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シリアのドゥーマで化学兵器が使われた痕跡はなく、犠牲者もいないとOPCW(化学兵器禁止機関)のチームも結論づけた。4月7日にシリア政府軍がドゥーマで化学兵器を使ったというアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にある「白いヘルメット」とアル・カイダ系武装集団の「ジャイシュ・アル・イスラム」の主張はOPCWにも否定されたわけだ。この主張を「信じた」のはアメリカ、イギリス、フランスの3カ国で、OPCWが現地を調査する直前の4月14日にシリアをミサイル攻撃している。 ジャイシュ・アル・イスラムを指揮していたのはイギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーで、MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも報告されているが、これが事実なら化学兵器による攻撃を宣伝した勢力とミサイル攻撃した勢力は同じだということになる。 米英仏が攻撃する直前、国連の専門機関であるWHO(世界保健機関)は化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出したが、その情報源はWHOがパートナーと呼ぶ団体。その中に含まれているMSFは「白いヘルメット」を訓練している。独自の調査をしたわけでなく、アル・カイダ系勢力の宣伝をそのまま主張しただけだ。 今回、OPCWは「白いヘルメット」や「ジャイシュ・アル・イスラム」の公開した映像に出て来た住民17名に証言させているが、いずれも化学兵器による攻撃はなかったと語っている。 西側の有力メディアは基本的に自らは取材せず、「白いヘルメット」や「ジャイシュ・アル・イスラム」の話を垂れ流しているだけ。自分たちの取材に基づいて伝えると嘘の責任が問われてしまうので、「ロンダリング」しているつもりなのだろう。 しかし、今回は西側のメディアで現地を取材した記者がいる。そのひとりがイギリスで発行されているインディペンデント紙のロバート・フィスク特派員。攻撃があったとされる地域へ入って治療に当たった医師らに取材、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。アメリカのケーブル・テレビ局、OANの記者も同じ内容の報告をしている。ロシア系のRTは西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材、やはり化学兵器が使用されたという話を否定している。 米英仏が攻撃した後、OPCWのチームはドゥーマへ入ろうとしたのだが、国連から治安状況が良くないと言われ、予定が遅れた。実際はそうした状況でなく、その後、調査は行われた。 シリア侵略は2011年3月に始まった。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を妄想していたトルコ、天然ガスのパイプライン建設でシリア政府と対立していたカタールが侵略勢力の中心で、その手先として送り込まれたのがアル・カイダ系武装勢力だった。 ロビン・クック元英外相も指摘しているように、CIAが訓練したムジャヒディンの登録リストがアル・カイダで、その中からピックアップされた戦闘員を中心として編成されたのがアル・カイダ系武装勢力。その主力はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団が主力だ。ちなみに、アラビア語でアル・カイダとはベースを意味し、データベースの訳としても使われる。
2018.04.30
韓国の文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の会談は東アジアの平和にとって良いことだと言えるが、これで平和が約束されたわけではない。似たような光景を以前も見たことがあるが、その後の展開は芳しくなかった。東アジアの軍事的な緊張を高め、あわよくば中国、そしてロシアを制圧しようと考えている勢力がアメリカ支配層には存在するからだ。 文大統領と金委員長は朝鮮半島の「完全な非核化」を目指すというが、これはアメリカ軍を巻き込むことになる。韓国にミサイルを配備、戦争の準備を進めてきたアメリカ軍が非核化に協力するだろうか? もし朝鮮半島からアメリカ軍が核兵器を撤去することを決めたなら、日本へ持ち込むという事態が想定できる。第7艦隊がいなくなるとは思えない。核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が東アジアから消えるということもないだろう。日本が核兵器を開発していることはアメリカの情報機関内の常識。いや、日本以外の常識だろう。「完全な非核化」を実現しようとするなら、日本も巻き込まれる。 ところで、アメリカではすでにドナルド・トランプ大統領と金委員長との会談が行われないのではという憶測が流れ始めている。もし会談が実施されても交渉が失敗に終わった場合、一気に軍事的な緊張が高まる可能性がある。交渉を失敗させようとはかりごとをめぐらす人もいるだろう。 そうしたはかりごとに加わりそうない勢力の中に日本の支配階級も含まれる。イギリス(後にアメリカ)による東アジア侵略の手先になることで日本の権力者になった彼らは今も日本を支配、そうした勢力にとって東アジアの平和は自分たちの地位と富を危うくする望ましくない状況だ。 そうした日本人を操るアメリカの勢力も東アジアの平和は望んでいない。平和は中国やロシアを中心とする経済圏を生み出すことになり、アメリカ軍が東アジアに駐留する意味はなくなる。勿論、ソ連消滅で存在意義がなくなったはずのNATOは今でも存在しているので、居座ることもできるが、ヨーロッパよりは難しいだろう。 そうしたアメリカの勢力には戦争ビジネス、軍、情報機関が含まれるが、こうした集合体へ資金を供給してカネを儲けているのは金融資本。本ブログでも指摘したことがあるが、アメリカやイギリスの情報機関、つまりCIAやMI6を創設する際に中心的な役割を果たしたのは金融資本だ。 その金融資本は現在、大きな問題を抱えている。これも本ブログで繰り返し書いてきたが、経済活動ではなく通貨を発行することで富を築いているのがアメリカの金融資本。そうした金融資産を背景とする彼らの権力は幻影だとも言える。 言うまでもなく、通貨を発行するだけならハイパーインフレになってしまうが、アメリカはそれを回収する仕組みを作り上げた。そのひとつが産油国にドルを集めての回収(ペトロダラー)であり、もうひとつが規制緩和で肥大化した投機市場へのドル吸い上げ。こうしたことができるのはドルが基軸通貨だからだ。 ドルが基軸通貨の地位から陥落、石油や天然ガスの取り引きにドルが使われなくなるとアメリカの支配システムは揺らぐ。投機市場が収縮を始めたなら、システムは短時間に崩壊するだろう。 現在、ドル体制を揺るがしているのは中国とロシア。シリアでの戦争を見てアメリカに対する恐怖は世界的に薄くなり、中国とロシアとの存在感が強まっている。この両国を屈服させるか破壊しようと必死なのがアメリカの好戦派だ。こうした勢力が朝鮮半島を含む東アジアの平和実現を妨害することになる。
2018.04.29
ロシア駐在シリア大使のリヤド・ハッダッドはロシアの防空システムS-300がすでに先月、シリアへ運び込まれていると発言したという。シリアへロシアがS-300を供給するという報道があった後、イスラエルのアビグドル・リーベルマン国防大臣はこの防空システムがすでにシリアへ持ち込まれていることを知っているとしたうえで、シリア政府軍がそのシステムをイスラエル空軍に対して使ったなら報復すると発言した。シリアとイスラエルはS-300がシリア政府軍の手にあるという点で一致していることになるが、リーベルマン発言の翌日、4月25日にロシア国防省はシリアへS-300を近いうちに供給すると述べている。 リーベルマンは軍事強硬派として知られているが、ソ連(現在のモルドバ)出身で1978年にイスラエルへ移住したということもあり、ロシアとパイプを持っている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相がリーベルマンを国防相に据えた理由は、ロシアを懐柔してシリアやイランの現体制を倒す邪魔をさせないようにすることにあったとも見られていた。 リーベルマンはソ連時代にイスラエルへ移住したが、ウラジミル・プーチンが実権を握った後にロシアから移り住んだ富豪、いわゆるオリガルヒの場合はプーチン体制と友好的とは言い難い。ソ連消滅後、ロシアは西側の傀儡だったボリス・エリツィンが大統領となり、西側巨大資本の略奪を手伝うことでエリツィン周辺は巨万の富を手にした。これがオリガルヒだ。 エリツィン時代、オリガルヒはロシア政府を上回る権力を持ち、超法規的な手段でロシア国民の富を奪っていたのだが、プーチンが実権を握るとオリガルヒに対してクレムリンの命令に従うように求める。それを拒んだ富豪はロンドンやイスラエルへ逃げ込み、国内でプーチンと戦った一派は摘発されている。 現在、ロシア国内でカネ儲けに勤しんでいるオリガルヒは一応、ロシア政府には従っている。そうしたロシア政府に恭順の意を表しているオリガルヒに対して政府に反旗を翻すよう仕向けることが西側のロシアに対する「制裁」の目的だとも言われている。 ロシアの経済/金融部門は今でもシティやウォール街と関係が深く、ロシアの癌だと言う人もいるほど。西側はその辺をついているつもりなのだろうが、「制裁」はロシアの富豪に西側との関係断絶を強いることになりかねない。もしロシア政府に反旗を翻したなら、それを口実にして潰されてしまうだろう。
2018.04.29
韓国の文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は4月27日に板門店で会談した。アメリカ政府は談話の中で、この会談が「朝鮮半島全体の将来の平和と繁栄に向けて前進することを希望している」としているが、南北対話の流れができるまでアメリカ政府は朝鮮半島での軍事的な緊張を高める政策を推進していた。今でも東アジアの軍事的な緊張を高めようと画策している。 この朝鮮政策は第2次世界大戦後、アメリカが中国を属国化することに失敗して以来続くもの。バラク・オバマ政権でNSC(国家安全保障会議)の安保副補佐官だったベン・ローズによると、大統領は数年にわたり、日韓両国の首脳との会うたびに慰安婦の問題を採りあげ、両国の対立を解消させようとしていたというが、これも軍事的な圧力を北へかけるため。アメリカの手下である日本と韓国が対立していては困るということだ。そして合意が成立、その翌年に韓国大統領だった朴槿恵のスキャンダルが発覚、2017年に失脚している。 それに対し、朝鮮半島で軍事的な緊張が高める政策に反対する文在寅大統領は2017年12月に慰安婦をめぐる問題の合意に疑問があることを明らかにしてアメリカが戦争をしにくい環境を作った。今年(2018年)1月4日に文大統領がドナルド・トランプ米大統領と電話で会談してオリンピック期間中に米韓合同軍事演習を行わないことを認めさせ、平昌オリンピックでは金與正(金正恩の妹)との友好的な関係を演出している。 オリンピックは2月9日から25日にかけて開催されたが、その開会式に出席するため、マイク・ペンス米副大統領は韓国を訪問した。副大統領は韓国へ乗り込む前、2月7日に日本へ立ち寄り、安倍晋三首相と会っている。その直後にアメリカ政府は朝鮮に対する非情で攻撃的な経済制裁を近いうちに発表すると語った。 ところが、同じ日にジェームズ・マティス国防長官は朝鮮半島の問題に関し、外交的に解決する意向をホワイトハウスでの記者会見で示している。ペンスは帰国してから朝鮮側が「話したいと言うなら話す」と軌道修正した。この時、アメリカ政府内で朝鮮政策をめぐる対立があったのか、方針の転換があったのだろう。 その後、金正恩は3月26日に特別列車で北京へ入り、釣魚台国賓館で中国の習近平国家主席と会談、27日に帰国したようだ。金正恩は4月下旬に韓国の文在寅大統領と、また5月下旬にはアメリカのドナルド・トランプ大統領と会談する予定で、その準備という見方も出ていたが、これは正しかった。 本ブログでは何度も指摘してきたが、朝鮮はアメリカの好戦派にとって都合の良い言動を続けてきた。それがなければ日本や韓国をアメリカの戦争マシーンに組み込む作業は難しかっただろう。朝鮮は1980年代、アメリカ政府のイランへの武器密輸工作に絡んでイスラエルとの関係が深まり、DIAによると、ソ連消滅後、つまり90年代にはアメリカの好戦派とつながる統一協会から多額の資金を受け取っていた。 文大統領と金委員長が会談する前日、アメリカ政府はマイク・ポンピオCIA長官が朝鮮で金委員長と握手する様子を撮影した写真を公表した。4月上旬に朝鮮を訪問した際のものだろう。朝鮮半島での出来事はアメリカが主導していると錯覚させようというハリウッド的な演出のつもりだろう。 東アジアを安定化させ、高速鉄道やエネルギー資源を運ぶパイプラインでロシア、中国、そして朝鮮半島をつなごうとしてきたのはロシアだ。韓国とロシアが経済的に関係を強めていたことは広く知られている。それを妨害するかのような行動、つまり「核兵器」やミサイルの実験を行ったのが朝鮮だった。自分たちの支配体制を維持するためにはアメリカと手を組むことが最善だと判断していた可能性がある。 その朝鮮がなぜ方針を変えたのか? 真相は不明だが、気になる出来事が昨年4月にあった。ドナルド・トランプ大統領は戦争を無謀だとしていた首席戦略官のステファン・バノンを4月5日にNSC(国家安全保障会議)から追い出し、その2日後にはホムスにあるアシュ・シャイラト空軍基地をトマホーク巡航ミサイル59機で攻撃したのだ。ミサイルは2隻の駆逐艦、ポーターとロスから発射されたが、ロシア側の主張によると、目標に到達したのは23機だけ。その後の報道をみると、ロシアの説明は基本的に正しかったようだ。 この攻撃は4月4日に有毒ガスが流出した責任はシリア政府にあるとして行われたのだが、その後の調査で偽旗作戦だった可能性が高まった。ジャーナリストのロバート・パリーによると、CIA長官だったマイク・ポンペオは分析部門の評価に基づき、4月6日、つまり巡航ミサイルによる攻撃の前日にバシャール・アル・アサド大統領は致死性毒ガスの放出に責任はなさそうだとドナルド・トランプ大統領に説明していたという。6月25日には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ話を記事にしている。 ひとつの空軍基地を攻撃するために59機もの巡航ミサイルを発射した理由はECM(電子対抗手段)対策だった可能性がある。2013年9月3日に地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されたが、このミサイルをロシアの早期警戒システムがすぐに探知、両方とも海中に落ちたとされている。イスラエルはミサイルの発射実験だと発表するが、事前の警告はなかった。実際に攻撃を始めたのだが、ECMで落とされたと見られている。その後、ロシア側はシリアに短距離防空システムのパーンツィリ-S1を配備したようだ。 2017年4月にアメリカ軍が行ったミサイル攻撃はロシア軍の防空システムの優秀さを証明した。そして今年4月14日にはアメリカ、イギリス、フランスの3カ国がシリアを攻撃した。3月1日にウラジミル・プーチン露大統領はロシア連邦議会でロシア軍の最新兵器を紹介し、アメリカに先制核攻撃を諦めるように警告していたが、これを無視しての攻撃だった。 アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)で、すべてが命中したとしている。 それに対し、ロシア国防省は攻撃された場所としてダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)を挙げている。約7割を撃墜したという。その後、撃墜されたミサイルの残骸とされるものが公表された。 ロシア軍の説明によると、迎撃に使われたのはパーンツィリ-S1(25機のうち23機に命中)、ブク・システム(29機のうち24機に命中)、オサ・システム(11機のうち5機に命中)、S-125(13機のうち5機に命中)、クバドラート(21機のうち11機に命中)、S-200(8機のうち0機に命中)だが、ロシア軍がECMを使った可能性がある。 ロシアや中国と組んで経済発展への道を歩み、アメリカから攻撃されても対抗できると朝鮮政府が判断しても不思議ではない。ロシア国防省は25日、シリアへS-300を近いうちに供給することを明らかにした。
2018.04.27
アメリカ中央軍のジョセフ・ボーテル司令官が4月23日にイスラエルを訪問、同国の治安機関や軍のトップに対し、アメリカ軍がすぐにシリアから撤退することはないと語ったと伝えられている。3月29日にドナルド・トランプ米大統領はシリア軍をシリアからすぐに撤退させると発言していた。 このトランプ発言の直後、ニッキー・ヘイリー国連大使は目的を達成するまで、つまりシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒して傀儡体制を樹立するまでアメリカ軍を撤退させないと主張、ワシントン・ポスト紙には、アメリカ軍のシリアからの撤退は同国の石油支配権をイランへ渡すことだと大統領を批判する記事が掲載された。 そうした中、アル・カイダ系のアル・ヌスラと連携しているジャイシュ・アル・イスラムやアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメットは4月7日、ドゥーマで政府軍が化学兵器で住民70名以上を殺したと宣伝しはじめた。例によって証拠は示されず、西側の政府や有力メディアは調査をすることなくシリア政府を批判するキャンペーンを開始する。4月8日にはホムスにあるT4空軍基地をイスラエル軍の2機のF-15がミサイルで攻撃した。 シリアやロシアの政府は化学兵器による攻撃はなかったと主張したが、国際連合の機関であるWHO(世界保健機関)は化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出した。この機関がパートナーと呼ぶ団体の情報に基づく判断のようだが、そのパートナーの中に含まれているMSFMSFは白いヘルメットを訓練している。 そして4月14日早朝、OPCW(化学兵器禁止機関)の調査チームが現地を訪れる直前にアメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアをミサイル攻撃したのだが、その後にドゥーマへ入って調査したOAN(アメリカのケーブル・テレビ局)の記者やイギリスのインディペンデント紙のロバート・フィスク特派員は化学兵器が使われた痕跡はないと報告している。 また、ロシア系のRTは西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材、その親子は化学兵器が使用されたという話を否定している。その後OPCWは現地へ入り、やはり化学兵器が使用された痕跡はないとしている。なお、OPCWの現地入りは国連の危険だとする主張で遅れたのだが、これをシリア政府やロシア政府の妨害だとする人もいたようだ。 化学兵器の使用を口実にしてアメリカ軍などが直接シリアを攻撃するというプランは遅くとも2012年8月にできあがっている。その年の12月になると、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると国務長官だったヒラリー・クリントンが主張する。そして翌年の1月、アメリカのオバマ政権はシリアでの化学兵器の使用を許可し、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させようとしているとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。 2012年8月にはアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)がシリアの反政府軍はサラフィ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、アル・カイダ系のAQI(アル・ヌスラを実態は同じだとDIAは報告している)であり、バラク・オバマ政権の反政府勢力への支援はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配圏を生み出すことになると報告している。これは2014年以降、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。その年にマイケル・フリンDIA局長は解任されている。 シリア占領をアメリカ軍からサウジアラビアなどアラブ各国の軍隊へ交代させようという話も伝えられているが、占領を続けることは難しいだろう。支配階級がアメリカに守られているアラブの国々がカネを出し、アメリカ、イギリス、フランスの軍隊が占領を続ける可能性もある。実際、油田地帯をはじめアメリカはシリア国内に軍事基地を建設、その数は20程度に達しているとも言われている。
