初夏の香り

　店先に並んでいた蕗を買った。　田舎の蕗とは違って、お化けのように大きな蕗だけれど、油揚げと煮てみた。　一箸つまんで口の中に放り込んだ。　思わず歓声を上げたくなった。　口中に故郷の味が広がったから。　外出先から帰宅した娘達が思い思いに鍋の蓋を取り、　「わぁ美味しそう！蕗って大好き。いい匂い！」と声を上げた。　わたしが好きなお袋の味は、ちゃんとDNAに刻まれているようだ。　母と交わした会話を思い出しながら、娘達も美味しいと舌鼓を打つ姿の中に、ささやかな幸せが潜んでいる。