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「働き方改革関連法」が参議院本会議で自民党、公明党、日本維新の会などの賛成で可決、成立した。安倍晋三政権が成立を目指していた法案で、成立のためにデータを捏造、隠蔽したことが発覚している。この法律は国民の大多数を占める庶民から基本的人権を奪う一環として持ち出されたもので、巨大資本に国を上回る権力を与えるTPP11(環太平洋経済連携協定)と目的は同じだ。 安倍政権は「強者総取り」の新自由主義に基づく政策を推進している。このイデオロギーの教祖的な存在はシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授。「朕は国家なり」とフラン国王ルイ14世は言ったそうだが、「巨大資本は世界なり」が新自由主義。巨大資本のカネ儲けにとって障害になる法律は認められない。「普遍的な法の強力な支配」を前提にしているという主張は誤解、あるいは嘘だ。 フリードマンの師にあたるフリードリッヒ・フォン・ハイエクはジョン・メイナード・ケインズのライバル的な存在。そのケインズの理論に基づく政策を掲げていたのがフランクリン・ルーズベルトが率いていたニューディール派だ。 ニューディール派は大企業の活動を制限し、労働者の権利を認め、ファシズムに反対、植民地にも否定的な立場を示していたことからウォール街は危険視、1932年の大統領選挙では大企業/富裕層を優遇する政策を進めていた現職のハーバート・フーバーを支援していたが、フーバーは再選されなかった。 ちなみに、フーバーはスタンフォード大学を卒業した後、鉱山技師としてアリゾナにあるロスチャイルドの鉱山で働いていた人物。利益のためなら安全を軽視するタイプだったことから経営者に好かれ、ウォール街と結びついたという。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) そのルーズベルトは就任式の前にフロリダ州マイアミで開かれた集会で銃撃事件に巻き込まれている。ジュゼッペ・ザンガラなる人物が32口径のリボルバーから5発の弾丸を発射、弾丸はルーズベルトの隣にいたシカゴのアントン・セルマック市長に命中、市長は死亡した。 ルーズベルトが大統領に就任した後、1933年から34年にかけてウォール街の住人たちが反ニューディール派のクーデターを計画している。これはアメリカ海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー少将がアメリカ下院の「非米活動特別委員会」で告発し、発覚した。クーデター派はイタリア、ドイツ、フランスのファシスト団体の活動に興味を持ち、特にフランスのクロワ・ド・フ(火の十字軍)に注目していたという。 バトラーと親しかったジャーナリストのポール・フレンチは1934年9月にウォール街のメンバーを取材、コミュニストから国を守るためにファシスト政権をアメリカに樹立させる必要があるという証言を得ている。 ウォール街の住人たちは国の政策や法律によって拘束されることを嫌い、ファシズムを望んだ。これが彼らにとっての自由。フランクリン・ルーズベルトは大統領時代の1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っている。「もし、私的権力が自分たちの民主的国家そのものより強くなることを人びとが許すならば、民主主義の自由は危うくなる。本質的に、個人、グループ、あるいは私的権力をコントロールする何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」 しかし、ニューディール派の政策は司法など支配システムによって妨害されたこともあり、不十分なものだった。当初はルーズベルトを支持していたヒューイ・ロング上院議員も不満をもったひとりで、純資産税の導入を主張する。1936年の大統領選挙に出馬する意向で、当選する可能性もあったのだが、その夢は1935年9月10日に砕け散る。暗殺されたのだ。 新自由主義は1973年、チリで初めて導入される。ヘンリー・キッシンジャーがCIAを動かし、オーグスト・ピノチェトに軍事クーデターを実行させてサルバドール・アジェンデ政権を倒す。同年9月11日のことだ。チリは外国巨大資本の食い物になる。そのときの経済政策を作成したのが新自由主義者だ。それは日本にも波及する。中曽根康弘政権はそのために誕生したとも言える。国鉄の私有化はその幕開けを告げる出来事だった。
2018.06.29
アメリカのジョン・ボルトン国家安全保障補佐官がロシアを訪問、6月27日にウラジミル・プーチン露大統領と会談した。ロシア側から外務大臣、国防大臣、政治担当の大統領顧問も同席したという。数週間後に実現すると言われているプーチン大統領とドナルド・トランプ米大統領との会談の準備だと見られている。会談のテーマはシリアやウクライナの情勢、そして米ロ関係だと伝えられているが、少なくとも背景には朝鮮半島の問題もあるだろう。 イスラエルやヨルダンとの国境に近いシリアの南部では政府軍が攻勢を強め、イスラエルやアメリカを後ろ盾とする傭兵軍、FSA(自由シリア軍)は防衛体制が崩れたとも言われている。この攻勢にはロシア軍も参加、アメリカ軍はFSAに対して軍事介入しないと通告したという。 アメリカやイスラエルと侵略戦争で連携しているサウジアラビアにも動きが見られる。ここにきて同国のモハメド・ビン・サリマン皇太子がヨルダンを秘密裏に訪問、王宮でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談したとヨルダンで伝えられた。またドナルド・トランプ米大統領の義理の息子で大統領上級顧問を務めるジャレッド・クシュナーは国際交渉に関する特別代表のジェーソン・グリーンブラットとサウジアラビア、エジプト、ヨルダン、カタールを歴訪している。 クシュナーはヘンリー・キッシンジャーのアドバイスを受けていると言われている。キッシンジャーのやり方は、軍事的な圧力で相手を脅し、交渉を優位に運ぶというものだが、今回は脅しが成功していない。 ユーフラテス川の北側ではアメリカ、イギリス、フランスが軍事基地を増強中。ユーフラテス川沿い、デリゾールを含むイラクとの国境に近い地域には油田地帯があり、アメリカ軍はそこの支配を確たるものにしようとしている。2017年にロシア軍のバレリー・アサポフ中将が戦死したのもそこだ。その際、アサポフ中将の位置に関する正確な情報がアメリカ側から戦闘集団へ伝えられていたと言われている。 戦況が政府軍優位になり、ロシア軍が戦闘能力の高さを見せる中、ジハード傭兵に制圧されていた地域が開放されている。それに伴い、解放された住民が侵略戦争と戦う姿勢を見せ始めた。国外へ避難していたシリア国民が帰国しつつあり、米英仏は軍隊を居座らせることが難しくなってくる可能性がある。 アメリカがネオ・ナチを使ったクーデターで実権を握ったウクライナは破綻国家と化し、ネオ・ナチは存在感を強めている。アメリカ/NATO軍はロシアに対する軍事的な圧力を強め、大規模な軍事衝突が勃発しても不思議でない状況だ。ロシアで開催されているサッカーのワールドカップの期間中に何かが引き起こされるのではないかと懸念する声は今でもある。 朝鮮半島の問題では、ロシアや中国と連携した韓国政府が朝鮮を引き込んで軍事的な緊張を緩和させる方向へ動いている。日本では「朝鮮半島の完全な非核化」を「朝鮮の一方的な非核化」にすり替えようとした人もいた。朝鮮がアメリカに全面降伏、アメリカや日本の資金で「復興」させる、つまり朝鮮半島全域を支配するというシナリオなのかもしれないが、これは実現しそうもない。 韓国の文在寅大統領は6月22日にロシアを訪問してプーチン大統領と会談、両国は平和的な朝鮮半島の非核化を目指すことで一致しただけでなく、国境を越えたエネルギー・プロジェクトを推進し、FTA(自由貿易協定)に関する話し合いを始めることで合意した。この計画を潰すためには、朝鮮に対する「制裁」を各国に続けさせるしかない。 同じ22日にトランプ大統領は朝鮮を「尋常でない脅威」だと表現、さらに1年の間「制裁」を続ける意思を示した。アメリカ側の描いたシナリオは破綻しているように見える。最終的にはアメリカの影響下にある韓国の軍や情報機関を使うしかないのかもしれない。
2018.06.28
トルコで6月24日に行われた大統領選挙でレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が再選された。エルドアン大統領は現在、アメリカ政府と対立関係にあり、西側有力メディアの評判は悪い。民主的と呼ぶことのできない人物で、言論を弾圧してきたは事実だが、それが原因でのことではない。ある時期まで西側の同盟者だったのだが、そのときの行為は現在より悪かった。 2011年3月にアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、カタールなどとシリアに対する侵略戦争を始めた当時はこのグループの一員で、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とするジハード傭兵への兵站線はトルコからシリア国内へ伸び、そのルートはトルコの情報機関が管理していた。またトルコにある米空軍インシルリク基地は侵略の重要な拠点で、アメリカ、イギリス、フランスなどの情報機関員や特殊部隊員が戦闘員を訓練する場でもあった。 シリアより1カ月ほど前にリビアでも侵略戦争が始まっている。リビアの場合はサヌーシ教団(王党派)、元内務大臣のアブデルファター・ユニス将軍をはじめとする軍からの離反組、NCLO(リビア反体制国民会議)/NFSL(リビア救済国民戦線)、そしてアル・カイダ軽武装集団のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)など反政府の武装勢力が存在、侵略しやすい環境だった。このうち、地上軍の主力になるのはLIFGだ。 LIFGはイギリスの情報機関と関係が深く、1996年にはMI6(イギリスの対外情報機関)の命令でムハンマド・アル・カダフィの車列を爆破しようとして失敗している。カダフィ政権はこの事件に絡んでオサマ・ビン・ラディンに逮捕令状を出している。MI5(イギリスの治安機関)に元オフィサー、デイビッド・シャイラーによると、この時、MI6がLIFGへ工作資金を提供したという。 イギリスとフランスがカダフィの排除を狙っていたのは、カダフィがアフリカを自立させようとしていたからだ。その一環としてドルやフランといった欧米の通貨に依存せず、自前の金貨ディナールをアフリカの基軸通貨にしようとしていた。アフリカの利権を失ったなら、イギリスやフランスの経済は立ち行かなくなる可能性が高い。帝国主義を捨てるわけにはいかないのだ。 