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アメリカのフロリダ州にある高校で2月14日に銃撃事件があり、17名が殺され、14名が負傷したのだという。銃撃犯を近くで見た教師によると、その犯人はヘルメットを被り、フェイスマスクをつけ、防弾チョッキを着て、見たことのないようなライフルを持っていた。容疑者のニコラス・クルズは逮捕され、現場にいた生徒何人かの銃規制を求める訴えを有力メディアが流している。今年に入ってからアメリカではすでに8件の学校における銃撃事件が引き起こされた。1月9日にはアイオワ州(死者0名、負傷者0名)、1月20日にはノースカロライナ州(1名、0名)、1月22日にはテキサス州(0名、1名)、ルイジアナ州(0名、1名)、1月23日にはケンタッキー州(2名、18名)、2月1日にはカリフォルニア州(0名、5名)、2月5日にはメリーランド州(0名、1名)、そしてフロリダ州パークランドのマジョリティ・ストーンマン・ダグラス高校だ。アメリカで銃撃事件が多発する理由として社会に蔓延する恐怖が挙げられている。アメリカほどではないにしろ、銃の保有が認められ、相当数が社会に存在している国でもアメリカのようなことにはなっていないからだ。ところが有力メディアは原因を銃の存在に求め、恐怖の原因を掘り下げようとはしない。彼らが求めているのは惨劇をなくすことでなく、一種の「刀狩り」ではないだろうか。アメリカは国外で武器/兵器を「テロリスト」と呼ばれる人に渡してきた。シリアを侵略しているアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)にアメリカ、イスラエル、サウジアラビアといった国々は武器/兵器を供給、そうした政策にアメリカの有力メディアは反対していない。シリアに破壊と殺戮を蔓延させることが彼らの願いなのだろう。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルはアル・カイダ、つまりCIAから訓練を受けた戦闘員、いわゆるムジャヒディンのコンピュータ・ファイルの生みの親だ。ところで、フロリダ州の高校における銃撃事件後、銃規制に関する集会が開かれた。そこで生徒が全米ライフル協会のスポークスパーソンに質問する様子が放映されているが、その一方でCNNが生徒に質問内容を指示されたという証言も伝えられている。また、当日は銃撃事件を想定した訓練が予定されていたとする教師の発言が放送され、あるいは事件現場にいたとする女性は別の銃撃者がいたとも主張している。今回の事件では有力メディアが銃規制のキャンペーンを盛んに行っているが、疑問点は残っている。過去の銃撃事件でも似たことが指摘されていた。例えば、2016年6月12日にアメリカのフロリダ州オーランドにあるナイトクラブが襲撃された際、50名以上が殺され、53名が負傷したと警察は発表、少なくとも103発の銃弾が発射されたことになるが、襲撃に使われたセミオート小銃AR-15のマガジンに入っている弾丸は30発で、3回は再装填する必要がある。1回の再装填に5秒は必要で、20メートル以内に軍事訓練を受けた人がいれば取り押さえることができたはず。襲撃したオマール・マティーンはSWATに射殺されたようだが、ネットワーク局のABCは襲撃に4人が参加したとする証言を伝えている。これが事実なら再装填の必要はなかっただろう。襲撃者のひとりは電話で何者からか指示されていたともいう。このケースではバッグに入れられた状態で運び出される死体、救急車で運ばれる負傷者という光景が事実上、ない。マティーンはFBIに監視されていた人物でもあった。2013年にはボストン・マラソンのゴール付近で爆破事件があり、3名が死亡、百数十名が負傷したとされている。実は、このときも爆破を想定した訓練が予定されていて、それを伝えるアナウンスが流れている。周辺には大きなリュックを背負った複数の人物がいたのだが、なぜかタメルラン・ツァルナエフとジョハル・ツァルナエフの兄弟が容疑者として追われることになった。ふたりの母親によると、FBIは3年から5年の間、息子たちを監視下におき、彼女にもしばしば接触、「過激派のウェブサイト」を息子が利用していると警告していたと主張している。兄弟のおじ、ルスラン・ツァルナエフは1992年から2年間、CIAとの関係が指摘されているUSAIDの「顧問」としてカザフスタンで働き、そのルスランが結婚したサマンサ・フラーの父親はグラハム・フラーというCIAの幹部だった。トルコ政府からテロリストだと言われているフェトフッラー・ギュレンはアメリカでCIAに保護されているが、その責任者はフラーだという。2011年7月にはノルウェーの与党だった労働党の青年部が企画したサマーキャンプが襲撃されて69名が殺された(オスロで殺された人を含めると合計77名)のだが、その前にノルウェー政府はリビア空爆に参加している部隊を8月までに引き揚げると発表していた。アンネシュ・ブレイビクなる人物の単独犯行だとされているが、複数の目撃者が別の銃撃者がいたと証言している。勿論、不可解な襲撃事件はほかにもある。
2018.02.28
このブログは読者のカンパ/寄付のみに支えられています。ブログを存続させるため、よろしくお願い申し上げます。アメリカをはじめとする西側の政府や有力メディアは嘘の上に嘘を重ねてきた結果、ストーリーに整合性を持たせることが不可能になったようで、ありえない話を平然と繰り返すようになってきました。根負けするわけにはいきません。第2次世界大戦で日本が降伏してから1年近くを経た1946年8月、伊丹万作は「戦争責任者の問題」と題した文章の中で、戦争が本格化すると「日本人全体が夢中になって互に騙したり騙されたりしていた」と指摘、「このことは、戦争中の末端行政の現れ方や、新聞報道の愚劣さや、ラジオの馬鹿々々しさや、さては、町会、隣組、警防団、婦人会といったような民間の組織がいかに熱心に且つ自発的に騙す側に協力していたかを思い出してみれば直ぐに判ることである」と書いています。似た状況になっていないでしょうか?1991年12月にソ連が消滅し、ロシアが西側巨大資本の属国になるとアメリカの好戦派は自分たちが冷戦に勝利し、アメリカが唯一の超大国になったと認識、世界制覇に向かって侵略戦争を始めました。そのプランが1992年2月に作成された国防総省のDPG草案、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンです。その戦争はユーゴスラビア解体から始まり、旧ソ連圏をカラー革命で制圧、ウクライナをクーデターで手に入れ、自立の道を歩み始めていたリビアを無法地帯に変え、そしてネオコンの予定通りにイラクを破壊、シリアを侵略、そしてイランを脅していますが、最終目標はロシアでしょう。イギリスの世界制覇計画を引き継いだアメリカはロシアを支配することが世界制覇のカギを握っていると考えています。おそらく、1991年12月の時点でアメリカの好戦派は世界制覇をほぼ実現したと考えたでしょうが、21世紀に入ってロシアは再独立、ネオコンの作成した日程表の通りにはいかなくなっています。それを元に戻すためにはロシアを屈服させるか破壊するしかありません。そのためにはロシアの戦略的パートナーになった中国も屈服させるか破壊する必要があります。アメリカはすでに経済活動が破綻、基軸通貨であるドルを発行する特権を利用、それを循環させる仕組みを作り上げて支配システムを維持しています。この循環システムが機能しなくなればアメリカの支配システムも機能しなくなりますが、ロシアと中国はドルを基軸通貨の地位から引きずり下ろそうとしているように見えます。それに対し、アメリカの支配層は巨大資本が国を支配する体制を築こうとしています。そうした体制を実現するために持ち出されたのがISDS(国家投資家紛争処理)条項で、それを含むTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)の3点セットを彼らは簡単にあきらめないでしょう。実際、安倍晋三政権はTPPに固執しています。巨大資本のカネ儲けにとって労働者の権利は不必要なわけで、安倍政権が「働き方改革関連法案」を成立させて裁量労働制を拡大、つまり労働環境の劣悪化を図るのは必然だといえるでしょう。そうした政策を後押ししてきたのが日本のマスコミでした。マスコミの姿勢は一貫しています。私的権力が国を上回る力を持つ体制を築く、つまりファシズム化の推進です。そうした方向へ世界を導くため、日本を含む西側の有力メディアは幻影を映し出してきましたが、それも限界が近づいています。インターネット上で検閲が強化されているのはそのためでしょう。世界は岐路に立っています。未来を切り開くためには事実を知ることが必要です。本ブログがその一助になればと願っています。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2018.02.27
ロシア軍による空爆はネオコンの想定になかった可能性が高い。アメリカの行動にロシアは刃向かわないという前提で動いてきたからだ。この前提は南オセチアを奇襲攻撃した際に崩れているのだが、考え方が修正されたようには見えない。全面核戦争を回避するためにロシア政府が自重している側面があり、それで高をくくっているとも考えられる。そこで、西側ではロシアの慎重な姿勢がアメリカの好戦派を増長させ、世界を危険な方向へ導いていると懸念する声がある。それでもロシアはさまざまな警告をしてきた。例えば、2015年10月5日にカスピ海の艦船から26基のカリブル巡航ミサイルを発射、全てのミサイルが約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で命中したとされている。ロシアの保有するミサイルにこうした能力があると思っていなかったアメリカ軍はショックを受けたと言われている。2015年11月24日にトルコ軍のF-16がロシア軍のSu-24を待ち伏せ攻撃で撃墜したが、ロシア軍機の撃墜をトルコ政府だけの判断で実行できるとは考え難く、アメリカ政府が許可していたと見る人は少なくない。ちなみに、撃墜の当日から翌日にかけてポール・セルバ米統合参謀本部副議長がトルコのアンカラを訪問していた。この撃墜でロシア軍が尻込みするとアメリカ側は考えたのかもしれないが、そういう展開にはならなかった。防空システムを強化するために中長距離用のS-300やS-400だけでなく、短距離用のパーンツィリ-S1を配備、また対戦車ミサイルTOWの攻撃に耐えられるT-90戦車を投入してきた。マッハ6から7で飛行、射程距離が280から400キロメートルの弾道ミサイルのイスカンダルもアメリカ軍にとって脅威だ。しかし、これらは兵器の性能の話。アメリカ軍は地上軍をシリア領内に侵入させ、基地を建設してきた。バラク・オバマ大統領はそうしたことを行わないと口にしていたが、まっかな嘘だった。アメリカ軍がシリア領内に建設した基地は14カ所、そのうち12カ所は北部、2カ所は南部だという。その一部にはイギリス軍、フランス軍、あるいはクルド系の武装勢力も使用しているようだ。また、ロシア軍に対する軍事的な圧力も強めている。例えば、昨年(2017年)9月19日、アル・ヌスラが戦闘漸減地帯をパトロールしていた29名のロシア軍憲兵隊を包囲、攻撃した。人質にとって脅しなどに使うつもりだったと見られているが、ロシア軍とシリア軍は航空機や特殊部隊による攻撃で襲撃側の戦闘員850名を死亡させ、多くの戦闘車両を破壊したという。これはロシア国防省の発表だが、ロシア側は攻撃の背後にアメリカの情報機関が存在していると明言している。それから間もない22日にイスラエル軍機がダマスカス近くを空爆、24日にロシア国防省はダーイッシュの陣地にアメリカ軍の特殊部隊が使う装甲車や装備が写っている衛星写真を公表、その地域をクルド系のSDFが安全に通過していることも明らかにした。同じ24日には油田地帯近くのデリゾールでロシア軍事顧問団のバレリー・アサポフ中将とふたりの大佐がダーイッシュの砲撃で死亡している。今年1月6日には地中海に面した場所にあるロシア軍の施設に対する攻撃があった。フメイミム空軍基地とタルトゥースにある海軍施設がそのターゲットで、13機の無人機(ドローン)が攻撃のために接近、そのうち7機はロシア軍の短距離防空システムのパーンツィリ-S1で撃墜され、残りの6機は電子戦兵器で無力化されている。13機のドローンは100キロメートルほど離れた場所から飛び立ち、GPSと気圧計を利用して事前にプログラムされた攻撃目標までのコースを自力で飛行、しかもジャミングされないような仕組みになっていた。攻撃の際、目標になったフメイミム空軍基地とタルトゥースの海軍施設の中間地点をアメリカの哨戒機P-8A ポセイドンが飛行していたこともあり、この攻撃はアメリカ軍、あるいはCIAによるものだと見られている。そして2月3日にロシア軍機Su-25が撃墜された。2月7日にはアメリカ中央軍が主導する部隊がデリゾール近くの油田地帯でシリア政府側の戦闘集団を空爆して多くの死傷者が出たと伝えられている。アメリカ側はロシア人を含む100名以上を殺したと主張、その犠牲者数は600名まで上昇したが、実態は死者数十名、そのうちロシア国籍の傭兵が5名程度。アメリが側は「反撃」だとしているが、状況から見て親シリア政府勢力からの攻撃はなかったようだ。アメリカ側はロシア軍に属さないロシア人を殺し、ウラジミル・プーチンに対する信頼にダメージを加えようとしたのだとみられている。ロシアでは今年3月18日に大統領選挙があり、6月14日から7月15日にかけてはサッカーのワールドカップが開催される。追い詰められているアメリカはこのタイミングで何かを仕掛けてくる可能性がある。(了)
2018.02.26
ロシア軍がステルス戦闘機のSu-57をシリアへ持ち込んだ。現段階で少なくとも4機は配備されたようだ。シリア北西部のイドリブでSu-25が2月3日にMANPADS(携帯型防空システム)で撃墜されたが、このシステムでSu-57を撃ち落とすのは困難。侵略勢力への供給量が増えているMANPADSへの対策上、ロシアは戦術を替えてくる可能性がある。アメリカ軍はMANPADSの供給を否定しているが、SDF(シリア民主軍)/YPG(クルド人民防衛隊)には提供していると伝えられている。クルド勢力と侵略部隊との連携が伝えられているので、クルドから流れていることは十分に考えられる。トルコ軍がアフリンへ侵攻したことからアメリカとクルドとの間に亀裂が入っているので今後の展開は流動的だが、今のところ両者は連携を維持しているだろう。また、軍が供給しなくてもCIAが渡している可能性があり、またアメリカと三国同盟の関係にあるイスラエルやサウジアラビアが関係していることもありえる。実戦テストを兼ねているだろうが、Su-57の配備にはMANPADS対策という意味も含まれているだろう。MANPADSを使ってSu-25を撃墜したと見られているジャブハト・アル・シャムはジャブハト・アル・ヌスラと呼ばれていた集団で、その前にはAQI(イラクのアル・カイダ)というタグもつけられていた。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)もこの集団から派生したのだが、組織が分裂したというより、アメリカが始めた別のプロジェクトに戦闘員を割り振ったと考えた方が良いかもしれない。アル・カイダは「ベース」を意味するが、ロビン・クック元英外相が指摘したようにCIAから軍事訓練を受けたムジャヒディンのコンピュータ・ファイル。基地と解釈すると誤解が生じる。CIAによる戦闘訓練は1970年代の終盤にジミー・カーター政権の大統領補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが考えた戦略に基づいて始められた。アメリカをはじめとする三国同盟がシリア侵略を始めた当時、サイクス-ピコ協定(オスマン帝国の領土分割などを定めた秘密協定)の中心だったイギリスとフランス、オスマン帝国の復活を夢見たトルコ、天然ガスのパイプライン建設をシリアに拒否されたカタールも侵略プロジェクトに参加、戦闘員の中にはそうした国々が別々の送り込んだ人も含まれていた。その侵略同盟からカタールやトルコが離脱したことから戦闘員も分かれ、ダーイッシュは分裂しているように見えている。アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュの支配地域を急速に縮小させ、侵略同盟を分裂させた最大の要因は2015年9月30日のロシア軍による軍事介入。シリア政府の要請の基づくもので、勝手に軍隊を入れてシリアのインフラを破壊し、住民を殺し始めた、つまり侵略したアメリカ軍とは根本的に立場が違う。(つづく)
2018.02.25
アメリカは2001年10月以降、「不朽の自由作戦」の旗印を掲げながら侵略戦争を続けてきた。その年の9月11日に引き起こされたニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)への攻撃に対する報復だとされているが、調査をする前に「アル・カイダ」というタグを振りかざし、証拠があれば容疑者を引き渡すというアフガニスタンを先制攻撃、存在しない大量破壊兵器を口実にしてイラクを先制攻撃、破壊と殺戮は今でも続いている。その「不朽の自由作戦」の一環としてアメリカは2002年1月からフィリピンでも軍事作戦(途中、不朽の自由作戦-フィリピンから自由の鷲作戦へ名称変更)を展開した。2015年2月に終了したことになっているが、植民地化という目的を達成するまで終えることはないだろう。2016年6月からフィリピンの大統領を務めているロドリゴ・ドゥテルテは前任者のベニグノ・アキノ3世と違い、アメリカの言いなりになってこなかった。中国を敵視する政策も軌道修正、ロシアに接近している。こうした行動がアメリカの支配層を怒らせたことは間違いないだろう。ドゥテルテによると、2016年9月に彼は情報機関からアメリカが彼を殺したがっているという報告を受けたという。2017年5月23日にフィリピン南部、ミンダナオ島のマラウィ市をダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)系の武装集団が制圧した。この地域は以前からダーイッシュが活発に動いていて、市内には500名程度の戦闘員がいると見られていた。こうした事態を受け、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領はミンダナオ島に戒厳令をしいた。このほか、東南アジアではインドネシア、マレーシア、タイなどでサラフィ主義者が活発に動き始め、ミャンマーでアウン・サン・スー・チー派から弾圧されているロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒の居住地へ潜り込み始めているとする話も伝わっていた。そのマラフィ市へアメリカ軍は特殊部隊を派遣した。アメリカ大使館はフィリピン政府から要請に基づていると説明したが、ドゥテルテ大統領はアメリカ側に支援を頼んでいないとしている。「テロリスト」を侵略の口実にするのはアメリカの常套手段。「不朽の自由作戦」の目的もそこにある。アメリカがフィリピンを植民地にしたのは20世紀の初頭。1899年から1902年にかけての侵略戦争を経て植民地化に成功したのだ。現地での略奪以上に重要だったのは中国侵略の拠点としての役割。言うまでもなく、アメリカはフィリピンへ「解放軍」として来たわけではない。このアメリカを幸徳秋水は帝国主義国の一つに挙げた。今も実態に変化はないのだが、「自由と民主主義」というタグをつけ、世界を我が物顔に闊歩している。行っていることは侵略、破壊、殺戮、略奪。昔と同じだ。現在、アメリカ軍は太平洋からインド洋をひとつの行動範囲と考えているが、そこでアメリカに従っているのはオーストラリア、インド、そして日本。オーストラリアはアングロ・サクソン系の国であり、インドの現政権はイスラエルと緊密な関係にある。アメリカはこの3カ国だけでなく、フィリピン、ベトナム、韓国を結びつけて「東アジア版NATO」を作り上げようとしていた。韓国のアメリカ離れはクーデターで軍事政権を樹立させない限り止まらないだろう。ベトナムはかつてアメリカに侵略戦争で破壊された国であり、エリートを籠絡できても全体を屈服させることは難しい。
