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キム・ギドク監督「嘆きのピエタ」のレビューを書いていて、書き忘れていたのであるが・・・映画には、韓国の旋盤工たちの悲哀がさりげなく描かれています。(借金返済のために、旋盤で自ら怪我を負って、身障者保険を狙うわけです)大使の在職中には、仕事柄、韓国に頻繁に出張したので、彼の地の職人たちを見たが・・・機械工、土木工、電機工、等々、あらゆる職種の職工たちの立場が一段と低く見られています。彼らと接していて、よく「何でそこまで、蔑まれるのか! もっと言い返せよ!」と思ったものです。その逆に、学者、役人など文人的職業の地位が高く、もっと下賎に言えば、威張っているわけですね。たぶん、これは儒教文化とか両班文化の負の遺産なんでしょう。昨今の半導体の量産化では、サムスンに完敗した日本型物造りがあるわけです。経営資源を、パクリと量産化技術に集中したような韓国型物造りにはたぶん、職人に対する評価は低いと想像できるのです。頭のいい両班が、半導体の量産化に取り組めば、こういう結果もありうるけれど・・・職人たちの地位向上には、今後も何の貢献も果たさないでしょうね。【嘆きのピエタ】キム・ギドク監督、2012年韓国制作、2014.5.27観賞<Movie Walker解説>より天涯孤独の借金取り立て屋と、彼の前に現れた母を名乗る女性との交流が導く思いがけない真実を、二転三転する物語の中に描いたサスペンス。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。監督は「うつせみ」で同映画祭監督賞を受賞したキム・ギドク。出演はテレビドラマ『ピアノ』のチョ・ミンス、「マルチュク青春通り」のイ・ジョンジン。<大使寸評> 精神疾患による3年間の沈黙から復帰したキム・ギドク監督の最新作ということだが…2本立館でも見逃したから、大学図書館で観ることができました。「春夏秋冬、そして春」でも精神性と宗教性を感じたのだが、この作品でも同じように感じることが出来ました。とにかく、前半の血も涙もない暴力から、後半の贖罪に変わっていく切替えがあざやかだと思うのです。movie.walker嘆きのピエタ日本人の品質への拘りは骨がらみのようでもある。一方、量産化技術に特化したような中韓の躍進が見えますね。これらは、大げさに言えば「文明の衝突」とも言えるが・・・その裏には、職業、職人に対する貴賤感覚の違いがあるようにも思うわけです。日本人が拘るきちんとした物造りは、世界を見渡すと、わりと希少とも言えるわけで・・・・辺境の地にあって、成り立ってきたのかも知れないわけです。(ガラパゴス的ニッポンの一例なのかも―笑)なお、ガラパゴスのような日本の職人ついては、職人―伝えたい日本の魂で触れています。韓国の伝統建築や木工家具には、日本で見られない美しさがあると・・・この面ではシロウトの大使は評価しているのです。ほんとに、いいセンスなんですけどね。
2014.05.31
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「職人―伝えたい日本の魂」という本を図書館で借りて読んでいるところです。一般的に職人技といえば、伝統工芸として細々と生きているという感がありますね。でも、今でもその職人気質がじゅうぶん通用するものもあると思うわけです。大使の個人的関心から・・・たたら製鉄と越前生漉奉書という二つの職人技について紹介します。大使の以前の職業柄、たたら製鉄といえば、高品質の日本刀やヤスキハガネをすぐに連想するわけでんがな♪<たたら吹き・村下>よりp56~60 出雲風土記の舞台でもある島根県横田町。この土地では神話として伝わるほど、遠い昔からたたら吹きが行われていた。たたらとは、粘土で築いた炉で木炭を燃焼させ、砂鉄を溶解、純度の高い鉄を生産する日本古来の製鉄技術だ。たたらで作られた鉄=玉鋼は日本刀に使用される。また、たたら製鉄の長(おさ)を村下(むらげ)という。製鉄法の近代化に伴い、途絶えていったたたら製鉄だが、昭和52年、日本美術刀剣保存協会によって復活した。木原明さんは、国無形文化財に認定された日本でただ一人の村下だ。 そしていま、たたら製鉄は新たな技術をつくり出す土台としての熱い注目を浴びようともしてきている。ヤスキハガネとたたらより<玉鋼復興を目指して>●:なぜこの道に進まれたのですか。木原:私は昭和10年、山口県宇部市に生まれました。工業高校卒業と同時に、島根県にある日立金属の安来工場に入社しました。 そこで冶金研究所に配属され、中村工学博士のもとで砂鉄精錬の製鉄の助手を務めたのが、鉄との出合いのはじめであり、また、たたらの村下になるきっかけとなりました。それから46年間、砂鉄の道一筋に歩んできました。●:終戦までは、たたらが細々として残っていたんですか。木原:明治時代に入ると、洋鉄が輸入され洋式製鉄法が始まることで、たたらは衰退していく。そして、大正末期に経営的には閉鎖されてしまいます。 そしてまた、戦争需要になって、昭和に入るとたたらが復活するわけです。日本刀、軍刀用の玉鋼としての供給です。 しかしそれも終戦と同時に完全に途絶えてしまいましたから、日本刀の原料である玉鋼が、底をついってしまって、全国の刀匠は玉鋼がないので、古い釘とか、たたらで作った昔の製品を使っていたんです。 