを深く考えた。どういう風に人をとるかは人それぞれ。サク自身の悪かった部分が、ここでは通用する。でも今はサク自身が変わって、善の心を開いた。そう考えれば、セータの気持ちに通じるものが見えてくるように思えた。しかし、一度仕掛けたら、後には戻れないし、失敗も出来ない。厳しいことこの上ない。とにかく、取引元「ドン」からの使者ともいわれるあの男を追跡しなければならない。サク:「とりあえず、さっきの奴を追って見よう、そこで判断する」セータ:「…うん」イオンも、イオン:「使える時は言ってくれ、ノーマル男にさ」サク:「ああ、そうだな、その時が来たらなあ」追跡はたいしたことないが、問題は、あの男の早さだった。並の人間ではない早さで追い付く事は不可能だ。後は着いてから事が起きていないことを祈るだけだ。サク:「こんなときはキルの機能がうらやましいなあ、セータ」セータ:「俺は詮索は嫌いだ」サク:「ばかいえ、もうすでにやってるだろ」追従がないだけで、軽い詮索は勝手にしてしまうのがチップの性分。それだけでも普通ではないのだ。5キロ位走っただろうか、ようやく、男のいると思われる建物に着いた。古びた、今にも潰れそうなビルだ。イオン:「ふん、悪い奴が使いそうなビルだぜ、マンネリなんだよなあ」サク:「はいるぞ」サクが先頭に入って行った。サク:「ノーマルは真ん中だな」イオン:「名前を言えよ、クソチップがあ」サク:「それでもいいさあ」イオンは、サクが物凄く変わっていると悟り、以前とは比較にならない程、頼れる存在だった。でもやはり、口が悪いのは変わらないみたいだが。セータがビルに入った瞬間、扉がバタンと閉まったのである。サク:「気付いてやがる、しかも、攻略も考えてる」セータ:「そんな奴、相手になるのか?」サク:「さっき、おまえらに会う前に、会った事は会ったんだが、あれで半分以下だったんだなあ」セータ:「何が?」サク:「えっ、あの男の力量って言うの?能力か、なんかがなあ」セータ:「はっきりしろよ、サク」すると、天然に感じたイオンは、イオン:「お前、怯えてるんだろ?」サク:「…」図星だった。サクには得策がなく、格闘もおそらく下だ。セータの気持ちを知ろうという強いやけっぱちが、先走ってしまった。後先の事も考えず。セータ:「分かることは、こっちに来るかどうか、だな」廊下を進んでいくと、人の気配はする扉と、反対側は無反応な扉。2つ同時に一斉に開けた。セータとイオンは反応しない部屋を探り、奥へと入って行く。サクは、必ずいると思われる部屋の奥にはいると、目にしたのは、小さな黒い箱が散乱し、あの男の衣類が見つかった。黒い箱が気になるが、今は男の消息が優先。更に奥に行くと、外を向いている椅子に誰かが座っている。サク:「誰だ?」返事がない椅子に向かって手を伸ばした。サク:「……!」人気blogランキングへ
2007.02.09
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イオンが抱くチップへの疑問。おそらく、普通の考えでいえば、疑問は多く、自分自身の考えを捩伏せる物、自分の能力を倍増させる物、自分とは違う事を見出だす物と、いずれも、能力にはない能力、覚醒を意味するもの、それが本来のチップの持つ目的なのだ。しかし、それ自体に問題があるというのが、イオンが言う、ノーマルの純粋たる気持ちを持つという事なのだ。ノーマルは限界があるとか、スピードがないとか言われて、そのことが記憶に残れば、ノーマルの維持が困難になってくる。自分をよくしなければ、と勘違いする者も出てくる。その結果をチップにすることは、伝説の上では認められない理由の一つである。障害を持った者、地域に合った生活が不可能だとか、対象は比較的身体や心が弱い者に対しての補助的な位置にあったはずだった。しかし、全てが当たり前になった時が危険時期だったのだ。かつてショウが開発した頃、最悪を乗り越える手段として過去の記憶を消し去り、新たな気持ちと強さを兼ね備えた最終的な方法だった。だが、伝説は当たり前の手段として動いている今となっては、チップは仇となって表れてしまった。いつの間にか悪に加担するアイテムに変わり、逆にそれが平穏な住人に襲い掛かろうとしていた。孫からみたイオンの気持ちには、伝説を背負う重みは、セータにも伝わっていたし、サクも理解しようと努力している。栄光を引きずるのではなく、維持していく事のあらわれが、ノーマルでありつづけたいという願いであり、こだわりでもあるのだ。