2018.02.24
安倍晋三政権は「働き方改革関連法案」を成立させて裁量労働制を拡大しようと目論んでいるようだが、その正当性を示す根拠とされた調査データに「異常値」が見つかったのだという。その前には「不適切な比較データ」が明らかになっていた。法案を通すためにデータを改竄、あるいは捏造したということだろう。巨大資本に国を上回る権力を与えようというTPP(環太平洋連携協定)に執着している安倍政権は労働者から諸権利を奪おうとしてきたが、今回の法案もその一環に過ぎない。かつて日本でも人は助け合うべきだとされていた。宗教の世界でもそうした考えが基盤にあり、例えばカトリックは貧困層を助けることが神の意志に合致すると教え、仏教の場合は「喜捨」、イスラムでは「ザカート」や「サダカ」などを信者に求めている。キリスト教の聖典である新約聖書のマタイによる福音書やマルコによる福音書では、「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」と書かれていて、富を蓄積すること自体が良くないとされている。かつて、カトリックではイスラムと同じように、金利を取ることも禁止されていた。社会には少数の強者と多数の弱者が存在し、富は強者に集まる。宗教はそうした流れにブレーキをかけようとしている。ナショナリズムの考え方も似ている。コミュニズムの場合、強者が弱者を助けることはありえないと考え、革命によってその強者を排除し、強者を生み出さない仕組みを築くべきだとしている。しかし、マックス・ウェーバーによると、プロテスタンティズムの「禁欲」は「心理的効果として財の獲得を伝統主義的倫理の障害から解き放」ち、「利潤の追求を合法化したばかりでなく、それをまさしく神の意志に添うものと考えて、そうした伝統主義の桎梏を破砕してしまった。」(マックス・ウェーバー著、大塚久雄訳『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波書店、1989年)ローマ教皇庁の腐敗を批判してマルチン・ルターやジャン・カルバンたちは「宗教改革」を実行、禁欲を肯定し、金貸しを認めた。禁欲と強欲は紙一重だ。ジャン・カルバンらが唱える「予定説」によると、「神は人類のうち永遠の生命に予定された人びと」を選んだが、「これはすべて神の自由な恩恵と愛によるものであって、決して信仰あるいは善き行為」などのためではない(ウェストミンスター信仰告白)。つまり、人間にとって善行は無意味であり、自分が「選ばれた人間」だと信じる人びとは何をしても許されるということになる。これまで何度も書いてきたことだが、フランクリン・ルーズベルト大統領は1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っている:「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」このルーズベルトは企業の経済活動を規制し、労働者の権利を拡大しようした。最高裁を含む支配層のシステムはそうした政策に抵抗したが、それでも富裕層が望まない法律も作られている。1945年4月にルーズベルトが急死した後、支配層はニューディール派が残した遺産を潰してきた。ルーズベルトを絶対視するわけではないが、彼の果たした役割は評価する必要がある。
2018.02.23
アメリカ海軍は駆逐艦「カーニー」を黒海へ送み、駆逐艦「ロス」に合流させた。戦略的に重要な海域へ軍艦を送り込むという行為は、日本が1875年に江華島の近くで行ったことを連想させる。江華島は李氏朝鮮の首都を守る要衝だったが、そこへ測量名目で軍艦「雲揚号」を近づけて挑発、戦闘に発展している。そこから日本は日清戦争、閔妃惨殺、日露戦争へと進んでいった。ロシアとEUとの関係を断ち切り、自らの軍事的な支配地域を広げる目的でアメリカの好戦派は2014年2月22日、ウクライナでクーデターを成功させた。その際、手先として働いたのはネオ・ナチだった。それから間もない2014年4月10日、アメリカ軍は駆逐艦「ドナルド・クック」を黒海へ入れてロシア領海に接近させる。ロシアに対する威嚇のつもりだったのだろうが、4月12日に非武装のSu-24が12回にわたって艦船の近くを飛行してから雰囲気が変わる。14日にこの駆逐艦はルーマニアの港へ急遽入り、その後、ロシアの国境には近づかなくなったのだ。ロシアでの報道によると、Su-24は「キビニECMシステム」を搭載、ドナルド・クックのイージス・システムを麻痺させたという。アメリカがロシアを威嚇、屈服させようとする理由はいくつかある。アメリカの支配層は世界戦略をイギリスに学んだ。そのイギリスではロシア支配を世界制覇の核心と位置づけている。世界の覇者となるためには、広大な領土、豊富な天然資源、そして多くの人口を抱えるロシアを制圧しなければならないということだ。この戦略は日露戦争が勃発する前年、1904年にイギリスでハルフォード・マッキンダーという学者が発表、ズビグネフ・ブレジンスキーもその理論に基づいて戦略を立てていた。そのロシアを1991年12月に制圧、自分たちは世界の覇者になったとネオコンは考えた。残された国々の中でアメリカへの従属度の低い国を殲滅、潜在的ライバルが実際のライバルへ成長することを阻止するための戦略を国防総省のDPG草案という形で1992年2月に作成した。その中心がポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)だったことから、ウォルフォウィッツ・ドクトリンと呼ばれている。ところが、そのロシアをウラジミル・プーチンが再独立させ、ネオコンの戦略は破綻する。それをウォルフォウィッツ・ドクトリン作成時に戻そうとしてアメリカでは反プーチン・キャンペーンが続けられてきた。ロシア再独立以外にもネオコンの思惑が外れた出来事はある。例えばウクライナのクーデター。ロシアとEUとの関係を壊すという点では成功だったかもしれないが、その結果、ロシアは国内の「西側憧憬派」を押さえ込み、中国へ向かったのだ。アメリカからエネルギー資源の輸送を妨害されていた中国がロシアに目を向けるのも必然だった。アメリカ支配層の野心を警戒して両国は急接近、今では戦略的パートナーだ。アメリカは基軸通貨であるドルを発行する特権で生きながらえているゾンビ国家だが、その特権をロシアと中国は揺るがしている。ロシアと中国を屈服させるか破壊しないとアメリカ支配層に未来はない。2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントンを担いでいた好戦派はロシアや中国を屈服させるために軍事的な恫喝を目論んでいた。逆に、ロシアとの関係修復を訴えたのがドナルド・トランプだ。その選挙でクリントンが敗北、それ以来好戦派はロシア政府が選挙に介入したと叫び続けている。それが根拠のない主張だと言うことを本ブログでも繰り返し書いてきた。2月16日にロバート・ムラー特別検察官は13名のロシア人とロシアの3機関を起訴すると発表したが、それはロシア人が選挙に影響を及ぼしていないことを示している。それでも一部の政治家や有力メディアはロシアによる選挙介入を主張、それをアメリカに対する戦争行為であり、パール・ハーバーや9/11に匹敵する行為だとしている。言うまでもなく、パール・ハーバーや9/11は開戦の理由になった。イラクを先制攻撃したときもアメリカの好戦派は大量破壊兵器という作り話を有力メディアに宣伝させている。アメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと同国のモシェ・ダヤン将軍は語ったそうだが、ネオコンは本当に狂ったようにも見える。そこまで追い詰められているということだ。
2018.02.22
シリアのバシャール・アル・アサド政権が自国民に対して毒ガスを使ったことを示す証拠はないとジェームス・マティス国防長官は語っている。本ブログでは繰り返し書いてきたように、シリア政府が化学兵器を使った証拠はなく、使う理由もない。それに対し、使ったのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心とする侵略勢力が送り込んだ反政府軍だとする調査報告、分析などは存在する。ただ、興味深いのは西側の有力メディアであるニューズウィーク誌がマティスの話を伝えたこと。この件に限らないが、ここにきて西側支配層の内部で方針の対立が生じているように見える。三国同盟がシリア侵略を始めたのは2011年3月のことだが、当初、西側の政府や有力メディアはアサドという「独裁者」がシリア国民の「民主化運動」を暴力的に弾圧、内戦が始まったと説明していた。そうした主張の根拠とされたのがシリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)の情報。デイエムの発信する情報のいかがわしさは2012年3月1日に発覚している。この日、ダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子が流出したのだ。つまり彼の「現地報告」はヤラセだった。SOHRはラミ・アブドゥラーマン(本名オッサマ・スレイマン)がイギリスで個人的に設置した団体。団体といっても事実上、スタッフはひとりで、情報源は不明。この人物は2000年にシリアからイギリスへ移住、シリア侵略が始まった2011年にはCNNが伝えたところによると、ウィリアム・ヘイグ元英外相とシリア反体制派の代表として会っている。米英の情報機関と連携していると推測する人もいる。西側の宣伝では2011年3月にそうした市民の蜂起があり、多くの人々が殺されたことになっているのだが、2010年からシリアで活動を続けているベルギーの修道院のダニエル・マエ神父によると、そうした蜂起はなかった。2012年5月にホムスで住民が虐殺されるると、反政府勢力や西側の政府やメディアはシリア政府軍が実行したと宣伝、これを口実にしてNATOは軍事侵攻を企んだが、宣伝内容は事実と符合せず、すぐに嘘だとばれてしまう。その嘘を明らかにしたひとりが現地を調査した東方カトリックの修道院長だった。その修道院長の報告をローマ教皇庁の通信社が掲載したが、その中で反政府軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を殺したとしている。その修道院長は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。こうした状況の中、バラク・オバマ政権は「穏健派」を支援していると主張していたが、アメリカ軍の情報機関DIAはこれを否定する報告を2012年8月にホワイトハウスへ提出している。反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しないというわけだ。また、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実のものになった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がマイケル・フリン中将だ。DIAが穏健派の存在を否定する報告をホワイトハウスに出した2012年8月、バラク・オバマ大統領はNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言している。2012年12月になると国務長官だったヒラリー・クリントンがこの宣伝に加わり、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると主張する。翌年の1月になると、アメリカ政府はシリアでの化学兵器の使用を許可、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させるというプランが存在するとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。そして2013年3月、ダーイッシュがラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はシリア政府を非難したが、この化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出、5月には国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。コントラの麻薬取引を明るみに出したことで有名なジャーナリスト、ロバート・パリーによると、4月6日にポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していたと彼の情報源は語り、その情報を知った上でトランプ大統領はロシアとの核戦争を招きかねない攻撃を命令したという。6月25日には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ話を記事にしている。化学兵器の使用にアサド政権は無関係だとするCIAの報告は無視されたということだ。イラクを先制攻撃する前、アメリカやイギリスは大量破壊兵器の宣伝をしていた。その当時から根拠がないとする批判はあったが、強引に押し切って軍事侵攻している。侵略、破壊、殺戮の果てに大量破壊兵器の話は嘘だということを侵略の責任者も認めざるをえなくなるが、その嘘に同調していた人々の相当部分は反省していないように見える。
2018.02.21
シリア北西部のアフリンでトルコ軍からの攻撃を受けているクルド勢力はシリア政府軍に救いを求め、受け入れられたと伝えられている。当初からシリア政府はクルドをシリア人として扱っていたので不自然な流れではないが、クルド勢力はアメリカ軍と手を組み、政府軍と戦ってきた。アメリカにとって戦略的に重要な位置にあり、NATOの一員であるトルコにアメリカが強く出られないことからクルドはシリア政府へ接近したようだ。トルコ軍がシリア北西部のアフリンへの空爆を始めたのは1月20日のこと。地上ではトルコ系の武装勢力が軍事侵攻してクルド系部隊と戦闘を始めている。そのひとつの切っ掛けはアメリカの動き。アメリカはシリア北部、トルコとの国境近くに3万人規模のシリア国境軍を編成するとしたのだが、その主体はSDF(シリア民主軍)/YPG(クルド人民防衛隊)、つまりトルコ政府がテロリストだとしている勢力だ。そのクルド勢力に対し、アメリカがMANPADS(携帯型防空システム)を提供しているとイスラエルでは伝えられている。攻撃が始まる2週間前、1月6日には地中海に面した場所にあるロシア軍が使用しているフメイミム空軍基地とタルトゥースにある海軍施設が13機の無人機(ドローン)で攻撃された。そのうち7機はロシア軍の短距離防空システムのパーンツィリ-S1で撃墜され、残りの6機は電子戦兵器で無力化されている。13機のドローンは100キロメートルほど離れた場所から飛び立ち、GPSと気圧計を利用して事前にプログラムされた攻撃目標までのコースを自力で飛行、しかもジャミングされないような仕組みになっていた。攻撃の際、目標になったフメイミム空軍基地とタルトゥースの海軍施設の中間地点をアメリカの哨戒機P-8A ポセイドンが飛行していたこともあり、この攻撃はアメリカ軍、あるいはCIAによるものだと見られている。シリア北西部のイドリブで2月3日にロシア軍機Su-25が撃墜された。この攻撃機を撃ち落としたのはMADNADSだと見られ、アメリカ軍がクルドへ供給したものがイドリブの武装勢力の手に渡った可能性が高い。アメリカの軍、あるいは情報機関が黒幕であるとも見られている。なお、脱出したパイロットは地上での戦闘を経て死亡、攻撃に関わったと見られるアル・カイダ系のジャブハト・アル・シャム(ジャブハト・アル・ヌスラ)の戦闘員約30名はロシア軍が巡航ミサイルで殲滅されたという。2月7日にはアメリカ中央軍が主導する部隊がデリゾール近くの油田地帯でシリア政府側の戦闘集団を空爆して多くの死傷者が出たと伝えられている。アメリカ側はロシア人を含む100名以上を殺したと主張、その犠牲者数は600名まで上昇したが、実態は死者数十名、そのうちロシア国籍の傭兵が5名程度のようだ。デリゾールの東に広がる油田地帯へシリア政府側が近づくとアメリカ軍が登場してくる。2017年9月17日にもシリア政府軍をアメリカ主導の連合軍がF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で攻撃、80名以上の政府軍兵士を殺した。その直後、28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊してシリア政府側の進撃を止めようともしている。17日のケースでは、空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。9月24日にはロシア軍事顧問団を率いるバレリー・アサポフ中将とふたりの大佐がダーイッシュの砲撃で死亡しているが、中将らがいる正確な場所がアメリカ側から伝えられていたとも言われている。それに対し、10月31日には地中海にいるロシア軍の潜水艦から発射されたミサイルがデリゾールにあったダーイッシュの拠点を攻撃、破壊したという。その間、2017年9月20日にはイドリブの州都に入ってパトロールしていたロシア軍憲兵29名の部隊をアル・カイダ系のアル・ヌスラが戦車なども使って攻撃、包囲するという出来事があった。その作戦はアメリカの情報機関/特殊部隊が指揮していたと言われている。戦闘は数時間続き、その間にロシア軍の特殊部隊スペツナズが救援に駆けつけ、Su-25も空爆、反政府軍の部隊は全滅、その戦闘員約850名が死亡したという。その際にアメリカの特殊部隊を壊滅させ、死亡した隊員をロシアの特殊部隊員が火葬にしたとも伝えられている。手先のダーイッシュやアル・カイダ系武装集団の敗北が見通されるとアメリカ軍は自らがシリアへ侵入、基地を建設してきた。ジム・マティス国防長官はダーイシュを口実にしてシリア占領を続ける意思を示している。トルコ政府によるとアメリカ軍が建設した基地の数は13だ。また、新たな武装勢力「北部シリア軍」を編成、戦闘員をそこで軍事訓練し、出撃基地としても使われているとロシアやイランは主張している。その武装勢力にはSDF(シリア民主軍)やYPG(クルド人民防衛隊)だけでなく、三国同盟系武装勢力に所属していた戦闘員も含まれているという。アメリカ軍はクルドを利用してシリア領内に居座るつもりだが、そのクルドがシリア政府と手を組むと独立を放棄、アメリカ軍にとって都合の悪い状況になりかねない。イラクでもシリアの影響下にあると見られていたクルド勢力の内部で反主流派が力を持ち、イラク政府と連携してクルドの独立国建設を阻止している。また、トルコの現政権とアメリカ政府との関係が元通りになる可能性は小さい。クーデター未遂の傷が簡単に癒えるとは思えず、ギュレン運動の問題もある。