2018.04.26
ロシアがシリアへS-300という防空システムを配備するという報道があった。情報源はロシア軍内部の人間だという。ただ、セルゲイ・ラブロフ露外相はまだ決定されていないとしている。このタイミングでアメリカ中央軍のジョセフ・ボーテル司令官が急遽、イスラエルを訪問した模様だ。 2016年7月にトルコでクーデター未遂があったが、その背後にはボーテル司令官やジョン・キャンベル元ISAF司令官がいたとトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は主張している。ボーテルとはそういう人物。実行グループの責任者として名指しされているのはアメリカに亡命中でCIAの保護下にあるフェトフッラー・ギュレン。 このクーデター未遂がトルコとアメリカとの関係を悪化させたことは間違いないが、アメリカ側がクーデターを企てたのはトルコがロシアに接近していたからだ。シリアに対する侵略戦争が長引いてトルコ経済が厳しい状況に陥ったこともあり、エルドアン大統領は2016年6月下旬にロシア軍機撃墜を謝罪、7月にはトルコ首相がシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆していた。武装蜂起があったのはその直後だ。このクーデター計画を失敗に終わらせた一因はロシアからの情報提供にあったと言われている。 ところで、S-300が実戦配備されたのは1970年代後半、つまりソ連時代。新型とは言い難いのだが、イスラエル政府は神経質になっている。すでにロシア軍の基地を守るためとしてシリアへは運び込まれているが、バシャール・アル・アサド政権がS-300を手にしたら、そのミサイルを破壊するとイスラエル側は宣言している。射程距離が150から200キロメートルのため、イスラエル軍機がレバノン上空からのシリア攻撃も制限されてしまうことが理由なのだろう。ボーテル司令官あたりから軍事的な支援の約束を取り付け、強気に出た可能性もある。 イスラエル軍による一方的な攻撃でシリア政府軍だけでなく、イラン人も犠牲になってきた。ロシア軍によると、4月8日にはホムスにあるT4空軍基地をイスラエル軍の2機のF-15がミサイルで攻撃している。これに対し、イラン側はイスラエルに「罰」を与えるとしている。その6日後にアメリカ、イギリス、フランスの3カ国の軍隊がシリアに対して100機以上の巡航ミサイルを発射した。 アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)。ミサイルは合計105機で、すべてが命中したとしている。 しかし、シリアの化学兵器はOPCWが立ち会って廃棄済み。シリア側の説明によると、破壊されたのは抗癌剤の製造工場だという。さして大きくない施設のこれだけ多くのミサイルを撃ち込むのも不自然。有毒ガスが漏れたという事実もなく、アメリカ側の説明には説得力がない。 ロシア国防省によると、攻撃されたのはダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)。そのほかターゲット不明の2機があるようだ。 また、迎撃に使われたのはパーンツィリ-S1が25機(23機命中)、ブク・システムが29機(24機命中)、オサ・システムが11機(5機命中)、S-125が13機(5機命中)、クバドラートが21機(11機命中)、S-200が8機(0機命中)など。このほかECM(電子対抗手段)が使われた可能性がある。 その後の情報から判断しても、ロシア軍の説明は基本的に正しいようだ。そのロシア軍はアメリカなどの横暴にうんざりしているが、ウラジミル・プーチン大統領は慎重な姿勢を崩していない。それを見て西側の好戦派は図に乗っている。今回、ロシア軍の内部から実際にリークがあったとするならば、プーチン大統領に対する不満が高まっているのかもしれない。
2018.04.25
エマニュエル・マクロン仏大統領は4月22日、アメリカのネットワーク局、FOXニュースのインタビューを受け、その中でダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)との戦争が終わっても、自分たちが「新しいシリア」を作る上で重要な役割を果たすと語った。シリア人の意思を尊重するというつもりはないと理解できる。 マクロンがシリアの今後を決める国としてまず挙げたのはアメリカ、フランス、その同盟国、中東の国々。2011年3月からシリアに対する侵略戦争を始めたのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、そしてトルコやカタールで、そのうちトルコとカタールは侵略勢力から離れている。侵略の継続だ。 この侵略勢力は侵略のためにサラフィ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、つまりジハード傭兵で武装グループを編成して送り込んだ。このグループの幹部はCIAから軍事訓練を受けた戦闘員で、ロビン・クック元英外相が指摘したように、その戦闘員のコンピュータ・ファイルがアル・カイダ(データベース)である。この仕組みは1970年代の終盤、ジミー・カーター政権の大統領補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが考え出したもの。ダーイッシュはタグが違うだけで、基本構造は同じだ。 そのダーイッシュを打ち負かしたのは2015年9月30日にシリア政府の要請で軍事介入したロシア。その戦いにイランも協力している。マクロンはロシアやトルコを排除するとは言わなかったが、新しいシリアを築くためにシリア人自身とイラン人を排除している。勿論、本心ではロシアも排除したいのだろうが、とりあえず軍事的に太刀打ちできないので名前は入れておいたということだろう。 この帝国主義丸出しの発言をしたマクロンは2006年から09年まで社会党に所属、その間、08年にはロスチャイルド系の投資銀行で200万ユーロという報酬を得ていた人物。そこで、彼はロスチャイルドの使用人と見なされている。 その後、2012年から14年にかけてマクロンはフランソワ・オランド政権の大統領府副事務総長を務め、14年に経済産業デジタル大臣に就任すると巨大資本のカネ儲けを支援する新自由主義的な政策を推進、マクロンのボスだったオランドはアメリカ政府の侵略政策にも加わる。そしてオランドはフランス国民に憎悪されることになった。マクロンはそのオランドから離れ、「前進!」を結成したのは2016年4月のこと。フランス人はこの目眩ましに騙されたわけだ。 ところで、イタリアやフランスはコミュニストが強い国だった。そこでイタリアではNATOの秘密部隊であるグラディオが極左を装った爆弾攻撃を1960年代から80年代にかけて繰り返し、コミュニストを弱体化させて治安体制を強化することに成功している。そうした対コミュニスト対策でCIAはイタリアやフランスを含む国々で社会党や労働組合へ資金を投入してきたこともわかっている。
2018.04.24
サウジアラビアのリヤドにある王宮周辺で4月21日から激しい銃声が聞こえたとする情報が流れている。おもちゃのUAV(無人機)を警備兵が銃撃したとされているが、銃撃戦の可能性も否定できない。サルマン・ビン・アブドゥラジズ国王とモハメド・ビン・サルマン皇太子の親子は市内にあるアメリカ軍が守る空軍基地の掩蔽壕へ逃れたとも伝えられている。 リヤドでの銃声の真相は不明だが、昨年(2017年)10月7日にも似た出来事があった。ジッダにある宮殿近くで宮殿への侵入を図った人物と治安部隊との間で銃撃戦があったという未確認情報が流れたのだ。その前、6月に皇太子が国王の甥にあたるムハンマド・ビン・ナーイフから息子のビン・サルマンへ交代、ナーイフは自宅軟禁になったと言われている。8月にはビン・スルタン皇太子の暗殺未遂が伝えられた。 ジェッダの銃撃に関する未確認情報が流れて間もなく、ドナルド・トランプの義理の息子にあたるジャレッド・クシュナーがサウジアラビアを秘密裏に訪問、11月4日から大規模な粛清が始まった。ジャレットの父親はドナルド・トランプの同業者仲間というだけでなく、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しい。そのネタニヤフと緊密な関係にあるカジノ経営者のシェルドン・アデルソンは大統領選挙でトランプ陣営に対する最大の寄付者。ネタニヤフ首相の父親はウラジミール・ジャボチンスキーの秘書を務めていた人物だ。 昨年11月の粛清では、48時間に約1300名が逮捕され、その中にはサウジアラビア国家警備隊を率いていたムトイブ・ビン・アブドゥッラー、衛星放送のMBCを所有するワリード・ビン・イブラヒム・アル・イブラヒム、ロタナTVを含むエンターテイメント会社のロタナ・グループの大株主であるアル・ワリード・ビン・タラル王子、ネットワーク局ARTを創設したサレー・アブドゥッラー・カメル、そしてバンダル・ビン・スルタンも含まれていた。 バンダル・ビン・スルタンはジョージ・H・W・ブッシュと親しく、「バンダル・ブッシュ」という渾名がついている。情報機関のトップとしてアル・カイダ系武装集団を動かしていたことでも知られている。つまりビン・サルマン皇太子はサウジアラビアの情報機関を敵に回し、CIAを怒らせた。少なくとも一部の軍幹部も皇太子に反発したはず。つまり、クーデターがあっても不思議ではない。それに対し、イスラエルのネタニヤフ政権は粛清の支援者だ。 このネタニヤフ政権との緊密な関係をビン・サルマン皇太子は隠していない。パレスチナ人を邪魔者扱いしている。支配階級はともかく、イスラム世界の庶民を怒らせ、敵に回したということを意味し、何らかの原因でそうした怒りに火がつくと収拾がつかなくなるだろう。サウジアラビアの体制が揺らげばドル体制の崩壊は加速する。サウジアラビアで偽旗作戦を実行、それを口実にシリアやイランと本格的な戦争をはじめるというシナリオもありえるが、アメリカにとってリスクが大きすぎる気がする。
2018.04.24
アメリカをはじめとする西側で報道統制が強化されている。有力新聞やネットワーク局、いわゆる主流メディアに対するCIAの影響力は1970年代に明かされたが、その力はその後強まった。情報をコントロールするためにモッキンバードというプログラムが実行され、1980年代からはプロジェクト・デモクラシーと呼ばれる思想戦も始められた。勿論、本当に民主化しようというわけではない。破壊と殺戮に民主化というタグをつけようということだ。1990年代からアメリカは民主化や人道といったタグを盛んに使い始めている。プロジェクト・デモクラシーと並行する形でアメリカとイギリスはBAP(英米後継世代プロジェクト)も開始するが、そのメンバーには編集者や記者も参加、有力メディアは支配システムへの関与を深めた。自らが関わる工作は語らないため、この報道統制に関する話は広まらなかった。 そうした中、数少ない「まとも」なメディアと見なされていたのがニューヨーカー誌なのだが、今年(2018年)4月14日の記事ではジョシュア・ヤッファがアメリカなどのシリア侵略が正当化されている。本ブログでは再三再四書いているように、全く説得力のないアメリカの政府や有力メディアの主張、バシャール・アル・アサド政権が化学兵器を使ったという話を垂れ流しているのだ。 このシリア侵略に関係するシーモア・ハーシュの記事を同誌は2007年3月5日号に載せている。それによると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟はシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始したとしているのだ。これは事実だった。 2011年3月にアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、そしてトルコやカタールがジハード傭兵を使ってシリア侵略を開始、それを正当化するために「現地からの報告」を演出したが、これは嘘が発覚してしまう。西側の有力メディアが盛んに引用していたダニー・デイエムなる人物をはじめとするグループが「シリア政府軍の攻撃」を演出する様子を移した部分を含む映像が2012年3月1日にインターネット上に流出、嘘が発覚したのだ。 次に化学兵器の使用を西側は主張したが、これも嘘がすぐに発覚する。その主張が事実に反していることを示す報告や分析が次々に現れたのだ。そうしたひとつが2013年12月に発表されたハーシュの記事なのだが、それは彼が拠点にしていたニューヨーカー誌でなくLRB(ロンドン・レビュー・オブ・ブックス)だった。 2017年4月6日夜にアメリカ軍は駆逐艦のポーターとロスから巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、ロシア政府によると23機が目標に到達したという。この時の経験からロシア政府は短距離防空システムのパーンツィリ-S1を配備したと言われている。 ジャーナリストのロバート・パリーによると、4月6日早朝、ドナルド・トランプ大統領はマイク・ポンペオCIA長官から私的に化学兵器の使用を否定する説明を受けていたという。これはCIA内部の情報源からの情報。同じ内容の話をシーモア・ハーシュは6月25日にドイツのディ・ベルトで伝えている。 ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃を計画、その内容を事前にアメリカ側へ通告したとしている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。攻撃の前からアメリカ側はロシアから情報を知らされていたのだ。 ハーシュの記事が掲載されたメディアは執筆の拠点だったニューヨーカー(アメリカ)からLRB(イギリス)、そしてディ・ベルト(ドイツ)へと変わっている。これは情報統制が強化されていった道筋を示しているとも言える。 なお、アメリカ、イギリス、フランスはドゥーマで政府軍が化学兵器を使ったと主張してシリアをミサイル攻撃したが、インディペンデント紙のロバート・フィスク特派員やOAN(アメリカのケーブル・テレビ局)の記者が現地を取材、化学兵器が使用された痕跡がないと報告、ドイツのテレビ局ZDFの記者も同じように伝えている。 住民の圧倒的多数は化学兵器による攻撃はなかったとZDFもしているが、イスラム武装勢力(おそらく西側が情報源として信頼しているアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラム)は塩素で住民を殺し、その様子を撮影してシリア政府軍が化学兵器を使った証拠だとしていたと複数の証人が話しているとも報告している。西側でも事実を封印しきれなくなったようだ。
2018.04.23
トルコがアメリカの連邦銀行に預けている金塊を全て自国へ持ち帰るようだ。ここ数年で国外から220トンを、また昨年だけでアメリカから28.7トンを引き揚げ済み。アメリカとの関係が悪化しているトルコはロシア、イラン、シリア、イラクとの連携を強化しているが、軍事面だけでなく経済面にも及んでいる。 こうした傾向が現れた2012年、ニューヨークでタングステンで作られた偽物の金の延べ棒が流通していると問題になっていた。その前年の5月にIMF専務理事だったドミニク・ストロス-カーンがニューヨークから旅客機で離陸する寸前に逮捕されている。後任に選ばれた人物がクリスティーヌ・ラガルドだ。当初から逮捕の理由に疑問を持つ人がいたが、後に起訴は取り下げられている。冤罪だった可能性が高い。 逮捕される前の月にストロス-カーンはブルッキングス研究所で演説、その中で失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないとし、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと発言していた。進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語っただけでなく、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だとも発言している。新自由主義を批判するような人物だったので排除されたという見方もあるが、タイミング的に金の問題との関係を疑う人もいる。 この頃の出来事で忘れてならないのはリビアやシリアへの侵略戦争。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、さらにオスマン帝国の復活を夢想していたトルコ、天然ガスのパイプライン建設でシリア政府と対立していたカタールなどがジハード傭兵を使って侵略したのだ。主導していたのはフランスやイギリスだった。 1988年から93年にかけてフランスの外相を務めたロラン・デュマによると、2009年にイギリスでシリア政府の転覆工作に加わらないかと声をかけられたという。また2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に掲載されたシーモア・ハーシュのレポートによると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3カ国はシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラだをターゲットにした秘密工作を始めている。 リビアの場合も石油が関係しているが、それ以上の重要な要素が通貨。ムアンマル・アル・カダフィはアフリカを自立させるために金貨ディナールをアフリカの基軸通貨にしようとしていた。そのプランを実現するため、リビアの中央銀行は少なくとも143.8トンの金を国内で保管していた。フランスやイギリスは今でもアフリカに利権を持っている。つまりカダフィの計画は両国の支配層にとって脅威だった。 ここにきてトルコは金を自国へ運ぼうとしている。同時にドル離れの意思を明確にしてきた。リビアと違い、トルコはロシアという強力な国を後ろ盾にしようとしている。
2018.04.22
