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アンドレスは、今も右手でサーベルを辛うじて振いながらも、もう左手では、とうに外してしまっていたゴーグルとマスクを腰袋から引っ張り出していた。
身体の異変や激痛は、何かを吸い込んでしまったことによる症状ではないかと、直観的に感じたからだった。
しかし、それらを装着しても防御効果は感じられず、ますます視界はチカチカして、頭はくらつき、もはや敵と味方の姿を見分けることさえままならない。
ジェロニモや仲間たちの無事を確かめたい思いに駆られるも、閉ざされた視界の中で、ひりつく喉は声すら出せず、どうにもすることができなかった。
熱く焼け爛れたような酷い喉の痛みも、マスクをしても何ら減ずることはなく、むしろ、いっそう呼吸困難に陥りそうだ。
正体不明の何か――それは、このような原始的なマスクやゴーグルでは太刀打ちしようのないものであると、アンドレスは苦渋の思いで察していた。
それでも諦めずにサーベルを振い続けながらも、奪われた視界の中で、彼は、気配で周囲の様子を掴もうと懸命だった。
つい先ほどまで、あれほど激しく続々と己に襲いかかりきていた敵の刃も、今は、水が引いたように不気味なほど大人しくなっている。
アンドレスは、背筋の寒くなる思いで、固唾を呑み込んだ。
(異変を感じているのは俺だけじゃない…。
ジェロニモ…みんな……いや、敵兵たちもだ…!
ここにいる誰もが、目や喉をやられて、その上、ひどい吐き気や息苦しさで、戦う力を奪われている)
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪アンドレス≫(インカ軍)
トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。
剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。
◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆
目次
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