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キエフの暫定政権は1万5000名以上の部隊でドネツク州スラビャンスクを包囲、約160輌の戦車、230輌の戦闘車両も配備されていると伝えられたが、それ以外の地域で反クーデターの動きが広がっているようだ。アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行もドネツク州とルガンスク州をコントロールできていないと発言、地元の警察が住民の活動を制止していないとも同大統領代行は批判している。スラビャンスク、ゴルロフカ、スガンスクなどは全市を住民が制圧しているという。 ネオコンを中心とするアメリカ/NATOの支援を受け、ネオ・ナチを使ってビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したものの、その際に行った残虐な行為を人びとに目撃されたことも支持者を減らす一因になっているだろう。 2月21日にヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派が平和協定に調印した直後、ネオ・ナチは棍棒やナイフを手にし、医師だけでなく火焔瓶を投げ、トラクターなど大型車両を持ち出し、銃やライフルを撃っている。 2月22日に議会は機能を停止、暴力に支配されてしまう。そうした中、反ヤヌコビッチ派は議長だったボロディミール・リバクを脅迫して辞任させ、トゥルチノフを議長に据える。その上で憲法の規定を無視して新議長を大統領代行に任命したわけだ。 市街ではこの日から狙撃で多くの死者が出始めている。この狙撃を始めたのは「西側」に支援されたクーデター派だということはEUも早い段階で認識していた。エストニアのウルマス・パエト外相が2月25日にキエフへ入って調査、その翌日にはEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ次のように報告している: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある」としたうえで、「新連合はもはや信用できない」と語っている。 この会話は何者かによって盗聴され、YouTubeへアップロードされているので、当然のことながら、「西側」のメディアも内容を知っているはず。知っていれば、キエフ市街の殺戮は「西側」から支援されたグループに責任があることが理解できるはず。それでも暫定政権を支持するなら、警官隊や住民を狙撃、多くの死傷者を出す行為も支持していることになる。 パエト外相にスナイパーに関する情報を提供したのは反ヤヌコビッチ派の医師だとされている。こうした「反ロシア派」の人びとからも暫定政権は支持されていない可能性がある。 2月24日までSBU(ウクライナ治安局)の長官だったアレクサンドル・ヤキメンコによると、狙撃の第1発目が発射されたビルはアンドレイ・パルビーが制圧していたビル。このパルビーはネオ・ナチの「ウクライナ社会ナショナル党(後に党名を「スボボダ」へ変更)」を創設したひとりで、今は国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括)の議長だ。 アメリカ/NATOから軍事訓練を受けているネオ・ナチは石や火炎瓶を投げたり狙撃するだけでなく、警官隊(ベルクト)の隊員を拉致、拷問したうえ、殺害している。目を潰された状態で発見された隊員の死体もあるようだ。 暫定政権のアルセン・アバコフ内務大臣代行はベルクトを解散させたが、クーデター時のことを考えれば当然だろう。命の危険を感じて少なからぬメンバーがロシアに保護を求め、ロシア外務省はロシアのパスポートを発行すると約束したと報道されていた。東部や南部で反クーデター派に入っているメンバーもいるだろう。 SBUには「C」という治安部隊(通称、アルファ)が存在、キエフの暫定政権は東部や南部で州の庁舎に立てこもる住民を排除するように命じているが、突入命令を拒否したアルファの指揮官もいるようだ。軍の内部にも離反者が多い。内戦になった場合、ネオ・ナチやアメリカの傭兵(民間特殊部隊)だけで対応することは難しいだろう。
2014.04.30
キエフの暫定政権はネオ・ナチを中心とするグループを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、誕生した。その背後に「西側」、特にネオコンがいたことも今では明確になっている。暴力的な制圧は行わないという縛りを「西側」にかけられたヤヌコビッチ大統領は正直に約束を守り、国を追われることになった。 そのクーデターを最前線で指揮していたのがアンドレイ・パルビー。ネオ・ナチの「ウクライナ社会ナショナル党(スボボダの旧党名)」を仲間と創設し、「オレンジ革命」を率いたひとり。アメリカの特殊部隊ともつながり、現在は暫定政権で国防省や軍を統括する「国家安全保障国防会議」の議長を務めている。その副議長はやはりネオ・ナチで、右派セクターを率いるドミトロ・ヤロシュ。 そのヤロシュと同じように右派セクターのリーダーだったアレキサンダー・ムージチコ(別名サーシャ・ビリー)が3月24日に死亡した。警察は自殺だと主張、内務省は銃撃戦で射殺されたとしているが、ウクライナ議会のアレキサンダー・ドニ議員は暗殺、あるいは処刑されたのだとしている。つまり、ムージチコの乗った自動車が2台に自動車に止められ、後ろ手に手錠されて心臓へ2発の銃弾を撃ち込まれたのだという。 ムージチコは自分が命を狙われていることに気づいていたようで、その辺の事情を説明する映像を残し、10日前にYouTubeへアップロードしている。検事総長室や内務大臣が彼の処分を決定、殺害するか、捕まえてロシアへ引き渡し、全ての責任をロシアの情報機関になすりつけて非難する段取りになっているとしている。 右派セクターはアルセン・アバコフ内務大臣が殺害を命令したと主張、大臣の解任と殺害に関与した特殊部隊員の逮捕を要求していたのだが、すぐ静かになってしまった。当初は報復を口にしていたヤロシュもおとなしく、本部はキエフから東部の都市、ドニプロペトロフシクへ移動したという。東部や南部の反クーデター派を制圧する作戦に参加するためだろうが、キエフから追放されたようにも見える。 ムージチコはチェチェンでロシア軍と戦い、その残虐さで有名になった人物で、イスラム教スンニ派の武装勢力(アル・カイダ)とも関係がある。クーデター後には検察官事務所に押しかけてスタッフに暴力を振るったり、武装解除を求めてきた暫定政権の人間を恫喝している様子がインターネット上に流れ、その粗暴さで広く知られていた。そうした粗暴さを嫌った「西側」がムージチコを排除したという見方もできるのだが、別の情報も流れている。原子力発電が関係しているというのだ。 原発は事故が起こると生態系を破壊、規模によっては人類の存続さえ危うくする存在。政府も東電もIAEAも情報を隠しているが、事故を起こした東電福島第一原発は今も危険な状態が続いている。すでに相当数の作業員が死亡したと噂されているが、住民の間で死者が出ていると双葉町の井戸川克隆元町長は語っている。 ウクライナでもソ連時代に大きな原発事故があった。1986年4月にチェルノブイリ原発で起こった事故だ。住民も放射性物質の怖さを知っているはずだが、「オレンジ革命」以降、ウクライナでは原発を動かすためにアメリカのウエスチングハウス製燃料を使っているようだ。無謀としか言いようがない。2年前には事故寸前という事態になったともされている。 それだけでなく、暫定政権は秘密裏に「西側」と協定を結び、EU加盟国の放射性廃棄物をウクライナに貯蔵するつもりだとも言われている。この秘密協定を知ったムージチコは暫定政権を脅そうと計画、それを察知したアバコフ内相は彼を殺させたという見方(原文)もある。ロシアとNATOが軍事衝突する前にウクライナは死滅するかもしれない。
2014.04.30
アメリカ国内で戦争に批判的な意見が増えている中、戦争は「我々」をより安全に、より豊かにすると主張する本(Ian Morris, “War: What is it good for?,” Farrar, Straus and Giroux, 2014)をスタンフォード大学のイアン・モリス教授は書いた。4月25日付けのワシントン・ポスト紙でも自説を展開している。 このモリス教授と同じようなことをジョージ・W・ブッシュも大統領時代、口にしていたと証言する人がいる。アルゼンチン大統領だったネストル・キルシュネルだ。ブッシュ大統領は彼に対し、「経済を復活させる最善の方法は戦争」だと力説、「アメリカの経済成長は全て戦争によって促進された」と話していたという。この証言はオリバー・ストーンが制作したドキュメンタリー、「国境の南」に収められている。 この主張で最も重要な問題は、誰が「我々」なのかということだろう。家族を殺し合い集団の戦闘員にとられ、戦況によっては非戦闘員も犠牲を強いられるのが戦争。戦争は富を急速に一部の特権階級へ集中させ、豊かにするものの、庶民は疲弊する。 「戦勝国」では欲望が人びとを支配、戦争の負の側面はあまり意識されないようだが、その裏では戦争で無惨な状況に陥る多くの人がいる。戦争とは他国から富を奪うこと、豊かな国、資源のある国を襲撃して奪うことだと20世紀初頭の日本では庶民も認識していた。 1904年から05年にかけて日本は帝政ロシアと戦い、勝利した。日露戦争だが、講和の段階で戦争を継続する余力はなかった。帝政ロシアを乗っ取ろうとしていた米英両国の支配層が仲介して何とか形だけは勝っただけ。講和条件は御の字だった。 しかし、勝った以上、相手から富を奪えと庶民も考える。新聞に煽られて大勝した気分になっていたこともあり、条約が締結された当日、日比谷公園で開催された国民大会に参加した人たちは不満を爆発させ、内相官邸、警察署、交番などを焼き討ちし、戒厳令が敷かれるという事態に発展している。 アメリカ海兵隊で名誉勲章を2度授与された伝説劇な軍人、スメドリー・バトラー少将の表現を借りるならば、戦争は不正なカネ儲け、有り体に言うならば押し込み強盗。財宝を盗むだけではなく、耕作地を広げ、鉱山など利権を支配、20世紀には賠償金という形で勝者は敗者から富を奪った。第2次世界大戦ではドイツが各国の中央銀行から金塊を奪い(ナチ・ゴールド)、日本は大陸で財宝を略奪(金の百合)したと信じられている。大戦後も日本では「戦争特需」なる呪文が唱えられていた。 こうした戦争を人類は1万年にわたって繰り返してきたとモリス教授は主張しているのだが、「戦争」の中身は大きく変化している。ナポレオン・ボナパルトの時代に始まった「徴兵制」で全ての国民が戦争へ直接、巻き込まれることになったわけだ。科学技術の発展もあり、第1次世界大戦、第2次世界大戦を経て戦争の犠牲者は桁違いに増大することになった。 そして今、人類を死滅させることも可能なほど破壊力が大きくなった兵器を背景に、特殊部隊が大きな役割を演じるようになった。退役した特殊部隊員を雇う傭兵会社も出現、「国境なき巨大資本」の「私兵」的な存在になっている。さらに、兵器のロボット化も進み、一部の支配層が庶民の意向を気にせず、強力な武力を動かせる時代に入りつつある。 アメリカでは自国通貨のドルが基軸通貨だということを利用、肥大化した投機市場を操作することで戦争ビジネスを支えているのだが、社会基盤を崩壊させ、庶民を貧困化させる大きな要因になっている。空からは無人機で、地上では傭兵、アル・カイダ、ネオ・ナチなどで殺戮を繰り返し、反米感情が全世界に広がっているのが実態で、アメリカ人の安全は大きく損なわれている。 つまり、モリス教授が言う「我々」の中にアメリカの庶民は含まれていないのだが、この教授やブッシュ・ジュニアのようなアメリカ支配層に従属しているのが日本の「エリート」だ。こうした人びとの中には、「人口爆発」を危惧し、大幅に人間の数を減らすべきだと主張する人もいて、そうした面からも戦争を推進している可能性がある。勿論、自分や身内は減らされる中には含めていない。
2014.04.29
4月28日、ウクライナ東部にあるハリコフでゲンナジー・ケルネス市長が背中を銃で撃たれ、手術が行われたようだ。撃たれたときの状況は明確でなく、自転車で移動中、あるいは水泳中と伝えられている。 ハリコフでは今月7日に親ロシア派が「ハリコフ人民共和国」樹立を宣言、27日にはクーデター政権を支持する活動家と親ロシア派の活動家が衝突するなど不安定な状況になっていた。ケルネス市長についてアメリカのウォール・ストリート・ジャーナルなどは「新政権に融和的な姿勢」を強めていたとしているが、一般的には親ロシア派と見なされている。 歴史的な背景を考えても、これまでの選挙結果を考えても、ウクライナの東部や南部はロシアに親近感を抱いていることは間違いなく、ネオ・ナチを使ってクーデターを行ったキエフの暫定政権に反発している住民は多い。だからこそ、住民投票の要求を「西側」は拒否しているわけだ。つまり「民意」を怖がり、武力で住民を屈服させようとしている。 現在、約1万5000名のキエフ軍に包囲されているというドネツク州スラビャンスクではSBU(ウクライナ治安局)に所属する特殊部隊「アルファ」の将校3名が反クーデター派に拘束されたと言われている。ゴルロフカへ向かっていたとみられている。現在、こうした特殊部隊を潜入させて工作している段階のようだ。 ただ、アルファの中にもキエフのクーデター政権に反発している隊員は少なくないようで、拘束された3名も家族の安全に不安を抱いて命令に従っていることを示唆している。犯罪組織がよく使う手だ。住民への銃撃を拒否してネオ・ナチに殺されたウクライナ兵もいると伝えられている。 2月24日からSBUの長官を務めているのはバレンティン・ナリバイチェンコ。前任者のアレクサンドル・ヤキメンコによると、第1副長官時代に彼は隊員の個人ファイルをCIAに渡していたという。現在、SBUはCIAの下部機関だと考えている人も少なくない。そのSBUで第1副長官を務めているバシリー・クルトフが現在、東部や南部の反クーデター派を制圧する作戦を指揮している。 反クーデター派の住民はOSCE(欧州安全保障協力機構)のメンバー8名も拘束した。その内訳は、ドイツが4名、スウェーデン、チェコ、デンマーク、ポーランドがそれぞれ1名ずつで、将校のようだ。ドイツ、チェコ、デンマーク、ポーランドはNATO加盟国であり、スウェーデンもNATOと緊密な関係にある。 住民側によると、この8名は4名のウクライナ将校を同行させ、「観光旅行」だと虚偽の申告していた。しかも、検問所やバリケードにマークをつけたスラビャンスクの地図を持っていたことから実際はNATOの偵察部隊だと疑われている。これまでアメリカは国連の査察団や赤十字のチームにエージェント、あるいは協力者を紛れ込ませてきたようなので、今回も同じことをした可能性は小さくない。 アメリカ政府はネオコン(親イスラエル派)に引っ張られる形で軍事侵略を活発化させているが、リビアでアル・カイダとの協力関係が発覚、ロシアの信頼を失い、ウクライナではネオ・ナチを使っている実態も明らかになってしまった。この間、中国もアメリカの行動を観察し、ロシアとの関係を強めている。 敵を分裂させ、個別撃破するのが基本のはずだが、アメリカと中国との関係に亀裂が入り、ロシアと中国というふたつの国を敵に回してしまった。アメリカとしては中国との関係を修復したいだろうが、その中国を日本が刺激している。日本が静かにしていろと言われるのは当然だ。
2014.04.28
アメリカ/NATOの支援を受けたキエフのクーデター政権は東部や南部の反クーデター派を制圧する軍事作戦を展開中だが、ロシアのRIAノーボスチ通信によると、ロシア側が撮影した衛星写真にはドネツク州のスラビャンスクの周囲を1万5000名以上のキエフ軍が包囲し、約160輌の戦車、230輌の戦闘車両も配備されたようだ。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相によると包囲軍は1万1000名だが、こうした情報が正確ならば、住民を殲滅できる陣容であり、ロシアを挑発する意味もあるのだろう。 ジョン・ケリー米国務長官はロシアが軍事的な挑発行為を繰り返していると非難しているが、この人物の発言は次々に嘘だと判明している。予想されるクーデター政権の軍事行動を正当化するための布石だと考えた方が良いだろう。 「イースター休戦」が宣言されていた4月19日の午前2時(現地時間)頃中、スラビャンスクに設置された反クーデター派の検問所が襲われて5名から7名が死亡、負傷者も出ていると伝えられている。その背景には大規模な包囲網が存在していたことになる。 こうしたクーデター政権の軍事行動を支える意味もあり、アメリカ/NATOはポーランドやバルト諸国へ地上軍や戦闘機などを派遣し、黒海にはイージス艦などを入れている。ロシア軍のジャミングでイージス・システムが機能不全になったといわれる駆逐艦のドナルド・クックは黒海を出たようだが、交代する形でテーラーが配備され、フランスの偵察艇ドゥピュイ・ド・ロームは残っている。フランスはさらに駆逐艦デュプレクスも黒海へ入れるようだ。こうした動きに対抗してロシア軍は4月24日からウクライナとの国境近くで軍事演習を実施している。 キエフのクーデター政権で首相代行を務め、クトリア・ヌランド米国務次官補の覚えがめでたいアルセニー・ヤツェニュクは4月26日、ロシア軍機が7回にわたって領空を侵犯したと記者に話しているが、担当大臣であるミハイロ・コバル国防相代行はこの話を否定している。この件についてキエフ政権の内部で話し合われたわけではないということだろう。ロシア側も領空侵犯の事実はないと反論している。 つまり、ヤツェニュク首相代行は個人的なルートで入手した情報を独断で記者に話したことになる。「ロシア軍の攻撃性」を宣伝するため、アメリカ政府の指示でビヤツェニュクは国防相代行も否定するような話をしたということだろう。 こうしたアメリカ/NATOの攻撃的な動きに対し、イギリスの対外情報機関MI-6の長官はデイビッド・キャメロン英首相に対し、ウクライナ政府を支援するために西側が軍隊を派遣するのをウラジミール・プーチン露大統領は傍観しないと警告したという。 NATO軍の内部ではネオコンと同様、キエフのクーデター政権を軍事支援するべきだという意見があるのだが、MI-6やイギリス軍の情報機関のトップはイギリスや「西側」が何らかの軍事行動を起こせばロシアと全面戦争になる危険性があるというわけだ。 ウクライナの状況を理解するためには、キエフの暫定政権が選挙を経て選ばれたわけでなく、「西側」の傀儡政権にすぎないということから出発する必要がある。だからこそネオ・ナチの暴力を必要としたわけで、アメリカの傭兵会社から戦闘員を雇い、ネオ・ナチで6万人規模の「親衛隊」を組織する必要があった。 ひとつの都市を殲滅するにはこれで十分かもしれないが、ウクライナ全域を制圧するためには足りない。すでに治安機関や軍の内部から離脱者が出ているようだが、軍事作戦の内容次第では造反者が増えて反クーデター軍が創設され、内戦が始まる可能性がある。そうなると東部の地域は独立を宣言、クリミアと同じようになるだろう。そうした事態を押さえ込むためにアメリカ/NATO軍が軍事侵攻すれば、ロシア軍も動くと見なければならない。 アメリカ/NATOがロシアとの核戦争も辞さずにウクライナを軍事制圧しようとしている理由はいくつか頭に浮かぶ。日本では軍需産業のカネ儲けが指摘されるが、それだけではない。 昨年12月13日、ヌランド次官補は米国ウクライナ基金の大会で演壇に登場、1991年からウクライナを支援するため、50億ドルを投資したと発言している。その際、彼女の背後には巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていたことでもわかるように、ウクライナの天然ガス開発はアメリカ政府を動かしている大きな力のひとつ。アメリカ企業がウクライナで油田を開発、ロシアから自立させようという思惑をジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使は口にしたという。 しかし、それ以上に大きな動機はアメリカ支配層の世界戦略にある。アメリカの元外交官、クリストファー・ヒルが現在のロシアについて、「新世界秩序」への「裏切り」だと批判したことは紹介済みだが、この「新世界秩序」を築く動きが活発化したのは1970年代のこと。その中心にはズビグネフ・ブレジンスキーがいた。投機家のジョージ・ソロスはプロジェクトの拠点となる組織を創設している。 このソロスの手先になって巨万の富を築き、「祖国」なる政党をつくったユリア・ティモシェンコはネストル・シュフリチ元国家安全保障国防会議副議長との電話でロシア人を殺すと繰り返している。副大統領時代のリチャード・チェイニーも似たことを口にしてたという。ロバート・ゲーツ元国防長官の回顧録『任務』によると、ソ連やロシア帝国が消滅するだけでは不十分で、ロシアという存在自体を抹殺するべきだとチェイニーは話していたというのだ。(Robert M. Gates, “Duty,” Alfred A. Knopf, 2014) エドワード・スノーデンの内部告発で電子情報機関による世界規模の監視活動が話題になっているが、そのプロジェクトは1970年代に発覚している。1990年代に入ると、通信の傍受、情報の集積と分析が世界的な問題になったが、これはUKUSA(イギリスとアメリカの電子情報機関の連合体)を使った米英の世界支配戦略がベースにあった。 そうした視点から世界の人びとはこの問題を見ていたのだが、日本では「企業スパイ」のレベルで語られるだけだった。日本の支配層は目先の利益にしか興味がないと言われるが、マスコミ、リベラル派、革新勢力なども目先の利益にしか関心を示さないのが実態。ウクライナの問題でも戦争ビジネスのカネ儲けという視点だけで語る人がいるが、根本的な問題はアメリカ支配層の世界支配戦略にある。 原発問題で人気が出たような新聞も国際問題では質の悪いネオコンの拡声器にすぎない。これまで嘘をつき、破壊、殺戮、略奪を続けてきたアメリカの流す情報を垂れ流しているわけだが、本当にそうした情報を信じるほど愚かな人たちではないだろう。テレビは論外として、新聞、雑誌、出版、市民運動、政党・・・権力者が許す範囲に止まりながら権力者を批判するような印象を維持するためには、権力者に騙されている振りをするしかない。