アメリカの置かれた状況も基本的にイギリスやフランスと同じで、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD11を出し、ムスリム同胞団で編成された武装集団をターゲット国へ送り込んで体制転覆を目論んだ。そして始まったのが「アラブの春」である。 この時期、ペルシャ湾岸の産油国で民主化を求める運動が盛り上がったが、これを西側の有力メディアは大きく取り上げていない。軍事力で弾圧しても批判らしい批判はなかった。それに対し、金貨ディナールに賛成していたチュニジアやエジプトは体制転覆が実現している。 2011年10月にカダフィ政権が倒されると、戦闘員や武器/兵器がトルコ経由でシリアへ運ばれている。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、輸送の拠点はベンガジにあるCIAの拠点で、アメリカ国務省はそうした活動を黙認していた。その際、マークを消したNATOの輸送機が武器をリビアからトルコの基地まで運んだとも伝えられている。アメリカ領事館もそうした活動の舞台だったが、2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺される。ムスリム同胞団のライバルが実行したとも言われている。 ハーシュによると、領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていたという。CIA長官だったデイビッド・ペトレイアスは勿論、スティーブンスの上司にあたるクリントン国務長官も承知していた可能性が高い。 この当時のトルコ政府は侵略、破壊、殺戮、略奪の当事者だったが、西側は「寛大」だった。状況が変わるのは、シリアでの戦闘が長引き、トルコ経済が苦境に陥ってからだ。シリアはリビアと違い、国内に有力な反政府勢力は存在せず、戦闘員の大多数は国外から送り込まれた傭兵で、シリア国民からみると侵略戦争にほかならなかった。 業を煮やしたアメリカ政府は戦闘態勢に入る。2015年2月に国防長官が戦争に消極的だったチャック・ヘイゲルから好戦的なアシュトン・カーターへ、また統合参謀本部議長は9月にジハード勢力を危険だと考えていたマーチン・デンプシーから好戦的なジョセフ・ダンフォードへ交代した。デンプシー退任の直後、9月30日にロシアはシリア政府の要請で軍事介入する。ロシア軍はアメリカ軍と違い、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISISとも表記)を本当に攻撃、アメリカをはじめとする侵略の黒幕国は手先を失うことになる。 そうした中、11月24日にトルコ軍のF16戦闘機がロシア軍のSu24爆撃機を撃墜した。ウィキリークスによると、エルドアン大統領がロシア軍機の撃墜を決めたのは10月10日だが、トルコ政府が独断でロシア軍機の撃墜を決めたということは考えにくい。11月24日から25日にかけてトルコのアンカラでトルコ軍幹部とポール・セルバ米統合参謀本部副議長が会談している。 撃墜後、ロシア軍はミサイル巡洋艦のモスクワをシリアの海岸線近くへ移動させて防空体制を強化、さらに最新の防空システムS400を配備し、約30機の戦闘機を派遣してシリア北部の制空権を握ってしまい、アメリカが供給している対戦車ミサイルTOWに対抗できるT90戦車も配備した。その後、ウラジミル・プーチン露大統領は相当数のロシア軍を撤退させ、その間隙を縫ってアメリカ、イギリス、フランスはクルドを抱き込み、地上部隊をシリアへ侵入させて基地を建設している。 その一方、経済環境が厳しくなったトルコ政府はロシア政府へ接近、2016年6月下旬にロシアのウラジミル・プーチン大統領に対してロシア軍機の撃墜を謝罪し、7月13日にはトルコの首相がシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆している。武装蜂起があったのは、その直後だ。エルドアン政権は武装蜂起の黒幕をフェトフッラー・ギュレンだとしている。このギュレンは1999年、ビル・クリントン政権の時にアメリカへ渡り、CIAの保護下にあるとされている。その後、トルコとアメリカとの関係は悪化、西側有力メディアのエルドアン批判も激しくなった。
2018.06.27
安倍晋三政権はIR実施法案の成立に向かって突き進んでいる。衆議院では6月19日に法案が可決され、参議院へ送られた。 競馬、競輪、競艇といった「公営ギャンブル」が認められたときもそうだったが、博打を「おいしい利権」だと見ている政治家は少なくない。IR実施法案もそうした目で見ているのだろう。2010年4月には超党派でカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟/IR議連、通称:カジノ議連)が設立されている。 本ブログでは何度か取り上げた(例えばココ)が、こうした動きを促進させたのがドナルド・トランプ米大統領へ多額の献金をしたことで知られているカジノ経営者のシェルドン・アデルソン。2013年にはイランを核兵器で攻撃すべきだと主張したシオニストで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフと近い関係にある。 アメリカのラスベガス(ネバダ州)、ベスレヘム(ペンシルベニア州)、マカオ(中国)、マリナ湾(シンガポール)でカジノを経営しているアデルソンは2013年11月、IR議連の細田博之会長にプレゼンテーションを行い、東京の台場エリアで複合リゾート施設を作るという構想を説明した。模型やスライドが用意されていたという。その当時から「順調に手続きが進めば、カジノ第1号は2020年の東京オリンピックに間に合うタイミングで実現する可能性がある。」と言われていた。 アデルソンは2014年2月に来日、日本へ100億ドルを投資したいと語る。世界第2位のカジノ市場になると期待、事務所を開設するというのだ。その3カ月後に来日したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は日本政府高官に対し、アデルソンへカジノのライセンスを速やかに出すよう求めたという。これはイスラエルのハーレツ紙が2015年2月5日付け紙面で伝えたのだが、この記事はすぐに削除された。 著名なカジノの所在地はオフショア市場(またはタックスヘイブン)と重なる。例えば、ロスチャイルド家の金融持株会社であるロスチャイルド社のアンドリュー・ペニーが2015年9月、サンフランシスコ湾を望むある法律事務所で税金を避ける手段について講演した際、税金を払いたくないなら財産をアメリカへ移すように顧客へアドバイスするべきだと語ったという。アメリカこそが最善のタックス・ヘイブンだというわけである。ペニーはアメリカのネバダ、ワイオミング、サウスダコタなどへ銀行口座を移動させるべきだと主張、ロスチャイルドはネバダのレノへ移しているという。マカオやシンガポールもオフショア市場として知られている。 国有資産の略奪や麻薬取引など表にできない形で稼いだカネの少なからぬ部分はオフショア市場へ沈められ、その世界の地下水道を移動する。そうした資金を表に出す仕組みを日本に作ろうとしている疑いがある。
2018.06.26
イスラエルとヨルダンに接したシリアの南部はアメリカやイスラエルの支援を受けた武装グループが支配してきた。この地域の奪還を目指してシリア政府軍が攻勢を強めているが、ここにきてロシア軍が国境に近いダルアを空爆している。トルコとアメリカの関係が悪化してからヨルダンが主要な侵略拠点になり、シリアの南部はアメリカにとっても戦略的な重要度を増していたが、ロシア軍が出てきたあと、アメリカ軍は武装勢力に対して介入しないと通告したという。 その武装勢力はFSA(自由シリア軍)と名乗っているが、これは侵略の黒幕であるアメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、サウジアラビアなどがつけたタグにすぎない。実態はそうした黒幕国の手先として戦うジハード傭兵集団だ。 こうした国々を含む外国勢力は2011年3月からシリアに対する侵略戦争を始めたのだが、2015年9月30日にロシアがシリア政府の要請で軍事介入してから傭兵の支配地域は急速に縮小、支配地を維持し、石油利権を奪うためにユーフラテスの北側はアメリカ、イギリス、フランスが軍隊を送り込み、20カ所以上に基地を建設したと言われている。それに対し、南部地域の支配はイスラエルが中心的な存在だと言えるだろう。 シリア侵略でもイスラエルとサウジアラビアは同盟関係にあるのだが、サウジアラニアのモハメド・ビン・サリマン皇太子がヨルダンを秘密裏に訪問、王宮でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談したとヨルダンで伝えられている。 ドナルド・トランプ米大統領の義理の息子で大統領上級顧問を務めるジャレッド・クシュナーは国際交渉に関する特別代表のジェーソン・グリーンブラットとサウジアラビア、エジプト、ヨルダン、カタールを歴訪しているが、それに合わせての秘密会談だ。ちなみに、クシュナーはヘンリー・キッシンジャーのアドバイスを受けていると言われている。
2018.06.25
ドナルド・トランプ米大統領は6月22日、朝鮮を「尋常でない脅威」だと表現、さらに1年の間「制裁」を続けるという。大統領は6月12日にシンガポールで朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談、その翌日に朝鮮からのアメリカに対する核の脅威はなくなったとツイートしていたが、早くも軌道修正したようだ。朝鮮半島の問題で主導権を握れそうにないとアメリカ政府は判断したのだろう。 6月22日には韓国の文在寅大統領がロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談している。その際、両国は平和的な朝鮮半島の非核化を目指すことで一致、国境を越えたエネルギー・プロジェクトを推進し、FTA(自由貿易協定)に関する話し合いを始めることで合意した。この計画を潰すためには、朝鮮に対する「制裁」を各国に続けさせるしかない。 トランプ政権に限らず、アメリカの歴代政権は朝鮮を軍事的な脅威だと考えていなかっただろう。アメリカと朝鮮を比べた場合、軍事力も経済力も圧倒的にアメリカが優位だということは言うまでもないことで、朝鮮から戦争を仕掛ける状況にはない。アメリカの先制攻撃に対する反撃としても核兵器は有効でなく、例えば、特殊部隊を潜入させてアメリカ軍が占領している日本の原発を破壊した方が効果的だ。ターゲット国へ工作員を潜入させ、インフラに爆弾を仕掛けておくということも考えられる。 ネオコンを始め、アメリカ支配層の内部にはシンガポールでの会談に反対する勢力が存在、その主張を有力メディアは伝えていた。リビア・モデルの話も米朝会談を壊すためにのものだろう。