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ロシアと中国の政府はアメリカ支配層に対し、軍事的な攻撃には軍事的に反撃する意思を鮮明にしている。これはアメリカ支配層の中でも好戦的なネオコンが1991年に作成した世界戦略の基盤を崩すものだ。 ジョージ・H・W・ブッシュ政権は1991年1月にイラクへ軍事侵攻した。「砂漠の嵐作戦」だ。ネオコンはその作戦でサダム・フセインを排除し、親イスラエル政権を樹立するともりだったのだが、ブッシュ大統領はフセイン政権を倒さずに攻撃を終了。 ポール・ウォルフォウィッツ国防次官などネオコンは怒ったが、その一方でソ連軍が出てこなかったことを収穫だと考えた。アメリカ軍が何をしても妨害する者はいないと思い込んだのである。 1991年夏までの段階でブッシュ大統領をはじめとするCIA人脈はイスラエルの情報機関を介してソ連の情報機関KGBの中枢と話をつけ、ソ連を乗っ取ることで合意していた。ハンマー作戦だ。これは本ブログでも書いたことがある。 この乗っ取り作戦には関与していなかったようだが、ミハイル・ゴルバチョフはアメリカや西ヨーロッパを民主的な体制だと考える「牧歌的親欧米派」で、当時のソ連政府は軍事的に欧米と向き合うよう状況になかった。 1991年の後半にはゴルバチョフを排除することに成功、欧米支配層の傀儡でこの年の7月にロシア大統領となったボリス・エリツィンが実権を握る。このエリツィンは同年12月にウクライナやベラルーシの首脳をベラルーシにあるベロベーシの森に集め、秘密裏に、国民に諮ることなくソ連からの離脱を決めてソ連を消滅させる。 その後のロシアがアメリカやイギリスをはじめとする西側巨大資本の属国になり、国民の資産は彼らに略奪されることになった。この時期に巨万の富を築いたオリガルヒは西側巨大資本やKGB幹部の手先になった人びとだ。 ソ連の消滅によってアメリカ支配層は自分たちに逆らえる国はなくなったと判断する。つまり、アメリカが唯一の超大国になったと信じたのである。1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンをネオコンは「詰め」だと考えたのだろう。 ネオコンの基本戦術は「脅せば屈する」。1991年の経験はこの考え方を強化することになった。この戦術をネオコンたちはロシアや中国にも適用しているのだが、機能していない。ゴルバチョフ時代のソ連とは違って現在のロシアは慎重ながら、対抗する意思を鮮明にしている。アメリカ支配層は中国について、カネ儲けさせておけば自分たちの戦略に楯突かないと信じていたようだが、2014年以降、雰囲気は大きく変化した。ウクライナにおけるネオ・ナチを使ったクーデターを見てアメリカ支配層の危険性を悟ったようだ。 アメリカ支配層の危険性を悟っているという点では韓国も同じ。本ブログでは繰り返し書いてきたが、韓国のエリートはロシアや中国とのつながりを強めていた。朝鮮半島の動きはこうした状況が影響している。アメリカ支配層に従属している日本に対する韓国の姿勢が変化するのも必然だ。
2018.10.31
南シナ海で軍事的な緊張が高まっている。安倍晋三首相が2015年6月、赤坂の赤坂飯店で開かれた懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたというが、その海域だ。その安倍が先日会談したという中国の習近平国家主席は軍部に対し、南シナ海と台湾の監視を強め、戦争の準備をするように命じたと伝えられている。 本ブログでは何度も書いてきたように、南シナ海は中国が進める一帯一路の東端にある海域。そこをアメリカ軍と海上自衛隊は支配し、中国の海運をコントロールしようとしている可能性が高い。当然、沖縄へも影響がおよんでいる。沖縄の基地建設は戦争の準備にほかならない。 アメリカやイギリスの基本戦略は遅くとも19世紀から海上封鎖。ユーラシア大陸の周辺部を支配し、内陸部を締め上げていこうというものだ。長い間、物流の中心は海運であり、この封じ込め政策は効果的だった。そこで内陸国は高速鉄道を計画したわけである。 ワシントン・イグザミナー紙によると、アメリカのライアン・ジンケ内務長官はロシアのエネルギー資源輸送を軍事的に妨害する可能性があると語り、ロシア上院の情報政策委員会に所属するアレクセイ・プシュコフはロシアに対するアメリカ海軍の海上封鎖は戦争行為に等しいと非難した。この戦略は中国にも向けられているはずだ。 アメリカの支配層は1991年12月にソ連を消滅させることに成功して以来、民主主義風の装いを脱ぎ捨て、露骨な侵略戦争を始めた。その基本プランが1992年2月に国防総省のDPG草案という形で作成されている。この草案は国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心に作成されたことから、ウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 ソ連消滅後、アメリカの支配層はアメリカが「唯一の超大国」になったと思い込み、潜在的ライバルを潰して「パクスアメリカーナ」を実現しようとした。。ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、ウォルフォウィッツは1991年の段階でイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。(3月、10月)実際、イラクは先制攻撃でサダム・フセイン体制が破壊され、シリアへはジハード傭兵を送り込み、アメリカ/NATO軍の直接的な軍事介入を目論んでいた。イランに対しては手先の武装勢力を使うほか、西側の有力メディアを使ったプロパガンダ攻撃を続け、今は経済戦争を仕掛けている。 ソ連消滅後、ロシアはウォール街やシティの手先だったボリス・エリツィンが大統領を務め、ロシア国民の資産を外国の巨大資本や自分たちで略奪し、巨万の富を築いた。その一方で国民は貧困化している。 つまりロシアは米英支配者の属国になったのだが、21世紀に入るとウラジミル・プーチンが再独立に成功する。それに対してジョージ・W・ブッシュ政権は2002年にABM(弾道弾迎撃ミサイル)制限条約から脱退、中国の北京でオリンピックが開幕した2008年8月にはジョージア軍を使って南オセチアを奇襲攻撃させたが、これはロシア軍の反撃で惨敗に終わった。 オバマ政権は2010年7月、ポーランドと地上型SM-3(イージス・アショア)の設置で合意、ロシアの目と鼻の先まで軍事的な縄張りを広げた。2014年2月にはロシアの隣国、ウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターをアメリカ政府は成功させた。ドナルド・トランプ大統領によるINF(中距離核戦力)全廃条約の破棄はこうした流れの中での出来事だ。 核戦争という脅しでロシアや中国を屈服させ、再び「唯一の超大国」になろうとしているのだろうが、INF全廃条約を破棄すればヨーロッパが戦場になるとプーチン露大統領は警告した。アメリカの国印は白頭鷲が足でオリーブの枝と矢をつかんだ図柄なのだが、プーチン大統領はジョン・ボルトン国家安全保障補佐官に対し、アメリカの鷲はオリーブを全て食べてしまい、矢しか残っていないのかとからかっている。 アメリカ/NATO軍とロシア軍が通常兵器で衝突した場合、部隊の規模が同じ程度ならロシア軍が完勝することは南オセチアやシリアでの戦闘で明白になった。兵器の能力もロシアが優れている。実際の戦闘に使われないことを前提に開発され高額兵器が役立たずだということをアメリカの「同盟国」も認識しているようで、アメリカは核兵器依存を強めていくしかないのだろう。
2018.10.30
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、ロシアのウラジミル・プーチン大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、そしてフランスのエマニュエル・マクロン大統領は10月27日にトルコのイスタンブールでシリア情勢について話し合った。 会議後に開かれた共同記者会見によると、シリア情勢は政治的に解決、ジュネーブで新しい憲法を作る作業を開始、イドリブの停戦は維持し、難民の帰還を助け、選挙では国際的な監視団を編成する。侵略作戦に失敗したネオコンなどアメリカ支配層はクルドを抱き込み、ユーフラテス側の北側に軍事基地を建設して「満州国」のような傀儡国家を建設しようとしているが、トルコ、ロシア、ドイツ、フランスの4カ国はシリアの分割を否定、国境は戦争前と同じにするとしている。 ポール・ウォルフォウィッツのようなネオコンは1980年代から中東全域をイスラエルの支配下に置こうとしてきた。まずイラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル政権を樹立、シリアとイランを分断して両国を潰すという方針を当時から示していた。そこでフセイン体制をペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤と考えていたジョージ・H・W・ブッシュ副大統領たちと対立、この対立によって暴露合戦が始まり、イラン・コントラ事件やイラクへの兵器密輸も明らかにされた。 1991年には国防次官だったウォルフォウィッツがイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は語っている。クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では、イラク、シリア、イランだけでなく、レバノン、リビア、ソマリア、スーダンも攻撃予定国のリストに載せていた。(3月、10月) ところで、ネオコンはシオニスト(イスラエル至上主義者)の一派で、ドナルド・トランプもヒラリー・クリントンもその人脈に含まれている。トランプはカジノ経営者のシェルドン・アデルソンやイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相につながり、ヒラリー・クリントンは投機家のジョージ・ソロスやロスチャイルド金融帝国につながる。巨大資本に支配された西側の有力メディアがトランプを攻撃する理由は言うまでもないだろう。この対立はサウジアラビアにも影響、クリントンに近いのは前皇太子のムハンマド・ビン・ナーイフ、現皇太子のモハメド・ビン・サルマンはトランプに近い。 こうしたシオニスト人脈にとって、シリアのバシャール・アル・アサド体制打倒の失敗は大きなダメージだ。シリア侵略に失敗するということはイランの現体制を倒すというプランを困難にするだけでなく、地中海の東側、エジプトからギリシャにかけての海域に存在すると言われている天然ガスの独占も難しくなる。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、ここに眠る天然ガスは9兆8000億立方メートルに達し、原油も34億バーレルはあるという。イスラエルが執拗にガザを攻撃する理由のひとつはこれだ。 イスラエル軍は10月26日からもガザを空爆、子ども3名を殺している。ハマスを口実にしているが、本ブログでは何度か説明したように、この組織を作り上げたのはイスラエルにほかならない。圧倒的に支持されていたPLOのヤセル・アラファト議長に対抗させることが目的だった。そもそも、イスラエルは侵略者であり、「建国」以来、パレスチナ人を虐殺してきた。そうした行為に対する抗議活動が3月から続いているが、その間に殺されたパレスチナ人は200名を上回るという。こうした破壊と殺戮を西側のメディアは気にしない。バラク・オバマは大統領時代、アメリカは特別な存在だと言っていたが、イスラエルも同じだと考えているのだろう。 地中海東部にある天然ガスの利権にはロスチャイルドも食い込んでいるが、その資源を売るマーケットとして想定されているのはヨーロッパのはず。そのヨーロッパへの天然ガス供給量を増やそうとしているロシアは協力なライバルということになる。ロシアとイスラエル、両国が望むパイプラインのルート上にはギリシャがある。西側の金融資本がギリシャを破綻させ、ロシアとの関係を断つように仕向けた理由のひとつはこれだろう。 ウォルフォウィッツが予告したようにイラクをアメリカ軍が先制攻撃したのはジョージ・W・ブッシュが大統領だった2003年3月であり、リビアに続いてシリアへの侵略を始めたのはバラク・オバマが大統領だった2011年3月。トランプ大統領はイランに対して経済戦争を仕掛けている。 歴史を振り返れば、アメリカの支配層が民主的な政権を軍事侵略や傀儡を使った軍事クーデターで潰してきたことは明白。そうした侵略では労働組合を使った不安定化工作やメディアのプロパガンダが展開された。1990年代からは広告会社やNGOが重要な役割を果たしている。アメリカが「民主主義の牙城」だという主張は戯言以外の何物でもない。トランプは悪いがXなら良いということでもない。ロシアとの核戦争へ突き進んでいたヒラリーに比べれば、ロシアとの関係修復を訴えていたトランプはましだった。
2018.10.29
安倍晋三が中国を訪問、習近平国家主席と会談したと伝えられている。菅直人が総理大臣だった2010年9月に海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を日中漁業協定無視で取り締まり、漁船の船長を逮捕、日中関係は冷え込んだ。その両国の関係を修復する動きのように見えるが、実際は違うだろう。 菅政権の取り締まりは当然のことながら中国側を怒らせた。当時の国土交通大臣は前原誠司だ。菅と前原は領土問題の棚上げ合意を壊し、日本と中国との関係悪化を図ったのである。10月に前原誠司外務大臣は衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と発言している。 ところが、2011年3月11日に東北の太平洋側で巨大地震が起こり、東京電力の福島第1原子力発電所が破壊され、炉心が溶融して環境は広範囲にわたって放射性物質で汚染された。この大事故は逆に日本と中国との対立を緩和しそうになるのだが、そうした雰囲気を消し去って関係悪化の方向へ戻したのが石原親子だ。 まず、石原伸晃が2011年12月にハドソン研究所で講演、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言する。この背後にはネオコンの大物でポール・ウォルフォウィッツの弟子にあたるI・ルイス・リビーがいたと言われている。当時、リビーはハドソン研究所の上級副所長だった。 2012年4月には石原伸晃の父親、石原慎太郎知事(当時)がヘリテージ財団主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示し、中国との関係は決定的に悪くする。安倍晋三もハドソン研究所と関係が深いが、そのつながりを築いたのもリビーだ。 この間、2011年9月に総理大臣は菅直人から野田佳彦へ交代、2012年12月からは安倍晋三だ。中国との関係を悪化させるという点で3首相に大差はない。その安倍が中国を訪問した大きな理由は日本の経済界からの要請だろう。中国との関係が破壊されて以降、日本企業は窮地に陥った。 中国との友好関係を築いたのは田中角栄である。内閣総理大臣だった田中は1972年9月に中国を訪問、北京で日中共同声明に調印したのだ。1978年8月には日中平和友好条約が結ばれている。その際に尖閣諸島の領土問題は「棚上げ」にされ、日本と中国との交流は深まった。その後、日本企業にとって中国の重要度は高まる。 田中が中国を訪問する7カ月前、アメリカ大統領だったリチャード・ニクソンも中国を訪れていた。中国の経済的な制圧(新自由主義化)や中ソ分断が目的だったのだろうが、その準備のために水面下で動いていたのがヘンリー・キッシンジャー。交渉の過程でキッシンジャーは周恩来に対し、アメリカと中国が友好関係を結ぶことに同意しないならばアメリカは日本に核武装を許すと脅したと調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは書いている。その一方、キッシンジャーは佐藤栄作に対し、日本の核武装をアメリカは「理解する」と示唆したという。(Seymour M. Hersh, “The Price of Power”, Summit Books, 1983) キッシンジャーは日本を交渉の駒として使っていたわけだが、田中は駒に甘んじていなかった。1974年になると、その田中を攻撃する記事が掲載される。つまり、文藝春秋誌1974年11月号に載った立花隆の「田中角栄研究」と児玉隆也の「淋しき越山会の女王」だ。この年の12月に田中は首相を辞任する。 そして1976年2月、アメリカ上院の多国籍企業小委員会でロッキード社による国際的な買収事件で田中の名前が浮上した。その年の7月に田中は受託収賄などの疑いで逮捕された。事件が発覚する切っ掛けは小委員会へ送られてきた資料。言うまでもなく、仕掛け人は資料を送った人物、あるいは組織。委員会ではない。 1970年代まで日本の大企業は有能な職人を抱える中小企業を利用して富を独占していたが、1980年代に入るとアメリカ支配層は日本の生産システムに「ケイレツ」というタグをつけて攻撃を開始する。日本の大企業の強みはそこにあると判断したのだろう。 ニクソン大統領は中国訪問と同時にドルと金との交換を停止すると発表、ドルの支配的な立場を維持するためにペトロダラーの仕組みを作り上げ、金融の規制緩和を実施した。その延長線上に1985年9月のプラザ合意はある。それ以降、日本経済における中国の存在感は高まっていく。 このまま安倍政権が中国との関係修復に動く可能性は小さい。せいぜい次の国政選挙までだろう。アメリカ支配層は中国におけるカラー革命にとどまらず、新疆ウイグル自治区などで武装蜂起を始める可能性もある。シリアが侵略傭兵の一部としてウイグル系戦闘員が参加していたとも伝えられている。 ジハード傭兵を使ったシリアでの侵略戦争に失敗したアメリカは戦闘員をアフガニスタンやイラクへ移動させていると伝えられているが、ウイグル系は中国へ戻っている可能性がある。戦乱の火種は整えられている。 そのアメリカに従属しているのが安倍晋三を含む日本の政治家や官僚。その周辺に学者や有力マスコミが存在する。経済界もそうした仲間だったが、経済状況が彼らとアメリカとの間に隙間風を吹き込んでいる。その経済界の意向に沿う形で中国を訪問したとしても、安倍首相を操っているアメリカの支配層は中国とロシアを制圧するという戦略を捨てない。中国とロシアを中心とする流れがアメリカ中心のシステムを揺るがしているからである。 安倍晋三は2015年6月、赤坂にある赤坂飯店で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたという。これは本音だろう。南シナ海は中国が進める一帯一路の東端にある海域。アメリカ軍と海上自衛隊は中国船の自由な航行を阻止、海運をコントロールしようとしている。
2018.10.27
モハンマド・ビン・サルマンや父親のサルマン国王はアメリカと敵対関係になかったのだが、ネオコンが展開したロシアに対する経済戦争がサウジアラビアとアメリカとの間に亀裂を入れることになった。 アメリカ支配層はロシアを軍事的に威嚇する一方、経済戦争を仕掛けたのだが、そのひとつが石油相場の暴落だったと見られている。ウラジミル・プーチンがロシアを再独立させた後、ネオコンは1980年代に成功した石油相場の引き下げを再現しようとした。 石油相場は2014年の半ばから2016年初めにかけて暴落したが、ロシアを弱体化させることに失敗し、サウジアラビアの財政を赤字に転落させてしまった。その結果、サウジアラビアでは巨大建設企業へ代金、あるいは兵士や労働者への賃金の支払いが滞ったという話も伝わっている。 この間、オバマ政権は2014年からダーイッシュを利用してシリアを不安定化させている。こうした政策に反対していた人物は政権の内部にもいたが、マイケル・フリンDIA局長は2014年8月に、またチャック・ヘイゲル国防長官は2015年2月に解任されている。マーティン・デンプシー統合参謀本部議長は2015年9月に再任が拒否された。いずれも後任は好戦的な人びとで、アメリカ/NATO軍による軍事侵攻の準備が整ったと解釈された。ロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入したのは2015年9月30日のことである。 この軍事介入でジハード傭兵の支配地域は急速に縮小、バシャール・アル・アサド政権の打倒は難しくなった。その翌年の6月にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はロシアのウラジミル・プーチン大統領に対し、2015年11月の自国軍機によるロシア軍機撃墜を謝罪してロシアへ接近、アメリカは2016年7月にクーデターを目論むが、失敗する。こうしてトルコは侵略勢力から離脱、カタールも続いた。 サウジアラビアがロシアへ接近する動きを見せたのは2017年10月。サルマン国王がロシアを訪問、防空システムのS-400購入を打診したのだ。サウジアラビアにはアメリカからTHAAD(終末高高度地域防衛)を購入する話もあったのだが、今年9月末には曖昧なことになっていた。 ジャーナリストのジャマル・カショーギがトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ入ったのはその直後の10月2日。トルコの警察当局はカショーギが領事館で殺され、細かく解体されて運び出されたと主張、それを示す音声を入手したとされた。 アメリカの有力メディアがCIAと緊密な関係にあることは本ブログで繰り返し書いてきた。2001年11月にはアル・ジャジーラのカブール支局を攻撃しているが、それほど露骨でなくてもアメリカ支配層の暗部を調べていて変死したジャーナリストは少なくない。イエメンを攻撃して国を破壊、少なからぬ人びとを殺害しているビン・サルマンがろくでもないことは以前から知られていた。その人物を西側では「改革派」だとしていたのだ。サウジアラビアもトルコもアメリカも支配層の手は血まみれである。カショーギの事件が騒がれているのは、背後に特別の理由があるからだろう。(了/2018.10.27)