が、これもなくなると日本刀の製作技術の継承に支障が生じるため、昭和52年に日本美術刀剣保存協会によって、伝統技術の保存伝承と刀匠に玉鋼を供給するために、たたら製鉄が復元されました。●:この場所を選んだという理由は、何でしょうか。木原:当地方は、古代から製鉄が盛んで、昭和20年までここでたたら製鉄が行われていました。そして、その技術を身につけている故・安部由蔵村下さんが高齢(75歳)でしたが健在で、引き受けてくださったおかげです。 それに、他の所では難しい、原料である良質の砂鉄と木炭の確保ができることです。しかし、これらを実行に移すのは並たいていのことではなく、苦労の連続でした。 最初、村下の下で働く者が10人ほど選ばれましたが、私は42歳で、そのなかでも年少のほうでした。その話を聞いたときは、我々も関連する製鉄の仕事をやっていましたから、これは興味があり、その技術を習得して目的を達成したい、ということで、受けさせていただいたんです。●:たたら吹きの作業を操業というようですが、どれくらいかかるのですか。木原:操業の前に準備がありますが、その準備に3日はかかります。下灰や炉を作る作業があります。 その後、操業に入ると、三日三晩、3昼夜、責任をもってやりとげて、優れたケラ(鋼)を作る。それが村下の技術であり使命です。 だから、安部由蔵村下さんに教わりながら、完成するまではほとんど寝ずにやってきました。最近は、上級養成員のなかから、村下の代行ができる後継者ができたので、休みながら作業を続けております。60歳、還暦を迎えるまでは、三昼夜で数時間寝る程度で、操業を続けていました。●:えっ、一日ではなく、三昼夜で数時間ですか。木原:2日目の夕方から少し、数時間ほど休み、あとは通しでずっとやります。たたら吹きで木原さんの作業場面が見られます。このつぎは、コウゾ100%の越前生漉奉書についてです。<和紙>よりp159~165 岩野市兵衛さんの福井県今立町は、古代奈良朝から現代にまで延々と続く日本屈指の和紙の里である。現在、手漉き和紙を業とする家が53軒、兼業4軒、機械漉きをするところが19軒、就業者総数750人とのこと。まさにいまなお和紙の里なのである。 岩野さんの家は代々、この閑静な山里で原料にコウゾだけを使う「生漉奉書」をひと筋に漉き続けてきた。人間国宝だった父親のあとを継いだ9代目、当年67歳(2001年時点)である。 「生漉奉書」は古くは公文書に用いられたものだが、現在ではおもに木版画を摺るのに使われている。岩野さんの漉く「生漉奉書」ほど強くしかし柔らかく、白くなめらかで混じり物がまったく見られないものはほかに例がない。そのため、岩野さんの紙しか使わないといわれる版画家は多い。 しかしこの稀代の名匠は、技量が占めるのは1~2%、紙漉き死ぬまで1年生とおっしゃる。 <コウゾ100%の生漉奉書へのこだわり>●:ずいぶん古くから代々和紙を作ってこられたんですね。岩野:私の家は代々岩野市兵衛を名乗っていまして、私で9代目になります。私のところは分家でして、本家は岩野平三郎を名乗っていますが、この岩野平三郎さんとよく混同されるんで困ってしまうんです。 たとえば、和紙の権威ある研究者のある方の文章に、法隆寺の壁画の麻紙は人間国宝岩野市兵衛が漉いたって書いてあるんです。でも私のところでは麻紙はまったく作っていないんです。生漉奉書といって、コウゾ100%の紙しか作りません。そこにずっとこだわってやってきたのが岩野市兵衛なんです。それなのにそういう間違いをされると何かいやになってしまいます。 紙は大きく分けて奉書、鳥の子、美術小間紙、局紙、局紙はトロロアオイの液体は入れないんです、それから書画用紙、このなかに麻紙も含まれますが、だいたいこの五つに分かれるんです。 私のところでやっているのは奉書ですが、ひとくちに奉書といっても大きく3種類があるんです。半草奉書というのがありますが、これはコウゾ50%、パルプ50%のものです。これはまだいいほうで、大阪や東京の店で「奉書をください」といえば、出してくるのはほとんどがカナダあたりから輸入するパルプ100%のものですね。そういうのとは違うコウゾ100%の紙を生漉奉書というんで、私で9代、ずっとなぜかこの紙にこだわって紙を漉いてきたんです。(中略)●:コウゾはこのあたりで採れるんでしょうか。岩野:明治をずっとさかのぼる頃には地元にも少しありました。福井県大野市、昔でいうと穴馬と上打波、下打波という所でコウゾが採れていたんです。それがなくなってしまってからは、石川県との境にある富山県の福光、城端の金沢商人が扱う加賀コウゾを使ってきました。昭和32、3年くらいまでは加賀コウゾがまだ入ってきていたんですが、これもなくなってきて、いよいよ越前で使う量に達しない状態になったんです。 それで私の親父が、隣の鯖江市河和田町という越前漆器の産地があるんですが、そこの漆かきを仕事にしている人から、茨城にいっぱいコウゾがあると聞いて出かけて行ったところ、確かによさそうなのがあったんです。それで買い付ける約束をして何本かもらって帰ったんですね。 それから、自分の分もほしいけども、紙の組合の業者の分もほしいいうことで、最初は千円札や百円札で百万円ぐらいの金を、洋服の裏にぎっしり縫い込んで持って行ったそうです。そうやって手付金を打って、茨城県から入ってくるようになったんです。 この茨城県のコウゾの名前が那須コウゾなんです。那須は栃木県ですが、いまでは茨城県久慈郡太子町が那須コウゾの本場になっているんです。 