アメリカがイラクを先制攻撃した2003年にリビアは核兵器や化学兵器の廃棄を決定したが、アメリカは約束を守らずに「制裁」を続け、2010年にはバラク・オバマ大統領がムスリム同胞団を使った侵略計画(PSD11)を作成、「アラブの春」という形で実行に移された。その結果、リビアは侵略され、破壊、殺戮、略奪で現在は暴力が支配する破綻国家だ。リビア・モデルとは、朝鮮をリビアと同じようにしていやるということにほかならない。 トランプ大統領は「ドイツ・モデル」を考えていたかもしれない。東西ドイツが統一される際、アメリカの国務長官だったジェームズ・ベイカーはソ連のエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、東へNATOを拡大することはないと約束したことが記録に残っている。それをミハイル・ゴルバチョフも信じて統一を認めたわけだが、アメリカは約束を守らなかった。アメリカの世界制覇を願う人にとってドイツ・モデルを成功例なのかもしれないが、自国の主権を守りたいと考える人にとっては反省すべきケースだ。 すでにNATO軍はロシアの玄関先まで到達、軍隊を配備し、ミサイルを設置してロシアを恫喝している。その結果として軍事的な緊張は高まり、全面核戦争の危険性は冷戦時代よりはるかに高まってしまった。1989年11月に「ベルリンの壁」が壊されて冷戦は終結したのかもしれないが、これはアメリカのソ連/ロシアに対する侵略劇の幕開けを告げる合図だった。 アメリカ支配層にとっての朝鮮統一とは朝鮮半島の制圧を意味している。半島の付け根までアメリカ軍を進め、中国との国境線にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを並べるということだ。
2018.06.24
韓国の文在寅大統領がロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談、平和的な朝鮮半島の非核化を目指すことで一致、国境を越えたエネルギー・プロジェクトを推進し、FTA(自由貿易協定)に関する話し合いを始めることで合意したという。 韓国とロシアが経済的な結びつきを強めていることは本ブログでも再三指摘してきた。すでにロシアは中国と戦略的なパートナーであり、東アジアの軍事的な緊張を緩和させ、経済を発展させようという点で一致している韓国、ロシア、中国はひとつのグループを形成している。 例えば、昨年(2017年)9月6日から7日にかけてウラジオストクで開催されたEEF(東方経済フォーラム)には文大統領も出席、このときもプーチン大統領と会談している。その前、7月上旬、韓国の康京和外相はロシアとの戦略的な関係を深めたいと発言していた。 以前からロシアは天然ガスや石油のパイプラインやシベリア鉄道を中国や朝鮮半島へ延ばし、そのまま半島を南下させたいと計画しているが、そのためには朝鮮政府を説得する必要がある。 そこで、2011年夏には110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると金正日に提案した。2011年12月に金正日が急死するが、この計画は消えていないようで、翌年の4月にはロシア議会がこれを承認している。現在、アメリカ主導で行われている「制裁」が計画の障害になっている。 アメリカは一貫して軍事的な緊張を高めようとしてきた。その政策に盲従しているのが日本。そして、アメリカが軍事的な緊張を高める仕掛けとして利用してきたのが朝鮮にほかならない。「制裁」を誘発するような朝鮮の行動、つまり核兵器やミサイルの開発と実験はアメリカにとって好都合だったはずだが、この朝鮮が韓国、ロシア、中国のグループに加わった。 朝鮮の金正恩労働党委員長がシンガポールで会談を行った6月12日、ドナルド・トランプ米大統領はFOXニュースのシーン・ハニティのインタビューを受け、その最後の部分で昨年(2017年)4月6日にシリアで実行した攻撃について語っている。この攻撃は、トランプ大統領と一緒に食事をしていた中国の習近平国家主席を威嚇することが目的だったと示唆している。 その攻撃とは地中海にいたアメリカ海軍の2駆逐艦、ポーターとロスが巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したもの。シリア政府軍が自国民に対して化学兵器を使ったという口実だったが、証拠はなく、それが事実でなかった可能性は極めて高い。そのタイミングでどうしても攻撃しなければならない理由があったということだ。 ところが、この計画は裏目に出た。発射されたミサイルの6割強が墜とされた可能性が高いのだ。ECM(電子対抗手段)が使われたと言われているが、手段はともかく、ロシアの防空能力が高いことを示すことになった。アメリカの攻撃を恐れる必要はないと朝鮮が考えたとしても不思議ではない。 その1年後、つまり今年4月にアメリカは再びシリアをミサイル攻撃した。これも口実は嘘だ。 アメリカは対策を練り、発射するミサイルの数も倍増させたが、ロシアも防空能力を強化していた。最も大きかったのは短距離用の防空システムであるパーンツィリ-S1を配備したことだろう。 アメリカ軍より信頼度が高いロシア国防省の発表によると、そのパーンツィリ-S1が25機発射して23機命中、ブク・システムは29機のうち24機命中、オサ・システムは11機のうち5機命中、S-125は13機のうち5機命中、クバドラートは21機のうち11機命中、S-200は8機のうち0機命中などだ。発表の中には含まれていないが、今回もECM(電子対抗手段)が使われた可能性がある。 本ブログでは米朝関係を米中関係の一部だと考えている。アメリカは中国の一帯一路(陸のシルクロードと海のシルクロード)を警戒、潰そうとしてきた。米太平洋軍は今年5月30日から米インド・太平洋軍へ名称を変更、太平洋とインド洋を担当することになったが、この変更は一帯一路を意識してのことだろう。
2018.06.23
ドナルド・トランプ米政権が6月19日にUNHRC(国連人権理事会)から脱退すると表明したと伝えられている。イスラエルに対する批判的な姿勢が偏向だというころらしいが、UNHRCのイスラエルの軍事侵略やアパルトヘイト的な政策に対する姿勢は生ぬるく、人権擁護は見せかけで、偽善的だと言われても仕方がないようなものだった。今回の脱退劇は単なるパフォーマンスだというべきだろう。 この理事会のシンクタンク的な存在だという諮問委員会の委員長にサウジアラビアの国連大使が選ばれているが、現在、この国はイスラエルと同盟関係にあることを公然と認め、パレスチナ問題でもアメリカやイスラエルと同じ姿勢を示している。 1970年代終盤、ジミー・カーター政権の国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーはソ連を疲弊させるためにアフガニスタンで秘密工作を開始、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団が主力とする戦闘集団を編成した。その戦闘員と工作資金を提供したのがサウジアラビア。アメリカは戦闘員を訓練、携帯防空システムのスティンガーや対戦車ミサイルのTOWを含む武器/兵器を供給、パキスタン、王政時代のイラン、イスラエルなどが協力している。 アフガニスタンへ戦闘員を送り込む仕事をしていたひとりがオサマ・ビン・ラディン。この人物をジハード(聖戦)の世界へ引き込んだのはムスリム同胞団のアブドゥラ・アッザムだと言われている。ビン・ラディンは1984年にアッザムとMAK(マクタブ・アル・ヒダマト/礼拝事務局)のオフィスをパキスタンのペシャワルで開設、このMAKがアル・カイダの源流だと言われている。アフガニスタンでの戦争はアメリカ政府のジハード傭兵を使った侵略から始まっている。 ソ連軍は1989年2月にアフガニスタンから撤退、91年にはオサマ・ビン・ラディンもアフガニスタンを離れたが、その際、彼をエスコートしたのはアメリカの特殊部隊と関係の深いアリ・アブドゥル・サウド・モハメド。ふたりはサウジアラビアからパキスタンを経由してスーダンへ入っている。(Peter Dale Scott, “The American Deep State,” Rowman & Littlefield, 2015) その後、オサマ・ビン・ラディンはユーゴスラビアへ移動したようだ。サラエボで1993年から94年にかけてオサマ・ビン・ラディンを何度か見かけたという証言がある。当時、アメリカを含むNATO加盟国の情報機関はジハード傭兵をボスニア・ヘルツェゴビナへ送り込んでいた。そして1999年のNATO軍によるユーゴスラビアへの空爆はにつながる。 1991年12月にソ連が消滅して以降、ユーゴスラビアへの侵略と同国の解体を目論む勢力は「人権」を口実に使っていた。人権を守るための戦争を始めるというわけだが、この主張が嘘だったことは本ブログでも繰り返し書いてきた。ユーゴスラビアでの仕事が一段落した後、オサマ・ビン・ラディンの名前は2001年9月に浮上する。 2011年春からアメリカはイスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランスをはじめとする国々と手を組んで北アフリカから中東にかけての地域でジハード傭兵を使った侵略戦争を始めたが、その際に「人権」という呪文が唱えられていた。「人権を守るため」に侵略、破壊、殺戮、略奪を行ったのだ。真に人権のために戦っている人や団体なら、こうしたアメリカのやる方は許せないはずだ。
2018.06.21
シリアで軍事的な緊張が高まっている。南部ではイスラエルとアメリカが占領を続けるためにジハード傭兵を支援、ユーフラテス川沿いの油田地帯デリゾールではアメリカが支配体制を強化しようと新たな軍事基地を建設、シリア政府軍を攻撃するためにジハード傭兵を南側へ運んでいる。イラクとの国境近くのアル・ハリではシリア政府軍に対する空爆があり、数十名が死亡した。アメリカ軍はこの攻撃を自分たちによる者でないと否定、イスラエル軍によるものだと主張している。アメリカはシリア南部でもイスラエルと連携、ユーフラテス川沿いでイスラエル軍がアメリカ軍に代わって軍事作戦を展開しても不思議ではない。 アメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランスといった侵略勢力は一貫してバシャール・アル・アサド政権の打倒を目指し、外交的な解決は眼中にない。完膚なきまでたたきのめされない限り、シリアから軍隊を引き揚げないだろう。さらなる侵略のため、また偽旗作戦を実行する可能性は小さくない。 すでにアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍はシリア国内20カ所に軍事基地を建設したと言われているが、それに対して住民が抗議活動を始めたと伝えられている。アメリカ軍によるミサイル攻撃によってロシア軍が導入した防空システムが機能することをシリア国民は目の当たりにし、「勝てる」という感触をえたのかもしれない。
2018.06.21
