PR
Free Space
Comments
Category
Freepage List
Keyword Search
Calendar
「何事だ?!」
「ご報告いたします…!
我らの背後から、インカ兵と思しき軍勢が、多数、こちらに向かってきております!!」
その瞬間、稲妻が彼らの真上で炸裂し、辺り一面、目も眩むような白光に包まれ、全ての時が止まったように思われた。
と同時に、包囲網を狭めていたアラゴン軍の一翼から絶叫が上がった。
大気と大地を猛然と引き裂いて、そこに雷が落ちたのだ。
手綱を握るエドガルドの指に力がこもる。
「このような時に落雷が我が軍を襲うとは。
雷による被害状況を調べよ」
冷徹な声で命じると、即座に斥候たちに向き直り、険しい口調で問い質(ただ)す。
「インカ軍の援軍が来たと申すか?
数は如何ほどか?」
「それが…風雨が激しく、正確に見極めることが難しく…。
少なくとも数千はいるものと思われます」
「数千だと?!
そのような大軍、なぜ、このように接近するまで気付かなかった?」
吹き付ける雨水と跳ね上がった泥土にまみれた斥候たちが、口惜し気に顔を歪めながら、しどろもどろに弁明する。
「恐らく、我らの目につかぬよう、この豪雨と夜闇に身を紛らせ、裏手の山を延々と迂回してきたものと思われます。
なれど、あの山は急峻な上に獣道ばかりで、とても軍が進んでこられるような場所では……!」
「ですが、やたらスバシコイ奴らで、まるで野山の獣のような動き方をするのです」
他の斥候も興奮して、口角から唾を飛ばしながら、報告を叫んだ。
「身なりも簡素きわまりなく、持っている武器も斧やら棍棒やらで、山猿か原始人の集団みたいな奴らであります。
歩兵ばかりの軍団で、山からウジャウジャ湧き出してきたかと見るや、不気味な速さでこちらに猛進しております!」
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。
ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。
≪アラゴン≫(スペイン軍)
スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。
反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。
≪エドガルド≫(スペイン軍)
副王の嫡男アラゴンへの絶対的忠誠を誓う腹心の部下。
スペイン王党軍を統率するアラゴン王子の副官でもある。
目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら
★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!
コンドルの系譜 第九話(1122) 碧海の… 2016.10.25
コンドルの系譜 第九話(1121) 碧海の… 2016.10.17
コンドルの系譜 第九話(1120) 碧海の… 2016.10.10