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・12、31、火古山高麗雄の「断作戦」という作品を読み終わった。もう大変な話である。しかしこれが事実あった話だから何とも言葉もない。第二次世界大戦終了時に、日本軍は中国の雲南というところで騰越城という古城に立てこもり、連合軍である中国軍と攻防戦を3年近く繰り広げる。そして弾薬も食料も尽きて、やがて日本軍は玉砕するのである。最初数千人いた兵は最後には数名になり、騰越城を脱出し、力尽きて結果敵軍の捕虜となる。結局捕虜となったものだけが、日本に生きて帰ることができたのだ。現地の激戦でも、玉砕したものは歴史から黙殺されているものが多いという。敵との凄まじい撃ち合いでは、隣の戦友の脳髄が飛んで来る、足や腕がもがれ飛び交い、砲弾で吹き飛ばされ内臓が流れる。そんな地獄に数年も置かれると、もう人の死に対して何も感じなくなる。明日には、いや数分後には自分も死ぬ、そう思いながら引き金を引き続ける。砲弾がキャーンという金属音を響かせてすぐ横で炸裂する。奥歯がガタガタ鳴る。爆弾の破片が太股に突き刺さり血が噴出す。しかしそんな怪我は軽い。両足をもがれたものは、這って行軍するのだ。飢え、凍死、睡眠不足などの苦しみが付き纏う。一人二人と餓死し、それでも皆戦い続ける。弾薬も尽きると、皆敵陣地に切り込み突撃を行う。いわゆる自決行為である。動けない負傷兵は、そのためにと持っていた手榴弾で自ら爆死する。その古城に立てこもるまでビルマから兵は行軍して来るのだが、徒歩でやって来るその距離は180キロとかで、それは熊本から仙台ぐらいまであるという。皆食べていないし、ほとんどの兵隊は負傷しているし、ふらふらのまま180キロを進むのだ。ビルマのジャングルで寝るときは4メートルもある蛇や、寅などの餌にされる危険に晒されながら土の上で横たわる。もちろん途中で動けなくなり脱落して行く者が続出する。立ち尽くしたまま片手を力なく伸ばして、声にならないまま口を動かし他の者に救いを求める。しかし他のものも自分のことで精一杯であるため、黙殺して杖にすがって先に進む。残された脱落兵は、そのままそこで餓死するのだ。ビルマのジャングル内の通りには、そのようにして日本兵の死体があちこちに散乱していたという。そのようにして中国まで来ると、今度はそれに寒さが加わる。彼らはまともな軍用外套など与えられていたのだろうか。ここでも寝るのは冷たい草の上。もちろん朝目覚めて来ない者もいる。そんな生活を何年も続けて、一旦戦闘になれば何千発という玉が飛んで来る。それで生き延びて日本に再び帰って来て年を取るまで生きつづけるという人たちの、その運の強さというのはどのようなものだろう。戦場の下級兵士はほとんどが20代前半で、若い者たちが皆こんな地獄のめに合わされているのだ。この本は、古山氏自身の体験をただそのまま淡々と語るものだが、でも時々は著者の意見も語られる。国や軍のおえらさんが机上で組み立てるバカな作戦計画一つで、若い男たちの運命が左右され、紙切れのように殺される。一旦兵として召集されればそこから逃げることは出来ないし、戦地での命令には絶対服従なのである。それに逆らえば国賊として死刑だ「こんなバカな戦争という行為を二度と繰り返してはならない」と古山氏は言いながら、同時に反戦を唱える人、戦争体験を学校で講演しながら平和を訴える人たちを軽蔑しているようなところがある。この本が書かれた時代は戦後30年とあり、古山氏は60代半ば。何故反戦論者が彼にとって軽蔑の対象になるのか。結局それらも其々の自己満足のためにやっている行為なのだと言う。あの悲惨な戦争で自分が体験したことを、誰かに話して感銘されたり同情されたりしたいだけ。自分がこの本を書いているのも、結局そんな抜け出せないあのころの世界でもがき苦しむ一つの表現であり「皆に同じ間違いを犯してほしくない」などという思いは二の次なのだという。元復員兵が書いた本で、やはり同じようなことが書かれていた。戦争を知らずに反戦を唱える者を見ると胸糞が悪い、というような内容だった。悲惨な戦地から戻った元兵士には、後の日本での平和な生活の中で、ノイローゼになって暴れたり、何年もしてから急に謎の自殺を遂げている者が多い。古山氏に言わせると、反戦や平和をいくら口で唱えても、結局それは無駄なことだというのである。戦争になればどのようなことが起こるか、それは皆どんどん忘れるし、戦争を知らぬものはもちろんそれが何を意味するのかなど分かりようもない。ではどうすればいいか、その明確な意見は記載されていない。戦後30年と言えば戦争は日々遠ざかり、高度成長で日本は浮き足立って物が溢れかえり始めたころである。安部内閣によって戦前戦前へと導かれる今の日本とはまた違う。古山氏のような戦争体験者は、今やほとんど居なくなって来た。彼らは今の日本をどう評するだろう。
2013.12.31
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・12、15、日今.古山高麗雄という作家の作品を読み漁っている。この作家は有名な人だとは言えないのかもしれないが、それでも50歳で小説を書き始めて、すぐに芥川賞を受けている。生きておられれば現在90歳を超えておられると思うが、兵隊として東南アジアを転々とした経験を主に題材としている。彼の作品を読んで、海外に戦争に向かわされた兵隊がどれほどの地獄の経験をしたか、改めて知り驚嘆する。それと共に、戦争時代の話で我々の耳にどれほどの嘘が伝えられているか、これも驚嘆すべきな事実である。 つづく
2013.12.16
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