アメリカの財務省証券が売られている。最大の保有国である中国は3月の1兆1877億ドルから4月の1兆1819億ドルへ58億ドルの減少にとどまったが、第2位保有国の日本は1兆0435億ドルから1兆0312億ドルへ123億ドルの減少だ。特に目を引くのはロシアで、961億ドルから487億ドルへ474億ドルの減少。率にすると49%減。1年前に比べると562億ドルの減少だ。 本ブログでも何度か書いたが、アメリカで保管されている(はず)の金塊を引き上げる動きも見られる。ベネズエラやオランダはすでに相当量を取り戻し、ドイツも引き揚げを試みている。スイスも国民は引き揚げるべきだと考えているようだ。最近では、トルコ政府が国外に預けている金塊220トンをイスタンブールへ持ち帰ると発表したが、その外国にはアメリカも含まれる。 こうした動きが出てきた2012年にはニューヨークでタングステンで作られた偽物の金の延べ棒が流通していると問題になっている。その前年の5月にIMF専務理事だったドミニク・ストロス-カーンがニューヨークから旅客機で離陸する寸前に逮捕されているのだが、これもアメリカに保管されている金が関係しているという噂がある。 逮捕される前の月にストロス-カーンはブルッキングス研究所で演説、その中で失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないとし、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと発言していたことから、こうした反自由主義的な発言をアメリカの支配層が罰したとも言われているが。 アメリカの金融システムが変調をきたしていることを日本の経済界も感じているようで、中国との取り引きではドル離れしていると言われている。日本の政治家や官僚はアメリカ支配層に従属することで自分の地位と富を維持しているためアメリカの命令に従っているが、経済界は「アメリカ後」を考え始めているのかもしれない。
2018.06.20
イエメンの港湾都市フーダイダーをサウジアラビア軍とアラブ首長国軍が攻撃しているが、フランス軍の特殊部隊がアラブ首長国軍に同行しているという。この軍事作戦はアメリカのマイク・ポンピオ国務長官の承認を受けて始められたもので、アメリカとイギリスに支援されていると言われているが、フランスも参加しているようだ。 米英仏の3カ国は今年(2018年)4月にシリアをミサイル攻撃している。アメリカ軍とロシア国防省では攻撃の内容が全く違うが、それ以外の情報からロシア側の説明が事実に近いようだ。そもそも、アメリカが攻撃の口実に使った「政府軍による化学兵器の使用」という話が嘘だ。 ロシア国防省の説明によると、この攻撃で米英仏の3カ国は103機の巡航ミサイルを発射、そのうち71機をシリア軍が撃墜したという。今年は短距離用の防空システム、パーンツィリ-S1が配備されていたが、これが効果的だったようだ。アメリカはリベンジを狙って返り討ちに遭った。 ロシア国防省は攻撃された場所としてダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)を挙げている。 現在、シリア政府軍は油田地帯でアメリカ軍が占領しているデリゾールやダマスカスの南で軍事作戦を展開中だが、アメリカ、イギリス、フランス、そしてイスラエルが妨害している。バシャール・アル・アサド政権の打倒を諦めたようには見えない。
2018.06.19
シンガポールで朝鮮の金正恩労働党委員長との会談を行った6月12日、ドナルド・トランプ米大統領はFOXニュースのシーン・ハニティのインタビューを受けたが、その最後の部分で昨年(2017年)4月6日にシリアで実行した攻撃について語っている。 その攻撃とは地中海にいたアメリカ海軍の2駆逐艦、ポーターとロスが巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したもの。シリア政府軍が自国民に対して化学兵器を使ったという口実だったが、証拠はなく、それが事実でなかった可能性は極めて高い。 本ブログでは何度か書いたが、ジャーナリストのロバート・パリーによると、彼の情報源は4月6日にポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していたと語っていた。その情報を知った上でトランプ大統領はロシアとの核戦争を招きかねない攻撃を命令したという。6月25日には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ話を記事にしている。 パリーは1980年代の前半、コントラが麻薬取引に手を出していることを明らかにした人物で、ハーシュはベトナム戦争でソンミ村での住民虐殺を明るみに出している。つまり、ふたりとも権力犯罪と立ち向かう気骨あるジャーナリストだ。 トランプ大統領は昨年4月6日の攻撃で発射されたミサイル全てが目標にヒットしたと主張しているのだが、被害が事実上、なかったことが判明している。しかも、ロシア国防省によると、目標に到達したのは23機だけ。いくつかは地上に落下しているが、残りは不明。海中に落下した可能性が高い。トランプ大統領の主張とは違い、アメリカのミサイルはロシアの防空システムを突破できていないと言える。 59機ものミサイルを発射した理由と思われる出来事が2013年9月3日にあった。地中海の中央から東へ向かって2機のミサイルが発射されたのだが、2機とも海中に落ち、その直後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表している。 その当時、西側の有力メディアがアメリカ/NATO軍によるシリアに対する攻撃は始まると言われていた。そこで、そのミサイルが第1撃だったと見る人が少なくない。ロシア軍がECM(電子対抗手段)でミサイルを落とし、出鼻をくじいたのではないかというのだ。その反省からアメリカ軍は発射するミサイルの数を大幅に増やしたのではないかということである。が、それでも約6割のミサイルが落とされた。 昨年4月の攻撃が中国や朝鮮の考え方に変化を与えた可能性はあるが、それはトランプ大統領の主張とは逆だろう。ミハイル・ゴルバチョフに見捨てられてから生き残りに必死だったであろう朝鮮は統一教会やイスラエルと手を組み、東アジアの軍事的な緊張を高めたいアメリカにとって好都合なこと、例えば核兵器の開発やミサイルの発射事件を行ってきた。こうしたことは中国やロシアから止めるよう説得されていたが、無視してきた。 ロシアの前身であるソ連に裏切られたという思い、アメリカ軍の強さに対する恐れが朝鮮を動かしてきたのだろうが、昨年4月の攻撃でロシアや中国への信頼が戻った可能性がある。しかも、韓国がロシアや中国と連携している。ロシアの防空システムがあれば、アメリカ軍をそれまでのように恐れる必要はないと考えても不思議ではない。 そして今年4月、アメリカ軍は再び偽情報を宣伝しながらシリアをミサイル攻撃した。アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)で、全て命中したとしている。が、攻撃目標と使用されたミサイルの数が不自然で、現地の様子とも符合しない。 それに対し、ロシア国防省の説明によると、この攻撃で米英仏の3カ国は103機の巡航ミサイルを発射、そのうち71機をシリア軍が撃墜したという。今年は短距離用の防空システム、パーンツィリ-S1が配備されていたが、これが効果的だったようだ。アメリカはリベンジを狙って返り討ちに遭った。 ロシア国防省は攻撃された場所としてダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)を挙げている。 その直後、ジャイシュ・アル・イスラムは米英仏の攻撃に対する不満を表明した。米英仏の攻撃でシリア空軍を壊滅、その上でジャイシュ・アル・イスラムなど武装勢力がダマスカスを攻略する予定だったとする情報もある。 このジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている トランプ大統領は「脅せば屈する」という米英やイスラエルの戦術が機能したと強調しているのだが、機能しないことを世界の国々が目撃、朝鮮半島の問題も韓国、ロシア、中国が主導権を握っている。アメリカの作戦は裏目に出たと言えるだろう。
2018.06.17
ドナルド・トランプ米大統領はシリア市民防衛(白いヘルメット)を支援するため、約660万ドルを提供し続けることをUSAIDや国務省に認めた。白いヘルメットへの支援を見直すという情報が流れていたが、見直しを取りやめたようだ。USAIDはNEDと同じようにCIAが工作資金を流すパイプ役の組織で、歴史的に国務省はCIAと緊密な関係にある。 非武装で中立の立場だと宣伝してきた白いヘルメットだが、その実態はアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にある。そうした実態は様々な映像や証言で明らかだったのだが、アレッポを政府軍がアル・カイダ系武装集団の手から奪い返した際、白いヘルメットがアル・カイダ系武装勢力と連携したいたことが確認されている。その後も解放された住民がそうした関係を証言してきた。 白いヘルメットはアル・カイダ系武装集団の医療部隊として機能していたわけだが、それだけでなく偽情報を発信してアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス・ピコ協定コンビなどに軍事侵攻を行う口実を提供するという枠割りも果たしてきた。 その一例がドゥーマで政府軍が化学兵器を使ったという話。その発信源は白いヘルメットと武装集団のジャイシュ・アル・イスラムだった。西側の有力メディアはそれを垂れ流していたが、後にイギリスのインディペンデント紙が派遣していたロバート・フィスク特派員は攻撃があったとされる地域へ入って治療に当たった医師らに取材、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。 また、アメリカのケーブル・テレビ局OANの記者も現地を調査し、同じ内容の報告をしている。ロシア系のRTは西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材、やはり化学兵器が使用されたという話を否定している。 なお、ジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、アル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも言われている。
2018.06.16
