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2021.05.29
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​​鶴見俊輔・佐々木マキ「わたしが外人だったころ」(福音館)
福音館書店 が今も出しつづけている 「たくさんのふしぎ」 という月刊の絵本がありますが、その傑作集の1冊、 「わたしが外人だったころ」 です。 2015年 に出版されているようですが、この棚にいつからあったのか、トンと記憶がありません。​​
​  「月刊たくさんのふしぎ」 の方は、 ゆかいな仲間 がまだ小さかったころ定期で購読していました。数年分のバックナンバーが今も並んでいます。​
​​ で、 「わたしが外人だったころ」 ですが、ご覧のように、あの、 佐々木マキ の絵の上に、哲学者の ​鶴見俊輔​ の文章がのっかっています。小学校の高学年向きの絵本ということらしいです。​​
​​  1938年 、16歳の秋に渡米し、17歳でハーバード大学に入学し、19歳の年に 「敵性外国人」 として移民局の留置場に留置され、留置場の中で卒業論文を書いたこと。 日米交換船 に乗って帰国したいきさつ。帰国して海軍に志願し、ジャワ島に通訳として派遣され、病気になって帰国したこと。病床で敗戦を迎えたことなど、 ​​ ​1922年​ 生まれ、80 歳を超えた哲学者が時代を追って思い出しながら書いています。こんな感じです。
 ​ 1945年8月15日 がきました。私は病気でひとりねていて、ラジオの放送で日本の敗戦を知りました。
 どうして自分が生きのこったのか、その理由はわかりません。わたしが何かしたために、死ぬことをまぬかれたというわけではないのです。なぜ自分がここにいるのかよくわからないということです。そのたよりない気分は、敗戦のあともつづいており、今もわたしの中にあります。今ではそれが、あたしのくらしをささえている力になっています。
 16歳から19歳の終わりまで英語を使ってくらしたので、敗戦までわたしは心の中では英語でかんがえてきました。日本にもどると、「鬼畜米英」(アメリカ人とイギリス人とは人間ではなくて鬼かけものだ)というかけ声がとびかっていて、それはわたしのことだと、いつもおびえていました。負ける時には日本にいたいと思って帰ってきた結果がこういうことでした。
​ ​​​不良怠学で、日本の小学校高等科を退学になり、英語もできない16歳が ​「外人」​ としてアメリカで暮らし、日米開戦のために帰国した日本では、敵国から帰ってきた 「外人」 として扱われて暮らした。それが子供たちに、哲学者、 鶴見俊輔 が語った、70年以上も前の思い出話で、絵を描いているのが、不思議な絵柄の 佐々木マキ です。​​​​
 小学生に限らず、若い人たちが、こういう話をどう読まれるのか、想像するのも難しい世の中ですが、誰かが手に取ってくれるとうれしい絵本です。



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最終更新日  2023.05.18 00:44:15コメント(0) | コメントを書く
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