2018.10.27
ロビン・クック元英外相が2005年7月8日付けガーディアン紙で書いたように、アル・カイダとはCIAに雇われ、訓練を受けた数千人におよぶムジャヒディンのコンピュータ・ファイル。アラビア語でアル・カイダはデータベースの意味でも使われる。この仕組みは1970年代の終盤、ジミー・カーター政権の国家安全補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーによって作り上げられた。アフガニスタンへソ連軍を誘い込み、戦わせることが目的だった。2014年に入ると西側はダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を売り出すが、この武装グループも構図は基本的に同じだ。 アメリカなどがシリアへ送り込んだ武装勢力はシリア国内に基盤はなく、主要な兵站線はトルコから伸びていた。そうした物資輸送の証拠をつかんだセレナ・シムをトルコの情報機関MITは恫喝、その直後の「自動車事故」だった。この武器を含む物資の輸送を指揮していたのはそのMITである。 シムが証拠をつかむ前、2014年1月にトルコのウブラフム・アイドゥン憲兵少将、ハムザ・ジェレポグル憲兵中将、ブルハネトゥン・ジュハングログル憲兵大佐が摘発している。この情報がシムへも流れていたはずだが、シムが死亡した翌月に摘発の責任者が逮捕されてしまう。この摘発をトルコのジュムフリイェト紙は2015年5月に報道、同紙の編集者が同年11月26日に逮捕され、ジャン・ドゥンダル編集長とアンカラ支局長のエルデム・ギュルは「国家機密」を漏らしたという理由で懲役5年以上の判決が言い渡されている。 ところで、ジャマル・カショーギを殺害する相談をアメリカの情報機関は傍受していたとも伝えられている。つまりカショーギが危険な状態にあることを事前に知っていたが、それを本人に伝えていなかった可能性が高い。 しかし、アメリカの情報機関がカショーギを敵視していたとは言えないだろう。この人物は若い頃からサウジアラビアやアメリカの情報機関、つまりGIP(総合情報庁)やCIA(中央情報局)のエージェントとして活動してきたのだ。また、ムスリム同胞団のメンバーとして知られている。 ジャマル・カショーギの伯父、アドナン・カショーギはロッキード事件でも登場したサウジアラビアの富豪。アドナンもGIPやCIAと緊密な関係にあった。アドナンの父親はサウジアラビア国王だったイブン・サウドの主治医で、甥にあたるドディ・ファイードはウェールズ公妃ダイアナの恋人として有名だ。ファイードとダイアナは1997年8月31日に自動車事故で死亡した。ファイードとジャマルは従兄弟ということになる。 モハンマド・ビン・サルマンが皇太子になったのは2017年6月。その前の皇太子はホマメド・ビン・ナイェフだった。この交代には2016年のアメリカ大統領選挙が影響したと言われている。つまり、ビン・ナイェフはヒラリー・クリントンの当選を前提にして皇太子となったのだが、実際はドナルド・トランプになり、トランプに近いビン・サルマンへ入れ替えられたというわけだ。 ヒラリー・クリントンは上院議員時代から軍需産業のロッキード・マーチンと近く、巨大金融資本ともつながっている。投機家のジョージ・ソロスから指示を受けていることは外部へ漏れた電子メールで判明している。ソロスは金融帝国とも言うべきロスチャイルドと関係が深い。一方、トランプに対する最大のスポンサーはカジノ経営者のシェルドン・アデルソン。このアデルソンはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と緊密な関係にある。クリントン/ビン・ナイェフとトランプ/ビン・サルマンはいずれもシオニスト人脈に属しているが、派閥は違うということだ。 経済政策の面ではビン・サルマンとネオコンに大差はない。ビン・サルマンは副皇太子時代から経済面では新自由主義に毒され、コンサルタント会社マッキンゼーの提案に基づいて「ビジョン2030」を作成ていた。私有化を推進し、弱者を切り捨て、また石油産業への依存を弱めて国をヘッジファンド化しようとしていたのだ。(つづく)
2018.10.26
ワシントン・ポスト紙のコラムニストだったジャマル・カショーギがトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ入ったまま行方不明になったのは今年(2018年)10月2日のことだった。それ以来、西側の有力メディアはサウジアラビア皇太子のモハンマド・ビン・サルマンを批判、退任させようとしている。 カショーギが領事館の内部で殺されたとトルコの警察当局は早い段階で発表、事件は注目されることになった。殺害の様子はカショーギ本人のアップル・ウォッチで録音され、外にいた婚約者へiPhoneで送信されたという。 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権は「反体制ジャーナリスト」の殺害を明らかにしたように見えるが、このエルドアン政権は反体制派を厳しく弾圧してきた。犠牲者のひとりと考えられているジャーナリストがプレスTVの記者セレナ・シム。2014年10月19日に「自動車事故」で死亡している。 当時、トルコはシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、カタールと手を組み、シリアに傀儡政権を樹立するために傭兵を送り込んでいた。 アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が2012年8月にアメリカ政府へ提出した報告書でも指摘されているように、その傭兵にはアル・カイダ系のAQIが含まれ、主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団。この作戦はバラク・オバマ大統領が2010年8月に出したPSD-11に基づくものだ。この指令ではムスリム同胞団を使うことになっていた。 ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に書いた記事によると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始している。 1991年12月にソ連は消滅するが、その直前にポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを殲滅するとポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)が口にしていた。この話は2007年にウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官が語っている。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成されていた。そこにはイラク、シリア、イランのほか、レバノン、リビア、ソマリア、スーダンが載っていた。(3月、10月) このうちイラクは2003年に侵略、サダム・フセイン体制は倒された。残るはシリア、イラン、そしてレバノン、リビア、ソマリア、スーダンということになる。レバノンを侵略するためにヒズボラがターゲットになった。 ハーシュによると、その工作はリチャード・チェイニー副大統領(当時。以下同じ)、国家安全保障担当副補佐官のエリオット・エイブラムス、イラク駐在のアメリカ大使で記事が出た直後に国連大使に就任したザルメイ・ハリルザドといったネオコン、そしてサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン王子が中心になって進められた。 ビン・スルタンはブッシュ家と関係が深く、1983年10月から2005年9月までアメリカ駐在大使を務め、2005年10月から2015年1月までは国家安全保障事務局長、その間、2012年7月から2014年4月までGIP(総合情報庁)長官を務め、アル・カイダ系やチェチェンの武装集団を操っていたことでも知られている。(つづく)
2018.10.26
2015年6月、バラク・オバマ政権がシリアに対するNATO/アメリカ軍の本格的な軍事介入の準備を進めていた頃にシリアで行方不明になった日本人カメラマン、安田純平が解放されたという。 拘束していたとされるアル・カイダ系のジャブハト・アル・シャムはアル・ヌスラと呼ばれていた武装グループで、その前はAQI。アメリカ軍の情報機関DIAが2012年8月にバラク・オバマ政権へ提出した報告書の中で、シリア政府軍と戦っている勢力の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQIだと指摘している。こうした武装勢力をオバマ政権は支援、そうした政策はサラフィ主義者の支配地域を作り上げるとDIAは警告していた。 AQIの主力がサラフィ主義者とムスリム同胞団。サラフィ主義者はワッハーブ派やタクフィール主義者と重なる。こうしたグループを「反体制派」と呼んだり、シリアでの戦争を「内戦」と表現することは正しくない。傭兵部隊による侵略戦争だ。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アル・カイダは軍事組織ではない。ロビン・クック元英外相が2005年7月8日付けガーディアン紙で指摘したように、CIAに雇われ、訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルだ。アラビア語でアル・カイダは「ベース」を意味、ここでは「データベース」と理解すべきである。ジハード傭兵の登録リストとも言える。 ジャブハト・アル・シャムは今年(2018年)2月3日、シリアの西部、トルコと接しているイドリブでロシア軍のSu25をMANPADS(携帯型防空システム)で撃墜、脱出したパイロットを地上での戦闘で殺害している。 このMANPADSを供給したのは侵略勢力、つまりアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランスだった可能性が高い。なお、トルコやカタールはすでに侵略勢力から離脱していた。撃墜に参加したと見られる約30名の戦闘員はロシア軍が巡航ミサイルで殲滅している。 イドリブでは2017年9月20日、パトロール中だったロシア軍憲兵隊29名が武装集団に襲撃されている。この集団を率いていたのはアメリカ軍の特殊部隊だと言われ、戦車も投入されていた。作戦の目的はロシア兵の拘束だったと見られている。 戦闘は数時間にわたって続いたが、その間にロシア軍の特殊部隊スペツナズの部隊が救援に駆けつけて空爆も開始、襲撃した戦闘員のうち少なくとも850名が死亡、空爆では戦闘を指揮していた米特殊部隊も全滅したと言われている。こうした事態を受け、21日にはロシア軍とアメリカ軍の軍人が直接会い、シリア情勢について話し合ったと伝えられているが、その直後、9月24日にはロシア軍事顧問団を率いるバレリー・アサポフ中将とふたりの大佐がダーイッシュの砲撃で死亡した。この攻撃ではアメリカ側から正確な情報が戦闘集団側へ流れていたと見られている。 シリア政府軍とロシア軍はイドリブの制圧作戦を始める準備を進めたが、それに対してアメリカは化学兵器を使った偽旗作戦を利用してミサイル攻撃を実行しようとしていたと言われている。誘拐された44名の子どもをイギリスの情報機関MI6は犠牲者に仕立て上げようと計画、SCD(シリア市民防衛)、別名「白いヘルメット」が作戦を実行するとも伝えられていた。 制圧作戦は東側から行われることになるが、そうなると武装グループや難民がトルコ側へ流れ込むことは避けられない。そうした人びとがヨーロッパを目指すことも想定できる。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、ロシアのウラジミル・プーチン大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、そしてフランスのエマニュエル・マクロン大統領は10月27日にトルコのイスタンブールでシリア情勢に関して話し合うが、この会議にドイツとフランスが参加するのは、そうした事態を避けたいからだろう。 この会議の直前、安田純平は解放された。拘束したグループの実態から考え、MI6やCIAが何らかの形で関わっていた可能性は否定できない。(2018.10.25)
2018.10.25
シリアのバシャール・アル・アサド政権との関係を修復しようという動きが中東で広がっている。イスラエルはシリアに対する攻撃を続けようとしているが、9月17日にロシア軍の電子情報支援機IL20が撃墜された後、その責任はイスラエル軍にあるとしてロシア政府はS-300をシリア政府軍へ引き渡し、アメリカ政府は対抗してイスラエル軍へF-35戦闘機を追加供給する意向を示した。 IL-20が撃墜される直前にミサイルを発射した。フランス海軍のフリゲート艦オーベルニュのほか、第2常設北大西洋条約機構海洋グループ(オランダ軍の駆逐艦デ・ロイテル、ギリシャ軍のフリゲート艦エリ、カナダ軍のフリゲート艦ビル・ド・ケベック、アメリカ軍の4駆逐艦カミー、ロス、ウィンストン・S・チャーチル、バルケリー)、アメリカ第6艦隊の揚陸指揮艦マウント・ホイットニーと3隻以上の原子力潜水艦、空母ハリー・S・トルーマンを中心とし、巡洋艦ノルマンディーを含む艦船、ドイツ軍のフリゲート艦アウクスブルクなどが地中海の東側に集まり、ロシア軍も艦船を派遣してシリア沖で軍事演習を実施したようだが、S-300がシリア軍へ引き渡されてから軍事的な緊張は緩和されている。 アメリカはギリシャに提供されていたS-300を利用して弱点を研究していると言われているが、このシステムとシリアへ提供されたシステムではバージョンが違うとみられている。そうしたこともあり、イスラエルとアメリカは軍事使節団をウクライナに派遣、その中にイスラエル軍のパイロットが含まれていることから、そこでS-300への対抗策を訓練している可能性がある。 アメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、トルコ、カタールなどがシリアで侵略戦争を始めたのは2011年3月。アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が2012年8月にアメリカ政府へ提出した報告書でも指摘されているように、シリア政府軍と戦っているグループの主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団。アル・カイダ系のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとDIAは指摘)が活動しているとも報告している。 AQIが中心になって2006年にISIが編成され、13年に活動範囲をシリアまで拡大してからISISと西側では呼ばれるようになった。中東ではダーイッシュと呼ばれている武装集団だ。IS、ISIS、ISIL、イスラム国などと呼ばれることもある。ダーイッシュもアル・ヌスラも実態は同じということだ。 名前が入り組んでいる理由は、こうした武装集団が傭兵だということにある。ロビン・クック元英外相が2005年7月8日付けガーディアン紙で書いたように、アル・カイダは軍事組織でなく、CIAに雇われ、訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。アラビア語でアル・カイダは「ベース」を意味、ここでは「データベース」と理解すべきである。 2009年1月にアメリカ大統領となったバラク・オバマはアメリカ主導軍による軍事介入ではなく、傭兵を使った侵略を目論む。ムスリム同胞団を中心にした蜂起でシリアやリビアで体制を倒そうと考えたのだ。これはオバマの師であるズビグネフ・ブレジンスキーのやり方。そして2010年8月にオバマ大統領はPSD-11を出し、アラブの春につながる。 シリアより1カ月前からアメリカなど侵略勢力はリビアで戦争を始めたが、侵略の構図は同じ。リビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、そのときにカダフィは惨殺された。その際、NATO軍がアル・カイダ系のLIFGと連携していたことが明確になり、カダフィ体制崩壊後に戦闘員や武器/兵器がシリアへ運ばれたことも報告されている。その輸送の拠点がベンガジにあるアメリカ領事館だった。 こうした事実が知られるようになるとバラク・オバマ政権は武装勢力への支援を正当化するために「穏健派」というタグを使い始めるが、その弁明が事実に反していることをDIAの報告書は指摘したわけだ。 その報告書が出された2012年8月、化学兵器をシリア政府軍が使用したなら、シリアに対してNATO/アメリカ軍は軍事介入するとオバマ大統領は主張する。この年の12月には国務長官だったヒラリー・クリントンはアサド大統領が化学兵器を使う可能性があると語る。 そして2013年1月29日、デイリー・メール紙はオバマ大統領がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦を許可したとする話がイギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールに書かれていると報道した。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された) 実際、それ以降、アメリカ政府は何度も化学兵器話を流し、それを口実にシリアをミサイル攻撃している。そうした化学兵器話が嘘だということは本ブログで何度も書いてきたので、今回は割愛する。 ジハード傭兵を使った侵略、NATO軍による攻撃の可能性が小さくなる中、サウジアラビアはロシアからS-400を購入する意向を示していた。この防空システムはS-300より新しいもので、アメリカの圧力を振り切る形でインドも購入を決めている。アメリカの支配システムを支えてきたサウジアラビアもアメリカ離れの動きも見せたのだ。アメリカの支配システムは揺らいでいる。それを力で押さえ込むことができるだろうか?(2018.10.24)
2018.10.24