2018.02.20
13名のロシア人とロシアの3機関を起訴するとロバート・ムラー特別検察官は2月16日に発表したが、起訴状の中身は空っぽと言える代物だった。NSA史上最高の分析官のひとりと言われているウィリアム・ビニーが早い段階から指摘しているように、もしロシアゲートなるものが存在しているならNSAは証拠を持っているので調査は不要、つまり特別検察官を任命する必要はなかった。つまり、ムラーが特別検察官になった段階でこの疑惑がインチキだと言うことははっきりしていたと言える。ロシアゲート事件はインチキだが、アメリカ政府は世界中で選挙に介入してきた。それだけでなく軍事侵略、軍事クーデター、1980年代からは傭兵を使った侵略を繰り返している。第2次世界大戦後に行われた有名なクーデターだけでも1953年のイラン、54年のグアテマラ、60年のコンゴ、64年のボリビア、ブラジル、66年のガーナ、71年のボリビア、73年のチリなどがすぐ頭に浮かぶ。そのほか、1961年には亡命キューバ人を使ってキューバへの軍事侵攻を試み、79年から89年にかけてはアフガニスタンで秘密工作を実施、81年から87年にかけてはニカラグアの革命政権を倒すために前政権の戦闘員を使ってコントラを編成して攻撃している。1960年代から80年代にかけてのイタリアではCIAを黒幕とする極左を装った爆弾攻撃(テロ)が繰り返された。その工作を実行したのがNATOの秘密部隊のひとつグラディオだ。このイタリアは戦略上、重要な位置を占めているのだが、コミュニストの影響力が強い国でもあった。第2次世界大戦中、西ヨーロッパでファシストと戦ったのはレジスタンスで、その中心はコミュニスト。そうしたこともあり、1948年に予定されていたイタリアの総選挙ではコミュニストが優位だと見られていた。そこでアメリカ政府は総選挙に介入している。その際、創設から間もないCIAが重要な役割を果たした。その工作資金1000万ドルを洗浄するため、無数の銀行口座を経由させている。その資金はドイツがヨーロッパで略奪した財宝、いわゆるナチゴールドの一部が使われたという。ローマ教皇庁のフランシス・スペルマン枢機卿によると、アメリカ政府は密かに、「イタリアにおける多額の『裏金』をカトリック教会に流していた」。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌之訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年)このスペルマンの高弟だというブルーノ・ビッター(ビッテル)という神父が日本で活動していた。朝日ソノラマが1973年に出した『マッカーサーの涙/ブルーノ・ビッテル神父にきく』によると、GHQ/SCAPの内部で高まっていた靖国神社を焼き払えとい意見を押さえ込んだのがビッターだという。ビッターは日本で闇ドルを扱っていたことでも知られ、その資金がリチャード・ニクソンを副大統領にするために使われたとも言われている。副大統領になった最初の年、1953年にニクソンは日本を訪れている。月刊誌「真相」の1954年4月号によると、日本でニクソンはバンク・オブ・アメリカ東京支店の副支店長を大使館官邸に呼びつけて「厳重な帳簿検査と細かい工作指示を与え」ているが、この会談にビッターも同席していたという。その会談の後、霊友会の闇ドル事件にからんでビッターは逮捕された。外遊した同会の小谷喜美会長に対し、法律に違反して5000ドルを仲介した容疑だった。当時の日本人エリートは海外旅行する際、日本カトリック教団本部四谷教会のビッターを介して闇ドルを入手していたとされている。この事件を掘り下げていくとCIAの秘密工作やアメリカ政界の暗部が浮かび上がる可能性がある。そこで、ビッターが逮捕された際に押収された書類はふたりのアメリカ人が警視庁から持ち去り、闇ドルに関する捜査は打ち切りになってしまった。秘密裏に犬養健法相が指揮権を発動したと言われている。オーストラリアで労働党のゴウ・ウイットラム政権がアメリカに潰されたことも知られている。1972年12月の総選挙で労働党が大勝したことで成立したのだが、ウイットラム首相は自国の対外情報機関ASISに対し、CIAとの協力関係を断つように命令した。1973年9月にチリで実行されたオーグスト・ピノチェトのクーデターで社会党のサルバドール・アジェンデ政権を倒しているが、ジャーナリストのデイビッド・レイによると、チリでASISがCIAと共同でアジェンデ政権を崩壊させる工作を展開していたことをウイットラムが知っていたことを示す文書が存在するという。(David Leigh, "The Wilson Plot," Pantheon, 1988)1973年3月にウイットラム政権の司法長官は情報を政府に隠しているという理由で、対内情報機関ASIOの事務所を捜索、翌年8月には情報機関を調査するための委員会を設置している。(前掲書)こうした動きに危機感を抱いたCIAは1975年11月、イギリス女王エリザベス2世の総督、ジョン・カー卿を動かし、ウイットラム首相を解任してしまう。ジョナサン・ウイットニーによると、カーは第2次世界大戦中の1944年、オーストラリア政府の命令でアメリカへ派遣され、CIAの前身であるOSSと一緒に仕事をしている。大戦後はCIAときわめて深い関係にあった。(Jonathan Kwitny, "The Crimes of Patriots," Norton, 1987)
2018.02.19
ロバート・ムラー特別検察官は2月16日、13名のロシア人とロシアの3機関を起訴すると発表した。2016年にアメリカで実施された大統領選挙へ介入、ドナルド・トランプを勝たせようとしたという容疑だ。司法省にしろ、FBIにしろ、ムラーにしろ、いわゆるロシアゲートが事実だとする説得力のある根拠は示してこなかった。反対に、司法省やFBIの不正行為を示す事実が明るみに出始めている。ロシアゲート人脈をたどるとクリストファー・スティールなる人物が出てくる。下院情報委員会でアダム・シッフ議員が大統領選挙にロシアが介入したとする声明したのは昨年(2017年)3月だが、その前からFBIの幹部だったブルース・オーはスティールと接触していた。このスティールを雇ったフュージョンGPSという会社は同じ件でブルース・オーの妻、ネリー・オーも雇っている。ネリーはCIAの仕事をしていた人物。このフュージョンの雇い主は事実上、DNC(民主党全国委員会)とヒラリー・クリントンだ。スティールは元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーだが、FBIの協力者だったことも判明している。つまり、ブルース・オーの接触には関係なくロシアゲートには最初からFBIが絡んでいる。FBIがロシアゲートをでっち上げた黒幕だと言うこともできるだろう。少なからぬ人が指摘しているように、アメリカにはAIPACという強力なイスラエル・ロビーが存在し、アメリカの選挙に大きな影響を及ぼしている。このロビー団体がイスラエルの情報機関モサドと結びついていることも知られている。大統領選挙の際、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプは自分たちがイスラエルの支持者だということをアピールしていた。クリントンやトランプだけがイスラエルの影響下にあるわけではない。それを示す一例が「1995年エルサレム大使館法」という法律。エルサレムをイスラエルの首都だと承認し、エルサレムにアメリカ大使館を設置すべきだとしている。昨年(2017年)6月5日に上院はその法律を再確認する決議が賛成90、棄権10で採択された。この決議ではバーニー・サンダースも賛成した。アメリカが他国の内政に干渉し、選挙を操作してきた。第2次世界大戦後、最初に介入した選挙は1948年のイタリア。その総選挙ではコミュニストが有力視されていたが、そうした状況に危機感を持ったアメリカ政府は大規模な工作を実施した。その資金にはドイツから押収した「ナチゴールド」の一部が使われたと言われている。当時アメリカの長期戦略立案に関する第一人者であったジョージ・ケナンは、イタリアの選挙結果が我々の思惑どおりにいかなければフォッジア油田をアメリカ軍が直接占領すると言い切っていた。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌之訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信、1994勿論、選挙への介入はこのほかにもあり、それが失敗して軍事クーデターで政権を倒すことも珍しくない。2014年2月にウクライナでアメリカが実施したクーデターではネオ・ナチが手駒として使われている。その前年の12月にアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補は米国ウクライナ基金の大会で演説、ソ連が消滅した1991年からウクライナへ50億ドルを投資したと発言している。ちなみに、ヌランドが結婚した相手はネオコン/シオニストの大物、ロバート・ケーガン。アメリカはロシアの選挙にも介入しているが、そのために手先になるグループを作ってきた。ボリス・エリツィン時代からの流れで経済分野には親アメリカ派が多いが、それ以外にメディアやNGOにも資金を提供、手先として利用している。
2018.02.17
韓国へ乗り込む前に日本へ立ち寄ったマイク・ペンス米副大統領は2月7日に安倍晋三首相と会談、その直後にアメリカ政府は朝鮮に対する非情で攻撃的な経済制裁を近いうちに発表すると語ったのだが、同じ日にジェームズ・マティス国防長官は朝鮮半島の問題に関し、外交的に解決する意向をホワイトハウスでの記者会見で示している。ペンスは帰国してから朝鮮側が「話したいと言うなら話す」と軌道修正。トランプ大統領とペンス副大統領との間にすきま風が吹き始めているようだ。勿論、ネオコンもホワイトハウスに大きな影響力を保持している。その象徴的な人物がデビッド・ペトレイアス元CIA長官の弟子と言われるH. R. マクマスター国家安全保障補佐官。シリアやリビアに対する侵略が始まった当時のCIA長官がペトレイアスであり、国務長官がクリントンで、ペトレイアスはネオコンだ。また、ダナ・ローラバッカー下院議員によると、昨年8月に同議員はロンドンのエクアドル大使館でWikiLeaksのジュリアン・アッサンジと会談、リークされた電子メールの情報源がロシアでないことを示す決定的な情報を提供する用意があると聞かされた。この情報をジョン・ケリー大統領首席補佐官(ジョン・ケリー元国務長官とは別人)に伝えたのだが、この情報はトランプ大統領へ知らされていない。アメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスは2017年4月6日、59機の巡航ミサイル(トマホーク)をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、少なくとも数機は目標へ到達したという。その2日前、4月4日に政府軍が化学兵器を使用、その報復だということだったが、シリア政府軍は化学兵器を2013年に廃棄、その後、そうした兵器を保有しているのはアメリカが支援してきた反シリア政府軍だけ。ジャーナリストの故ロバート・パリーによると、4月6日の早朝にマイク・ポンペオCIA長官はドナルド・トランプ大統領に対し、シリア政府側は化学兵器を使用していないと説明している。空爆の前、アメリカ側へ通告があり、アメリカ軍もCIAも状況を詳しく知っていた。6月25日にはジャーナリストのシーモア・ハーシュも同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。その情報が何者かによって現地のアル・カイダ系武装集団へ伝えられたと推測する人もいる。ところで、軍事的な威嚇から話し合いへ流れを変える上で韓国の文在寅大統領が重要な役割を果たしたように見える。例えば、昨年(2017年)12月に慰安婦をめぐる問題の合意に疑問があることを明らかにしてアメリカが戦争をしにくい環境を作り、1月4日には文大統領がドナルド・トランプ米大統領と電話で会談してオリンピック期間中に米韓合同軍事演習を行わないことを認めさせ、オリンピックでは金與正(金正恩の妹)との友好的な関係を演出しているのだ。1997年に傭兵会社のブラックウォーター(2009年にXE、11年にアカデミへ名称変更)を創設したエリック・プリンスとペンスは親しい。プリンスは海軍の特殊部隊SEAL出身で、熱心なキリスト教原理主義者(キリスト教系カルト)として知られている。ペンスとプリンスを結びつけているのは宗教のようだ。トランプ大統領はクシュナー親子やカジノ経営者のシェルドン・アデルソンを介してイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と結びついている。トランプもペンスも親イスラエル派。ペンスは2010年にイスラエルの核兵器について聞かれた際、質問に答えずイスラエルは大切な同盟国だと繰り返した:「イスラエルがわれわれの最も大切な同盟国だということを知っています。そして、イスラエルの自衛権、われわれが自分を守る行動をとるように、彼らが自国を守る必要からそうした行動をとることを私は強く支持します。」しかし、両者の戦略は同じでなく、後ろ盾も違う。昨年(2017年)3月14日にWikiLeaksのジュリアン・アッサンジはTwitterで、ペンス副大統領を大統領にする計画が推進中だと書いていた。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されて大統領になったリンドン・ジョンソン、ウォーターゲート事件で失脚したリチャード・ニクソンを引き継いだジェラルド・フォードと同じパターンだ。アッサンジによると、こうした動きをヒラリー・クリントンは歓迎、水面下で支援しているともいう。ペンスの動きは予想可能で、打ち負かすことができると判断していたようだ。ペンスはこうした情報を「ばかげている」と否定していた。朝鮮半島の問題はアメリカと中国との問題にほかならない。そこへ中国と戦略的パートーナーになったロシア、アメリカの属国で侵略の拠点になる「空母」と認識されている日本が絡んでくる。安倍政権は朝鮮半島の軍事的な緊張を高めたがっているが、それは中国やロシアとの戦争に日本が参加することを意味している。その中国が進めている長期的な戦略、一帯一路の警備を担当することになったFSG(フロンティア・サービス・グループ)はエリック・プリンスが新たに香港で創設した会社で、新疆ウイグル自治区に拠点を建設するという。イラク侵略やウクライナのクーデターに関与しているプリンスの会社を中国が雇うことに疑問を持つ人は少なくない。アル・カイダ系武装集団などを中国国内へ送り込む拠点になると見られている新疆ウイグル自治区にプリンスの会社が入り込むのも不気味だ。プリンスの友人、ペンスは中国を威圧する発言をした。中国が崩れるとしたら、この辺からではないかと推測する人もいる。="2">
2018.02.16