朝鮮の最高指導者である金正恩は核兵器やミサイルの実験を停止、主要実験場を閉鎖すると発表、ドナルド・トランプ米大統領は良いニュースだとツイッターに書き込んだ。中国やロシアが求めていたことなので両国は歓迎しているだろうが、アメリカの好戦派は苦々しく思っているだろう。東アジアの軍事的な緊張を高める上で朝鮮の好戦的な姿勢はどうしても必要だからだ。東シナ海や南シナ海でアメリカは挑発を強化、台湾をめぐる動きからも目を離せない。 1991年12月にソ連が消滅した際、ネオコンは東アジア重視を打ち出したが、それは次のターゲットとして中国に狙いを定めたことを意味していた。この日程はウラジミル・プーチンがロシアを再独立させたことで狂いが生じたのだが、その現実を直視せず、ロシアを再び属国にしようともがくうちにアメリカの支配システムは崩れ始めている。 そのシステム崩壊はシリアでの戦争によって加速しているようだ。本ブログでは何度も書いてきたが、シリア侵略は2011年3月に始まった。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の再建を妄想したトルコ、天然ガスのパイプライン建設を拒否されたカタールなどが黒幕。その手先として戦争を始めた戦闘員の中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団であり、アル・ヌスラ、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)などといったタグをつけたジハード戦闘集団を編成している。 この戦闘集団は2015年9月30日からシリア政府の要請で軍事介入したロシア軍によって壊滅寸前。新たな手先としてクルドを中心とする武装集団をアメリカは編成、イギリスやフランスと一緒に特殊部隊など自国の地上部隊を侵入させて20カ所ほど基地を建設したようだ。この戦闘態勢はトルコ軍の介入で揺らいでいる。 そうした中、アメリカ、イギリス、フランスの3カ国軍はOPCW(化学兵器禁止機関)のチームが東グータへ入る直前、4月14日にシリア領内をミサイル攻撃した。シリア政府軍が東グータで化学兵器を使ったという口実が使われたが、本ブログでも主張したように、この主張が事実に反していることは明確になっている。 アメリカ側の説明によると、発射された巡航ミサイルは紅海にいたモンテレイから30機、ラブーンから7機、ペルシャワンにいたヒギンズから23機、地中海にいたジョン・ウァーナーから6機、フランスのロングドークから3機、B-1B爆撃機から19機、イギリスのタイフーンやトルネード戦闘機から8機、フランスのラフェルやミラージュから9機で合計105機。ターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)で、全て命中したとしている。 さして大きくない建造物を破壊するためにこれだけ多くの巡航ミサイルを発射するのは非常識であり、攻撃後に化学兵器が周辺を汚染した話も伝わってこない。 ロシア国防省によると、攻撃されたにはダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)。 迎撃に使われたのはパーンツィリ-S1が25機(23機命中)、ブク・システムが29機(24機命中)、オサ・システムが11機(5機命中)、S-125が13機(5機命中)、クバドラートが21機(11機命中)、S-200が8機(0機命中)など。このほかECM(電子対抗手段)が使われた可能性がある。 今年2月に領空を侵犯したイスラエル軍のF-16をシリア軍は撃墜、4月9日にはイスラエル軍のF-15戦闘機がレバノン上空からシリアのT4空軍基地に向かってミサイル8機を発射、そのうち5機が撃墜されている。同じことが繰り返された。 当然、こうした出来事を朝鮮も見ていたはず。アメリカやイスラエルと手を組み、軍事的な緊張を高めるか、ロシアや中国の友好国になってビジネス展開してロシアの傘に入るかを今後、決めることになるだろう。韓国は中国やロシアとの関係を強めているので、朝鮮がこの3カ国と手を組むと東アジアの状況が大きく変化するが、それはアメリカにとって好ましくない。何らかのアクションを起こしそうだ。
2018.04.21
シリアのドゥーマで化学兵器が使われた痕跡はないとOAN(アメリカのケーブル・テレビ局)の記者が現地から報告している。やはり現地を取材したイギリスのインディペンデント紙の特派員も同じことを伝えている。ロシア系のRTは西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材、やはり化学兵器が使用されたという話を否定している。 こうした報告が伝えられた直後の4月17日、ドゥーマでは国連の治安チームが正体不明の武装グループから銃撃された模様で、OPCWのチームの調査は延期されたようだ。OPCWがシリア入りしたタイミングでシリアをミサイル攻撃して批判されたアメリカ、イギリス、フランスはこの銃撃戦の責任をシリア政府に押しつけている。調査を遅らせる、できたら中止させるため、米英仏が残置部隊を使ったと考えるのが自然だろう。(実際に銃撃戦があったのかどうかは明確でない。) シリア政府軍やジャーナリストの調査で化学兵器の使用が否定されているが、西側の政府や有力メディアはあくまでもシリア政府軍が化学兵器を使ったとする話を流し続けている。その情報源はアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にあることが判明している「白いヘルメット」とアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラム。こうした主張を裏付ける証拠は示されていない。こうした主張をする政府や有力メディアはカネがあり、ヒトもいるのに現地を調べようともしていない。調べたくないので怪しげなNGOを使うのだろう。こうした仕組みを作っておけば、最後は「騙された」で逃げることができる・・・とでも思っているのだろうか? イラクを先制攻撃、破壊と殺戮を繰り広げる前にアメリカやイギリスは大量破壊兵器があると宣伝していたが、これは後に嘘だということは明らかになっている。この時と手口は同じだ。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後、ジョージ・W・ブッシュ政権は詳しい調査をせずに「アル・カイダ」が実行したと断定したが、この時も証拠は示さなかった。アメリカ支配層の話を無条件に信じろというわけだ。こうしたアメリカ支配層の主張を「信じる」意味は本ブログで以前、書いたことがある。
2018.04.20
テレサ・メイ英首相の夫、フィリップが注目されている。アメリカのカリフォルニア州を拠点とする資産運用会社キャピタル・グループの重役なのだが、その会社は戦争ビジネスに多額の資金を投入している。ロッキード・マーチンの場合、発行済み株式の7.69%(70億ドル相当)を保有しているという。軍事的な緊張が高まり、戦争になれば大儲けだ。 そうした会社の重役を夫にするメイ首相は証拠を示すことなくロシアを悪魔化して描いて両国の関係を悪化させ、証拠を示すことなく化学兵器話を広めてシリアをミサイル攻撃した。シリア北部にはアメリカやフランスと同じように特殊部隊を潜入させている。こうした国々がシリアの油田地帯を支配しようと目論んでいることは公然の秘密だ。ちなみに、ヒラリー・クリントンは上院議員時代、ロッキード・マーチンの代理人と言われ、その後は巨大金融資本とも結びついた。 第43代アメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュも戦争を好んでいた。「経済を復活させる最善の方法は戦争」であり、「アメリカの経済成長は全て戦争によって促進された」とブッシュ・ジュニアが語っていたとアルゼンチンのネストル・キルシュネル元大統領は証言している。(Produced and directed by Oliver Stone, “South Of The Border”, September 2009) 兵器産業や傭兵会社を含む戦争ビジネス、不特定多数の人間を監視したり思想を調べる技術を開発している治安関連の業界、人々の嗜好、思想、行動をコントロールする広告産業だけでなく、こうした戦争が利益に直結している会社に投資している金融資本も戦争の原動力になっている。 現在、世界を戦乱へと導いているのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、そしてイギリスとフランスのサイクス・ピコ協定コンビだ。日本は三国同盟に従属している。 三国同盟が結成されたのは1970年代の終盤。ジミー・カーター政権の国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーがアフガニスタンで始めた秘密計画に基づいてCIAは1979年4月からイスラム武装勢力への支援プログラムを始める。その武装勢力の中心はサウジアラビアが送り込んだはサラフィー主義者(ワッハーブ主義者やタクフィール主義者と渾然一体)やムスリム同胞団。そうした戦闘員にCIAは爆弾製造や破壊工作の方法を教え、都市ゲリラ戦も訓練、武器/兵器を与えて侵略戦争を始めたのだ。現地の武装集団とも連携したが、その仲介役はパキスタンの情報機関ISIであり、イスラエルも協力している。そして1979年12月にソ連の機甲部隊がアフガニスタンへ軍事侵攻、ブレジンスキーの作戦は成功した。その後、三国同盟が編成した戦闘集団とソ連軍との戦いは続く。 サイクス・ピコ協定はオスマン帝国の領土分割などを決めた秘密協定で、イギリスのマーク・サイクスとフランスのフランソワ・ジョルジュ-ピコの協議で原案が作られたことからこう呼ばれている。後にロシアも参加するが、1917年11月のロシア十月革命で実権を握ったボルシェビキ政権によって協定の存在が暴露されている。ちなみに、ウラジミル・プーチン露大統領はイギリスやフランスを含む勢力の中東支配プランに加担していない。 この協定が結ばれた翌月、つまり1916年6月にイギリス外務省アラブ局はアラブ人を扇動して反乱を起こさせている。その部署にトーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」も所属していた。このロレンスが接触、支援したアラブ人がフセイン・イブン・アリ。この人物にイギリスのエジプト駐在弁務官だったヘンリー・マクマホンはアラブ人居住地の独立を支持すると約束している。フセイン・マクマホン協定だ。 イブン・アリは1916年にヒジャーズ王国を建国しているが、このアリはイブン・サウドに追い出されてしまう。そして1932年にサウジアラビアと呼ばれる国が登場した。サウジアラビア建国の背後ではイギリスが蠢いている。 その一方、1917年11月に「バルフォア宣言」、つまりイギリスのアーサー・バルフォア外相の名義でウォルター・ロスチャイルド宛てに送られた書簡が書かれた。その宣言の中で「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。 イギリス政府が言う「ユダヤ人の民族的郷土」は1948年に作られた。この年の4月4日にシオニストはダーレット作戦を発動、デイル・ヤシンという村をシオニストのテロ部隊であるイルグンとスターン・ギャングは襲い、住民を惨殺する。襲撃の直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると254名が殺され、そのうち145名が女性で35名は妊婦。イギリスの高等弁務官、アラン・カニンガムはパレスチナに駐留していたイギリス軍のゴードン・マクミラン司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否された。(Alan Hart, “Zionism Volume One”, World Focus Publishing, 2005) この虐殺を見て多くのアラブ系住民は避難を開始、約140万人いたパレスチナ人のうち5月だけで42万3000人がガザ地区やトランスヨルダン(現在のヨルダン)に移住した。その後の1年間で難民は71万から73万人に達したと見られている。シオニストが占領した地域にとどまったパレスチナ人は11万2000人にすぎないという。 イギリスの学者で地政学の父とも呼ばれているハルフォード・マッキンダーは1904年、世界制覇のためのプランを発表した。彼は世界支配を実現するためにカギはロシアにあると考える。広大な領土を有し、豊富な天然資源、多くの人口を抱えるからだ。この理論に基づいてズビグネフ・ブレジンスキーも戦略を立てている。 そのロシアを締め上げるため、マッキンダーはユーラシア大陸の沿岸地域に広大な弧を想定する。西ヨーロッパ、中東、インド、東南アジア、朝鮮半島をつなぐ三日月帯で、西の端にはイギリス、東の端には日本がある。この三日月帯の上にイギリスはサウジアラビアとイスラエルを作り上げた。
2018.04.19
ドゥーマで政府軍が化学兵器を使ったと主張している人々にとって不都合は記事がイギリスのインディペンデント紙に掲載された。同紙のロバート・フィスク特派員が攻撃があったとされる地域へ入って医師らを取材、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。 そうした患者を治療している最中、「白いヘルメット」のメンバーが「ガスだ」と叫んだことからパニックが始まったというが、ドゥーマで政府軍が化学兵器を使って住民70名以上を殺したと宣伝しているのはその「白いヘルメット」とアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラム。「白いヘルメット」がアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にあることを本ブログでも再三再四、指摘してきた。 ジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも言われている。 カネと人を抱えている西側の有力メディアに実態を調べる能力があることはフィスクの取材でも明らか。つまり、ほかの西側メディアは取材せずアル・カイダ系集団の宣伝をそのまま垂れ流してきたわけだ。西側の政府も同じこと。ドゥーマで化学兵器が使われたという話が嘘だということは西側の政府も有力メディアも知っていたのだろう。 メディアであろうと学者であろうと、体制の中でそれなりの地位と収入を確保して安穏な生活を送ろうとすれば、言動は体制が定めた枠組みの中に留めることは必要だ。その枠組みの中で「左翼キャラ」や「右翼キャラ」を演じていれば波風は立たない。そうした中から「戦争は良くないが、化学兵器を使うのも良くない」というような発言も出てくる。化学兵器話が嘘だと口にしたり書いたりすることは枠組みからはみ出す行為なのだろう。 アメリカやイギリスはロシアがロンドンで化学兵器を使ったと証拠を示すことなく主張している。そのターゲットだとされているのはGRU(ロシア軍の情報機関)の元大佐であるセルゲイ・スクリパリとその娘のユリア。ふたりは3月4日にソールズベリーで倒れているところを発見されたとされている。 セルゲイはスペインに赴任中の1995年にイギリスの情報機関MI6に雇われ、99年に退役するまでイギリスのスパイとして働いていた。そうした事実が退役後に発覚して2004年12月に逮捕され、06年には懲役13年が言い渡されているが、10年7月にスパイ交換で釈放された。それ以来、ソールズベリーで生活している。本名を名乗ってきた。娘のユリアは2014年にロシアへ戻っている。 ユリアは4月9日に退院、当局の「保護下」にあるというが、本人の口からの説明はなく、どういう状況にあるのかは不明。ロシアに住むユリアの従姉妹ビクトリアはふたりを心配してイギリスへ行こうとしたが、ビザが下りなかった。ユリアが自分の意思で身を隠しているのかどうかも不明だ。 イギリス政府はセルゲイとユリアに対して「ノビチョク(初心者)」という有毒物質が使われたと断定したが、元ウズベキスタン駐在イギリス大使のクレイグ・マリーによると、イギリス軍の化学兵器研究機関であるポート・ダウンの科学者は使われた神経ガスがロシアで製造されたものだと特定できなかったと語っている。後にこの情報の正しさが確認されている。 ノビチョクとは1971年から93年にかけてソ連/ロシアで開発されていた神経物質の総称で、ロシアでこの名称が使われることはないと指摘する人もいる。イギリス政府がこの名称を使った理由はロシアとの関係を強調したいからだった可能性が高い。使われた化学物質はA-234という神経物質だとも言われているが、旧ソ連では2017年までにこうした物質や製造設備は処分された。それに対し、スイスの研究所は無力化ガスの3-キヌクリジニルベンジラート(BZ)が使われたと報告している。この分析が正しければ、ユリアの回復を説明しやすい。 シリアの話にしろイギリスの話にしろ、アメリカ、イギリス、フランスは証拠を示すことなく化学兵器話を口実にして全面核戦争を招きかねない行動に出ている。勿論、化学兵器は原因でなく、ロシアを核戦争で脅すことが目的なのだろう。
2018.04.18
シリアに対する新たなミサイル攻撃が伝えられている。詳細は不明だが、ターゲットになったのはホムスのサヤラト軍事空港とダマスカスのアル・ドゥマイル軍事空港で、10基地近くが撃墜されたという。アメリカ国防総省は自国軍が該当地域で活動している事実はないとしている。イスラエル軍による攻撃ではないかと推測する人もいるが、イスラエルはコメントを拒否している。 アメリカ、イギリス、フランスの3カ国が4月14日に行ったミサイル攻撃では、ロシア国防省の発表通り、ダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍事空港(12機。全て撃墜)、バリー軍事空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍事空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍事空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍事空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)が狙われた。つまり、サヤラト軍用空港とアル・ドゥマイル軍用空港を攻撃したミサイルは全て撃墜されている。 政府軍の東グータ制圧が侵略勢力の予想を上回る速さで進み、化学兵器を使った偽旗作戦を実行する余裕がなく、単に宣伝するだけになった可能性が高い。偽旗作戦に続いて米英仏の空爆とアル・カイダ系武装集団ジャイシュ・アル・イスラムの攻撃が予定されていたのだろう。なお、ジャイシュ・アル・イスラムの幹部、モハマド・アルーシュは米英仏の攻撃に失望したと表明しているが、これはイスラエルも同じはずだ。
2018.04.17
ここにきて流れている情報によると、発射された巡航ミサイルは紅海にいたモンテレイから30機、ラブーンから7機、ペルシャ湾にいたヒギンズから23機、地中海にいたジョン・ウァーナーから6機、フランスのロングドークから3機、B-1B爆撃機から19機、イギリスのタイフーンやトルネード戦闘機から8機、フランスのラフェルやミラージュから9機で合計105機。 アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)。すべてが命中したとしているが、ロシア国防省は攻撃された場所としてダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)を挙げている。 アメリカが化学兵器の研究開発をしていた建物や貯蔵施設を破壊したとする発表が正しいなら、有毒ガスが周囲に漏れて悲惨な状況になっているはずだが、そうした状況にはないようだ。シリア側の説明では抗癌剤の製造工場が破壊されている。また発射に関する情報はともかく、ターゲットに撃ち込まれた巡航ミサイルの数が不自然だと感じる人は少なくない。 バルザー化学兵器研究開発センターの76機やヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設の22機は常識的にありえないだろう。そうしたことから、攻撃のターゲットはロシア国防省による発表が事実に近いと見られている。つまり、103機(あるいは105機)のうち71機をシリア政府軍が撃ち落とした可能性が高い。この推測が正しいなら、アメリカがロシアと戦争を始めた場合、アメリカは無惨なことになる。バシャール・アル・アサド大統領はロシアの議員に対し、ミサイル攻撃の後、NATOを恐れる必要がなくなったと語っている。 ただ、シリア軍のS-125とS-200だけで撃ち落としたとは考え難い。アメリカのが実施した過去の攻撃ではECM(電子対抗手段)や近距離防空システムのパーンツィリ-S1が効果的で、これらの配備が進んでいたと言われている。これらが使われた可能性は小さくない。そのほか攻撃に関する情報がロシア側から伝えられたと見る人もいる。
2018.04.17