ワシントンDCの連邦判事は10月18日、特別検察官のロバート・マラーに対し、ロシア系企業が2016年のアメリカ大統領選挙に干渉したことを明らかにするように命じた。特別検察官だけでなく、司法省、FBI、そして有力メディアは証拠を示すことなくロシア政府が選挙に介入したと主張、イフゲニー・ウリゴチンなどロシア人ビジネスマンを起訴している。 この人物を含め、起訴されたロシア人はアメリカにいないため、裁判にならないと見られていた。裁判が始まらなければ検察側の主張が検証されることはなかったのだが、ロシア側が受けて立ったことから根拠のない起訴だった、つまり事件はでっち上げだということが明確になりつつある。 アメリカには通信の傍受を含む電子的な手段による情報の収集や操作を行っている情報機関NSAが存在する。そのNSAの歴史の中で最高の分析官のひとりと言われ、NSAの不正を内部告発したことでも知られているウィリアム・ビニーはロシアゲートが作り話だから特別検察官を任命したと推測している。 ロシア政府によるアメリカ大統領選挙への介入が事実なら、全ての通信を傍受、記録しているNSAからその記録を取り寄せるだけで決着が付くため、特別検察官を任命する必要はないということだ。ウリゴチンも事件は事実無根であり、でっち上げだと主張している。 このロシア人に対する攻撃が始まったのは選挙後、バラク・オバマ政権が終わろうとしていた2016年12月のこと。作り話を流し始めたのはCNNだが、その情報源はCNNと友好関係にあるロシアの反体制ネットワークRBCだった。 ウリゴチンが選挙に干渉したという主張に根拠はないのだが、そのウリゴチンとウラジミル・プーチン露大統領が緊密な関係にあるという話も怪しい。その根拠とされているのは、プーチンと夕食をともにしたグループのひとりだったということだ。 ロシアゲートではイギリスの情報機関MI6が深く関与していることも知られている。ドナルド・トランプの顧問を監視するため、FBIはFISA(外国情報監視法)の令状を2016年10月に入手したが、その際にマイケル・イシコフがヤフー・ニュースに書いた記事を利用した。令状を受け取った当時、FBIのチームは「元」MI6オフィサーのクリストファー・スティールと会うためにヨーロッパへ出向いたとされている。 この記事の情報源はこのスティールだが、この人物はフュージョンGPSなる会社に雇われていた。そのフュージョンを雇った人物はマーク・エリアスはヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の顧問弁護士だ。 フュージョンはスティールを雇う前、トランプに関する調査と分析をネリー・オーに依頼したが、この女性はCIAの仕事をした経験の持ち主で、夫はFBIの幹部だったブルース・オー。このオーは2016年夏からスティールと会っている。ロシアゲート事件の背後にはクリントン/民主党陣営、FBI、CIA、MI6、そして有力メディアが存在、連携している。FBIは民主党の内部で活動していた複数の人物を情報源として雇っていたという。 ワシントンDCの連邦判事は10月18日、特別検察官のロバート・マラーに対し、ロシア系企業が2016年のアメリカ大統領選挙に干渉したことを明らかにするように命じた。特別検察官だけでなく、司法省、FBI、そして有力メディアは証拠を示すことなくロシア政府が選挙に介入したと主張、イフゲニー・ウリゴチンなどロシア人ビジネスマンを起訴している。 この人物を含め、起訴されたロシア人はアメリカにいないため、裁判にならないと見られていた。裁判が始まらなければ検察側の主張が検証されることはなかったのだが、ロシア側が受けて立ったことから根拠のない起訴だった、つまり事件はでっち上げだということが明確になりつつある。 アメリカには通信の傍受を含む電子的な手段による情報の収集や操作を行っている情報機関NSAが存在する。そのNSAの歴史の中で最高の分析官のひとりと言われ、NSAの不正を内部告発したことでも知られているウィリアム・ビニーはロシアゲートが作り話だから特別検察官を任命したと推測している。 ロシア政府によるアメリカ大統領選挙への介入が事実なら、全ての通信を傍受、記録しているNSAからその記録を取り寄せるだけで決着が付くため、特別検察官を任命する必要はないということだ。ウリゴチンも事件は事実無根であり、でっち上げだと主張している。 このロシア人に対する攻撃が始まったのは選挙後、バラク・オバマ政権が終わろうとしていた2016年12月のこと。作り話を流し始めたのはCNNだが、その情報源はCNNと友好関係にあるロシアの反体制ネットワークRBCだった。 ウリゴチンが選挙に干渉したという主張に根拠はないのだが、そのウリゴチンとウラジミル・プーチン露大統領が緊密な関係にあるという話も怪しい。その根拠とされているのは、プーチンと夕食をともにしたグループのひとりだったということだ。 ロシアゲートではイギリスの情報機関MI6が深く関与していることも知られている。ドナルド・トランプの顧問を監視するため、FBIはFISA(外国情報監視法)の令状を2016年10月に入手したが、その際にマイケル・イシコフがヤフー・ニュースに書いた記事を利用した。令状を受け取った当時、FBIのチームは「元」MI6オフィサーのクリストファー・スティールと会うためにヨーロッパへ出向いたとされている。 この記事の情報源はこのスティールだが、この人物はフュージョンGPSなる会社に雇われていた。そのフュージョンを雇った人物はマーク・エリアスはヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の顧問弁護士だ。 フュージョンはスティールを雇う前、トランプに関する調査と分析をネリー・オーに依頼したが、この女性はCIAの仕事をした経験の持ち主で、夫はFBIの幹部だったブルース・オー。このオーは2016年夏からスティールと会っている。ロシアゲート事件の背後にはクリントン/民主党陣営、FBI、CIA、MI6、そして有力メディアが存在、連携している。FBIは民主党の内部で活動していた複数の人物を情報源として雇っていたという。 特別検察官側はトランプと関係のありそうな人物をでっち上げ事件やロシアゲート事件とは無関係の件で起訴、司法取引で偽証させようとしているとも言われている。これはアメリカの司法当局が使う常套手段だ。検察側としては、その手口で押し通すしかないだろう。(2018.10.23) 特別検察官側はトランプと関係のありそうな人物をでっち上げ事件やロシアゲート事件とは無関係の件で起訴、司法取引で偽証させようとしているとも言われている。これはアメリカの司法当局が使う常套手段だ。検察側としては、その手口で押し通すしかないだろう。(2018.10.23)
2018.10.24
アメリカのドナルド・トランプ大統領がINF(中距離核戦力)全廃条約を破棄する方針を表明したという。アメリカは「近年、ロシアが条約で禁止された兵器を開発していると批判」しているとも言われているが、その「近年」は少なくとも2014年、アメリカ政府がウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行した年までさかのぼることができる。当時の大統領は言うまでもなくバラク・オバマだ。軍縮条約の破棄はジョージ・W・ブッシュ政権が2002年にABM(弾道弾迎撃ミサイル)制限条約から脱退してから一貫したアメリカ支配層の方針だ。 ロシア政府はINF全廃条約の破棄を危険な行為だと批判しているが、勿論、危険だと思わせることがアメリカ側の目的である。アメリカは何をしでかすかわからないと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、イスラエルは狂犬のようにならなければならないと同国のモシェ・ダヤン将軍は語った。脅せば相手を屈服させられるとネオコンは信じている。こうした人びとは中国やロシアに対しても同じ手法を使うのだが、この両国には通用しない。そこで脅しはエスカレート、最終的には全面核戦争ということになる。 中国の北京でオリンピックが開幕、イスラエルやアメリカを後ろ盾とするジージア軍が南オセチアを奇襲攻撃した2008年8月、アメリカとポーランドは防空システムをポーランドに設置することで合意しているが、ロシアの強い反発でこの計画は中止になった。 ポーランドは2010年7月に地上型SM-3(イージス・アショア)の設置で合意、ルーマニアが続いた。日本も購入することになっているこのシステムが使用するランチャーは攻撃型の巡航ミサイルであるトマホークと同じで、ソフトウェアーを変更すれば攻撃用の兵器になる。韓国へはTHAAD(終末高高度地域防衛)が強引に導入された。 ロシアや中国の国境周辺にアメリカはミサイルを配備しているわけだが、その意味は1962年にソ連がキューバへ中距離ミサイルを配備したときのアメリカ側の反応を考えればわかるだろう。 当時、ジョン・F・ケネディ大統領はキューバを海上封鎖したが、カーティス・ルメイ空軍参謀長などJCS(統合参謀本部)の強硬派は大統領に対し、即日ソ連を攻撃するべきだと詰め寄っていたという。(Martin Walker, "The Cold War," Fourth Estate, 1993) 1950年代にアメリカ軍やCIAの好戦派はソ連に対する先制核攻撃計画を始動させ、1963年の後半に実行するつもりでいた。ICBMでアメリカはソ連を圧倒できるという判断から立てられた計画。ソ連は中距離ミサイルで反撃するしかなく、そうしたミサイルをソ連が配備できる場所であるキューバを軍事的に制圧しようとした。それが1961年4月に実行されたピッグス湾侵攻作戦で、これはアメリカ軍の直接的な介入が想定されていた。これをケネディ大統領が止めたのだ。 ルメイの仲間にはJCS議長だったライマン・レムニッツァーも含まれ、偽旗作戦でキューバを軍事侵攻するという作戦を1962年に作成している。これもケネディ政権に拒否され、その直後にレムニッツァーは議長再任を拒否された。このレムニッツァーはNATO軍のトップになるが、これはイギリス軍の幹部の計らいがあったからだと言われている。 ルメイたちの考え方に従うと、アメリカ軍が行っているミサイル配備に対し、ロシアや中国は核戦争を仕掛けても不思議ではないということになる。イランや朝鮮の脅威に対抗するためだというアメリカ側の弁明は戯言に過ぎない。 地中海の真ん中にあるイタリアはアメリカにとって軍事戦略上の重要な国で、そこにはB61という核爆弾がある。その爆弾の貫通能力を高め、F-35に搭載できるように改良したものがB61-12。イタリアに配備する核爆弾をB61からB61-12へ交換されると伝えられている。 21世紀に入り、ウラジミル・プーチンがロシアを再独立させることに成功したことを受け、アメリカの支配層は軍事的な圧力を強めようとしてきた。INF(中距離核戦力)全廃条約を破棄はそうした流れの中で出てきた話だ。
2018.10.22
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すという計画は失敗した。10月15日にはゴラン高原でイスラエルが占領している地域への検問所が再開され、ヨルダンやレバノンとの国境も開かれた。イラクとの国境も近く開かれるようだ。 そうした中、10月27日にはトルコのイスタンブールで開催されるシリア情勢に関する会議にはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、ロシアのウラジミル・プーチン大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、そしてフランスのエマニュエル・マクロン大統領が参加するという。中心テーマはイドリブになると見られている。 イドリブはシリア西部にある地域でトルコに接している。アメリカを後ろ盾とするアル・カイダ系のタハリール・アル・シャーム(アル・ヌスラ)を名乗るジハード傭兵に支配され、トルコ系の武装集団も活動してきた。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)問題に関するアメリカの大統領特使、ブレット・マクガークは昨年(2017年)7月、イドリブについて、9/11からアル・カイダの最も大きな避難場所だと表現していた。 一時、シリア政府軍はロシア軍とイドリブ奪還するために軍事力を行使する姿勢を見せ、それを嫌うアメリカ軍はペルシャ湾に駆逐艦のサリバンズを派遣、B-1B戦略爆撃機をカタールに配備し、UAV(無人機)を含む兵器をジハード傭兵に供給するなど軍事的に威嚇していた。軍事介入を正当化する偽旗作戦を実行するため、化学兵器を使う準備も進めていたと言われている。 こうした動きの中、44名の子どもが誘拐されたと伝えられているが、その子どもをイギリスの情報機関MI6が犠牲者に仕立て上げようと計画、SCD(シリア市民防衛)、別名「白いヘルメット」が実行するとも伝えられていた。 イドリブで本格的な戦闘が始まると武装グループや難民がトルコ側へ流れ込むことは避けられない。そうした人びとがヨーロッパを目指すことも想定でき、メルケルやマクロンがイドリブ情勢について話し合おうとするのは必然だろう。 アメリカ軍はダーイッシュを攻撃しているように見せているが、以前と同じようにポーズだけ。実際はこうしたジハード傭兵を温存、将来、何らかの作戦に使う予定だとみられている。今後、米英と独仏との利害が衝突する可能性もある。
2018.10.21
サウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子が交代になるという話が飛び交っている。皇太子の弟で、昨年(2017年)4月からアメリカ駐在大使を務めているハリド・ビン・サルマンが新皇太子になるのではないかというのだ。ジャマル・カショーギが行方不明になった直後にハリド・ビン・サルマンはサウジアラビアへ帰国している。 カショーギは今年10月2日にトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ入り、そのまま行方がわからなくなっていたのだが、ここにきてサウジアラビア政府も領事館での死亡を認めたようだ。 行方不明時に領事館には15名のチームがいて、殺害に関与したと言われている。そのチームに所属するひとり、メシャル・サード・アル・ボスタニが帰国後、「自動車事故」で死亡していることからスケープゴート作りが進んでいると言われていた。アメリカのマイク・ポンペオ国務長官はサウジアラビアの王制を守るため、皇太子の交代を求めているとも伝えられている。 その皇太子、モハメド・ビン・サルマンは新自由主義を信奉、イスラエルとの関係を公然と強化し、パレスチナ人への弾圧を肯定しているだけでなく、イエメンに対する軍事侵攻の責任者。イエメンで勢力を伸ばしていたフーシ派を殲滅することが目的で、アメリカもサウジアラビアを支援してきた。 イエメンでもアル・カイダ系武装集団が戦闘に参加しているが、この集団は本ブログで繰り返し書いてきたように、CIAが訓練した「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルにすぎない。つまり傭兵の登録リスト。これは1997年5月から2001年6月までイギリスの外務大臣を務めた故ロビン・クックが05年7月に書いた説明だが、これは正しいと考えられている。 モハメド・ビン・サルマンが皇太子に就任したのは2017年6月。その前任者はホマメド・ビン・ナイェフだが、この交代はアメリカの大統領選挙が反映されたと言われている。本ブログでも指摘してきたが、2015年の段階ではヒラリー・クリントンが次期大統領で内定していた。 クリントンは上院議員時代から巨大兵器企業のロッキード・マーチンを後ろ盾にしていることで知られていたが、巨大金融資本とも密接な関係にあり、世界的な投機家であるジョージ・ソロスから指示を受けていたことも判明している。このクリントンが大統領になるという前提で皇太子になったのがナイェフだ。 勿論、大統領選挙ではロシアとの核戦争も辞さないという姿勢を見せていたクリントンはロシアとの関係修復を訴えるドナルド・トランプに敗れた。トランプの外交政策作成で重要な役割を果たしていたのがマイケル・フリン退役中将。2012年7月から14年8月までアメリカ軍の情報機関DIAを率いていた人物。 バラク・オバマ大統領はアメリカ支配層の思い通りにならない中東/北アフリカの体制を倒すためにムスリム同胞団を使うことを計画、2010年8月にPSD-11を出した。その計画に基づいて始まったのが「アラブの春」。ウィキリークスを利用して情報を流した疑いもある。そして2011年の春から始まったのがリビアとシリアに対する侵略作戦だ。 リビアの体制は2011年10月に倒れるが、国内が安定していたシリアの体制は倒れない。リビアを倒した戦闘員や武器/兵器をCIAはシリアへ移動させるが、その拠点がベンガジのアメリカ領事館。この領事館は2012年9月に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使が殺されている。前日にCIAの責任者と会談、当日は海運会社の代表と会っていたとも言われている。当時のCIA長官がデイビッド・ペトレイアス、国務長官がヒラリー・クリントンだ。CIAのムスリム同胞団優遇に反発したライバルが襲ったとも推測されている。 この襲撃の前月、DIAはオバマ政権に対して報告書を提出している。リビアでの戦闘でNATO軍がアル・カイダ系武装集団と手を組んでいることが判明、アメリカ政府は「穏健派」を支援していると弁明していた。それに対し、DIAはシリアで政府軍と戦っている主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団を中心に編成された戦闘集団であり、政策を変更しないと東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されていた。 この警告は2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になる。その結果、フリンDIA局長はオバマ政権の他のメンバーと対立することになり、解任された。 アル・カイダ系武装集団、ダーイッシュ、あるいはチェチェンの武装勢力をコントロールしていたのがブッシュ家と緊密な関係にあるバンダル・ビン・スルタン。この人物を含むサウジアラビアの反ビン・サルマン派が昨年11月に粛清された。拘束されただけでなく拷問され、資産を剥奪されたと言われている。その2カ月前にジャマル・カショーギはアメリカへ逃れ、ネオコンが拠点にしているワシントン・ポスト紙のコラムニストになった。 このカショーギが危険な状態にあることをCIAは知っていたのだが、警告されていなかったと見られている。殺されることを願っていたということだろう。カショーギの殺害は権力抗争に使われている。カショーギを雑魚と呼ぶことはできないが、真の支配者たちの駒だったことも確かだ。カショーギの行方不明事件の背後には複雑な事情がある。
2018.10.20
クリミア半島で10月17日に銃の乱射事件があった。コロラド州のコロンバイン高校で1999年に引き起こされた事件との類似性を指摘する人もいる。 この半島について「ロシアが一方的に併合した」と表現するマスコミが存在するのだが、実際はバラク・オバマ政権のネオコン人脈がネオ・ナチを使い、キエフでクーデターを実行した結果だ。 ウクライナはヨーロッパ志向の強い西部とロシアに近い東部や南部に分かれている。宗教的にはカトリックの信者が多く、ナチスのシンパが多い西側対策ということもあり、ソ連政府が異質の地域を合体させたとも言われている。 東部や南部の人びとに支持されていたビクトル・ヤヌコビッチは2004年の大統領選挙で勝利するが、この結果を受け入れられない西側の支配層はクーデターを仕掛ける。いわゆるオレンジ革命だ。 この「革命」で誕生したビクトル・ユシチェンコ政権は新自由主義を導入、西側の巨大資本の手先になった一部の人びとによって国の富は略奪され、国民の大多数は貧困化する。そこで2010年の大統領選挙でもヤヌコビッチが当選した。この段階では国民もユシチェンコ的な人物を拒否している。 そこで、西側支配層が使ったのは配下のNGO(非政府組織)。CIAからも工作資金を受け取っていたNGOは2013年11月にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で集会を開き、約2000名の反ヤヌコビッチ派を集めた。 こうして抗議活動が始まるが、当初はEUへの憧れ(つまり幻想)を刺激する「カーニバル」的なもので、12月に入ると50万人が集まったとも言われている。こうした抗議活動をEUは話し合いで解決しようとするが、そうした方針に怒ったのがオバマ政権。 抗議活動の黒幕的な存在だったビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット米国大使の電話での会話が2014年2月上旬にインターネット上へアップロードされたのだが、その中でふたりは「次期政権」の閣僚人事について話し合っている。ヌランドは暴力的に政権を転覆させたかったようで、話し合いでの解決を目指すEUに不満を抱いていた。そして口にしたのが「EUなんかくそくらえ」だ。 年明け後に広場ではネオ・ナチのメンバーが前面に出てきて暴力行為がエスカレートしていく。こうしたネオ・ナチは2月18日頃から棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始める。 話し合いで解決する道が開けたときに広場で狙撃が始まった。西側の政府や有力メディアは政府側が仕掛けたと宣伝していたが、ネオ・ナチのアンドレイ・パルビーが狙撃を指揮していた可能性が高い。これは治安機関SBUの長官だったアレクサンドル・ヤキメンコだけでなく、抗議活動の支援者でキエフの第6病院から広場へ来ていたオレクサンドル・リソウォイ医師も反政府派が狙撃していると語っている。 2月22日にヤヌコビッチは排除されるが、その3日後に現地入りしたエストニアのウルマス・パエト外相も調査の結果、同じように考える。26日に同外相はEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話、「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」と報告している。こうした事情をEUは知った上で、クーデターを容認した。それをオバマ政権が望んでいたからだ。 2017年11月にはパエトの報告を裏付けるドキュメントがイタリアで放送されている。その中で自分たちが狙撃したする3人のジョージア人が登場、警官隊と抗議活動参加者、双方を手当たり次第に撃つよう命じられたという。狙撃の指揮者はアンドレイ・パルビーだとも語っている。 クーデターの最中、ヤヌコビッチを支持するクリミアの住民がバスでキエフに入っているが、状況が悪化する中、クリミアへ戻ろうとする。そのときにクリミアの住民を乗せたバスが銃撃され、バスが止まると乗客は引きずり出され、棍棒やシャベルで殴られ、ガソリンをかけられて火をつけると脅されている。こうした話が伝えられたクリミアがクーデターに反対し、ロシアに助けを求めるのは必然だった。 クリミアは黒海に突き出た半島で、セバストポリは黒海艦隊の拠点。ロシアはこの拠点を確保するため、1997年にウクライナと条約を結び、基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められていた。クーデター当時、この条約に基づいて1万6000名のロシア軍が実際に駐留していたのだが、西側の政府やメディアはこの部隊をロシア軍が侵略した証拠だと宣伝していた。「ファクト・チェック」をすれば、こうした間違いはしなかっただろう。 3月16日にはクリミアで住民投票が実施され、95%以上が加盟に賛成した。そのときの投票率は80%を超えている。クリミアより動きが遅れたドンバスでは今も戦乱で破壊と殺戮が続いている。勿論、クーデター勢力の主力はネオ・ナチだ。南部のオデッサでは住民がネオ・ナチに虐殺されている。 ネオ・ナチのメンバーが信奉しているステファン・バンデラは第2次世界大戦中、ナチスと手を組んでいた人物で、その側近だったヤロスラフ・ステツコは大戦後、イギリスの情報機関MI6のエージェントになり、ABN(反ボルシェビキ国家連合)の議長に就任した。この団体は1966年にAPACL(アジア人民反共連盟,後にアジア太平洋反共連盟へ改名)と合体してWACL(世界反共連盟)になった。WACL創設の中心はCIA。1991年にWACLはWLFD(世界自由民主連盟)へ名称が変更されている。 この年の12月にソ連は消滅、西側へ逃げていたネオ・ナチのグループは旧ソ連圏へ戻り、活動を始めた。ウクライナへも戻っている。ウクライナにおけるクーデターの目的のひとつはセバストポリの制圧だったはずだが、これに失敗した西側支配層がクリミアについて「ロシアが一方的に併合した」という理由は想像できる。