朝鮮に対し、アメリカは「鼻血を流す」程度の先制攻撃を計画しているという話が流れている。核兵器を開発していることが攻撃を目論む理由だということになっているが、アメリカは核兵器を保有しているからといって攻撃することはない。そのうえ、アメリカにとって朝鮮は東アジアを不安定化する上で重要な国だ。ジャーナリストのF・ウィリアム・イングダールによると、CIAの幹部でエール大学時代からジョージ・H・W・ブッシュと親しかったジェームズ・R・リリーは、もし朝鮮が存在しなかったなら、東アジアに第7艦隊を置いておくためにそうした国を作る必要があったと彼に語ったという。ところで、現在、核兵器を保有していると言われている国は9カ国ある。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、そして朝鮮。アメリカの情報機関で分析を担当していた人物によると、日本が核兵器を開発中だとCIAは確信している。核弾頭を保有している可能性も否定はできない。第2次世界大戦、日本でも核兵器の開発が進められていたことが知られている。理化学研究所の仁科芳雄を中心とした陸軍の二号研究と海軍が京都帝大と検討していたF研究だ。陸軍は福島県石川郡でのウラン採掘を決め、海軍は上海の闇市場で130キログラムの2酸化ウランを手に入れて1944年には濃縮実験を始めたという。1945年に入るとドイツは約540キログラムの2酸化ウランを潜水艦(U234)で運ぼうとしたが、アメリカの軍艦に拿捕されてしまう。日本側は知らなかったようだが、アドルフ・ヒトラーの側近だったマルチン・ボルマンは潜水艦の艦長に対し、アメリカの東海岸へ向かい、そこで2酸化ウランを含む積み荷をアメリカ海軍へ引き渡すように命令していたという。このUボートに乗り込んでいた日本人士官は自殺、積み荷はアメリカのオーク・リッジ国立研究所へ運ばれたとされている。(Simon Dunstan & Gerrard Williams, “Grey Wolf,” Sterling, 2011)戦後、1964年に中国が初めて核実験を実施すると、佐藤栄作政権は核武装への道を模索(Seymour M. Hersh, “The Price of Power”, Summit Books, 1983)、65年に佐藤首相がアメリカを訪問してリンドン・ジョンソン大統領と会談した際、「個人的には中国が核兵器を持つならば、日本も核兵器を持つべきだと考える」と伝えている。(NHK「“核”を求めた日本」2010年10月3日)CIAなどが核兵器開発の中心になっていると疑っていた「動力炉・核燃料開発事業団(現在は日本原子力研究開発機構)」が設立されたのは1967年のこと。1969年に日本政府は西ドイツ政府と核兵器に関して秘密裏に協議、この年に成立したリチャード・ニクソン政権で大統領補佐官に就任したヘンリー・キッシンジャーは彼のスタッフに対し、日本もイスラエルと同じように核武装をすべきだと語っていたという。(Seymour M. Hersh, “The Samson Option,” Random House, 1991)ジャーナリストのジョセフ・トレントによると、東電福島第一原発で炉心がメルトダウンするという過酷事故を引き起こした2011年3月当時、日本には約70トンの核兵器級プルトニウムを蓄積していたという。そうした状況を生み出す大きな節目になったのが1987年のアメリカにおける予算。1972年からアメリカではCRBR(クリンチ・リバー増殖炉)計画が進められていたのだが、77年に大統領となったジミー・カーターの政策で計画は中止になる。1981年から大統領を務めたロナルド・レーガンはこの計画を復活させるが、87年に議会は予算を打ち切ってしまう。そこで登場してくるのが日本の電力会社。その際、日本側から核兵器に関する技術を要求、それは受け入れられた。中でも日本人が最も欲しがっていたサバンナ・リバーにある高性能プルトニウム分離装置に関する技術も入手する。小型遠心抽出機など関連する機器は東海再処理工場のRETF(リサイクル機器試験施設)へ送られている。この施設では高速増殖炉の使用済み核燃料を再処理し、兵器級プルトニウムを取り出すことが可能。また日本から毎年何十人もの科学者たちがクリンチ・リバー計画の関連施設を訪れ、ハンフォードとサバンナ・リバーの施設へ入っている。ところで、1945年4月に急死したフランクリン・ルーズベルト大統領の後任として副大統領から昇格したハリー・トルーマンは中国に国民党政権を樹立するつもりだったが、大方の予想を裏切る形でコミュニストが勝利してしまう。1949年1月に解放軍は北京に無血入城、コミュニストの指導部も北京に入りし、5月には上海を支配下においた。中華人民共和国が成立するのはその年の10月だが、そのときに天安門広場でコミュニストの幹部を一気に暗殺し、偽装帰順という形で各地に配置した軍隊に蜂起させて中国を制圧しようという計画があった。この計画は失敗に終わるが、翌年の1950年3月にアメリカの破壊工作(テロ)部隊のOPCと国民党軍がビルマ(現在のミャンマー)の一部を占領、その年の6月に朝鮮戦争が勃発した。実は、戦争勃発の3日前、アレン・ダレスの兄であるジョン・フォスター・ダレスが朝鮮半島から日本へわたり、吉田茂と会談した後にニューズウィーク誌の東京支局長だったコンプトン・パケナムの家で夕食会に参加している。日本側から出席したのは大蔵省の渡辺武、宮内省の松平康昌、国家地方警察企画課長の海原治、外務省の沢田廉三だ。そして1950年10月にOPCはCIAに吸収され、51年1月にはアレン・ダレスが破壊活動担当の副長官としてCIAへ入る。1952年8月にOPCを中心に計画局が設置され、53年2月にダレスはCIA長官に就任した。その間、1951年4月にCIAの顧問団に率いられた国民党軍約2000名が中国へ軍事侵攻、一時は片馬(ケンマ)を占領した。翌年の8月にも国民党軍は中国に侵攻して国境から約100キロメートルほど進んだが、この時も人民解放軍の反撃で失敗に終わった。その後もアメリカは中国支配を目論んでいる。中国との関係修復に乗り出したリチャード・ニクソン大統領はスキャンダルで失脚、1980年代に中国は新自由主義を導入してアメリカ支配層の影響下に入ったと見られていたが、ネオコンの世界制覇プランを見てロシアへ接近、今では戦略的パートナーになった。アメリカは基軸通貨を発行する特権で支配システムを維持している国だが、その特権が中国とロシアによって揺さぶられている。世界の覇者になるという1992年2月に立てられた計画に執着するアメリカの支配層としては、中国とロシアを屈服させるか破壊するしかない。ソ連の消滅とロシアの属国化を受けてネオコンは1992年の計画を立てたのだが、21世紀に入ってロシアは独立した。それでも軍事力で脅せば屈服する、アメリカが軍事力を行使してもロシアや中国は出てこないという前提でネオコンは動いた。1991年1月にアメリカ軍を主力とする軍隊がイラクを攻撃したが、その際にソ連軍が出てこなかったことから、そうした考えを持つようになったようだ。その後、2003年3月にアメリカ主導軍はイラクを先制攻撃、サダム・フセインを排除しているが、この時もロシアは出てこなかった。そして2008年8月にアメリカやイスラエルを後ろ盾とするジョージア(グルジア)が南オセチアを奇襲攻撃する。この時もロシア軍は出てこないと思ったのだろうが、実際は猛烈な反撃でジョージア軍は粉砕された。おそらくそれ以上にアメリカの好戦派がショックを受けたのが2015年9月のシリアへのロシア軍の介入。しかもアメリカが思っていたより兵器の能力がかなり高かった。朝鮮半島では中国がアメリカに対し、朝鮮への先制攻撃は許さないと警告している。「鼻血を流す」程度なら大丈夫だというのはアメリカ側の希望的観測。現実はそうした推測通りに展開してこなかったが、ネオコンは最初の思い込みから逃れられないようだ。韓国政府が軍事的な緊張を緩和させようと動いているのは当然。そうしたことに異を唱える隣人がいるとするならば、その人は正気でないのだろう。
2018.02.15
ウラジミル・プーチン露大統領が公式行事をキャンセルした。風邪を引いたと説明されているが、シリア情勢が緊迫しているからではないかと推測する人もいる。そのシリアでは1月6日にロシア軍が使用しているフメイミム空軍基地とタルトゥースにある海軍施設を13機の無人機(ドローン)が攻撃を仕掛けている。その際、目標になった両施設の中間地点をアメリカの哨戒機P-8A ポセイドンが飛行していた。2月7日にはアメリカ中央軍が主導する部隊がデリゾール近くの油田地帯でシリア政府側の戦闘手段を空爆して多くの死傷者が出ている。アメリカ側は100名以上を殺したと主張、ロシア側は25名が負傷したことを承知していると語っている。実態は不明だが、死者数は数十名にのぼり、その中には相当数のロシア人傭兵が含まれているともいう。アメリカ側はロシア人の犠牲者数を大きく見せたがっている。ロシア人の犠牲者を出すことでプーチンの責任が問われる環境を作り、3月に予定されている大統領選挙に影響を及ぼそうとした可能性もある。デリゾールでの攻撃から間もない2月10日、ゴラン高原のイスラエル占領地域へ入ったイランのドローン(無人機)を撃墜したとイスラエル軍がに発表した。その直後にイスラエル軍はシリア領内を攻撃したが、その攻撃に参加したF-16をシリアの防空システムが少なくとも1機撃墜した。それを受けてイスラエル軍は激しいミサイル攻撃をを実施したが、思惑通りには進まなかったと言われている。一方、今年(2018年)1月20日からトルコ軍はシリア北西部のアフリンにいるクルド勢力に対する攻撃を開始、アメリカはクルドへ高性能兵器を供給して反撃させているようだ。ここにきて噂されているのは、ジャブハト・アル-ヌスラ(AQI、最近ではジャブハトファター・アル-シャム)とシリア市民防衛(白ヘル)がイドリブで化学兵器を使用するという話。その責任はシリア政府に押しつけ、アメリカ軍が本格的な戦闘を始める可能性があるということだろう。マイク・ペンス米副大統領や安倍晋三首相のような人々によって軍事的な緊張が高められていた朝鮮半島では、韓国の文在寅政権によって流れに変化が生じている。昨年(2017年)12月に慰安婦をめぐる問題の合意に疑問があることを明らかにしてアメリカが戦争をしにくい環境を作り、1月4日には文大統領がドナルド・トランプ米大統領と電話で会談、オリンピック期間中に米韓合同軍事演習を行わないことを認めさせ、オリンピックでは金與正(金正恩の妹)との友好的な関係を演出している。2月7日にペンスは朝鮮に対する制裁の強化を口にしてが、同じ日にジェームズ・マティス国防長官は朝鮮半島の問題を外交的に解決する意向を示していた。トランプ政権内でも政策が一致していないように見えるが、帰国後にペンスは朝鮮側が「話したいと言うなら話す」と語っている。流れは変化したようだが、これで平和に向かうとは言えない。アメリカの好戦派は中東で大規模な戦争を目論んでいるからだ。
2018.02.14
ロシア軍が空爆を始めた2カ月後の11月24日、トルコ軍のF-16がロシア軍のSu-24を待ち伏せ攻撃で撃墜した。ロシア軍機の撃墜をトルコ政府だけの判断で実行できるとは考え難く、撃墜の当日から翌日にかけてポール・セルバ米統合参謀本部副議長がトルコのアンカラを訪問していたこともあり、アメリカ政府が許可していたと見る人は少なくない。この撃墜でロシア軍が引き揚げることをアメリカ側は期待したのかもしれないが、ロシア軍は防空システムを強化、シリア領内へ侵入した航空機を撃墜する姿勢を示した。ロシア軍の介入でダーイッシュやアル・カイダ系武装集団の支配地域は急速に縮小、戦況の変化を見てトルコのエルドアン大統領は2016年6月下旬にロシア軍機の撃墜を謝罪、7月13日にトルコ首相はシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆する。トルコでは武装蜂起があったのはその2日後、7月15日のことだ。この蜂起は短時間で鎮圧されたが、事前にロシアからエルドアン政権へ情報が伝えられていたとも言われている。このクーデター未遂に関し、エルドアン政権はその首謀者をアメリカへ亡命中でCIAの保護下にあるとも言われているフェトフッラー・ギュレンだとしている。蜂起の背後にはアメリカ中央軍のジョセフ・ボーテル司令官やジョン・キャンベルISAF司令官がいたとも主張、これ以降、トルコとアメリカとの関係は悪化する。ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団に見切りをつけたアメリカはクルドを中心に反政府軍を再編しはじめた。アメリカはシリア北部、トルコとの国境近くに3万人規模のシリア国境軍を編成するとしているが、その主体はSDF(シリア民主軍)/YPG(クルド人民防衛隊)。イスラエルでは、アメリカがこの勢力にMANPADSを提供していると伝えられている。こうしたアメリカ側の動きはトルコ政府を一層怒らせることになった。エルドアン政権はクルドの武装勢力を「テロリスト」だとしているからだ。今年(2018年)1月20日からトルコ軍はシリア北西部のアフリンにいるクルド勢力を攻撃し始める。「オリーブの枝作戦」だ。トルコとの関係をこれ以上悪化させたくないアメリカの動きは鈍く、クルド側は裏切られたと感じはじめているようだ。そうした中、マクマスターはトルコを訪問したが、クーデター未遂でトルコ側は持ったアメリカに対する不信感は強いはずで、両国の関係修復は容易でないだろう。ギュレンの問題も避けられないが、ギュレンはCIAの秘密部隊という側面がある。クルドを切り捨て、トルコにシリア北部の国境沿い地域を支配させるということも考えられるが、トルコを説得できてもクルドを敵に回すことになる。クルドの協力なしにアメリカ軍がシリアに居座ることは難しい。アメリカ軍はロシアを挑発し、新たな戦争を始めようとしている可能性がある。
2018.02.13
H.R.マクマスター国家安全保障補佐官の率いる代表団がトルコを訪問、2月11日にはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の特別顧問でトルコ政府の報道官を務めるイブラヒム・カルンと会談したという。アメリカとトルコはいずれもNATO加盟国で、2011年3月にシリアへの侵略作戦が始まった当時は手を組んでいた。両国とも当初はリビアと同じように短期間でバシャール・アル・アサド政権は倒れると考えていたようだが、アサド大統領は亡命の誘いを拒否、国内に留まって侵略勢力と戦う道を選んだ。それに対し、バラク・オバマ政権はサラフィ主義者やムスリム同胞団を中心とする武装集団、つまりアル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQI)を支援して体制転覆を目指した。この事実はアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が2012年8月にホワイトハウスへ提出された報告の中で指摘されている。その報告ではオバマ政権の政策が東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国を生み出すことになりかねないと警告していた。オバマ大統領はこの警告を無視、2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になる。現在、アメリカ軍はダーイッシュが根絶されていないという口実でシリアの不法占領を正当化しているが、そのダーイッシュを作り上げたのはオバマ政権にほかならないということだ。最初の計画では、リビアと同じようにアル・カイダ系武装集団とNATOが連携して軍事的にアサド政権を破壊することになっていたのだろうが、これは失敗する。政府軍による「民主化運動の弾圧」や「住民虐殺」といった主張の嘘が明るみに出てしまったのだ。そこで登場してくるのが残忍なイメージで売り出したダーイッシュ。このダーイッシュと戦うためだとしてアメリカ軍はシリア政府の承認を得ないで空爆、インフラを破壊し、住民を殺し、政府軍側を攻撃している。2012年8月の報告を作成した当時のDIA長官はマイケル・フリン中将だが、この人物はダーイッシュが売り出されている最中、2014年8月に解任されてしまった。さらに2015年2月には国防長官が戦争に消極的だったチャック・ヘイゲルから好戦的なシュトン・カーターへ、統合参謀本部議長は同年9月にダーイッシュなどを危険視するマーティン・デンプシーからアサド排除を優先するジョセフ・ダンフォードへ交代した。オバマ政権はシリアへの直接的な軍事侵略を実行する体制を整えたわけだが、デンプシーが退任した3日後、プーチン露大統領は国連で演説、演説、暴力、貧困、そして社会的惨事を招き、人権を気にかけず、うぬぼれや自分は特別で何をしても許されるという信念に基づく政策が推進されていると批判した。勿論、その批判が向けられた相手はアメリカである。その演説の2日後、ロシア軍はシリア政府の要請に基づいてアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュに対する空爆を開始、カスピ海の艦船から26基の巡航ミサイルを発射、約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で全て命中させている。ロシア軍が出てくるとは思っていなかったアメリカ政府は動揺したようだが、中でもカスピ海から発射されたミサイルにはショックを受けたと言われている。これだけ高性能の兵器をロシアが保有しているとは思っていなかったのだ。
2018.02.12
米英支配層の長期戦略はロシアを制圧し、世界の覇者となること。2017年の十月革命でソ連と名前が変更しても戦略に変更はなかった。そのソ連が1991年12月に消滅、ロシアはアメリカの属国になった。そこで長期戦略の目標を達成、自分たちは世界の覇者になったと考えたネオコンは残された国の中で最も警戒すべき潜在的ライバル、中国を押さえ込もうとする。それが東アジア重視政策。同時に、エネルギー資源を抱える中東支配を強固なものにするため、従属しきっていないイラク、シリア、イランを殲滅しようとする。それがポール・ウォルフォウィツたちネオコンの計画。イラクは2003年3月に正規軍で破壊したが、傀儡体制の樹立には失敗した。それでもアメリカの好戦派は自分たちの軍事力が他国を圧倒していると信じていたようで、例えば、フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載された論文の中でキール・リーバーとダリル・プレスはロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張している。核戦争になってもアメリカは生き残れるという判断だ。しかし、その論文が出た2年後の2008年にアメリカ支配層の幻想を打ち破る出来事があった。その年の7月10日にアメリカのコンドリーサ・ライス国務長官はジョージア(グルジア)を訪問、8月7日にミヘイル・サーカシビリ大統領は分離独立派に対して対話を訴えてから8時間後の深夜に南オセチアを奇襲攻撃したのだ。ジョージアは2001年以降、イスラエルの軍事会社から無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどを含む武器/兵器の提供を受け、軍事訓練も受けていた。2008年1月から4月にかけてはアメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を派遣している。つまり、アメリカやイスラエルは周到に準備した上でジョージアに南オセチアを奇襲攻撃させている。圧勝する予定だったのだろうが、ロシア軍に粉砕されてしまった。この時点でアメリカ軍やイスラエル軍はロシア軍に通常戦で勝てないことが明らかになったのである。リーバーとプレスの分析は間違っていた。2007年には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーカー誌に興味深い記事を書いている。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を始めたというのだ。その記事の中で、ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで外交問題評議会の終身メンバーでもあるバリ・ナスルの発言を引用している。サウジアラビアは「ムスリム同胞団やサラフィ主義者と深い関係がある」としたうえで、「サウジは最悪のイスラム過激派を動員することができた。一旦、その箱を開けて彼らを外へ出したなら、2度と戻すことはできない。」と指摘している。ズビグネフ・ブレジンスキーが1980年代にアフガニスタンで使った戦法を使う危険性を指摘しているのだが、バラク・オバマ政権はその戦法を採用した。サウジアラビアなどが雇い入れ、CIAが軍事訓練、武器/兵器を供給して編成した武装集団を侵略に使うということだ。2008年の南オセチアに対する奇襲攻撃で正規軍の戦いではロシア軍が出てくると粉砕されることを理解したのだろう。三国同盟のほか、サイクス-ピコ協定コンビのイギリスとフランス、ペルシャ湾岸産油国のカタール、そしてトルコが参加して2011年3月にはシリアへの侵略戦争が始まる。民主化運動に対する流血の弾圧などはなかった。この辺の事情は本ブログでも何度か書いてきたことなので、今回は割愛する。バシャール・アル・アサド体制を転覆させ、アサドを排除するために戦う武装勢力が住民を虐殺していることを隠しきれなくなると、オバマ政権は「穏健派」というタグを使い始める。反政府軍には碌でない過激派だけでなく穏健派もいるので、その穏健派を支援しているというわけだ。そうした武装勢力が存在しないことはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)も指摘していた。2012年8月にホワイトハウスへ提出された報告の中で、オバマ政権が武器/兵器を供与している相手はサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団、アル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQI)であり、そうした政策を続けると東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があると警告していたのだ。実際、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で警告は現実になるのだが、それはオバマ政権の政策でもあった。失敗でも計算違いでもない。そのダーイッシュやアル・カイダ系武装勢力を攻撃、その支配地域を大幅に縮小させたのがロシア軍。そこでアメリカ側は残った戦闘員のうち配下の者を救出、クルド勢力と合流させて新たな戦争を始め、次のターゲットであるイランの体制を倒そうとしている。ネタニヤフもその戦略を推進しているひとりだ。このネタニヤフはトランプと浅くはない関係がある。そのトランプ大統領を攻撃していた司法省、FBI、CIAなどの幹部がスキャンダルで窮地に陥った。そうした中、ロシアの対外情報機関SVR、治安機関FSB、軍情報機関GRUの長官がワシントンDCを訪問、すくなくともSVR長官とFSB長官はCIA長官と会談したと伝えられている。軍事的な緊張を高める動きではないだろう。戦争へ突き進もうとしている勢力と戦争を回避しようとしている勢力が綱引きしているように見える。勿論、日本は戦争推進派に従属している。