シリアに対する4月14日のミサイル攻撃では艦船のほかB-1B爆撃機、F-15戦闘機、F-16戦闘機、トルネード戦闘機が使われ、迎撃したのはシリア軍のS-125とS-200で、ロシア軍は動いていないようだ。アメリカ側はすべて命中したと発表しているが、ロシア国防省によると103機のうち71機をシリア政府軍が撃ち落としたという。 今年2月に領空を侵犯したイスラエル軍のF-16をシリア軍は撃墜、4月9日にはイスラエル軍のF-15戦闘機がレバノン上空からシリアのT4空軍基地に向かってミサイル8機を発射、そのうち5機が撃墜されている。これからロシアがどう反応するか不明だが、今回程度の攻撃ならシリア軍だけで対応できることを示したとは言える。 今回の攻撃に対し、アル・カイダ系武装集団ジャイシュ・アル・イスラムの幹部、モハマド・アルーシュは失望したと表明している。バシャール・アル・アサド政権を倒さなかったことが不満らしいが、そうした攻撃を実行すれば確実にロシア軍が攻撃に参加した艦船や航空機を破壊、全面戦争へ突入する可能性が高く、そうした展開を望んでいるということになる。 このジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたともいう。 シリア政府軍が化学兵器を使用したと主張しているのはこのジェイシュ・アル・イスラムと白いヘルメット。この白いヘルメットがアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にあることは本ブログでも具体的に指摘してきた。WHOの情報源も同じだ。 赤新月社や2012年のはじめにシリアの住民虐殺現場を調査したカトリックの司教たちの証言を無視、侵略部隊に組み込まれている白いヘルメットを賞賛してきたのが西側の有力メディアやハリウッド。騙されているわけではないだろう。ボスが同じなのだ。 そのボスたちはシリアやイランに留まらず、ロシアや中国を軍事的に屈服させようとしている。ロシアのウラジミル・プーチン大統領は全面核戦争を回避しようと外交的な努力を続けてきたが、西側では無理だとする人がいる。権威に弱い庶民を操り、そうした方向へ世界を向かわせているのが西側の有力メディアやハリウッドだ。勿論、日本も例外ではない。
2018.04.16
OPCW(化学兵器禁止機関)のチームが東グータへ入る直前、4月14日未明にアメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアを巡航ミサイルで攻撃した。このチームが東グータへ入ることを拒否されたとアメリカ政府は弁明しているが、ロシア政府はそれを否定している。OPCWの調査を求めていたのはシリアやロシアであり、チームが現地へ入ることを拒否されたとする情報はない。 アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)。ミサイルは合計105機で、すべてが命中したとしている。 しかし、シリアの化学兵器はOPCWが立ち会って廃棄済み。シリア側の説明によると、破壊されたのは抗癌剤の製造工場だという。 ロシア国防省によると、攻撃されたのはダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)。そのほかターゲット不明の2機があるようだ。 軍事施設には短距離防空システムのパーンツィリ-S1が配備されていると言われ、その能力はすでに確認済みだが、バシャール・アル・アサド大統領はソ連が1970年代に製造された防衛システムを賞賛している。S-200かS-300を指しているのだろう。 化学兵器の使用を口実にしてシリアをアメリカ軍が直接攻撃するというプランが表面化したのは2012年8月のこと。バラク・オバマ大統領はNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言したのだ。 同じ月に、アメリカ軍の情報機関DIAはシリア情勢に関する報告書をホワイトハウスに提出、その中でバラク・オバマ政権に対して反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘、バラク・オバマ政権が宣伝していた「穏健派」は存在しないと書いている。 さらに、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるともDIAは警告していた。つまり、ダーイッシュの出現を見通していたのだ。本ブログでは何度も書いてきたが、この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将。ドナルド・トランプ政権の最初の国家安全保障補佐官だ。 この年の12月になると、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると国務長官だったヒラリー・クリントンは主張する。翌年の1月には、アメリカ政府がシリアでの化学兵器の使用を許可、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させるというプランの存在をイギリスのデイリー・メール紙が伝えている。 そして2013年3月、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)がラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はシリア政府を非難したが、この化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出する。 例えば、イスラエルのハーレツ紙は攻撃されたのがシリア政府軍の検問所だと指摘、死亡したのはシリア軍の兵士だということから反政府軍が使ったと推測している。5月には国連独立調査委員会メンバー国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。 昨年(2017年)4月にも化学兵器話が持ち上がった。4日に政府軍が化学兵器を使ったというのだが、コントラの麻薬取引を明るみに出したことで有名なジャーナリストのロバート・パリーによると、4月6日にマイク・ポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していたと彼の情報源は語ったという。6月25日にはソンミ事件を明らかにしたことで有名なジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ内容の話を記事にしている。 そして今回の化学兵器話とアメリカ、イギリス、フランスによるシリア攻撃。これはオバマ政権の時代に作られた軍事侵略のシナリオであり、イスラエルやサウジアラビアから実行を強く求められていた。
2018.04.15
アメリカ、イギリス、フランスの3カ国はシリアを4月14日早朝に攻撃した。詳細は不明だが、100機程度のミサイルを撃ち込み、そのうち15機程度は撃墜され、相当数はコースを外れたとも伝えられている。 これらの国々は2011年3月からシリアを侵略、バシャール・アル・アサド政権の打倒を目指してきたが、送り込んだジハード傭兵は敗走、新たな手先にしたクルドとの関係も微妙で、リビアと同じように直接的な軍事侵攻を目論んできた。 今回の攻撃は「化学兵器の使用」だが、そうした事実はなかった可能性が高い。過去、何度か同じ主張をしているが、いずれも嘘だったことが判明している。今回、米英仏の主張が正しいかどうかを検証するため、OPCW(化学兵器禁止機関)のチームがダマスカスへ入ったところだった。 この機関をアメリカは完全にコントロールできていないようで、調査が行われればアメリカ側の嘘が明らかになったと見られている。ロシア政府は化学兵器を使った偽旗作戦にイギリスの情報機関が関与していると主張していた。攻撃には証拠隠滅の狙いもあるだろう。 当初の見通しでは、伝えられている攻撃状況が正しいなら、ロシアからの反撃がないだろうという規模なのだが、それを否定するコメントがロシア側から出ていた。米英仏はグレーゾーンでの攻撃を実施したとも言える。イスラエルやサウジアラビアからの圧力もあり、アメリカの国務省やCIAは戦争を始めたがっていた。こうした勢力が国防総省を押し切った形だ。 アメリカ軍は好戦派をなだめるために攻撃してみせただけだという見方もあるが、今回、ロシアが自重すれば米英仏は増長して好戦的な政策をさらに進め、ロシアが反撃すれば大規模な戦争に発展する可能性がある。偽情報を掲げながらイラクを先制攻撃した際、統合参謀本部の抵抗で開戦が1年ほど延びたと言われている。アメリカで最も好戦的な勢力は「肘掛け椅子」に腰掛けながら机上で戦争を妄想している「文民」だ。
2018.04.14
TPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰するために再交渉するべきかどうかを検討するようにドナルド・トランプ米大統領は通商代表や国家経済会議議長に指示したという。この協定のほか、TTIP(環大西洋貿易投資協定)やTiSA(新サービス貿易協定)はアメリカを拠点とする巨大資本が世界を直接統治するための仕組みで、その核心はISDS(投資家対国家紛争解決)条項にある。 この条項によって巨大企業のカネ儲けを阻むような法律や規制は賠償の対象になり、健康、労働、環境など人びとの健康や生活を国が守ることは難しくなるのだが、それだけでなく、日本の法体系が破壊させられると警鐘を鳴らす法律家もいる。 TPPにアメリカが復帰すれば、その主導権を握るのはアメリカ。環太平洋ではアメリカのほかオーストラリア、カナダ、ニュージーランドはアングロ・サクソン系で、判例法を基本とする英米法の国。これらの国々の母国語は英語だ。この4カ国とイギリスは深く結びついている。 それに対し、日本は国会で制定された法律が基本の大陸法を採用しているので、TPP内で統一した法体系を作りあげることは不可能。トラブルの仲裁を担当する法律家は英米法の人間だと考えなければならず、日本の法律は意味をなさなくなる。 アメリカの支配層は自分たちにとって都合の悪いルールを採用している国が存在すると、その国の「エリート」を買収したり、恫喝したり、場合によってはクーデターや軍事侵略で体制を転覆させてきた。そうしたことを行わなければならないのは、主権国家が存在するからだ。その主権国家を消滅させ、巨大企業という私的権力によって支配される国際秩序を築くのがTPP、TTIP、TiSAの目的だ。 フランクリン・ルーズベルトは大統領時代の1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っているが、これは3協定の定義でもある。「もし、私的権力が自分たちの民主的国家そのものより強くなることを人びとが許すならば、民主主義の自由は危うくなる。本質的に、個人、グループ、あるいは私的権力をコントロールする何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」 現在、アメリカ政府が中国やロシアに対して仕掛けている経済戦争の目的もここにある。この2カ国が持つ主権を破壊し、全世界の人々を巨大資本の臣民にしようとしているのだ。 中国は1980年代から新自由主義を導入しているが、国家主権は維持しようとしてきた。中国が世界銀行と共同で2013年に作成した「中国2030」は中国に根本的な、つまり西側巨大資本が望む条件で市場改革を実行することを迫るもの。ちなみに、2007年7月から12年7月まで世界銀行総裁を務めたのはロバート・ゼーリック元米通商代表だ。 しかし、2014年に状況は一変する。この年の2月にネオコンはウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させ、合法的に選ばれたビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除したことが主な原因だ。ウクライナをロシア制圧のカギを握る国だとアメリカの支配層は以前から考えていたが、ヤヌコビッチは西側の傀儡ではなかった。それが排除された理由のひとつだが、ロシアとEUを分断するという意図も無視できない。両者を結びつける大きな要因はロシアの天然ガスで、輸送のためのパイプラインがウクライナを通過している。ウクライナに傀儡体制を樹立させてつながりを断ち切ろうとしたのだ。 ところが、事態はネオコンが想定していなかった方向へ向かう。ロシアが中国に目を向け、ロシアと中国が急接近したのだ。アメリカのやる口を目の当たりにした中国もアメリカを警戒するようになり、ロシアと中国は戦略的パートナーになる。その後、両国の関係は深まり、今ではドルを基軸通貨とする金融システムを揺るがす存在になった。 そして中国は一帯一路構想を打ち出し、「中国製造2025年」というプロジェクトを公表する。習近平体制になったこともあるが、2014年のウクライナにおけるクーデターも中国の戦略変更に影響しただろう。トランプ政権はその変更を元に戻させようとしていると指摘する人もいる。アメリカの巨大資本の前に跪かせようとしているとも言えるが、そうしたことを実現するのは難しいだろうとも言われている。同じことはロシアについても言える。 アメリカによる軍事的な恫喝も経済戦争もTPPへの復帰も目的は同じで、ファシズム体制への移行。日本の政治家や官僚は忠実にアメリカ支配層の命令に従い、庶民は教育を受ける権利や労働者としての権利を奪われているのだが、そうした動きの前には中国とロシアが立ちはだかっている。
2018.04.14
シリアに侵略戦争を仕掛けた勢力は手先のジハード傭兵部隊が敗走、この勢力が支配していた東グータは政府軍によって解放されたことで焦っている。シリアでの戦闘はリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が破壊されて傭兵と武器/兵器がシリアへ移動してから激しくなった。その頃から東グータはアル・カイダ系武装集団が支配している。この集団は2013年からジャイシュ・アル・イスラム(イスラム軍)というタグをつけた。 本ブログでは何度も書いてきたが、ロビン・クック元英外相が指摘しているように「アル・カイダ」とはCIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳語としても使われている。クックはこの指摘をした翌月、保養先のスコットランドで心臓発作に襲われ、59歳で死亡した。 登録されているムジャヒディンの多くはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団で、リビアやシリアへの侵略戦争に参加した部隊の中心もこうした人々で、ジハードなる看板を掲げているものの、実態は傭兵。1970年代から80年代にアフガニスタンでの工作に参加していた当時の雇い主はサウジアラビアだったが、シリアではいくつかの系統がある。 シリアの侵略戦争を仕掛けたのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢想したトルコ、天然ガスのパイプライン建設をシリアに拒否されたカタールなど。シリアでの戦闘が長引き、侵略側に不利な戦況になるとトルコやカタールは離脱、傭兵も分裂を始めた。 掃討作戦を展開中のシリア政府軍は傭兵の化学兵器の製造工場を発見する一方、アメリカが軍事介入の口実として掲げているような化学兵器の攻撃を示す痕跡はないと報告されている。現地で活動してきた赤新月社(イスラム世界における赤十字)も同じ見解だ。政府軍の進撃は侵略勢力が予想したより早く、化学兵器を使った偽旗作戦を実行する余裕がなく、親りゃうせいりょくにとって都合の悪い証拠を残してしまったのではないかと推測する人もいる。 東グータから武装集団はダマスカスを砲撃、そのターゲットにはロシア大使館も含まれていた。そうした行為をいつまでも放置することはないとウラジミル・プーチン露大統領は警告し、今年(2018年)2月25日から始まった東ゴータの武装集団に対する攻撃にはロシア軍の地上部隊が同行したとも伝えられている。重要な拠点に政府軍が迫るとアメリカ軍に攻撃されていたが、今回はそうしたことがなかった。ロシア軍を直接攻撃できなかったという見方がある。 東グータはCIAの影響力が強かったが、ジャイシュ・アル・イスラムを指揮していたのはイギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーで、MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも報告されている。 今回、WHOは化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出したが、情報源が怪しい。WHOがパートナーと呼ぶ団体の中にはMSFが含まれているのだが、このMSFはアル・カイダ系武装勢力と一心同体の関係にある「白いヘルメット」を訓練している。西側は「白いヘルメット」を善玉として売り出しているが、その主張が事実に反していることは本ブログでも指摘してきた。東グータが解放された後、こうしたグループの宣伝用映像の撮影現場も見つかっている。 MSFは1971年12月に設立されたが、創設者のひとりであるベルナー・クシュネは2011年3月にリビアへの内政干渉を肯定する意見をガーディアン紙に寄稿した人物。リビアへの軍事侵略はその前月に始まった。シリアでもMSFは軍事侵略を支援する偽情報を発信したことを本ブログでも伝えたことがある。 WHOは東グータの情報を「パートナー」から得ているが、そのパートナーは白いヘルメットを情報源にしている。つまり、WHOの話は白いヘルメットの偽情報にWHOというタグをつけただけだ。
2018.04.13
軍事的な緊張が高まる中、ロシア海軍はシリア沖で艦隊演習を実施すると伝えられている。4月11日から12日、4月17日から19日、そして4月25日から26日のそれぞれ10時から18時(モスクワ時間)にかけて該当する海域は閉鎖される。 この演習はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビなどが続けている度を超した「火遊び」に対する警告の意味もある。アメリカで侵略戦争を推進している中心にはシオニスト(ネオコンやジャボチンスキー派)がいる。 こうした侵略戦争のベースになっているのが1992年2月にアメリカ国防総省のDPG草案という形で作成された世界制覇プラン。その作成の中心が国防次官だったポール・ウォルフォウィッツだったことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。このドクトリンに基づいて日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれてきた。 このドクトリンが作成されたのはボリス・エリツィンがソ連を消滅させた2カ月後。この段階でロシアを属国にしたアメリカは唯一の超大国になり、自分たちに逆らえる国は存在しないとネオコンは考えた。残された国は脅せば屈するような弱小国ばかりで、万一屈服しなくても軍事力で「石器時代」にできる相手だということだ。 しかし、その前提は21世紀に入って崩れた。ウラジミル・プーチンを中心とするグループがロシアを再独立させ、国力を急速に回復させたのだ。そのロシアがアメリカなどシリア侵略を目論む国々の前に立ちはだかった。バラク・オバマ政権が始めたジハード傭兵を使った侵略は失敗に終わり、クルドへの切り替えもアメリカ支配層は苦労している。そこでジョージ・W・ブッシュ政権のイラク侵略のようなアメリカ軍を中心とした正規軍による侵略の動きが出て来たわけだ。 アメリカ海軍は駆逐艦のドナルド・クックをシリア沖へ移動させてロシア海軍の基地があるタルトゥースから約100キロメートルの地点に到達、さらに駆逐艦ポーターも同じ海域へ配備されると言われている。哨戒機のP-8Aポセイドンや原子力潜水艦がシリア沖へ向かい、5月には空母ハリー・S・トルーマンを中心とする艦隊がシリア沖へ到着する予定だ。 昨年(2017年)4月6日にトランプ政権はアメリカ海軍の2駆逐艦、ポーターとロスから59機の巡航ミサイル(トマホーク)をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射している。そのうち目標へ到達したのは23機。5機は地上へ落下、残りは地中海へ落ちたと見られている。この攻撃があった後、シリアではS-300やS-400だけでなく短距離防空システムのパーンツィリ-S1の配備が進んだ。 トランプ政権がシリアを攻撃する場合、昨年の規模を上回ると見られているが、それでもダマスカスやロシア軍をターゲットに含めなければ、ミサイルを撃墜する程度で納まるという見方もあったが、レバノン駐在ロシア大使は、アメリカ軍がシリアを攻撃したなら、ミサイルを迎撃するだけでなく、ミサイルの発射装置を破壊するとしている。つまり、艦船から発射すれば艦船を撃沈、航空機から発射すれば航空機を撃墜するということだ。 ところが、大使の発言の後、トランプ大統領はツイッターで、ロシアがミサイルを撃墜するとだけ語ったかのように書いている。これは昨年のケース。今回は違う。ロシア側の発言を聞いていないのだろうか、あるいは見通しを誤った「予定稿」をそのまま書いたのかだろうか?