2018.10.19
アメリカのマイク・ポンペオ国務長官が10月16日にサウジアラビアを訪問、サルマン・ビン・アブドラジズ・アル・サウド(サルマン)国王と会談した。トルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ10月2日に入ってから行方がわからないジャーナリストのジャマル・カショーギについて話し合うことが目的だったとされているが、武器/兵器や石油の取り引き、つまり金儲けの話がテーマだったようだ。その一方、10月14日から15日にかけてロシア国防省の代表団が同国へ入り、モハメド・ビン・サルマン皇太子と会談したとも報道されている。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、カショーギの事件はサウジアラビアとアメリカの権力抗争を抜きに語ることはできない。行方不明になった人物は「ジャーナリスト」だとされているが、20歳代の頃、サウジアラビアやアメリカの情報機関、つまりGIP(総合情報庁)やCIA(中央情報局)のエージェントとして活動、ムスリム同胞団のメンバーでもあったことはすでに指摘した。 カショーギがコラムニストだったワシントン・ポスト紙はウォーターゲート事件を暴いてリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだことで有名だが、その事件で取材の中心だったカール・バーンスタインは1977年にこの新聞社を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」というタイトルの記事を書いている。 本ブログでは何度も書いてきたが、その記事によると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) メディアの状況が当時より悪化している現在、表ではジャーナリスト、その実態は情報機関員という人間は少なくないはず。少なくとも権力システムに立ち向かおうという人物は有力メディアにおける絶滅危惧種。その背後では巨大金融資本を後ろ盾とする情報機関のネットワークが1948年にはじめた情報統制プロジェクト、モッキンバードが存在する。 このプロジェクトで中心的な役割を果たしたのは4名いて、アレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハム。第2次世界大戦中からダレス、ウィズナー、ヘルムズは戦時情報機関OSSの幹部として知られ、グラハムは第2次世界大戦中、陸軍の情報部に所属していた。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) このうちダレスとウィズナーはウォール街の弁護士であり、ヘルムズの母方の祖父であたるゲイツ・ホワイト・マクガラーは国際決済銀行の初代頭取。グラハムの義理の父にあたるユージン・メイアーは世界銀行の初代総裁だ。倒産していたワシントン・ポスト紙を1933年に競売で落札したのはこのメイアーである。メイヤーの娘でフィリップの妻だった人物がウォーターゲート事件で有名になるキャサリンだ。巨大金融資本が情報機関を操り、情報機関が有力メディアを操っている。インターネットを支配する巨大企業も同じだ。 モッキンバードで名前が出てくるメディアの大物には、CBSの社長だったウィリアム・ペイリー、TIMEやLIFEなどを創刊したヘンリー・ルース、ニューヨーク・タイムズの発行人だったアーサー・シュルツバーガー、クリスチャン・サイエンス・モニターの編集者だったジョセフ・ハリソン、フォーチュンやLIFEの発行人だったC・D・ジャクソンなども含まれている。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される瞬間を撮影した8ミリフィルム、いわゆる「ザプルーダー・フィルム」を買い取り、隠すように命じたのはこのジャクソンにほかならない。表ではジャーナリスト、その実態は情報機関員というケースは珍しくないと言える。 カショーギは1980年代から記者をしているが、タルキ・ファイサル・アル・サウド(タルキ・アル・ファイサル)の指揮下にあった。そのタルキ・アル・ファイサルは1979年から2001年、9/11の10日前までGIPの長官。この人物の兄弟、ハリド・アル・ファイサルの影響下にあるとされている新聞がカショーギが編集長を務めることになるアル・ワタンだ。 タルキ・アル・ファイサルは2005年8月から15年1月まで国王(1995年から摂政)だったアブドラ・ビン・アブドラジズ・アル・サウド(アブドラ)国王との関係が悪く、カショーギはそのアブドラ体制を批判することになる。2015年4月に皇太子となったのがホマメド・ビン・ナイェフ。 しかし、2016年に行われたアメリカの大統領選挙でヒラリー・クリントンが敗北した影響でナイェフは皇太子の地位を失い、カショーギはアメリカへ逃れてワシントン・ポスト紙のコラムニストになった。 また、今回の行方不明事件を考える場合、サルマン国王のロシア訪問を忘れてはならないだろう。昨年(2017年)10月4日から3日間にわたってロシアを訪問、石油や軍事を含むテーマについて話し合われたと言われている。中でも重要視されているのがロシアの防空システムS-400だ。 アメリカ政府はサウジアラビアに対し、9月末までにロッキード・マーチン製THAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの購入を決めるように求めていたが、その返事は曖昧。その一方でS-400の購入には積極的な姿勢を見せていた。インドもS-400の購入を決めている。性能面でTHAADより優れているS-400を選ぶことは当然だが、それをアメリカ側が容認するはずもない。 サルマン国王とアメリカ支配層との間に隙間風が吹いていた。S-400だけでなく、原油取引の問題では相場の下落でダメージを受けたサウジアラビアは引き上げたいのだが、価格の暴騰でアメリカ国内の反発を恐れるアメリカ支配層は押さえたい。この対立はペトロダラーの仕組みを揺るがせかねないのだが、ペトロダラーの仕組みが崩れるとアメリカの支配システムが崩れる。こうした対立が原因で、サウジアラビア政府は同国内にロシアの軍事基地を建設させると言い始めたとも伝えられていた。 そうした中、10月2日を迎えたのだが、カショーギの行方不明事件の背後には複雑な事情がある。その事情は「アメリカ帝国」の存続に関わっていると言えるだろう。
2018.10.18
シリアの人びとは侵略者と戦っている。内戦が繰り広げられているわけではない。侵略者とはアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、トルコ、カタールの支配者たちだが、後にトルコとカタールは離脱した。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、2007年の初めにジョージ・W・ブッシュ政権は中東政策の方針を大きく変更している。シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを最大の敵だと定め、スンニ派の過激派と手を組むことにしたのだ。 手先として利用されるスンニ派の勢力はサラフィ主義者とムスリム同胞団だという見方をハーシュは紹介しているが、それはイラクで倒されたサダム・フセインの残党が含まれていることを意味する。サラフィ主義者とムスリム同胞団を主力とする傭兵集団とはアル・カイダ系武装集団にほかならず、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)にもつながる。 この方針転換の中心には副大統領だったディック・チェイニー、国家安全保障副補佐官だったエリオット・エイブラムズ、イラク駐在大使だったザルマイ・ハリルザド、そしてサウジアラビアの国家安全保障会議事務局長だったバンダル・ビン・スルタン。バンダルはブッシュ家やチェイニーと親しいことで知られている。国単位ではアメリカ、イスラエル、サウジアラビアが主体になることが決まった。この3国同盟は1970年代の終盤に作られている。 2009年1月にアメリカ大統領はバラク・オバマになるが、このオバマはムスリム同胞団を中心にした蜂起でシリアやリビアで体制を倒そうとする。そして2010年8月に出された指令がPSD-11。ブッシュ・ジュニア政権とオバマ政権の政策は継続されている。 西側の有力メディアは政府の治安当局が住民による民主化要求の蜂起を弾圧したことが戦乱の始まりだと宣伝していたが、2010年からシリアで活動を続けているベルギーの修道院のダニエル・マエ神父は住民による反政府の蜂起はなかったと語っている。西側の政府や有力メディアの宣伝とは違って市民の蜂起などはなく、したがって政府による弾圧もなかったということだ。現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。 2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は侵略勢力に倒され、戦闘員や兵器/武器はシリアへ集中されるのだが、体制転覆に手間取る。リビアのケースと同じようにNATO軍を投入するため、「政府軍による住民虐殺」を宣伝するが、これは嘘だとすぐにばれてしまう。嘘を暴いたひとりが東方カトリックのフランス人司教で、現地を調査した結果をローマ教皇庁の通信社が伝えている。 この司教も住民を虐殺したのはサラフィ主義者や外国人傭兵だと報告している。そして、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」とも書いている。シリアが戦乱で破壊され、多くの人が殺されている原因を作っているのは西側の有力メディアだと指摘しているのだ。こうしたメディアの人間は今だに何も反省していない。
2018.10.18
アル・カイダはCIAが訓練した「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルだと故ロビン・クック元英外相は指摘したが、これは正しい。アル・カイダはアラビア語でベースを意味、「データベース」の訳語として使われているのだ。この傭兵システムを1970年代の終盤に作り上げたのがジミー・カーター政権の国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーである。 アフガニスタン後、アル・カイダ系武装集団は旧ユーゴスラビアで活動、1998年8月にケニアのナイロビとタンザニアのダル・エス・サラームのアメリカ大使館を爆破したとされている。これを口実としてアメリカのビル・クリントン政権はタリバン政権が支配するアフガニスタンをスーダンとともに巡航ミサイルで攻撃。タリバン政権はアメリカとパキスタンが作り上げたのだが、TAPIパイプラインの敷設計画を巡ってアメリカ政府とタリバン政権は1996年から対立していた。 アル・カイダの名前を知る人が増える出来事が2001年9月11日に引き起こされた。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、ジョージ・W・ブッシュ政権は詳しい調査をする前にアル・カイダが実行したと断定、アフガニスタンを攻撃し、2003年にはアル・カイダ系武装集団と敵対関係にあったイラクを先制攻撃した。 ブッシュ・ジュニア大統領はネオコンに担がれていたが、このネオコンの中心グループに所属するポール・ウォルフォウィッツは1991年の夏頃、イラク、シリア、イランを殲滅すると発言していた。当時、ウォルフォウィッツは国防次官。1991年12月にソ連が消滅、翌年の2月にウォルフォウィッツたちは国防総省のDPG草案という形で世界制覇計画を作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。(3月、10月) バラク・オバマ大統領はムスリム同胞団を中心にした蜂起で体制を倒すため、2010年8月にPSD-11を出す。ムスリム同胞団を中心にした蜂起で体制を倒すという内容で、翌年の春からリビアとシリアで作戦は始動した。シリアは1991年にネオコンが公言していたターゲット国。リビアのムアンマル・アル・カダフィはアフリカを自立させるため、ドル支配から脱出しようと目論んでいた。 リビアのカダフィ体制は2011年10月に崩壊するが、そのときにアル・カイダ系武装集団とNATO軍の連携が明白になった。その武装集団の傭兵たちはシリアへ移動していくが、その拠点がベンガジにあるアメリカ領事館。カダフィが惨殺された直後、ベンガジの建物にアル・カイダの旗が掲げられた。(ユーチューブ、デイリー・メイル紙) 2012年9月11日にベンガジの領事館が襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使が殺されている。大使はその前日に領事館でCIAの工作責任者と会談していた。当時、CIAの長官を務めていた人物はネオコンのデイビッド・ペトレイアスで、国務長官はヒラリー・クリントンだ。オバマ政権はムスリム同胞団との関係が深かったと見られているが、それに反発したサラフィ主義者のグループが襲ったとも噂されている。 この襲撃の前月、つまり2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAはホワイトハウスへシリアに関する報告書を出している。シリア政府軍と戦っている武装集団の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(DIAはアル・ヌスラと実態は同じだとしているが、これは正しい)であり、オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しないとしていた。 東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるともDIAは警告、これは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になるが、報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将だ。 ダーイッシュは2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧した。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレード、その後継を撮影した写真が世界規模で流れているが、その際、アメリカ軍はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人からの情報などでダーイッシュの動きを把握していたはず。ところが反応していない。オバマ政権はイラクやシリアでの作戦にダーイッシュを組み込んでいたと見られているのだが、この武装集団とアメリカとの関係はアメリカの軍人や政治家も口にしている。 例えば、アメリカ空軍のトーマス・マッキナニー中将は2014年9月、アメリカがダーイッシュを作る手助けしたとテレビで語り、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言、10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語っている。2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べた。 そして2015年8月、マイケル・フリン元DIA局長はアル・ジャジーラの番組へ出演した際、ダーイッシュの出現を見通していたにもかかわらず阻止しなかった責任を問われ、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、その情報に基づいて政策を決定するのはバラク・オバマ大統領の役目だと答えている。つまり、オバマ政権の「穏健派支援」がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。 一時期、ダーイッシュなど武装勢力はシリア政府軍を圧倒、シリアはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団が支配するカルト国家になりそうな雰囲気だった。2015年2月に国防長官がチャック・ヘイゲルからアシュトン・カーターへ、また統合参謀本部議長が同年9月にマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代になるが、いずれも戦争に消極的な人物から好戦的と見られる人物へのバトンタッチだった。アメリカ軍の直接的な軍事介入も噂された。ロシア軍がシリア政府の要請でシリアへ軍事介入したのはこの年の9月30日だ。 この軍事介入で戦況は一変、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を名乗る傭兵は支配地域を急速に縮小させ、バシャール・アル・アサド体制を倒すというアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、トルコ、カタールなどの目論見は崩れる。 現在、ユーフラテス川の北側はアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍が20カ所以上に基地を建設して居座る姿勢を見せているが、同川の南側はイドリブなど一部を除いて政府軍が奪還に成功している。イドリブにはトルコを後ろ盾とする武装グループとアメリカを後ろ盾尾とする武装グループが残っているようだが、上層部はアメリカ軍が脱出させたとも言われている。 アメリカ軍が行っていることは、かつて日本軍が中国で行ったことに似ている。日本は満州人を使って満州国をでっち上げたが、アメリカはクルドを使って傀儡国家を建設しようと目論んでいる。(了)
2018.10.17