2018.02.12
アメリカのネットワーク局NBCのコメンテイター、ジョシュア・クーパー・ラモが平昌オリンピックの開幕セレモニーで行った日本と韓国/朝鮮との関係についてのコメントへ批判が浴びせられている。日本について、1910年から45年にかけて朝鮮半島を支配したとした上で、文化的、技術的、経済的に自分たちが変化していく上で重要な見本だと全ての韓国/朝鮮人は考えているとコメントしたという。日本の朝鮮支配がイギリスの世界戦略と深く結びついていることは本ブログでも再三再四書いてきた。明治維新で登場した薩長政府は1872年に琉球国を併合、74年に台湾へ派兵し、75年には軍艦「雲揚丸」を江華島へ派遣して李氏朝鮮を挑発、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させ、94年から95年にかけて日清戦争、95年には王妃の閔妃を惨殺、そして大韓帝国(1897年に改称)を併合、朝鮮半島を植民地にしたわけだ。植民地時代に日本が行ったことを韓国/朝鮮人は忘れていないが、日本の政治家やマスコミからは無反省な主張が絶え間なく発信されてきた。それを少数意見だということはできず、韓国/朝鮮が日本を見本にしていると言える状況ではない。アメリカの国外における侵略政策や国内の収容所化を進めるために偽報道を続けるアメリカの有力メディアのひとつであるNBCのコメンテイターならこうした無神経なことを口にしても不思議ではない気もするが、ラモはキッシンジャー・アソシエイツの共同CEO。中国に関する本を著している人物でもある。スターバックスやフェデラル・エクスプレスの重役でもあるらしい。善悪はともかく、国際情勢に関してそれなりの知識と判断力を持っているはずの立場にある。アメリカと韓国との関係を悪化させる目的で確信犯的に行ったのではないとするなら、アメリカ支配層の知的レベルがかなり低下していることを示し、アメリカの落日を象徴するような発言だとも言えるだろう。安倍晋三が首相でいられる理由も理解できる。
2018.02.11
イスラエル軍とシリア軍との間で戦闘があった。ゴラン高原のイスラエル占領地域へ入ったイランのドローン(無人機)を撃墜したとイスラエル軍は2月10日に発表、その直後にシリア領内を攻撃したが、その攻撃に参加したF-16をシリアの防空システムが少なくとも1機撃墜した。脱出したパイロットは重体だとイスラエルで報道されていたが、死亡説も流れている。その後、イスラエル軍はシリアを攻撃した。ドローンの話はシリア政府もイラン政府も否定している。そうした軍事的な緊張の高まりを受け、ロシアのウラジミル・プーチン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は電話でシリア情勢について話し合い、その際にロシア側はイスラエルに対し、戦闘の連鎖をもたらすような行動は避けるように伝えたという。ネタニヤフはクシュナー親子やカジノ経営者のシェルドン・アデルソンを介してアメリカのドナルド・トランプ大統領と結びついているのだが、スキャンダルで起訴されると噂されている人物でもある。こうした自らの置かれた状況も軍事力の行使に影響しているのだろう。イスラエル軍がシリアを攻撃する直前、2月7日にアメリカ中央軍が主導する部隊は油田地帯に近いデリゾールでシリア政府側の部隊を空爆、100名以上を殺したという。アメリカ側はこれを自衛のためだと主張している。500名程度の部隊がアメリカ配下の武装集団の本拠地を攻撃、撃退できなかったのでアメリカ主導軍が航空兵力などを投入して反撃したというストーリーだが、裏付ける証拠はない。状況証拠はアメリカ側の主張を否定している。ロシア国防省によると、攻撃された部隊は敵部隊の砲撃地点を特定するためにアル-イスバ石油精製施設を偵察中。つまり親政府派部隊から攻撃を仕掛けていないという説明だ。その偵察部隊が砲撃やミサイルで激しく攻撃され、続いてアメリカ主導軍の戦闘ヘリに空爆されたとしている。その前、1月6日には地中海に面するフメイミム空軍基地とタルトゥースにある海軍施設が13機の無人機(ドローン)に攻撃された。いずれもロシア軍が使用している。攻撃に参加したドローンのうち7機はロシア軍の短距離防空システムのパーンツィリ-S1で撃墜され、残りの6機は電子戦兵器で無力化されている。一見、このドローンは手作りのようだが、高度の技術が使用されている。専門知識を持つものが製作しているとロシア国防省は指摘している。これらは100キロメートルほど離れた場所から飛び立ち、GPSと気圧計を利用して事前にプログラムされた攻撃目標までのコースを自力で飛行、ジャミングされないようになっていたという。ちなみに、2017年4月6日にアメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスが発射した巡航ミサイル(トマホーク)59機の相当数はジャミングで落下、目標の基地へ到達したのは数機だったと言われている。この際、ロシア側が認識したのは短距離用の防空システムを強化する必要があるということ。そこでパーンツィリ-S1を増強したようだが、1月6日にはこの防空システムで7機が撃墜され、残りの6機は電子戦兵器で無力化されたという。
2018.02.11
アメリカが中東やアフリカを侵略する大きな理由は石油や天然ガスを含む資源にあるとする推測する人がいる。そうしたひとり、ロバート・ケネディ・ジュニアは1968年6月6日に暗殺されたロバート・ケネディ(RFK)の息子だ。RFKジュニアによると、2000年にカタールはサウジアラビア、ヨルダン、シリア、トルコを経由してEUへ天然ガスを運ぶパイプラインの建設をシリア政府へ持ちかけたのだが、09年にこの提案をシリア政府は拒否、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟が計画していたシリア侵略に参加することになった。シリア政府がカタールの申し出を拒否した直後、CIAはシリアの反政府派に資金を提供しはじめたことをWikiLeaksは明らかにした。イスラエルが軍事侵略に力を入れている理由のひとつも天然ガスだ。地中海の東側に湾岸なみの天然ガスや石油が存在していることが明らかになり、2001年からイスラエル沖で調査が実施され、09年に天然ガスが発見されている。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っているという。この地域には、リビア、エジプト、パレスチナ(ガザ)、イスラエル、レバノン、シリア、トルコ、ギリシャといった国が並んでいる。イスラエルが執拗にガザを攻撃する理由のひとつはここにあると見る人もいる。その天然ガス田発見に関わった会社のひとつ、ノーブル・エナジーのロビイストとして仕事をしているひとりがビル・クリントン元大統領。ウォール街の大手金融機関が開発資金を出す意向を示している。2016年の大統領選挙でノーブル・エナジーはヒラリー・クリントンに多額の寄付をしていたようだ。天然ガス田の調査が始まった2001年に石油の探査/掘削技術を持つ人間がイスラエルへ入ったと言われている。当時、ロシアではウラジミル・プーチンが実権を握り、政府を私物化して私腹を肥やしていたオリガルヒの粛清に乗り出していた。そこで少なからぬオリガルヒが国外へ逃げている。その主な逃亡先はロンドンとイスラエルだった。イスラエルへはロシアの巨大石油企業ユーコスの幹部も逃げ込んでいる。アメリカの支配層、特にネオコンは1992年2月に国防総省のDPG草案として作成された世界制覇プラン、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいてい行動しているのだが、そのベースになっている理論が存在する。1904年にイギリスの学者で地政学の父とも呼ばれているハルフォード・マッキンダーが発表したハートランド理論だ。ズビグネフ・ブレジンスキーもこの理論に基づいて戦略を立てていた。マッキンダーは世界を支配するためにロシアを制圧しなければならないと考える。広大な領土を有し、豊富な天然資源、多くの人口を抱えているからだ。そのロシアを締め上げるため、西ヨーロッパ、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ内部三日月帯を、その外側に外部三日月地帯をマッキンダーは想定した。イギリスと日本は外部三日月地帯に分類されているが、その位置はイギリスが内部三日月帯の西の端、日本は東の端だ。中東支配はこの戦略を実現するためにおいて重要な場所だが、エネルギー資源も大きな意味を持っている。アメリカは基軸通貨のドルを発行する特権で生きながらえている国だが、そのドルの流通量を調整するために石油取引が重要な役割を果たしてきたことを本ブログでも再三再四、指摘してきた。このペトロダラーの仕組みはハイパーインフレをバブルに転換させる金融システムと同じようにアメリカの支配システムを支えてきた。こうした仕組みに石油などエネルギー資源が使えるのは、社会を維持するためにエネルギー資源がどうしても必要だからだ。エネルギー資源の取り引きは国と国を結びつける。アメリカがウクライナでクーデターを実行した一因は、ロシアとEUの天然ガス取引を潰すことにあった。さらに、ポーランドなどを使ってアメリカはノード・ストリーム2を葬り去ろうとしている。アメリカや日本が東シナ海を制圧し、中国の海上輸送路を支配しようとしている理由も同じだ。(了)
2018.02.11
アメリカ主導軍が参加したデリゾールにおける2月7日の攻撃で100名以上の親政府派部隊の戦闘員が攻撃されたと伝えられた。現地からの情報として、殺された戦闘員の中にはヒズボラやロシア人傭兵も含まれているというが、ロシア国防省は25名のシリア人戦闘員が負傷しただけだとしている。攻撃は自衛のためだったとアメリカ軍は主張しているが、ロシア国防省によると、攻撃された部隊は敵部隊の砲撃地点を特定するためにアル-イスバ石油精製施設を偵察中だったという。つまり親政府派部隊から攻撃を仕掛けていないという説明だ。その偵察部隊が砲撃やミサイルで攻撃され、続いてアメリカ主導軍の戦闘ヘリに空爆されたとしている。まず確認しておきたいことは、そこがシリア領であり、アメリカ軍は無断で軍隊を侵入させて基地を建設している侵略者にすぎないということだ。2016年9月にインターネット上を流れた音声の中で国務長官だったジョン・ケリーがシリア情勢について語っている。ロシアは正当な政権に招き入れられたが、われわれは招かれていないとケリーはその中で口にしているが、これは事実である。バラク・オバマ政権が侵略を正当化するために「民主化」、「人道」、「化学兵器」といったタグを使ってきたことは本ブログでも繰り返し書いている。そうした嘘が発覚する過程でオバマ政権は支援しているのは「穏健派」だと弁明しているが、これはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が否定している。2012年8月に政府へ提出された報告の中で、シリア政府軍と戦っている戦闘集団の中心はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(DIAはアル・ヌスラと実態は同じだとしている)だと指摘している。つまり「穏健派」は存在しないということ。また、「穏健派を支援する」というオバマ政権の政策が継続されると、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それは後にダーイッシュという形で現実になった。退役後、この問題をアル・ジャジーラの番組で問われたフリン中将は、ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っていた。食い物にしようと決めたターゲットへ碌でもない連中を送り込んで暴れさせ、その連中を押さえてやると言って乗り込む犯罪組織の手口とアメリカ支配層の遣り方は酷似している。デリゾール周辺でアメリカ軍主導軍はシリア政府側の少なからぬ戦闘員を殺してきた。例えば、2016年9月17日にアメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機による攻撃で80名以上の政府軍兵士が死亡している。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊して政府軍のユーフラテス川渡河を困難にした。川を渡った先には油田地帯が広がっている。その1年後にはロシア軍のバレリー・アサポフ中将がデリゾールで砲撃により戦死した。アメリカ側からアサポフ中将の位置に関する正確な情報が戦闘集団側へ伝えられていたと言われている。(つづく)
2018.02.10
朝鮮半島周辺の軍事的な緊張を高めている原因は朝鮮にあり、日本やアメリカはそうした行動に対応しているだけだと信じている人がいるようだ。朝鮮が原因ならば、軍事的な緊張にアメリカの戦略、例えばウォルフォウィッツ・ドクトリンは関係なく、中東やヨーロッパにおけるアメリカの行動と関連づけて考える必要もない。朝鮮は経済的にも軍事的にも強力とは言えず、戦争が勃発しても高みの見物、と思っている人も少なくないようだ。アメリカと中国が共同で朝鮮を「征伐する」というシナリオを描くことも可能だ。朝鮮に責任を押しつけておけば「お上」に睨まれないと思っている人もいるだろう。しかし、東アジアの軍事的な緊張を高めているのはアメリカとその属国である日本。この両国にとって朝鮮はありがたい存在だ。アメリカの東アジア侵略は1898年にスペインと行った戦争でフィリピンを手に入れたことから始まり、日本の場合は1872年の琉球併合。当時、明治政府、つまり薩長体制はイギリスを後ろ盾にしていた。19世紀のイギリスは中国(清)との貿易赤字に悩み、アヘンの密輸出で問題を解決しようと目論み、その密輸を取り締まろうとする中国と戦争になる。1840年から42年にかけてのアヘン戦争や56年から60年にかけてのアロー戦争だ。こうした戦争でイギリスは利権を手に入れる。明治維新以降、日本が東アジアを侵略することになった。1904年にイギリスではハルフォード・マッキンダーがハートランド理論を発表する。彼は世界を3つに分け、ひとつはヨーロッパ、アジア、アフリカの「世界島」、ふたつめはイギリスや日本のような「沖合諸島」、そして最後に南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」と名付けた。世界島の中心がハートランドで、具体的にはロシアを指している。また、ユーラシア大陸を囲むように、西ヨーロッパ、パレスチナ(1948年にイスラエル建国を宣言)、サウジアラビア(サウード家のアラビアを意味するサウジアラビアが登場するのは1932年)、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ「内部三日月帯」が、またその外側に「外部三日月帯」が想定されている。イギリスと日本は内部三日月帯の両端にある外部三日月帯とされている。この三日月帯でハートランド、つまりロシアを締め上げていこうというわけだ。日本が日清戦争に続いて日露戦争を引き起こすが、これはイギリスの戦略に合致している。ロシアは1917年11月の十月革命で社会主義を掲げるソ連になる。日露戦争以降、日本は満州(中国東北部)支配に乗り出し、1931年9月には関東軍が奉天(瀋陽)郊外の柳条湖で南満州鉄道の線路を爆破、これを張学良軍の犯行だと主張して満州制圧作戦を展開、32年に満州国をでっち上げた。アメリカもしばしば侵略に使う偽旗作戦だ。この1932年にアメリカでは大統領選挙があり、日本に大きな影響力を持っていたウォール街が押すハーバート・フーバー大統領がニューディール派のフランクリン・ルーズベルトに敗れている。新大統領は植民地やファシズムに反対、日本との摩擦が激しくなる。フーバーはホワイトハウスを去る直前、1932年にジョセフ・グルーがアメリカ大使として来日した。グルーのいとこにあたるジェーン・グルーはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまりJPモルガン総帥の妻で、グルーが結婚していたアリス・ペリーは少女時代を日本で過ごし、華族女学校(女子学習院)へ通っている。そこで親しくなったひとりが九条節子、後の貞明皇后だという。グルーの皇室人脈をそれだけでなく、松平恒雄宮内大臣、徳川宗家の当主だった徳川家達公爵、昭和天皇の弟で松平恒雄の長女と結婚していた秩父宮雍仁親王、近衛文麿公爵、貴族院の樺山愛輔伯爵、当時はイタリア大使だった吉田茂、吉田の義父にあたる牧野伸顕伯爵、元外相の幣原喜重郎男爵らにもつながっていた。(ハワード・B・ショーンバーガー著、宮崎章訳『占領 1945〜1952』時事通信社、1994年)こうした人々以上にグルーが親しくしていたと言われているのが松岡洋右。松岡の妹が結婚した佐藤松介は岸信介や佐藤栄作の叔父にあたる。1941年12月7日(現地時間)に日本軍はハワイの真珠湾を奇襲攻撃、日本とアメリカは戦争に突入するが、翌年の6月までグルーは日本に滞在、離日の直前には岸信介とゴルフをしている。(Tim Weiner, "Legacy of Ashes," Doubledy, 2007)この岸は安倍晋三首相の祖父にあたる人物で、1930年代後半に中国東北部(満州)へ渡って満州国国務院実業部総務司長に就任した経験がある。その当時、関東軍参謀長の東条英機、満州国総務長官の星野直樹、満鉄総裁の松岡洋右、日産コンツェルンの鮎川義介、そして岸は「2キ3スケ」と呼ばれていた。1937年7月の盧溝橋事件を利用して日本は中国に対する本格的な戦争を開始、同年12月に南京で虐殺事件を引き起こし、39年5月にはソ連へ侵略しようと試みてノモンハン事件を起こし、惨敗した。その後、日本は南進して米英の利権と衝突することになる。この時に使われた口実が大東亜共栄圏。現在、アメリカや日本は侵略の口実として民主化、人道、テロとの戦いなどが使われているが、手口は同じだ。
