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「アンドレス、そなたを探していたのだ。
それにしても、大変なことになってしまったな。
せっかく大軍を率いて砦への進軍を果たしたというのに、このような毒気にやられて、手も足も出せぬとは」
口惜し気に低く呻いたロレンソに、アンドレスは頷きながらも、相手の鋭利な双瞼を見据えて答える。
「ああ、だけど、まだ諦めちゃいない。
俺たちは、トゥパク・アマル様をお助けに上がるところだ」
ロレンソも、アンドレスの大きな琥珀色の瞳を真っ直ぐに見つめたまま、頷き返した。
「地下牢でマルセラ殿に合流し、地上階に戻りかけたところで、砦内の異変に気付いた」
「マルセラに会えたか、良かった!」
安堵の笑顔を輝かせたアンドレスに、「ああ、スパイス弾を派手に喰らったがな。マルセラ殿は相変わらずだ」と、ロレンソも可笑しそうに白い歯を覗かせて笑顔を見せた。
「え、スパイス弾を喰らった?」
キョトンとした顔のアンドレスに、ロレンソは再び表情を引き締め、続けていく。
「それはさておき、上階に戻りかけて、毒ガスだか何だか分からんが、強烈な何かが砦内に蔓延していると察したのだ。
ここまで進んで来るのも、窓から窓へと息継ぎを繰り返して、難儀したぞ。
が、その度に風雨に当たったせいか、毒気もだんだん抜けてきてくれたがな」
ロレンソの話しに聴き入りながら、そういえば、とアンドレスも口の中で呟いた。
(外の新鮮な空気や豪雨を浴びて多少なりとも浄化されたせいなのか、確かに体が楽になってきている)
一方、ロレンソは口調を早めながら続けていく。
「あまり、ここでのんびり話し込んでいる暇は無い。
とにかく、このような時でも、そなたのことだから、トゥパク・アマル様の居場所へ引き返しているに相違あるまいと思って、戻ってまいったのだ。
そうしたら、予想的中だ」
「それで、マルセラたちは、どこに?
ロレンソ、君と一緒じゃないのか?」
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪アンドレス≫(インカ軍)
トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。
剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
ラ・プラタ副王領への遠征から帰還し、現在は、英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務める。
≪ロレンソ≫(インカ軍)
アンドレスが学生時代を過ごしたクスコ神学校時代の朋友。生粋のインカ族。反乱幕開けと共に、インカ軍に参戦した。
アンドレスに比して大人びた風貌と冷静な性格を有し、公私に渡ってアンドレスを助けてきた。
≪マルセラ≫(インカ軍)
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官である重臣ビルカパサの姪。
アンドレスやロレンソと同年代の年若い女性だが、青年のように闊達で勇敢な武人。
女性ながらもインカ軍をまとめる連隊長の一人で、ロレンソの恋人でもある。
砦の敵中に囚われ捕虜の身となっていたが、脱出をはかった。
◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆
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