サウジアラビアのモハマド・ビン・サルマン皇太子が6月14日、ロシアに現れた。開幕したサッカーのワールドカップを観戦、ウラジミル・プーチン露大統領とは石油生産について議論したとされている。皇太子はここ数週間、公の席に姿を見せていなかったこともあり、4月21日にリヤドであった銃撃戦で負傷した、あるいは死亡したとする話も流れていた。 サウジアラビア国内には不穏な雰囲気がある。昨年8月に皇太子は暗殺されそうになり、10月には襲撃されたという噂が流れていた。そして11月の粛清。このときはイスラエル空軍が皇太子を守るために戦闘機を派遣したとする話もささやかれていた。こうした状況を警戒してビン・サルマンは姿を消したという推測もあったが、とりあえず生存は確認できた。
2018.06.16
アメリカとイギリスに支援されたサウジアラビア軍とアラブ首長国軍が紅海に面した港湾都市のフーダイダーを攻撃している。この港はフーシ派(アンサール・アラー)の支配する地域へ物資を運び込む重要な場所で、ここが破壊されると住民1800万人が飢餓状態に陥る可能性が高い。この軍事作戦はアメリカのマイク・ポンピオ国務長官の承認を受けて始められたものだ。 2016年10月12日にアメリカ海軍のミサイル駆逐艦ニッツェは紅海に面した場所に設置されていたフーシ派のレーダー施設を巡航ミサイルで破壊した。駆逐艦メーソンの近くにミサイルが撃ち込まれたことに対する報復だとしていたが、その翌日、アメリカ軍のスポークスパーソンのピーター・クックは誰がミサイルを発射したのかは不明だと発言している。誰が撃ってきたのか不明だが、サウジアラビアと戦っているフーシ派をとりあえず攻撃したというわけだ。フーシ派はアメリカの艦船に対する攻撃を否定している。 フーシ派は2004年に武装蜂起しているが、その理由は03年にアメリカ主導軍がイラクを嘘の理由で先制攻撃したことにある。その攻撃に抗議する目的でフーシ派のメンバーがモスクで反アメリカ、反イスラエルを唱和するようになり、それを政府は弾圧、サヌアで800名程度が逮捕されたとされている。これが切っ掛けで戦闘は始まり、2010年まで続く。 その途中、2009年にサウジアラビアはフーシ派を叩くためにイエメンへ空軍と特殊部隊を派遣。その年にイエメンでは「アラビア半島のアル・カイダ(AQAP)」が創設されてフーシ派と戦い始めたが、AQAPは劣勢。そこでサウジアラビアが軍事介入したと見られている。何度も書いていることだが、アル・カイダとは、ロビン・クック元英外相が指摘しているように、CIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。つまりジハード傭兵の登録リストだ。
2018.06.15
トルコが国外に預けている金塊220トンをイスタンブールへ持ち帰ると発表した。そのうち28・7トンは昨年(2017年)、トルコへ運ばれたという。トルコが保有する金の総量は591トンだと推測されている。ベネズエラ、オランダ、ドイツ、オーストリアを含む国も金をアメリカから引き揚げようとしている。 同国のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は今年4月16日、融資は為替レートという問題を抱えるドル建てではなく、金に基づいて行おうと訴えている。アメリカからの経済攻撃に対する防衛策だろう。 ドルが基軸通貨だということを利用してアメリカ支配層は世界に大きな影響力を及ぼしてきた。支配の道具ということだが、それによって圧力を加えられたり破壊された国は少なくない。 ウィキリークスが公表したシドニー・ブルメンソールからヒラリー・クリントン宛の2011年4月2日付け電子メールではリビアのムアンマル・アル・カダフィ政権が保有していた金について報告されている。アメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランスなどがアル・カイダ系武装集団を使ってリビアに対する侵略戦争を始めて2カ月後に書かれたことになる。 ブルメンソールによると、カダフィ政権は143トンの金と同量の銀を保有、金は金貨ディナールという全アフリカ通貨に使われることになっていた。西アフリカや中央アフリカにはフランを使っている国があり、ディナールが流通するとフランスのアフリカにおける利権が消失する可能性があった。フランス政府がリビア侵略に積極的だった理由のひとつはそこにある。 リビア侵略に向かってフランスが動き始めるのは2010年10月。リビアで儀典局長を務めていた人物が機密文書を携え、チュニジアを経由して家族と一緒にパリへ降り立ったのが幕開けだ。パリのコンコルド・ラファイエット・ホテルでフランスの情報機関員やニコラ・サルコジ大統領の側近たちと会談している。その後、情報機関や軍のリビアに対する工作が本格化する。 フランス以上にリビアのカダフィ体制を倒したがっていたイギリスもアフリカの資源の利権を持っている。2011年のリビア侵略ではNATOの空爆とアル・カイダ系のLIFGをはじめとする地上軍が連携しているが、このLIFGは1996年にMI6の命令でカダフィ暗殺を試みている。 この年、LIFGはカダフィの車列が通りかかるタイミングで爆弾を炸裂させたのだが、失敗した。この事件に絡んでカダフィ政権はオサマ・ビン・ラディンに逮捕令状を出したが、MI5(イギリスの治安機関)に元オフィサー、デイビッド・シャイラーは暗殺計画の黒幕をMI6だと語っている。協力関係にあったLIFGへMI6が資金を提供したというのだ。 ドル体制に対抗するだけでなく、アメリカへの信頼感喪失も金塊を引き上げる理由になっている。各国は相当量の金塊をアメリカのニューヨーク連銀やケンタッキー州フォート・ノックスにある財務省管理の保管所に預けているが、保管状態が詳しく調査されたことはなく、金塊がないのではないかという噂が流れている。 何者かが盗み出した疑いがあるのだが、ドル体制を支配の道具として使っている勢力も金塊を集めている可能性が高い。リビアの金塊もそうした勢力の手に落ちた疑いがあるのだが、それだけでなく、例えば2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎が攻撃された際、攻撃されていないにもかかわらず崩壊した7号館に保管されていた金塊も消えたと言われている。 1991年夏から年末にかけての期間にソ連が消滅したが、これはアメリカ大統領だったジョージ・H・W・ブッシュを中心とするCIA人脈とKGBの中枢を中心とする勢力によって実行されたクーデター(ハンマー作戦)によると言われている。これは本ブログでも指摘したこと。ポール・ウォルフォウィッツを含むネオコン、ジェイコブ・ロスチャイルド、ジョージ・ソロス、アドナン・カショーギのようなCIAとサウジアラビアをつなぐ人物が参加、軍資金は旧日本軍が中国などで略奪し、アメリカの一部勢力が管理している財宝を利用したとされている。 ソ連が消滅する直前、ゴスバンク(旧ソ連の国立中央銀行)に保管されている金塊に関する報告が同行の頭取から議会にあった。2000トンから3000トンあると推測されていた金塊が400トン足らずしかないと報告されている。消えたのか、消えたことにされたということ。なお、金塊の行方を追った金融調査会社のジュールズ・クロール・アソシエイツはCIAと緊密な関係にある。 その後、関係者が様々な金融機関をシティ系のオフショア市場などに設立していることもあり、そうしたシステムの中へ隠されたと推測されている。そうした会社のひとつは後にセルゲイ・マグニツキー事件に関係してくる。ロシアの捜査当局がマグニツキーを経済犯罪のカギを握る人物として取り調べた理由のひとつだろう。
2018.06.14
ドナルド・トランプ米大統領と朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と6月12日にシンガポールで会談、共同声明も発表された。両国の首脳が会った意味は小さくないが、それ以上のものではない。朝鮮戦争の終結には至らず、朝鮮が求めている朝鮮半島の非核化をアメリカが受け入れる可能性は小さい。 朝鮮が求めている朝鮮半島の非核化は、その地域におけるアメリカの核の脅威を取り除くことが含まれている。「検証可能」の対象にはアメリカも含まれると理解することができる。場合によっては日本も問題になるだろう。 これまでアメリカは東アジアにおける軍事的な緊張を高めるため、朝鮮を利用してきた。核兵器やミサイルの開発の裏でアメリカが暗躍している疑いもある。朝鮮とアメリカとの問題を考える場合、少なくとも朝鮮戦争まで遡らなければならないが、アメリカが求め、日本が同調している「非核化」は朝鮮の無条件降伏に等しく、これはアメリカによる朝鮮半島全域の制圧を意味している。その先には中国の制圧、ロシアの再属国化、そしてパックス・アメリカーナがある。 ところで、朝鮮戦争が勃発したのは1950年6月25日だが、その前から小規模の軍事衝突はあった。その当時、ダグラス・マッカーサーに同行して日本にいた歴史家のジョン・ガンサーによると、半島からマッカーサーに入った最初の電話連絡は「韓国軍が北を攻撃した」というものだったという。日本では北からの攻撃で戦争が始まったことになっているが、世界的に見ると決して常識ではない。 戦争勃発の3日前、ジョン・フォスター・ダレスは朝鮮半島から日本へわたり、吉田茂と会談した後にニューズウィーク誌の東京支局長だったコンプトン・パケナムの家で夕食会に参加している。日本側から出席したのは大蔵省の渡辺武、宮内省の松平康昌、国家地方警察企画課長の海原治、外務省の沢田廉三だ。 渡辺武は元子爵で後の駐米公使、松平康昌は元侯爵で三井本家家長の義兄、沢田廉三の結婚した相手は三菱合資の社長だった岩崎久弥の娘。海原治は国家警察予備隊、後の自衛隊を創設する際に中心的な役割を果たすことになる。 夕食会の4日後、つまり朝鮮戦争が勃発した翌日の26日には帰国直前のダレスに対し、天皇から軍国主義的な経歴を持つ「多くの見識ある日本人」に会い、「そのような日本人による何らかの形態の諮問会議が設置されるべき」だとする口頭のメッセージが伝えられている。メッセンジャーはパケナムだった。(豊下楢彦著『安保条約の成立』岩波新書、1996年) 朝鮮戦争の直前、1949年1月に人民解放軍は北京に無血入城、コミュニストの指導部も北京入りしている。1945年4月にフランクリン・ルーズベルトが急死して誕生したハリー・トルーマン政権は第2次世界大戦後、蒋介石に中国を支配させる予定で、20億ドルを提供しただけでなく軍事顧問団も派遣している。 その当時は国民党軍が紅軍(コミュニスト)を圧倒していたが、1947年の夏になると人民解放軍(47年3月に改称)が反攻を開始、48年の後半になると人民解放軍が国民党軍を圧倒するようになっていた。朝鮮戦争はアメリカ政府の中国奪還作戦だと見ることができる。 朝鮮戦争の最中、1951年4月にCIAは約2000名の国民党軍を引き連れて中国領内に侵入したが失敗、翌年8月にも中国へ侵攻したが、この時も人民解放軍の反撃で追い出されている。朝鮮戦争は1953年7月に休戦、アメリカ軍は目的を達成することができなかった。 その当時、インドシナではフランスが植民地奪還を目指して戦っていたが、この戦争でアメリカ政府はフランスを支援している。そのフランス軍が1954年5月にディエンビエンフーで降伏するが、その4カ月前、国務長官のジョン・フォスター・ダレスがベトナムでのゲリラ戦を準備するように提案している。それを受け、その年の夏にダレス国務長官の弟であるアレン・ダレスが長官だったCIAはSMM(サイゴン軍事派遣団)を編成、破壊活動を開始、リンドン・ジョンソン政権で本格的な軍事介入を始めた。 リチャード・ニクソン大統領はベトナム戦争を終結させ、中国との国交回復を実現するが、その中国では1970年代の終盤から新自由主義に向かって歩き始め、80年には新自由主義の教祖的な存在であるミルトン・フリードマンが中国を訪問、レッセフェール流の資本主義路線へと導いていった。フリードマンは1988年に妻のローザとともに再び中国を訪れ、趙紫陽や江沢民と会談している。趙紫陽は1989年に失脚するが、江沢民はその後もアメリカとの関係を推進した。この流れが大きく変化したのはウクライナでアメリカがネオ・ナチを使ったクーデターを実行した2014年である。