2018.04.12
ファイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOがアメリカ議会の公聴会で「情報流出」の問題で証言しているが、この会社に限らずインターネットやコンピュータに関連した巨大企業はアメリカの情報機関や治安機関と密接な関係にある。そうした監視システムの中枢にはふたつの電子情報機関が存在する。アメリカのNSAとイギリスのGCHQだ。両機関を軸にUKUSAというアングロ・サクソン系諸国の情報機関連合も重要な役割を果たしてきた。この監視システムは世界規模で、監視の対象はコンピュータ化が進むにつれて広がっている。監視システムは1970年代から問題になっているが、フェイスブックは2004年に創設されて以来、監視の道具になっていると批判されてきた。 その証言に少なからぬ人が注目しているようだが、その一方、シリアではアメリカとロシアとの間で軍事的な緊張が高まっている。シリアでの戦乱は2011年3月から始まるが、本ブログでは何度も書いてきたように、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢想していたトルコ、天然ガスのパイプライン建設をシリア政府に拒否されたカタールなどが侵略の黒幕。 2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAがバラク・オバマ政権へ報告しているように、侵略の手先はサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団を主要メンバーとするアル・カイダ系武装集団。当時、そうした集団としてアル・ヌスラが知られていたが、DIAはAQI(イラクのアル・カイダ)と実態は同じだとしている。ちなみに、オバマ大統領がNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言したのも2012年8月。このシナリオはドナルド・トランプ政権も踏襲している。 シリア侵略より1カ月早くリビアも侵略され、2011年10月にはリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、カダフィ自身は惨殺された。その際、NATO軍とアル・カイダ系武装勢力が連携していること、戦闘員や武器/兵器がリビアからシリアへ運ばれたことなどが判明した。そうした中、オバマ大統領は「穏健派」なるタグを持ち出して体制転覆工作を正当化しようとした。 しかし、2012年にDIAがオバマ政権へシリア情勢に関する報告をした後もマイケル・フリンDIA局長はジハード勢力を支援するべきでないと主張していたが、オバマ大統領は無視する。そして2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはファルージャやモスルが制圧された。このときにアメリカ軍はダーイッシュの制圧作戦、示威行進を黙認している。 ファルージャやモスルが制圧された2カ月後にフリンはDIA局長の職を解かれた。当時の統合参謀本部もDIAと基本的に同じ考え方をしていたのだが、2015年9月25日に統合参謀本部議長はマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードに交代になった。同年2月には国防長官も戦争に消極的だったチャック・ヘイゲルから好戦派のアシュトン・カーターへ入れ替えられている。バラク・オバマ大統領はそうした勢力を支援していた。そこでシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとDIAは報告書の中で警告している。これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。 こうしたジハード傭兵を使った侵略は2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入してから揺らぎはじめ、そうした武装集団は現在、崩壊寸前だ。新たな手先として選ばれた勢力がクルドだが、風向きが怪しくなっている。そこで再浮上したのが化学兵器話だ。 アル・カイダ系武装集団が支配、ダマスカス攻撃の拠点になってきた東グータをシリア政府軍はほぼ制圧、人質になっていた住民も解放された。そうした住民の口から西側の政府や有力メディアが言う「穏健派」の実態が明らかにされている。西側の有力メディアは無視しているようだが、完全に封印することはできていない。(例えばココ。英語字幕付きはココ)時間の経過にともない、侵略勢力にとって都合の悪い事実が明らかになってくる。アメリカ帝国の崩壊も確実に進む。侵略勢力にとって時間は敵だ。情勢は切迫しているとも言える。
2018.04.11
ドナルド・トランプ米大統領がシリアから軍隊を撤退させると表明した直後、そのシリアで化学兵器が使用されたという話が流された。トランプ大統領の表明はシリア政府にとって朗報だが、シリア政府による化学兵器使用の話はその撤退計画を御破算にした。奇妙な話だが、そもそも東グータをほぼ制圧した政府軍が化学兵器を使う理由がない。これだけでも化学兵器話が胡散臭いことは明白だが、アメリカをはじめ西側の有力メディアは奇妙な化学兵器話を受け入れている。ところがFOXニュースのタッカー・カールソンは番組の中で化学兵器話の奇妙さを指摘した。 非論理的な化学兵器話の発信源はアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメットとアル・カイダ系武装集団と連携しているジャイシュ・アル・イスラムだということは本ブログでも指摘した。ジャイシュ・アル・イスラムもアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と同じように残虐だ。こうした集団の情報を否定する赤新月社(イスラム諸国における赤十字)の証言を西側の有力メディアは無視する。そうした中でカールソンは例外的な存在だと言えるだろう。支配層の内部でも現在の流れに危機感を抱いている人がいるのかもしれない。
2018.04.11
シリアに駐留しているロシア軍の防空部隊が臨戦態勢に入ったと伝えられている。アメリカ海軍は駆逐艦のドナルド・クックをシリア沖へ移動させ、ロシア海軍の基地があるタルトゥースから約100キロメートルの地点に到達したことが原因だと見られている。ロシア軍機が米駆逐艦の近くを警告のために飛行しているともいう。さらに駆逐艦ポーターも同じ海域へ配備されると言われている。イスラエル軍はアメリカに対し、シリアを直接攻撃するように要求してきたが、それに応じた形になった。 ドナルド・クックは2014年4月に黒海でロシアを挑発したことで有名。ロシアの国境近くを航行して挑発したのだが、ロシア軍は非武装のSu-24を派遣して艦船の近くを12回にわたって飛行させている。 その直後にこの駆逐艦はルーマニアの港へ急遽入り、その後、ロシアの国境にアメリカの艦船は近づかなくなった。ロシアでの報道によると、Su-24は「キビニECMシステム」を搭載、艦船が搭載していたイージス・システムを麻痺させたという。 ポーターは2017年4月にシリアのシャイラット空軍基地を攻撃した駆逐艦2隻のうちの1隻。ロスとともに59機の巡航ミサイル(トマホーク)を発射、そのうち23発が目標に到達したが、5発は地上に落下し、残りは地中海へ落ちたのではないかとみられている。この攻撃の口実も「化学兵器の使用」だったが、根拠のない話だった。2003年3月にイラクを攻撃した際の「大量破壊兵器」と同じように嘘だった可能性がきわめて高い。 現在、アメリカ海軍が駆逐艦を送り込んだ近くにはロシア軍の基地がある。ひとつはタルトゥースの海軍施設であり、もうひとつはフメイミム空軍基地だ。今年(2018年)1月、両基地を13機の武装UAV(無人機)が接近、そのうち7機はロシア軍の短距離防空システムのパーンツィリ-S1で撃墜され、残りの6機は電子戦兵器で無力化されたと伝えられている。 そのUAVは100キロメートルほど離れた場所から飛び立ち、GPSと気圧計を利用して事前にプログラムされた攻撃目標までのコースを自力で飛行、ジャミングされないような仕組みになっていた。防空システムを調べるための飛行だった可能性がある。その際、フメイミムとタルトゥースの中間地点をアメリカの哨戒機P-8Aポセイドンが飛行していた。その翌月にはロシア軍のSu-25が侵略勢力がジハード傭兵部隊へ提供されたMANPADS(携帯型防空システム)で撃墜されている。 こうした中、ジハード傭兵部隊の支配地域は急速に収縮、すでに壊滅寸前だ。新たな手先としてクルドを使い始めたが、NATO加盟国であるトルコの部隊が軍事侵攻したことで侵略勢力、つまりアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビの思惑は外れた。 そうした状況の中、アメリカのドナルド・トランプ大統領は今年3月29日にアメリカ軍をシリアから撤退させると演説で口にし、政府内でも同じ指示を出していると伝えられているのだが、すぐに有力メディアだけでなく政権内からも反対の声が上がった。石油支配の野望を放棄することはできないということが理由のひとつ。そうしたひとりが米中央軍のジョセフ・ボーテル司令官。特殊部隊系の軍人だ。 アメリカなどが始めたシリア侵略作戦からトルコが2016年6月に離脱、それを受けて7月にトルコで武装蜂起があった。トルコ政府はこの蜂起の首謀者はフェトフッラー・ギュレンだと主張したが、この人物はアメリカでCIAの保護下にある。つまりアメリカ支配層の手先。また、蜂起の背後にはジョセフ・ボーテルやジョン・キャンベルISAF司令官がいたとしている。 このボーテル中央軍司令官は2016年12月、大統領選挙で勝利したトランプに対してシリアの反政府軍、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を支援し続けるように求めた。DIA局長を経験しているマイケル・フリン中将やマーティン・デンプシー前統合参謀本部議長とは逆の考え方だ。シリアからアメリカ軍を撤退させるということは侵略勢力の敗北を意味し、その現地における責任者であるボーテルの責任が問われることにもなる。彼らの選択肢はふたつ。ロシアを屈服させ、シリアやイランの現体制を破壊して中東全域の利権を手に入れるか、ロシアとの全面戦争だ。同床異夢ではあるが、この点では一致している。 言うまでもなく、アメリカ側が宣伝する化学兵器話は戯言。これは本ブログでも再三再四、指摘してきた。露骨な嘘だが、これは軍事的な緊張を高めるための口実で、他人が信じようと信じまいと関係ない。事実に基づく議論も大事だが、そうしたことにアメリカの支配層が興味を持っていないことを忘れてはならない。
2018.04.10
シリアのホムスにあるT4空軍基地を4月9日にミサイル攻撃したのはイスラエル空軍に所属する2機のF15戦闘機だったとロシア国防省は発表している。レバノン上空から8発のミサイルを発射、そのうち5発が撃墜され、3発は基地に到達して14名が死亡しているようだ。そのうち2名はイラン人で、ロシア人は含まれていないという。報復を避けるため、ロシア軍の兵士に犠牲者が出ないように攻撃した可能性がある。事前にイスラエル側はアメリカ政府へ通告していたが、ロシアへは知らせていない。 現在、シリアではジハード傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が壊滅寸前で、ダマスカス攻撃の拠点になってきた東グータの大半も政府軍が制圧した。 今回の制圧作戦がスタートする前、この東グータからダマスカスのロシア大使館へ向かって砲撃が毎日あった。ロシアのウラジミル・プーチン大統領はその攻撃について、いつまでも許すことはないと語っている。実際、そうした展開になった。この作戦ではアメリカ軍に妨害させないため、ロシア軍が同行していた可能性がある。 武装解除された戦闘員の脱出が進む中、ドゥーマで政府軍が化学兵器で住民70名以上を殺したという宣伝が始まった。その情報源はサウジアラビアを後ろ盾とし、アル・カイダ系のアル・ヌスラと連携しているジャイシュ・アル・イスラム、そしてアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメットだ。 この化学兵器話とイスラエル軍機の攻撃を結びつける「解説」もあるが、先週、アンカラで開かれたロシア、イラン、トルコの首脳会談を意識しての示威行動だと見る人もいる。ドナルド・トランプ大統領の発言とは逆に、アメリカの支配層は自国の軍隊をシリアから撤退させる意思はなさそうだ。石油利権を手放すべきでないという露骨な本音を掲載する有力新聞もあった。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟とイギリスとフランスのサイクス・ピコ協定コンビがロシア、イラン、トルコと対峙するという構図だ。 今回、シリアを攻撃したとみられるイスラエル軍はガザで住民虐殺を続けているが、そのパレスチナ人をイスラエルは「人間の盾」としても使っている。ロシア軍が反撃してきた場合、そのパレスチナ人を皆殺しにするとロシア政府を脅している可能性はある。 今後、アメリカ軍は昨年(2017年)4月6日に実行された攻撃と似たような攻撃を行うかもしれない。昨年のケースでは、地中海にいたアメリカ海軍の2駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機がシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射されている。 イスラエルはサウジアラビアはアメリカ軍にイランを攻撃させたがっている。アメリカ、イギリス、フランスはシリアへ地上部隊を侵入させた。ロシアの安全保障会議によると、アメリカ軍は基地を20カ所に建設済みで、油田地帯を制圧するだけでなくバシャール・アル・アサド政権を倒させたいと願っている勢力も存在する。 もし昨年4月の攻撃を大幅に上回る攻撃をアメリカがシリアで実行、バシャール・アル・アサド政権を倒そうとしたなら、ロシア軍は反撃する。ウラジミル・プーチン露大統領は今年3月1日にロシア議会で行われた演説で、ロシアやその友好国が存亡の機を招くような攻撃を受けた場合、反撃すると警告している。もし地中海などに展開している艦船からミサイル攻撃を実施した場合、そうした艦船は攻撃される。シリアに建設されたアメリカ軍の基地も破壊されると考えるべきだろう。ロシア軍が反撃に出るか出ないかの境界線は微妙で、その位置をアメリカ側が読み間違えれば全面戦争になる。
2018.04.10
シリアのホムスにあるT4空軍基地が4月9日にミサイル攻撃を受けたと現地で報道されているようだ。アメリカ軍が実行した可能性を指摘する情報もあるが、アメリカ側は全面的に否定している。ガザでの残虐行為が問題になっているイスラエルやシリアへ送り込んだジハード傭兵が窮地に陥っているサウジアラビアが関係している可能性もある。シリア軍はミサイル数機を撃墜したとしているが、どの程度のミサイルが基地に到達したかは不明。被害状況も明確でない。 ミサイルはレバノンの方向からシリア領空へ入ったというが、レバノンの放送局によると、ミサイルは地中海からレバノンを経由してシリアへ向かったとしている。状況は明確でないが、昨年(2017年)4月6日に実行された攻撃と似ているようにも見える。このときはロシア軍によるジャミングを想定し、アメリカ海軍の2駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機がシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射した。この攻撃があった後、S-300、S-400だけでなく短距離防空システムのパーンツィリ-S1の配備が進んだとも言われている。 2013年9月3日にも地中海からシリアへ向かってミサイルが発射されているが、このときは2発。いずれも途中で海中へ落下してしまった。後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと弁明したが、状況から考えてシリア攻撃を始めようとした可能性が高い。墜落させた手段としてジャミングなど電子的な手段が噂されている。この経験を踏まえ、昨年は59機のミサイルを発射したという見方もある。 アメリカ軍の内部にはマーティン・デンプシー大将(2011年10月から15年9月まで統合参謀本部議長)やマイケル・フリン中将(2012年7月から14年8月までDIA局長)のように、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を危険視する軍人は残っているだろう。シリアでCIAと歴史的に関係が深い特殊部隊の増強が伝えられている理由もその辺にありそうだ。今回の攻撃にアメリカの正規軍の中枢が関与していなかったとしても不思議ではない。 イラク、シリア、イランを殲滅すると1991年の段階で口にしていたのがネオコンの大物であるポール・ウォルフォウィッツ。1980年代にはイラクのサダム・フセインを敵と見るか見方と見るかでネオコンを含むシオニストはジョージ・H・W・ブッシュたちと対立していた。イラクに続いてシリアを破壊することは、その当時からネオコンの日程表に書き込まれている。 シオニストと同じようにイランを殲滅の対象にしているのがサウジアラビアとイスラエルだ。現在この勢力で主導権を握っているのはウラジミール・ジャボチンスキー系の人々で、ジャボチンスキーの秘書だった人物の息子であるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、ネタイヤフと緊密な関係にある富豪シェルドン・アデルソンを資金源にしているドナルド・トランプ米大統領やジョン・ボルトン、この人脈に近いサウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子などが含まれる。サルマンは事実上、サウジアラビアのトップで、数カ月で国王になるとも噂されている。 そうした人脈に含まれているトランプ大統領だが、アメリカ軍をシリアから撤退させると発言、石油支配を目論む勢力から公然と批判され、アメリカ軍、特に特殊部隊の動きを見ると大統領の発言と逆方向だ。そうした中、白々しく化学兵器話がまたまた持ち出された。そうした中でのT4空軍基地への攻撃。何者かがアメリカ軍が撤退しにくいような環境を作っているようにも見える。追加:ロシア国防省によると、T4基地を攻撃したのはイスラエル軍に所属する2機のF15戦闘機。レバノン領空からミサイルを発射したもようだ。