2018.02.10
アメリカ主導軍は2月7日にデリゾールでシリア政府軍を空爆、政府側の戦闘員100名以上が殺されたとも伝えられている。アメリカ側はこれを「自衛」のためだと主張しているようだが、シリア政府の承認を得ずに軍隊を侵攻させているアメリカ軍は単なる侵略者にすぎない。イスラエルやサウジアラビアからの強い要請もあり、アメリカは自らがロシア軍との戦闘に出ざるをえない状況になりつつあるように見える。強く出ればロシアも中国もアメリカに逆らわないという思い込みでネオコンは四半世紀以上、侵略戦争を続けてきた。アメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと同国のモシェ・ダヤン将軍は語ったが、そうした考えからネオコンは離脱できないでいる。二言目には「圧力を加えろ」と叫ぶどこかの国の人間と似ている。「神風」頼みの暴走。ドルが基軸通貨の地位から陥落し、アメリカの支配システムが崩壊する日が近いとネオコンも認識、ロシアと中国を屈服させるか破壊しようと必死なのだろう。シリア政府の要請を受けたロシア軍が軍事介入してからアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の支配地は急速に縮小、こうした戦闘集団を傭兵として使っていたアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心とする勢力は次の手先としてクルドと連携しはじめたが、思惑通りに進んでいないようだ。ロシア軍が空爆を始めてから1年後の2016年9月、国務長官だったジョン・ケリーがシリア情勢について語っている音声がインターネット上を流れた。ロシアは正当な政権に招き入れられたが、われわれは招かれていないとケリーはその中で口にしているが、これは事実。アメリカ政府が反シリア政府軍に武器を提供し、戦闘員を訓練していることも認めている。その結果、ダーイッシュは強くなり、ロシア軍を軍事介入させることになり、状況は一変した。ケリーはロシアが方程式を変えてしまったと表現している。バラク・オバマ政権が武器/兵器を供与していた相手がサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団、アル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQI)であり、そうした政策を続けると東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があると2012年8月に警告していたのはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)。その当時のDIA局長がマイケル・フリン中将、ドナルド・トランプ大統領が最初の国家安全保障補佐官に選んだ人物だ。ケリーがシリア情勢について語っていた頃、デリゾールの南東に広がる油田地帯を制圧するためにシリア政府軍が進撃していた。そのシリア政府軍をアメリカ主導軍がF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で2016年9月17日に攻撃、80名以上の政府軍兵士を殺している。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊して政府軍のユーフラテス川渡河を困難にしている。ロシア系メディア(アラビア語のスプートニク)によると、その後、9月20日にアレッポの山岳地帯にある外国軍の司令部をシリア沖にいるロシア軍の艦船から発射された3発の超音速巡航ミサイルが攻撃、約30名を殺したというが、その中にはアメリカ、イギリス、イスラエル、トルコ、サウジアラビア、カタールから派遣された軍人や情報機関の人間が含まれていたとも言われている。この司令部がデリゾールでの空爆を指揮したという情報も流れていた。その1年後、2017年9月にはイドリブで注目すべき出来事が引き起こされている。その月の13日にイドリブの州都へパトロールのために入ったロシア軍憲兵隊29名が20日の朝にアメリカの特殊部隊に率いられた武装集団に襲撃されたのだ。戦車などを使い、ハマの北にある戦闘漸減ゾーンで攻撃を開始、数時間にわたって戦闘が続いた。作戦の目的はロシア兵の拘束だったと見られている。それに対し、ロシア軍の特殊部隊スペツナズの部隊が救援に駆けつけて空爆も開始、襲撃した戦闘員のうち少なくとも850名が死亡、空爆では戦闘を指揮していた米特殊部隊も全滅したと言われている。イドリブでロシアやシリアの部隊がどこにいるかという機密情報がアメリカ主導軍からアル・ヌスラ(アル・カイダ系武装集団)へ伝えられていた可能性が高い。21日にはロシア軍とアメリカ軍の軍人が直接会い、シリア情勢について話し合ったと伝えられているが、その直後にロシア軍のバレリー・アサポフ中将がデリゾールで砲撃により戦死した。この攻撃もアメリカ側から正確な情報が戦闘集団側へ流れていたと見られている。22日にはイスラエル軍機がダマスカス近郊を空爆した。アメリカ主導軍がシリア政府軍を空爆した今年(2018年)2月7日にもイスラエル軍機が午前3時半にダマスカスへ向かって数発のミサイルを発射、シリア政府によると、そのミサイルは撃ち落とされている。また、時を同じくして各地に残っている戦闘集団が一斉にシリア政府軍をミサイルや砲撃で攻撃したという。今年1月6日にはシリアの西部、地中海に面するフメイミム空軍基地とタルトゥースの海軍施設が13機の無人機(ドローン)攻撃されたが、ロシア軍の短距離防空システムのパーンツィリ-S1で7機が撃墜され、6機は電子戦兵器で無力化されたとされている。損害はほぼなかったということだ。100キロメートルほど離れたイドリブの南西部地域から飛び立ったドローンはGPSと気圧計を利用して攻撃目標までのルートを自力で飛行、ロシア国防省によると、攻撃の際にはターゲットの空軍基地と海軍施設の中間地点でアメリカの哨戒機P-8A ポセイドンが旋回していた。この哨戒機は攻撃に何らかの形で関与、ロシアの防空体制、反応の具合などを調べた可能性がある。また、2月3日にはイドリブでロシア軍のSu-25攻撃機がMANPADS(携帯型防空システム)で撃墜され、脱出したパイロットは地上での戦闘を経て死亡した。攻撃に関わったと見られるジャブハト・アル・シャム(ジャブハト・アル・ヌスラ)の戦闘員約30名はロシア軍が巡航ミサイルで殲滅している。アル・シャムがMANPADSをどこから入手したか調べるためにシリアの特殊部隊がイドリブで活動中だというが、アメリカ軍はクルド勢力へMANPADSを供給している。アメリカ軍はシリア北部、トルコとの国境近くに3万人規模のシリア国境軍をSDF(シリア民主軍)/YPG(クルド人民防衛隊)主体で編成するとしているが、それに反発したトルコ軍がシリア領内に入り、クルド勢力を攻撃している。
2018.02.09
第23回冬期オリンピックが2月9日から25日にかけて韓国の平昌で開催される。バラク・オバマ大統領が始めた中東/北アフリカにおける侵略作戦が思惑通りに進んでいない中、ドナルド・トランプ大統領は東アジアでの軍事的な緊張を高めていたが、韓国の文在寅大統領は1月4日にトランプ大統領と電話で会談、オリンピック期間中に米韓合同軍事演習を行わないことを認めさせ、朝鮮のオリンピック参加も実現しそうだ。本ブログでは何度も指摘しているが、アメリカ支配層の戦略は少なくとも1992年2月に国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランが作成されたところから考えなければならない。1991年12月のソ連消滅、そしてロシアの属国化を前提にしてネオコンが立てた計画で、残された国のうちアメリカへの従属が不十分で、戦略的に重要な国々を潰して行くことを決めたのだ。ソ連消滅後、アメリカが経済的に成長著しい中国を次のターゲットに定め、東アジア重視を打ち出したが、それと同時に、ヨーロッパ、東アジア、中東、南西アジア、旧ソ連圏が潜在的ライバルとして挙げられ、ラテン・アメリカ、オセアニア、サハラ以南のアフリカにもアメリカの利権があるとしている。1995年2月に公表された「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」以降、日本はこうした戦略に協力するため、アメリカの戦争マシーンに組み込まれてきたのだ。勿論、アメリカ軍がTHAAD(終末高高度地域防衛)を韓国へ持ち込み、日本政府が地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」の導入を決めたのも、こうしたアメリカの戦略に基づいている。その口実に使われた朝鮮は、ヨーロッパへミサイルを導入するときに使われた「イランの脅威」と同じように実在しない「お化け」。アメリカが想定しているのは中国であり、今では中国と戦略的なパートナーになったロシアだ。中国とロシアを相手に戦争すると聞かされたなら、尻込みする日本人は少なくないだろうが、国力が圧倒的に小さい朝鮮相手なら楽勝だと高をくくっている人もいるようだ。かつて、朝鮮戦争で大儲けしたという話を思い浮かべている人もいるだろう。しかし、朝鮮を相手にした戦争でも悲惨な状況になる。朝鮮戦争でそれを体験している韓国が戦争回避に動くのは当然。トランプ政権で首席戦略官だったステファン・バノンも朝鮮半島における軍事力の行使を「忘れろ」と主張していたが、解任された。それに対して戦争に危機感を持つ日本人は多くないようだ。当然、中国やロシアもアメリカの動きを警戒している。例えば、中国は吉林省延辺朝鮮族自治区の和竜市の防空システムを増強、30万人程度の部隊を黒竜江省から延辺へ移動させたと伝えられている。中国の戦略的パートナーになったロシアは近い将来、防空システムS-400を中国へ供給するともいう。そのロシアも極東地域の軍事力を増強している。例えば、ウラジオストックでは防空システムをS-300から新型のS-400へ切り替えはじめ、2月にロシア軍は千島列島で軍事演習を行っている。最近、中国とロシアの合同軍事演習はしばしば実施されてきた。中東と同じように東アジアでもアメリカは孤立化を深め、軍事同盟国と見なされているのはオーストラリア、インド、そして日本。侵略作戦を始めるためには韓国の協力も必要で、日本と韓国との対立は好ましくない。慰安問題で2015年に日本と韓国が合意したが、バラク・オバマ政権でNSC(国家安全保障会議)の安保副補佐官だったベン・ローズによると、オバマ大統領は日韓両国の首脳との会う際、数年にわたり、毎回のように慰安婦の問題を採りあげ、両国の対立を解消させようとしていたという。それが彼の戦略で重要だったからだ。合意の翌年に朴槿恵大統領のスキャンダルが発覚、2017年に失脚している。朝鮮半島の軍事的な緊張が高まる中、文在寅大統領はこの問題を持ち出して日本との軍事的な協調関係を揺さぶったと見ることもできる。戦争へ突き進むアメリカと日本、それに応じる準備を進める中国とロシア、朝鮮半島での戦争を回避しようとする韓国。これまでアメリカの戦略にとって好都合な言動を続けてきた朝鮮だが、ここにきて韓国と協調する姿勢を見せている。
2018.02.08
2011年当時、アメリカはシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒して傀儡体制を樹立させようとしたが、アサド大統領は亡命を拒否して国内に留まった。逃げ出さなかった閣僚や軍人も少なくない。そこでアル・ヌスラやダーイッシュといったタグをつけた武装集団を利用してアサド体制を倒そうとしたが、これはロシア軍の介入で失敗、今はクルド勢力を中心にして、アル・ヌスラやダーイッシュの戦闘員を合流させて新たな戦争を始めようとしている。アメリカは当初、ロシア軍が出てこないという前提で直接的な軍事介入を狙っていた。まずリビアと同じように、「独裁者による民主化運動の弾圧」というストーリーを有力メディアで宣伝したが、その嘘は露見してしまう。そこで住民虐殺を演出するが、その実行者は侵略勢力のサラフィ主義者だと判明、次に出てきたのが化学兵器による攻撃という話だ。本ブログでは何度も書いてきたが、この化学兵器話が嘘だということも明らかにされてきたが、これは繰り返し主張されている。新たなストーリーが思いつかないのだろう。今月に入り、ジェームズ・マティス国防長官もシリア政府軍によるサリンの使用に関心を持っていると発言したが、その証拠がないことも認めざるをえなかった。有力メディアも「国際社会」の行動を求める記事を掲載している。(例えばココ)アメリカ政府は侵略を正当化する最もらしい口実を考えることもできなくなっている。それだけ侵略戦争を近い将来に実行しなければならないという強迫観念に駆られているようだ。遅くとも1991年にイラク、シリア、イランを殲滅するプランを立て、92年2月にはそれをDPG草案として文書化したネオコンの戦略を実現しようと必死なように見える。イスラエルやサウジアラビアからせつかれている可能性がある。それだけでなく、ドルが基軸通貨の地位から陥落するという危機感を持っている人がアメリカ支配層の内部にいるはず。世界をアメリカの巨大資本が支配するファシズム体制を実現し、ライバルとして成長してきたロシアと中国を屈服させるか破壊しなければならないと考えている人もいるだろう。TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)は世界をファシズム化するための協定であり、だからこそ安倍晋三政権はTPPに固執しているのだ。そうした環境の中、MANPADSによるロシア軍機撃墜が引き起こされた。安倍晋三政権は日本をアメリカの戦争マシーンに組み込もうとしている。日本を「戦争できる国」にするという漠然とした目標に向かっているのではなく、ロシアや中国、特に中国と戦争する準備を進めているのだと考えるべきだ。(了)
2018.02.07
シリア北西部のイドリブで2月3日にロシア軍機Su-25がMANPADS(携帯型防空システム)で撃墜され、脱出したパイロットは地上での戦闘を経て死亡した。攻撃に関わったと見られるジャブハト・アル・シャム(ジャブハト・アル・ヌスラ)の戦闘員約30名はロシア軍が巡航ミサイルで殲滅している。アル・シャムやアル・ヌスラというタグが付けられた武装集団はアル・カイダ系。つまり、サウジアラビアが雇い、CIAが訓練、イスラエルが協力してきた傭兵が源流で、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が作成した報告書によると、反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団が中心で、その実態はイラクで活動していたAQIと同じ。バラク・オバマ大統領が主張していた「穏健派」は存在していなかった。DIAの報告書はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告しているが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。このダーイッシュも源流はアル・シャム、アル・ヌスラ、AQIと同じだ。アル・シャムがMANPADSをどこから入手したか調べるためにシリアの特殊部隊がイドリブで活動中だというが、少なからぬ人はアメリカを頭に浮かべたはずだ。それを感じたのか、アメリカ軍はMANPADSの供給を否定している。アメリカはシリア北部、トルコとの国境近くに3万人規模のシリア国境軍を編成するとしているが、その主体はSDF(シリア民主軍)/YPG(クルド人民防衛隊)。イスラエルでは、アメリカがこの勢力にMANPADSを提供していると伝えられている。2011年にシリアへの侵略が始まった当時、その背後にはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心に、イギリス、フランス、トルコ、カタールなどが参加していた。侵略に使われた傭兵は三国同盟系、トルコ系、カタール系などに分かれていたようだが、当初は連携していた。ところが、2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入して戦況が政府軍優位になると侵略勢力の結束が弱まり、トルコやカタールは離反した。その結果、傭兵集団も内部対立が生じる。イドリブの主要武装勢力はトルコ系とアメリカ系で、今回の撃墜にトルコ系は関与していないと見られている。(つづく)
2018.02.06