2018.06.13
米太平洋軍が今年(2018年)5月30日から米インド・太平洋軍へ名称変更になった。その名の通り、太平洋とインド洋を担当、太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うという。ディエゴ・ガルシア島も重要な役割を果たすことになる。 太平洋とインド洋を統合する意味として、少なからぬ人は中国の一帯一路のうち「海のシルクロード」を連想しているだろう。南シナ海からマラッカ海峡を通り、インドのコルカタとコロンボ、ケニアのナイロビ、紅海からスエズ運河を通過してヨーロッパへというルートだ。すでに南シナ海でアメリカ海軍は中国とつばぜり合いを演じている。中国はマラッカ海峡を警戒してミャンマーにパイプラインを建設したが、アメリカはミャンマーの属国化を目論んでいる。 新体制で鍵を握る国はインドだが、この国の現政権はイスラエルと緊密な関係にある。昨年6月にはドクラム高原でインド軍と中国軍がにらみ合いになった。中国側の説明によると、インド軍は中国の進めていた道路の建設工事を妨害したのだという。 インドと中国との間で緊張が高まった直後の6月27日、インドのナレンドラ・モディ首相はワシントンでドナルド・トランプ大統領と会い、7月7日にはイスラエルでベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談している。 このときは8月下旬にインドと中国が双方の部隊を速やかに撤退させることで合意、軍事的な緊張は緩和された。日本はインドを支持している。 アメリカの戦略に会わせ、安倍晋三政権は2016年11月、一帯一路に対抗する目的でモディ首相とAAGC(アジア・アフリカ成長回廊)を誕生させたが、中国の戦略に比べると見劣りする。2016年11月には日本からインドへ核燃料のほか原子力発電に関する施設や技術を提供することで両国は合意した。日本、インド、アメリカはインド洋で合同艦隊演習も実施している。 これだけ見るとインドはアメリカ、イスラエル、日本に取り込まれているようだが、経済面ではBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やSCO(中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン)に参加している。なお、SCOにはオブザーバー国としてアフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴルも加わっている。 アメリカはカスピ海周辺の石油利権を独占しようとしているので、これからSCOに揺さぶりをかけてくるだろう。中央アジアにアル・カイダ系の武装集団(ジハード傭兵)を送り込む動きもある。 太平洋軍からインド・太平洋軍への名称変更は単に名前を変えただけでなく、中国やロシア、特に中国を封じ込めようという戦略に基づくものだと見られている。今後、アメリカは中国の一帯一路に合わせ、軍事行動の中心を少し西へ移動させるのかもしれない。
2018.06.11
今年(2018年)6月8日から9日にかけてカナダでG7サミットが開催されたが、その一場面を撮影した1枚の写真が話題になっている。「G6+1」と表現されるように会議ではアメリカの政策が他の参加国から批判されたというが、それを象徴するような写真だったからだ。ただ、この写真では安倍晋三首相がドナルド・トランプ大統領と似たポーズをとり、アメリカと向き合う国々の代表に向き合っている。つまり、安部はトランプの子分だということが現れている。1991年12月にソ連を消滅させることに成功したアメリカ支配層、特にネオコンと呼ばれる親イスラエル派はアメリカが唯一の超大国になったと信じ、帝国主義的な性格を隠そうとしなくなった。日本国内で国連中心主義が批判されるようになったのは、そうしたアメリカの状況を反映したものだろう。 その後ボリス・エリツィン時代のロシアはウォール街やシティの植民地と化し、クレムリンの腐敗勢力やその仲間が巨万の富を築き上げる一方、国の富は略奪されて庶民は貧困化していった。21世紀に入り、ウラジミル・プーチンが実権を握ってからロシアは再独立、西側はロシアに対する再攻撃を始める。そのひとつの結果が2014年2月のウクライナにおけるネオ・ナチによるクーデターだ。 これでウクライナの合法政権は倒され、パイプラインで結ばれたロシアとEUとの関係を断ち切ったとアメリカは考えたようだが、その結果、ロシアは中国との関係を強めていく。アメリカの行動を見ていた中国もアメリカから離れはじめ、政策が大きく変化していく。アメリカと協調する方針から独自路線を打ち出したのだ。「一帯一路」は象徴的なプロジェクトである。 ロシアは経済関係を築くという形で各国との連携を強めているが、アメリカは相変わらず買収と脅し、さらに軍事力の行使で世界に君臨しようとしている。アメリカの支配層もドル体制の崩壊を予想しているはずで、準備は進めているように見える。 中東、南アメリカ、アフリカなどで資源を支配するために軍事力を使っているが、その軍事侵略を正当化するためにタスク・フォースとしてジハード傭兵を使っている。また、金塊を盗んでいる疑いも濃厚だ。TPP(環太平洋経済連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)は帝国主義の黒幕たちが世界を直接統治するための仕組みだ。 1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンでは、旧ソ連圏や中国だけでなくヨーロッパや日本も潰すべき潜在的ライバルだとされていた。ここにきてそれが顕在化、ヨーロッパはアメリカに従うことを嫌がり始めている可能性がある。ロシアで開かれるサッカーのワールドカップ期間中(6月14日から7月15日)、こうした反乱を抑え込むために何かを仕掛けてくる可能性がある。
2018.06.10
ドナルド・トランプ米大統領は6月12日にシンガポールで朝鮮の金正恩労働党委員長との会談を行う予定だが、南シナ海では中国を軍事的に威嚇、緊張が高まっている。台湾やフィリピンも焦臭い。第2次世界大戦以降、アメリカ支配層にとって朝鮮半島の問題は中国問題にほかならない。米中関係を見なければアメリカの意図はわからないだろう。 朝鮮戦争の直前、半島で暗躍していたアメリカの情報機関員は中国に国民党政権を樹立するための工作を実行していた。朝鮮戦争の最中、1951年4月にCIAは国民党軍2000名を率いて中国領内へ侵攻、人民解放軍の反撃にあって追い返され、52年8月にもCIAと国民党軍は中国へ攻め入り、撃退されている。朝鮮戦争が休戦になるのは1953年7月だ。その半年後、ジョン・フォスター・ダレス国務長官はNSC(国家安全保障会議)でベトナムにおけるゲリラ戦の準備を提案、CIAはSMM(サイゴン軍事派遣団)を編成した。アメリカは「転進」したのだ。 経済的なつながりを深めているロシア、中国、韓国の3カ国にとって朝鮮半島の安定は重要なテーマ。今回、米朝会談を実現する上で韓国政府の果たした役割は大きいが、その背後ではロシアと中国が後押ししていた。シンガポールでの会談をアメリカと朝鮮の問題だと考えるべきではない。トランプ大統領が閣内の強硬派の反対を押し切る形で会談を決意したのもそうした背景があるからだろう。勿論、強硬派がこのまま東アジアの平和を容認するとは思えない。「検証可能で不可逆的な非核化」などは国が消滅しないかぎり無理な話だ。 ロシア、中国、韓国、そして朝鮮もそうしたことは当然、承知しているはず。この4カ国の協力関係が形成され、経済活動が盛んになれば他の国も参加してくる可能性が高い。すでにロシアはEEF(東方経済フォーラム)で種をまいている。 ロシアは以前から天然ガスや石油のパイプラインやシベリア鉄道を中国や朝鮮半島へ延ばし、そのまま半島を南下させたいと計画していた。そのためには朝鮮政府を説得する必要があり、2011年夏には110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると金正日に提案している。 2011年12月に金正日が急死するが、この計画は消えていないようで、翌年の4月にはロシア議会がこれを承認している。この計画を金正恩体制も受け入れるなら、東アジアの情勢は大きく変化する。これに中国の一帯一路(海のシルクロードと陸のシルクロード)がつながる可能性もある。勿論、これはアメリカにとって好ましくない状況だ。
2018.06.09