2014.04.27
アメリカ政府が異常なほどロシアのメディアを嫌い、4月24日にはジョン・ケリー国務長官がロシア・トゥディ(RT)を名指しで批判、あるいは中傷している。それだけバラク・オバマ政権は情報統制が崩れていることに危機感を持っているわけだ。そうした中、キエフのクーデター政権は意に沿わぬメディアに対して暴力的な手段を使いはじめている。 ウクライナの東部や南部に多い反クーデター政権派を制圧する作戦をアルセン・アバコフ内相代行が始める直前、ロシア人ジャーナリストのウクライナ入国が拒否されているという情報が流れ、入国済みの人びとは拘束され始めた。最近では、ドネツクで住民から話を聞いていたライフニューズ(ロシアのテレビ局)のスタッフが連れ去られている。住民の話では、キエフのクーデター政権が派遣したSBU(ウクライナ治安局)と軍の部隊が拘束したのだという。 ケリーに言わせると、RTはウラジミール・プーチン露大統領の主張を広めるプロパガンダの拡声器なのだというが、これまで明らかになった偽情報の出所はアメリカ/NATOであり、ホワイトハウスの主張を広めるプロパガンダの拡声器、つまり「西側」の巨大資本にコントロールされた有力メディアは重要な情報を無視してきた。 最近の例では、ウクライナの東部や南部を武力制圧する口実としてロシア軍の特殊部隊が活動しているという話をアメリカ国民に信じさせるため、ニューヨーク・タイムズ紙は4月20日付けの紙面に「証拠写真」を掲載した。 前にも書いたが、その写真は「西側」の一員であるBBCにまで批判される代物。ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された写真は解像度が悪くて見にくいのだが、鮮明な写真も存在、それを見れば同紙の主張を信じる人はいないだろう。だからこそ、解像度を下げたとしか思えない。つまり、読者をミスリードするための意図的な行為。イラクへの軍事侵攻を正当化するために活躍した同紙のジュディス・ミラー記者を思い出すという人もいる。 それ以外にも、例えば、ビクトリア・ヌランド米国務次官補の演説、電話での謀議、エストニアのウルマス・パエト外相のキャサリン・アシュトンEU外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)に対する報告などを「西側」のメディアは無視してきた。これらを取り上げると、ウクライナを不安定化させているのがアメリカ政府だということが明確になってしまうからだ。 昔から「西側」の有力メディアは支配層のプロパガンダ機関として機能してきた。第2次世界大戦後、アレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハムを中心として情報操作プロジェクトが始まったことは本ブログでも何度か取り上げた。いわゆる「モッキンバード」だ。 ダレスはウォール街の大物弁護士で、大戦中にはOSS(戦略情報局)で破壊活動を指揮し、戦後はCIAを支配していた人物。兄のジョン・フォスター・ダレスもウォール街の大物弁護士で、国務長官を務めている。 ウィズナーもウォール街の弁護士で、ダレスの側近。大戦後、破壊/テロ活動を目的として設立された極秘機関のOPCを指揮していた。ヘルムズもダレスの側近で、後にCIA長官になる。そしてグラハムはワシントン・ポスト紙の社主だった。 ウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだワシントン・ポスト紙を「言論の自由」を象徴する存在だとして崇める人も少なくないようだが、実態は支配層のプロパガンダ機関にすぎない。 このプロジェクトにはCBSのウィリアム・ペイリー社長、タイム誌やライフ誌を発行していたヘンリー・ルース、ニューヨーク・タイムズ紙の発行人だったアーサー・シュルツバーガー、クリスチャン・サイエンス・モニターの編集者だったジョセフ・ハリソン、そしてジョン・F・ケネディ大統領暗殺の瞬間を撮影した8ミリ・フィルム、いわゆる「ザプルーダー・フィルム」を買い取り、隠したC・D・ジャクソンも協力していた。 ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を調べたひとり、カール・バーンスタインは1977年に同紙を辞め、「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に載せている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) その記事によると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働いていたようだ。また、1950年から66年にかけての期間、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIA高官は語ったという。CIAは1970年代の後半からメディア対策を強化しているので、CIAの影響下にある記者や編集者は大幅に増えているだろう。 21世紀に入ると有力メディアは露骨に偽情報を流すようになる。そうした状況が明確になったのは、アメリカやイギリスがイラクに軍事侵攻するとき。そのときからメディアへの信頼度は急速に低下していく。 そうした中、注目を集めたのがカタールのアル・ジャジーラだが、カタールも体制転覆プロジェクトに参加したリビアやシリアでは「西側」のメディアと同じような「戦意高揚機関」になって見放されていく。そして今、企業メディアが無視している少数派の意見、巨大企業にとって都合の悪い情報を伝えているのがロシアのメディア。そのロシアのメディアにケリー国務長官が苛立っているということは、それだけ影響力が強まっている、つまり「西側」で信頼されるようになってきたということだろう。 アメリカの元外交官、クリストファー・ヒルは現在のロシアについて、「新世界秩序」への「裏切り」だと批判している。1990年にアメリカのジェームズ・ベイカー国務長官はNATOを東へ拡大させることはないとソ連のエドゥアルド・シュワルナゼ外相に約束したのだが、この約束を守っていない。つまり、裏切ったのはアメリカだ。 アメリカの約束を真に受けた間抜けなソ連の大統領はミハイル・ゴルバチョフ。このゴルバチョフからクーデターで実権を奪ったのがボリス・エリツィン。この人物とアメリカは「新世界秩序」について約束していたのかもしれない。その新秩序とはアングロ・サクソンを中心とする欧米が世界を支配する体制、ある人に言わせると巨大資本が支配する「新封建主義」、あるいは「近代封建主義」。その新体制の樹立をロシアは妨害しているということのようだ。勿論、TPPもそうした計画の一環である。
2014.04.26
フォトショップを使って写真を偽造し、無関係な写真を持ってきて虐殺を演出する常習犯がいる。アメリカの支配層、あるいはその手先たちだ。多くの場合、その目的は軍事侵略、戦争を正当化することにある。そうした行為を「西側」のメディアは無視する。特にひどいのが日本のマスコミだ。 そのマスコミがひとりの研究者をバッシングしている。論文に不適切な写真をミスで載せ、一部の文が「コピペ」されているというのだが、論文の本質には関係のない部分のようで、大騒ぎするほどの問題とは思えない。 それほどミスが大問題だというなら、ウクライナの軍事的な緊張を煽るためにインチキ写真を意図的に掲載したニューヨーク・タイムズ紙、その記事に同調して偽情報を流しているアメリカ政府を攻撃するべきだろう。 本ブログでは何度も書いていることだが、ユーゴスラビアにしろ、アフガニスタンにしろ、イラクにしろ、スーダンにしろ、リビアにしろ、シリアにしろ、そしてウクライナにしろ、メディアは嘘をつき続けている。 日本にも「ノンフィクション」に分類されている多くの本が出版され、記事が掲載されているが、その大半には「注」や「索引」がなく、無断引用のオンパレード。それが日本の「言論界」だ。 以前、ある有名週刊誌の編集長に記事の事実関係が間違っているのではないかと質問したことがある。それに対する回答は「あなたも面白おかしく書くでしょう」だった。「読者受け」するように事実を曲げて書くということだろう。そうしたマスコミが誰かをバッシングする場合、その裏では碌でもないことが起きている場合が多い。 バッシングされている研究者とは、言うまでもなく、理化学研究所の小保方晴子。論文の中身について論評する能力はないので触れないが、一連の出来事を見ていると胡散臭さを感じて仕方がない。この研究を安倍晋三政権が利用しようとしていたかどうかは胡散臭さに関係のない話だ。 伝えられているところによると、小保方が理研でSTAP細胞について研究を始めたのが2011年、13年3月に論文をネーチャー誌に提出、4月にユニットリーダーに就任、12月に査読を通過、今年の1月30日に論文が掲載され、2月上旬には写真のミスが指摘されたという。研究開始から論文の掲載まで約3年間。中部大学の武田邦彦教授も指摘しているように、複数の専門家が様々な形で3年にわたってチェックし、見つけられなかったミスを1週間ほどで部外者が指摘するのは不自然だ。巨大な利権が絡んでいるだけに、なおさら胡散臭く感じられる。 しかも、医学界や医薬品業界には闇の歴史がある。情報機関や軍とも密接な関係にあるのだ。例えば、戦争中、日本は中国に「関東軍防疫給水部本部」、いわゆる「満州第731部隊」を置いていた。生物化学兵器の研究開発における実験部隊で、その背後には軍医学校、さらに医学界が存在する。日本が生物化学兵器の研究開発を始めたのは1933年。当初は「加茂部隊」、ついで「東郷部隊」に名称を変更、1941年から「第731部隊」と呼ばれるようになる。 この部隊を率いていたのが京都帝国大学医学部出身の石井四郎中将。敗戦後、CIC(米陸軍対諜報部隊)の尋問を受けるが、すぐにG2(情報担当)の部長だったチャールズ・ウィロビー少将と親しくなり、米陸軍で生物化学兵器を研究していたキャンプ・デトリックからきた研究者へ情報を提供することになった。 その一方、アメリカの生物化学兵器を扱う部隊が厚木基地からほど近い倉庫で活動を開始、後に同部隊は丸の内の三菱ビル内へ本部を移す。1970年代になるとウィリアム・コルビーCIA長官は、アメリカが1952年、つまり朝鮮戦争の最中に生物化学兵器を使ったと認めている。 朝鮮戦争が勃発すると、石井四郎の側近だった内藤良一が「日本ブラッドバンク」を設立、「第731部隊」の部隊長だった北野政次が顧問に就任した。同社は1964年に社名を「ミドリ十字」に変更、後に薬害エイズやフィブリノゲン問題を引き起こす汚染薬剤を発売することになる。 「後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Sydrome)」の頭文字をならべてエイズ(AIDS)と名付けられた。この名称からわかるように、人の免疫細胞が破壊される病気だ。 実は、1969年6月にアメリカの国防総省国防研究技術局のドナルド・マッカーサー副局長は、伝染病からの感染を防ぐための免疫や治療のプロセスが対応困難な病原体が5年から10年の間、つまり1974年から79年の間に出現すると「予言」、この証言からエイズは生物兵器だという説が出てくる。エイズの存在が公的に認められたのは1981年のことで、実際に出現したのはその数年前。「予言」通りに現れた。 1983年にはフランスのパスツール研究所にいたリュック・モンタニエ教授と彼のチームが患者の血液からレトロウイルスを発見、LAVと名付ける。それから1年近くしてアメリカのNIH(国立衛生研究所)で研究していたロバート・ギャロもエイズの原因を特定したと発表し、それをHTLV-IIIと名付けたのだが、それはモンタニエから送られたLAVのサンプルから分離したものだったとされている。その後、フランスとアメリカは、誰が最初にウィルスを発見したかで対立する。勿論、特許をめぐる利権争いが原因だ。 問題のSTAP細胞も巨大な利権が関係するが、それだけでなくiPS細胞の利権も絡んでくる。すでにiPS細胞に巨額の資金を投入している巨大資本としては、絶対にSTAP細胞も押さえておく必要があるだろう。STAP細胞の研究が間違いだったとしても、放置して置くわけにはいかない。
2014.04.25
ジョー・バイデン米副大統領が4月22日にキエフを訪問、クーデター政権は反クーデター派の鎮圧作戦を再開した。これにあわせ、ネオ・ナチの一角を占める右派セクターは本部をキエフから東部の都市、ドニプロペトロフシクへ移動させたという。鎮圧作戦の第2幕でネオ・ナチの役割が大きくなることを暗示している。 軍事作戦を始める口実として、東部や南部でロシア軍の特殊部隊が活動しているという話をクーデター政権やアメリカ政府は広めようとした。そうした主張を裏付ける「証拠写真」なるものをニューヨーク・タイムズ紙は4月20日付けの紙面に掲載したのだが、一見して怪しげな代物。シリアなどで「西側」の体制転覆を正当化するために偽情報を流していたBBCにまで批判されてしまった。イラク開戦時のジュディス・ミラー記者を思い出すという人もいる。 ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された写真は解像度が悪くて見にくいのだが、鮮明な写真も存在している。つまり、同紙に写真を提供した人物、あるいは組織は事実でない可能性が高いことをことを承知していた。ミスではなく、意図的だった。 NHKよりマシとはいうものの、BBCも支配層の意に沿うような報道をする。他の国と同じように、1980年代から急速にそうした傾向は強まった。1970年代にアメリカの議会で情報機関の秘密工作が暴かれたことを「反省」し、組織内で情報統制を強化する一方、気骨あるジャーナリストを有力メディアから排除しはじめ、ロナルド・レーガン政権では「プロジェクト・デモクラシー」という思想戦を開始、その結果としてメディアは急速に堕落していった。 その間、1979年にアメリカとイスラエルの情報機関につながる人脈がエルサレムに集まり、「国際テロリズム」に関する会議を開いている。アメリカ側からは参加したひとりのレイ・クライン元CIA副長官は、「テロ」の原因を抑圧された人々の怒りでなく、ソ連政府の政策、あるいはその陰謀にあると主張しているが、この論法はウクライナでも使われている。クーデター政府に東部や南部の住民が反旗を翻したのは彼らの意思ではなく、ロシア政府が送り込んだ特殊部隊のせいだというわけだ。 今回はニューヨーク・タイムズ紙の報道を批判したBBCだが、過去を振り返ると似たようなことをしている。例えば、シリアではアメリカのCNNと同じように、シリア政権を悪役に仕立て上げてNATOの直接的な軍事介入を正当化しようとしていた。その中心的なキャラクターがシリア系イギリス人のダニー・デイエムなる「活動家」だ。 ところが、「シリア軍の攻撃」をダニーや仲間が演出する様子を映した映像が流出して「西側」のメディアは赤っ恥をかいた・・・はずだったが、その後も意に介さず、偽情報を流し続けている。要するに、メディアは「恥知らず」ということ。そのBBCから見ても20日付けのニューヨーク・タイムズ紙の報道はひどかったわけだ。 そうした批判を無視できなくなり、掲載の2日後にニューヨーク・タイムズ紙は詳しく調べると表明せざるをえなくなる。つまり、詳しく調べず、政府から渡された写真を垂れ流してしまったということだ。 勿論、今回の報道が特別だというわけではない。「西側」のメディアは支配層が望む政策、特に戦争を推進するために偽情報を流してきた。アメリカの有力メディアがどのような方針で報道しているのかを示す発言がある。ワシントン・ポスト紙のオーナーだったキャサリン・グラハムが1988年にCIAの新人を前にして次のように語ったというのだ: 「我々は汚く危険な世界に生きている。一般大衆の知る必要がなく、知ってはならない情報がある。政府が合法的に秘密を維持することができ、新聞が知っている事実のうち何を報道するかを決めることができるとき、民主主義が花開くと私は信じている。」 現在、問題になっているウクライナの東部や南部はロシア領だった地域で、ソ連時代に幹部の独断でウクライナへ併合させていた。そうした背景があるため、住民にはロシアへの親近感が強かったのだが、今回はキエフでオリガルヒ、つまり西側の「国境なき巨大資本」と結びつき、不公正な手段で短期間に巨万の富を築いた人びとがネオ・ナチと手を組んで実行したクーデターへの反発も無視できない。 そうした「民意」を潰すため、4月9日にはアルセン・アバコフ内相が48時間以内に解決すると宣言した。力での解決を示唆したわけだが、通告の期限が過ぎてからも立てこもりは続く。ウクライナにはアルファと呼ばれる特殊部隊があり、暫定政権はこのアルファへ突入を命じたようだが、現地の指揮官が拒否したとも伝えられている。 そして4月12日、ジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問する。その直後、クーデター政権のアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は「テロとの戦争」を宣言、軍の部隊をウクライナの東部や南部に派遣したが、住民の反発が強く、部隊の内部から離反者が出るという事態になった。 軍や治安機関の内部の相当部分がクーデター政権に反発していることは予想されていたことで、クーデター政権も承知していたはず。そこでネオ・ナチのメンバーを中心とする6万人程度の「親衛隊」を設置、それ以外にアメリカの傭兵会社から戦闘員を雇い入れている。ただ、住民の反発や兵士の造反は予想以上だったようだ。
2014.04.24