2018.04.09
シリア侵略部隊がダマスカス攻撃の拠点にしてきた東グータの大半を政府軍が制圧、武装解除された戦闘員の脱出も進む中、ドゥーマで政府軍が化学兵器で住民70名以上を殺したと宣伝されている。その情報源はサウジアラビアを後ろ盾とし、アル・カイダ系のアル・ヌスラと連携しているジャイシュ・アル・イスラム、そしてアル・カイダ系武装集団と一心同体の白いヘルメット。つまり、アル・カイダ系武装集団の主張に基づく宣伝だ。 ロシア政府は反シリア政府軍が化学兵器を使おうとしていると再三警告、東グータでは化学兵器の製造場所がいくつか発見されている。今回の攻撃も西側は政府軍が化学兵器を使ったことを示す証拠を明らかにしていない。自分たちの主張を信用させようという熱意すら失ったように見える。 2003年3月に実行したイラクへの先制攻撃では事前に大量破壊兵器という嘘を広めていたが、シリアでは化学兵器。政府による住民虐殺という主張が現地調査で否定され、偽情報の発信源も露見した後の2012年8月、アメリカ大統領だったバラク・オバマはNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言している。 本ブログでは何度も書いてきたが、オバマが宣言した月にアメリカ軍の情報機関DIAはホワイトハウスにシリア情勢に関する報告書を提出、その中で反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団、あるいはAQI(イラクのアル・カイダ)が中心だとしている。アル・カイダ系武装集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 その当時、シリアではアル・ヌスラという武装勢力の名前が流れていたが、その実態はAQIと同じだとDIAは指摘している。バラク・オバマ大統領はそうした勢力を支援していた。そこでシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとDIAは報告書の中で警告、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。 シリアで侵略戦争が始まる1カ月前、2011年2月にリビアが侵略されている。その黒幕はシリアと基本的に同じで、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、カタールなど。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月の崩壊、カダフィ自身も惨殺された。その段階でNATO軍とアル・カイダ系武装集団のLIFGとの連携が明確になっている。これも本ブログで何度も説明してきた。リビアを破壊した侵略勢力は戦闘員や兵器/武器をシリアへ運ぶが、その際に化学兵器もリビアから持ち出したと言われている。 2012年12月になると、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると国務長官だったヒラリー・クリントンが主張する。そして翌年の1月、アメリカのオバマ政権はシリアでの化学兵器の使用を許可し、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させようとしているとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。 そして2013年3月、ダーイッシュがラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はその責任をシリア政府に押しつけて非難した。ところがこの化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出し、5月には国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。 この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。 早い段階でロシア政府は国連で証拠を示しながらアメリカ側の主張が正しくないことを説明しているが、8月29日にミントプレスはサウジアラビアが化学兵器使用の黒幕だとする記事を掲載した。記者に圧力がかかって執筆を否定する談話を発表するが、編集長が反論、記者との遣り取りは記録されているとしている。記者からの再反論はなかった。10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、グータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。 12月には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。 このほか、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったと主張している。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられた。 西側の政府や有力メディアが流した化学兵器話は崩壊したのだが、その後も似たような話が繰り返し宣伝されてきた。2017年4月4日にも化学兵器の使用が宣伝された。マイク・ポンペオCIACIA長官は7月11日、INSA(情報国家安全保障連合)の夕食会でその出来事について語った。それによると、ドナルド・トランプ大統領から4月4日の攻撃について6日に質問され、シリアの体制側が化学兵器を使ったというCIAの結論を伝えたとしている。 その報告に基づいてトランプは攻撃を決断、6日の夜にアメリカ海軍の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射している。そのうち目標に到達したのは23発で、5発は地上に落下、残りは地中海へ落ちたのではないかとみられている。 しかし、ジャーナリストのロバート・パリーによると、4月6日の早朝、トランプ大統領はポンペオCIA長官から私的に化学兵器の使用を否定する説明を受けていたとする内部からの情報があるという。 また、6月25日には、ジャーナリストのシーモア・ハーシュが同じ内容の記事をドイツのメディアに書いている。ハーシュによると、4月4日に聖戦主義者の幹部が会議を開くという情報をつかんだロシアとシリアは攻撃計画を立て、その内容をアメリカ側へ伝えたとしている。CIAにも直接、ロシアから攻撃に関する情報が伝えられていた。攻撃の前からアメリカ側はロシアから情報を知らされていたことになる。その記事が出る3日前、6月22日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領がシリア政府による化学兵器の使用は根拠がないと話している。 アメリカには、ロシアと全面戦争になってもシリアを破壊したいと考えている勢力が存在、大統領も逆らえない力を持っているように見える。
2018.04.09
シリアの北部にあるマンビジュでアメリカ、イギリス、フランスの特殊部隊が増強されていると伝えられている。アメリカは新たな侵略の手先としてクルドを使い始めたが、そのクルドを危険視するトルコ軍が越境攻撃して支配地域を拡大させているからだ。こうしたトルコの越境攻撃に対してシリア政府は侵略行為だと批判、アメリカはNATO加盟国で戦略的に重要な位置にあるトルコとの直接的な戦闘を避けてきた。こうした特殊部隊の動きが統合参謀本部の意思なのか、CIAの作戦なのかは不明。ベトナム戦争では正規軍とCIA/特殊部隊が指揮系統が別の戦争を繰り広げていた。 このほか、ユーフラテス川沿い、デリゾールの東に広がる油田地帯の支配に力をいれている。最近も軍隊を増派、施設面の増強も図っているとクルドが伝えている。今年3月29日にドナルド・トランプ米大統領がアメリカ軍をシリアから引き揚げるという意思を表明、政府内でも同じ指示を出していると伝えられた直後、アメリカ軍の撤退は石油の支配権をイランへ渡すことだとトランプ大統領を批判する意見をワシントン・ポスト紙は掲載した。侵略を推進してきたアメリカ支配層の本音だろう。 デリゾールの近くでは2月7日にアメリカ中央軍が主導する部隊によってシリア政府側の戦闘部隊を空爆、その部隊に参加していたロシア人傭兵に死者が出ている。詳細は不明だが、アメリカ側からは数百名のロシア人を殺害したとする話が伝えられている。ロシア側の説明によると戦闘での死者は数十名、そのうちロシア国籍の傭兵が5名程度だ。 その前にもデリゾール周辺でアメリカ軍は挑発的な攻撃を行ってきた。例えば、2017年9月17日にアメリカ主導軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機がシリア政府軍を爆撃して80名以上の政府軍兵士を殺害している。空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、両者は連携していると見られている。その後、政府軍の渡河を妨害するため、28日には2つの橋を、30日には別の2つの橋をそれぞれ爆撃、破壊した。 そのあと9月24日にはロシア軍事顧問団を率いるバレリー・アサポフ中将とふたりの大佐がダーイッシュの砲撃で死亡しているが、中将らがいる正確な場所がアメリカ側から伝えられていたとも言われている。それに対し、10月31日には地中海にいるロシア軍の潜水艦から発射されたミサイルがデリゾールにあったダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の拠点を攻撃、破壊した。 アメリカは2011年3月からシリア侵略を開始、すでにシリア国内に基地を20カ所に建設済みと言われている。つまり地上部隊を派遣しないというバラク・オバマ大統領の発言は嘘だったが、トランプの撤退発言も実現しない可能性がありそうだ。
2018.04.08
ドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍をシリアから引き揚げると口にする一方、中国に経済戦争を、またロシアに外交戦争を仕掛けている。ロシアとの国境近くで軍事力を増強、ロシアから「レッド・ライン」を超えたと非難されている。中露に対する挑発は冷戦の成功体験にすがってのことかもしれないが、以前とは状況が違う。アメリカはシリア侵略に失敗、撤退は間違った政策ではないが、石油資源をアメリカ支配層が諦めることはないだろう。つまり支配層との対立が激しくなる。イスラエルやサウジアラビアはイラン攻撃をアメリカへ要求、この方面も撤退には反対だろう。 1992年2月に国防総省のDPG草案という形で作成された世界制覇プラン、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンからも推測できるように、ネオコンのプランには中東全域の石油資源支配も含まれている。そこでイラク、シリア、イランという自立度の高い体制を破壊しようとしたわけだ。 何度も書いてきたが、1991年の段階でポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを殲滅すると語っていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官が2007年に語っている。(3月、10月) クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから10日ほどのち、統合参謀本部で攻撃予定国のリストが存在することを知らされたともクラークは語っている。まずイラク、ついでシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランの順だったという。2003年3月にイラクをアメリカ主導軍が先制攻撃した後、2011年2月にリビアへ、そして同年3月にシリアへアル・カイダ系武装集団、つまり1970年代の終盤に作られた傭兵システムを使って侵略したわけだ。 リビアとシリアを侵略した黒幕はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢想していたトルコ、そして天然ガスのパイプライン建設をシリアに拒否されたカタールなどだ。そのうちトルコとカタールはすでに離脱している。 リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はNATOとアル・カイダ系武装集団が連携して2011年10月に破壊したが、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すことはできなかった。シリア政府の要請でロシア軍が2015年9月30日から軍事介入、いまではアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(実態に大差はない)は壊滅状態。そこでアメリカはクルドを新たな手先にしてイラクからシリアにいたる地域に「満州国」を建設しようとしたが、トルコ軍の軍事侵攻でアメリカとクルドとの関係は微妙になっている。 アメリカ軍は勝手にシリアで基地を建設してきた。トルコ政府によると、アメリカ軍が建設した基地の数は13だが、ロシアの安全保障会議はアメリカ軍は20カ所に基地を作ったとしている。トランプ大統領は自国軍を引き上げると言っているが、アメリカ、フランス、イギリスの3カ国はシリアに展開している特殊部隊を増強中だ。トルコでの報道によると、フランスはシリアの北西部、トルコとの国境近くに5つの秘密基地を建設済み。 アメリカの場合、特殊部隊はCIAとの関係が深く、統合参謀本部の意向に関係なく侵略戦争を継続する可能性もある。CIAを創設したのはウォール街の大物たちで、トランプの仲間とは言えない。クルドを使うだけでなく、シリア侵攻の黒幕たちは新たな武装集団を編成して侵略戦争を継続しようとする可能性もある。特殊部隊の動きを見る限り、シリアから撤退するようには見えない。 マイケル・フリン元DIA局長が解任されたあとに国家安全保障補佐官に就任したH・R・マクマスター中将はデビッド・ペトレイアス大将の子分として有名。そのペトレイアスは中央軍司令官、ISAF司令官兼アフガニスタン駐留アメリカ軍司令官、CIA長官を歴任した人物で、リチャード・チェイニー元副大統領やヒラリー・クリントン元国務長官に近い。この人脈には世界的な投機家として知られているジョージ・ソロスも含まれ、議会はその影響下にある。つまりネオコンだ。 それに対し、ジョン・ボルトンはトランプ大統領と同じように、シェルドン・アデルソンの影響下にある人物。必然的にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相につながる。以前にも何度か書いたが、ネタニヤフ首相の父親、ベンシオン・ネタニヤフはニューヨークでウラジミール・ジャボチンスキーの秘書として働いている。 ジャボチンスキーは1925年に戦闘的シオニスト団体の「修正主義シオニスト世界連合」を結成した人物で、1931年にはテロ組織と言われているイルグンを組織した。そこから飛び出したアブラハム・スターンが1940年に創設した新たなテロ組織がレヒ、いわゆるスターン・ギャングだ。スターン・ギャングが作られた年にジャボチンスキーは心臓発作で死亡した。 ネオコンの思想的な支柱と言われている人物はシカゴ大学の教授だったレオ・ストラウスで、ウォルフォウィッツは同教授の下で博士号を取得している。戦略面はやはりシカゴ大学の教授だったアルバート・ウールステッターが大きな影響を及ぼした。 後にネオコンと呼ばれる集団の中核を占める人々は若い頃、ヘンリー・ジャクソン議員の事務所で訓練を受けていた。1972年の大統領選挙で戦争反対を訴えていた民主党の大統領候補、ジョージ・マクガバンを落選させるため、民主党内に反マクガバン派のCDM(民主党多数派連合)を編成している。このCDMからネオコンは生まれるが、その集団に「元トロツキスト」も多い。レオン・トロツキーの信奉者だった、あるいはそう名乗っていたということだ。投機家のジョージ・ソロスやヒラリー・クリントンもこの人脈に属している。 現在、イスラエルではソロスとネタニヤフが戦っているようだが、当然だろう。ボルトンはネタニヤフ側だ。ボルトンがシオニストであることは確かだが、ネオコンと呼ぶべきではないかもしれない。 トランプ政権はCIAやFBIという機関と対立しているが、ボルトンはイスラエルの情報機関モサドの長官と接触していると言われている。モサドはジャボチンスキーの人脈と関係が深い。 サウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子もアデルソンに近く、イスラエルとの同盟関係を隠そうとせず、反パレスチナを公言している。こうした発言やエルサレムへのアメリカ大使館移設は中東の人々を必要以上に刺激すると中東支配という目的にとってマイナスになると考えているネオコンとは意見が違うが、この段階になると、ネオコンは修復できないだろう。
2018.04.07