サウジアラビアの現国王はサルマン・ビン・アブドラジズ・アル・サウドだが、実際に国を動かしているのはモハメド・ビン・サルマン皇太子。トルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ入ったままジャマル・カショーギが行方不明になっている事件の責任者もサルマン皇太子だと考えられている。 この事件に不可解な点があることは本ブログでも指摘した。ここにきて話題になっているのは10月10日にアル・ジャジーラが公表した写真。 カショーギが行方不明になった10月2日にイスタンブールへ到着した15名のサウジアラビア人が写っている。この15名は行方不明、あるいは殺害に関係した疑いがあるとされたのだが、そのうちのひとり、アブデル・アジズ・シャビブ・アル・バラウィは昨年、死亡しているとこの人物の家族が証言しているのだ。これが事実なら、問題のサウジアラビア人グループが10月2日にトルコ入りしたという話が怪しくなる。ひとりを殺したり誘拐するために15名も必要ないという疑問は当初から指摘されていた。 行方不明事件が起こった頃、アメリカとサウジアラビアとの関係はギクシャクしていた。例えば10月2日、アメリカのドナルド・トランプ大統領はミシシッピー州で開かれた集会で、サウジアラビアの現体制はアメリカの保護がなければ2週間で潰れると同国のサルマン国王に対して警告したと語っている。 嘘ではないが、アメリカがサウジアラビアの王制を守るのはドル体制を維持するためにほかならない。少なからぬ人が指摘しているが、サウジアラビアをはじめとする産油国に対してアメリカ支配層は石油取引の決済をドルに限定させ、その代償として収入と支配者としての地位を補償したのだ。いわゆるペトロダラーだが、この補償を取り消した場合、ドル体制が揺らぎ、アメリカを中心とする支配システムが崩れてしまう。 つまり、トランプの脅しが王制の崩壊を意味しているのではなく、モハメド・ビン・サルマンの体制が倒れるという意味だったのだろう。ビン・サルマンが皇太子に就任したのは2017年6月、その前の皇太子はホマメド・ビン・ナイェフだった。 ビン・ナイェフはネオコンに近かったのだが、2016年のアメリカ大統領選挙でネオコンが担いでいたヒラリー・クリントンが敗北、皇太子の地位を失った。新皇太子はアメリカのドナルド・トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に近い。 カショーギは1980年代から記者をしているが、タルキ・ファイサル・アル・サウド(タルキ・アル・ファイサル)の下でプロパガンダの仕事をしていた。このタルキ・アル・ファイサルは1979年から2001年、9/11の10日前まで(!)サウジアラビアの情報機関GIP(総合情報庁)の長官。この人物の兄弟、ハリド・アル・ファイサルの影響下にあるとされている新聞がアル・ワタンで、カショーギは2003年に同紙の編集者を務め、2007年には編集長に就任した。カショーギが本当に民主主義的な考え方の人物だったなら、タルキ・アル・ファイサルに重用されるということは考えにくい。 思想的には反コミュニズムでジハードを支援、そうした関係からジミー・カーター政権の国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが始めたサウジアラビアでの秘密工作に参加、オサマ・ビン・ラディンとも知り合いになっている。ダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISILとも表記)による斬首も賞賛していた。 形式上、カショーギはジャーナリストなのだが、本ブログでも書いたように、サウジアラビアやアメリカの情報機関と結びつき、オサマ・ビン・ラディンと同じようなタイプの人物。サウジアラビアでジャーナリストは迫害され、処罰の対象になる。カショーギは支配システム内部の人間だった。 カショーギがアメリカへ逃れたのは権力抗争の結果にほかならない。2017年6月に皇太子がホマメド・ビン・ナイェフからモハメド・ビン・サルマンへ交代、カショーギはアメリカへ移動し、同年9月からワシントン・ポスト紙で書き始める。その2カ月後にサウジアラビアでは大規模な粛清が行われた。 王族、閣僚や元閣僚、軍人などサルマン皇太子のライバルやその支持者と目される人々が拘束されているのだが、その中には1983年から2005年まで駐米大使を務め、05年10月から15年1月にかけて国家安全保障会議事務局長、12年から14年までGIP長官を務めたバンダル・ビン・スルタンも含まれている。 この人物はアル・カイダ系の傭兵やチェチェンの武装集団をコントロール、いわば「テロの黒幕」的な存在。ブッシュ家と親しいことでも有名で、「バンダル・ブッシュ」と呼ばれるほどだ。粛清の結果、ビン・サルマン皇太子とCIAとの関係は悪化、アメリカ側から何らかの報復があるのではないかと言われた。(つづく)
2018.10.17
2017年の粛清ではネオコンと結びついたサウジアラビアのCIA人脈が排除され、ビン・サルマン体制とCIAとの関係は悪くなった可能性が高い。ビン・サルマンが後ろ盾にしていたのはドナルド・トランプやイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。シオニストという点では同じだが、ライバル関係にもある。しかも、ビン・サルマンはことにし入ってからトランプを刺激するようなこともしている。ロシアからS-400を買う動きを見せていたのだ。このビン・サルマン体制を倒すため、ジャマル・カショーギはネオコンの意向を受け、サウジアラビアでカラー革命を目論んでいたとする情報もある。 トランプはビン・サルマン皇太子に対してアメリカ製の武器/兵器を買うように求めているが、その一方でネオコンの宣伝機関と化しているアメリカの有力メディアはフェトフッラー・ギュレンの誘拐計画なるものを再び宣伝し始めた。 誘拐を計画したとされているマイケル・フリンは2012年7月から14年8月までアメリカ軍の情報機関DIAの局長を務め、トランプ大統領が最初に国家安全補佐官に選んだ人物。 フリンが長官になって間もない2012年8月、DIAはバラク・オバマ政権に対し、シリアで政府軍と戦っている武装勢力の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(DIAはアル・ヌスラと実態は同じだとしているが、これは正しい)であり、オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しないとしていた。 この報告書でDIAはオバマ政権の「穏健派」を支援するという政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。この警告は2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になった。この年の8月にフリンはDIA局長を解任されている。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、1997年5月から2001年6月までイギリスの外務大臣を務めた故ロビン・クックが05年7月に指摘したように、アル・カイダはCIAが訓練した「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルにすぎない。アル・カイダはアラビア語でベースを意味するが、「データベース」の訳語として使われている。ちなみに、この指摘をした翌月、クックは保養先のスコットランドで心臓発作に襲われ、59歳で急死した。 アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟、イギリス、フランスのサイクス・ピコ協定コンビ、オスマン帝国の再興を夢想していたトルコ、パイプラインの建設でシリアともめていたカタールなどが2011年春にリビアやシリアで体制転覆作戦を始めた。そこで使われたのがムスリム同胞団やサラフィ主義者だ。 この作戦は「アラブの春」と呼ばれているが、その基盤はオバマ大統領が2010年8月に出したPSD-11。ムスリム同胞団を中心にした蜂起で体制を倒すというもので、アル・カイダ系武装集団とNATO軍が連携していたことが判明している。シリアでの戦闘も構造は同じで、「内戦」と呼ぶことは正しくない。 この作戦はシリアでの戦闘が長引くにつれ、トルコでは国内経済が悪化して耐えられなくなる。アメリカなどを後ろ盾とするダーイッシュが勢力を拡大、オバマ政権が国防長官と統合参謀本部議長を交代させて戦争体制を整えた直後、シリア政府の要請を受けてロシア軍が2015年9月30日に介入、戦況は一変する。 それを受け、同年11月24日にトルコ軍のF-16がロシア軍のSu-24を待ち伏せ攻撃で撃墜したが、撃墜の当日から翌日にかけてポール・セルバ米統合参謀本部副議長がトルコのアンカラを訪問していたこともあり、黒幕はアメリカ政府だと見られている。 ところが、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は2016年6月下旬にロシア政府へ謝罪、7月13日にトルコ首相はシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆した。トルコで武装蜂起があったのはその直後、7月15日のことだった。 この蜂起は事前にロシア政府から警告があったこともあり、短時間で鎮圧されたが、エルドアン政権はクーデター計画の黒幕をアメリカへ亡命中のフェトフッラー・ギュレンだと主張している。この人物はCIAの保護下にあり、クーデター未遂を仕掛けたのはアメリカ政府だった可能性が高い。 トルコ政府は一貫してギュレンの引き渡しを求めているが、アメリカ政府は拒否してきた。そのギュレンの拉致をフリン元DIA局長が請け負ったとネオコンは宣伝してきたが、事実ではないと見られている。その話を有力メディアは再び宣伝し始めたのだが、これはジャマル・カショーギの事件の矛先をトルコへ向けさせることが目的ではないかと推測する人もいる。(了)
2018.10.16
ジャーナリストのジャマル・カショーギがトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ入ったのは今年(2018年)10月2日のことだった。それ以来、行方がわからなくなっている。カショーギは領事館で殺され、細かく解体されて運び出されたとトルコの警察当局は主張、それを示す音声を入手していという。伝えられているところによると、カショーギのアップル・ウォッチで録音され、外にいた婚約者へiPhoneで送信されたと言われている。本ブログでも書いたことだが、カショーギが危険な状態にあることをCIAは知っていたが、それを本人に伝えていなかった可能性が高い。 行方不明になる直前、カショーギはワシントン・ポスト紙のコラムニストだったが、その経歴や背景には情報機関が存在している。20歳代の頃、サウジアラビアやアメリカの情報機関、つまりGIP(総合情報庁)やCIA(中央情報局)のエージェントとして活動、ムスリム同胞団のメンバーでもあった。1979年から2001年、9/11の10日前までGIPの長官だったタルキ・ファイサル・アル・サウドの下で活動してたわけだ。 そうした関係からジミー・カーター政権の国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが始めたサウジアラビアでの秘密工作に参加、オサマ・ビン・ラディンとも知り合いになったカショーギはサウジアラビアの奴隷制を支持、ダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISILとも表記)による斬首も賞賛している。 このカショーギはロッキード事件でも登場したサウジアラビアの富豪、アドナン・カショーギの一族に属していると伝えられている。アドナンもGIPやCIAと緊密な関係にあり、父親はサウジアラビア国王だったイブン・サウドの主治医。アドナンの甥にあたるドディ・ファイードはウェールズ公妃ダイアナの恋人として有名だ。ファイードとダイアナは1997年8月31日に自動車事故で死亡した。 ジャマル・カショーギがサウジアラビアを出国した2カ月後、サウジアラビアでは大規模な粛清が行われた。王族、閣僚や元閣僚、軍人などサルマン皇太子のライバルやその支持者と目される人々が拘束されているのだが、その中には1983年から2005年まで駐米大使を務め、05年10月から15年1月にかけて国家安全保障会議事務局長、12年から14年までGIP長官を務めたバンダル・ビン・スルタンも含まれている。この人物はブッシュ家と親しく、「バンダル・ブッシュ」と呼ばれるほどだ。 今回の行方不明事件で責任者だとされているモハメド・ビン・サルマンが皇太子に就任したのは2017年6月。それまではヒラリー・クリントンと近いホマメド・ビン・ナイェフだった。この交代はアメリカにおける大統領選挙の結果が影響したと見られている。(つづく)
2018.10.16
インドのナレンドラ・モディ首相はアメリカやイスラエルと親密な関係を築いてきたと見られているが、そのインド政府がロシアから防空システムS-400を購入する。5システムを54億ドルで買う契約だという。受け渡しは2020年のようだ。 この契約をアメリカ政府は反対していたが、それを押し切っての取り引き。ソ連時代、インドはソ連と緊密な関係にあったが、その関係が復活しつつあるのかもしれない。 中国とは今でも対立関係にあるようだが、インドも中国もBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に含まれ、協力関係にもある。インドの立場は微妙で、S-400の技術がアメリカ側へ流れることも否定できない。 S-400が実戦配備されたのは2007年。シリア軍が供給され、イスラエル政府が反発しているS-300の最初のタイプは1978年から使われている。イスラエル軍はアメリカからF-35の追加供給を受けてS-300を破壊するとしているが、S-400はF-35を撃墜できるとされている。 F-35の空中戦能力がF-16より劣ることは確認されているが、ステルス性能も宣伝されているほどではないとする情報がある。すでにF-35はシリアを攻撃するために使われたことがあるのだが、その際に1967年から実戦配備されている旧式のS-200に損傷を受けた疑いがあるのだ。 S-300の場合、イスラエル軍はギリシャ軍から提供を受け、アメリカ軍はベラルーシ経由で部品を入手して弱点を研究済みだと言われているが、それは1999年に導入されたS-300 PMU-1。シリア軍が受け取ったシステムはそれを改良したS-300 PMU-2だと言われているので、その弱点も修正されている可能性が高い。 F-35は先月(2018年9月)、アメリカのサウスカロライナ州で墜落した影響で今は飛行できない状況にある。イスラエル軍も飛ばしていない。事故の原因を調べているというが、何らかの改良をしているかもしれない。 調査終了後にF-35は飛行を再開、イスラエル軍はシリア攻撃に使うのだろうが、シリアの防空部隊司令部はロシアから自動化されたコントロール・システムを受け取り、攻撃してきた敵の航空機は衛星ナビゲーション、搭載されたレーダー、通信システムをECM(電子対抗手段)でジャミングされるともされている。もしF-35がS-300に撃墜されてしまうと、この高額戦闘機はそのまま表舞台から去ることになりかねない。
2018.10.15
ギリシャのアレクシス・チプラス政権は自国をアメリカの軍事的な属国にしようとしている。すでにアメリカやイスラエルとEMA(東地中海同盟)を結び、今年(2018年)春からギリシャのラリサ空軍基地はアメリカ軍のUAV(無人機)、MQ-9リーパー(死に神。プレデターBとも呼ばれる)の拠点として運用されているが、カルパトス島にアメリカ軍とギリシャ軍の基地を建設、アメリカ軍のF22戦闘機の拠点にしようと計画しているという。この島はエーゲ海のデデカネス諸島に属し、ロードス島とクレタ島の中間にある。 軍事的なつながりだけでなく、チプラス政権はギリシャの東北部、トルコとの国境に近いアレクサンドルポリをイスラエルから天然ガスを運ぶためのハブ基地にしようと目論んでいるようだ。 イスラエルの沖で天然ガス田に関する調査が始まったのは2001年。その8年後には地中海の東側、リビア、エジプト、パレスチナ(ガザ)、イスラエル、レバノン、シリア、トルコ、ギリシャを含む地域に天然ガス田が発見された。 この調査に関わった会社のひとつがノーブル・エナジーで、ビル・クリントン元米大統領は同社のロビイストだった。2016年の大統領選挙でこの会社はヒラリー・クリントンに多額の寄付をしていたとされている。 ノーブル・エナジーは2010年、イスラエル北部で推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模ガス田を発見したと発表したが、USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。 ヒラリー・クリントンをジョージ・ソロスが操っていることは2016年に漏れた電子メールで明らかになったが、そのソロスはロスチャイルド金融資本と結びついている。イギリスのロスチャイルドを率いているジェイコブ・ロスチャイルドが戦略顧問として名を連ねている会社、ジェニー社は、イスラエルが不法占拠しているシリア領のゴラン高原で石油開発を目論んでいることも知られている。 こうしたことを念頭において、ギリシャの出来事を振り返ってみよう。第2次世界大戦や軍事クーデターで破壊されたギリシャだが、地獄への門を通ったのは2001年。通貨をドラクマからユーロへ切り替えたのだ。 こうしたことはギリシャの財政状況から本来はできないことだったが、その道へ誘い込んだのが巨大金融機関のゴールドマン・サックス。財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませたのだ。CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などを使い、国民に事態を隠しながら借金を急増させ、投機集団からカネを受け取る代償として公共部門の収入を差し出すということが行われていたという。借金漬けにした後、「格付け会社」がギリシャ国債の格付けを引き下げて混乱は始まった。ヤミ金の手口にほかならない。 そうした操作が続けられていたであろう2002年から05年にかけてゴールドマン・サックスの副会長を務めていたマリオ・ドラギは06年にイタリア銀行総裁、そして11年にはECB(欧州中央銀行)総裁に就任する。ECBが欧州委員会やIMFと組織する「トロイカ」がギリシャへの「支援』内容を決めてきた。 その「支援」とは危機の尻拭いを庶民に押しつけ、債権者、つまり欧米の巨大金融資本を助けるというもの。緊縮財政だ。 ギリシャに対するESM(欧州安定メカニズム)の第3次金融支援が終了し、8年間におよぶ支援を脱却したのだと報道されたが、予定通り進んでも債務の返済にはあと半世紀は必要だとされている。 「支援」の過程で経済は4分の1に縮小、若者や専門技術を持つ人びとを中心に約40万人のギリシャ人が国外へ移住、メンテナンスを放棄したことからインフラを含む700億ユーロ相当の資産が失われた。ギリシャ危機が終わったのではなく、ギリシャという国が終わったのだと言う人は少なくない。 西側支配層が目論んでいることを理解していたギリシャ人は「支援」を拒否、2015年1月に行われた総選挙では反緊縮を公約に掲げたシリザ(急進左翼進歩連合)に勝たせ、7月の国民投票では61%以上がトロイカの要求を拒否した。トロイカの要求に従うと年金や賃金がさらに減額され、社会保障の水準も低下し続け、失業者を増やして問題を深刻化させると考えたからだ。 選挙で勝ったシリザはアレクシス・チプラス政権を成立させるが、それに対してアメリカのバラク・オバマ政権は2015年3月にビクトリア・ヌランド国務次官補を派遣する。この人物はチプラス首相に対し、NATOの結束を乱したり、ドイツやトロイカに対して債務不履行を宣言するなと警告、さらにクーデターや暗殺を示唆したとも言われている。イギリスのサンデー・タイムズ紙は7月5日、軍も加わったネメシス(復讐の女神)という暗号名の秘密作戦が用意されていると伝えていた。 ギリシャ政府にはもうひとつの選択肢があった。ロシアのサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムでチプラス首相はロシアのウラジミル・プーチン大統領と会談、天然ガス輸送用のパイプライン、トルコ・ストリームの建設に絡んで50億ドルを前払いすると提案されているのだ。 結局、チプラス政権はギリシャ国民を裏切り、欧米支配層の利益へ奉仕することになった。ギリシャは現在、イスラエルが支配しようとしている天然ガス利権の真ん中にいる。その利権が庶民のために使われることはないだろう。
2018.10.14