ウクライナと同じように、ロシアは朝鮮にも「貸し」がある。ソ連時代のもので、その総額は2012年9月17日時点で109億6000万ドル。その90%を棒引きにすることをロシア議会が4月18日に承認したという。 残りは今後20年間で返済、この決定で生じる余力はエネルギー開発、健康対策、教育プロジェクトに使われるというが、朝鮮を救済する最大の理由はサハリンから韓国へ天然ガスを輸送するためのパイプラインや鉄道の建設を推進することにあると見られている。ソ連時代から「シベリア鉄道」の計画はあったが、朝鮮がネックになっていた。鉄道は物流の柱になる可能性がある。 言うまでもなく、今回の決定にはウクライナ情勢が関係している。ネオコン(アメリカの親イスラエル派)がロシアに対する軍事的な圧力を強めるため、「国境なき巨大資本」がウクライナを収奪するためにネオ・ナチを使ってクーデターを実行、ロシアとEUとの貿易、特に石油/天然ガスの輸送を妨害する形になっている。東アジアへ販路を広げることによってウクライナの問題を軽減しようというわけだ。EUはきわめてまずい状況になっている、ということでもある。 ロシアから石油/天然ガスを手に入れられなくなると、EUはきわめて厳しい状況に陥る。アメリカから天然ガスを輸入すれば良いという意見もあるが、現実的には難しい。地中海東岸で発見された天然ガス田も開発は先の話であり、レバノンやシリアをまだ制圧できていない。 ネオコンに同調、ネオ・ナチを使ったクーデターを支持してロシアとの関係を悪化させればEUが窮地に陥ることは明らかだったが、キャサリン・アシュトンEU外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)などEUを率いている人びとは私欲を公益に優先させ、そうした道を選んだ。 キエフの状況を一気に悪化させたのは反ビクトル・ヤヌコビッチ政権派の活動家や警官隊(ベルクト)の隊員に対する狙撃。誰が撃ったのかということに関し、現地を調査したエストニアのウルマス・パエト外相はアシュトン上級代表に電話で次のように報告した: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。」 暫定政権を支援してはならないということになるが、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じている。つまり事実を隠蔽して議会を守るべきだというわけだ。暫定政権の背後には「国境なき巨大資本」が存在、そのプランを実現するためにはこの政権を存続させる必要があるということだろう。 その後、東部や南部でキエフのクーデター政権を拒否する動きが広がり、4月12日にはジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問、その直後にアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は「テロとの戦争」を宣言、軍の部隊を派遣する。 作戦を指揮しているのはSBU(ウクライナ治安局)のバシリー・クルトフ将軍で、記者に対して降伏しない活動家は「破壊される」と語ったという。住民側が立てこもっていたクラマトルスクの空軍基地を急襲、4名から11名の死者が出たと伝えられているのだが、相当数の兵士が住民側につき、装甲車なども渡してしまったとも報告されている。 クーデター政権に反発している人が治安機関や軍の内部には少なくないということで、頼りはネオ・ナチを中心に編成された「親衛隊」や外国から雇い入れた傭兵。国家安全保障国防会議の議長でネオ・ナチとしても知られるアンドレイ・パルビーによると、「親衛隊」の部隊が東部や南部へ向かったという。アメリカの傭兵会社、アカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーンから派遣された戦闘員もこの作戦には参加しているようだ。 要するに、「テロとの戦争」第1幕は失敗に終わったのだが、22日にジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問すると、第2幕が行われると宣言された。バイデンが帰国するのを待って作戦は始まるのだろうが、ネオ・ナチや傭兵を使った非正規戦が中心になるのではないだろうか。ラテン・アメリカの「死の部隊」、ベトナム戦争の際の「フェニックス・プログラム」、イタリアの「グラディオ」など、アメリカは住民虐殺が得意技。ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアでも多くの住民を殺している。 ウクライナが安定するのは先になりそうで、ロシアにとって東アジアの比重は重くなった。中国との関係はすでに強まっているが、新たなパイプラインを建設する目的は第1に韓国。日本も視野に入っているだろう。韓国までパイプラインで運べば、そこから東南アジア各国へも販路を広げることが可能。アメリカや日本の傀儡政権にとって「シーレーン防衛」、つまり海運のブロックはこれまでより重要になる。 アメリカの朝鮮へのアプローチも活発化するだろう。1990年代の朝鮮は外貨の大半を統一教会から得ていたといわれ、このカルト教団とブッシュ家との緊密な関係も有名。つまり朝鮮はアメリカ支配層とつながっている。1980年代にはイスラエルへカチューシャ・ロケット弾を売ったこともある。こうした人脈を使い、ロシアとの関係を壊しにかかるかもしれない。
2014.04.23
バラク・オバマ米大統領はアジア歴訪の一環で日本にも立ち寄り、TPP(環太平洋経済連携協定)や集団的自衛権(拡大版NATO)について話し合うようだ。つまり、日本から主権を奪い、人も自然も丸ごと「国境なき巨大資本」へ売り飛ばす謀議をするわけだが、厄介な相手は中国。軍事的な封じ込めと経済的な連携、矛盾した対応を米大統領は迫られている。 1970年代以降、アメリカの衰退は隠しようがない。1991年にソ連が消滅するとアメリカを「唯一の超大国」と見なす人が現れるが、1980年代から導入された新自由主義政策によって富が一部に集中して貧富の差が拡大、国内の製造業や社会は壊滅状態になった。その一方で肥大化していったのが投機市場。仕事をせず、博打で暮らす国になったということだ。 博打にはイカサマがつきもの。NSAの内部告発者であるエドワード・スノーデンが働いていたブーズ・アレン・ハミルトンにはLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正に関わっているという噂がある。さまざまな相場が操作され、例えば金の価格も人為的に低く抑えられている可能性が高い。 すでにアメリカでは「貿易が可能な製品」を作る能力がなくなり、サービス産業など「貿易できない仕事」が残っているだけなのだが、そのサービス産業で働く人びとの富を奪うために国外から低賃金で働く労働者を入れる政策を推進している。すでにアメリカは「ワーキング・プア」の時代から「ワーキング・ホームレス」の時代へ入った。 アメリカを「唯一の超大国」と認識する人びとも経済力の衰退は否定できない。そこで力の源泉を軍事に求め、超大国になる可能性がある国を軍事力で潰していこう考えた。そして1992年作成されたのがDPG(国防計画指針)の草案。 この草案はメディアにリークされ、書き直されたようだが、2000年にPNACというネオコン系のシンクタンクが発表した「米国防の再構築」に反映されている。その報告書を作成したメンバーの中には、ステファン・カムボーン、I・ルイス・リビー、エリオット・コーエン、エイブラム・シュルスキー、フレッド・ケーガン、ロバート・ケーガン、ポール・ウォルフォウィッツ、ウィリアム・クリストルも含まれている。 ロバート・ケーガンが結婚した相手がウクライナで体制転覆プロジェクトを指揮しているビクトリア・ヌランド国務次官補。このメンバーも見てもわかるが、ジョージ・W・ブッシュ政権は、この戦略に基づいて世界制覇を始めた。 この世界制覇計画はNATOの世界展開と密接に結びついている。NATO自体も拡大して旧ソ連圏を飲み込みつつあるが、それだけでなくMD(地中海対話/アルジェリア、イスラエル、モーリタニア、チュニジア、エジプト、ヨルダン、モロッコ)、ICI(イスタンブール協力イニシアティブ/バーレン、カタール、クウェート、UAE)、太平洋の日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、そしてサウジアラビアなどだ。このネットワークで「服ろわぬ国々」、つまりロシア、中国、イランを締め上げていこうということだが、それほど簡単ではない。 ロシアと中国を中心とするSCO(上海合作組織/アルメニア、ベラルーシ、中国、カザフスタン、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタン)が存在するだけでなく、SCOはラテン・アメリカのボリバリアン・ブロック(アンティグア・バーブーダ、ボリビア、キューバ、ドミニカ、エクアドル、ニカラグア、セントビンセント・グレナディン、ベネズエラ)、あるいはアフガニスタン、イラク、イラン、レバノン、パレスチナ、シリアとも友好的な関係にある。 現在、アメリカ/NATOはウクライナを制圧しようとしているが、キエフをネオ・ナチの力で何とか支配しているものの、東部や南部では住民の反発にあって目論見通りには進んでいない。治安機関や軍の内部にも外国資本とネオ・ナチに従属することを拒否する人が少なくないようだ。「刀狩り」も失敗した。 アメリカやEUはロシアに対する経済制裁を叫んでいるが、これも無理だと見られている。現在、ロシアは大幅に値引きした価格でウクライナへ石油を販売、その代金が支払われていない状態。その石油がEUへ流れているのだが、ウクライナへの販売価格を正規に戻すだけで大きな影響が出る。 最も影響が大きいと見られているのは、ロシアが石油取引の決済をドル以外にするという報復。ドルが基軸通貨の地位から引きずり下ろされる可能性がある。 本ブログでも書いたことだが、アメリカは保管しているはずの金がなくなっている可能性がある。そこで、各国はアメリカのニューヨーク連銀やケンタッキー州フォート・ノックスにある財務省管理の保管所に預けていた自国の金を引き揚げる動きを見せている。 ドイツもそうした国のひとつで、預けている1500トンを引き揚げようとしたのだが、連邦準備銀行は拒否、交渉の結果、そのうち300トンを2020年までにドイツへ引き揚げることにしたのだという。 これも含め、ドイツは2020年までの8年間でアメリカとフランスから合計674トン、つまり1年あたり84トン強を引き揚げる計画を立てたのだが、2013年に返還されたのは37トン、そのうちアメリカからのものは5トンにすぎなかったともいう。 相場がインチキだというだけでなく、金塊が消えている可能性があるということだが、しかも博打に失敗した巨大金融機関は「大きすぎて潰せない」として庶民のカネで救済され、不正を働いた人たちは「大きすぎて処罰できない」ということで自由の身。そしてまた不正を働いて巨万の富を築いていく。その犯罪的な人脈が作り上げているのがアメリカの連邦準備制度であり、IMFや世界銀行。この仕組みを支えているのがドルなわけで、ロシアや中国を敵に回してドルを基軸通貨でなくすわけにはいかないはず。 ところが、ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員のようなネオコン(アメリカの親イスラエル派)、あるいは「アルバニア・ロビー」と密接な関係にあったロバート・ドール元上院議員たちは経済的な状況を無視してウクライナのネオ・ナチへ軍事支援するように求めている。ロシアとの核戦争、第3次世界大戦を恐れるなと言っているわけだ。 ドールは1996年の大統領選に出馬しているが、その時に資金を管理していたブルース・ジャクソンは陸軍の情報将校だった人物で、PNACの創設にも参加している。1996年にはNATOを東へ拡大する目的で「NATOに関する米国委員会」を創設して委員長に就任、2003年にはこの委員会を解散して「過渡的民主国家プロジェクト」を始めた。この間、アメリカはウクライナの体制を自分たちに都合良く作り替えるために50億ドルを投入したとヌランド次官補は語っている。
2014.04.22
陸上自衛隊も派遣されている南スーダンで4月17日、PKO(国連平和維持活動)の基地が武装集団に襲撃され、基地に避難していた住民を含む48人以上が死亡、多数の負傷者が出たと報道されている。こうした状況の中、自衛隊の隊長が正当防衛のために全隊員に射撃許可を出していたようだ。PKOが派遣された理由は内戦にあるわけだが、その内戦が引き起こされて原因は石油にある。 スーダンでアメリカの巨大石油会社シェブロンが油田を発見したのは1974年のこと。その場所は現在のスーダンと南スーダンの国境周辺、つまり油田の発見された場所を国境にしたわけだ。スーダン西部のダルフールにおける戦闘も資源争いが原因である。 現在の南スーダンにあたる地域でSPLM(スーダン人民解放軍)が反政府活動を開始、内戦は1983年から2005年まで続いた。その結果、南部は自治権を獲得して2011年に独立している。 SPLMを率いていたジョン・ガラングはアメリカのジョージア州にあるフォート・ベニングで訓練を受けた人物。この基地は特殊部隊の本拠地として知られ、1984年にはSOAがパナマから移動してきた。 言うまでもなく、ラテン・アメリカの軍人をアメリカ支配層の手先にするための訓練施設。反乱を鎮圧する技術、狙撃、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などの訓練が実施されている。なお、2001年にはSOAからWHISEC(治安協力西半球研究所)へ名称が変更されている。 内戦の途中、1990年代の終盤になるとスーダンでは自国の石油企業が成長してアメリカの石油企業は利権を失っていき、中国やインドなど新たな国々が影響力を拡大し始めていく。中国とインド・・・つまりBRICSの一角だ。 2001年9月11日にアメリカの世界貿易センターに立っていた超高層ビル2棟や国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、アメリカ政府はすぐに先制攻撃のプランを作成している。そのリストにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、そしてスーダンが載っていたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官が語っている。 ブッシュ・ジュニア政権はイギリスやノルウェーと手を組み、スーダンの南部を拠点にしていたSPLMとスーダン政府を停戦させ、油田地帯が両者で分け合う形になり、南部は南スーダンと呼ばれるようになった。 一方、ダルフールでの戦闘は2003年から激しくなったようだ。当初、欧米の国々は南スーダンの石油利権に関する話し合いに影響することを恐れてダルフールの殺戮を無視していたようだが、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)やキリスト教系カルト(聖書根本主義派)はダルフールへ積極的に介入した。 そのダルフールの地下にも膨大な石油が眠っていると見られている。隣国チャドの政府が反スーダン政府軍へ武器を供給しているのも、石油利権が絡んでのことだ。チャドの支援を受けていると言われているのはJEM(正義と平等運動)。チャドの背後にはイスラエルがいるともスーダンでは報道されている。生前、リビアのムアンマル・アル・カダフィもダルフールにおける戦闘の背後にはイスラエルがいると主張していた。 2007年にアメリカ政府はAFRICOM(アフリカ統合軍)の創設を発表するが、司令部はアフリカでなくドイツに置かれている。そのころ、アフリカではカダフィを中心に欧米の国々を追い出し、自立しようとしていた。そのカダフィを欧米は湾岸の産油国と手を組み、アル・カイダを使って2011年に排除している。 スーダン/南スーダンもウクライナと同様、破壊と殺戮の原因を作っているのは「国境なき巨大資本」である。自衛隊もその利権争いに巻き込まれている。
2014.04.21
ウクライナでは「イースター休戦」が宣言される中、ドネツクのスラビヤンスクに設置された反クーデター派の検問所が2月19日午前2時(現地時間)頃に襲われ、5名から7名が死亡、負傷者も出ているようだ。 検問所には26名がいたが、休戦期間中だということで銃器はなく、バットがあっただけ。そこを4台の自動車に分乗した右派セクターのメンバーと見られるグループが襲撃、すぐに銃を持った20名のグループが駆けつけて応戦、銃撃戦になったと伝えられている。残された車両の中からマシンガン、暗視装置、航空写真、軍服、キャンプ用品などが発見されたようだ。 すでに既存の軍や治安機関を使った制圧に失敗したキエフのクーデター政権は、ネオ・ナチや外国人傭兵を使わざるをえない。今後、同じような襲撃が繰り返される可能性がある。ラテン・アメリカでアメリカは「死の部隊」を編成、ベトナムでは「フェニックス・プログラム」で住民を虐殺しているが、似たことがウクライナで行われることもありえるだろう。 ロシアを引き出せればメディアや国連を使って反ロシア・キャンペーンを展開、NATO軍を出すこともできるだろうが、そうした動きをロシアは牽制している。現在、米海軍の駆逐艦(イージス艦)ドナルド・クックと仏海軍の偵察艇ドゥピュイ・ド・ロームが黒海に入っているようだが、ロシアは、ドナルド・クックの周辺で非武装のスホイ24を12回にわたって飛行させたのだ。アメリカ側は「公海上」だと主張しているが、ロシア側はアメリカがモントルー条約に違反していると非難している。 戦闘機をイージス艦の近くを飛行させるだけなら単なる警告だが、スホイ24に搭載されたジャミング・システムのためにイージス・システムが機能しなくなり、その間、戦闘機は仮想攻撃を実施したという未確認情報が流れている。ドナルド・クックがルーマニアへ緊急寄港、あるいはポーランドなど東ヨーロッパへ地上軍を増派するという話が出てきた理由はそのためかもしれない。 昨年9月3日、シリアに対するNATOの攻撃が秒読みに入ったと考えられていた時期に地中海から2発のミサイルが発射されたが、いずれも海中へ落下したと言われている。直後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表したが、事前に周辺国(少なくともロシア)へ通告はなく、アメリカは実際に攻撃を始めたものの、失敗したのではないかとも言われている。スペインにあるNATOの基地から発射されたミサイルをロシア軍が撃墜したとレバノンのメディアは報道、ジャミングでミサイルのGPSが狂って落下したという話もある。 スホイ24の話や、シリアへ向かって発射されたミサイルの話が事実なら、電子戦でアメリカはロシアに負けている、少なくとも勝ってはいないことになる。バラク・オバマ米大統領は自国の軍事力が圧倒的だと主張、ロシアはアメリカと対決したくないはずだと4月16日にCBSの番組で語っていたが、アメリカとロシアが核戦争になればアメリカが圧勝するというネオコン的戦略の前提は崩れ、ゲリラ戦も核戦争もアメリカは勝てないと思った方が良いだろう。
2014.04.20
バラク・オバマ米大統領がアジアを歴訪する途中、日本にも立ち寄るらしい。「国境なき巨大資本」の世界支配体制を実現するために前進することが目的のひとつ。TPP(環太平洋経済連携協定)で政治経済を支配、集団的自衛権を認めさせることで日本を「拡大版NATO」に組み込もうということだ。 このタイミングで防衛省は与那国島で基地建設に着手、合計150名程度の部隊を駐留させるだけでなく、レーダーを設置するのだという。当然、中国の動向を監視することになり、相手を刺激することになる。これは中国を封じ込めようというアメリカの戦略に合致している。 アメリカの軍事的な戦略が大きく変化したのは1991年のこと。ソ連が消滅し、アメリカが「唯一の超大国」になったという認識が広がったのである。そうした考え方をする人たちの中にネオコン(アメリカの親イスラエル派)も含まれていた。 その翌年、ネオコンが作成したDPG(国防計画指針)の草案では、軍事力で潜在的なライバルを潰すとされていた。その内容があまりに好戦的だったこともあって草稿がメディアにリークされ、書き直されたようだが、ネオコンが考え方を変えたわけではない。2000年にネオコン系のシンクタンク、PNACというネオコン系のシンクタンクが発表した「米国防の再構築」に反映されている。 日本では1992年に「PKO法(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律)」が公布/施行され、94年には武村正義官房長官が米国側の意向で排除されているが、軍事戦略が変化する節目になったのは1995年のこと。ジョセフ・ナイ国防次官補が「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を公表したのである。 その前年に「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」という報告書が発表されているのだが、これを読んだマイケル・グリーンとパトリック・クローニンは日本が自立しようとしていると考えて反発、友人のカート・キャンベル国防次官補を通じてナイに接触して彼らの考えを売り込み、「ナイ・レポート」につながった。 1996年になると「日米安保共同宣言」が出され、安保の目的が「極東における国際の平和及び安全」から「アジア太平洋地域の平和と安全」に拡大する。1997年にまとめられた「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」では、「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになり、99年の「周辺事態法」につながる。 この「周辺事態」とは、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」を意味し、「周辺」は「地理的なものではない」。つまり、世界中に展開する可能性があるということだ。2005年になると「日米同盟:未来のための変革と再編」が締結され、日本は「日米共通の戦略」に基づいて行動するとされた。 その間、1991年にアメリカはユーゴスラビア解体プロジェクトを開始、99年にユーゴスラビアに対して先制攻撃している。その際、中国大使館も空爆、アメリカ側は「誤爆」だと主張しているが、説得力はなく、CIAの意図的な爆撃だった可能性が高い。 2001年9月11日になるとニューヨークの世界貿易センターや国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、この出来事を利用してアメリカ政府はアメリカのファシズム化を加速させ、自分たちの言いなりにならない国々を先制攻撃していく。その延長線上にリビアやシリアへの攻撃、そしてウクライナのクーデターがある。 経済面では、1995年にGATT(関税貿易に関する一般協定)を引き継ぐ形でWTO(世界貿易機関)が創設されたことが大きい。この年にOECD(経済協力開発機構)の閣僚理事会はMAI(多数国間投資協定)の交渉を始めることを決定、投資の自由化を進め、投資保護の義務や紛争解決の手続きを規定、労働や環境基準についても定めることになる。 巨大資本が自由に投資、問題が生じても投資は保護され、巨大資本に有利な形で紛争を処理、労働条件の悪化や環境の破壊を招くことが予想される内容だったため、批判を浴びて交渉は失敗したが、そのMAIを強化した形で復活させたのが現在進行中のTPP。MAIの失敗を反省し、TPPの交渉が秘密裏に進められている。 この交渉内容を国民や議会は知ることができないが、アメリカの場合、巨大企業が送り込んだ約600名のアドバイサーは中身を知りうる立場にある。その交渉を担当する通商代表のマイケル・フロマンは、2009年にシティー・グループを退職する際に400万ドル以上を受け取り、商務次官に指名されたステファン・セリグはバンク・オブ・アメリカを辞める際、900万ドル以上のボーナスを受け取ったという。言うまでもなく、金融機関の利益のために働くことが期待されている。 NATOの拡大(集団的自衛権)にしろ、TPPにしろ、「国境なき巨大資本」が国を支配するということ。欧米の支配層は「近代封建制」の確立を目指しているという人もいる。1938年にフランクリン・ルーズベルト大統領は次のように語ったという。「民主主義国家そのものより、私的な力が強くなることを人びとが許すなら、民主主義の自由は危うくなる。それは本質においてファシズム、つまり個人、グループ、あるいは何らかの私的な権力による政府の所有だ。」