こうして始められたベトナム戦争にマーチン・ルーサー・キング牧師は明確に反対していたが、こうした発言に困惑する人もいた。人種差別に反対する公民権運動の指導者という位置づけからの離脱を受け入れられなかったのだ。リバーサイド教会でも彼の周囲のそうした雰囲気を口にしている。平和と公民権は両立しないという人もいたという。 ロン・ポール元下院議員によると、当時、キング牧師の顧問たちは牧師に対してベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。そうした発言はジョンソン大統領との関係を悪化させると判断したからだが、牧師はそうしたアドバイスを無視したのである。 大統領の意思には関係なく、戦争に反対し、平和を望む人々をアメリカの支配システムは危険視している。例えば、FBIが1950年代にスタートさせた国民監視プロジェクトのCOINTELPRO、CIAが1967年8月に始めたMHケイアスもターゲットはそうした人々だった。 MHケイアスによる監視が開始された1967年はキング牧師がリバーサイド教会でベトナム戦争に反対すると宣言、またマクナマラ国防長官の指示で「ベトナムにおける政策決定の歴史、1945年-1968年」が作成された年でもある。この報告書の要旨、つまり好戦派にとって都合の悪い部分を削除したものをニューヨーク・タイムズ紙は1971年6月に公表した。いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」である。 この報告書を有力メディアへ渡した人物はダニエル・エルズバーグだが、エルズバーグはその後、宣誓供述書の中でキング牧師を暗殺したのは非番、あるいは引退したFBI捜査官で編成されたJ・エドガー・フーバー長官直属のグループだと聞いたことを明らかにしている。 その話をエルズバーグにしたのはブラディ・タイソンなる人物。アンドリュー・ヤング国連大使の側近で、エルズバーグは国連の軍縮特別総会で親しくなったという。タイソンは下院暗殺特別委員会に所属していたウォルター・ファウントロイ下院議員から説明を受けたとしているが、ファウントロイ議員はその話を否定している。(William F. Pepper, “The Plot to Kill King,” Skyhorse, 2016) キング牧師暗殺から2カ月後、次の大統領選挙で最有力候補だったロバート・ケネディ上院議員はカリフォルニア州ロサンゼルスのホテルで殺された。上院議員を暗殺したのは60センチ以上前を歩いていたサーハン・サーハンだとされているが、検死をしたトーマス・ノグチによると、議員の右耳後方2・5センチ以内の距離から発射された3発の銃弾で殺されたのだという。この結果は現場にいた目撃者の証言とも合致する。サーハン・サーハンが犯人だとするならば、議員の前にいた人物の発射した銃弾が議員の後ろから命中したことになる。 1991年12月にソ連が消滅した直後からアメリカの有力メディアはユーゴスラビアでの組織的な住民虐殺を宣伝、1999年3月にはNATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃した。この宣伝は嘘だったことが判明している。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、詳しい調査が行われる前にジョージ・W・ブッシュ政権は「アル・カイダ」の犯行だと断定、アル・カイダ系武装集団を弾圧していたイラクのサダム・フセインを倒すために同国を先制攻撃している。この時に口実として大量破壊兵器が使われたが、これも嘘だった。 2011年にはリビアやシリアで戦争が始まる。西側は「独裁者」による「民主化運動の弾圧」を阻止すると主張していたが、これも嘘だということが明確になっている。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟とイギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、そしてオスマン帝国の復活を妄想するトルコと天然ガスのパイプラインの建設をシリアに拒否されたカタールなどが侵略の黒幕だった。その間、本格的な軍事侵攻を正当化するためにさまざまな嘘が宣伝されてきたことは本ブログでも繰り返し書いている。 この間、西側で反戦運動は盛り上がっていない。沈黙しているのだ。沈黙を正当化するために侵略勢力が提供した作り話を受け入れている。事実を見れば西側の政府や有力メディアが主張していることが嘘だということは容易にわかるのだが、嘘だと認めたなら、破壊と殺戮を容認するか、あるいはそうしたことを行っている支配層を批判しなければならなくなる。リベラル、あるいは革新勢力を名乗る人々は立場上、破壊と殺戮を認められない。支配層の作り話を受け入れざるをえないのだ。 日本が敗戦した直後、映画監督の伊丹万作はこんなことを書いている:戦争が本格化すると「日本人全体が夢中になって互に騙したり騙されたりしていた」。「このことは、戦争中の末端行政の現れ方や、新聞報道の愚劣さや、ラジオの馬鹿々々しさや、さては、町会、隣組、警防団、婦人会といったような民間の組織がいかに熱心に且つ自発的に騙す側に協力していたかを思い出してみれば直ぐに判ることである。」(伊丹万作『戦争責任者の問題』映画春秋、1946年8月) より正確に表現するなら、「騙されたふりをしていた」のだろう。そうしたことをしているうちに、その嘘が事実だと錯覚しはじめたかもしれないが、始まりは「騙されたふり」だったのではないだろうか。事実を語るには、それなりの覚悟が必要だ。(了)
2018.04.06
1972年の選挙で勝利したリチャード・ニクソンもベトナム戦争の現実を無視できず、デタント(緊張緩和)政策を推進する。大統領選挙が行われた年の2月に彼は中国を訪問して毛沢東や周恩来と会談、ベトナム戦争から手を引く動きも見せた。1973年1月にはパリ休戦協定が調印されて停戦が実現している。そのニクソンがウォーターゲート事件で1974年に辞任、副大統領から昇格したジェラルド・フォード大統領はホワイトハウスからデタント派を粛清、好戦的な政策へ戻している。 このフォードを破ってジミー・カーターが大統領となった1977年にバーンシュタインはワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いた。それによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとするCIA高官の話を紹介している。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) バーンシュタインの記事はウォーターゲート事件の内幕と解釈することもできる。本ブログでも繰り返し書いてきたが、戦後間もない1948年頃からメディアを支配するためにモッキンバードというプロジェクトがアメリカでスタートしている。 そのプロジェクトの中心になっていた人物がワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハム、戦時情報機関のOSSや戦後創設されたCIAで大きな影響力を持ち続けたアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズの4人だ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) フィリップ・グラハムはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される3カ月前に自殺、キャサリンがワシントン・ポスト紙の社主に就任している。キャサリンはウィズナーの妻、ポリーと親しかった。新社主もCIAと緊密な関係にあったのだ。 ワシントン・ポスト紙の編集部でキャサリンから目をかけられていたベンジャミン・ブラッドリーの妻がトニー・ピンチョットで、その姉にあたるマリーはOPC/CIAの幹部だったコード・メイヤーと結婚していた時期がある。離婚後、ジョン・F・ケネディと親密な関係になるが、ウォーレン委員会がケネディ大統領暗殺に関する報告書を公表した3週間後に射殺された。マリーは生前、ケネディ大統領暗殺の内幕を知っていることをうかがわせる発言をしていた。 第2次世界大戦後、ベトナムが独立を目指したのに対し、それを阻止するためにフランスが軍事介入する。アメリカもその方針を支持していた。ところが1953年5月にフランス軍はディエンビエンフーで北ベトナム軍に包囲され、翌年5月に降伏する。その4カ月前、1954年1月にジョン・フォスター・ダレス国務長官は国家安全保障会議でベトナムでのゲリラ戦を準備するように提案している。その年の夏、ダレス国務長官の弟であるアレン・ダレスが長官だったCIAはSMM(サイゴン軍事派遣団)を編成、破壊活動を開始した。この時の大統領はアイゼンハワーだ。 それに対し、1961年から大統領になったジョン・F・ケネディはベトナム戦争から手を引く決断をしていた。1963年10月、ケネディ大統領はアメリカの軍隊をインドシナから撤退させるためにNSAM(国家安全保障行動覚書)263を出したのだ。 NSAM263によると、1963年末にアメリカの軍事要員1000名を撤退させ、65年12月までに1万1300名を完全撤退させるとしている。そうした動きは秘密でなかったようで、米軍の準機関紙、パシフィック・スターズ・アンド・ストライプス紙は「米軍、65年末までにベトナムから撤退か」という記事を掲載している。 しかし、この覚書が出された翌月にケネディはテキサス州ダラスで暗殺され、新大統領のリンドン・ジョンソンは同年11月26日付けでNSAM273を、また翌年3月26日付けでNSAM288を出し、NSAM263を取り消してしまった。 ケネディが暗殺された11月22日に「大統領」、つまりジョンソンはベトナム駐在のヘンリー・ロッジ大使と話し合い、「南ベトナムに関する討議」の内容を再検討、NSAM273を作成したとされている。この討議は暗殺直前の11月20日にホノルルで行われていた。 ホノルルの会議にはディーン・ラスク国務長官やC・ダグラス・ディロン財務長官のほか、内務長官、労働長官、商務長官、そして農務長官が参加しているのだが、NSAM263の作成に関与したマクナマラ国防長官とロバート・ケネディ司法長官は出席していない。アメリカが本格的な軍事介入を始める口実に使われた偽旗作戦、トンキン湾事件が引き起こされたのは1964年8月のことだ。(つづく)
2018.04.05
マーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺されてから4月4日で50年になる。暗殺の2カ月前に南ベトナムのサイゴン(現在のホーチミン)や古都のユエなどが解放戦線に攻撃され、ベトナム戦争でアメリカが泥沼にはまり込んでいることを否定できない状況になっていた。 暗殺の1年前、つまり1967年4月4日にキング牧師はニューヨークのリバーサイド教会でベトナム戦争に反対すると宣言している。ベトナム戦争に沈黙することは背信行為だと主張、弱い立場の人々、発言力のない人々、アメリカの犠牲になっている人々のために声を上げなければならないとも語っていた。 こうしたことができないならば、必然的にアメリカ国内でも同じことが引き起こされる。実際、社会的な弱者は使い捨てにされ、支配層にとって都合の悪い発言をする人は排除される仕組みがアメリカでは作られてきた。権力システムに歯向かい、危険だと判断されれば収入の道を絶たれ、社会的な地位は望めなくなる。日本もその後を追っている。 危険人物を探し出すために監視システムは整備されてきた。街中にはCCTVが設置され、ICカードやGPS(全地球測位システム)つきの携帯電話の普及は個人の移動を把握するために利用可能。家電製品のコンピュータ化も監視にとって好都合だ。フェイスブックのようなSNS(ソーシャル・ネット・サービス)も個人情報の収集に使われている。 個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータといった個人データの収集と分析を目的とするシステムも1970年代から開発されてきた。日本の場合、個人情報を集約するために住基ネットが使われるのだろう。 ACLU(アメリカ市民自由連合)によると、アメリカではスーパー・コンピュータを使い、膨大な量のデータを分析、「潜在的テロリスト」を見つけ出そういう研究開発も進んでいる。どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、分析しようというのだ。こうした情報が集まれば、国民ひとりひとりの思想、性格、趣味などを推測でき、危険だと判断されれば監視対象になる。 アメリカでは情報機関の秘密工作や多国籍企業の問題が1970年代の半ばに問題化したが、それ以降、支配層は言論統制の仕組みを強化した。情報機関の内部告発を防ぐ方策を講じ、有力メディアから気骨ある記者や編集者を排除していったのだ。そうした工作を容易にする意味もあり、巨大資本がメディアを所有しやすいようにルールを変えている。 勿論、それ以前の有力メディアも情報機関の支配を受けていた。その一端は1975年1月に設置されたフランク・チャーチ上院議員を委員長とする上院特別委員会で明らかにされている。下院でも同年2月にルシアン・ネッツィ議員(後にオーティス・パイクへ変更)を委員長とする情報特別委員会を設置、同じように調査を始めた。 リチャード・ニクソン大統領を辞職に追い込んだウォーターゲート事件の報道で中心的な役割を果たしたとされている記者はワシントン・ポスト紙のカール・バーンスタインとボブ・ウッドワード。このうちウッドワードは海軍の情報将校で、報道の世界では素人に近かった。取材の大半はバーンシュタインが担当したと言われている。 ワシントン・ポスト紙に不正を暴かれたニクソンは1969年からアメリカ大統領を務めていた。1946年に下院議員となってから赤狩りの闘士として活動、53年にはドワイト・アイゼンハワー政権で副大統領になった人物で、「タカ派」と見なされていた。 ニクソンは1972年の大統領選挙で再選されるが、このときに民主党の候補者に選ばれたのは一般党員の支持を受けたジョージ・マクガバン。戦争に反対する意思を明確にしていた人物で、民主党の幹部にとってはショックだったようだ。 そこで、民主党の内部で一部の議員は造反している。その中心的な存在はヘンリー・ジャクソン上院議員で、反マクガバン派のグループを結成する。それがCDM(民主党多数派連合)だ。 ジャクソン議員の事務所はシオニストのリチャード・パイプスを顧問として抱えていたが、それだけでなく後にネオコンの中心グループを形成するリチャード・パール、ポール・ウォルフォウィッツ、エリオット・エイブラムス、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなどが教育のために送り込まれていた。(つづく)
2018.04.05
西側の政府や有力マスコミはロシアとの関係修復を訴えたドナルド・トランプ米大統領を攻撃してきた。2016年のアメリカ大統領選挙にロシア政府が介入したと根拠を示すことなく主張、大キャンペーンを繰り広げてきた。2017年5月にはこの疑惑を調査するという名目で司法省がロバート・ムラーを特別検察官に任命している。 このが始まって1年近くがたつが、選挙への介入を示す証拠は出てきていない。逆に司法省やFBIの不正行為が発覚、ロシアゲートは司法省・FBIゲートに変化してきた。そもそも、本当にロシア政府がハッキングしたならアメリカのNSAとイギリスのGCHQを中心とする電子情報機関の連合体UKUSAが証拠を握っているはず。通話や電子メールなど全ての通信はUKUSAが傍受、記録しているからだ。つまり、ロシアゲートが事実なら新たな捜査は必要なかった。 UKUSAという連合体ができあがったひとつの理由は各国の法規制対策にある。例えば、NSAに代わってGCHQが「外国人」のアメリカ国民を監視するのだ。勿論、逆のこともできる。 1970年代には議会で電子情報機関による監視が問題になった。通信を傍受する技術がアメリカ国民に対して使われている実態が明らかになり、技術が進歩すればアメリカ人にプライバシーはなくなり、どこにも隠れられなくなるとフランク・チャーチ上院議員は警告している。 そうしたこともあり、1977年にテッド・ケネディ上院議員らによって監視を規制するための法律が導入されている。それがFISA(外国情報監視法)だが、UKUSAの仕組みを使えば容易に法律の網をかいくぐることができる。しかも2000年6月頃からNSAは令状なしに国内の盗聴を実施していた。通信傍受を認めるかどうかを決定する機関がFISC(外国情報裁判所)だが、情報機関や捜査機関をチェックできているとは言い難い。ロシアゲート疑惑では相当怪しい情報に基づいて令状が出されている。(この辺の話は本ブログでも書いてきたので、今回は割愛する。) ロシアゲート疑惑に代わるロシア攻撃の口実として浮上したのがセルゲイ・スクリパリとその娘のユリアの話。セルゲイ・スクリパリは2010年からイギリスで生活している元GRU(ロシア軍の情報機関)大佐だ。この人物は1990年代にイギリスの情報機関MI6に雇われた二重スパイ。この事実が発覚してい2004年12月にロシアで逮捕され、06年に懲役13年が言い渡されているのだが、2010年7月にスパイ交換で釈放され、ソールズベリーで本名を使って生活を始めている。セルゲイはロシアにとってその程度の存在だということだ。 このスクリパリ親子が3月4日にソールズベリーで倒れて入院したのだが、イギリス政府はその原因を「ノビチョク(初心者)」だと断定、ウラジミル・プーチン露大統領が主犯だと主張してきた。 ノビチョクとは1971年から93年にかけてソ連/ロシアで開発されていた神経物質の総称で、ロシアでこの名称が使われることはないと指摘する人もいる。イギリス政府がこの名称を最初から使った理由はロシアとの関係を強調したいからだと見られている。使われた化学物質はA-234という神経物質だとも言われているが、旧ソ連では2017年までにこうした物質や製造設備は処分された。 ソールズベリーから13キロメートルほどの場所にあるポートン・ダウンにはイギリス政府のDSTL(国防科学技術研究所)があり、今でも化学兵器が製造されている。そこの科学者が有毒物質について調べたのだが、元ウズベキスタン駐在イギリス大使のクレイグ・マリーによると、そこの科学者は使われた神経ガスがロシアで製造されたものだと特定できなかったと語っているとしていた。この情報が正しいことは、DSTLのチーフ・イグゼクティブのゲイリー・エイケンヘッドもスカイ・ニューズの取材で確認している。ところがイギリス政府はロシア政府の犯行だと断定したわけだ。なお、マリーのサイトは何者かによるサイバー攻撃を受けている。 ここで奇妙な情報も流れている。ユリア・スクリパリは目を覚まし、飲食し、簡単な言葉を口にできるというのだ。しかも、3月7日にロシアのソシアル・ネットワーク・サイトに彼女が持っているページへアクセスした記録が残っている。アクセスしたのはパスワードを知っている誰かなのか、本人なのか、あるはハッキングされたのかは不明だが、そうした事実はある。 また、1994年にドイツで引き起こされた事件を思い出した人もいる。この年の8月にモスクワからミュンヘンへ到着した航空機の中から363グラムのプロトニウムが見つかったのだ。 1991年12月にソ連が消滅、ロシアはボリス・エリツィン大統領の下で国家機能は麻痺していた。核施設が管理できていないと指摘され、アメリカは「助ける」という名目でロシアの核施設を調査しようと目論んだ。 しかし、半年ほど後にプロトニウムを機内へ持ち込んだのはドイツの情報機関BNDだということが判明、長官は辞任に追い込まれてしまった。この工作はハデス(冥府の王)作戦と呼ばれている。この事件を議会は調査しようとしたが、ヘルムート・コール政権はそれを阻止、真相は隠されてしまう。今回はMI6が似たことを行ったのではないかというわけだ。