今から50年前の6月5日にロバート・ケネディが銃撃され、翌朝に死亡した。その2カ月前、4月4日の夕方にはマーチン・ルーサー・キング牧師が殺されている。いずれも「犯人」とされる人物は存在するが、それを信じていない人は少なくない。 そうしたひとりがロバート・ケネディ・ジュニア、つまり殺されたロバート・ケネディの息子だ。ロバート・ケネディの暗殺に兄で大統領だったジョン・F・ケネディの暗殺が関係していると推測している人もいる。 ロバートは1961年1月から64年9月にかけて司法長官、65年1月から68年に暗殺されるまで上院議員は上院議員をそれぞれ務めた。殺されたときは次期大統領を目指して活動中。当選する可能性は高いと見られていた。 この上院議員を殺したのは60センチ以上前を歩いていたサーハン・サーハンだとされているが、検死したトーマス・ノグチによると、議員の右耳後方2.5センチ以内の距離から発射された3発の銃弾で殺されたのだという。この結果は現場にいた目撃者の証言とも合致している。つまり、公式説明によると、ロバートの前を歩いていた人物が発射した銃弾がロバートの後方からあたったことになる。しかも、命中した銃弾はサーハンのピストルから発射されたものではなかった。 朝鮮戦争が休戦になって間もない1954年1月にドワイト・アイゼンハワー政権の国務長官だったジョン・フォスター・ダレスは国家安全保障会議でベトナムにおけるゲリラ戦の準備を提案、CIAはSMM(サイゴン軍事派遣団)を編成した。このときのCIA長官はダレス国務長官の弟であるアレン・ダレスだ。 その前からアメリカはインドシナの再植民地化を狙うフランスの戦争を支援していたが、1954年5月にフランス軍はディエンビエンフーの戦いで降伏、それをアメリカが引き継ぐことになった。 しかし、アイゼンハワーの次に大統領となったジョン・F・ケネディはアメリカ軍の撤退を決断、1963年10月にNSAM(国家安全保障行動覚書)263を出している。それによると、1963年末にアメリカの軍事要員1000名を撤退させ、65年12月までに1万1300名を完全撤退させることになっていた。そうした動きは秘密でなかったようで、米軍の準機関紙、パシフィック・スターズ・アンド・ストライプス紙は「米軍、65年末までにベトナムから撤退か」という記事を掲載している。 言うまでもなく、これは実行されなかった。ケネディ大統領が1963年11月22日に暗殺されたからだ。ケネディ暗殺を受けて副大統領から昇格したリンドン・ジョンソンは1963年11月26日付けでNSAM273を出して撤退計画を取り消してしまったのだ。 ジョンソン政権は1964年8月の「トンキン湾事件」を利用してベトナムへ本格的な軍事介入を開始しているが、この「事件」はアメリカ側が仕掛けた偽旗作戦だった。翌年の2月には本格的な北爆を開始、地上部隊を増派する。1965年末になると、ベトナムで戦うアメリカ兵は18万人に達していたという。そして1968年1月に始まったテト攻勢ではアメリカ大使館が一時占拠され、その様子がテレビで伝えられた。アメリカ人は泥沼化した戦争の実態を知ることになったのである。 ロバート・ケネディはベトナム戦争に反対、キング牧師の弁護士だったウィリアム・ペッパーによると、キング牧師側に対し、自分が民主党の大統領候補になった場合に牧師を副大統領にしたいと打診してきたという。(John L. Potash, “Drugs as Weapons Against Us,” Trine Day, 2015) キング牧師は殺される1年前、つまり1967年4月4日にニューヨークのリバーサイド教会でベトナム戦争に反対すると宣言している。公民権運動という限られた領域の運動ではなく、アメリカの支配システムそのものと対決する道を歩き始めたとも言えるだろう。 当時、キング牧師の顧問たちは牧師に対してベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたとロン・ポール元下院議員は話している。そうした発言はジョンソン大統領との関係を悪化させると判断したからだが、牧師はそうしたアドバイスを無視した。 なお、ジョン・F・ケネディは暗殺される5カ月前の1963年6月10日にアメリカン大学の卒業式でソ連との平和共存を訴える「平和の戦略」と呼ばれる演説を行っている。フランス大統領だったシャルル・ド・ゴールは1962年8月22日、OAS(秘密軍事機構)の一派に命を狙われているが、そのド・ゴールは1968年の5月革命の影響もあり、69年4月に失脚している。
2018.06.07
アメリカ海軍の第7艦隊は横須賀を拠点とし、太平洋からインド洋にかけての海域を担当している。アメリカは属国を率い、この海域を自分たちの最重要地域で、自分たちの利権だと認識、統合支配しようとしていることを隠していない。こう考えている以上、ここからアメリカが自分の意思で去ることはないわけだ。 つまり、アメリカが言う「自由で開かれた」とは、アメリカが好き勝手にできるということを意味している。そのベースにはユーラシア大陸の沿岸部分を支配し、内陸の中国やロシアを締め上げて制圧、略奪するという長期戦略がある。 イギリスは明治維新というレジーム・チェンジを後押し、日本の海軍力を増強する手助けをした。日露戦争の際にはロスチャイルド系のクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シフが戦費を用立てている。この交渉以降、シフは高橋是清と親しくなった。イギリスにとって日本は大陸侵略の拠点であり、日本軍は傭兵部隊なのだ。朝鮮半島は橋頭堡と言える。ジム・マティス国防長官は朝鮮半島からアメリカ軍が去ることはないと発言したが、橋頭堡を放棄することはないという意味だ。 アメリカは朝鮮を利用して東アジアの軍事的な緊張を高めてきた。その状況はロシアや中国と連携した韓国政府によって大きく変化、対話の雰囲気が強まっている。この雰囲気を潰そうとする動きがあったものの、今は収まっている。 しかし、これで平和が実現するとは言えない。アメリカが何を考えているかを示唆する出来事があった。1990年のドイツ統一だ。この際、アメリカのジェームズ・ベイカー国務長官はソ連のエドゥアルド・シュワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるが、東へ拡大させることはないと約束したことが記録に残っている。この約束をソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領は信じ、ドイツ統一で譲歩したのだが、約束は守られなかった。 アメリカのウォール街につながる情報機関の幹部たちは大統領には無断でナチスの幹部たちを逃がし、匿い、雇った。多くのファシストを移民として受け入れ、訓練してきた。勿論世代は交代しているが、新しい世代のファシストをアメリカは東ヨーロッパへ帰国させ、レジーム・チェンジの手先として利用している。そしてNATOはロシアとの国境に到達、軍隊を入れ、核攻撃できるミサイルを配置している。アメリカにとっての朝鮮半島統一とは、そういうことだ。アメリカが絡んでいる以上、真の意味で平和が実現されることは極めて難しい。
2018.06.06
NATO加盟国を中心とする19カ国がポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアで6月3日から軍事演習サーベル・ストライク18を始めた。ロシアでサッカーのワールドカップが始まるのは14日だが、その翌日まで演習は続けられる予定になっている。 1万8000人が参加しているが、中でも注目されているのはイスラエル軍の参加。数十名の空挺部隊員が東ヨーロッパへ入っている。2008年8月8日に北京で始まった夏季オリンピックに合わせ、南オセチアを奇襲攻撃したジョージアは当時、イスラエルの強い影響下にあった。政治面だけでなく、2001年からジョージア軍はイスラエルから軍事的な装備の供給を受け、将兵は軍事訓練を受けていた。2014年2月のウクライナにおけるクーデターは親イスラエル派のネオコンが主導していたが、それだけでなく、イスラエルそのものの影が報告されている。 南オセチアを奇襲攻撃した当時のジョージア大統領、ミヘイル・サーカシビリはアメリカのコロンビア・ロー・スクールやジョージ・ワシントン大学ロー・スクールで学んだ経験があり、その後、ニューヨークの法律事務所パターソン・ベルクナップ・ウェッブ・アンド・タイラーに所属している。「バラ革命」の際、体制転覆の仕掛け人とみられているリチャード・マイルズに動かされていた。アメリカへ留学する前、サーカシビリは国立キエフ大学を卒業しているのだが、そこで現在ウクライナ大統領を名乗っているペトロ・ポロシェンコと親しくなっている。 ワールドカップに合わせてアメリカの支配層は何か仕掛けてくるのではないかと懸念する人がいるが、ひとつの可能性として、ウクライナ東部のドンバスに対する本格的な軍事攻撃がある。アメリカがキエフ政権の軍事力を増強していることもそうした推測をする理由のひとつだ。
2018.06.05
朝鮮半島情勢は韓国政府の思惑通り、軍事的な緊張を緩和させる方向へ動いているようだ。アメリカ政府内にはこうした流れを断ち切ろうとする動きもあるが、韓国の背後にロシアと中国が控えていることもあり、ドナルド・トランプ大統領は朝鮮の金正恩労働党委員長と会談する方針を維持している。 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は5月31日に朝鮮を訪問、金正恩委員長にロシアを訪れるよう求めたと伝えられている。9月11日から13日にかけてウラジオストクで開催されるEEF(東方経済フォーラム)に招待、そこでウラジミル・プーチン大統領と会談してはどうかということのようだ。 このフォーラムは毎年開かれていて、昨年は9月6日から7日にかけて開かれた。このフォーラムには韓国の文在寅大統領も出席、6日にはウラジミル・プーチン露大統領と会談している。韓国の康京和外相7月上旬、ロシアとの戦略的な関係を深めたいと発言していた。両国は関係を強めているのだ。東アジアの経済的な交流を強め、ビジネス上の利益だけでなく、軍事的な緊張を緩和させようとう思惑もあるだろう。フォーラムには朝鮮の代表団も参加していた。 天然ガスや石油のパイプラインやシベリア鉄道を中国や朝鮮半島へ延ばし、そのまま半島を南下させたいとロシアは以前から計画しているが、そのためには朝鮮政府を説得する必要がある。そこで、2011年夏には110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると金正日に提案している。2011年12月に金正日が急死するが、この計画は消えていないようで、翌年の4月にはロシア議会がこれを承認している。 韓国、ロシア、中国は朝鮮半島の軍事的な緊張を緩和しようとしてきたが、それを壊してきたのが朝鮮。核兵器の爆発実験や弾道ミサイル(ロケット)の発射実験を繰り返し、アメリカの軍事的な緊張を高める口実を提供してきたのだ。朝鮮のおかげで日米の好戦派は日本をアメリカの戦争マシーンへスムーズに組み込むことができた。 その朝鮮が方針を変更した理由は不明だが、ひとつの可能性は昨年4月のアメリカ主導軍によるシリアの軍事施設への攻撃。59機のトマホーク(巡航ミサイル)が発射され、そのうち目標へ到達したんは23発だった。6割強が撃墜されたことになる。 ロシア側はこのときの反省から短距離用の防空システムであるパーンツィリ-S1を配備した。そして今年4月にもアメリカ主導軍はシリアをミサイルで攻撃した。トランプ大統領は自信満々だったが、約7割が撃墜されたとロシア国防省は発表している。 その内訳はパーンツィリ-S1が25機発射して23機命中、ブク・システムは29機のうち24機命中、オサ・システムは11機のうち5機命中、S-125は13機のうち5機命中、クバドラートは21機のうち11機命中、S-200は8機のうち0機命中など。このほかECM(電子対抗手段)が使われた可能性がある。アメリカ軍にミサイル攻撃されても対抗できると朝鮮が考えたとしても不思議ではない。ロシアにはS300やS400という長距離用の防空システムもある。 しかし、アメリカとしては東アジアの軍事的な緊張を緩和させるわけにはいかない。南シナ海や東シナ海で軍事的な緊張をアメリカが高めているのはそのためだ。 アメリカの支配システムを支えてきたドル体制が崩れ始めていることを考えると、アメリカに時間はない。ドル体制を支える重要な柱のひとつであるサウジアラビアが不安定化していることもアメリカにとって懸念材料だ。