アメリカで中間選挙の投票日が近づく中、フェイスブックは500ページ、251アカウントを削除、批判されている。削除されたアカウントの中には有力メディアの偽情報を指摘してきたものも含まれ、私企業による言論統制にほかならない。この検閲にはNSC(国家安全保障会議)でサイバー問題の責任者を務めた経験があるナサニエル・グレイチャーが加わり、ツイッターも同調している。 フェイスブック、ツイッター、グーグル、ユーチューブといったインターネットの巨大企業はNSAやCIAといったアメリカの情報機関と連携していることが知られている。NSAはイギリスの電子情報機関GCHQとUKUSA(ユクザ)を編成、そこにはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロ・サクソン系諸国の情報機関も参加している。この5機関の中心は言うまでもなくNSAとGCHQで、他の3機関はその下で活動、各国政府を監視する役割も担っている。 アメリカでは1970年代に入って情報機関による秘密工作が問題になり、75年1月には上院で「情報活動に関する政府工作を調査する特別委員会」が、その翌月には下院で「情報特別委員会」が設置された。委員長は上院がフランク・チャーチ、下院がルシアン・ネッツィ(後にオーティス・パイクへ変更)だったことから、それぞれチャーチ委員会、パイク委員会と呼ばれている。日本では1973年3月に聴聞会がスタートした上院外交委員会の多国籍企業小委員会をチャーチ委員会と呼ぶが、これは日本独特の風習。 アメリカの巨大金融資本は第2次世界大戦後、情報をコントロールするためにモッキンバードと呼ばれるプロジェクトを始動させた。その中心にはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハムがいた。 ダレスはOSS(戦略事務局)とCIA(中央情報局)で中心的な役割を果たし、ウィズナーはダレスの側近として破壊活動を指揮していた。このふたりはOSS長官だったウィリアム・ドノバンと同様、ウォール街の弁護士。ヘルムズは母方の祖父がBIS(国際決済銀行)の初代頭取、そしてグラハムの義理の父は世界銀行の初代総裁。 ワシントン・ポスト紙はウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだが、その取材で中心になったのはカール・バーンスタインとボブ・ウッドワード。同紙へ入る少し前までウッドワードはONI(海軍情報局)の将校で、ジャーナリストとしては素人に近かった。「ディープスロート」という情報源を連れてきたのはウッドワードだったが、取材は事実上、バーンスタインが行ったと言われている。 そのバーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。CIAが有力メディアをコントロールしている実態を暴露したのだ。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) 当時のメディアには気骨ある記者や編集者がいて統制の間隙を縫って権力犯罪を明らかにしていたが、CIAと有力メディアが連携していたことも事実なのだ。議会の委員会もこうした事実を知っていたが、記者、編集者、発行人、あるいは放送局の重役から事情を聞いていない。当時のCIA長官、つまりウィリアム・コルビーやジョージ・H・W・ブッシュたちから調査をやめるように働きかけられたことが影響したと言われている。 それでも議会や一部ジャーナリストの調査を懸念した支配層は報道統制を強化するためにメディア支配の規制を緩和、アメリカでは1983年には50社が90%のメディアを所有していたのに対し、2011年になると90%を6社が支配している。それでも検閲しきれなかったインターネットに対する統制を始めたわけだ。ウィキリークスやアレックス・ジョーンズに対する言論弾圧はその序章だったと言えるだろう。
2018.10.13
アメリカのエネルギー情報局によると、クウェートは9月末までの4週間、アメリカへ原油を輸出していない。東アジアの国へ売っている可能性があるが、その東アジアでは中国のシノペック(中国石油化工)がアメリカ政府からの圧力で9月におけるイランからの石油輸入量は半減させたと伝えられている。サウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子はクウェートを訪問、石油増産を求めたが、成果はなかったと言われている。 アメリカのドナルド・トランプ大統領は今年(2018年)8月、イランに対する「再制裁」を11月5日から実施するように命令したが、その命令に各国が従うと石油価格が暴騰することは必至で、1バーレルあたり100ドルは突破すると見られている。そうしたことになると世界経済への影響は大きく、自動車社会のアメリカでは不満がどのように爆発するかわからない。 そうした中、ロイターによると、9月にロシアとサウジアラビアのエネルギー問題の担当大臣が秘密裏に会談、9月から12月にかけて原油を増産して相場を冷やすことで合意し、その決定がアメリカのエネルギー長官へ伝えられたという。その決定にイラン側が反発するのは当然だろう。アメリカの中間選挙の期間は相場を冷やそうというようにも見える。 しかし、イラン産原油の生産量をほかの産油国の増産で補填することは難しいとみられ、高く買ってくれる相手へ売るため、クウェートのようにアメリカへの輸出を止めるということがあっても不思議ではない。 その一方、インドの外務大臣は9月下旬にイランの外務大臣とニューヨークで9月下旬に会談、インドはイランから石油を買い続けると語っている。アメリカとの関係が悪化しているNATO加盟国のトルコもイランから石油を買い続ける意向だ。イランからの原油輸入を減らすという中国はアメリカからの石油輸入を完全に止め、インドもアメリカからの石油輸入量を減らすという。 サウジアラビアはアメリカ一辺倒からロシア側へ軸足を移動させる兆候も見られる。ロシアの防空システムS-400をサウジアラビア政府は購入したがっていると伝えられているのだ。 そのサウジアラビアに対し、トランプ大統領は10月2日、サウジアラビアの現体制はアメリカの保護がなければ2週間で潰れると同国のサルマン国王に対して警告したとミシシッピー州で開かれた集会で語った。国王への警告がいつなされたかは明らかにされていないが、カショーギが行方不明になる前でだとは言えるだろう。 サウジアラビア王制の基盤が脆弱であることは確かだが、その脆弱な体制を利用してアメリカはペトロダラーの仕組みを維持し、ジハード傭兵も編成してきた。この王制が倒れたなら、アメリカは自分たちの支配システムを支えているペトロダラーを維持できなくなり、ジハード傭兵をコントロールすることも難しくなる。 そうした中、浮上したのがジャーナリストのジャマル・カショーギの行方不明事件。10月2日から姿を消している。 サウジアラビアでは大規模な粛清が始まる2カ月前、ホマメド・ビン・ナイェフからモハメド・ビン・サルマンへ皇太子が交代になった3カ月後にこの人物は国外へ脱出、ワシントン・ポスト紙のコラムニストになった。 ワシントン・ポスト紙はウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだことで有名だが、その取材で中心になっていたカール・バーンスタインは1977年に新聞社を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」というタイトルの記事を書いている。ワシントン・ポスト紙を含むアメリカの有力メディアたCIAと緊密な関係にあることを明らかにしたのだ。これは本ブログで繰り返し書いてきた。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) 本ブログではすでに指摘したが、ジャマル・カショーギはロッキード事件でも登場したサウジアラビアの富豪、アドナン・カショーギの一族に属していると伝えられている。このアドナンの父親はサウジアラビア国王だったイブン・サウドの主治医。アドナンはサウジアラビアの情報機関とつながっていたと見られているが、それだけでなくCIAと緊密な関係にあった。アドナンの甥にあたるドディ・ファイードはウェールズ公妃ダイアナの恋人として有名だ。ファイードとダイアナは1997年8月31日に自動車事故で死亡した。 サウジアラビアで粛清された勢力はアメリカの巨大資本やCIAとつながり、2016年の大統領選挙ではヒラリー・クリントンを支持していた。そうした人びとにとってサルマン皇太子は好ましくない存在。皇太子がつながっているのはトランプ陣営、カジノ経営者のシェルドン・アデルソン、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相などだ。どちらもシオニストではあるが、ライバルでもある。 本ブログでも指摘したように、ジャマル・カショーギの行方不明事件に不可解な点がある。トルコの治安機関や情報機関が常時監視している領事館が行方不明の現場になっていること、言われている殺害方法が稚拙であることなどがすぐ頭に浮かぶが、CIAは事前にカショーギが危険な状態であることを把握していたというのだ。それにもかかわらず、警告がなかったというのだ。この事件には何か裏がありそうだ。
2018.10.12
サウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショーギが10月2日にトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ入ったまま行方不明になっている。トルコの警察当局によると、カショーギは領事館で殺され、細かく解体されて運び出されたという。勿論、サウジアラビア政府はこうした主張を否定している。 その2日、アメリカのドナルド・トランプ大統領はミシシッピー州で開かれた集会で、サウジアラビアの現体制はアメリカの保護がなければ2週間で潰れると同国のサルマン国王に対して警告したと語った。その警告がいつなされたかは明らかにされていないが、カショーギが姿を消す前だとは言えるだろう。 この話について、いくつかの疑問が示されている。そのひとつは殺害現場。トルコ政府はカショーギがサウジアラビアの領事館で殺されたとしているのだが、もしサウジアラビア政府が殺害を計画したのなら、自分たちと関係のない場所で、自分たちとのつながりがわからないような人物に依頼する。領事館や大使館は通常、相手国の治安機関や情報機関が常に監視しているはずで、最悪の場所だ。どこかの国にある某国の大使館は近くの建造物と地下でつながっていると噂されているが、そうした仕掛けが必要。今回のケースでは、領事館へカショーギが入るところを確認されている。また痕跡が残らない毒物も存在、時間は必要だが、発癌性ウイルスも使われていると言われている。 西側の有力メディアはロシアのウラジミル・プーチン大統領に多少でも関わりのある人物が死亡すると、あたかもプーチンに殺されたかのように根拠も証拠もしめすことなく宣伝してきた。そうしたひとりが今年(2018年)5月にウクライナで射殺されたとされたアルカディ・バブチェンコなるジャーナリスト。このケースがほかと違うのは、その翌日に治安当局の人間と公の場に姿を現したことにある。このケースと同じように、ジャマル・カショーギが姿を現す可能性も否定できない。 カショーギの行方不明事件で黒幕だとされたモハメド・ビン・サルマン皇太子はネオコンと敵対関係にあるが、トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とは緊密な関係にあった。
2018.10.11
トルコにあるサウジアラビア領事館へ入り、まま行方不明になったジャマル・カショーギはロッキード事件でも登場したサウジアラビアの富豪、アドナン・カショーギの一族に属していると伝えられている。 ロッキード事件に登場することでもわかるように、アドナンはCIAと緊密な関係にあり、父親はサウジアラビア国王だったイブン・サウドの主治医。アドナンの甥にあたるドディ・ファイードはウェールズ公妃ダイアナの恋人として有名だ。ファイードとダイアナは1997年8月31日に自動車事故で死亡した。 アドナンは1980年代に入るとフィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領から金塊の処理への協力を依頼されるが、その情報はCIAに伝えられ、1986年2月のアメリカ軍によるマルコス拉致につながる。この拉致を指揮したのはネオコンのポール・ウォルフォウィッツと言われているが、アドナン・カショーギも関係したようだ。 当時、フィリピン国内では反マルコスの運動が高まっていたが、その原因のひとつはマルコスのライバルだったベニグノ・アキノが1983年8月にマニラ国際空港で射殺されたことにある。このアキノへはNEDを通じてCIAのカネが流れ込んでいた。 こうした背景を持つジャマル・カショーギはサウジアラビアの奴隷制を支持、ダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISILとも表記)による斬首も賞賛している。その人脈にバンダル・ビン・スルタンが含まれていることを考えると当然だ。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アル・カイダとはロビン・クック元英外相が指摘していたように、CIAの訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。何らかのプロジェクトができると、このファイルからメンバーがピックアップされ、そのグループを中心に戦闘集団が編成されてきたと見られている。 ジャマル・カショーギの「行方不明事件」はサウジアラビアの権力抗争の結果であり、その背後にはネオコン系シオニストとネタニヤフ系シオニストの対立がある。サウジアラビアの支配システムが揺らいでいるのだが、このサウジアラビアはアメリカの支配システムを支えてきたペトロダラーの守護神。この守護神が倒れるとアメリカの支配システムも倒れる可能性がある。
2018.10.10
ネオコンは2014年にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させたが、その翌年の段階では16年に予定されていた大統領選挙の勝者はネオコンが担いでいたクリントンになるはずだった。2015年6月にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席している。 状況に変化が見られたのは2016年2月10日。ヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談、22日にはシリアで停戦の合意が成立したのだ。その後、注目されるようになったのが共和党のドナルド・トランプと民主党のバーニー・サンダース。 民主党の幹部はさまざまな手段を講じてサンダースを押さえ込むことに成功するが、その内幕の一端を明らかにする電子メールがインターネット上に流れる。内部告発支援グループのウィキリークスもクリントン関連の電子メールを明らかにした。そうしたメールの中には、2015年5月の時点で民主党幹部たちがヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆している電子メールも含まれている。そこでロシア政府がハッキングしたというキャンペーン。そこからロシアゲートが始まった。 しかし、技術的な分析から電子メールはハッキングではなく、内部でサーバーから直接ダウンロードされた可能性が高いと指摘されている。電子メールをウィキリークスへ渡したのは民主党全国委員会のスタッフだったセス・リッチだったと見られている。 こうした指摘をかき消すように有力メディアはロシア政府がハッキングしたという話を流したが、この偽情報流布を指揮したのはCIA長官だったジョン・ブレナンだと言われている。 トランプの背後にはキッシンジャーがいると見られているが、最大のスポンサーはカジノ経営者のシェルドン・アデルソン。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と緊密な関係にある人物だ。トランプの娘、イバンカの夫で大統領の顧問を務めるジャレッド・クシュナーもこの人脈に属している。 結局、アメリカ大統領に選ばれたのはトランプだが、その影響はサウジアラビアの後継者争いにも影響する。2017年6月に皇太子がホマメド・ビン・ナイェフからモハメド・ビン・サルマンへ交代したのだ。前者はロスチャイルドと関係の深いネオコン系、後者はジャボチンスキー色の濃い一派とつながっている。 皇太子が交代になった3カ月後にジャマル・カショーギはサウジアラビアを離れ、ネオコン色の濃いワシントン・ポスト紙のコラムニストになった。同紙の記者としてウォーターゲート事件を暴いたカール・バーンスタインは1977年に新聞社を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」というタイトルの記事を書いている。 その記事によると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) この記事が出た後に状況は急速に悪化、気骨あるジャーナリストが排除され、メディアは少数の巨大資本による支配が強まった。今回の一件でワシントン・ポスト紙を含む西側の有力メディアは巨大資本の走狗として偽情報を流してきた事実を忘れてはならない。西側の有力メディアはジャーナリズムの敵と化している。 ジャーナリストのむのたけじは1991年に開かれた「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する会で講演し、その冒頭で「ジャーナリズムはとうにくたばった」と発言したという(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)が、その通りである。日本はアメリカと同じ、あるいはそれ以上に悪い状況に陥ったのだ。「くたばった」日本のマスコミが復活する兆候はみられない。(了)
2018.10.09
サウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子を批判、同国のイエメン侵攻に反対していたジャーナリストのジャマル・カショーギがイスタンブールにあるサウジアラビア領事館に入ったのは10月2日。そのまま行方不明になったのだが、カショーギが領事館で殺され、細かく解体されて運び出されたと7日にトルコの警察当局は発表した。 衝撃的な発表だが、イギリスの有力メディアは第1面に記事を掲載しなかったとからかわれている。ロシアが相手なら証拠もなしに罵詈雑言を浴びせるのだが、サウジアラビアが相手だと自重するというわけだ。 警察によると、サウジアラビアから9月29日にトルコ入りした15名の暗殺チームはカショーギが消えた日、領事館にいた。黒い自動車へ複数の箱が運び込まれる様子や空港の記録も警察はすでに持っているという。 カショーギは領事館を出てから行方不明になったとする声明をサウジアラビア政府は3日に出しているが、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はサウジアラビア政府に対し、そのジャーナリストが領事館を出た証拠を示すように求めている。 カショーギは昨年(2017年)9月にサウジアラビアを出国、ワシントン・ポスト紙のコラムニストになった。その2カ月後にサウジアラビアでは大規模な粛清が始まり、王族、閣僚や元閣僚、軍人などサルマン皇太子のライバルやその支持者と目される人々が拘束されている。 粛清されたグループの中にはサウジアラビア国家警備隊を率いていたムトイブ・ビン・アブドゥッラー、衛星放送MBCを所有するワリード・ビン・イブラヒム・アル・イブラヒム、ロタナTVを含むエンターテイメント会社のロタナ・グループの大株主であるアル・ワリード・ビン・タラル王子、ネットワーク局ARTを創設したサレー・アブドゥッラー・カメル、CIAと緊密な関係にあったバンダル・ビン・スルタンなども含まれている。 ビン・スルタンは「バンダル・ブッシュ」と呼ばれるほどブッシュ家と親しく、1983年10月から2005年9月にかけてアメリカ駐在大使、2005年10月から15年1月にかけて国家安全保障会議事務局長、12年7月から14年4月にかけて総合情報庁(サウジアラビアの情報機関)長官を務めた。 それだけでなく、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やチェチェンの反ロシア勢力を動かしていたことでも知られ、アル・カイダ系武装集団の司令官だと見られていた。 サウジアラビアは2011年春、アメリカ、イスラエル、イギリス、フランス、カタール、トルコなどと手を組んでリビアやシリアを侵略したが、侵略の傭兵の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団のメンバー。2011年当時のアメリカ大統領はバラク・オバマ、国務長官はヒラリー・クリントン。侵略を推進していたのはネオコンだ。(つづく)
2018.10.09