私のところでは茨城県の那須コウゾ100%の紙を作っています。越前市広報より 伝統技法「越前生漉奉書」を漉く九代岩野市兵衛さん(66)=大滝=が五月十九日、国の文化財保護審議会の答申で、国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に選ばれました。 福井県内で人間国宝に認定されているのは、これまで昭和四十三年に岩野さんの父親、八代岩野市兵衛さん(故人)が選ばれているだけで、県内で三十五年ぶり、二人目。 親子での栄誉となりました。 九代岩野市兵衛さんは昭和二十四年、家業の手漉き和紙の道に入り、八代岩野さんの下で、楮(こうぞ)だけでつくる生漉奉書の技術を習得されました。 先代から受け継いだ技法をかたくなに守り続けて昭和五十三年に伝統工芸士に指定され、同年九代岩野市兵衛を襲名。 平成九年には、県無形文化財保持者に指定されています。 伝統的な越前奉書は、原料の楮を手打ちし繊維をほぐす「叩解(こうかい)」や、木綿の布で楮を水でさらしデンプン質を取り除く「紙出し」など、手間を惜しまない入念な原料処理に特色があります。 紙質は強靱で、格調高く重厚な風合いが特徴。 現在の主な用途は版画用紙や書画用紙ですが、特に岩野さんが漉く越前奉書は芸術的価値が高く、二百回から三百回もの摺りに耐え、国内外からの著名な版画作家の用紙に使用されています。「広報いまだて」より【職人―伝えたい日本の魂】エス・ビー・ビー編、三交社、2001年刊<「BOOK」データベース>より経済事情、歴史的・風土的な事情を背景に、それぞれの職人たちはどのように伝統技術を保持展開しているのだろうかーそれが本書の職人たちへのインタビューの基本的なモチーフである。ほかにエッセーとして、日本を代表する建築家・黒川紀章、民俗情報工学研究家の井戸理恵子、作家の菅田正昭が寄稿している。【目次】火箸風鈴/たたら吹き・村下/大工/建具/油団/漆器/打刃物/和紙/京瓦/京型彫り/京扇子扇骨加工/菓子型彫刻/無双絵羽織/益子焼/漆<大使寸評>たたら吹き、漆器、打刃物、和紙あたりが、大使の関心のツボであるが・・・カネが全てのこのご時世に、それらに従事する職人さんのノウハウ、心意気が知りたいわけです。rakuten職人―伝えたい日本の魂
2014.05.30
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<図書館大好き62>今回借りた4冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「日本」でしょうか。<大学図書館>・昭和の日本のすまい・職人―伝えたい日本の魂<市立図書館>・私はなぜ「中国」を捨てたのか・ブラック企業図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)*************************************************************【昭和の日本のすまい】西山夘三, 西山夘三記念すまい・まちづくり文庫編、創元社、2007年刊<「BOOK」データベース>よりこれは生涯をかけて日本のすまいに取り組み続けた建築学者・西山夘三がファインダーとスケッチブックを通して見た昭和の日本のすまいとまちの映像の一部である。【目次】戦前編-昭和10~19年(京都の町並み/大阪の町並み ほか)/戦後の絶対的住宅難編-昭和20~30年(焼け跡とバラック住宅/原爆砂漠のバラック住宅と原爆ドーム ほか)/復興・近代化編-昭和25~34年(炭鉱住宅-北海道/炭鉱住宅-九州 ほか)/高度成長の光と陰編-昭和35年~(木賃住宅・文化住宅/郊外スプロール・建売り住宅 ほか)<大使寸評>建築学者が全国を歩き、約半世紀のタイムスパンで、写真とスケッチによる住宅データを集めているわけで・・・その執着心と民族学的なセンスが素晴らしいと思うのです。大使が執着した「2DKと京町屋」はもちろん、軍事施設転用、バラック住宅、炭住、文化住宅、公団住宅、マンションetcまで網羅しています。rakuten昭和の日本のすまい2DKと京町屋byドングリ【職人―伝えたい日本の魂】エス・ビー・ビー編、三交社、2001年刊<「BOOK」データベース>より経済事情、歴史的・風土的な事情を背景に、それぞれの職人たちはどのように伝統技術を保持展開しているのだろうかーそれが本書の職人たちへのインタビューの基本的なモチーフである。ほかにエッセーとして、日本を代表する建築家・黒川紀章、民俗情報工学研究家の井戸理恵子、作家の菅田正昭が寄稿している。【目次】火箸風鈴/たたら吹き・村下/大工/建具/油団/漆器/打刃物/和紙/京瓦/京型彫り/京扇子扇骨加工/菓子型彫刻/無双絵羽織/益子焼/漆<大使寸評>たたら吹き、漆器、打刃物、和紙あたりが、大使の関心のツボであるが・・・カネが全てのこのご時世に、それらに従事する職人さんのノウハウ、心意気が知りたいわけです。rakuten職人―伝えたい日本の魂【私はなぜ「中国」を捨てたのか】石平著、ワック、2009年刊<「BOOK」データベース>より「日本に来たことが私の最大の幸運」共産党による思想教育、文化大革命、天安門事件を経て祖国に幻滅し、日本に帰化した著者の“魂の変遷の記録”。「中国は共産党の“政治的道具”でしかない」と、著者が絶望した中国の内情とは?そして、著者が見惚れ安息の地を求めた日本の美しさとは?