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「雨か…」
ビルカパサ軍と対峙する敵軍10000の陣頭でも、断続的に降り注ぐ雨粒を上質な軍用皮手袋の上に受けながら、低く呟いている人物がいた。
黄金色に輝く肩章を戦場の夜風に吹き流しながら、闇に浮き立つ高級馬の高い背に座したこの人物――植民地ペルー副王領を統治する副王ハウレギの嫡男、アラゴン王子である。
当初、トゥパク・アマルら反乱軍の鎮圧は、アレッチェを総指揮官とした軍部に委ねられていた。
しかしながら、反乱軍の始末に予想以上に手間取っているアレッチェらの様子に痺れを切らした副王は、自らの直属部隊を戦場に派兵するに至っていた。
その父王から預かったスペイン王党軍を指揮しているのが、このアラゴン王子である。
彼は、自軍の砲撃によって砦の方へ退却を強いられているビルカパサ軍を冷徹な横顔で見据えながら、波打つ長髪に降りかかった水滴をサッと振り払った。
「雨とは忌々しいことだ。
だが、まだこの程度の小雨なら、我が軍の砲撃に然程(さほど)の差し障りが出るほどではあるまい。
なれど、このまま大降りになるようでは厄介だ。
早々に決着を付けてしまわねばならぬ」
そう独りごちたアラゴンの傍に、彼の副官エドガルドが、美しい皮紐で結ばれた巻き物を手に、逞しい黒馬を寄せてきた。
いかにも王子の腹心らしく気品溢れる風貌を備えたエドガルドは、その態度も堂々と沈着で、しかも隙が無い。
「アラゴン王子、たった今、砦のアレッチェ殿より書状が届きましてございます。
王子に早急にご高覧頂くようにと」
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍)
植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。
ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。
名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。
≪アラゴン≫(スペイン軍)
スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。
反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。
◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆
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