1980年代にロナルド・レーガン政権内ではイラクのサダム・フセインをどう扱うかで対立があった。ジョージ・H・W・ブッシュ副大統領やジェームズ・ベイカー財務長官はフセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤と捉えていたのに対し、ネオコンはイラクに親イスラエル派体制を樹立、トルコ、イラク、ヨルダンの親イスラエル国帯を築いてシリアとイランを分断、弱体化させるべきだとしていた。ジョージ・H・W・ブッシュが大統領だった1990年8月にイラクがクウェートへ軍事侵攻し、翌年1月にアメリカ軍主導の軍隊がイラクへ攻め込んでいるが、このときにブッシュ政権はフセインを排除しない。ネオコンは激怒、ブッシュは再選されなかった。その息子であるジョージ・W・ブッシュは2001年に大統領となるが、その周辺はネオコンが固めていた。その年の9月11日にニューヨークで世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、それを利用し、2003年3月にアメリカ軍は従属国の軍隊を引き連れてイラクを先制攻撃、フセインを処刑することに成功した。その際、大量破壊兵器をイラク軍が保有しているとアメリカの政府や有力メディアが宣伝していたが、嘘だった。そして2011年にシリアが傭兵部隊によって侵略され、イランに対する工作も進んでいる。現大統領のドナルド・トランプは選挙キャンペーン期間中はネオコンのプランを否定する政策を打ち出していたが、マイケル・フリン国家安全保障補佐官やスティーブン・バノン首席戦略官が去り、ネオコンの世界戦略が復活した。フリンの後任であるH. R. マクマスターはデビッド・ペトレイアスの子分。つまりヒラリー・クリントンに近く、ネオコンにつながっている。日本では1995年に「東アジア戦略報告」が作成された時からウォルフォウィッツ・ドクトリンの戦略に基づき、アメリカの戦争マシーンに組み込まれてきた。ドクトリンが作成されて間もなくして「安全保障研究所(安保研)」と「日本平和・文化交流協会」が動き始めているが、両組織で中心的な役割を果たしたのが秋山直紀。防衛事務次官だった守屋武昌と山田洋行との問題で注目されることになる。この守屋が辺野古での新基地建設、米陸軍第1軍司令部の座間基地への移転などの巨大利権に関係、小泉純一郎の懐刀と言われた飯島勲と結びついたとする話も流れた。ドクトリンが作成された2年後、1994年8月に細川護煕政権の「防衛問題懇談会」が作成した「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」は国連中心主義の立場から書かれていたことからマイケル・グリーンとパトリック・クローニンは「日本が自立の道を歩き出そうとしている」主張、ジョセフ・ナイ国防次官補が「東アジア戦略報告」を書き上げることになった。1997年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が作成され、99年には「周辺事態法」が成立した。2000年にはネオコン系シンクタンクPNACがDPGの草案をベースにした「米国防の再構築」が発表されているが、この年にはナイとリチャード・アーミテージのグループが「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」を作成している。そして2001年9月11日の攻撃。ネオコンにとって絶妙のタイミングだ。この攻撃を利用してアメリカ支配層は国内でファシズム化を進め、国外で軍事侵略を本格派する。1982年に出されたNSDD55で核戦争を想定した戒厳令計画と言われるCOGプロジェクトが始まり、88年には大統領令12656で国家安全保障上の緊急事態に変更、9/11でCOGが起動している。おそらく日本の緊急事態条項はこれがモデルだ。日本では2002年に小泉純一郎政権が「武力攻撃事態法案」、03年にはイラク特別措置法案が国会に提出され、04年にアーミテージは自民党の中川秀直らに対して「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と言明。2005年には「日米同盟:未来のための変革と再編」が署名されて対象は世界へ拡大、安保条約で言及されていた「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念」は放棄される。そして2012年にはアーミテージとナイのコンビが「日米同盟:アジア安定の定着」を発表した。もっとも、アメリカは遅くとも1992年2月の時点で国連と決別、単独行動主義へ切り替えている。アメリカの支配層が日本に担当させようとしているのは太平洋からインド洋にかけての海域。アメリカ、オーストラリア、インド、日本が連携して中国を封じ込めることになっている。その一方で日本はイギリスと軍事同盟についての話し合いをはじめたようだ。アメリカ、オーストラリア、イギリスはアングロ・サクソン系の国であり、かつてイギリスの植民地だったインドの現政権はイスラエルと緊密な関係にある。勿論、日本の明治維新はイギリスが黒幕だった。フィリピンでベニグノ・アキノ3世がフィリピン大統領だった当時、アメリカは配下の国としてオーストラリア、インド、日本のほか、フィリピン、ベトナム、韓国を結びつけて「東アジア版NATO」を作り上げようとしていたが、これは難しくなっている。(了)
2018.02.06
沖縄県名護市の市長選挙で渡具知武豊が稲嶺進を破り、初当選した。渡具知はアメリカ軍普天間飛行場移設計画を事実上容認している人物だというが、これでアメリカや日本の戦略に変化が生じることはないだろう。本ブログでは何度も指摘しているように、アメリカでは好戦派のネオコンが国防総省のDPG草案として1992年2月に世界制覇プランを作成した。当時、国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツが中心になっていたことから、ウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。その直後からアメリカの有力メディアは戦争熱を煽る報道を続けているが、1992年の大統領選挙で選ばれたビル・クリントンは当初、戦争に消極的だった。しかし、1997年1月に流れが大きく変化する。国務長官が戦争に消極的だったクリストファー・ウォーレンから好戦的なマデリーン・オルブライトに交代したのだ。この人事を大統領に働きかけたのはヒラリー・クリントンだと言われている。オルブライトはズビグネフ・ブレジンスキーの教え子で、ヒラリーの友人。この政権にはネオコンのビクトリア・ヌランドが国務副長官首席補佐官を務めているが、このヌランドもヒラリーと親しい。ちなみに、ヌランドの夫であるロバート・ケーガンもネオコンの大物として知られている。1998年の秋にオルブライトはユーゴスラビア空爆を支持すると表明、その年の10月にビル・クリントン大統領はリチャード・ホルブルックをセルビアに派遣してコソボから軍隊を引き揚げなければセルビアを空爆するとスロボダン・ミロシェビッチ大統領を脅し挙げた。そして1999年3月、NATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃した。この攻撃ではアメリカ軍のB2ステルス爆撃機がスロボダン・ミロシェビッチ大統領の自宅のほか、中国大使館も爆撃している。目標を設定したのはCIAで、大使館へは3方向からミサイルが撃ち込まれた。アメリカ側は例によって「誤爆」だとしているが、計画的な爆撃だった可能性が高い。ウォルフォウィッツ・ドクトリンの前、1991年9月に第1草稿が書かれているが、そのころにウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語っていたという。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官が2007年に語っている。(3月、10月)
2018.02.05
アメリカ国防総省で1992年2月にDPG草案が作成される直前、ネオコンは自分たちがライバルのソ連に勝利したと思い、唯一の超大国になった自分たちに逆らう国は存在しないと考えた。世界はアメリカの軍事力に屈服し、パックス・アメリカーナが実現されるというわけだ。世界の覇者となったアメリカは全ての利益を独占する権利があり、自分たちの行動や態度を顧みる必要はないとネオコンは考えた。それはアメリカという国が富を独占するということではなく、アメリカを支配する何百分の一%かの社会的強者が総取りするということだ。そうした支配者に刃向かうものたちは「制裁」の対象になる。そうしたネオコンのプランはウラジミル・プーチンがロシアを再独立させることで破綻してしまう。アメリカが軍事侵略してもロシアや中国は手を出せず、この両国を先制第一撃で破壊できるので全面核戦争を恐れる必要はないと考えた。しかし、2008年8月のジョージアによる南オセチアへの奇襲攻撃が失敗したことで、そうしたネオコンの認識は正しくないことが判明する。2003年にはネオコンのポール・ウォルフォウィッツが国防次官時代の1991年に語ったプランに従ってイラクを先制攻撃、11年にはリビアとシリアを傭兵で侵略する。その傭兵の主体はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団であり、その黒幕はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心とする勢力。リビアではこうした傭兵で編成された地上軍とNATOが保有する航空兵力の連携が機能してムアンマル・アル・カダフィ政権は崩壊、カダフィ自身は惨殺された。イラクのサダム・フセインやリビアのカダフィを殺した三国同盟はシリアのバシャール・アル・アサド大統領が亡命すると予測していたようだが、逃げ出さなかった。本人だけでなく妻もシリアに留まり、抵抗を続ける。2015年9月30日にはロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、傭兵部隊は劣勢になり、今では壊滅寸前。アメリカは自分たちと関係の深い戦闘員を救出し、アフガニスタンへ運んだり、クルドを中心とする新たな戦闘集団に合流させているが、状況は良くない。それに対し、ロシア軍は保有する航空機、防空システム、戦車、巡航ミサイルなどが高性能だということを見せつけ、アメリカ軍は強くないということを明らかにしている。そこでアメリカ支配層の内部にはロシア軍との衝突を避けようとする動きが現れ、2015年春には次期大統領として内定していたはずのヒラリー・クリントンでなく、ドナルド・トランプが当選する事態になった。ところがネオコンは1992年2月に作成した世界制覇プランに固執、中国やロシアを軍事力で屈服させようとしている。アメリカの支配体制はドルが基軸通貨だということで維持されてきたのだが、そのドル体制が今、揺らいでいる。ドルを基軸通貨の地位から引きずり下ろす力の源はロシアと中国だ。アメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと同国のモシェ・ダヤン将軍は語った。凶人のように振る舞い、狂犬のように行動すれば中国やロシアも恐れをなして屈服するとネオコンは今でも信じているようだ。安倍晋三政権や有力マスコミなどは、そうしたアメリカやイスラエルに従属している。日本人の多くがこうした現実に気づけば破滅への道から逃れることができるが、日本が滅びようと、そうした狂気の戦略に従わないと自分たちの不利益になるという考え方が広まっている。(了)
2018.02.05
アメリカのリチャード・ニクソン大統領は中国との関係修復に動き、ベトナム戦争も終える。その時期に田中角栄首相は中国を訪問し、周恩来と会談して両国の友好関係樹立を実現した。その際、両者は尖閣諸島の領有権問題の「棚上げ」で合意している。この事実を否定することはできない。東アジアの軍事的な緊張と高めるためにはこの合意を壊す必要がある。その引き金を引いたのが民主党の菅直人政権だった。2010年9月、菅政権の時に海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕しているが、これは「日中漁業協定」を無視する行為。当然、海上保安庁は協定を熟知しているはず。海上保安庁は国土交通省の外局で、その当時の国土交通大臣は前原。大臣の意思がなければ不可能な行為だ。つまり、前原は田中と周による棚上げ合意を壊し、日本と中国との関係悪化を図ったのである。日中関係を悪化させる目論見は安倍晋三政権も引き継いでいる。ネオコンの世界制覇プランが国防総省のDPG草案という形で作成されたのは1992年2月のことだが、この当時、アメリカの好戦派は自国が唯一の超大国になったと認識、ロシアも中国も自分たちに刃向かうことはできず、国連を無視して単独で好きなことができるようになったと思い込んでいる。日本では1994年に細川護煕政権の諮問機関「防衛問題懇談会」が「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」を作成するが、これは国連中心主義だった。そこで国防大学のマイケル・グリーンとパトリック・クローニンは日本が自立の道を歩き出そうとしていると主張、友人のカート・キャンベル国防次官補を説得してジョセフ・ナイたちに自分たちの考えを売り込み、1995年の「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」につながる。その後、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれていった。その戦争マシーンはアメリカの軍事力が他国を圧倒していると思い込む。CFR/外交問題評議会が発行しているフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文では、アメリカ軍の先制第1撃でロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いと主張されている。つまりアメリカはロシアと中国との核戦争で一方的に勝てると見通していたのだが、これはアメリカ好戦派の九通認識だったのだろう。2008年8月8日に北京で夏季オリンピックが開幕するが、その日にジョージア(グルジア)は南オセチアを奇襲攻撃する。この攻撃の前月、2008年7月10日にアメリカのコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問しているが、この時に奇襲攻撃に関する何らかの話し合いが持たれたのではないかと推測する人もいる。ジョージア政府が自分たちの意思だけで戦争を始められるとは考え難いからだ。攻撃の直前、2008年1月から4月にかけてはアメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を派遣しているが、イスラエルは7年前からジョージアに対する軍事支援を始めている。イスラエルの軍事会社はジョージアへ無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどを含む武器/兵器を提供、軍事訓練も行っている。ジョージアのエリート部隊を訓練していた会社はイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてジョージアに入っていた。しかも、イスラエル軍の機密文書が使われていたとする証言もある。これだけに時間をかけて準備された軍事作戦だが、ロシア軍の反撃で完敗する。戦争後、ジョージアの攻撃を「無謀だった」と言う人もいたが、ジョージアは勿論、アメリカもイスラエルも勝てると考えていたはずだ。ロシア軍が予想以上に強かったのだ。ロシア軍は出てこないと考えていた可能性もある。8月15日にライスは再びジョージアを訪問、サーカシビリと会談している。イスラエルがジョージア政府に食い込んでいたことは当時の閣僚を見てもわかる。流暢にヘブライ語を話せる閣僚がふたりいたのだ。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当していた再統一担当大臣のテムル・ヤコバシビリだ。その後、サーカシビリはジョージアから逃げ出し、今はウクライナへ不法入国している。ネオコンが仕組んだ2014年2月のクーデターが計画通りに進まず、ウクライナは破綻国家になっている。このクーデターはソチ・オリンピックの開催にタイミングを合わせたものだった。ウクライナでは新たな戦争を目論んでいるとも言われているのだが、そうした動きの中心にサーカシビリがいる。シリアへ傭兵部隊を送り込んでバシャール・アル・アサド政権を倒して傀儡対瀬を樹立することに失敗したアメリカは新たな戦争を引き起こして一発逆転を狙い、東アジアでも軍事的な緊張を高めようとしている。今年3月18日にはロシアで大統領選挙があり、6月14日から7月15日にかけてはロシアでサッカーのワールドカップがある。アメリカが戦争を仕掛ける時、こうしたイベントがしばしば使われる。
2018.02.05
アメリカの東アジア侵略は1898年から始まる。その年、キューバのハバナ港に停泊していたアメリカの軍艦「メイン号」の爆沈をスペインが実行したと主張、戦争を始めたのだが、この戦争に勝利したアメリカはスペインにキューバの「独立」を認めさせ、プエルトリコ、グアム、フィリピンを買収する。この年にはハワイも支配下におく。フィリピンを植民地化し、中国市場へ乗り込む橋頭堡として位置づけられた。このアメリカを幸徳秋水は1901年に出版された『廿世紀之怪物 帝国主義』の中で帝国主義だと批判している。「米国にして真にキュバ叛徒の自由のために戦えるか、何ぞ比律賓人民の自由を束縛するの甚だしきや。」「それ他の人民の意思に反して、武力暴力をもって強圧し、その地を奪い富を掠めんとす。」この幸徳は1910年に「天皇暗殺を計画した」という口実で逮捕され、死刑になる。大逆事件だ。支配者にとって目障りな人々を一掃するために当局が仕組んだフレーム・アップだった。この時代からイギリスやアメリカは中国やロシアの制圧も計画、日本はその手先として働いている。朝鮮半島は侵略を始める上陸地点だ。大戦後の朝鮮戦争も目的は中国侵略だっただろう。朝鮮戦争が勃発したのは1950年6月25日だが、その前から小規模の軍事衝突はあったという。また、その当時、ダグラス・マッカーサーに同行して日本にいた歴史家のジョン・ガンサーによると、半島からマッカーサーに入った最初の電話連絡は「韓国軍が北を攻撃した」というものだったという。(F. William Engdahl, “Gods of Money”, Progressive, 2009)戦争勃発の3日前、アレン・ダレスの兄であるジョン・フォスター・ダレスは朝鮮半島から日本へわたり、吉田茂と会談した後にニューズウィーク誌の東京支局長だったコンプトン・パケナムの家で夕食会に参加している。日本側から出席したのは大蔵省の渡辺武、宮内省の松平康昌、国家地方警察企画課長の海原治、外務省の沢田廉三だ。そして1951年4月、約2000名の国民党軍がCIAの軍事顧問団とともに中国領内に侵入して一時は片馬(ケンマ)を占領、翌年の8月にも中国へ侵攻して国境から約100キロメートルほど進んだが、この時も人民解放軍の反撃で失敗に終わっている。朝鮮戦争は1953年7月に休戦協定が成立するが、その2カ月前にベトナムではアメリカの支援を受けていたフランス軍がディエンビエンフーで北ベトナム軍に包囲され、翌年の5月にフランス軍は降伏した。フランスが降伏する4カ月前、1954年1月にジョン・フォスター・ダレス国務長官がベトナムでのゲリラ戦を準備するように提案している。その年の夏、ダレス国務長官の弟であるアレン・ダレスが長官だったCIAはSMM(サイゴン軍事派遣団)を編成、破壊活動を開始している。この段階からアメリカはベトナムへ軍事介入していたわけだが、1961年から大統領になったジョン・F・ケネディ大統領はアメリカ軍をベトナムから撤退させることを決めていたが、63年11月に暗殺され、引き継いだリンドン・ジョンソンはケネディの決定を取り消して本格的な軍事介入へ突き進んだ。
2018.02.05