2018.06.05
ポーランド政府はアメリカ政府に対し、自国の領土内にアメリカ軍の恒久的な基地を建設するように求め、その代償として20億ドルを提供する用意があると提案している。日本のようなアメリカの属国になりたいということのようだ。 ポーランドはウクライナの西部地域と同様、歴史的に反ロシア意識が強く、1904年には反ロシア運動の指導者だったユゼフ・ピウスツキが来日、運動へ協力するよう説得を試みている。反ロシア運動を強化するため、ポーランドでは1925年に「プロメテウス同盟」という地下組織も編成された。ポーランドからウクライナ西部にかけての地域はカトリックの東端で、その東は東方正教会が信じられている地域になる。ピウスツキの後、ポーランドの反ロシア運動で大きな影響力を持つのはウラジスラフ・シコルスキーだ。 かつてカトリック内にはバルト海からエーゲ海まで、つまり中央ヨーロッパの地域をカトリックで統一しようという動きがあり、インターマリウムが組織された。その組織はイギリスやフランスの情報機関から支援を受け、国家間の勢力争いと深く結びつく。 政治の世界では、中央ヨーロッパを統一するためにPEU(汎ヨーロッパ連合)が1922年に創設されている。その中心にはオットー・フォン・ハプスブルク大公がいて、イギリスのウィンストン・チャーチルもメンバーに含まれていた。 第1次世界大戦で負けたドイツは領土を削られ、ドイツ本国と東プロイセンの間にポーランド領(ポーランド回廊)ができ、東プロイセンは飛び地になった。この領土問題を解決しようとドイツはポーランドに働きかけるが、イギリスを後ろ盾とするポーランドはイギリス側の意向もあり、話し合いは進まない。業を煮やしたドイツが軍事侵攻したのが1939年9月1日だ。その2日後にイギリスとフランスはドイツに宣戦布告するが、戦局が動き始めるのは1940年になってからだった。 その間、シコルスキーはパリへ脱出、1939年9月30日には亡命政権を作り、翌年6月19日にウィンストン・チャーチルと会談、ポーランドがイギリスと一緒に戦うことを約束、亡命政権はロンドンへ移動する。 その当時、シコルスキーの側近のひとりだった人物がユセフ・レッティンゲルで、ヨーロッパをイエズス会の指導の下で統一しようと活動していた。戦争が終わった後、1952年にオランダのベルンハルト(ユリアナ女王の夫)に接近し、その人脈を利用してアメリカのハリー・トルーマン政権やドワイト・アイゼンハワー政権につながる。レッティンゲルはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントでもあった。 こうした歴史を考えると、ポーランドがイギリスと同じアングロ・サクソン系のアメリカに秋波を送っても不思議ではない。アメリカ側が働きかけている可能性もあるだろう。ポーランドからウクライナ西部にかけての地域はヨーロッパを不安定化する出来事を引き起こすかもしれない。
2018.06.03
ウクライナでアルカディ・バブチェンコなるジャーナリストが殺され、その黒幕はロシアだという話を西側の有力メディアが伝えていた。例によって証拠はなく、公開された現場の写真には「血」らしきものが写っているのだが、鮮やかな赤色で不自然だった。ロシアを攻撃する材料にはなりそうな話なら西側の有力メディアは飛びつく。そして数日後、バブチェンコは元気な姿を人々の前に見せ、話題になっている。殺人事件は完全だでっち上げだったのだ。 このでっち上げ事件の特徴はすぐに種明かしをしたところにある。セルゲイ・スクリパリとその娘のユリアのケースではテレサ・メイ英首相をはじめとするイギリスやアメリカの政府や有力メディアが同じように証拠を示すことなくロシアを名指しで非難していた。このケースでは種が見えても種はないと言い続けている。 イギリス政府はノビチョク(初心者)という神経ガスが使われたと主張していたが、これは1971年から93年にかけてソ連/ロシアで開発されていた神経物質の総称。ロシアでこの名称が使われることはないと指摘する人もいる。イギリス政府がこの名称を最初から使った理由は、ロシアとの関係を強調したいからだと見られている。その後、使われた化学物質はA-234だとされた。 この神経物質の毒性はVXガスの10倍だという。VXガスの致死量は体重70キログラムの男性で10ミリグラムと言われているので、ノビチョクは1ミリグラム。どういう形で散布したと想定してるのか不明だが、周囲に被害が及んでいないのは不可解。しかもスクリパリ親子は回復している。娘はロイターのカメラの前に現れた。質問は禁止されていたようで、状況を聞くことはできなかったが、元気そうに見えた。昏睡状態だった人がこれだけ短時間に回復したのは驚異的だ。 ということで、化学兵器による攻撃という話自体が嘘で、ふたりは拉致されたのではないかと疑われている。イギリス政府が娘をカメラの前に立たせた理由は、そうした疑問を持つ人が少なくないからだろう。 バブチェンコはウラジミル・プーチンに批判的なロシア人。母方の祖母がユダヤ人だったこともあり、2017年にロシアを出国してからチェコを経由してイスラエルへ入ったとされている。そこからウクライナへ入り、そこでATRというテレビ局で働き始めた。ここはアメリカ大使館のメディア開発基金から資金が出ていることが公表されている。 ウクライナの治安機関SBUが関与したバブチェンコの暗殺劇のプロットは、ロシアの治安機関FSBがウクライナ市民を殺し屋探しのために雇い、その市民が殺し屋を雇い、その殺し屋がSBUに通報、仲介役の市民を逮捕するために殺人劇を仕組んだというのだが、大多数の人は、なぜ殺人劇を演出する必要があったのかわからないだろう。 この仲介役の市民は狙撃用のライフルを製造している会社の経営者でSBUと関係があり、殺し屋だとされた人物はウクライナ東部で反クーデター勢力と戦っていて、ネオ・ナチの可能性がある。発端は会社の融資を巡る争いだったという見方もある。 ウラジミル・プーチン露大統領は慎重で、軍事的な挑発に乗ってこない。国内に強力な第5列を抱えていることもあるだろう。そこで西側の政府や有力メディアは明らかな嘘で軍事的な緊張を高めてきた。ロシアは反撃してこないとネオコンは湾岸戦争のとこきから主張しているが、その信仰が深くなったのかもしれいない。今回の茶番劇もそうしたプーチンの慎重な姿勢と西側の傲慢さが招いたとも言えそうだ。
2018.06.02
公文書の改竄や国有地の不適切な価格での売却は起訴に当たらないと大阪地検特捜部は決めたそうだ。公的な情報を公開せず、国民の富を略奪する新自由主義に浸食された日本では当然の結論だという声があがっている。 庶民から高等教育を受ける権利を奪い、公的な年金や健康保険も廃止の方向へ動いている。そうした政策を具現化したのがISDS条項を軸とするTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)にほかならない。つまり、この協定を西側の支配層は放棄しないだろう。 新自由主義で破壊された国は少なくないが、その典型例がボリス・エリツィン時代のロシア。本ブログではすでに書いたことだが、ソ連時代のどこかの時点でKGBの中枢は西側支配層と手を組み、ソ連を解体してエリツィン体制を樹立させた。1970年代からKGBの実質的なトップで、「KGBの頭脳」とも呼ばれたフィリップ・ボブコフも西側と組んだKGBグループに含まれていた。組んだ目的は、言うまでもなく、私利私欲。日本の場合、そうした浸食の歴史は少なくとも明治維新から始まる。ロシアより事態は深刻。 今回、大阪地検は屁理屈をこねて不起訴を決めたが、鳩山由紀夫首相や小沢一郎を失脚させるため、屁理屈をこねて小沢を起訴する方向へ引っ張った可能性が高い。さすがに検察自体が起訴すると自分たちに傷がつくような話だったので検察審査会を使ったと見る人はすくなくない。審査会に疑惑の目が向けられていた。 その後、審理が進む中で虚偽の調書や捜査報告書が作成されていたことが判明する。通常は作成しないらしい捜査報告書をわざわざ作ったこと自体不自然なのだが、その報告書も事実に反する内容。検察審査会を騙して小沢議員を起訴、つまり裁判で縛り付けるために検察官が仕組んだと思われても仕方がない。検察官の個人的な判断だったのか、あるいは組織の意向が反映されているのかは不明。そこまでメスは入れられなかった。 財務省の問題も検察が安倍晋三政権の意向を忖度したわけではないだろう。政権にそれだけの力がないことは鳩山政権で何が起こったかを考えればわかる。 かつて、日本には田中角栄という絶大な力を持つ政治家がいた。その田中に関するスキャンダル攻勢が1974年から激しくなる。その幕開けは「文藝春秋」誌の同年11月号に掲載された立花隆の「田中角栄研究」と児玉隆也の「淋しき越山会の女王」。その2年後、アメリカ上院の多国籍企業小委員会で明るみ出たロッキード社による国際的な買収事件で田中の名前が浮上し、その年の7月には受託収賄などの疑いで逮捕された。事件が発覚する切っ掛けは小委員会へ送られてきた資料だった。委員会が仕掛けたのではなく、資料を送った人物、あるいは組織が仕掛けたのだ。 田中が逮捕される何カ月か前、アメリカで発行されていた高額のニュースレターに田中の逮捕が決まったとする記事が載ったと言われている。それを某財界人から知らされた人物が目白の田中邸を訪れて取材したところ、田中は検察も警察も押されているから大丈夫だと楽観していたという。が、実際は逮捕された。 ロッキードによる賄賂工作の暴露はジョン・マックロイの調査から始まっている。アンゴラで革命が起こった後、アメリカ支配層は「制裁」に出るのだが、それを無視する形でガルフ石油はビジネスを継続しようとし、それに怒った支配層の意向でマックロイは動いたと言われている。その延長線上にロッキード事件もあるというのだ。このマックロイはウォール街の大物で、第2次世界大戦後、世界銀行の総裁を経てドイツの高等弁務官を務め、高等弁務官時代にはナチスの大物を守ったことでも知られている。 ただ、起訴だけでは田中を完全に潰すことができず、中曽根康弘が首相になったときにマスコミは「田中曽根」と揶揄していた。こう呼ばれた最大の理由は中曽根政権に官房長官として田中の懐刀と言われた後藤田正晴が入ったからだが、これはスキャンダルで後藤田を失脚させることに失敗したからだった可能性が高い。その年、警察を揺るがすスキャンダルが発覚していた。政界の事情に詳しかった某氏によると、中曽根政権の実態は「岸影」。そこに田中の懐刀が監視役として入ったのだという。 いずれにしろ、検察に何か「社会正義」的なことを期待するのは間違っている。
2018.06.01
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