2014.04.20
ウクライナを制圧する目的でアメリカが始めたクーデターが迷走している。キエフに暫定政権を作り上げるところまでは計画通りだったのだろうが、大きな目的のひとつだったはずのクリミア制圧に失敗、東部や南部では反クーデター政権の動きが広がっている。そうした蜂起を押さえ込むために送り込んだ部隊の一部は住民側につき、この鎮圧作戦を指揮しているバシリー・クルトフSBU(ウクライナ治安局)第1副長官は現地で住民に取り囲まれて抗議を受け、殴られるという場面もあったようだ。 クーデターの最中、ネオ・ナチのグループと衝突し、多くの死傷者を出した警官隊(ベルクト)はアーセン・アバコフ内相代行が解散を発表、命の危険を感じて少なからぬメンバーがロシアに保護を求め、ロシア外務省はロシアのパスポートを発行すると約束したと報道されていた。その後も暫定政権はベルクトを悪役に仕立て上げようとしている。 また、SBUには「C」という治安部隊(通称、アルファ)が存在しているが、暫定政権はネオ・ナチの犯罪的行為をアルファにもなすりつけているため、関係は良くない。東部や南部の州庁舎に立てこもっている人びとを排除するために突入を命じられたアルファの指揮官の中には命令を拒否した人もいるという。自分たちは人質を救出したり、テロリズムと戦うために部隊だという理由からだった。 つまり、警察、SBU、軍などの中にはクーデター政権への恭順を拒否している人が少なくない。実際、立てこもりは続いている。アメリカ政府はロシア政府に対し、「刀狩り」をするように求めているが、実現する可能性は小さい。アメリカ軍は地上部隊をポーランドへ派遣するようだが、ウクライナ国内ではネオ・ナチを中心に編成された「親衛隊」や傭兵会社の戦闘員だけでなく、各国から傭兵を集めて投入する必要があるだろう。 リビアやシリアでアメリカはアル・カイダを手先として使ったが、これをイスラエル政府は問題にしていない。2009年7月から13年9月まで駐米イスラエル大使を務め、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に近いと言われているマイケル・オーレンはエルサレム・ポスト紙に対し、シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すためならアル・カイダを支援すると話していた。 しかし、ネオ・ナチということになると話が違ってくる。欧米の「ユダヤ人団体」はおとなしくしているが、ウクライナではユダヤ教のラビ(聖職者)がユダヤ教徒に対し、キエフを、できたらウクライナを出るように呼びかけていた。実際、ユダヤ系やアラブ系の留学生がナイフで脅されるだけでなく、襲撃され、殺された学生もいるようだ。 当然、キエフの暫定政権を懸念する声がアメリカやイスラエルでも出てくる。そうした中、アメリカ政府は東部や南部の反クーデター派が「反ユダヤ主義者」だという宣伝を始めている。ユダヤ人は登録するようにと書かれたリーフレットが配られたのだが、これを反クーデター派によるものだと断定、「グロテスクだ」と批判、アメリカの大手メディアも政府と同じ立場から報道している。 しかし、キエフと違い、東部や南部では、ユダヤ系住民とその他の住民との関係は友好的。リーフレットは「人民共和国」が印刷したことになっているが、反クーデター派はそうした印刷物を出していないとしている。イスラエルではリーフレットが偽物だという反クーデター派の話を紹介しているが、暫定政権の内部にネオ・ナチがいることをユダヤ教徒は熟知、イスラエル政府もウクライナの問題ではアメリカと一線を画さざるを得ない状況であり、リーフレットでこうした状況に変化が起こるとは考えにくい。このリーフレット配布はアメリカでのプロパガンダが目的だった可能性が高いだろう。アメリカ国内でもバラク・オバマ政権のウクライナ政策は支持されていない。 シリアやリビアでアメリカなど「西側」は湾岸産油国と手を組み、傭兵を雇って送り込んできた。すでにアメリカの傭兵会社から戦闘員が数百名単位で派遣されているとされているが、それだけでなく各国のネオ・ナチを投入するかもしれない。アル・カイダも潜入していると言われているが、外見上の問題からネオ・ナチが主力になるだろう。アル・カイダに続き、ネオ・ナチを使って他国を侵略しようというグロテスクな国の大統領がオバマだ。
2014.04.19
ウクライナの東部や南部でキエフのクーデターに反発する住民の動きが広がり、危機感を持った暫定政権は軍を使って制圧すると宣言した。その作戦を指揮しているバシリー・クルトフSBU(ウクライナ治安局)第1副長官も乗り込んだが、そこで住民に取り囲まれて抗議を受け、殴られるという場面もあったようだ。 4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問し、14日にアレクサンドル・トゥルチノフが制圧作戦を承認、それを受けてクリトフ副長官は記者に対し、降伏しない活動家は「破壊される」と語ったと言われているが、彼にとっても、また「西側」にとっても予想以上の逆風が吹いている。 そうした活動家はロシア軍の情報機関GRUが派遣した数百名の兵士から支援を受けているとも主張したようだが、EUの情報分析センター(EU INTCEN)のゲオルギ・アラフォツォフ長官は、ウクライナの東部にまとまった数のロシア兵は存在しない、とフィンランドのテレビ局イレに語ったという。 その一方、派遣されたウクライナ軍の中には住民側につく兵士もいて、少なからぬ装甲車が住民側に渡っているようだ。キエフのクーデター政権に対する住民の反発を抑え込むために軍隊を派遣したのだろうが、住民の怒りを読み間違え、目論見は外れている。 EUのリーダーたちはNSAなどに常時、監視されているうえ、多額の報酬を得ている、あるいは得る手はずになっているようで、「西側」の少なからぬ人びとはメディアのプロパガンダを信じ、あるいは信じている振りをしているが、ウクライナの人びとは目覚めつつある。 当初から「西側」は暫定政権が住民から支持されているとは言えないことを十分に理解し、まず「民主主義幻想」を使い、途中からネオ・ナチを使ってキエフを火と血の海にして政権を転覆させたわけだが、東部や南部ではそうした計算を上回る怒りが生まれているのだろう。 今回の制圧作戦ではネオ・ナチを中心に編成した「親衛隊」やアメリカの傭兵も制圧作戦に投入しているようだ。それでも思惑通りに進まないため、NATO/アメリカ軍を使うべきだという意見も出てきた。 バラク・オバマ米大統領は自国の軍事力が圧倒的だと主張、ロシアはアメリカと対決したくないはずだと4月16日にCBSの番組で語った。軍事力を前面に押していけばロシアは屈服するというネオコン的、あるいは石原慎太郎なみの発言だ。 2011年3月8日、大地震の直前にイギリスのインデペンデント紙が掲載した石原慎太郎都知事(当時)のインタビュー記事によると、彼にとって、外交の交渉力とは核兵器を意味し、日本も核兵器を作るべきだとおだをあげていた。 ロバート・ゲーツ元国防長官の回顧録『任務』によると、リチャード・チェイニーはジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務めていたとき、ソ連やロシア帝国が消滅するだけでは不十分で、ロシアという存在自体を抹殺するべきだと話していたというが、この発想にも通じる。(Robert M. Gates, “Duty,” Alfred A. Knopf, 2014) こうしたメンタリティーの人間が描く戦略に基づいてNATOは世界展開され、日本も組み込まれようとしている。集団的自衛権とは、そういういことだ。安倍晋三政権は、そうした戦略に従っている。
2014.04.18
ポーランド政府がキエフのクーデターに協力していたとポーランドで報道されている。ウクライナのネオ・ナチは2004年以降、バルト3国にあるNATOの訓練施設でメンバーを軍事訓練していると言われているが、ポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたり、暴動の訓練をしたという。 訓練の内容には、追跡技術、群集操縦、ターゲットの特定、戦術、指揮、緊張した状況における行動制御、警察のガス弾に対する防御、バリケードの建設、そして銃撃のクラスにも参加して狙撃も学んだという。そうした訓練をキエフで生かしたわけだ。 ロシアに対抗するため、ポーランドのトマシュ・シモニャク国防相はNATO軍を派遣しろと主張しているようだが、これもポーランドがクーデターを支援していることを示している。 ところで、アメリカが東ヨーロッパへの揺さぶりを本格化させるのは1970年代のこと。1979年にハンガリー生まれの投機家、ジョージ・ソロスは「オープン・ソサエティ基金」を開始、84年にはハンガリーでも基金を創設した。 1979年にはポーランド生まれのズビグネフ・ブレジンスキー米大統領補佐官がソ連軍をアフガニスタンへ誘き出すための秘密工作を始め、エルサレムではアメリカとイスラエルの情報機関に関係する人びとが「国際テロリズム」に関する会議を開き、「ソ連がテロの黒幕」だというキャンペーンを開始している。 そして1980年には「連帯」が設立されるが、この反コミュニスト労組は「西側」から支援を受けていて、活動資金のほか、当時のポーランドでは入手が困難だったファクシミリ、印刷機械、送信機、電話、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピュータ、ワープロなどが数トン、ポーランドへアメリカ側から密輸されたと言われている。「連帯」の指導者だったレフ・ワレサも自伝の中で、戒厳令布告後に「書籍・新聞の自立出版所のネットワークが一気に拡大」したと認めている。(レフ・ワレサ著、筑紫哲也、水谷驍訳『ワレサ自伝』社会思想社、1988年) 資金の一部はバチカン銀行の不正融資という形で送られ、こうした取り引きが発覚してイタリアの金融界は大騒動になり、アンブロシアーノ銀行の倒産にもつながった。このとき、バチカン銀行の頭取だったのがシカゴ出身のポール・マルチンクス。アンブロシアーノ銀行の頭取だったロベルト・カルビは1980年5月、ポーランド生まれの教皇ヨハネ・パウロ2世が銃撃された1週間後に逮捕され、翌年の6月にロンドンで変死体が発見された。 マルチンクスはローマ教皇パウロ6世(ジョバンニ・バティスタ・モンティニ)の側近で、このパウロ6世はモンティニ時代からCIAと緊密な関係にあった。したがって、マルチンクスもアメリカの情報機関とつながっている可能性が高く、「連帯」への不正融資も背後にはCIAが存在していたと考えるべきだろう。CIAと関係があると見られている人物が「連帯」に接触していたとも言われている。 ヨハネ・パウロ2世を銃撃したモハメト・アリ・アジャが所属していたトルコの右翼団体「灰色の狼」は「NAP(民族主義行動党)」の青年組織で、「NATOの秘密部隊」につながっていると見られているのだが、こうした背景を「西側」は無視する。そして3名のブルガリアが起訴されたが、1986年3月に無罪の判決が言い渡された。 CIAの秘密刑務所が設置された国のひとつであるポーランドは現在、アメリカの手先として活動している。そのポーランドをアメリカが支配する突破口を作った「連帯」。その労組で議長を務めたワレサはポーランド大統領を経て2002年にアメリカのソフトウェア会社の重役に就任、資本主義社会の「成功者」になったと言えるだろうが、大多数のポーランド人やウクライナ人には縁のない話だ。
2014.04.18
キエフのクーデター政権は東部や南部の軍事的制圧を宣言、部隊が派遣されている。急襲されたクラマトルスクの空軍基地では、立てこもっていた「義勇軍」に4名から11名の死者が出たと伝えられている。 ウクライナ軍のほか、国家安全保障国防会議のアンドレイ・パルビー議長によると、彼の仲間であるネオ・ナチを中心に編成された「親衛隊」の部隊が東部や南部へ向かい、またアメリカの傭兵会社、アカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーンから派遣された戦闘員もこの作戦には参加しているようだ。セルゲイ・ラブロフ露外相によると、約150名の傭兵がウクライナのソコル(特殊機動警察)の制服を着て活動、ロシアでの報道によると、ドネツクの近くで20名ほどの傭兵が反クーデター派に拘束されたという。 制圧作戦を指揮しているというSBU(ウクライナ治安局)のバシリー・クルトフ将軍は記者に対し、降伏しない活動家は「破壊される」と語ったという。そうした活動家はロシア軍の情報機関GRUが派遣した数百名の兵士から支援を受けているとも主張したようだが、EUの情報分析センター(EU INTCEN)のゲオルギ・アラフォツォフ長官は、ウクライナ東部にまとまった数のロシア兵は存在しないとフィンランドのテレビ局に語ったという。 現在はCIAの下部機関になったと言われるSBU、ネオ・ナチを中心に編成された「親衛隊」、あるいは傭兵などは反クーデター派を「破壊」しようとしているかもしれないが、正規軍は違うようだ。インターネット上にはロシアの国旗を掲げて走る装甲車や、「義勇軍」側についた兵士の様子が流れている。 擬装帰順だという意見もあるが、「親ロシア」というよりは「反ファシスト」の感情がウクライナに広がっているようで、ネオ・ナチに服従したくないと考える兵士が出てくるのは自然なことだ。こう考えると、全てが擬装だとは考えにくい。今後、IMFの政策など「国境なき巨大資本」の正体が明確になれば、キエフの「親EU派」の中からも暫定政権に反対する人が増えてくるだろう。 ポーランドのトマシュ・シモニャク国防相はNATO軍を、またネオコン系の中東政策ワシントン研究所(イスラエル・ロビーのAIPACに近い)のジェームズ・ジェフリーはアメリカ軍を派遣しろと主張している。それだけキエフのクーデター政権はウクライナ国内で支持されていないということだろう。ネオ・ナチを使ったクーデターで実権を握った非合法な暫定政権に反発するのは当然だ。 両者ともロシア軍がウクライナとの国境近くに4万名程度の部隊を集結させている証拠だとしてアメリカ政府が公表した写真を軍隊派遣の根拠にしているが、ロシア政府は昨年8月に行われた軍事演習のときに撮られたものだと反論している。
2014.04.16
先週末、ジョン・ブレナンCIA長官がキエフを訪問したことをホワイト・ハウスの広報担当官、ジェイ・カーニーも認めた。「ヨーロッパ歴訪」の一環だったというが、外交官として偽名を使って入国したと言われ、説得力のない説明だ。 そこで、東部や南部で広がっている反キエフ派を鎮圧する作戦について暫定政権の主要人物と協議したと推測されていたのだが、ロシアでの報道によると、ドネツクの近くで20名ほどのアメリカ人傭兵が反クーデター派に拘束され、その戦闘員に関する情報を集めるために訪問したのだという。 この傭兵はアカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーンに所属していると見られている。3月以降、すでに数百名の単位で要員がウクライナ入りしていると言われ、セルゲイ・ラブロフ露外相によると、約150名の傭兵がウクライナのソコル(特殊機動警察)の制服を着て活動しているという。キエフのクーデター政権が東部や南部で始めた掃討作戦にも参加しているようだ。
2014.04.16
バンダル・ビン・スルタンが4月15日に「健康上の理由」でサウジアラビア総合情報庁長官の職を辞したという。この人物は少なくともここ10年ほどの期間、イスラム教スンニ派の武装集団、いわゆるアル・カイダを動かしていたとされ、昨年に問題化したシリアの化学兵器使用問題でも黒幕だとも言われていた。 そうしたアル・カイダとサウジアラビアとの関係を示す膨大な文書をシリア政府が国連へ提出し、ロシアはシリアでテロ行為を支援している全ての国に制裁するように求めるとアメリカ政府からサウジアラビア政府へ警告があったとも伝えられている。今年3月、サウジアラビア政府はシリアで戦っている外国人戦闘員に対して撤退を求めていると報道されたが、その背景にはこうした事情があったようだ。 リビアやシリアの体制転覆プロジェクトでは、アメリカなど「西側」は幕の影に隠れ、前面に出ていたのがサウジアラビアやカタール。反政府軍を訓練していたのはアメリカやイギリスなどNATO諸国だったが、戦闘員を雇い、資金や武器/兵器を提供していたのは湾岸の産油国だった。そうした戦闘員の中心がアル・カイダ。 前にも書いたことだが、元々、アル・カイダとは「データ・ベース」を意味し、1990年代にアメリカがソ連と戦わせるために集めた数千人におよぶイスラム教スンニ派戦闘員のリストを指していた。要するに、アル・カイダはアメリカの傭兵だった。 シリアでのプロジェクトが思い通りに進まないことに業を煮やしたのか、バンダル長官は昨年7月31日にロシアを極秘訪問、ウラジミール・プーチン大統領らに対し、シリアからロシアが手を引けば、ソチで開催が予定されている冬期オリンピックをチェチェンの武装グループの襲撃計画を止めさせると持ちかけたという。 これが大きな間違いで、シリアから手を引かないとオリンピック期間中に襲わせると脅しているとロシア側は理解した。バンダル長官はプーチン大統領から、サウジアラビアとチェチェンの反ロシア勢力との関係を知っていると言われたようだ。 バンダル・ビン・スルタンは「バンダル・ブッシュ」とも呼ばれている人物。彼が問題になるとアメリカの支配層へも飛び火する可能性がでてくる。 バンダルは王立空軍大学を卒業した後、アメリカのマクスウェル空軍基地で訓練を受けた。1977年に怪我で退役してからは外交官として働き、ジョンズ・ホプキンス大学でも学んでいる。1983年から2005年まで駐米大使を務め、総合情報庁の長官に就任したのは2012年のこと。2001年9月11日に世界貿易センターの超高層ビル2棟へ航空機が突入、国防総省本部庁舎が攻撃されたときには疑惑の目を向けられた。 現在、ウクライナでは「西側」の支援を受けた勢力が「暫定政権」を作っている。既存の治安機関や軍を掌握し切れていないようで、ネオ・ナチで「親衛隊」を組織する一方、アメリカの傭兵会社から戦闘員を雇っていると伝えられている。クーデターの前、今年1月にはシリアから約350名の戦闘員がウクライナ入りしたという情報も流れていた。 天然ガスが発見されている地中海東部とその周辺国を制圧するというNATOの作戦を実現するため、リビア、レバノン、シリアなどの体制を転覆させ、自分たちの傀儡政権を樹立させる計画(「アラブの春」と重なる)があったのだが、シリアでは政府軍の優位が揺るぎそうもない。その分、アメリカ/ネオコンはウクライナへ力を注ぐことになりそうだが、そのウクライナでもNATOの計画通りには進んでいない。
2014.04.16
アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は4月15日、自分たちの政権を拒否している勢力を武力制圧する方針を明らかにした。ネオ・ナチを中心に編成された「親衛隊」の部隊が反キエフ派を鎮圧するために東部や南部へ向かったと国家安全保障国防会議のアンドレイ・パルビー議長が発表、戦闘機も動員されているようだ。 国家安全保障国防会議とは国防省や軍を統括する機関。暫定政権でこの機関の議長に就任したパルビーは1991年、オレフ・チャフニボクと「ウクライナ社会ナショナル党」を創設した人物。この政党はネオ・ナチで、2004年に党名を「スボボダ(自由)」へ変更している。 クーデターの舞台になった「独立広場」で指揮官を務めていたのがパルビーであり、アレクサンドル・ヤキメンコ前SBU(ウクライナの治安機関)長官によると、狙撃の第1発目が発射されたビルはパルビーに制圧されていた建物。広場への出入りもパルビーが管理し、彼の許可なしに武器を広場へ持ち込むことも不可能だったようだ。パルビーはアメリカの特殊部隊と接触していたとも言われている。 ヤキメンコが長官だったときにSBU第1副長官を務めていたのがバレンティン・ナリバイチェンコ。クーデターの直後、2月24日からSBUの長官に就任したが、ヤキメンコによると、新長官は部下の個人ファイルをCIAに渡していたという。ナリバイチェンコは2001年から03年にかけてワシントンに駐在しているが、そのときからCIAのスパイになったともヤキメンコは主張している。現在、SBUはCIAの下部機関化していると伝えられているが、その準備はナリバイチェンコが進めていたのだろう。 しつこいようだが、2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相はEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)に対し、電話で次のように報告している: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。」 これに対し、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じた。アメリカ政府も暫定政権を正当化することしか考えず、大統領選もクーデターの「禊ぎ」と考え、公正なものにする意思はないだろう。そのためには選択肢がない状況にしておく必要があるわけだが、大統領選への出馬を表明している人物もいる。そのひとり、オレグ・ツァレフが4月14日、テレビ局を出たところで襲われている。(映像1、映像2) すでに「西側」の「支援」が融資にすぎず、年金の半減など庶民に耐乏生活を強いる姿勢が見えてきている。「融資」は「支援」だというなら、「高利貸し」は「福祉機関」だということになる。今後、時間を経るに従って暫定政権への支持は減少していく可能性が高い。そうした民心の離反を力で押さえつけようとしても、治安機関も軍も頼り切れない。そこで、国連に支援を求め、ネオ・ナチの「親衛隊」を前面に出してきたわけだ。 先週末、「ヨーロッパ歴訪」の一環としてジョン・ブレナンCIA長官がキエフを訪問したとホワイト・ハウスの広報担当官、ジェイ・カーニーは認めた。ブレナンは外交官として偽名を使って入国、暫定政権の主要人物と会談したという。東部や南部で広がっている反キエフ派を鎮圧する作戦も協議した可能性が高い。 キエフの暫定政権は成立の過程を考えても治安機関との関係が悪く、軍の内部にも反発している将兵が少なくないと見られている。盗聴された音声が漏れるのは、情報機関の内部に反キエフ派が存在していることを示している。その音声について「西側」のメディアは触れたがらないようだが、その理由は言うまでもないだろう。 また、州政府の建物などに立てこもっている人びとを排除する作戦を拒否した特殊部隊アルファの現地指揮官もいると伝えられた。そこで「親衛隊」を派遣、おそらくアメリカの傭兵会社から雇った戦闘員が合流する可能性がある。セルゲイ・ラブロフ露外相によると、約150名の傭兵がウクライナのソコル(特殊機動警察)の制服を着て活動しているようだ。 キエフのクーデター政権を支援してきた「西側」のメディアも、この政権が人びとから支持されていないことを認めざるをえない状況。ロシアがアメリカの挑発に乗って攻撃してくれば打つ手もあるのだが、自重しているので次の手が打てない。つまり「国境なき巨大資本」やネオコンの願うような展開になっていないということだ。ネオコン、そしてアメリカ政府は追い詰められている。「窮鼠猫を噛む」という諺もあるが、アメリカは挑発をエスカレートさせ、ロシアと戦争を始めかねないと懸念する声も出ている。
2014.04.15
キエフの暫定政権はネオ・ナチを中心とするクーデターで誕生した。そのクーデターを公然と支援していたのがアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員のようなネオコン、つまり親イスラエル派、言い換えるとシオニスト。 この勢力はイスラエルの好戦派、つまりウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」を始祖としている。彼は第1次世界大戦のときにはイギリス軍へ参加、1940年にはパレスチナに住むユダヤ人に対してイギリス軍へ参加するように求めるなど、イギリスとの関係が深い。 ネオ・ナチとはナチスの流れ汲んでいるわけだが、ウクライナの場合はステファン・バンデラから始まる。1930年代の終わりにはイギリスの情報機関MI-6から支援を受け、後にナチスと手を組んでいる。戦後、CIAはWACL(世界反共連盟)を組織するが、この連盟にも参加している。 今回、イギリス/アングロ・サクソンという共通項があるネオコンとネオ・ナチは手を組んでいるわけだが、かつてナチスは心身障害者、コミュニスト、少数民族などを弾圧、ユダヤ人も犠牲になった。そうした過去の記憶があるユダヤ人はネオ・ナチと友好的ではありえない。ここにネオコン/シオニストとユダヤ人の本質的な違いがある。 ネオ・ナチが暫定政権の一翼を担っていることは明白で、キエフではユダヤ人が襲われるケースもあった。そこで早い段階からユダヤ教のラビはユダヤ系の人びとに対し、キエフを、できたらウクライナを出るように呼びかけている。 現在のイスラエル政権はネオコンと同じようにジャボチンスキーの末裔だが、ユダヤ人を権力基盤とするイスラエル政府はネオ・ナチを容認することができず、ウクライナ情勢で中立の立場をとらざるをえない状況だ。つまり、アメリカ政府を支持できない。 リビアやシリアでの体制転覆プロジェクトではアメリカをはじめとする「西側」やペルシャ湾岸の産油国がイスラム教スンニ派の武装集団、いわゆるアル・カイダと同盟関係にあることが明確になったが、ウクライナではネオ・ナチと結びついていることが再確認された。これまで「西側」の支配層が描いていた幻影が消え、彼らの正体が明らかになり始めた。
2014.04.14
ジョン・ブレナンCIA長官が4月12日にキエフを極秘訪問、暫定政権に指示を与えたとロシアで報道された。CIAのトッド・エビツ報道官はブレナンの訪問についてのコメントは拒否したが、長官は外交的な解決を望んでいると発言している。つまり、ブレナンがキエフ入りし、暫定政権側と協議したことは間違いないようだ。 ウクライナにおける一連の出来事を見ていれば、ネオコン(親イスラエル派)が混乱、そしてクーデターを仕掛けたことは明らか。最前線で指揮しているのはビクトリア・ヌランド国務次官補であり、ジョン・マケイン上院議員も反ビクトル・ヤヌコビッチ政権派を煽っていた。 この問題で「西側」が避けている重要な点は、ヤヌコビッチが選挙を経て大統領になった人物だということ。この合法的に成立した大統領を「西側」の「国境なき巨大資本」の傀儡がネオ・ナチを使ったクーデターで倒して実権を握り、憲法を無視して暫定政権を名乗っているわけである。暫定政権で首相代行を名乗るアルセニー・ヤツェニュクをヌランド国務次官補はクーデターの前から高く評価していた。 暫定政権が憲法に違反して「成立」したことは明らかで、この政権を正当化する人びとが「護憲派」のはずはなく、日本国憲法の第9条を云々するのは奇妙な話。これ以外にも「国境なき巨大資本」にとって都合の悪い情報、事実を隠し、漏れると「嘘だ」と言い張る人たちもいる。日本のマスコミはそうした話を垂れ流す。さすが、原発の安全神話を広めただけはある。 クーデターで成立した政権である以上、国の機関を利用するためには、恐怖を作り出す「腕力」が必要。官僚を屈服させる必要があるということだ。クーデターの直後、右派セクターを率いていたひとりのアレキサンダー・ムージチコらが検察官事務所に押しかけてスタッフに暴力を振るったり、武装解除を求めてきた暫定政権の人間を恫喝していた。少なからぬ反クーデター派の人びとも襲われている。後にムージチコは警官に射殺されているが、警官を派遣したのは内相だ。コントロールの難しい人物を「御役御免」で処分したということだろう。 キエフの状況が一気に悪化、市街が火と血の海になったのは2月22日から。屋上から反ロシア派や警官隊、双方が狙撃されて少なからぬ死傷者が出たのだ。この出来事に関してエストニアのウルマス・パエト外相は25日に調査、翌日にはEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ次のように報告している: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解」があり、「新連合はもはや信用できない」と言っている。 リビアやシリアでも体制転覆を目指す勢力はスナイパーを使って混乱させていた。狙撃だけでなく、旅客バスや警察のバスが吹き飛ばされ、パイプラインや橋が爆破されたことをアラブ連盟の調査団も2012年に報告している。 キエフのクーデター政権で軍事部門を統括しているのは国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の書記に就任したアンドレイ・パルビーだと見られている。1991年にオレフ・チャフニボクとネオ・ナチの「ウクライナ社会ナショナル党(2004年にスボボダへ党名を変更)」を創設、今回のクーデターでは指揮官としての役割を果たし、警官を殺傷した人物だ。 治安機関のメンバーは命の危険を感じてロシアへ保護を求めたようだが、軍の内部でもこうした人物を快く思わない将兵は少なくないだろう。反クーデター派の鎮圧命令を拒否した特殊部隊アルファの指揮官もいたという。つまり、反クーデター派にはウクライナの軍人や治安機関の人間が参加している可能性が高く、当然、統率がとれているはず。 そこで登場するのが傭兵。アメリカの傭兵会社アカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーンから数百名の単位で要員がすでに派遣されていると言われ、セルゲイ・ラブロフ露外相によると、約150名の傭兵がウクライナのソコル(特殊機動警察)の制服を着て活動しているという。十分にありえる話だ。 キエフの作戦で反クーデター派に死傷者が出てくると、治安機関や軍からの離脱者が反クーデター軍を編成して対抗する可能性もある。そうなると内戦だ。
2014.04.14
ロシア人ジャーナリストの入国をキエフの暫定政権が拒否しているという情報が流れた直後、治安機関や軍が反暫定政権派の鎮圧作戦を始めたとアルセン・アバコフ内相は明らかにした。自分たちはネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を追い出したわけだが、その際、平和的に対処しようとしたヤヌコビッチの「甘さ」を衝いているだけに、厳しく対応するつもりだろう。ヤヌコビッチに「甘い対応」を求めた「西側」は暫定政権の暴力には寛容だ。 キエフのクーデター政権にとって、問題は治安機関や軍を暫定政権が掌握し切れていないこと。州政府の建物などに立てこもっている人びとを排除する作戦を拒否した特殊部隊アルファの現地指揮官もいると伝えられている。 その穴を埋めるひとつの手段が傭兵。アメリカの傭兵会社アカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーンから数百名の単位で要員がすでに派遣されていると言われ、セルゲイ・ラブロフ露外相によると、約150名の傭兵がウクライナのソコル(特殊機動警察)の制服を着て活動しているという。 庁舎を占拠している人びとを排除する今回の作戦ではSBU(ウクライナ治安局)の部隊が投入され、隊員ひとりが死亡したと内相は明らかにしているが、暫定政権に反対している住民ひとりと右派セクターの活動家2名が死亡したとも伝えられている。クーデターの主力だった右派セクターには動員命令がかかっているようで、今回、犠牲者が出ても不思議ではない。(スラビヤンスクでの鎮圧作戦には約150名の右派セクターのメンバーが参加、外国の治安機関が派遣した要員が指揮しているとも伝えられている。) 今回の作戦に先立ち、アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行を中心に会議が開かれたようだが、その前にアメリカのジョン・ブレナンCIA長官がキエフへ入り、議会や政府の関係者と協議を行ったとする未確認情報が流れている。4月22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問する予定だ。反クーデター勢力の掃討にアメリカ政府が直接、乗り出したと言えるだろう。 それに対し、治安機関や軍の内部には反クーデター的な心情の持ち主が相当数存在しているもようで、状況によっては内戦に発展する可能性もある。ネオ・ナチや傭兵で対処しきれない場合、NATOが介入してくる可能性もあるが、そうなるとロシア軍も傍観はしていないだろう。アメリカとロシアが軍事衝突することもありえる。アメリカの支配層には1980年代から「第3次世界大戦」を口にする人びとがいることを考えると、非常に危険な状態。アメリカ政府は危険な賭に出たと言える。第1次、そして第2次世界大戦と同じようにアメリカは戦場にならず、ロシアとEUが共倒れになるだけだと高をくくっているのかもしれないが、時代は違う。
2014.04.13
集団的自衛権を「放置すれば日本が侵攻される場合」に行使できるとする素案を内閣法制局をまとめたのだという。「放置すれば日本が侵攻される」と政府が「判断」すれば、実態に関係なく先制攻撃できるということであり、「集団」を形成するどこかの国が他国を侵略して反撃が予想される場合も含まれることになるのだろう。何しろ、日本はアメリカの「巨大空母」だ。集団的自衛権が「厳格に限定」されるとは到底言えない。 日本の支配層はアメリカとの同盟関係を強調してきた。そのアメリカは第2次世界大戦後、イランやグアテマラをはじめ、民主的に選ばれた政権を潰している。CIAの破壊工作部門が黒幕になるが、手先に使う軍人、戦闘員、エージェントを訓練、支援する施設、組織もある。 最近の例をあげると、ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナ・・・いずれも偽情報を広めたうえで先制攻撃、施設を破壊し、住民を殺害、市街を火と血の海にしてきた。その攻撃主体はNATOだ。NATOの加盟国がロシアと戦争を始めた場合、自動的にアメリカも参戦することになり、集団的自衛権があれば、日本も戦争の当事者になってしまう。 元々、NATOはソ連からの攻撃に備えるという名目で創設されたが、アメリカとイギリスはヨーロッパを支配するために使っている。イタリアのグラディオなどメンバー国には秘密部隊が組織され、1960年代から自国内の左翼勢力を潰す工作を実行したきた。(この辺の話は何度か書いているので、ここでは割愛する。) 1991年にソ連が消滅すると、アメリカは「唯一の超大国」として世界を支配する体制を築こうとしはじめ、NATOを世界展開していく。その手始めがバルカン(旧ユーゴスラビア)。さらに、地中海沿岸(イスラエルや地中海に面したアラブ諸国)、ペルシャ湾岸諸国、中央アジア、南アジア、そして東アジア/太平洋といった具合だ。そうしたネットワークを使い、ロシア、中国、イランなど「潜在的ライバル」を締め上げようとする。第1次安倍晋三内閣がNATOと盛んに接触していた理由もこの辺にあるのだろう。 東アジア/太平洋では、日本とオーストラリアが中心になると見られている。この両国がアメリカ支配層の主要な手先になるということだ。そのターゲットは言うまでもなく中国。「シーレーン防衛」も中国の石油/天然ガス輸送ルートを押さえるための計画だと見なければならない。 日本はアメリカは経済的に中国と関係を深めているものの、軍事的には緊張が高まっている。中国も、かつてのような「アメリカ幻想」は持っていないようで、ロシアに接近しているわけだ。 勿論、ロシアや中国をいきなり攻撃することは難しい。そこで、服ろわぬ国々の中でも比較的に小さな国々を潰していく計画ができあがった。ユーゴスラビアへの先制攻撃を指揮したウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、1991年の段階でポール・ウォルフォウィッツ米国防次官は、シリア、イラン、イラクを殲滅すると語っていたという。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやアーリントンの国防総省本部庁舎ビル(ペンタゴン)が攻撃されて間もなく、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランを攻撃する計画を立てていたとクラーク元最高司令官は語っている。こうした国々を制圧し、最終的にロシアや中国を潰そうということだ。 EUとロシア、日本と中国との経済的な交流が進み、ドル支配システムが崩れてくると、アメリカを中心とする現在の支配体制は崩壊する。そうした事態を避けるためにも、アメリカやイギリスは平和な時代が来ることを恐れる。EUとロシアの間に存在するウクライナを制圧する重要性はそこにある。 ネオ・ナチを使ったクーデターで成立したキエフの暫定政権は「親EU」というより、「従米」だ。日本では中国と友好関係を結ぼうとする勢力が潰され、「尖閣問題」の封印が解かれた。朝鮮の言動もアメリカにとって好都合だ。 こうしたアメリカの戦略は、安倍政権が強引に推進している「集団的自衛権」の問題と深く関係している。言うまでもなく「自衛」とは名ばかりで、きわめて攻撃的だ。外交力も経済力も衰えたアメリカは軍事力に頼るしかなく、ネオコンは核戦争も辞さない姿勢を維持している。日本の核武装もそうした流れの中で進められている。
2014.04.13
ウクライナの東部や南部でキエフの暫定クーデター政権に反対する声が広がり、ドネツク、ハリコフ、ルガンスクでは公的な施設が占拠され、ルガンスクでは治安機関の建物も含まれているようだ。ドネツクやハリコフでは独立も宣言された。 4月9日には内相が48時間以内に解決すると発言、力での解決を示唆したのだが、通告の期限が過ぎてからも立てこもりは続いている。ウクライナにはアルファと呼ばれる特殊部隊があり、暫定政権はこのアルファへ突入を命じたようだが、自分たちは人質を救出したり、テロリズムと戦うために部隊だという理由から、司令官が拒否したという。 こうした展開になることは予想されていたこと。本ブログでは何度か書いたことだが、暫定政権に参加しているネオ・ナチとの関係もあり、治安機関を動かすことは難しい。軍の内部からも相当数の離脱者が出る可能性が高い。東部や南部では半数以上に達するのではないだろうか。やはり、ネオ・ナチで編成する「親衛隊」やアメリカなどの傭兵を頼るしかなさそうだ。
2014.04.12