2018.04.05
財務省に続き、防衛省でも文書改竄の疑惑が指摘されている。第2次世界大戦の末期、自分たちの悪事を隠蔽するために大量の文書を廃棄、戦後は歴史を改竄してきたのが日本の官僚機構。戦争中には事実を直視せず、希望的観測に基づく妄想に取り憑かれて破滅へ突き進んだという経験もある。妄想へ向かって進むために事実を無視したとも言えるだろう。現在でも官僚は事実を恐れ、自分たちにとって都合の悪い事実を隠蔽する目的で2014年12月に施行されたのが「特定秘密の保護に関する法律」だ。 本ブログでは何度か指摘したが、情報と資金の流れていく先に権力は存在する。その流れが変化すれば体制の変革が起こるということでもある。したがって支配層はそうした流れの変化が起こらないように努めるわけだ。秘密保護法の制定や1970年代から米英主導で行われた「金融改革」の主要な目的のひとつもそこにある。アメリカで内部告発を防止するための仕組みが1970年代から強化された理由も同じだ。アメリカの場合、「国家安全保障」も情報隠蔽の理由に使われている。例えば、国防省との取り引きがあると、企業は情報の開示を免れることができるのだ。権力犯罪を内部告発すると厳罰に処されるということは本ブログでも書いてきた。 情報を統制するため、第2次世界大戦の前から新聞は巨大資本に支配されていた。戦後間もない1948年頃からメディアを支配するためにモッキンバードというプロジェクトがアメリカでスタートしたことも知られている。そのプロジェクトの中心になっていた人物がワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハム、戦時情報機関のOSS、戦後創設されたCIAで大きな影響力を持ち続けたアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズの4人。この4名は秘密工作(テロ活動)にも深く関与していた。ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士で、ヘルムズは母方の祖父が国際決済銀行の初代頭取。グラハムの場合、妻のキャサリンの父親が世界銀行の初代総裁だ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) フィリップ・グラハムはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される3カ月前に自殺、キャサリンがワシントン・ポスト紙の社主に就任している。キャサリンはウィズナーの妻、ポリーと親しかった。 ワシントン・ポスト紙の編集部でキャサリンから目をかけられていたベンジャミン・ブラッドリーの妻がトニー・ピンチョット。その姉にあたるマリーはOPC/CIAの幹部だったコード・メイヤーと結婚していた時期がある。離婚後、ジョン・F・ケネディと親密な関係になったのだが、ウォーレン委員会がケネディ大統領暗殺に関する報告書を公表した3週間後に射殺された。マリーは生前、ケネディ大統領暗殺の内幕を知っていることをうかがわせる発言をしていた。 リンドン・ジョンソン政権でアメリカはベトナムを本格的に軍事侵攻して泥沼化、反戦気運が高まった1972年の大統領選挙では戦争反対を明確にしていたジョージ・マクガバンが民主党の大統領候補に選ばれ、民主党の幹部は慌てる。そこでヘンリー・ジャクソン上院議員を中心に反マクガバン派がグループを組織する。それがCDM(民主党多数派連合)。ネオコンはこのグループを核にして編成されていく。一般党員に支持されたマクガバンを民主党幹部が潰したのだ。 その結果、当選いたのがリチャード・ニクソン。そのニクソンがデタント(緊張緩和)を打ち出すと支配層内の好戦派が激怒、スキャンダルが浮上する。それがウォーターゲート事件だ。このスキャンダルでワシントン・ポスト紙が活躍したのは必然だった。 ウォーターゲート事件を追及したワシントン・ポスト紙の若手記者のうちボブ・ウッドワードは少し前まで情報将校だったこともあり、取材の大半はカール・バーンスタインが行ったと言われている。そのバーンシュタインはニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。有力メディアがCIAの影響下にある実態を明らかにしたのだ。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)ウォーターゲート事件の内幕と見ることもできる。 公文書の改竄も報道統制も根はひとつ。権力者による情報支配だ。その情報支配を妨害するメディア、サイト、個人が現在、攻撃されている。
2018.04.03
ドナルド・トランプ大統領は3月29日、アメリカ軍をシリアから引き揚げるという意思を明らかにした。政府内でも同じ指示を出しているという。昨年(2017年)7月にトランプ大統領はバラク・オバマ政権が始めたCIAの秘密作戦を中止する決断をしたと伝えられたが、周囲からの圧力の中、その考え方は変化しなかったようだ。 オバマ政権はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために「穏健派」を支援しているとしていたが、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は2012年8月にホワイトハウスへ出した報告の中で、反シリア政府軍の戦闘員はサラフィ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、AQIだとしていた。この当時、DIAの局長を務めていたのがマイケル・フリン中将、つまりトランプ大統領が最初に国家安全保障補佐官に選んだ人物だ。 AQIはイラクのアルカイダを意味し、シリアで活動していたアル・ヌスラの実態もAQIだと指摘している。実際、AQIもアル・ヌスラもタグに過ぎず、中身は確かに同じだ。オバマ大統領が主張していた「穏健派」は存在しないということでもある。 DIAの報告はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告しているが、これはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。ダーイッシュもAQIやアル・ヌスラと本質的な違いはない。 DIAが予測していたにもかかわらずダーイッシュの出現を防げなかった責任をフリンは退役後の2015年8月、アル・ジャジーラの番組で問われたが、ダーイッシュの勢力を拡大させた政策を実行すると決めたのはオバマ政権だと反論している。 報告が提出された後もフリン局長はジハード勢力を支援するのは危険だとオバマ政権に警告し続けたが、無視される。そして2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはファルージャやモスルを制圧している。このとき、アメリカ軍はダーイッシュの制圧作戦、示威行進を黙認していた。ファルージャやモスルが制圧された2カ月後にフリンはDIA局長の職を解かれた。当時の統合参謀本部もDIAと基本的に同じ考え方をしていたのだが、2015年9月25日に統合参謀本部議長はマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードに交代になった。同年2月には国防長官も戦争に消極的だったチャック・ヘイゲルから好戦派のアシュトン・カーターへ入れ替えられている。 オバマ政権は自らが売り出したダーイッシュを口実にしてアメリカ軍にシリアを攻撃させる。勿論、シリア政府は軍事介入を承認していない。つまりアメリカによるシリア侵略だ。アメリカ軍の主なターゲットはシリア政府軍やシリアのインフラで、ダーイッシュは打撃は受けていない。アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュの支配地域が急速に縮小するのは2015年9月30日、アメリカの統合参謀本部議長が交代になった5日後にシリア政府の要請を受けてロシア軍が介入してからだ。 アル・カイダ系武装集団やダーイッシュが敗走するとアメリカはクルドを新たな手先にするが、これによってトルコとアメリカとの関係が険悪化、アメリカの目論見通りには進んでいない。 新たな武装勢力を編成する動きがあるほか、フランス政府が軍隊をシリアへ派遣するという情報が流れている。言うまでもなく、これも侵略だ。3月29日にはクルド系のDFS(シリア民主軍)の代表がフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談したという。アメリカ政府内でネオコンの力が衰える中、ロスチャイルドと近い関係にあるマクロンが前面に出てきた。 アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢見るトルコ、天然ガスのパイプライン建設を拒否されたカタールなどが始めたシリア侵略だが、トルコやカタールは離脱済み。アメリカが軍隊を撤退させるなら、イギリスやフランスが出てこざるをえないのだろう。 シリアを侵略する理由はいくつかある。イスラエルの現政権の大イスラエル構想、さらにユーラシア大陸の周辺からロシアや中国を締め上げ、最終的には支配するという長期的な戦略もある。 シリアとイランを制圧して中東を完全な支配下に置いてエネルギーを支配するという計画、石油支配はドルを基軸通貨とする支配システムの防衛にもつながる。ワシントン・ポスト紙にシリア侵略の目的は石油支配にあり、アメリカ軍の撤退は支配権をイランへ渡すことだとトランプ大統領を批判する記事が掲載されたが、本音だろう。トランプは国内でも戦いが続きそうだ。********************************* 東京琉球館で4月14日18時(午後6時)から「シリアを武力で制圧することに失敗した米国は冷戦を目指すのか」というテーマで話します。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/
2018.04.02
東京琉球館で4月14日18時(午後6時)から「シリアを武力で制圧することに失敗した米国は冷戦を目指すのか」というテーマで話します。予約制とのことですので、興味のある方はあらかじめ下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333http://dotouch.cocolog-nifty.com/ 2011年3月に始まったシリアの戦乱が侵略戦争にほかならないことは本ブログで繰り返し説明してきました。1970年代の終盤、国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーはソ連軍をアフガニスタンへ誘い込み、ゲリラ戦で疲弊さえるための秘密工作を始めています。 アメリカ軍の手先になる現地の部族はパキスタンの情報機関が手配したようですが、外部から送り込まれた戦闘員の中心はサウジアラビアが雇ったサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団でした。武器や兵器を供給、戦闘員を軍事訓練したのはCIAです。ロビン・クック元英外相が指摘したように、その訓練を受けた戦闘員のコンピュータ・ファイルがアル・カイダにほかなりません。アル・カイダとはデータベースを意味しているのです。 その仕組みが2011年にリビアやシリアで使われました。侵略の黒幕はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、オスマン帝国の復活を夢見るトルコ、天然ガスのパイプライン建設を拒否されたカタールなどでした。その後、トルコとカタールは離脱します。 この侵略部隊は2015年9月30日にシリア政府の要請で軍事介入したロシア軍がほぼ壊滅させました。最後まで残っていた傭兵の支配地域東グータも政府軍にほぼ制圧されたようです。そこにはCIA系の武装集団がいたので、アメリカの特殊部隊も入り込んでいた可能性があるのですが、フランスの特殊部隊も活動していたとする情報があります。政府軍が迫る中、フランスの特殊部隊員は国連の車両を利用して東グータを離れ、レバノンへ向かったようです。 この脱出を支援したのはジェフリー・フェルトマン国連事務次長だと言われています。2014年2月にウクライナの合法政権をアメリカのネオコンがネオ・ナチを使ったクーデターで倒していますが、そのクーデターでもフェルトマンの名前が聞かれました。 国連事務次長になる前、フェルトマンは1991年から93年にかけてローレンス・イーグルバーガー国務副長官の下で東/中央ヨーロッパを担当、ユーゴスラビア解体に関与したと言われています。2004年から08年にかけては駐レバノン大使を、また09年からアメリカ国務省で近東担当次官補を務めています。レバノン駐在大使だった当時、イラン、シリア、ヒズボラを露骨に敵視していました。 フェルトマンがレバノンにいた2007年に調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはニューヨーカー誌で、アメリカ政府はサウジアラビアやイスラエルと共同でシリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始していると書いています。 2011年にバーレーンで民主化を求める抗議行動があった際、治安部隊が暴力的に弾圧、約90名が死亡、数千人が負傷したと言われています。3月には1000名以上の湾岸諸国の部隊(事実上のサウジアラビア軍)がバーレーンへ入って鎮圧に協力していますが、その直前、3月3日にフェルトマンはバーレーンの首都マナマを訪問し、国王を励まし、アメリカ海軍の第5艦隊がバーレーン政府を支援する体制に入っていたようです。 こういう人物が国連事務次長になり、シリア侵略戦争に加担しているフランスの特殊部隊を国連の力で救出したことになります。3月17日にセルゲイ・ラブロフ露外相はアメリカ、イギリス、フランスを含む国々の特殊部隊がシリア国内へ侵入していると語っていますが、シリア北部に20カ所で建設されたアメリカ軍の基地の一部をフランス部隊も使っているようで、そうした部隊とレバノンへ脱出した隊員も合流する可能性があります。 そうしたことを念頭に、ウラジミル・プーチン露大統領は自国やロシアの友好国が国の存続を揺るがすような攻撃を受けたならば、ロシア軍は反撃すると3月1日に宣言しました。本格的な攻撃を仕掛けるときはロシアとの全面核戦争を覚悟しろということだと理解している人は少なくありません。 それでも戦争をしたがっている勢力は存在しますが、冷戦に切り替えたようにも見えます。アメリカやイギリスをはじめとする西側諸国は根拠を示すことなく一方的にロシアを批判、外交官を追放していますが、強引に東西対立の構図を復活させようとしているのではないでしょうか。
2018.04.02
フランスのニコラ・サルコジ元大統領が3月20日に身柄を拘束され、事情聴取を受けたという。リビアの最高実力者だったムアンマル・アル・カダフィから2007年の大統領選挙のキャンペーン資金として5000万ユーロを受け取った容疑だ。この件について日記に書いていたリビアの元石油相は2012年にウィーンのドナウ川で水死体となって発見されている。 2011年2月にリビア侵略は始まるが、その前年の10月にリビア政府の儀典局長だったノウリ・メスマリが機密文書を携えてフランスのパリへ亡命、ニコラ・サルコジ仏大統領の側近やフランスの情報機関と接触している。11月にサルコジ大統領(当時)は「通商代表団」をベンガジに派遣、その中に潜り込んでいた情報機関や軍のスタッフはメスマリから紹介されたリビア軍の将校と会っている。この頃、フランスとイギリスは相互防衛条約を結んだ。 ちなみに、リビアより1カ月遅れてスタートしたシリア侵略はイギリスが主導している。ロラン・デュマ元フランス外相によると、彼は2009年にイギリスでシリア政府の転覆工作に加わらないかと声をかけられたという。声を掛けてきたふたりが誰かは語られていないが、ニコラ・サルコジ政権やフランソワ・オランド政権がシリアでの平和を望んでいないとデュマに判断させるような相手だったという。 シリア駐在のフランス大使だったエリック・シュバリエによると、西側のメディアやカタールのアル・ジャジーラがシリア政府が暴力的に参加者を弾圧していると伝えていた当時、実際は限られた抗議活動があったものの、すぐに平穏な状況になったことが調査で判明していたという。リビアでも西側メディアが宣伝したような弾圧はなかった。 そのイギリスより早くシリア侵略を計画していたのがアメリカのネオコン。1991年の段階で、アメリカのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを殲滅すると語っている。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官が2007年に語っている。(3月、10月) また、アメリカがリビア侵略を決めたのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された数週間後だともクラークは語っている。ドナルド・ラムズフェルド国防長官のオフィスで作成された攻撃予定国に、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていたというのだ。 しかし、リビアやシリアへの侵略が始まった2011年当時のアメリカ大統領はバラク・オバマ。その政権の国務長官だったヒラリー・クリントンに対し、リビア攻撃にNATO軍を使うよう説得したのはサルコジだとされている。 カダフィ体制は2011年10月に崩壊、カダフィは惨殺された。160億ユーロ以上の資金が預けられていたリビアの政府機関の口座は封鎖されたのだが、その資金のうち約100億ユーロが消えてることが2017年秋に発覚している。このスキャンダルとサルコジの身柄拘束に何らかの関係があるのではないかと疑う人もいる。
2018.04.01
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