祖国を捨てた男の覚悟と哀しみに触れる。【目次】第1章 私は「毛主席の小戦士」だった(私は「民主化運動世代」の一年生/ウソの教義に毒される子供たち ほか)/第2章 いかにして「反日」はつくられるのか(帰国して驚いた中国人民の「日本憎し」/「原子爆弾で日本を滅ぼせ」 ほか)/第3章 中国を覆う「愛国主義狂乱」(「反日」という怪物と、もう一つの怪物/女優の運命を変えた一枚の服 ほか)/第4章 日本で出会った論語と儒教の心(大学の教職を追われた両親/小学校では「国語の師匠」 ほか)/第5章 わが安息の地、日本(美意識の集大成「唐詩宋詞」/「高尚と優雅」が去って「腐敗と堕落」が来た ほか)<大使寸評>石平さんといえば、コンスタントに嫌中本を連発する中国籍チャイナ・ウォッチャーという認識なんですが・・・・80年代の中国には民主化に賭ける若者たちがいたが、その数、約2億2千万にもおよぶバーリンホウ(80后)と言われる世代です。石平さんもこの世代のひとりだったようです。今では日本国籍を取った石平さんは、中国の実態を告発してやまないわけで、中国では売国奴ということになるが・・・祖国を捨てた男の覚悟と哀しみが気になるわけです。rakuten私はなぜ「中国」を捨てたのか【ブラック企業】今野晴貴著、文藝春秋 、2012年刊<「BOOK」データベース>より違法な労働条件で若者を働かせ、人格が崩壊するまで使いつぶす「ブラック企業」。もはや正社員めざしてシューカツを勝ち抜いても油断はできない。若者の鬱病、医療費や生活保護の増大、少子化、消費者の安全崩壊、教育・介護サービスの低下ー。「日本劣化」の原因はここにある。【目次】第1部 個人的被害としてのブラック企業(ブラック企業の実態/若者を死に至らしめるブラック企業/ブラック企業のパターンと見分け方/ブラック企業の辞めさせる「技術」/ブラック企業から身を守る)/第2部 社会問題としてのブラック企業(ブラック企業が日本を食い潰す/日本型雇用が生み出したブラック企業の構造/ブラック企業への社会的対策)<大使寸評>追って記入rakutenブラック企業*************************************************************とまあ・・・・抜き打ちのように、関心の切り口を残しておくことも自分史的には有意義ではないかと思ったわけです。図書館大好き61図書館大好き(目録)
2014.05.29
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大学図書館で観たDVD映画のその後です。今回は朝日デジタルの映画欄から2で、事前に目につけていた2作品を観たことになりました。・嘆きのピエタ (5月27日観賞)・ゼロ・グラビティ (5月11日観賞)****************************************************************************【嘆きのピエタ】キム・ギドク監督、2012年韓国制作、2014.5.27観賞<Movie Walker解説>より天涯孤独の借金取り立て屋と、彼の前に現れた母を名乗る女性との交流が導く思いがけない真実を、二転三転する物語の中に描いたサスペンス。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。監督は「うつせみ」で同映画祭監督賞を受賞したキム・ギドク。出演はテレビドラマ『ピアノ』のチョ・ミンス、「マルチュク青春通り」のイ・ジョンジン。<大使寸評> 精神疾患による3年間の沈黙から復帰したキム・ギドク監督の最新作ということだが…2本立館でも見逃したから、大学図書館で観ることができました。「春夏秋冬、そして春」でも精神性と宗教性を感じたのだが、この作品でも同じように感じることが出来ました。とにかく、前半の血も涙もない暴力から、後半の贖罪に変わっていく切替えがあざやかだと思うのです。movie.walker嘆きのピエタ【ゼロ・グラビティ】アルフォンソ・キュアロン監督、2013年米制作、2014.5.11観賞<Movie Walker解説>よりサンドラ・ブロック&ジョージ・クルーニー主演のSFサスペンス。スペースシャトルでの船外活動中に事故に見舞われ、宇宙に放り出されてしまったベテラン飛行士と医師。2人が暗闇の恐怖と戦い、生きて帰還すべく壮絶なサバイバルに挑む姿が描かれる。監督は『トゥモロー・ワールド』のアルフォンソ・キュアロン。<大使寸評>この映画を観て思うことなんですが・・・・ハリウッド映画の描くアメリカン・ドリームは宇宙にしか残っていないことと、中国の傲慢な振る舞いである。地球の回りを飛び回るデブリ(宇宙ゴミ)は人工衛星の脅威となっているが、中国の衛星破壊実験でその脅威が倍加した事実があるわけです。つまり、宇宙を国威発揚と軍拡の場としか見ない中華思想が見えるのです(大使の場合)なんか、つい米中に対する愚痴に落ち着いたが(笑)、それはともかく・・・・ジョージ・クルーニーが命綱となっているロープを、自ら断ち切るシーンがかっこよかったでぇ♪movie.walkerゼロ・グラビティ「ゼロ・グラビティ」を観てbyドングリ****************************************************************************大学図書館でDVD観賞(その10) 大学図書館でDVD観賞(その9) 以前の日記から「春夏秋冬そして春」を紹介します。