チップ搭載が理想ではなく手段であることを知ってほしかった、それだけなのである。サクは、強引な搭載で自分とは思惑の違う心理に悩まされ、人生を遠回りしてしまった。セータは、父親の陰謀でやはり無理矢理搭載されて、大切な高校生活を失った。どちらのケースも現代のイジメや虐待と同等であり、そういった行為がこれから始まるキル量産に当て嵌まって行く事を防がなければならない。チップ搭載の2人は、改めて、その気持ちを確認した。妹であるサーヤも同じ気持ちで研究に時間を費やし、いい意味でのチップの使い方を伝授する義務感に徹しているのだ。復活したイオンとの安らぎの時間は、サクとセータにとって、貴重なものとなった。人気blogランキングへ
2007.02.08
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記憶が戻って喜んでいたのもつかの間、外から誰かが侵入、セータはすぐにサクではないと分かり、違う部屋に移動した。侵入してきた男は、サクを錯乱させた者だった。この男にはかなりの経験値を積んだキルが搭載されており、セータがどこへ隠れようが関係なかった。セータ:「駄目だ、こっちに来る、キルにロックオンされている」イオン:「なんだかわからんが、ヤバそうだなあ」セータ:「ああ、ヤバイも何も、何をしてくるかわからないし、だいいち、いったい誰だろ?」どうしようと言っている間に、その男は目の前に現れた。男は無口にセータを見つめ、じっとしているだけだった。イオン:「何だ?あんた、何をしている?」イオンが尋ねると、男:「……解読中だ、黙ってろ」イオン:「そんな言われ方されて、黙るかって。失礼もほどがある!」セータ:「センコー、喋らないほうがいいよ、また、アレされちゃうよ」イオン:「……」どうやら、男は、セータから何やら解読しているようだ。男:「……大人しくしていれば危害は加えない、ドンの言う通りにしているだけだ」イオン:「ドン?」男:「喋りすぎた、もういいぞ」セータ:「ドンって、あのチップの取引元だよなあ、そのシモベか?」男:「……」男は自分については語らず、去って行った。セータは、さっきの男はキルを騙し盗ったあの男の居場所を知りたかった、最後に会ったセータに来て、場所を特定しようとしたのだ。セータはあの男がどうしても悪い人には見えなかった。気になって、イオンをそっちのけで後を追うと思った矢先、サクが戻ってきた。サク:「今、変な男が入ってきただろ」セータ:「ああ、たった今出て行った」サク:「何もしなかったんだあ」あのキルを騙し盗った男など、どうでもいいって思っていたサクに、セータが、セータ:「ねえ、助けた方がいいんじゃあないなかなあ」サク:「なんで?あいつたいしたことなかったじゃん!それに、助けてどうなるんだ?説明しなよ」サクは理解に困って、セータを説得するが、セータ:「いや、根拠がないから困っちゃうんだよなあ、なんかすごい事しそうな気がする」サク:「そんな理由もなく助けるなんて危険だ、信用出来ないし、本当にすごい事するにしても、それがいいことかどうかだ」こちらにはキルを予想出来る頭脳を持っていないだけに、期待と不安が同時に発生していた。ただひとりノーマルなイオンは、イオン:「本当に、めんどくさいなあ、チップってやつは、探り合うとか、騙し合ってんの、疲れるだけじゃねぇ!」サクがそれを聞いて、サク:「あんた、治ってんじゃん!?」イオン:「だからあ、そういうのが嫌だって!」セータが間に入り込んで、セータ:「そ、そうだよ、センコーが帰って来たんだ。」人気blogランキングへ
2007.02.07
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サクは、食料を調達すると、すぐにセータのもとに戻ろうとした時、チップは僅かな動きを逃さなかった。サク:「誰かが尾行してる?」悟られないように、普通に歩いていると、更に頭に情報が入ってきた。サク:「こいつは、あの時の、スパイか」取引先で成立しなかった事に腹を立てて、そこにいたサクやセータの場所を突き止めれば、あの男の手掛かりがわかるわけだ。サクは行きとは違う道を歩き、錯乱させようと考えた。しかし、不思議な事に、そのスパイは、行きのルートを知っていた。サクのとおりにはいかなかったのだ。サク:「あの男、キルでも付けてんだなあ、まずいな」急いで先回りするため、走ろうとしたが、食料が重く、うまく走れない。小走りでも必死で追い越した、はずだが、男の姿が無くなった。