アメリカ政府はロシア軍がウクライナとの国境近くに4万名程度の部隊を集結させている証拠だとする写真を公表、ロシア政府は昨年8月に行われた軍事演習のときに撮られたものだと反論している。どちらが正しいかは不明だが、これまでもアメリカは偽情報を流し続けてきた「前科」があり、アメリカ/NATOが軍隊を増強する口実に使っているとする話にも耳を傾けなければならない。 ロシア軍が国境近くへ移動しているかどうかはともかく、アメリカをはじめとする「西側」がウクライナに介入してきたことは間違いない。「西側」が支援するキエフの暫定政権はネオ・ナチを中心とするクーデターで成立したが、このクーデターを仕組んだ張本人は「西側」だ。 このクーデターによってウクライナを追放されたビクトル・ヤヌコビッチは選挙で選ばれた大統領。この大統領を排除するため、ビクトリア・ヌランド米国務次官補やジョン・マケイン米上院議員がキエフに乗り込んで反大統領派を扇動、ヌランドはビスケットを配るという「フラワー・チルドレン」を真似したようなパフォーマンスを演じている。アメリカ政府は民主的に成立した政権を「民主主義」の名の下に倒したのである。 ヤヌコビッチを支持した住民の多い東部や南部の住民が今回のクーデターに反発するのは当然だが、そうした住民だけでなく、ネオ・ナチが重要なポスト、特に軍や治安機関の要職についている暫定政権を支持できない軍人や警官も少なくないようで、暫定政権はアメリカの傭兵会社から戦闘員を雇い、ネオ・ナチを中心にして「親衛隊」を編成せざるをえない状況になっている。 住民側は、こうした暫定政権の戦闘集団に対抗するため「人民軍」を編成するべきだという声も挙がっているようだが、ウクライナの軍や治安部隊から離脱した人びとが少なくないことを考えると、キエフに対抗することは可能。「西側」が軍事支援しても簡単には倒されないだろう。 リビアやシリアでのケースでは、「アル・カイダ」などを「西側」や湾岸産油国は傭兵として利用した。「アル・カイダ」とは「ベース」を意味する。これを「基地」と訳すとわかりにくいが、実際は「データ・ベース」。1990年代にアメリカがソ連と戦わせるために集めた数千人におよぶイスラム教スンニ派戦闘員のリストだったのである。これはロビン・クック元英外相も認めている。そしてウクライナで使われているのはネオ・ナチであり、そのメンバーはアル・カイダと結びついている。 ラテン・アメリカに民主的な政権が成立し、「国境なき巨大資本」の利権を脅かすことを恐れたアメリカの支配層は軍人を手先として利用した。その軍人を訓練するために創設したのが「SOA」。 1946年にパナマに建設、84年になってアメリカのジョージア州にあるフォート・ベニングに移動、2001年にはWHISEC(またはWHISC)へ名称を変更している。名称には関係なく、訓練の内容は反乱に対処する技術をはじめ、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などだ。ウクライナの場合、ネオ・ナチのメンバーはバルト諸国にあるNATO系の施設で訓練を受けてきたと報告されている。 アフガニスタンでアメリカがソ連を挑発、戦争へ引きずり込む工作を本格化させたのは1979年だが、その年、投機家のジョージ・ソロスは「オープン・ソサエティ基金」を始めた。つまりソ連圏を巨大資本にとって「開かれた社会」、カネ儲けしやすいシステムに作り替えようというわけだ。 その軍事的な側面を担っているのがNATO。一時期まで英米派と独仏派に分かれていたが、ニコラ・サルコジがフランスの大統領に就任した段階で英米派がNATOを完全支配した。その象徴的な出来事が、フランスのNATO軍事部門への復帰。 フランスがNATOの軍事機構から離脱したのは1966年のこと。その4年前、シャルル・ド・ゴール大統領をOASと呼ばれる秘密組織のメンバーが暗殺を試みて失敗しているが、このOASはアメリカの破壊工作(テロ)組織につながっていた。この極秘組織とはOPCで、1950年代の初めにCIAの内部へ吸収されている。なお、ド・ゴールは1968年に起こった「5月革命」の対応に失敗し、翌年、政権の座を去ることになった。 ところで、サルコジの父親はハンガリーからの「亡命貴族」。ロシアのボルシェビキ革命から逃れるため、フランスへやって来た。母親はユダヤ系の「平民」。その後離婚、父親はクリスティーヌ・ド・ガナイという貴族階級の女性と結婚する。 クリスティーヌはシャルル・ド・ゴールのボディー・ガードだったアシール・ペレッティの秘書になるが、このペレッティはコルシカを拠点とする麻薬組織を仕切っていたことが1972年に発覚する。「フレンチ・コネクション」という映画のモデルになった組織だという。 1977年にサルコジの父親はクリスティーヌと離婚、彼女はフランク・ウィズナー・ジュニアというアメリカ人外交官と再婚する。アレン・ダレスの側近で、OPCを指揮していたフランク・ウィズナーの息子だ。 一方、サルコジは1982年にアシール・ペレッティの姪と結婚、弁護士として「コルシカの友人」のために働くことになった。義理の母になるクリスティーヌとも親しい関係を維持、その新しい夫の下でアメリカの手先になる。 2003年に米英がイラクを先制攻撃する際、フランスとドイツは反対したが、そのときのフランス大統領はジャック・シラク。アメリカの支配層は怒り、ウィズナー・ジュニアはシラクをはじめとするド・ゴール派を乗っ取り、さらにリベラル派を潰す作戦を展開した。そしてサルコジを大統領へ据えることになる。サルコジがフランスをNATOの軍事部門へ復帰させたのは必然だった。後にシラクは刑事訴追され、2011年に執行猶予付きながら、禁固2年が言い渡されている。
2014.04.11
ウクライナの東部、かつてロシア領だった地域でキエフのクーデター政権を拒否する動きが広がり、ドネツクやハリコフでは独立宣言もあったと伝えられている。暫定政権は東部や南部の住民が意思を表明することを許さない姿勢だ。 クリミアでもそうだったが、ネオ・ナチに支配されることを人びとは望んでいない。これが民意。それを認めるわけにはいかないアメリカ政府は、アメリカの傭兵会社から戦闘員が派遣されていることに関しては口をつぐみながら、「ロシアの工作員」のせいにするしかないようだ。 そうした動きを暫定政権は押さえ込むために傭兵を投入、軍の部隊も派遣され、ドネツクへ近づくウクライナ軍部隊に抗議する人びとの様子とされる映像がインターネット上では流れている。キエフとは違い、棍棒やチェーンが振り回されたり火炎瓶や石が投げられることもなく、ブルドーザーやトラックが持ち出されず、勿論、狙撃もないが、人びとの怒りは感じられる。 クリミアの場合、周囲を海に囲まれているため、ネオ・ナチやアル・カイダのような集団が潜る込むことは難しく、早い段階で住民が自衛軍を編成して人の出入りをチェックしたこともあって市街が血と火の海になることは避けられた。少なからぬウクライナ軍の将兵が離脱したことも無視できない。暫定政権がウクライナ海軍の総司令官に任命したデニス・ベレゾフスキー少将のほか、多くの将兵が離脱した。 暫定政権によると、離脱者の比率は3月下旬の段階で約半分だというが、実際はさらに多くなっただろう。ウクライナの東部でも、軍から離脱する可能性のある将兵は少なくないはずで、傭兵を雇ったり、クーデターの主力だったネオ・ナチのグループで「親衛隊」を編成したりする必要があるわけだ。 傭兵を供給しているのは、アメリカを拠点とするアカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーン。数百人の傭兵をウクライナへ派遣しているようで、セルゲイ・ラブロフ露外相によると、約150名の傭兵がウクライナのソコル(特殊機動警察)の制服を着て活動しているという。 そのほか、ウクライナ議会は6万人規模の国家警備軍を創設する法律の制定を採択、メンバーはネオ・ナチが主体になると見られている。ちなみに、ナチス時代のドイツには軍のほかに「親衛隊」が存在した。ドイツ語では「Schutzstaffel」、つまり「防衛隊」。ウクライナでも似た組織ができたわけだ。 ウクライナの東部や南部の住民が抵抗運動を始める中、NATO軍の司令官を務めるフィリップ・ブリードラブ米空軍大将は、アメリカ軍部隊をロシアに近い東ヨーロッパの国へ入れるかもしれないと語っている。 前にも書いたことがあるが、ウィンストン・チャーチル英首相は第2次世界大戦の終盤、ドイツが降伏した頃にソ連を奇襲攻撃する作戦の立案をJPS(合同作戦本部)へ命じている。そして1945年5月下旬にできたのが「アンシンカブル作戦」。米英軍数十師団とドイツの10師団がソ連を攻撃することになっていたが、参謀本部が拒否して実現しなかった。(フランクリン・ルーズベルト米大統領は4月に執務室で急死している。) テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、アメリカ軍の内部では1957年にソ連を先制核攻撃する計画が練られはじめ、1963年の後半に実行する予定だったという。その頃には先制攻撃に必要なICBMを準備でき、ソ連を圧倒できると判断していたようだ。ソ連の反撃を封印するため、どうしても押さえる必要のあった場所がキューバ。この計画を阻止したジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月に暗殺された。 西ヨーロッパがソ連と友好的な関係を築くことをアメリカは嫌い、さまざまな工作、作戦を展開したが、中でも有名なものが「NATOの秘密部隊」が実行した「緊張戦略」。右翼を使い、「極左」を装って爆弾攻撃を展開している。コミュニストとも手を組もうとしていたアルド・モロ元首相が1978年に拉致、殺害されているが、これも「NATOの秘密部隊」が実行したと信じられている。 そして1980年代の前半、NATOはソ連と軍事衝突する寸前だった。総理大臣に就任した直後、1983年1月に中曽根康弘はアメリカを訪問、その際、ソ連を露骨に敵視する発言をしている。「大きな航空母艦」や「四海峡封鎖」といった攻撃的なフレーズを使って問題になった。 その年の春にはアメリカ海軍の三空母を中心とする機動部隊群が千島列島エトロフ島の沖に終結、大艦隊演習を展開、艦載機がエトロフ島に仮想攻撃をしかけ、志発島の上空に侵入して対地攻撃訓練を繰り返したとも言われている。 大韓航空007便が航路を大幅に外れ、アメリカが定めた飛行禁止空域を警告されずに飛行、ソ連の重要な軍事施設の上空を飛び、サハリン上空で撃墜されたのは1983年8月31日から9月1日にかけてのこと。大韓機が警告を受けずに飛行禁止空域を通過できたのは、NORADの担当者が怠慢だったのか、事前に許可を受けていたからだろう。 そして11月、NATO軍は「エイブル・アーチャー83」という軍事演習を計画していたが、これをソ連は「偽装演習」だと疑い、応戦体制に入っている。ジャーナリストのクリストフ・レーマンが紹介したNATO元幹部の話によると、この当時、ヨーロッパとソ連が緊密な関係を発展させたなら、米英両国は戦争を始めることで、アメリカの軍や国防総省の意見が一致していたという。
2014.04.10
アメリカをはじめとする「西側」が「言論の自由」を尊重する民主的な体制で、ロシアはジャーナリストを迫害する反民主的な体制だと思い込んでいる人は少なくないようだ。(処世術で、そう信じている振りをしている人も少なくないだろうが。) ところで、アメリカの支配層がメディアをどう考えているかを示す発言がある。ウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込み、言論の自由を象徴する存在であるかのように言われてきたワシントン・ポスト紙。そのオーナーだったキャサリン・グラハムは1988年にCIAの新人に対して次のように語ったという。 「我々は汚く危険な世界に生きている。一般大衆の知る必要がなく、知ってはならない情報がある。政府が合法的に秘密を維持することができ、新聞が知っている事実のうち何を報道するかを決めることができるとき、民主主義が花開くと私は信じている。」 メディアとは「一般大衆」を支配層が操作する道具、プロパガンダ機関だと語っているわけだ。ウォーターゲート事件を実際に記者として追いかけたひとり、カール・バーンスタインによると、1970年代の時点で400名以上のジャーナリストがCIAに雇われていた。ニューヨーク・タイムズ紙は1950年から66年にかけて、少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているともいう。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) これだけの人数を雇うには、それだけの経費が必要になるわけだが、ある人に言わせると、「高給売春婦」を雇うよりは遥かに安くあがるそうだ。言うまでもなく、そうした女性も工作には使う。 支配層とメディアとの関係は第2次世界大戦の前も基本的に同じだった。本ブログでは何度も書いたが、1933年から34年にかけて、JPモルガンを中心とするウォール街の巨大金融機関はフランクリン・ルーズベルト大統領を排除するクーデターを計画した。 ルーズベルトを中心とするニューディール派はファシズムや植民地支配に反対、巨大企業の活動を規制し、労働者の権利を拡大しようとしていた。こうした政策を嫌ったわけである。 当時、ウォール街が注目していたのはフランスの「クロワ・ド・フ(火の十字軍)」なる組織。その運動と同じように50万名規模の人間を動員できる組織をアメリカでも作ろうとしていた。これだけの人間を動員できる組織としてウォール街が想定していたのは在郷軍人会だ。 この計画でひとつのネックになっていたのは海兵隊のスメドリー・バトラー退役少将。名誉勲章を2度授与された伝説的な軍人で、軍隊の内部にも大きな影響力を退役後も保持していた。そこで、クーデターを成功させるためにはバトラーを抱き込む必要があり、彼に接近したわけだ。彼を説得する中で、「我々には新聞がある。大統領の健康が悪化しているというキャンペーンを始めるつもりだ。皆、大統領を見てそのように言うことだろう。愚かなアメリカ人はすぐに騙されるはずだ。」と語ったとバトラーは議会で証言している。 戦後、アメリカの支配層は情報操作を組織的に行う体制を築いた。ジャーナリストのデボラ・デイビスが言うところの「モッキンバード」だ。 このプロジェクトは1948年頃に始まり、大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、破壊工作を担当した極秘機関のOPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙のオーナーだったキャサリンの夫、フィリップ・グラハムが中心になっていた。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) 勿論、情報機関にとって記者は道具でしかない。そこで、「ジャーナリストの死」を演出し、敵を攻撃する材料にすることもある。シリアでもそうした工作が展開された。例えば、イギリスのテレビ局、チャンネル4は反政府軍の罠にはまり、危うく政府軍から射殺されるところだったという。 チームの中心的な存在だったアレックス・トンプソンによると、反政府軍の兵士は彼らを反政府軍の兵士は交戦地帯へと導き、政府軍に銃撃させるように仕向けたというのだ。イギリスやドイツなどの情報機関から政府軍の位置は知らされているはずで、意図的だったとしか考えられない。トンプソンたちは危険を察知して逃げることに成功したが、危うく殺されるところだった。 シリアでチャンネル4のチームが反政府軍にはめられかけた頃、日本人ジャーナリストの山本美香が戦闘に巻き込まれ、首を撃たれて死亡している。彼女は反政府軍のFSA(自由シリア軍)に同行して取材していたようだ。本ブログでは何度も指摘したことが、彼らは「西側」の支援を受け、体制転覆の先兵を務めていた。 FSAが拠点にしていたのはトルコで、訓練を受けていたのは米空軍インシルリク基地。アメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員が教官だったと言われている。 トルコは反シリア政府軍を支援していただけでなく、より積極的に動いていたことを示す会話が3月26日、YouTubeにアップロードされた。その中で、トルコのアフメト・ダブトオール外相、情報機関MITのハカン・フィダン長官、参謀副長のヤシャール・グラールらがシリアとの戦争を始めるための偽旗作戦について話し合っている。言うまでもなくトルコはNATOの一員であり、そのトルコがシリアと戦争を始めれば自動的にNATOの直接的な軍事介入が実現するわけだ。 そのトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権は現在、アル・カイダ系集団のアル・ヌスラ戦線を支援していると調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは書いている。昨年5月、アル・ヌスラのメンバー、10名以上がシリアとの国境近くで逮捕されたのだが、そのとき、約2キログラムのサリンが押収されたと地元警察はメディアに発表している。 アメリカ政府は「化学兵器の使用」が直接的な軍事介入の条件だとしていた。トルコ政府を後ろ盾とするアル・ヌスラが政府軍を装ってサリンを使用、それを口実にしてNATOが直接的な軍事介入、つまり航空機やミサイルを使った大規模なシリア攻撃を始めるという流れたありえたということだ。このアル・ヌスラはカタールと近いと言われているが、カタールとエルドアン政権とは「ムスリム同胞団」と関係が深いという共通項がある。 ロシアで殺されたジャーナリストを話題にする人もいるが、その中にフォーブス誌の編集者だったポール・クレブニコフも含まれている。2004年7月にモスクワで射殺されたのだが、生前、このジャーナリストはオリガルヒ、特にボリス・ベレゾフスキーの不正を追及していた。 ベレゾフスキーの背景はチェチェンの戦闘集団や犯罪組織だ。このベレゾフスキーを日本では「民主化」を象徴する「実業家」として紹介していたが、実際は違うことをクレイブニコフは明確にしている。(Paul Klebnikov, "Godfather of the Kremlin", Harcourt, 2000)こうした状況があるため、クレイブニコフ暗殺の背後にベレゾフスキーがいるのではないかと疑う人も少なくない。 なお、現在、チェチェンの武装集団を指揮しているのはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官だと言われている。この武装集団がウクライナのネオ・ナチとも結びついていることは本ブログでも指摘した。
2014.04.09
約150名の傭兵がウクライナのソコル(特殊機動警察)の制服を着て活動しているとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は語っている。「西側」やその手先の発言は垂れ流す「西側」のメディアだが、ロシア外相の発言は無視するか「慎重な」言い回しで伝えるのだろう。 しかし、状況を考えると十分にありえる話。この傭兵とはアメリカの傭兵会社、アカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーンに所属している戦闘員で、すでに数百名の単位でオデッサやドネツクなどへ入ったと伝えられている。ドネツクへオリガルヒ(一種の政商)のセルゲイ・タルタが知事として入った際、傭兵を従えていたとも言われている。 アカデミは1997年にエリック・プリンスとアル・クラークがブラックウォーターとして創設した傭兵会社。創業者はふたりともアメリカ海軍の特殊部隊SEALの元隊員で、雇われている傭兵の多くも特殊部隊出身者である。最近はCIAからも入っているという。 アメリカの傭兵はイラクなどでも住民を虐殺して問題になっているわけで、今後、ウクライナでも問題を起こす可能性がある。こうした傭兵が暫定政権の「私兵」的な存在になっているネオ・ナチのグループと連携し、反クーデター派を弾圧しようとしているのだろう。 暫定政権はネオ・ナチで「親衛隊」を組織するようだが、これも軍や警察を頼れないからにほかならない。彼らは「西側」の「国境なき巨大資本」の手先にすぎず、いわば侵略軍だからだ。「EU幻想」を抱いていた人も、クーデターを目の当たりにして目を覚ました人もいるだろう。議会でもコミュニストの発言をネオ・ナチのスボボダが暴力的に止めさせている。 ネオ・ナチの暴力を利用してクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領をウクライナから追い出すことに成功した暫定政権だが、軍や警察を統制できているとは言えない状態。治安部隊のベルクトは解散させられている。 何しろクーデタの際、ネオ・ナチのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に、石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出し、中にはピストルやライフルを撃ち、ベルクトの隊員を拉致、拷問したうえ、殺害している。目を潰された状態で発見された隊員の死体もあるようだ。相当数の隊員がロシアへ保護を求めたというが、これは「親ロシア」だからではなく、命の危険があるからだ。 クリミアの状況を見ても、相当数のウクライナの将兵が反クーデター派についたようだが、同じことが東部や南部の都市で起こっている可能性が高く、ソコル(傭兵)や親衛隊(ネオ・ナチ)を派遣する必要があるのだろう。 ベルクトの隊員は狙撃の犠牲にもなっている。2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相は、その翌日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で次のように報告している: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。」 この報告に対し、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じた。「国境なき巨大資本」がカネ儲けしやすい環境を作るため、都合の悪い事実は隠蔽しなければならないというわけだ。「西側」のメディアは、アシュトンの意向に沿う「報道」を続けている。
2014.04.08