ドナルド・トランプ米大統領は今年(2018年)8月、イランに対する「再制裁」を11月5日から実施するように命令した。その主要ターゲットは石油だ。 アメリカ政府の決定に対し、ロシアと中国の政府はイランを守ると宣言したが、もしトランプ政権の計画通りに進み、イランの石油輸出が止まると原油価格が暴騰することは明白。1バーレルあたり100ドルは突破すると見る人が少なくなかった。それが現実化すると、世界経済に破滅的なダメージを与えることになる。 それを見越して相場が上昇を始めた場合、自動車社会のアメリカで不満が高まることは必至だ。中間選挙の前にそうした展開になることはトランプ政権にとって好ましくはない。そこでアメリカ政府は産油国に増産を求めた。世界経済の破綻はロシアも中国も避けたいはずで、トランプ政権の自爆的な要求を完全に無視することは難しいという見方がある。 ロイター通信は匿名の人物からの情報として、中国のシノペック(中国石油化工)はアメリカからの圧力で9月におけるイランからの石油輸入量は半減、サウジアラビアとロシアの石油会社は石油増産で私的に合意したという。 西側有力メディアの匿名情報は信頼度が低いのだが、その情報が正しいとするならばイランを守るという約束をロシアと中国の政府が守るためにイラン産原油をロシアが輸入、ロシアが中国などへ売るというようなことをする必要がある。イラン産の原油が市場へ出なくなった場合、それを補填するだけの生産余力はないと見られ、裏のルートは必要になるはずだ。 そうした中、インドの外務大臣は9月下旬にイランの外務大臣とニューヨークで9月下旬に会談、その後でイランから石油を買い続けると語っている。アメリカとの関係が悪化しているトルコもイランから石油を買い続ける意向だ。その一方、経済戦争の一環として中国政府はアメリカからの石油輸入を完全に止め、インドもアメリカからの石油輸入量を減らすという。また石油増産を求めるためにサウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子はクウェートを訪問したが、成果はなかったと言われている。 そのサウジアラビアとアメリカとの間にも隙間風が吹いている。ブルームバーグのインタビューでサルマン皇太子はトランプ大統領のサウジアラビアにおける治安維持に関する主張について質問され、アメリカから提供された軍備に対しては支払い済みで、新たに払うことはないと答えている。サウジアラビアはロシアから防空システムS-400を購入したがっているとも言われ、皇太子はアメリカとの関係を見直そうとしている可能性もある。サウジアラビアはイスラエルとさらに関係を緊密化するべきだとする声も皇太子の周辺から聞こえてくるが、そうした人びとが両国の関係を心配するような動きがあるのだろう。
2018.10.09
ドナルド・トランプ米大統領はイスラエルに対するF-35戦闘機の供給数を増やすと伝えられている。ロシア政府がシリア軍に対してS-300防空システムを提供していることへの対抗措置だという。 このS-300のバージョンが不明なのではっきりしないが、ギリシャへ提供されたような古いタイプならアメリカ/NATO軍は対抗手段をすでに持っている。それに対し、新しいタイプだった場合はイスラエル空軍機がシリア領空へ近づくことが難しくなるとみられていた。イスラエル側はS-300にF-35を発見する能力はないとしているが、それが正しいかどうかは不明だ。F-35の投入がリスクを伴うことをイスラエルは理解しているはずで、この主張はアメリカに対する脅しだという見方もある。 イスラエルの苦境に対し、アメリカ政府は素早く反応したと言えるが、サウジアラビアとの間では隙間風が吹き始めている。イランの石油輸出を止めようとしている各国に圧力を加えているアメリカ政府は石油価格の暴騰を防ぐため、サウジアラビアに増産を要請していた。さらにサウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子はクウェートを訪問して増産を求めたようだが、断られたようだ。 サウジアラビアにも不満があるだろうが、そうした中、トランプ大統領はアメリカの支援なしにサウジアラビアの現体制は2週間で潰れると脅している。サウジアラビア王制の基盤が脆弱であることは確かだが、その脆弱な体制を利用してアメリカはペトロダラーの仕組みを維持し、ジハード傭兵も編成してきた。この王制が倒れたなら、アメリカは自分たちの支配システムを支えているペトロダラーを維持できなくなり、ジハード傭兵をコントロールすることも難しくなる。
2018.10.08
東京琉球館で10月20日18時(午後6時)から「追い詰められるアメリカ」というタイトルで話します。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/ かつてリチャード・ニクソンは世界を自分たちが望む方向へ導くため、人びとにアメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせるべきだと考え、またイスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のようにならなければならないと語ったと言います。 「触らぬ神に祟りなし」と思わせようということでしょうが、そうした「神」に対して下手に出たところ、つけあがって手に負えなくなりました。こうした「神」が支配する体制で官僚と呼ばれる神官たちは支配を正当化するために神話を作り出し、信徒たちは自分たちの信仰を正当化するため、「民主」、「自由」、「人権」といった実態の伴わない空疎な呪文を唱えています。 この神国にはソ連というライバルが存在したのですが、そのソ連が1991年12月に消滅すると、その神官たちは世界をカルト化するために侵略戦争を計画します。それがウォルフォウィッツ・ドクトリンだということは本ブログで繰り返し書いてきました。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によりますと、ソ連の消滅が見通されていたであろう1991年にアメリカの国防次官だったポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていました。 ウォルフォウィッツたちネオコンは1980年代からフセイン政権を倒してイラクに親イスラエル体制を樹立させ、シリアとイランを分断して個別撃破するというプランを立てていました。すでにサウジアラビアはイスラエルの影響下にあり、イラク、シリア、イランで「レジーム・チェンジ」に成功すれば中東全域を支配できるというわけで、それはエネルギー資源の独占につながります。 ウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づく侵略戦争が本格化する引き金になった出来事が2001年9月11日に引き起こされます。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州のアーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)に対する攻撃です。 その後、この攻撃に無関係だったアフガニスタンとイラクを先制攻撃、ジョージアを使って南オセチアを奇襲攻撃して失敗、正規軍の戦闘でロシア軍に勝つことは難しいと考えたのか、バラク・オバマ政権はジハード傭兵を使って2011年春にリビアとシリアへの侵略戦争を始めます。 アメリカの支配層が中東からアフリカにかけての地域で侵略戦争を始めた理由は石油をはじめとする資源を支配するためでした。アフガニスタンでは殺戮と破壊が続き、イラクのサダム・フセイン体制はアメリカ主導軍による先制攻撃で破壊され、リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はジハード傭兵とNATO軍の連合軍によって倒されました。その次がシリアですが、この国は屈服せず、イランやロシアの支援を受けて侵略軍を追い出しつつあります。1990年代のロシアは米英巨大金融資本の属国でしたが、21世紀に入って再独立、急速に国力を回復させたのです。 ジハード傭兵とは1970年代の終盤、ジミー・カーター政権の国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが考えたサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団のメンバーを主力とする傭兵たちで、アメリカから武器/兵器の提供を受け、CIAから軍事訓練を受けてきました。そうした訓練を受けたメンバーのデータベースがアル・カイダです。アメリカの軍や情報機関はチェチェンや新疆ウイグル自治区の出身者も傭兵として使っています。 少し前からアメリカ軍はジハード傭兵の幹部をヘリコプターなどで救出、一部はアフガニスタンへ運び、一部はユーフラテス川の北を支配しているクルド勢力に合流させたと言われています。イドリブにはアメリカ系の傭兵が残っているようですが、その他の地域で救出されなかった戦闘員は切り捨てられたか、欧米以外を後ろ盾とする戦闘集団である可能性があります。 脅して屈服させるというアメリカ/NATOやイスラエルが使ってきた戦術の限界が見えています。これまではロシア政府が巧妙に回避してきましたが、それを「弱さの証拠」と考えている可能性が高く、軍事的な緊張を緩和されようとするとは思えません。 しかし、こうしたアメリカ/NATOやイスラエルの姿勢は自らを孤立化させることになりました。そうした動きは中東だけでなく、東アジアでも見られます。朝鮮半島の問題ではロシア、中国、韓国が主導権を握り、朝鮮を巻き込んで緊張緩和の方向へ引っ張っているように見えます。アメリカ支配層は追い詰められているのです。 そうした中、9月17日にはシリア沖でロシア軍の電子情報支援機IL-20が撃墜されました。その原因を作ったとしてイスラエル軍をロシア政府は厳しく批判、これまでイスラエル政府に配慮してシリア軍へ提供していなかった防空ミサイルS-300をシリア側へ引き渡しています。さらに、自動化されたコントロール・システムをシリアの防空部隊司令部へ提供、航空機の衛星ナビゲーション、搭載されたレーダー、通信システムをジャミングするともしています。事実上、シリア上空を飛行禁止空域にしたわけです。 アメリカは支配力を回復しようと軍事力を使い、威嚇するだけでなく破壊と殺戮を繰り返し、ドル支配を利用して経済戦争を仕掛けています。先住民の殲滅から始まったアメリカの歴史は血塗られています。 ロシアが再独立した結果、恐怖が和らぎ、冷静に国際情勢を観察する人が増えてきたようです。冷静に見ると、アメリカは醜悪で貧弱だということがわかります。そうした実態を知る人が増えたなら、アメリカの支配力は急速に低下するでしょう。アメリカは追い詰められています。
2018.10.07
アメリカは中国の海運ルートに対する軍事的な圧力を強める一方、経済戦争を仕掛けている。中国を屈服させ、アメリカの支配システムを維持しようとしているのだが、機能しているようには見えない。 現在、ドナルド・トランプ米大統領はイランの体制を転覆させるため、同国の石油輸出を完全に止めようとしている。イランの輸出先の上位2カ国は中国とインドで、トランプ政権の目論見が成功するかどうかはこの2カ国を屈服させ、アメリカ政府の命令に従わせることができるかどうかにかかっている。 そうしたこともあり、トランプ政権は中国に軍事的な圧力を加えると同時に経済戦争を仕掛けたが、中国は屈しない。イランからの石油輸入を止める兆候も見られない。アメリカではインドがアメリカ政府の意向に従ってイラン産石油の輸入を止めるかのように伝えられてきたが、インドの外務大臣はイランの外務大臣とニューヨークで9月下旬に会談した後、イランから石油を買い続けると語っている。さらに、アメリカとの関係が悪化しているNATO加盟国のトルコもイランから石油を買い続ける意向だ。 それに対し、経済戦争の一環として中国政府はアメリカからの石油輸入を完全に止めるとしている。インドもアメリカからの石油輸入量を減らすという。中国の場合はロシアからのエネルギー資源の輸入を増やすのだろう。インドはアメリカ政府の反対を押し切り、ロシアと防空システムS-400を購入することで合意したとも伝えられている。BRICSのつながりをアメリカは崩せなかったようだ。 このまま中国とアメリカとの関係が悪化した場合、どこかの時点で中国は保有するアメリカの財務省証券を売るのではないかと見られている。製造業を弱体化させたアメリカはロシアなしにロケットを打ち上げることもできない状態で、中国で生産された製品なしには生活を維持することも難しい。 2011年2月、アメリカ大統領だったバラク・オバマはサンフランシスコのエレクトロ産業の幹部たちと食事をともにした際、アップルのスティーブン・ジョブスに対し、同社のiPhoneをアメリカで生産しないかともちかけた。 ところが、ジョブスはアメリカへ戻ることはないと答えている。アジアでは生産規模を柔軟に変更でき、供給ラインが充実、そして労働者の技術水準が高いという理由からだという。公的な教育システムが崩壊しているアメリカにおける科学技術の水準は低下、中国やインドに太刀打ちできないという話も聞く。 アップル側の推計によると、iPhoneを生産するためには約20万人の組立工と約8700人のエンジニアが必要で、それだけの陣容をアメリカで集めるためには9カ月が必要だが、中国なら15日ですむとも言われたようだ。 アメリカでは最高レベルの教育は維持されているものの、生産現場で必要な中間レベルの技術を持つ人を育成してこなかったことが致命的になっていると指摘されている。同じ現象は日本でも引き起こされているようで、かなり前から日本でも技術系学生のレベルが落ちているという嘆きの声が現場から聞こえてくる。それがアメリカや日本の現状だ。 こうした状況にあるにもかかわらす、アメリカは世界の覇者になろうとあがいている。このまま進むとドル体制が崩壊し、破綻国家に転落すると考えているのだろう。 トランプ政権だけがアメリカを世界の支配国にしようとしているわけではない。ノーベル平和賞を受賞したバラク・オバマ大統領は2014年にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させた。そのクーデターの中心にいたのがネオコン。そのクーデターを見た中国はアメリカを警戒、ロシアと戦略的な同盟関係に入った。 ヒラリー・クリントンを担いだのもネオコン。彼らはロシアの再属国化を目指し、そのために核戦争でロシアを脅す。その結果、世界は非常に危険な状況に陥る。 2016年の大統領選挙でクリントンに勝ったドナルド・トランプは当初、ロシアとの関係修復を謳っていた。トランプ大統領はネオコンとジハード傭兵との関係を熟知しているマイケル・フリン元DIA局長を国家安全保障補佐官に据えたが、ネオコンの意向を受けた議員や有力メディアからの批判を受けて2017年2月に解任されてしまった。それ以降、ホワイトハウスはネオコンの影響を受けている。 ネオコンは政党に関係なく人脈を持ち、アメリカの政治経済に大きな影響力を持つ。世界的な投機家のジョージ・ソロスもその一派だ。ウクライナのクーデターを指揮していたビクトリア・ヌランド国務次官補もネオコン人脈の中枢グループに属す。 彼らはKGBの中枢と手を組み、1991年12月にソ連を消滅させることに成功。1992年2月にはアメリカが「唯一の超大国」になったという前提で世界制覇プラン、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンを国防総省のDPG草案という形で作成した。その当時の国防長官はリチャード・チェイニー、草案作成の中心は国防次官だったポール・ウォルフォウィッツ。そこでウォルフォウィッツ・ドクトリンと呼ばれるわけだ。 一方、トランプはカジノ業界の大物でラスベガス・サンズを所有するシェルドン・アデルソンがスポンサー。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しい。 ネタニヤフ首相の父親、ベンシオン・ネタニヤフはニューヨークでウラジミール・ジャボチンスキーの秘書として働いていた。そのジャボチンスキーは1925年に戦闘的シオニスト団体の「修正主義シオニスト世界連合」を結成した人物で、1931年にはテロ組織と言われているイルグンを組織している。 ネオコンの思想的な支柱と言われているシカゴ大学の教授だったレオ・ストラウスは1899年にドイツのヘッセン州で熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれ、17歳の頃にジャボチンスキーのシオニスト運動へ接近した。1932年に彼はロックフェラー財団の奨学金でフランスへ渡り、中世のユダヤ教徒やイスラム哲学について学んだ後、プラトンやアリストテレスの研究を始めている。ネタニヤフもネオコンも源流はジャボチンスキーだと言えるが、現在、ネオコンは巨大金融資本と深く結びついている。
2018.10.06
オランダ政府やイギリス政府はサイバー攻撃を行ったとしてロシア軍の情報機関GRUを批判、アメリカ、カナダ、NATOもその合唱に加わっている。例によって証拠は示されず、「我々を信じろ」という態度だ。 名前が挙がっているサイバー攻撃の対象のひとつはOPCW(化学兵器禁止機関)。シリアのドゥーマで今年(2018年)4月7日に化学兵器が使われたとアメリカ、イギリス、フランスをはじめとする西側の政府や有力メディアが主張した際、現地を調査して化学兵器による攻撃はなかったとしていた。 この化学兵器話の発信源はアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラムというアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にあるSCD(シリア市民防衛/通称白いヘルメット)。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アル・カイダとはロビン・クック元英外相が指摘していたように、CIAが訓練した「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルにすぎない。アラビア語で「アル・カイダ」は「ベース」を意味、「データベース」の訳語としても使われる。なお、クックはこの指摘をした翌月、保養先のスコットランドで心臓発作に襲われ、59歳で死亡した。 ジャイシュ・アル・イスラムやSCDの主張を調べるためにOPCWが現地入りする直前の4月14日、アメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアをミサイル攻撃した。OPCWをコントロール仕切れていないので調査の前に攻撃しようとしたのだろう。 米英仏が攻撃した後、OPCWのチームはすぐドゥーマへ入ろうとしたのだが、国連から治安状況が良くないと言われ、予定が遅れた。実際はそうした状況でなく、その後、調査は行われた。 ロシア国防省の説明によると、この攻撃で3カ国は103機の巡航ミサイルを発射、そのうち71機をシリア軍が撃墜したという。アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)。すべてが命中したとしているが、攻撃目標と使用されたミサイルの数が不自然で、現地の様子とも符合しないため、これは正しくないと見られている。 米英仏が攻撃した後、ジャイシュ・アル・イスラムの幹部、モハマド・アルーシュは失望を表明している。シリア軍の航空兵力を壊滅させ、地上の戦闘部隊がダマスカスを攻略して逆転勝利を狙っていたという見方があるのだが、そうならなかったからだ。 ドゥーマの場合、西側のメディアも珍しく現地を取材している。そのひとりがイギリスで発行されているインディペンデント紙のロバート・フィスク特派員。攻撃があったとされる地域へ入って治療に当たった医師らに取材、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。アメリカのケーブル・テレビ局OANの記者も同じ内容の報告をしている。ロシア系のRTは西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材、やはり化学兵器が使用されたという話を否定した。 今回、GRUを批判した国のうちアメリカとイギリスは偽情報を利用してシリアにミサイルを撃ち込み、挙げ句の果てにミサイルの大半を撃ち落とされた当事国。カナダは米英を中心とするアングロ・サクソン系国のひとつであり、オランダは米英の属国的な存在である。 アメリカとイギリスはサイバー攻撃に積極的な国として知られている。そのために設立されたのがアメリカのNSAとイギリスのGCHQ。両機関はUKUSA(ユクザ)を編成した。後にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドという英語圏の国がUKUSAへ参加しているが、この3カ国は「第2当事国」と呼ばれ、英米両国とは立場が違う。この3カ国よりイスラエルの8200部隊の方がNSAとGCHQは緊密な関係にある。 NSAにしろ、GCHQにしろ、設立から30年程度は存在自体が秘密にされていた。1972年にランパート誌がNSAの元分析官ペリー・フェルウォック(記事の中で本名は伏せられていた)の内部告発を記事にし、GCHQについてはジャーナリストのダンカン・キャンベルとマーク・ホゼンボールが1976年にタイム・アウト誌で明らかにした。その記事が原因で、アメリカ人だったホゼンボールは国外追放になり、キャンベルは治安機関のMI5から監視されるようになる。 1975年にアメリカの上院で「情報活動に関する政府工作を調査する特別委員会」が、下院では「情報特別委員会」が設置され、情報機関による秘密工作にメスが入れられている。委員長は上院がフランク・チャーチ、下院がルシアン・ネッツィ(後にオーティス・パイクへ変更)だ。 UKUSAや8200部隊は通信傍受、ハッキング、コンピュータ・ウィルスを使った攻撃、トラップ・ドアを組み込んだシステムを利用した情報の収集、世界に住む大半の人びとを監視、個々人の行動や思想の分析、「潜在的テロリスト」の割り出しなどを行っていると言われている。 チャーチ上院議員は1975年8月にNBCのミート・ザ・プレスという番組に出演、そこでアメリカ政府の通信傍受能力はアメリカ国民に向けられる可能性があり、そうなると人々の隠れる場所は存在しないと警鐘を鳴らしていた。民主主義が危機的な状況にあることを警告したチャーチ議員は1980年に行われた次の選挙で落選、1984年4月に59歳で死亡している。 1970年代の半ばの時点で米英の支配層が「ビッグ・ブラザー」を作り始めていることが指摘され、その秘密機関はサイバー攻撃の主体でもある。このビッグ・ブラザーがインターネットを支配している巨大企業をコントロールしていることも知られているが、こうした巨大企業はすでに言論封殺に乗り出していることを忘れてはならない。