サク:「まずい、完全にキルに追尾されてる、ロックオンかも」キルを越えるのは騙す事だけ、まともに対抗出来ない。サク:「何処へ行ったあ!」しかし、錯乱していたのは、サクの方だった。男は、ひたすらサクの行きのルートを歩いて、確実にセータの場所に向かっている。サク:「クソッ、やるんだったら、あの男と直接やって欲しいなあ、巻き添えはゴメンだ」セータの場所にいけば、絶対にただでは済まないだろう。とにかく、セータの所に急ぐしかなかった。セータは、あれからずっと、イオンを見続けていた。すると、イオンのまぶたが、ヒクヒク動いたのをセータは見た。セータ:「せ、センコー、俺だあ、わかるかあ!」イオン:「うう…」イオンは意識を取り戻し、セータを見た。イオン:「セータ…か、元気だったかあ…」セータ:「何言ってるんだよ、覚えてないのぉ!?」イオン:「ああ?覚えてるさあ、忘れる訳がないだろう、俺はお前の教師だぞぉ…」セータは、胸がドキドキしていた、イオンの記憶が完全復活しているのだ。おそらく、マシンのフリーズの影響で無くなる寸前だった記憶がバックした段階で、全ての記憶も呼び覚まして戻ってきた、という説が相応しい。今のセータには理由などどうでもよかった。イオン:「俺は、いつからお前と会ってないんだろ?いや、会ってたけどどこの若造かと?」セータ:「そんなの忘れちゃったよ、登校してなかったし」イオン:「なんかいろいろあったみたいだが、寺院にいたような記憶もあるんだよなあ、作業とかなんか、いや、忘れてたのは、お前の事だけだあ」セータは、忘れられていたことは悲しかったが、ここでこうして無事でいられるのがなにより嬉しかった。そこへ、ある人影が。人気blogランキングへ
2007.02.06
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光はまたたくまに広がって、男を完全に取り囲み、そして、次第に薄れていった。床にうずくまりながら、男は、男:「やられたな、サクを甘く見ていた」借りを返すというのはなかった、ただ、キルというチップをどのくらい性能がいいのか試されただけだった。今、男は起き上がって、薄ら笑いを浮かべ、拳をにぎりしめた。男:「キルに勝るには、根本的に欺くしかなかったわけか」リセットが偽物だとわかった時、命拾いしたというより、逆に屈辱を味わった形となって、男を苦しめた。キルの最大の弱点は、屈辱だった。サクは既に、研究所へリセットボタンを届けた後だった。セータ:「なあサク、さっきのボタンは何だったの?」サク:「ああ、あれは本物を念じて作ったレプリカだ、しばらく本物を持ち歩いてたからなあ」セータ:「それってサクの才能?それとも、そのチップ?」サクは笑いながら、サク:「自分の才能とチップとの合作としかいいようがないでしょ、無知な頭脳から才能を引き出されたような」サクのチップは、学習を続けている。ところが、サクの連続的な知識の吸収が、チップを活性させ、そのうちに、サクの頭脳に入り込んで来ていた、その癖がついたのか、ひたすらサクの脳からあらゆる千恵や性格までを吸い取っていたのだ。無知に等しかったサクの脳は、チップによって引き出されたわけだ。経験を積めば積むほど、かつてのサクでは無くなっている。サク:「キルは最悪だが、騙すことは出来ても騙される事までは考えられなかったんだ。ま、自分勝手なチップって事だあな」セータ:「口調だけは変わってないね」サク:「それもそうだな、それより、イオンの様子が心配だな」マシンから担ぎだしたイオンは目を覚ましてはいるが、朦朧として、まだ把握していない。あたりはもう夜、近くの別の小さな倉庫に入り、朝を待つ事に。サクは食料を調達しに外へいくと、セータはずっとイオンの手を握っていた。セータ:「もう、あのセンコーじゃなくていいから、しっかりしてくれぇ…」問題なのは、イオンが座っている最中にマシンがフリーズしたという事。記憶が消えるだけでなく、意識までも奪う可能性があったからだ。助かる事だけを考えていたセータを前に、イオンに奇跡が起ころうとしていた。人気blogランキングへ
2007.02.05