ネオコン(アメリカの親イスラエル派)など「西側」の一部支配層は全世界を制圧するプロジェクトを展開中である。現在、作戦をシリア、ベネズエラ、そしてウクライナで同時進行させているが、シリアやウクライナでは思惑通りに進んでいないようだ。そこでシリアの反政府軍、つまりアル・カイダに対戦車兵器などを提供、ウクライナではネオ・ナチや傭兵を使って反クーデター派を潰しにかかっている。キエフのクーデター政権を否定する動きがある東部のハリコフでは「反テロリスト作戦」を開始したという。言うまでもなく、アメリカ支配層は自分たちに反対する勢力、邪魔な存在を「テロリスト」と呼ぶ。 世界制覇を夢見ているネオコンの軍事的な教祖はアメリカの国防総省内にあるシンクタンク「ONA(ネット評価室)」のアンドリュー・マーシャル室長だと言われている。このマーシャルの弟子たちはソ連が消滅した1991年、アメリカを「唯一の超大国」と位置づけ、潜在的なライバルを力で押さえ込む姿勢を鮮明にした。そして翌年に作成されたのがDPG(国防計画指針)の草案。 このDPGは好戦的な代物。支配層の内部でも危険視する人がいたようで、メディアに草稿がリークされた。そこで書き直されたようだが、この考え方をネオコンは変えない。それは、2000年にPNACというネオコン系のシンクタンクが発表した「米国防の再構築」に反映されている。 この報告書を作成したプロジェクトでリーダーを務めたひとりで、ネオコンの大物としても知られているロバート・ケーガンが結婚した相手は、バラク・オバマ政権で国務次官補を務めているビクトリア・ヌランド。ウクライナのクーデターで黒幕的な役割を果たしている人物だ。なお、PNACは2006年に活動を停止させている。 ネオコンはNATOを自分たちの軍隊として使っているのだが、この軍事同盟も一枚岩ではなかった。英米派と独仏派に分かれていたのだ。フランスは創設当初からのメンバーだが、1966年に軍事機構から離脱している。その翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリを追い出してしまった。 その一因は、1962年のシャルル・ド・ゴール仏大統領暗殺未遂にありそうだ。実行グループは1961年に創設されたOASと呼ばれる組織のメンバーに所属、OASは「NATOの秘密部隊」につながっていた。 そうした背景もあり、1991年にフランスのフランソワ・ミッテラン大統領とドイツのヘルムート・コール首相は米英からの自立を目指し、「WEU(西ヨーロッパ連合)」や「ユーロ軍」の実現を訴えたが、アメリカに潰されている。 2007年にフランスの大統領となったニコラ・サルコジは米英に近い人物で、09年にフランスをNATOへ完全復帰させた。2011年に始動したリビアやシリアの体制を転覆させるプロジェクトにフランスが参加した一因はサルコジの存在にあるだろう。
2014.04.08
ネオコン(アメリカの親イスラエル派)をはじめとする「西側」の支配層はネオ・ナチのグループを使ってウクライナでクーデターを実行、首都のキエフを制圧した。その前、NATO軍はシリアへ直接的な軍事侵攻を目論み、「西側メディア」も煽っていたのだが、今ではシリアの戦乱を忘れてしまったかのように静かだ。 シリアでは現在、政府軍が優勢な展開で、トルコが直接、シリアを攻撃するまで追い詰められている。トルコは戦闘が始まった2011年3月の段階から反シリア政府軍の拠点になっていたが、トルコにある米空軍インシルリク基地では、アメリカの情報機関員や特殊部隊員、あるいはイギリスとフランスの特殊部隊員らが反政府軍の戦闘員を訓練していた。今ではヨルダンなどにも拠点がある。 訓練するだけでなく、サウジアラビアやカタールが資金や武器/兵器を提供し、傭兵も雇ってきた。その傭兵の相当部分はイスラム教スンニ派の武装勢力(サラフィーヤ/ワッハーブ派、あるいはアル・カイダ)。少なくとも最近10年ほどの間、アル・カイダを動かしてきたのはサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官だと言われている。 しかし、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、シリアで活動しているアル・カイダ系グループのアル・ヌスラ戦線の場合は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権が支援しているのだという。 シリアで政府軍と戦っている主な戦闘集団は3組織あると言われている。アル・ヌスラのほか、イスラム戦線とISIL(ISISやIEILとも表記)。イスラム戦線はスルタン総合情報庁長官が諸団体を再編成して組織、トルコの司法当局や警察によると、ISILはエルドアン首相が秘密裏に創設したのだという。アル・ヌスラ戦線はカタールに近いとされているのだが、カタールとエルドアンはイスラム同胞団に近く、エルドアンと関連があっても不思議ではない。 昨年3月、シリア政府はアル・カイダ系のカーン・アル・アッサルがアレッポの近くで化学兵器で攻撃したと発表、国連に対し、すみやかに調査するように要求している。着弾地点で採取した試料をロシアが分析した結果、サリンや砲弾は工業的に作られたものではなく、「家内工業的な施設」で製造されたことが判明したとロシア政府は発表、その分析結果は80ページの報告書にまとめられ、国連の潘基文事務総長に提出された。この段階で米英の情報機関も反政府軍が化学兵器の開発を進めていることに気づいていたとハーシュは書いている。 この件に関し、イスラエルのハーレツ紙も反政府軍が化学兵器を使ったと推測する記事を載せている。攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということが根拠だ。国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。アメリカ軍の情報機関、DIAが昨年6月の作成した極秘文書には、アル・ヌスラがサリンを製造している事実が書かれていた。 そして5月、トルコではシリアとの国境近くでアル・ヌスラのメンバー、10名以上が逮捕され、そのとき、約2キログラムのサリンが押収されたと地元警察はメディアに発表している。 ところが5名はすぐ自由の身になり、懲役25年を求刑されていたリーダーのハイサム・カッサブを含む残りも未決のまま釈放された。エルドアン政権が事件の広がりを恐れ、揉み消しを図ったと推測されている。 8月になるとダマスカス郊外のゴータで政府軍が化学兵器を使ったアメリカ政府は宣伝し始めるのだが、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使がアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示し、報告書も提出した。 チュルキン対しが示した情報には、反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、毒ガス攻撃を受けたとされるゴータで着弾していることを示す文書や衛星写真が含まれていたようで、その後、国連内の雰囲気が大きく変化したという。 ミサイル発射から間もなくして、化学兵器をサウジアラビアを結びつける記事がミントプレスに掲載された。デイル・ガブラクとヤフヤ・アバブネの名前で書かれたもので、後にガブラクは記事との関係を否定する声明を出すのだが、編集長のムナル・ムハウェシュはその声明を否定する。 編集長によると、記事を28日に編集部へ持ち込んだのはガブラクであり、同僚のヤフヤ・アバブネがシリアへ入っているとしたうえで、反政府軍、その家族、ゴータの住民、医師をアバブネが取材した結果、サウジアラビアが反政府軍に化学兵器を提供し、それを反政府軍の戦闘員が誤って爆発させたと説明したという。一連の遣り取りを裏付ける電子メールが残っているともしている。その後、カブラクからの再反論はないようだ。 昨年10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。アフガニスタンの反政府軍支配地域で「第三国」がアル・ヌスラなどシリアの反政府軍に対し、化学兵器の使い方を訓練しているとする報告があるとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は語る。 12月にハーシュは反政府軍がサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるという趣旨の記事を書き、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授は、化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないというのだ。 その間、アメリカ政府は大規模なシリア攻撃を計画していた。シリア近くの基地にB52爆撃機の2航空団を配備、トマホークミサイルを搭載した艦船も派遣されている。 5隻の駆逐艦、1隻の揚陸艦、そして紅海にいる空母ニミッツと3隻の軍艦などの艦船をアメリカ軍は地中海に配備したのに対し、ロシア側は「空母キラー」と呼ばれている巡洋艦のモスクワを中心に、フリゲート艦2隻、電子情報収集艦、揚陸艦5隻、コルベット艦2隻がシリアを守る形に配置されたようだ。陸にも高性能ミサイルが配備された可能性がある。 攻撃予定日が迫る中、ロシアの軍情報機関がゴータでサンプルを採取して分析し、イギリスの軍情報機関へもサンプルを送った。イギリスの分析でもサンプルはシリア軍が保有するサリンとは一致しなかった。この結果はアメリカの統合参謀本部へ知らされ、バラク・オバマ政権としても攻撃を中止せざるを得なくなる。 そもそも、軍の関係者はシリア軍が化学兵器を使ったという話に懐疑的だった。戦闘は政府軍が優勢で、使えばNATO軍の直接的な介入を招く可能性が高く、使う理由がなかったのである。 このシリアだけでなくリビアでも、またその前のユーゴスラビアでもアフガニスタンでもイラクでも、「西側」の政府やメディアは嘘八百を並べて軍事侵攻、破壊と虐殺の限りを尽くしてきた。同じことをウクライナでも続けているわけだ。この軍事侵攻で中心的な役割を果たしているのがNATOであり、そのNATOが広げているネットワークへ入るために安倍晋三政権は集団的自衛権を実現しようとしている。
2014.04.07
欧米の巨大資本はカネ儲けのためなら国連事務総長でも殺害すると思われている。こうした考えを補強する記事がイギリスのガーディアン紙に掲載された。 それによると、1961年9月にダグ・ハマーショルド国連事務総長が乗っていたDC-6はベルギー、またはローデシア政府によって撃墜されたとアメリカ大使だったエド・ガリオンが示唆、ベルギーやローデシアが雇っていた傭兵の活動を止めさせるために圧力を加えるよう、自国の政府に求めていることを示す文書が見つかったというのだ。 ガーディアン紙は2011年にもこの問題を取り上げている。ハマーショルドが乗っていたDC-6が別の比較的小さな航空機に撃ち落とされるところを目撃したという人物の証言を同紙は紹介したのだ。 当時、ハマーショルドはコンゴで始まっていた戦乱を調停しようとしていた。1960年にベルギーからコンゴは独立、選挙で勝利したパトリス・ルムンバが初代首相に就任したのだが、資源の豊富なカタンダをベルギーは分離独立させ、利権を確保しようと計画、傭兵を雇って戦争を始めていたのである。 アメリカのアレン・ダレスCIA長官もルムンバを危険視、コンゴ駐在のクレアー・ティムバーレーク大使はクーデターでの排除を提案したという。CIA支局長はローレンス・デブリン。このとき、ティムバーレーク大使の下には後の国防長官、フランク・カールッチもいた。 ダレスはデブリンにルムンバ暗殺を命令、「病気を引き起こす毒物」を開発していたシドニー・ゴットリーブが1960年9月にコンゴ入りしている。その毒物は使われなかったようだが、その月にクーデターでルムンバ政権は倒されてモブツ・セセ・セコが実権を握った。自宅軟禁になったルムンバは逃走試みるが、その年の12月に拘束され、翌年の1月に拷問を受けた後に殺害されている。 この当時、コンゴのイギリス大使館に領事/1等書記官として赴任していた情報機関幹部のダフニ・パークは死の少し前、彼女がルムンバ殺害を手配したと語ったという。コンゴがソ連と結びつくことを恐れたのだという。 その後もコンゴでの戦闘は続き、ハマーショルドは停戦を実現しようと活動する。その過程で、彼はイギリスの外交官がカタンダの反乱軍を秘密裏に支援している疑いを持つ。死の数日前にはカタンダへの攻撃をハマーショルドは国連軍に許可している。 その作戦中にハマーショルドを乗せた航空機が撃墜されたというのだが、撃墜した飛行機を操縦していたパイロットの通信を聞いたという人物がいる。キプロスにあるNSAの基地にいたチャールズ・サウソールで、パイロットがDC-6を確認、銃撃し、火を噴いて墜落していく様子を報告していたという。国連はNSAを含むアメリカの機関に対し、保有する証拠を公開すべきだという声が出ているようだが、当然だ。 アフリカは資源の宝庫である。その資源を略奪することで欧米の巨大資本は莫大な富を獲得し、その富を使って支配力を強めてきた。したがって、アフリカが自立することを彼らは許さない。 それは今も同じで、2007年にアメリカはアフリカ大陸を担当する統合軍、AFRICOMを創設、アフリカを統合、欧米から自立させようとしていたリビアのムアンマル・アル・カダフィを11年10月に殺害した。アフリカとの関係を強めていた中国を追い出そうともしている。
2014.04.06
イゴール・チュバロフ駐エリトリア露大使とセルゲイ・バハレフ駐ジンバブエ露大使との会話とされるものがYouTubeで流れている。 ビクトリア・ヌランド米国務次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米大使とがウクライナの閣僚人事について相談する会話、あるいはエストニアのウルマス・パエト外相がEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)にキエフにおける狙撃の責任者は暫定政権側にいると報告している会話など「西側」にとって都合の悪い音声がYouTubeにアップロードされてきた。それに対抗してなのかもしれないが、如何せん、中身がない。 バハレフとされている写真が昨年死亡しているユーリ・ドゥビニンだということはともかく、英語訳が正しいとするならば、会話の内容は他愛もない雑談にすぎず、ヌランドやアシュトンらの会話とは深刻度が本質的に違う。 今回の会話を誰が録音したのかは不明だが、暫定政権、あるいはアメリカやEUの機関が盗聴したのだとするならば、こうした内容の会話しかアップロードできず、しかも写真を間違えているということは、かなり追い詰められているのだろう。 暫定政権のアルセン・アバコフ内相は多くの死傷者を出した狙撃に関し、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領の指示で行われたと主張、ベルクト(警官隊)のメンバー12名を狙撃の実行者として逮捕したと発表、治安機関SBUのバレンティン・ナリバイチェンコ長官は、その作戦にロシアの治安機関FSBが関与していると主張している。 狙撃については、リビアやシリアでの経験から、体制の転覆を目指す勢力が実行するだろうと予測されていた。狙撃は始まって数日後にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相はEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ次のように報告した: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。」 クーデターまでSBUの長官を務めていたアレクサンドル・ヤキメンコによると、最初の狙撃はアンドレイ・パルビーが制圧していたビルからのもの。現在は国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長を務めるパルビーはネオ・ナチの「ウクライナ社会ナショナル党」を創設したひとりとしても知られ、クーデターの舞台になった広場を管理、指揮していた人物だとも言われている。 ヤキメンコによると、狙撃部隊のメンバーにはウクライナの特殊部隊員も含まれていたが、ユーゴスラビアなど他国からやって来た傭兵が主力で、パルビーもアメリカの特殊部隊と接触していたという。 アメリカ軍がクーデターに関与していることを示す文章も伝えられている。「アノニマス」と名乗る集団がハッキングで入手した電子メールとされるもので、その中にはアメリカの駐在武官補佐官ジェイソン・グレシュ中佐とウクライナ参謀本部のイーゴリ・プロツュクとの間で交わされたものがある。それによると、クリミアで住民投票が行われる前に、ロシア軍の特殊部隊を装った戦闘員にウクライナ空軍第25基地を襲撃するようにグレシュ中佐は指示している。 キエフの暫定政権や「西側」の政府、メディアはクリミアがウクライナから離脱する動きを見せたとき、ロシア軍が軍事侵攻したと宣伝していたが、実際は駐留軍だった。つまり、1997年にウクライナとロシアが結んだ協定で、クリミアにある基地を20年間、使用する権利をロシアは与えられ、さらに25年間の延長が認められていた。駐留が許される人数は2万5000名と決められ、1万6000名が駐留していたのだ。 ウクライナとの国境近くにロシア軍の部隊が集結、今にも軍事侵攻するかのように「西側」では宣伝されてきた。アメリカ下院の情報委員会で委員長を務めるマイク・ロジャーズは代表的な扇動者で、NATOのアナス・フォー・ラスムセン事務総長も戦争に前向きな姿勢を見せているのだが、アメリカのネットワーク局、NBCでさえ、ロシア軍のウクライナに対する軍事侵攻が近いというような状況ではないと報道している。 自分たちの知られたくない実態を隠すため、そうしたことを相手が行っているかのように暫定政権や「西側」は宣伝しているのだが、中身はない。圧倒的なプロパガンダ力で押し切ろうとしているのかもしれないが、事実はインターネットで流れ続けている。 ユーゴスラビアへの先制攻撃では「人権擁護団体」の信頼度が大きく低下、アフガニスタンやイラクへの先制攻撃から「西側」、特にアメリカのメディアが信用されなくなり、リビアやシリアへの軍事介入ではカタールのアル・ジャジーラが同じことになった。ウクライナのクーデターではEUのメディアもアメリカと同じ水準まで信頼度が低下しているようだ。ところで、日本のマスコミは欧米やカタールのメディアに比べて格段にレベルが低く、情報に興味のある人びとからは端から相手にされていない。
2014.04.05
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はNATOに対し、東ヨーロッパで軍事力を劇的に増強している理由を説明するように要求している。NATOはロシアのウクライナへの敵対的行為が脅威だとし、あたかもロシア軍がウクライナへ軍事侵攻する寸前であるかのように主張しているが、これはイラクを先制攻撃する前にも言っていたことだ。 何度も指摘していることだが、1990年に東西ドイツが統一される際、ジェームズ・ベイカー米国務長官はソ連のエドゥアルド・シュワルナゼ外務大臣に対し、NATOを東へを拡大しないと約束したのだが、その約束は守られなかった。 つまり、1999年にチェコ、ハンガリー、ポーランド、2004年にはブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、2009年にアルバニアとクロアチアがNATOに加盟している。さらに、グルジアやウクライナの加盟が議論され、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カザフスタン、マケドニア、モルドバ、モンテネグロ、セルビアも噂の国だ。中でも重要視されているのがウクライナにほかならない。 NATOは北アメリカやヨーロッパだけでなく、世界規模にネットワークを広げようとしている。例えば、地中海沿岸のアルジェリア、イスラエル、モーリタニア、チュニジア、エジプト、ヨルダン、モロッコ、ペルシャ湾岸のバーレーン、カタール、クウェート、オマーン、サウジアラビア、さらに太平洋のオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、台湾、フィリピン、そして日本。安倍晋三政権は韓国との関係を悪化させているが、これはNATO/アメリカにとって許しがたい行為だろう。 ヨーロッパでは西から東へ圧力を加え、アフリカの資源を支配する体制を整えつつ、中東から東アジアにネットワークを広げ、ロシア、中国、イランなど「服わぬ国」を締め上げていこうとしている。日本の「シーレーン防衛」とは、中国の石油/天然ガスの輸送ルートをブロックする目的がある。それを想定して中国はミャンマーやパキスタンでのパイプライン建設を計画、それをアメリカは潰そうとしている。これはアングロ・サクソンの古典的な戦略だ。 そのNATOはリビアやシリアの制圧作戦でイスラム教スンニ派(アル・カイダ)を、またウクライナではネオ・ナチを手駒として使ったが、かつて、ラテン・アメリカの民主政権を倒した軍事クーデターでは、ラット・ラインでアメリカが逃がしたナチスの幹部の協力を得ている。NATO/アメリカとはそうした国だ。 アメリカとイギリスの情報/破壊工作機関が「NATOの秘密部隊」を編成したことも本ブログで指摘してきた。イタリアで「極左」を装って爆弾攻撃を繰り返しただけでなく、フランスのシャルル・ド・ゴール大統領暗殺未遂、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領暗殺でその名前が出たほか、イタリアのアルド・モロ元首相の誘拐/暗殺でも黒幕だと疑われている。 そうしたNATOのネットワークへ日本も組み込まれようとしている。そこから集団的自衛権の問題も出てくる。「アラブの春」を「民主化運動」だと主張、ウクライナで行われているクーデターを支持する人間が集団的自衛権やTPPに反対するのは奇妙なことなのである。