2018.10.05
沖縄県知事選で翁長雄志前知事の政策を継承するとしている玉城デニーが勝利した。名護市辺野古へ新しい基地を建設するという計画に沖縄県民は反対している。そのことを改めて示したと言える。 沖縄県にある基地を存続させたがっているのは日本政府であり、アメリカ政府は執着していないという議論がある。悪いのは日本政府であり、アメリカ政府は悪くないと言いたいのだろうが、これには疑問がある。 ヨーロッパを見るとアメリカ軍/NATO軍はロシアとの国境近くまで勢力を拡大し、国境近くにミサイルを配備している。東アジアでは韓国にTHAAD(終末高高度地域防衛)を強引に持ち込み、日本はイージス・アショアが配備される。中国やロシアとの国境近くにミサイルを配備しているのだ。その理由は先制核攻撃の態勢を整えたいからにほかならならず、沖縄の基地を放棄できないのもそのためだ。 アメリカやイギリスの巨大資本は第2次世界大戦の前からソ連が的だった。ウォール街はドイツと深く結びついていた。そのドイツが軍の主力にソ連を攻撃させるが、スターリングラードで反撃にあって壊滅、1943年1月に降伏する。これでドイツの敗北が決定的になった。 そこで慌てたのがイギリスとアメリカの支配層。両国はソ連との新たな戦争について協議している。イギリスではウィンストン・チャーチル首相が中心になったが、アメリカではアレン・ダレスたちOSSの幹部がフランクリン・ルーズベルト大統領には無断でドイツ側と接触している。 そして1945年5月、ドイツが降伏した直後にチャーチル首相はJPS(合同作戦本部)に対してソ連へ軍事侵攻するための作戦を立案するように命令、5月22日に提出されたのがアンシンカブル作戦。7月1日に米英軍数十師団とドイツの10師団が「第3次世界大戦」を始める想定になっていた。これはイギリスの参謀本部が反対して実現していない。7月5日には総選挙があり、保守党は敗北してチャーチルは辞職した。下野したチャーチルは大戦後に冷戦の開始を宣言、ソ連に対する核攻撃をアメリカのハリー・トルーマン大統領に要請したことは本ブログでも書いてきた。 核兵器を手にしたアメリカはソ連に対する先制核攻撃を目論む。例えば1949年に出されたJCS(統合参謀本部)の研究報告では、ソ連の70都市へ133発の原爆を落とすという内容が盛り込まれていた。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) 1954年になると、SAC(戦略空軍総司令部)は600から750発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すという計画を作成した。この年の終わりにはヨーロッパへ核兵器を配備している。(前掲書) 実際にソ連を先制核攻撃するための準備が始まったのは1957年だと言われている。この年の初頭に作成されたドロップショット作戦では、300発の核爆弾をソ連の100都市で使うというもので、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていたという。(前掲書) 核爆弾の運搬手段は戦略爆撃機かICBM(大陸間弾道ミサイル)。1959年の時点でソ連は事実上、ICBMを保有していなかった。ソ連がICBMの生産でアメリカに追いつく前なら核戦争でアメリカは圧勝できるとライマン・レムニッツァーJCS議長やカーティス・ルメイ空軍参謀長を含む好戦派は考えた。テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、1963年後半に核攻撃するというスケジュールを決めたとされている。その作戦を実行する上で最大の障害だったジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月22日に暗殺された。 ケネディ大統領は1962年にレムニッツァーの議長再任を拒否するが、イギリス軍の幹部によってNATO軍の司令官に就任する。大戦中、このイギリス軍幹部の紹介でレムニッツァーはアレン・ダレスと知り合い、ナチス幹部を救出するサンライズ作戦に参加した。これはルーズベルト大統領に知らせず実行されている。 1950年代に沖縄では「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収され、軍事基地化が推し進められていく。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵が動員された暴力的な土地接収で、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になった。これがアメリカの先制核攻撃計画と密接に結びついていることは言うまでもないだろう。そうした土地の接収が行われていた1955年から57年にかけて琉球民政長官を務めた人物がライマン・レムニッツァーだ。 この当時からアメリカの基本戦略に変化はない。ロシアとの戦争に突き進む姿勢を見せていたヒラリー・クリントンを批判、ロシアとの関係修復を主張して大統領になったドナルド・トランプだが、有力メディア、議会、司法省/FBIからの執拗な攻撃を受け、今ではロシアや中国との軍事的な緊張を高める政策を打ち出している。それがアメリカ支配層の意思であり、日本の政治家、官僚、マスコミはその意思に従う。改憲や緊急事態条項はそうした背景から出てきている。
2018.10.04
安倍晋三首相は10月2日、「第4次安倍改造内閣」を発足させた。2006年9月から07年9月まで、そして2012年12月から現在に至るまで安倍は首相の座にある。これほど長期に渡って安倍内閣が続いている最大の理由は日本を支配している勢力、つまりアメリカの支配層から認められているからにほかならないが、野党が腑抜けだという側面もある。このまま進めばアメリカ帝国と一緒に日本も沈没するだろう。 1991年12月にソ連が消滅すると、アメリカの支配層は自国が唯一の超大国になったと認識、自分たちが世界は覇者になったと信じ、自分たちに逆らう存在はなくなり、国連を気にすることなく単独行動に出られると考えた。そして1992年2月にウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成されたことは本ブログで繰り返し書いてきた。国防総省のDPG草案として作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンはネオコンの世界制覇プランだ。 その当時の首相は宮沢喜一。娘婿のクリストファー・ラフルアは駐日代理大使を経て2004年から07年にかけてマレーシア駐在大使を務め、08年から11年にかけてはJPモルガン・ジャパンの副会長だった。 アメリカの支配層は日本もウォルフォウィッツ・ドクトリンに従わせようとしたはずだが、1993年8月にスタートした細川護熙内閣は国連中心主義を維持しようとし、94年4月に潰れる。そして羽田孜を経て1994年6月に登場したのが村山富市内閣。この政権は1996年1月まで続くが、この間、1995年2月にジョセフ・ナイ国防次官補がドクトリンに基づく「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を公表、その半年後には星条旗紙が日本航空123便の墜落に関する記事を掲載する。この記事では自衛隊の重大な責任が示唆されていた。また、1995年3月には地下鉄サリン事件が引き起こされ、警察庁長官だった国松孝次が狙撃されている。その後、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれていった。 ジョージ・W・ブッシュ政権が始まった2001年には小泉純一郎が首相となり、新自由主義的な政策を打ち出す。ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのはこの年の9月11日のことだ。 この攻撃で人びとが茫然自失になる中、ブッシュ・ジュニア政権は攻撃と無関係なアフガニスタン、そしてイラクを先制攻撃、その一方でアメリカ国内のファシズム化が推進された。 2008年8月にジョージア軍は南オセチアを奇襲攻撃したが、ロシア軍の反撃で惨敗する。コンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問した1カ月後の出来事だった。イスラエルは2001年からジョージア軍へ無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどを提供、将兵の訓練を続けていた。2008年の1月から4月にかけてはアメリカの傭兵会社もジョージアに対する訓練を行っている。 当時のジョージア政府はイスラエルの強い影響下にあり、少なくともふたりの閣僚は流暢なヘブライ語を話せた。そのひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当しているテムル・ヤコバシビリだ。 奇襲攻撃の2年前、フォーリン・アフェアーズ誌に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文は、アメリカ軍の先制第1撃でロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いと主張している。アメリカはロシアと中国との核戦争で一方的に勝てると見通しているのだ。ジョージアの奇襲攻撃は圧勝できると考えて実行された可能性が高い。 しかし、その見通しは間違っていた。そして2009年9月に鳩山由紀夫内閣が成立する。その鳩山と近かった小沢一郎に対する攻撃が始まったのは2006年のこと。週刊現代の6月3日号に「小沢一郎の“隠し資産6億円超”を暴く」という記事が掲載されたのだ。 2009年11月には「市民団体」が陸山会の04年における土地購入で政治収支報告書に虚偽記載しているとして小沢の秘書3名が告発され、翌年の1月に秘書は逮捕されている。また「別の市民団体」が小沢本人を政治資金規正法違反容疑で告発し、2月には秘書3人が起訴された。マスコミと検察がタッグを組み、小沢を潰しにかかったと言える。 結局、検察が「事実に反する内容の捜査報告書を作成」するなど不適切な取り調べがあったことが判明、この告発は事実上の冤罪だということが明確になったが、小沢潰しは成功した。鳩山は2010年6月に総理大臣の座から引きずり下ろされている。マスコミも検察も総理大臣の意向を忖度などしていない。彼らは本当の支配者の意向に従っているだけだ。 鳩山の後任になった菅直人は国民の声を無視、消費税の増税と法人税の減税という巨大企業を優遇する新自由主義的政策を打ち出した。当然、庶民からの支持を失う。首相就任の3カ月後には海上保安庁が尖閣諸島の付近で操業していた中国の漁船を「日中漁業協定」を無視する形で取り締まり、日本と中国との友好関係を破壊する動きが本格化する。その協定を無視した取り締まりの責任者が前原誠司だ。次の野田佳彦政権も民意を無視する政策を推進、第2次安倍内閣につながった。 安倍政権を再登場させる道を整備したのは菅直人と野田佳彦、つまり民主党政権だ。安倍政権を生きながらえさせているのは民主党の残党をはじめとする野党だと言える。失った信頼を簡単に取り戻すことはできない。いや、取り戻すつもりがないのかもしれない。アメリカの支配層は次の操り人形を用意、宣伝が始まっている。
2018.10.03
すでに戦略的な同盟関係に入っているロシアと中国は貿易の決済を両国の通貨で行うようになっているが、それをさらに推し進めようとしているようだ。アメリカが経済戦争で優位な立場にあるのはドルが基軸通貨として認められ、世界各国に使われているからにほかならない。アメリカの経済的な攻撃から自国を守るためにはドル体制から離脱するしかないということである。 両国の戦略を象徴するような出来事が東アジアで展開されている。中国は一帯一路、つあり陸の入りクロードと海のシルクロードでユーラシア大陸の東端(東アジア)と西端(ヨーロッパ)を結びつけようとしている。 一方、ロシアでは昔からシベリア横断鉄道で大陸の西と東をつなぐというプロジェクトが進められてきた。この鉄道計画はロシアから天然ガスや石油を輸送するパイプラインの建設計画、そして中国の一帯一路とも結ばれることになるだろう。 ロシアは鉄道やパイプラインを延長、朝鮮半島を南下させようとしている。日本を含む東アジアから東南アジアにかけての国々との交易を考えているはず。東アジアでの経済活動が活発になれば、沖縄の重要度は高まる。ハブ基地として最適な場所にあるからだ。問題は沖縄を侵食しているアメリカ軍の基地だ。 ロシアのドミトリ・メドベージェフ首相は2011年夏にシベリアで金正日と会談、朝鮮がロシアに負っている債務の90%(約100億ドル)を帳消しにし、10億ドルの投資をすることで合意しているが、その理由も東アジアでの経済活動を活発化させることにあった。その合意から間もない2011年12月に金正日は急死してしまうが、計画が消えたわけではなかった。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、金正日は暗殺されたのではないかとする説が存在する。2011年12月17日に列車で移動中、車内で急性心筋梗塞を起こして死亡したと朝鮮の国営メディアは19日に伝えているが、韓国の情報機関であるNIS(国家情報院)の元世勲院長(2009年~13年)は暗殺されたという見方をしているのだ。 金正日は絶対的な独裁者でなかった可能性があり、その前にも暗殺が試みられた疑いもある。例えば、2004年4月に金総書記は危うく龍川(リョンチョン)の大爆発に巻き込まれるところだったという。 爆発の2週間前にインターネットのイスラエル系サイトで北京訪問の際の金正日暗殺が話題になり、総書記を乗せた列車が龍川を通過した数時間後に爆発が起こったと言われている。貨車から漏れた硝酸アンモニウムに引火したことが原因だとされているが、そのタイミングから暗殺未遂の疑いがあり、イスラエルが何らかの形で関与している可能性があるとも言われた。 アメリカや日本は中国が石油などを運ぶ「海のシルクロード」をコントロールするために東シナ海や南シナ海で軍事的な圧力を強めているが、日本経済を考えると、こうした行為は好ましくない。ドナルド・トランプ政権はイランの石油輸出を不可能にするため、各国に圧力を加えてきた。その中にはEUや日本も含まれているが、イランからの石油輸入を止めることは難しい。原発を再稼働させても根本的な解決にはならない。 こうした圧力の結果、EUではイランとの石油取引をドル以外の通貨で決済しようという動きもある。「アメリカ帝国」を支えているドル体制の中心には石油取引をドル決済に限るという1970年代から続く仕組みが存在する。ペトロダラーだが、トランプ政権の政策はこの仕組みの崩壊を促進させることになりかねない。 日本国内にはアメリカ支配層の手先になることで社会的な地位と収入を手にしてきた人びとがいる。そうした人びと、つまりアメリカの傀儡の利害と日本全体の利害との対立が激しくなっている。日本企業にとっても傀儡の政策は耐えられない領域へ入りつつあるはずだ。
2018.10.02
ロシア政府はシリア軍に対してS-300防空システムをすでに供給し始めたとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は語った。またシリアのバシャール・アル・アサド大統領はすでに同システムを受け取ったとしている。ロシア政府は2013年にこの防空システムのシリアに対する提供を決定、契約したのだが、イスラエル政府がロシア側に抗議、取り引きは取りやめになっていた。 このほか、シリアの防空部隊司令部に自動化されたコントロール・システムを提供、さらに航空機の衛星ナビゲーション、搭載されたレーダー、通信システムをECM(電子対抗手段)で妨害する体制を整えるともロシア側は宣言している。 この決定を予想以上の対応だと考える人もいるが、遅きに失したという批判もある。イスラエルはすでにシリアを200回以上攻撃し、ロシアの電子情報支援機IL20が撃墜されて乗組員15名が殺された。アメリカ、イギリス、フランスなどのミサイル攻撃も難しかっただろう。ロシア政府の慎重な姿勢がこうした国々をつけあがらせたと考える人がいるのだ。 S-300は1978年から実戦配備されたシステムで、1967年から使われ始めたS-200に比べると、イスラエル軍が嫌がるほど性能が良くなっている。2007年から配備されているS-400はアメリカで開発された「ステルス戦闘機」のF-35を撃墜できると言われている。 この最新戦闘機のプログラム・コストは1兆5000億ドル以上と言われ、高額兵器であることは間違いない。ところが、2015年1月にカリフォルニア州のエドワード空軍基地近くで行われたF-16戦闘機との模擬空中戦で完敗、「空飛ぶダンプカー」と揶揄されている。 唯一のセールスポイントはステルス性能なのだが、それも言われるほどではないようで、S-400なら撃ち落とせると評価されている。現在、S-400に興味を持っている国には中国やイランだけでなく、インド、トルコ、さらにサウジアラビア、アルメニア、ベラルーシ、エジプト、カザフスタン、ベトナムなどがある。 2017年10月、イスラエル軍はロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣の同国訪問に合わせてシリアを攻撃、その際にイスラエル軍のF-35が「コウノトリと衝突して飛行できない状態になった」と発表された。その状況を示す写真などが明らかにされていないこともあり、シリア政府軍が発射したS-200で損傷を受けたのではないかと推測されている。 IL-20が撃墜された9月17日の攻撃でイスラエル軍はF-35ではなくF-16を使った。もし、F-35を投入してS-300に撃墜された場合、F-35が高額欠陥戦闘機だということを世界へ知らしめることになる。その戦闘機を日本は5機注文、さらに42機を購入する計画だという。空中戦がなければ問題にならないだろうが、それは誰も保証することができない。
2018.10.01
ワシントン・イグザミナー紙によると、アメリカのライアン・ジンケ内務長官はロシアのエネルギー資源輸送を軍事的に妨害する可能性があると語った。この発言に対し、ロシア上院の情報政策委員会に所属するアレクセイ・プシュコフはロシアに対するアメリカ海軍の海上封鎖は戦争行為に等しいと非難したが、当然だろう。 海上封鎖はアメリカやイギリスのようなアングロ・サクソン系国の常套手段で、ハルフォード・マッキンダーが1904年に発表したハートランド理論の戦略も海上封鎖。その理論でもターゲットはユーラシア大陸の中心にある帝政ロシアだった。その戦略に日本は明治維新以来、協力している。これは本ブログで繰り返し書いてきたことだ。 ドナルド・トランプ政権は中間選挙に合わせ、イラン体制を倒す目的で石油の輸出を止めようとしたが、イランの石油の約6割を買っているという中国とインドがアメリカの命令に従わず、失敗に終わりそうだ。ロシアもイランを支えている。口での恫喝で各国が動かなくなってきたことから実力行使を匂わせているのかもしれない。石油取引だけでなくS-300を含む兵器の輸送も止めたがっているようだが、これはイスラエルへの配慮だろう。 日本やアメリカが言う「シーレーン防衛」とは「シーレーン支配」であり、東シナ海や南シナ海でアメリカ軍や自衛隊が行う軍事的な恣意行動もそうした作戦の一環。中国が推進する一帯一路のうち海のシルクロードの出発点を押さえようとしている。この海域にはイギリス海軍も現れている。 アメリカは支配力を失いつつあり、軍事力を行使せざるを得ない状況になりつつある。アメリカの傭兵と化している自衛隊も同じ立場だ。アメリカ海軍は太平洋軍をインド・太平洋軍へ名称変更、守備範囲も太平洋だけでなくインド洋を含むようになった。自衛隊の守備範囲も広がったということだが、とりあえずは東シナ海や南シナ海が中心になるのだろう。沖縄は日米連合軍にとって重要な意味を持ってくる。今後、沖縄でさまざまなことが仕掛けられる可能性がある。 実際に戦争が始まるとアメリカ政府は考えていないだろうが、万一の場合、航空母艦を中心とするアメリカの艦隊は短時間で壊滅すると見られている。ロシアの巡航ミサイルの餌食になってしまうからだ。すでに航空母艦が主役の時代は終わった。21世紀の海戦は潜水艦が中心になると言われている。空母が威力を発揮するのは弱小国を威圧するときくらいだろう。
2018.10.01
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