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男のやるべき事、それは、この世界にいる全ての人間にキルを搭載し、仕事や学問、政治や社会を効率よくレベルアップさせようとしていた。しかし、キルを搭載した瞬間、人間は、ある程度の支配下に携わることになるのだ。チップ事態は確かにレベルアップに違いないが、方向性が違う。普通はよい生活、より良い政治など、平等に改革を進めるのだが、キルは違う。個人個人の持っている性格を引き出して、真っ向から意見し、政策を計る、いわば、独立性の高いものとなる。それはどういうことか?セータ:「あんたは、とてもいい人だと思ったけど、どうやら見当違いだったみたいだね」男:「どこか悪い所でも?これは画期的な政策だ、皆がそれぞれに活発に運動し、学習する。適材適所が自動的に備わる。そうすれば仕事をしないニートはいなくなり、生きるために無駄のない生活を送れるのではないかな」セータ:「あんたの言っていることはさっぱりだ、自動化すること自体、最大、最悪の生活だあ」男の狙いは、意外にも、自分では支配したがらなかった。支配するのは、もっぱら、普通の人、人の前には立ちそうにない人物が狙いだったのだ。無知な人間ほどビュアで天然である事を利用して、キルを搭載すれば、100%性能が引き出せるからだ。セータ:「これは、精密に出来た独裁だあ、人それぞれが独裁をやるって事だろぉ?」男:「聞こえの悪い事をいうなよ、絶対いいって、自分が切り開ける、実現できる、今足りないのはやる気、生き甲斐、進歩、全てを覆すのだよ。」「こいつ、いくら言っても、本当はノーマルのよさを知らない……」セータは、これ以上、男に言っても無駄である、というか、セータのレベルでは無理だと決めて、ここはひとまず降伏することに。しかし、イオンがこのままでは、キルを植え付けられてしまう。なぜか、男は、イオンにはまだ手をかけず、焦らしているのか、男は考えていた。男:「イオン君は記憶が欠けているわりには、いろいろ思った事を口にするから、このままキルを付けても、上手くいかないだろ?」セータ:「なにが言いたい?」男は、真面目な顔で、男:「全ての記憶を消す」セータは、何となく感じていた言葉だが、イオンの記憶を消すという事は、イオンらしさを失う事。ノーマル人生を消去することだった。依然、イオンを縛り付けているものは、物体ではなく、男から放った気のようなものが、イオンを取り巻いている。これもキルのなす業なのか?これこそ、自分自身で身を守る力、単独で実行できる世界とは、こういう事なのか?ここには、イオンのように、天然なノーマル頭脳を持った者は少ない。いや、もう既に成分で冒されているのかもしれない。強制なIQを持っても、何も生まれないのだ。天然こそ、ノーマルこそ、その人らしさ、というものがあるのだ。人気blogランキングへ
2007.02.02
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銃を構えたまま、びくとも動かない男、構えられて動けないセータ。セータ:「あんた、キル付けてんだな?俺にはそのチップの構造が読めるぞ」強気な発言に、男は、男:「少しはやるようだが、まだ子供同然だなあ、私がなにをしたいかわかるのか?」セータ:「いや、まだだ、でも、あんたはこの世界に生きるには、金がもう無理だろう!」男:「ああ、もう金ではない、別の世界を生きて来た事を忘れたことはない。だから、このチップを利用するんだ」セータ:「意味がわかんねえなあ、チップをどう悪用するか見届けてやるぞ。」男の過去は、どうやら記憶にあるらしい。男:「ここを見られたからには生きては返さないが、興味があるなら話しは別だ。」セータ:「まだ死ぬわけにはいかないが、説明は聞きたい」男:「ふん、言う事だけは大人臭いな、いいだろう、話しはしてやる、その代わり、条件がある」セータ:「条件!?」何を話し始めたのかさっぱりなイオンは、男が話しを進めていくと同時に、セータの方に向いて、ブツを置き去りにしたその間に、男の持っていた黒い箱に近づいていた。セータがブツから遠ざけようとしているところを狙って、イオンが手を伸ばした瞬間、男:「盗むならもっとまともにやるんだな、イオン君」イオン:「ばれてる!」甘すぎた、チップの中でも、キルにかかれば、手も足も出ない。男:「そういえば、さっき会った彼も私に近いチップらしかったが、キルではなかった、君達は何者なのかな?」セータ:「サクに会ったんだな、じゃあ、向こうで誰かと取引してきたんだな、そこで会った」男:「その通りだ、しかも、その彼には助けられている、借りを返さないとなあ」セータは、サクに助けられたという、この男の正体を見抜きたかった。しかし、今の力ではキルに対抗出来なかったのだ。男:「イオン君は、未だに記憶を失っているようだね、しかも、この場所でノーマルな頭脳ときている。