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金木犀には、いろんな思い出がある。 この季節になると、様々なことが走馬灯のように駆け巡る。 一人でかいだ時も、誰かとかいだ時も、同じ初秋の香りに違いないのだけれど、良いことも、そうでないことも、すべてが今に繋がっているのだと思うと、それらすべてが愛しい。 中でも印象に残っているのは、ほんの日常の、ずっと前に住んでいた家の物干し台から見下ろす一本の金木犀だった。 清んだ真っ青な高い空を見上げて、洗濯物をパンパンと両手で叩きながら干していると、香しい懐かしい匂いがした。 ふと目をやると、大きな木にオレンジ色の金平糖のような花が、ちらほらとついていた。 ああ、今年もこの季節が訪れたのだなぁ、と一年が瞬く間に過ぎたことを、反芻するのだ。 日常の、ほんの些細な出来事ともいえないくらいの、この小さな一瞬を、金木犀が香ってくると思い出すのだ。 掛替えの無い家族が掛替えの無い家族として健在だったあの頃……。 それは今でも大切で高貴な思い出として、わたしの中の深い部分で留まっていて、甘く切なくさせるのであった。 過去を悔やんだり思い返しては嘆いているのではなく、何年経っても大事なものは変わりようがないというか、変わらないという証拠のような思いなのだった。 金木犀のこの季節。 いろんなことが思い返される。 本当に良いことも、そうでないことも。 でも、そんなすべてを孕んだ金木犀の香りを、今年も思い切り吸い込んだ。 身体の奥深くまで、届くように。
2011年10月09日
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