2014.04.04
ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したクーデターの実態を「西側」の有力メディアは隠してきたものの、インターネットを通じて情報は漏れている。アメリカ政府要人の謀議やEU幹部の現地報告が盗聴され、外に出されたことも「国境なき巨大資本」にとっては痛いだろう。 例えば、2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相は、その翌日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で次のように報告したことが発覚している(この会話をパエト外相は本物だと認めている): 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。」 この報告以上に問題なのは、アシュトンが「議会を機能させなければならない」と応じたこと。「国境なき巨大資本」のプランを実現するため、事実を隠蔽して議会を守るべきだと言っているわけだ。 クーデターまでSBUの長官を務めていたアレクサンドル・ヤキメンコによると、最初の狙撃はアンドレイ・パルビーなる人物が制圧していたビルから。このパルビーはネオ・ナチの「ウクライナ社会ナショナル党」を創設したひとり。この政党は後に党名を「スボボダ(自由)」へ名称を変えている。今は国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長だ。 キエフでクーデターの拠点になった広場への出入りを管理していたのはパルビーで、武器の持ち込みも彼の許可が必要だったことから、スナイパーが彼の指揮下にあったことは間違いないと見られている。ヤキメンコによると、狙撃部隊のメンバーにはウクライナの特殊部隊員も含まれていたようだが、ユーゴスラビアなど他国からやって来た傭兵が主力で、狙撃チームはアメリカ大使館を根城にしていたという。パルビーもアメリカの特殊部隊と接触していたと言われている。ヤキメンコの話の方が遥かにリアルであり、パエト外相の話と合致する。 暫定政権や「西側」としては、パエト外相やヤキメンコ元SBU長官たちの話を否定しなければならない。そこでアルセン・アバコフ内相がはベルクト(警官隊)のメンバー12名を狙撃の実行者として逮捕したと発表した。治安機関SBUのバレンティン・ナリバイチェンコ長官は、その作戦にロシアの治安機関FSBが関与していると主張している。陳腐なストーリーで説得力はなく、明確な証拠、信頼できる証言は示されていない。 ところで、アバコフはオリガルヒのひとり。クーデターで中心的な役割を果たしたネオ・ナチに属する右派セクターのリーダー、率いていたアレキサンダー・ムージチコを射殺させた責任者だと言われ、右派セクターはアバコフ内相の解任を求めている。 また、ナリバイチェンコは2月24日にSBUの長官となった人物。それまではSBUの第1副長官を務めていた。ヤキメンコは、ナリバイチェンコが部下の個人ファイルをCIAに渡していたと語っている。公然とCIAに協力していたというわけだ。 狙撃で多くの死者が出始めるのは2月22日から。議会の議長を務めていたボロディミール・リバクを「EU派」が脅迫して辞任させ、アレクサンドル・トゥルチノフを新議長に据え、さらに憲法の規定を無視して議会が大統領代行に任命したのはこの日だ。 その前日、21日にヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派が平和協定に調印していたのだが、話し合いでの解決を拒否し、暴力的に実権を握ろうとしていた勢力が存在する。ビクトリア・ヌランド米国務次官補のようなネオコン(アメリカの親イスラエル派)だ。 18日頃からネオ・ナチはチェーン、ナイフ、棍棒を手に、石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出し、中にはピストルやライフルを撃つ人間も出始めたが、狙撃の犠牲者は格段に多かった。 ウクライナに対する「西側」の影響力が一気に高まったのは2004年から05年にかけて展開された「オレンジ革命」。これによって、ビクトル・ユシチェンコが大統領に就任した。そのパトロンは「西側」の「国境なき巨大資本」やロシアで国の資産を略奪することで巨万の富を得たオリガルヒのひとり、ボリス・ベレゾフスキー。 この「オレンジ革命」でウクライナは新自由主義の道を歩み、経済は破綻するのだが、EUとの「連合協定」締結という形で、その政策は継続される流れになっていた。そのための協議を停止するとビクトル・ヤヌコビッチ大統領が発表したのは昨年11月21日のことだった。ロシア側から天然ガス価格の30%値下げ、150億ドルの支援をロシア政府が提示したのである。 EUとの協定は主権の放棄に等しく、その先にはギリシャのような状況が待ち受けているのだが、「EU幻想」を抱く人もいて、抗議活動が始まる。勿論、その黒幕は「国境なき巨大資本」とその手下たちだ。「西側」の手口に精通している人びとは、正しい判断だと考えた。 この決断がクーデターで潰された後、3月27日にウクライナ議会は「危機対策法」を承認した。IMF、つまり巨大金融資本の代理人が140億ドルから180億ドルの融資をする条件としていたもので、緊縮政策の受け入れ、通貨フリブナの対ドル相場をこれまでより自由に変動できるようにし、天然ガス価格の引き上げ、エネルギー部門の財務見直しなどが求められている。とりあえず庶民の年金を半減させるようだが、いつものように国の資産は私有化され、「国境なき巨大資本」やその手下の食い物になる。「西側」の金融資本はまず、ウクライナ政府が保有していた金のインゴットをアメリカへ秘密裏に運び去った。
2014.04.04
ウクライナに出現した暫定政権は「西側」の支配層が作り上げたのであり、国民に選ばれたわけではない。それにもかかわらず、国の仕組みを根本的に変えて「国境なき巨大資本」がカネ儲けしやすくしようとしている。選挙で成立したビクトル・ヤヌコビッチ政権を暴力で倒したのはネオ・ナチだが、略奪の主役はIMFになる。 IMFの政策を実行した国の経済は破綻してきた。彼らの仕事は略奪の手助けであり、当然の結果。これは多くの人びと、例えば研究者で活動家でもあるスーザン・ジョージ、あるいはアメリカの財務次官補を務めたことのあるエコノミストのポール・グレイグ・ロバーツが指摘している事実だ。 ギリシャにしろ、ウクライナにしろ、IMFは融資の条件として緊縮政策を強制する。戦前、日本に対してもウォール街は同じ政策を強要、庶民の生活は悲惨なことになった。ウクライナでは今後、庶民の生活水準が低下、国の資産は内外の巨大資本に盗まれることになる。ボリス・エリツィン時代のロシアでもそうしたことが起こっている。 オリガルヒなる人びとが出現するのは、国の資産が盗まれているからで、そうした資産は欧米の金融機関へと流れていく。ラテン・アメリカなどを支配するためにアメリカの巨大資本は軍事独裁体制を築いてきたが、そうした体制の支配層は欧米の金融機関やIMFからの融資を自分たちの懐へ入れる。つまり、資金は欧米の金融機関へ還流、借金だけが残る。さらに、為替相場で自国通貨が安くなれば輸入品の値段が上昇、輸出が増えなければ経済は破綻し、巨大資本の食い物になって借金はさらに膨らむ。 日本の場合、政府自身が自国通貨を安く誘導している。これで輸出が増えると宣伝していたが、1990年代前半から日本では製造業を支えてきた中小企業をアメリカの圧力(ケイレツ批判)で潰す政策を進めてきた。そのため、成り立たないシナリオだ。輸出できる製品を作る能力は低下、輸出額は増えない。実際、そうなっている。 こうしたことは政府もわかっていたはずで、円安誘導は経済を破綻させることが目的だったのではないかと疑わざるをえない。経済の回復を願っているなら、この時期に消費税の税率を引き上げないだろう。日本をアメリカの巨大資本に提供することで自分たちは多額の報酬を手にし、庶民は地獄へ突き落とされる。そうした仕組みに各国政府が抵抗できないようにするのがTPP。 かつて、チリでは新自由主義を導入するために軍事クーデターを実行、その政策に反対しそうな人びとは拉致、監禁、拷問、そして虐殺された。現在、「西側」では巨大資本による略奪に反抗する人びとを探し出すために監視システムを強化、処罰する法律も整備しつつある。要するにファシズム化の推進。こうした仕組みを受け入れない国は軍事力で潰そうとしている。NATOの拡大もそうした目的の下で行われ、日本でも集団的自衛権が主張されている。
2014.04.03
NATOの軍事顧問団をウクライナへ派遣できるかどうかついて、キエフの暫定政権はNATOと話し合ったようだ。この政権はウクライナ国民に支持されて誕生したわけではなく、ネオ・ナチの暴力を利用したクーデターで実権を握ったにすぎない。クーデターで主力だったネオ・ナチが暴走気味で、その一部を粛清する動きがあるのだが、そうなってくると治安や軍事をどうするかが問題。NATOを頼ることになったのだろう。 暫定の大統領や首相はオリガルヒ(一種の政商)の仲間。「西側」の「国境なき巨大資本」から支持されているのだが、国民からの支持が圧倒的に多いとは言い難い。だからこそ、大統領選挙で暫定政権の一派はビクトル・ヤヌコビッチに敗れたわけである。 この選挙で選ばれた合法的な政権を倒すため、「西側」はネオ・ナチを使った。この集団はクーデターの際、棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に、石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出し、ピストルやライフルを撃っている。 最終的にヤヌコビッチ政権を倒す流れを作ったのは何者かによる狙撃。エストニアのウルマス・パエト外相がEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)に電話でキエフの状況を報告する電話が盗聴され、インターネット上に公開されたのだが、それによると、パエト外相は次のように言っている: 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。」 NATOと関係が深く、エストニアにあるNATO系の施設でメンバーが軍事訓練を受けたと言われているUNA-UNSOだとする説もあるが、アレクサンドル・ヤキメンコSBU(ウクライナの治安機関)元長官によると、最初の狙撃はアンドレイ・パルビーなる人物が制圧していたビルからだったという。 パルビーはネオ・ナチの「ウクライナ社会ナショナル党」を創設したひとり。この政党は後に党名を「スボボダ(自由)」へ名称を変えている。今は国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長だ。 狙撃では警官隊(ベルクト)の隊員も犠牲になっているが、それだけでなく、ネオ・ナチのメンバーによって拉致、拷問、そして殺害されている。目を潰された状態で発見された隊員の死体もあり、多くの隊員がロシアに保護を求めた。暫定政権の内相はベルクトを解散させているが、自分たちのために働くことはないと判断したのだろう。 ウクライナのクーデターで黒幕的な役割を果たしたネオコン(アメリカの親イスラエル派)であるビクトリア・ヌランド国務次官補は昨年12月13日、1991年からウクライナを支援するため、50億ドルを投資したと米国ウクライナ基金の大会で発言している。そのとき、演壇に立つ彼女の背後には、巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていた。 そのヌランドがジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話で次期政権の閣僚人事を話し合っているが、そのときに高く評価していた人物が暫定政権で首相を務めているアルセニー・ヤツェニュク。 この人物は大学教授の一家に生まれ、大学を卒業すると法律事務所を開き、1998年から2001年までアバル銀行で働き、03年から05年までウクライナ国立銀行の副頭取、そして頭取を務めた。 数年前から噂になっているようだが、このヤツェニュクは2005年頃からサイエントロジーなる団体のメンバーになっていると言われている。本人は否定しているようだが、アメリカのカリフォルニアに住む姉はこの団体の幹部だともいう。サイエントロジーはアメリカの「疑似宗教団体」で、映画俳優のトム・クルーズが信者だということでも知られている。CIAとの関係も噂されているが真偽は不明。 この団体は旧ソ連圏での布教に熱心なのか、スロバキアのロベルト・フィツォ首相は、次期大統領でビジネス界の大物でもあるアンドレイ・キスカがサイエントロジーの信者だと主張している。キスカが自伝をサイエントロジー系の出版社から出したことが根拠のようだ。
2014.04.03
アメリカでは、ロシア軍がウクライナとの国境近くに集結しているという宣伝が展開されてきた。旗振り役の代表格は下院情報委員会で委員長を務めるマイク・ロジャーズ。ロシア軍の侵攻が迫っていると恐怖を煽り、暫定政権への軍事支援を主張している。同じように、NATOのアナス・フォー・ラスムセン事務総長も強硬。この事務総長は「新自由主義」の信奉者で、シリアでも軍事介入に積極的な姿勢を見せていた。 こうした人びとはロシアと戦争したくて仕方がないのだろうが、アメリカでも核戦争は避けたいと思う人もいるようで、事実を伝えるメディアも出てきた。ウクライナとの国境近くにロシア軍が配備されて軍事侵攻が近い、というような状況ではないとNBCでさえ報道しているのだ。嘘を誤魔化すため、「撤退」という表現を使うケースも出てくるだろう。 クリミアのケースでも「西側」はロシア軍の「侵攻」を宣伝していたが、これも事実に反している。ロシアとウクライナは1997年に協定を結び、ロシアは20年間の基地使用権を与えられた。さらに25年間の延長が認められているが、それだけでなく、ロシア軍は2万5000名を駐留させることが認められ、協定が結ばれた当時から1万6000名が駐留、この部隊を「西側」や暫定政権は「侵攻軍」と表現したわけだ。 今回、ロシア政府は慎重に事を運んでいる。1979年にはアメリカの挑発に乗ってソ連軍がアフガニスタンに軍事侵攻したが、この失敗を反省しているのだろう。 その挑発工作の中心にいたのはズビグネフ・ブレジンスキー。デイビッド・ロックフェラーと近く、ジミー・カーターを大統領にした人物。バラク・オバマもブレジンスキーの弟子だとされている。後にブレジンスキーはフランスのヌーベル・オプセルヴァトゥール誌に対し、ソ連を挑発した秘密工作はすばらしいアイデアだったと話している。 このブレジンスキーも地政学的にウクライナを重要視、ロシアを支配するため、1997年頃から制圧する戦略を立てていた。そのウクライナを制圧する第1幕がオレンジ革命。これは途中で挫折、今回のクーデターにつながる。 圧倒的多数の一般市民を味方にできなかった「西側」はネオ・ナチを使い、首都のキエフを火と血の海にした。そして実現したのが「西側」を後ろ盾とする暫定政権。 この政権では治安と軍を担当するポストをネオ・ナチが押さえた。検察を指揮しているのはネオ・ナチ政党のスボボダに所属するオレー・マクニスキーであり、国防省や軍を統括する国家安全保障国防会議の議長に就任したのはスボボダ創設者のひとりであるアンドレイ・パルビー、同会議の副議長は右派セクターを率いるドミトロ・ヤロシュだ。右派セクターをヤロシュと一緒に率いていたアレキサンダー・ムージチコは警官隊に「処刑」されたようだ。クーデター派の内部で戦闘が始まる可能性がある。 その一方、ウクライナ議会は6万人規模の国家警備軍を創設する法律の制定を採択したという。ネオ・ナチのメンバーが主体になりそうで、ナチスの「親衛隊」を連想させる。ちなみに親衛隊は「SS」とも表記されるが、これはドイツ語の「Schutzstaffel」からきている。意味は「防衛隊」。ナチス時代が再現されようとしている。こうした体制を支援してきた「西側」。その政府やメディアは勿論、リベラル派や「革新勢力」も責任は免れない。
2014.04.01
消費税の税率が5%から8%に引き上げられた。「増税分を社会福祉分野に充てる」と政府は宣伝しているようだが、そんな話を真に受ける「お人好し」は多くないだろう。庶民からカネを巻き上げ、巨大企業や富裕層など支配層の負担を減らそうというだけのことだ。 この手の嘘は官僚の常套手段であり、メディアがその嘘を垂れ流すのもいつものこと。例えば、2011年3月11日に東北地方の太平洋岸を襲った巨大地震、それにともなう東電福島第一原発の「過酷事故」でもやっている。 この震災/事故で日本、特に福島県は致命的なダメージを受けた。そこで「被災地の復興」が言われ始め、「東日本大震災からの復興」の円滑かつ迅速な推進と「活力ある日本の再生」を図ることになり、地震や原発事故とは関係のない分野に官僚たちは資金を流用していったのだ。当然、消費税でも同じことが起こってきたし、これからも起こり続けるだろう。 ところで、法人税の表面的な税率を各国と比較しても意味がないことは様々な人が指摘してきた。例えば、中央大学の富岡幸雄名誉教授によると、企業利益相当額に対する法人税納付額の割合は、資本金100億円以上の企業では15〜16%で、法定税率30%の半分程度ということになる。(「税金を払っていない大企業リスト」、文藝春秋、2012年5月号) 神奈川県総務部税制企画担当課長だった井立雅之によると、法人所得課税だけでなく、企業課税、法人が負担する不動産課税、そして社会保険料の事業主負担を加えた総額の対GDP比を国際比較すると、2004年では次にようになっている。A【法人所得課税】日:3.8、米:2.2、英:2.9、独:1.6、伊:2.8、仏:2.8B【A、地方事業課税等、不動産課税、社会保険料負担】日:9.4、米:7.2、英:8.3、独:9.2、伊:14.3、仏:15.8C【B、民間医療保険負担】日:9.4、米:11.2、英:8.3、独:9.2、伊:14.3、仏:15.8 しかも、1970年代以降、ロンドンを中心に整備されたオフショア市場/タックスヘイブンのネットワークを利用し、大企業や富裕層は資産を隠し、課税を回避している。そのネットワークには麻薬取引など犯罪に絡んだ資金が合流、投機市場へ流れ込むわけだ。その結果、経済は疲弊して金融は肥大化、投機が破綻すると損失は庶民が負担させられる。 その一方、日米欧の巨大企業は労働者の賃金が安く、劣悪な労働環境が許され、環境規制の緩い国々へと生産拠点を移してきた。その結果、アメリカと同じように、日本も生産力が衰え、技術者や研究者は必要なくなり、必然的に教育も劣化していく。 「社会保障の切り捨て」と「消費税引き上げ/法人税引き下げ」の一体改革は1990年代半ばに日本とアメリカの支配層が作成した方針に基づいている。例えば、CIAと関係の深いアメリカのシンクタンク「CSIS」によって設置された「日米21世紀委員会」が1998年に出した報告書によると、日本が目指すべき方向は:(1) 小さく権力が集中しない政府(巨大資本に権力が集中する国)(2) 均一タイプの税金導入(累進課税を否定、消費税の依存度を高める)(3) 教育の全面的な規制緩和と自由化(公教育の破壊) ちなみに、この委員会の日本側メンバーは:名誉委員長:宮沢喜一元首相委 員 長:堺屋太一(後に経済企画庁長官)副 委員長:田中直毅委 員:土井定包(大和証券)、福川伸次(電通、元通産事務次官)、稲盛和夫(京セラ)、猪口邦子(上智大学教授、防衛問題懇談会委員)、小林陽太郎(富士ゼロックス)、中谷巌(竹中平蔵の『兄貴分」)、奥山雄材(第二電電、元郵政事務次官)、山本貞雄(京セラ・マルチメディア)、速水優(後に日銀総裁)顧 問:小島明(日本経済新聞) こうした人びとは、巨大資本が国(政府、議会、司法)を支配するシステムを目指している。TPPもその一環。こうしたプランの障害になっている国、例えばロシア、中国、イランなどの国々を軍事力や破壊工作で倒そうとしている。 消費税の税率アップにしろ、戦争にしろ、その目的は支配層が社会的弱者から富を奪う仕組みを築くことを目的としている。資産を略奪するだけでなく、兵器/武器の消費を促進して儲けを増やすことも戦争の動機。ウクライナの場合、教育水準が高いにもかかわらず、低コストの労働者がいることも「西側」にとっては魅力のようだ。
2014.04.01
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