教師かもしれないが、ここでは無知に等しい」イオン:「言わせておけばあ!」セータ:「センコー、無理だ、止めて!」[キューン]超音波を発して男は、イオンの動きを止めた。身動きがとれないイオンは、必死にもがいたが、力の限界だった。イオン:「畜生!ここじゃあ、無知かよぉ!」セータが眼力で解こうとしたが、目をやられてしまう、最大限の力を出すにも高校生並では対処出来なかったのだ。男:「どうだ、興味が沸いてきたかい、キルは、万能かつ無敵だ。」イオン:「ふざけんなあ、こんなもん…」イオンはみるみるうちに力を失い、気絶していた。セータ:「あんたの目論みがわかったぞ、センコーにキルを付けるのが条件だろぉ」人気blogランキングへ
2007.02.01
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他のリセットでは取りあげる事すらあり得ないが、物体的に横領ができるのは透明リセットボタンだけだ。パソコンでいう、もとのファイルから使いやすい場所に"エイリアス"を置くのと同じ仕組みで、発生場所にあって初めて動作するため、すんなり使えるようには出来ていなかったのだ。しかし、それが一番の利用防止であり、リセットされないうちは、複数が同時に現れることもない。サクは持ち帰ったリセットのエイリアスから探るために、サーヤのいる研究所に届ける事にした。イオンとセータ組は、結局何も起こらなかった。しかし、帰り道、たった1台のクルマが通り過ぎ、さっきの倉庫に向かって行った。イオンとセータは、急いで倉庫に戻り、先ほど隠れていた場所に腰掛けた。クルマが脇に止められ、1人の男が、何やらトランクケースを持っていた。男は、フタを開けて中身を確認した。セータが突然反応した。セータ:「うわっ、同じ物を鋭く感じる!」イオン:「何が、どうしたってぇ?」イオンは双眼鏡を取り出して、トランクの中を覗いてみたら、イオン:「ありゃあ、チップだなあ?」セータは、同じ物を感じると言って、その男に引き寄せられていく。イオンは急いで、イオン:「馬鹿、近寄るなよ、どういうつもりだあ!」すると、セータ:「いやあ、なんか、あの人、そんな悪いようには感じないんだよねえ」イオン:「!?」セータの発言に疑問を抱くイオンは、同じチップを持っているだけで何故いい人と思うのか、まったく理解出来なかった。イオン:「チップのせいで妨害されてるかもしれないぞ」セータ:「うーん、その発想、単純だけど、いいねえ」セータは馬鹿にした口調だったが、心の中はかなり的を得ていた。男は、トランクからチップを取り出し、あたりを気にしながら、また違った箱に移し替えた。イオン:「あの黒い箱は何だ?なあ、セータ……あ」イオンがあの黒い箱に見取れている間に、セータがいなくなった。あの男に近寄るために、自分の気を消していたため、イオンにはいなくなった瞬間がわからなかった。イオン:「馬鹿!あれに近づいてるんだな、どこから行ったあ?」すると、黒い箱の横に何かスイッチがあり、それを下に下げた。箱は何か唸りを挙げて、振るえだしたのだ。イオン:「なんかの機械だったのかあ、だとしたら、チップに何かをしているって事!?」見つからなかったセータが、ようやく姿を見せたのは、男の背後だった。イオン:「ああ、馬鹿!」男はいきなり後ろを向いて、銃を構えた。ビビる事なく落ち着いた表情のセータだった。男:「ははあ、君はあの男の仲間だね、何が目的かは読めるがねえ」セータ:「仲間だって?あんた、チップの男に会ったのか?」人気blogランキングへ
2007.01.31
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チップを搭載した幹部Bにはやはり、違法ともいえる裏機能のある[キル]。サクのチップよりも深くしつこい、追従方式のナビを無理矢理内蔵している。裏ならではの施工が施され、もはやサクの考えはお見通しだったのだ。追従方式というのは、見る、聞く内容に対して、解決するまで強制的に検索、誘導、実行までをサポートする。その機能は複数同時進行も出来るが、使う人の能力次第。複数が出来ないタイプがあるらしく、それはチップの値段によって様々だという。この業界では、高性能ほど悪という解釈だ。行動を読まれているサクを心で見ている、そんな状況でやりづらいが、どうやら騒ぎを起こして欲しいというニュアンスだ。騒ぎを起こせば、相手の幹部Bは持ち逃げするだろうし、それよりも、リセットが問題でもある。