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「これが墓なのか!?」と,あらためてスクリーンを見直してしまうような、砂漠の真ん中に少し大きめの石が置かれている家族の墓に結婚を報告し、紙のお金(纸钱 zhǐqián)を燃やして祈ります。二人は、離農の結果でしょうか、点在するあばら家のような空き家に暮らし始めます。 ロバと男と女の話 でした。ちなみに、上に書いた最初のシーンは 男 がロバの小屋(部屋?)の敷き藁を掃除しているシーンでした。
「なんなんだ!?」 やがて、畑を耕し、借りてきた麦の種を撒き、これまた借りてきた卵を孵化させ、包子を蒸し、という二人の暮らしが映し出されていきます。 美しく貧しい生活 です。
「トウモロコシが売れたら、町の病院で診てもらおう。」 女 の、恥ずかしそうな笑顔が二人の生活のクライマックスでした。。
「生まれてから今日まで、一度も町には行ったことがないのよ。」
ネタバレになりますが書いておこうと思います。
二人
が話し合った翌日でしょうか、 女
が水路に落ちて亡くなります。 男
は 女
をあの墓に一人で葬り、村の人に借りていた 卵や麦のお金
を支払って回り、あらゆる場面で 男を助けたロバ
を砂漠に放ち、新築した家をブルドーザーが壊していくシーンとともにスクリーンから消えてしまいます。
女
の死は水路に落ちるという事故によるものでしたが、その結果、 男
が投げ出されたのは、まさに、役立たずの二人が、泥にまみれて支え合うことで、初めて手に入れたはずの大切なものが土埃の中に消えてしまった場所でした。そして、それが、とりもなおさず私たちが生きているこの世界だということを突き付けて映画は終わりました。
観終えたぼくは、 原題「隠入塵煙」
が 「Return to Dust」
と英訳してあったことにようやく納得がいくのですが、 男
はどこに消えたのでしょう。あるいは、私たちはどこに行こうとしているのでしょうね。
中国
では この監督
に、今後、映画を撮ること禁じたそうです。 甘粛省
の観客が
「我々はこんなに貧しくない」
と抗議したからという理由だそうですが、 現代中国
に限らず、 現代の資本主義
が徹底して破壊し、隠蔽している 本来の豊かさ
を映し出したこの映画を権力者たちが禁じるのは、ある意味で当然だと思いました。
一万数千元
の 「農村振興費」
を手に、 男
はどこへ行ったのでしょう。粗削りなストーリー展開ではあるのですが、静かに胸をかきむしられるという不思議な感慨を刻み付けらた作品でした。
貧しい夫婦を演じた ウー・レンリン(マー・ヨウティ農夫)
と ハイ・チン(ツァオ・クイイン 妻)
に拍手!。
今頃、きっと砂漠をウロウロしている ロバ君
に拍手!。 監督リー・ルイジュン李睿珺
に拍手!。
そして、 美しく貧しい農村の風景
に拍手!でした。
マア、なんというか、こういう映画がぼくは好きですね(笑)。リー・ルイジュンが次に、どこで、どんな作品を撮るのか、いや、撮れるのか、心配ですが、期待しますね。
監督 リー・ルイジュン李睿珺
脚本 リー・ルイジュン
撮影 ワン・ウェイホア
美術 リー・ルイジュン ハン・ターハイ
編集 リー・ルイジュン
音楽 ペイマン・ヤザニアン
キャスト
ウー・レンリン(マー・ヨウティ農夫)
ハイ・チン(ツァオ・クイイン 妻)
ヤン・クアンルイ(チャン・ヨンフーの息子)
2022年・133分・G・中国
原題「隠入塵煙」「Return to Dust」
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