【春夏秋冬そして春】キム・ギドク監督、2003年制作、<goo映画解説>より春-深い山あいの湖に浮かぶ寺で、老僧と幼い見習い僧が暮らしている。幼子はふといたずら心で、小さな動物の命を殺めてしまう…。夏-子どもは青年になっている。そこへ同年代の女性が養生のためにやって来て、寺に暮らすことに。青年の心に欲望、そして執着が生まれる。秋-寺を出た青年が十数年ぶりに帰ってくる。自分を裏切った妻への怒り。老僧は男を受け入れ、荒ぶる心を静めるようにさとす。冬-湖面を氷が覆う。壮年となった男の前に、赤子を背負った女が現れる。そして春…。<大使寸評>韓国映画なるものを観たのは、この作品が初めてだったと思うが・・・・輪廻転生とか、韓国的な恨とか、東洋的な宗教テイストを感じたけど、良かった♪goo映画春夏秋冬そして春
2014.05.28
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今でもじゅうぶんに新自由主義に打ち負かされた日本の労働者であるが・・・それに追い討ちをかけるようなホワイトカラー・イグザンプション論議が再燃しているようです。日本の悲惨な労働事情から見ると、政財界や国家公務員の発想はどこか宙に浮いたような隔世の感があるけど・・・2極化すると、丸金側に庶民感覚が無くなるんでしょうね(アホやで)ということで、次の記事で丸金側の発想を見てみましょう。5/26「ヒラ社員も残業代ゼロ」構想の全内幕より<官製ベア成立で約束された“受難”>記者 「Aタイプの労働者は、労働基準法の労働時間規制の適用除外になるのか」大臣 「民間議員の提案で、検討はこれから。詳細を民間議員から伺ったわけではない」記者 「労働時間と報酬は峻別するとある。でも適用除外でないのか」大臣 「法改正が必要か否かは、厚生労働省で詰めていただきたい」 4月22日の19時前。東京・霞が関の中央合同庁舎8号館の講堂で、予定より30分遅れで始まった記者会見の壇上。経済再生担当相の甘利明の顔には、ちぐはぐな答弁を余儀なくされたことへの困惑の色が、ありありと浮かんでいた。質問が集中したのは、この日の経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議で、産業競争力会議雇用・人材分科会主査である長谷川閑史(経済同友会代表幹事)の名前で提出された、説明資料についてだった。この「長谷川ペーパー」に、6月に改定される成長戦略への反映に向け1年間議論が重ねられてきた、官邸の雇用戦略の全貌が示されるとみられていた。この日のペーパーでは、労働時間と報酬のリンクを外す「新たな労働時間制度」を創設するとして、Aタイプ(労働時間上限要件型)とBタイプ(高収入・ハイパフォーマー型)が提示された。詰めかけた記者たちが一様にその内容をつかみかねて、首をひねっていたのが、Aタイプだ。労働基準法では1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える残業や休日・深夜労働をした労働者に、企業は割増賃金を払う必要がある。甘利は言を濁したが、字面を素直に追えば、本人の希望と労使合意があれば、対象者はこの労働時間規制の適用が除外され、「残業代ゼロ」になると読み取れる。問題は、その対象者は誰なのか、そして労働時間規制に代わる最低労働条件はどう法で定められるのかという、肝心要の点について、まるで触れられていないことにある。「子育てや親の介護などを余儀なくされる労働者に向くのでは」長谷川は会議で対象者のイメージをこう語ったが、それが特に要件とされているわけではない。ペーパーの冒頭では、働きすぎや過労死、「ブラック企業」の問題から労働基準監督の重要性まで五月雨式に触れられているが、いかにもバランスを取るための後付け感が強い。 <「岩盤規制」の雇用に目を付けた経産省>成長戦略に盛り込むには、具体的な制度設計が必要となる時期にもかかわらず、この日のペーパーが甘利が答弁に苦しむような曖昧模糊としたものになったのには理由がある。そのおよそ2週間前、4月9日に開催された産業競争力会議雇用・人材分科会。会議では「多様な正社員(限定正社員)」と「解雇の金銭解決制度」について議論されたが、実は分科会の開催前、内閣府副大臣の西村康稔、厚生労働副大臣の佐藤茂樹を中心に関係者が集まり、西村の部屋で非公式な会合を持った。議題となったのは、22日の合同会議で初めて議論されたことになっている「新たな労働時間制度」である。この場で関係者に示された長谷川ペーパーの「原案」には、あいまいさのかけらもなかった。現在の労働時間制度は工場労働者を想定した仕組みであり、ホワイトカラーには適さない、それに代わる新たな労働時間制度として「スマートワーク」なるものを創設するというものだ。このスマートワークでは、対象者の範囲に業務や地位の限定を設けず、本人の同意と労使の合意に委ねることで、幅広い労働者の利用を可能にするとしている。実際そこで図示された対象者のゾーンには、「ヒラ社員」の最末端、つまり新入社員まで含まれている。本人の同意と労使合意さえあれば、どんな業務内容の新入社員でも労働時間規制が及ばず、残業代なし、深夜・休日割り増しなしで働かせることができる。現状でも経営者と一体的な立場にある「管理監督者」、専門職や企画職で適用される「裁量労働制」では、労働時間規制は原則適用されない。また第1次安倍政権の2006~07年当時議論された「ホワイトカラー・エグゼンプション」のように、管理職など一定の層の労働者を労働時間規制の適用除外とする構想が、議論の俎上に載ったことはある。だがこのスマートワークのような、およそすべての労働者をその対象とする提案は初めてだ。昨年12月に出された産業競争力会議雇用・人材分科会の提言でも、労働時間規制の緩和に関しては、まずは年収1000万円以上の専門職を対象に導入を検討するとされており、原案はそこから大きく逸脱するものだ。ただ、非公式会合の出席者からは、原案を問題視する声は上がらなかった。