幹部B:[…どうする…]その囁きに、サクは、サク:[…知ってるのか、リセットを…]幹部B:[…もちろん…]サク:[危険を承知で…]幹部B:[私を心配している暇があるのかね、サク…]名前も読まれているという事は、個人情報は全て流れているという事だ。過去の事以外に、リセット前の事まで、追従されている。どうやら、この幹部Bには回避する秘策があるらしい。目をこらすと、相手側の幹部Bの脇に、ボタンらしき物体が見えるのだ。サク:「なるほどな、自信があるわけだあな」サクは、ふと、住職の事を思い出した。住職の心に備わっている、無の心。それは、即興で実行できる、修行の成果でもある。サクは元々、無の心を持っていたが、チップの異変から、自動的に思考するようになり、学習も出来るようになった代わりに、セキュリティが弱く、情報が漏れやすかったのだ。そこで、命懸けの作戦を即興で実行した。サク:[プツ…]幹部Bからサクの心が見えなくなった。その瞬間、元のクールなサクに戻った。幹部は驚きを隠せなかった。幹部B:「チップの供給回路を切るとは、助からんぞ」何を思ってもサクには伝わらない。落ち着いてはいるが、幹部Bにはサクの行動が見えなくなり、錯乱した。即興の動きが身を結び、あっというまに部下を救出し、ついでに脇にあったボタンも横取りした。幹部B:「取引成立という事で、よろしいかな」幹部A:「は、ああ」後を頼もうとした受け渡し側の無知な幹部Aは、部下が居ないことにようやく気付き、怒りをあらわにしていた時、幹部Bは、微笑みながら、ブツを手に持ち去って行った。残された幹部Aの怒りは、誰にも止められないが、そこにはもう、彼以外、従う者は誰もいなかった。人気blogランキングへ
2007.01.30
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サクは、男達に先に行っててもらい、1人で助けるつもりだ。サク:「いいか、私が行ったらすぐにここを走り去るんだ。あんたらは自由だ。」男2:「でも、あいつらは?」サク:「すぐに逃げられるから。」そう言うと、すぐにその場から離れた。サク:「あのリセットは、罪人の都合で出来た、まやかしのリセット。そして、禁断のチップ、キル、この2つはあいつらにとってビジネスであり、娯楽なんだ。この世界には必要ない、しかし、自分も言えた柄じゃない、あいつらと同類なんだ」サクは、今改めて、自分の罪の深さを悟っていた。そしてそれを噛み締めながら向かって行った。幹部のいる場所からすぐ近くまで寄ってきた、そして、部下達に気がつかせ、合流する。サク:[…今何の取引してる?…]気がついた部下達は、サクに目線を振らずに、男3:[…キルだ、早く逃げろ…]サク:[…そんなわけにはいかない、私のいうとおりにしろ…]サクの誘導に部下達が従うのか、それとも…。一方、逃げた男達は、疲れ気味な身体を癒すために草むらに寝転び、空を見上げていた。星のように舞っている成分を目で追っている。男1:「なあ、こいつが麻薬の粒子だって教えた方がよくねぇ?」男2:「今更遅いだろ、もう、これ無しには生きていけなくなっちまってるよ、だから逆に何も起きないんだろ」草むらに付着した粒子や、涌き水までもが、この世界を支配する手助けをしているのだ。まともに見れば、重度な環境汚染と判断されるも、ここでは天下となり、平穏な暮らしをしながら蝕んでいく世界。ビジネスとしている人間には、汚染されることがないように、特殊なワクチンを投与されているが、それは、幹部から配布されるため、逃亡した者は、もはや、住民と同様、身体の保証はない。それでも、逃げて、少しでもいいから、自由で、平和でありたいという気持ちが上回り、それが、人の身を按じる気持ちに変化していったのだ。説得を続けているサクの能力に限界が来ていた。サク:[このままだと、幹部にばれちまう]危険だが、幹部に悟られないように、幹部の能力を探っていた。すると、提供するこちら側の能力はノーマルなのに対して、相手の譲渡される幹部には、なんとチップが搭載されていた。サク:[相手側の方が、気付いている!でも何も感じないふりをしてやがる」ある意味、陰険だが、かなりのワルである証拠だ。サクの出方次第では、取引をぶち壊して、金を出さずに狙いの品を頂くという気持ちが伝わるのだ。相手の幹部が、心の中から、幹部B:[…さあ、どうする…]人気blogランキングへ
2007.01.29
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