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さらに別の斥候が、髪振り乱し、目を白黒させながら、鼻息を荒げて報告を付け加える。
「その蛮族の首領のような男が、信じがたいほど無礼な輩(やから)で、なななんと、『アパサ様が来た以上、おまえらの好きにはさせねぇと大将に伝えておけっ!!』と……!」
「もうよい!
少しは落ち着け。
おまえたちの支離滅裂な報告を聞いていると、かえって混乱してくる」
エドガルドが厳しい語気でピシャリと斥候たちの報告を遮り、黙って彼らの様子を睥睨していたアラゴンに視線を向けた。
「王子、予期せぬ敵援軍の到来。
正確な規模や正体も不明ではありますが、数も多く、俊敏な連中と思われます。
ビルカパサ率いるインカ軍の兵力は約8000。
対する、我が軍は兵力1万。
我が軍のこれまでの砲撃でビルカパサ軍の兵力が減退していたとしても、新手の敵援軍が数千規模となれば、我が軍よりインカ側が優勢になる恐れがございます。
直ちに、迎撃態勢に入ります。
ビルカパサ軍への攻撃勢を、敵援軍の迎撃のために多少割かねばなりませぬが…」
「已むを得まい」
低く言って頷いたアラゴンの面持ちは、今も冷厳さを失ってはいない。
だが、常に誇り高く、動揺や困惑など決して露わにすることのないアラゴンも、今は僅かながらも眉根を寄せて、忌々し気に奥歯を噛み締めている。
「アラゴン様、案ずるには及びませぬ。
そのような無礼きわまりない野性児どもなぞ、即刻、撃退いたしますゆえ」
「エドガルド、此度の敵援軍、予断ならぬ相手かもしれぬぞ」
ずぶ濡れになった鬣(たてがみ)で覆われた逞しい愛馬の背を撫でながら、アラゴンが物思わし気に答える。
そのような王子の様子を、エドガルドの緑碧玉の瞳が、ひたと見据えた。
「アラゴン様、向かい来る敵の援軍に、何か思い当たるふしがございますか?」
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。
ロレンソの恋人マルセラの叔父でもある。
≪アラゴン≫(スペイン軍)
スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。
反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。
≪エドガルド≫(スペイン軍)
副王の嫡男アラゴンへの絶対的忠誠を誓う腹心の部下。
スペイン王党軍を統率するアラゴン王子の副官でもある。
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