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夜の荒野を疾風怒濤の勢いで駆けてくる援軍到来を知って歓喜に湧く仲間たちの中央に立ち、アンドレスは砲身に降り積もった小麦粉や唐辛子の粉末を払い落とした。
「トゥパク・アマル様たちを砦内に導くため、俺たちは、拝借したこいつを使って、門前の敵兵どもを追っ払おうじゃないか」
眦(まなじり)を毅然と上げて、そう言い放ち、アンドレスは、眼下の正門前に布陣している敵の守備隊を睨(ね)め付けた。
その言葉に、「おう!!」と、雄々しく応じた仲間たちに、アンドレスは力強く頷き返す。
ところで、彼らのいる4階以外の要塞砲については、占拠できているのかどうか、この時点では、まだ定かではなかった。
(ここ4階だけでなく、各階の砲台にも、同程度の要塞砲が据えられているはずだ。
別の階の仲間たちが、そのうちの1門でも占拠してくれていれば、ありがたいのだが)
砲撃準備を大急ぎで進めている砲手たちを見守りながら、アンドレスが胸の中で呟く。
しかし、もし他の階の仲間たちが要塞砲の占拠までには至っておらずとも、援軍が砦内に到達するまでの一時的な間、敵兵が要塞砲を使えなければ、あるいは、使う腕が落ちさえすれば、今は、それで良いのだ。
そうすれば、向かい来る援軍のインカ兵たちは、要塞砲の苛烈な砲撃に身を晒さずに、この砦まで辿り着くことができる。
アンドレスのいる4階では、筋金入りの敵の強者たちも、スパイスが沁みて涙に霞む目を覆いながら、大量の鼻水を流して咳き込み、立ち往生している。
この様子ならば、今しばらくは、仮に要塞砲の前に立たせたとしても、まともな砲撃など行えまい。
多分、他階でも、敵兵たちは似たような状態に陥っているだろう。
(――とはいえ、しょせんは胡椒に唐辛子だ。
こんな状態が、そう長く続くわけじゃない…!)
唐辛子や小麦粉による催涙効果や煙幕効果が薄れるまでの僅かな時間が勝負だった。
アンドレスたちは、大至急、奪った大砲の砲撃準備を整えていく。
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪アンドレス≫(インカ軍)
トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。
剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。
現在は、スペイン砦を制覇すべく、インカ兵と黒人兵の混成部隊を率いて砦に進撃し、戦闘続行中。
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