韓国の平昌で2月9日から25日にかけて冬期オリンピックが開催される予定だ。韓国とアメリカの合同軍事演習をオリンピックの後まで延期、朝鮮は選手を派遣するという。アメリカや日本で大きな力を持っている好戦的な勢力にとっては気にくわない展開だろう。日本には朝鮮半島を侵略した過去がある。例えば豊臣秀吉。明治維新から第2次世界大戦で敗北するまでの日本は東アジアを侵略、略奪を目論んだが、こうしたことは経済活動を破壊する行為。徳川時代は周辺と友好的な関係を結んで経済的には栄えている。周辺国との関係を悪化させるのは愚策だ。しかし、日本が中国やソ連/ロシアと友好的な関係を結ぶことはアメリカの支配層にとって好ましくない。日本を拠点に侵略できなくなるだけでなく、日本と中国、さらにロシアが結びつけばアメリカにとって強力なライバルになってしまう。東アジアでは領土問題が地域を不安定化する大きな要因になっているが、日本の領土は敗戦で明確に決められていた。日本はポツダム宣言を受け入れて降伏したのだが、その宣言には次のように書かれている:「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシまた、カイロ宣言には中国と日本との関係についての記述がある:右同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国ガ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト竝ニ満洲,台湾及膨湖島ノ如キ日本国ガ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ日本国ハ又暴力及貪欲ニ依リ日本国ガ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルベシ降伏した時点で日本の領土として確定していたのは本州、北海道、九州、四国だけだ。日本が中国から奪った一切の地域は返還しなければならず、日本領となる小島は連合軍が定めることになっている。日本がソ連/ロシア、中国、朝鮮/韓国と領土で揉めているのはアメリカの策略にほかならない。本来存在しない領土問題で日本は周辺国と揉めているのだが、その原因を明治維新から敗戦までの期間に作り上げたことも事実。本ブログでは何度も指摘しているように、明治政府は1871年7月に廃藩置県を実施、琉球国は独立国として扱われている。その独立国を1872年に廃して琉球藩を設置した。つまり琉球併合だ。形式上、琉球は日本領になった。廃藩置県の3カ月後、1871年10月に琉球の一部、宮古島の漁民が難破して台湾へ漂着し、その際に何人かが殺されたと言われている。その出来事を口実にして日本政府は清(中国)へ賠償や謝罪を要求、1874年には台湾へ派兵している。1872年に来日した厦門のアメリカ領事、チャールズ・リ・ジェンダーは外務卿だった副島種臣に台湾への派兵を勧め、それ以降、75年まで外務省の顧問を務めた。その1875年に日本政府は軍艦を江華島へ派遣する。そこは李氏朝鮮の首都を守る要衝で、明らかに挑発だった。その結果、「日朝修好条規」を結ばせて清国の宗主権を否定させることに成功、無関税特権を認めさせ、釜山、仁川、元山を開港させている。条規の批准交換にル・ジェンダーも陪席したという。そのリ・ジェンダーは1890年に離日、その年から99年まで李氏朝鮮の王、高宗の顧問を務めている。当時の朝鮮は興宣大院君(高宗の父)と閔妃が対立、1894年には甲午農民戦争(東学党の乱)が起こり、閔氏の体制が揺らいでいる。こうした状況にリ・ジェンダーが深く関与していたことは間違いないだろう。その内乱を見た日本政府は「邦人保護」を名目にして軍隊を派遣、朝鮮政府の依頼で清も出兵したことから日清戦争につながる。この戦争に勝利した日本は1895年4月、「下関条約」に調印して大陸侵略の第一歩を記すことになる。閔氏の支配体制が揺らぐ中、1895年10月に日本の三浦梧楼公使たちが閔妃を暗殺した。日本の官憲と「大陸浪人」が閔妃を含む女性3名を殺害したのだが、暗殺に加わった三浦公使たちは「証拠不十分」で無罪になっている。そして1904年2月、日本海軍の主力艦隊が旅順高のロシア艦隊を奇襲攻撃、日露戦争が始まる。明治維新以降、日本の支配層はイギリスの支援を受けていたが、ロシアはそのイギリスが制圧しようとしていた国だ。この当時、イギリスはライバルのフランス、ドイツ、ロシアに対抗するために約14万人の兵士が必要だと考えていたのだが、実際の兵力は7万人。そこで清との戦争に勝利した日本に目をつけ、1902年に日英同盟協定を結んだ。ロシアとの戦費としてクーン・ローブのジェイコブ・シフは日本に対して約2億ドルを融資するが、その際にシフは日銀副総裁だった高橋是清は親しくなっている。
2018.02.04
2月2日に公開されたニューネス・メモにはFBIや司法省がFISC(外国情報裁判所)を欺き、選挙キャンペーンの期間注にドナルド・トランプの側近を監視、捜索するために必要な令状を出させたことが指摘されているのだが、FISCはこの件に関するメモを2017年4月に作成、NSA(国家安全保障庁)、FBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)、NCTC(国家テロ対策センター)に問題があったことを認めている。ポール・クレイグ・ロバーツ元財務次官補によると、司法省、FBI、CIA、NCTC(国家情報長官オフィスの下部機関)による不正行為をNSAのマイケル・ロジャース長官が気づいて調査、FISCに知らせたという。これが事実だとすると、当然、知らせたのはFISCのメモが作成される前のこと。つまり2017年4月より前。今年の1月にはロジャース長官が春に引退するという記事をPOLITICOが掲載している。ふたりの情報機関オフィサーが同誌に話したという。議員にしても、有力メディアの編集者や記者にしても、NSAからFISCへそうした情報が伝えられていたのならば、ニューネス・メモを封印することは困難だっただろう。メモ自体がダメージコントロールだった可能性も否定できない。アメリカ支配層の権力バランスに変化が生じているようにも見える。タイミングを考えると、ドナルド・トランプ大統領が12月6日の演説でエルサレムをイスラエルの首都だと認めたことも関係している可能性がある。
2018.02.04
ドナルド・トランプを2016年の大統領選挙で勝たせるためにロシア政府が選挙に介入したというキャンペーンが民主党、有力メディア、司法省、FBI、CIAなどによって展開されてきたが、監視システムに精通しているNSAの元分析官など専門家は早い段階から偽情報だと指摘している。いわゆるロシアゲートだが、その主張を裏付ける事実は提示されず、説得力はない。そのキャンペーンの実態を調査したデビン・ニューネス下院情報委員会委員長のスタッフは4ページのメモを作成、それが2月2日に公開された。いわゆるニューネス・メモだ。ロシアゲートがFBI/司法省ゲートへ変化しつつある。アメリカ議会でロシアゲートが取り上げられたのは2017年3月のこと。下院情報委員会でアダム・シッフ議員が大統領選挙にロシアが介入したとする声明を発表したが、その根拠とされたのはイギリスの対外情報機関MI6のオフィサーだったクリストファー・スティールの報告書だった。この報告書の信頼度が低いことはスティール本人も認めている。この後、2017年5月にロバート・マラー元FBI長官がロシアゲートの特別検察官に任命されたが、メモによると、FBIの幹部だったブルース・オーは2016年の夏からスティールと会っている。スティールは長期にわたるFBIの情報提供者だったと指摘されているので、そうしたことから接触した可能性がある。選挙キャンペーンでドナルド・トランプの顧問だったカーター・ペイジを監視するためにFBIはFISA(外国情報監視法)の令状を2016年10月に入手したが、その際にマイケル・イシコフがヤフー・ニュースに書いた記事を利用した。この記事の情報源はスティールにほかならない。令状を受け取った当時、FBIのチームはスティールと会うためにヨーロッパへ出向いたとされている。そのスティールを雇ったのはフュージョンGPSなる会社で、そのフュージョンを雇った人物はマーク・エリアスなる弁護士。ヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の顧問弁護士を務めていた。つまり、民主党やヒラリー・クリントンのカネで雇われたFBIへの情報提供者であり元MI6オフィサーが作成した信頼度の低い報告書に基づいてFISC(外国情報裁判所)はトランプの側近を監視、捜索するために必要な令状を選挙期間中に出したことになる。監視する司法省やFBIの幹部は反トランプ派だ。フュージョンはスティールを雇う前、トランプに関する調査と分析をネリー・オーに依頼したが、この女性はCIAの仕事をした経験の持ち主で、夫はFBI幹部のブルース・オー。これは本ブログでも指摘済みの話だ。ロシアゲート事件でイシコフは重要な役割を果たしたが、ビル・クリントン政権では信憑性に乏しい情報に基づく記事を書いて大統領を攻撃していた。1997年10月にリンダ・トリップなる女性がモニカ・ルウィンスキーと大統領との電話による会話を録音、公表している。不適切な関係をうかがわせる内容だが、この後、攻勢は落ち着く。トリップに盗聴するように進めたルシアンヌ・ゴールドバーグは1972年の選挙で戦争反対の意思を鮮明にしていた民主党のジョージ・マクガバンの陣営へスパイとして潜り込んでいた人物だ。マクガバンは民主党の一般党員に支持されていたが、党の幹部は違った。民主党の内部ではヘンリー・ジャクソン上院議員を中心にCDM(民主党多数派連合)が組織されている。ジャクソン議員の事務所はシオニストのリチャード・パイプスを顧問として抱え、まだ若手だったリチャード・パール、ポール・ウォルフォウィッツ、エリオット・エイブラムス、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなど後にネオコンの中心グループを形成する人びとが訓練のために送り込まれていた。ルウィンスキーの話が浮上する9カ月前、1997年1月に国務長官は戦争に消極的だったクリストファー・ウォーレンから好戦的なマデリーン・オルブライトに交代している。オルブライトはヒラリー・クリントンの友人だ。ビル・クリントン政権には2014年のウクライナにおけるクーデターを現場で指揮していたネオコンのビクトリア・ヌランドが国務副長官首席補佐官として加わっていた。このヌランドもヒラリーと親しい。
2018.02.03
東京琉球館で2月17日18時(午後6時)から「アメリカ支配層の内部抗争と国際情勢」について話します。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/アメリカでは大統領選の前年、2015年の6月にはヒラリー・クリントンが次期大統領だとする噂が流れましたが、実際にはドナルド・トランプが選ばれています。それに対し、民主党やアメリカの有力メディアはロシアのウラジミル・プーチン大統領がトランプを勝たせるために大統領選挙へ介入したと根拠なしに主張、2017年3月には下院情報委員会でアダム・シッフ議員がこの問題に関する声明を発表、5月にはロバート・ムラー元FBI長官が特別検察官に任命されてトランプを追い詰める動きが本格化します。ところが、ここにきてムラー、司法省、FBIの不正行為を指摘する情報が流れはじめました。2015年7月にFBIがクリントンの電子メールに関する捜査を始めた際、その責任者になったのはFBIワシントン支局のアンディ・マッケイブ支局長でしたが、この人物がクリントンと関係の深いバージニア州知事とつながっていることが明らかにされます。この知事は1996年にビル・クリントン再選委員会の委員長を務め、2001年から05年にかけては民主党全国委員会の委員長、そして08年にはヒラリー・クリントンの選挙キャンペーンにも参加しているのですが、この人物からアンディの妻、ジルへ州上院議員選挙のための資金67万5000ドルが渡っていたのです。2017年1月に司法長官代理を務めたサリー・イェーツはトランプの政策に反対、その発言をムラーの側近として知られるアンドリュー・ワイツマンは電子メールで賞賛していました。トランプ大統領が国家安全保障補佐官に選んだマイケル・フリン中将を罠にかけ、不正な行為をしていないにもかかわらず、形式的な偽証をさせています。シッフ下院議員の声明はクリストファー・スティールという元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーが作成した報告書に基づいていますが、その情報の信頼度が低いことはスティールも認めています。そのスティールを雇ったのはフュージョンGPSという会社で、この会社を雇ったのはクリントンの選挙キャンペーンと民主党全国委員会の顧問弁護士を務めるマーク・エリアスでした。スティールの前にフュージョンは同じ仕事をネリー・オーに依頼しています。この人物はCIAの仕事をした経験があるうえ、その夫は司法省幹部のブルース・オーでした。2016年の大統領選挙が終わって間もなく、ブルースはスティールやフュージョンのグレン・シンプソンと会っていますが、投票前の10月にFBIのチームがスティールと会うため、ヨーロッパへ出向いたとされています。ここにきて注目されているのは、デビン・ニューネス下院情報委員会委員長のスタッフが作成した4ページの調査結果に関するメモ。政治的な目的、あるいは怪しげな情報に基づいてFISA(外国情報監視法)の令状を取っている可能性があると指摘しているようです。遅くとも2015年6月にクリントンは次期大統領に選ばれたと見られていますが、実際はトランプが勝ちました。途中で流れが変化したのです。ビルダーバーグ・グループと深い関係にあるヘンリー・キッシンジャーが2016年2月10日にロシアを訪問、ウラジミル・プーチン露大統領と会談したのを見て流れの変化を感じた人は少なくありませんでした。2015年にバラク・オバマ大統領は戦争へ向かって舵を切った可能性があります。シリアの反政府軍に穏健派はいないとした上、ダーイッシュ的な勢力の出現を警告していたフリンはダーイッシュが売り出された2014年の8月にDIA局長を解任されていますが、2015年2月に国防長官がチャック・ヘイゲルからアシュトン・カーター、統合参謀本部議長がマーティン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代になっています。シリアとの戦争に消極的なふたりが好戦派のふたりに替わったのです。デンプシーが退任した3日後、プーチン露大統領は国連で演説しています。演説、暴力、貧困、そして社会的惨事を招き、人権を気にかけず、うぬぼれや自分は特別で何をしても許されるという信念に基づく政策が推進されていると批判したのですが、その言葉が向けられた相手はアメリカでした。その2日後、ロシア軍はシリア政府の要請に基づいてアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュに対する空爆を開始、カスピ海の艦船から26基の巡航ミサイルを発射、約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で全て命中させています。アメリカに対し、戦争を始めるとどうなるかを示したと言えるでしょう。この時期を考えると、このロシア軍による攻撃がアメリカ支配層の内部に影響を及ぼし、クリントンを次期大統領にするという流れを変えた可能性があります。この見方が正しいならば、ロシアはアメリカの大統領選挙に介入したと言えるでしょうが、これは中東における破壊と殺戮を広げないことが目的です。だからこそ、戦乱を広げたいと考えていた人たちは怒りました。アメリカ支配層の内部抗争と国際情勢は密接に結びついています。2月17日にはそうした話をする予定です。
2018.02.02
アメリカでは大統領選の当時からドナルド・トランプをCIAやFBIは攻撃してきた。民主党や有力メディアはロシア政府がトランプを勝たせるために選挙へ介入したと主張、FBIはそれを口実にしてトランプ陣営を監視してきた可能性が高い。FISA(外国情報監視法)という法律を利用、ロシアという「外国勢力」を巻き込むことでトランプを「外国勢力のエージェント」だとし、監視したという。そうした手段で情報を収集するためにはFISC(外国情報裁判所)の許可が必要だが、ここはフリーパスに近い。そこで、FBIやCIAはトランプ陣営の情報を自由に入手できるようになり、その情報をクリントンを勝たせるために使った可能性がある。そうした不正行為に関する4ページの覚書がFBIを追い詰めている。FBI幹部のピーター・ストルゾクと同僚のリサ・ペイジとの電子メールによる遣り取りもFBIや司法省を窮地に追い込んだ。全ての電子的な通信はNSAが傍受、記録している。FBIが表だってトランプとロシアとの関係を捜査しはじめたのは昨年(2017年)3月。下院情報委員会でアダム・シッフ議員が大統領選挙にロシアが介入したとする声明を発表したのだが、その根拠とされたのはイギリスの対外情報機関MI6のオフィサーだったクリストファー・スティールの報告書だった。スティール本人も信頼度が低いことを認めている代物。そのスティールを雇ったのはフュージョンGPSなる会社。そのフュージョンを雇ったマーク・エリアスなる人物はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の顧問弁護士だ。スティールを雇う前、フュージョンはトランプに関する調査と分析をネリー・オーなる人物に依頼している。この女性はCIAの仕事をした経験の持ち主で、その夫はFBI幹部のブルース・オー。シッフ発言の5カ月前、FBIのチームはスティールと会うためにヨーロッパへ出向いたとされているが、ブルース・オーも大統領選の直後にスティールやフュージョンを創設したグレン・シンプソンと会っている。こうしたことが発覚したこともあり、ブルースは2017年12月に解任された。民主党、FBI、CIAといった反トランプ勢力が追い詰められる中、ロシア政府ととらんぷを結びつけるという新たな文書が現れたが、その内容はスティールの主張を焼き直したもので、内容に新味はない。注目されているのは、それを書いた人物だ。第2の文書を書いたのはコディー・シーラー。その双子の片割れであるブルックはヒラリー・クリントンのスタッフで、1971年にストローブ・タルボットと結婚している。タルボットは1994年2月から2001年1月にかけて、つまりビル・クリントン政権で国務副長官を務めている。ブルックとコディーの兄、デレクはタルボットのルームメートで、フィンランド駐在大使を務めた。その父親、ロイドはパレード誌の編集者だった。
2018.02.01
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