2014.05.27
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日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。・・・・で、今回のお奨めです。・かないくん・村上海賊の娘〈上・下〉さっそく、図書館に借り出し予約するのもいいかもね。***************************************************************かないくんより<世代結ぶ「死」との距離感覚:鈴木繁(本社編集委員)> 隣席の「かないくん」が小学4年で死んだ。ひとり向こうに行った「しんゆうじゃない、ふつうのともだち」だった少年のことを、絵本作家が60年以上たってふいに思い出し、絵本にしようとして結びを描きあぐねている。老作家には死期が近い。 「かない」は、谷川の亡くなった級友の姓でもあるという。企画したのは糸井重里。「ほぼ日刊イトイ新聞」によれば、まず谷川俊太郎と話をし、受諾した詩人は大筋を一晩で書いた。絵を依頼されたマンガ家松本大洋は、初の絵本にためらい、考えた末に受けたが、完成したときには2年近い歳月が流れていた。執筆と作画の違い以上に、死との距離感覚の違いが関係している気がする。 地球上に生物が発生して十数億年の間、死はなかった。バクテリアの仲間、原核生物は老いず死なず、分裂するのみ。死は「ヒトが進化史で獲得した『能力』」と『有性生殖論』(NHKブックス)で生物学者高木由臣は語っている。生が世代から世代へとリレーされるように、死もまたリレーされていく。 人の生のイメージは拡散し続け詩の衰退はやまない。生物としての進化が誰にでも無償で与えてくれる死は、詩情の最上の牙城か。寺山修司の言を借りれば、谷川は暗い戦後詩に「おはよう」を持ち込んだ詩人。ここでも死にあいさつするようなさわやかなエンディングが印象に残る。白みを生かしたデザインがそれをさらに引き立てる。 松本大洋は「かないくん」を自分の友だちであるかのように、温かく、寂しく、ありていに描き出している。思い出の中から跳ね出してくるウサギや、ごつごつとした外皮の内に命を秘める樹木とともに。 谷川から差し出されたものを、大事に抱き取ろうとする松本のしぐさが見えるようだ。 ◇[作]谷川俊太郎 [絵]松本大洋、東京糸井重里事務所、2014年刊 <商品の説明>よりある日、ともだちのかないくんが学校を休んだ。かないくんは親友じゃない。ふつうのともだち。日常に訪れた、はじめての“死”。死ぬって、ただここにいなくなるだけのこと?詩人、谷川俊太郎が、一夜で綴り、漫画家、松本大洋が、二年かけて描いた絵本。企画監修は糸井重里。<読む前の大使寸評>谷川俊太郎のお話を、松本大洋が二年かけて描いた絵本とのことなので、見てみたいのです。絵本作家としての松本大洋についてはマンガと絵本でも、触れています。 rakutenかないくん村上海賊の娘〈上・下〉より<個性派ぞろいの痛快活劇:瀧井朝世(ライター)> 今年発表の吉川英治文学新人賞、本屋大賞の大賞受賞作。戦国時代、第一次木津川口の戦いを題材にした痛快な活劇大作だ。主人公は瀬戸内海に君臨した村上水軍の娘、長身痩躯なやんちゃ娘、村上景。敵も味方も魅力的な個性派ぞろい、彼らがぶつかりあう合戦シーンはまさに血湧き肉躍る名場面が続く。 著者は城戸賞を受賞した脚本の小説化作品『のぼうの城』で注目された。大阪生まれの広島育ちで、幼い頃から村上水軍の話を見聞きしており、週刊誌連載の依頼を受けテーマに選んだ。そこから構想と執筆に4年半。担当編集者の田中範央さんは「徹底的に調べあげて史実を頭に叩き込み、先にシナリオを書き感触をつかんでから小説連載に取り組んでいました。著者のこの苦労が報われて本当にうれしい」。 部数の推移をみると、まず昨年10月の初版は上下計9万5千部。当初から評判はよく、今年1月21日の本屋大賞ノミネート発表時点での累計部数は上下計18万部。その後大賞の内定を受けての事前増刷もあり、4月8日の本屋大賞発表時点では上下計75万5千部。以降は毎週増刷し、現在上下計94万5千部だ。刊行当初は30代以上の男性読者が多かったが発表後の購買層は幅広く、特に50代以上の女性の増加が目立つ。「テレビのニュースや新聞で本作を知り、購入されるケースが多いようです」と、営業部の松本太郎さん。 昨年から小説の舞台である広島と愛媛では盛り上がりを見せ、著者も現地の書店に足を運んでサイン本などを作成していた。だが本屋大賞ノミネート後は「投票の呼び掛けになるようなことはしたくない」と書店訪問を一切やめたという。純粋に作品の面白さで評価されたことを示す結果となった。 ◇『村上海賊の娘〈上・下〉』和田竜著、新潮社、2013年刊 <「BOOK」データベース>より和睦が崩れ、信長に攻め立てられる大坂本願寺。海路からの支援を乞われた毛利は村上海賊に頼ろうとした。その娘、景は海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女だった…。<読む前の大使寸評>この本は第一次木津川口の戦いを題材にしているようだが・・・・個人的には、村上水軍と鉄砲集団雑賀衆との出会いが興味深いのです。伝説の鉄砲集団:雑賀衆でも触れたが、雑賀衆のエピソードは、小説や映画のネタとしても面白いし、これこそ歴史秘話というべきでしょうか。 rakuten村上海賊の娘〈上・下〉**************************************************************<asahi.comのインデックス>最新の書評を読むベストセラー解読売れてる本(新聞紙面のデジタル版はだいたい2~3日後にUPされています。)朝日デジタルの書評から40朝日デジタルの書評から(目録)
2014.05.26
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レース前には「練習不足でもハーフなら楽しめる」と豪語した大使である。でも、実際に走ってみると、えらい目に遭ったわけです(笑)今回は観光半分で来ているので、前夜祭にもしっかり出席し、無料のお酒、つまみもしっかりいただきました。民宿の料理も値段(1泊2食で8790円)のわりには、ま~不満もございません。朝食それから、民宿ではWI-FI接続が可能となっていたので、ダメモトで持参したタブレットがネットにつながったのです。なお、レース結果は2時間23分台で、昨年の浜坂ハーフマラソン結果2013 に比べると、今回は14分ほど落ちています。ラップタイムを見てみると、一時はキロ8分台にも落ちる体たらくで…要するに、疲労と暑さでヨレヨレで走っているのが見てとれます。(ま~晴れて30℃くらいあったけど、それは言い訳に過ぎません)以下、記録詳細です。60歳以上男子順位:120位台/184人(ラップタイム) (1K換算)1K 6’19 6’19(実際は5’40くらい)2K 11’52 5’323K 17’49 5’564K 23’51 6’015K 29’52 6’017K 42’35 6’21 折り返し 68’08 12K 75’55 6’3513K 82’41 6’4515K 96’55 7’0716K 103’43 6’4818K 120’07 8’12残2 128’26 8’19残1 136’19 7’52ゴール 143'くらい 7’35
2014.05.25
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もうすぐ、浜坂ハーフ1泊旅行にでかけます♪なにしろ、右足受傷とか父の看取りなんかがあったりで、練習が足りていないので・・・今回は、レースよりは観光旅行の感があります。約半年ぶりのマラソン出走になりますが、浜坂を楽しんできます。ちなみに浜坂ハーフマラソン結果2013 です。
2014.05.24
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本屋のパソコン、WEBコーナーに、「500円でわかるシリーズ」がときどき顔をみせるのだが・・・大使は、このシリーズのコストパフォーマンスが好きなのである。で、このたび「500円でわかるウィンドウズ8.1」を買い求めたので、紹介します。【500円でわかるウィンドウズ8.1】ムック、学研パブリッシング、2014年刊<商品説明>より累計900万部突破!500円でわかるシリーズ!本書は、さらに新しくなった「ウィンドウズ8.1」の操作法について、一手順ずつ丁寧に解説します。パソコンがはじめての方も、買い換えた方も、これ1冊で安心して使えます。新機能の解説もバッチリ。<大使寸評>マイクロソフトの陰謀、セキュリティ問題がなければWinXPを使い続けたいわけで、それだけ必要充分なOSだったのであるが・・・・このほど、OSを2つ飛ばしでWinXPからWin8.1に更新したのである。もっと具体的に言えば、新しく買ったWin8.1タブレットのOSがWin8.1だったのです。でも、やっぱり、なんとかと畳は新しいものがええなぁ♪Amazon500円でわかるウィンドウズ8.1蔵書録の9 ウェブ関連の本から、もう一冊の「500円でわかるシリーズ」を紹介します。とにかく、この蔵書録をながめると、汗と涙の軌跡が見えるのです(笑)【500円でわかる電子書籍】ムック、学研パブリッシング、2013年刊<商品説明>よりついに登場した読書のためのタブレット=Amazon・Kindleシリーズ。本誌はその特長や使い方をはじめ、自分に合った1冊を探す方法までを伝習。iPhoneやiPad、アンドロイドタブレットなどの端末で電子書籍を閲覧する方法も、併せて紹介。 <大使寸評>試しに電子書籍を購入したいので、この本で研究しようと思った次第です。rakuten500円でわかる電子書籍
2014.05.23
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『BD 第九の芸術』という本を図書館で借りたのは、メビウスについてもっと知りたかったわけです。宮崎駿や松本大洋に大きな影響を与えたメビウスでしたが、惜しい人を亡くしたものです。<大御所メビウス>p124~126より BDのことはあまり知らなくても、メビウスの名前だけは知っている人は多いはずである。日本のマンガに詳しい人なら大友克洋や宮崎駿に影響を与えた人物だと記憶しているかもしれない。しかし日本では、実際にメビウスのマンガを読んだことがあるという人は少ない。ほとんど邦訳されていないのだから無理もない話だ。リアルタイムで『メタル・ユルラン』誌を読んでいた世代、あるいは海外から作品を取り寄せるような愛好家を除けば、日本ではもっぱらBDの巨匠というイメージが先行し、卓越した画力だけが注目されてきた。 BDの象徴でありながら、メビウスはアメリカ文化の影響を強く受けている。BD自体がアメコミの影響を強く受けてきたのだからある意味で当然ではあるが、アメリカの映画業界の活躍のひとつとってもメビウスの場合は他の漫画家に比べて際立っている。メビウスの作品には、アメリカが中心的な役割を果たした20世紀という時代が刻まれている。 メビウスが「バズーカ」と違って生き延びた理由としては、ジャン・ジロー名義のウェスタン『ブルーベリー』(1965)をヒットさせると同時に、アメリカのコミックスやイラストや映画を肯定的に自作に取り入れたことが挙げられる。日本人には想像しずらいかもしれないが、フランスではウェスタンがBDのジャンルとして定着している。人気の背景には、砂獏の荒野には伝統的なヨーロッパの石造りの重厚な町並みにはない開放感があるからだろう。砂漠のウェスタンと宇宙を舞台にするSFは、フロンティア・スピリットという共通点もある。 メビウスはウェスタンからSFまでこなすエンターテインメント性と芸術性を兼ね備えていた。メビウスはSFやウェスタンという極めてアメリカ的なジャンルで傑作を発表し、アメリカでも成功した数少ないフランスの漫画家なのだ。彼の迫力ある絵や幻想的でユーモラスな世界は、娯楽性を兼ね備えることで幅広い読者層を獲得し、その芸術性や斬新な作風によって既成のBDのイメージからの脱却を推し進めた。メビウスとその時代を概観すれば、アメリカ文化の影響力の大きさとともに、良きにつけ悪しきにつけマンガが子供向けの読み物から後にアートとして評価されることとなるクオリティを獲得していく過程がわかるだろう。ロング・トゥモロー<フランス初、アメリカ進出マンガ誌>p140~141より 師匠になることを笑いながら快諾し、精神的に支えた人物がホドロフスキーだとすると、メビウスの才能を爆発的に開花させたフィールドは、1975年創刊の雑誌『メタル・ユルラン』である。 『メタル・ユルラン』で展開されたメビウスならではの幻想的な世界や高い画力に裏打ちされた精緻な描写は、世界中のマンガファンのみならず映画界にも衝撃を与え、「スターウォーズ」「ブレードランナー」や「エイリアン」といった映画史に残る傑作が制作されていった。 『メタル・ユルラン』の興亡に関しては、当時大学受験もせずに家出同然の状態で同誌に参加したセルジュ・クレールが描いた『日記』(2008)というBDがある。 いわば『メタル・ユルラン』のドキュメンタリー・マンガで、脚色混じりとはいえ実在する人物の舞台裏が生き生きと描かれ、『メタル・ユルラン』の創刊に尽力したジャン=ピエール・デュオネが序文を書いている。(中略) 『メタル・ユルラン』は政治的な有効打となるほどの経済的成功を収めることはできなかったが、フランス語圏のマンガ雑誌がアメリカに進出したことは、BD史において特筆すべきことである。BD業界ではアメリカのコミックスが仏訳されることはあっても、その逆の例は少なかった。 雑誌が担っていた役割や期待は今よりも大きかった。だからこそ政治的な意味づけができたのである。インターネットが普及していない当時、雑誌は情報伝達で重要な役割を果たし、流行の仕掛け役でもあった。 マンガ雑誌は掲載作の単行本を紹介する広告塔としても機能していた。しかも雑誌ならば、購買力のない若者でも気軽に買って読むことができる。グーグルのイメージ検索や大画面テレビも身近にない時代にあって、マンガ雑誌はイメージの魅惑をかきたてる媒体として大きな役割を担っていた。現在、BDの出版社は、日本の「マンガ」の人気との相乗効果もあって活況を呈しているが、雑誌はというとフランスでも日本でも娯楽の多様化やネットの普及によって衰退傾向にある。それだけに雑誌が時代を象徴するというムードは想像しづらいかもしれない。アルザック<『アルザック』>p150~152より メビウスの多彩な画風をウェスタンのジャン・ジローとSFのメビウスに分けたとき、そのSFのメビウスのなかには、略画的な絵柄と細密な絵柄のスタイルがある。メビウスは驚くほどさまざまな絵柄を描き分けながら、それぞれの作品にふさわしいスタイルを探り当てる。『アルザック』では、盟友のフィリップ・ドリュイエにも顕著なアール・ヌーヴォー的な装飾的なコマ割りがなされ、台詞も説明文もないので字幕のないサイレント映画を観ているようだ。沈黙の音色に耳を澄ますべき作品とでもいおうか。 このように写実的に描かれたSFマンガでテクストが皆無というのは珍しい。言葉というノイズを消去し、グラフィックなヴォイスだけで語りかける。メビウスの描線は言語的な意味で編み上げられる表層のネットワークよりも深部へと入り込み、自らの無意識に深く沈潜することによって、読者の無意識に働きかけようとする。 メビウスは『アルザック』の序文で「ひじょうに個人的で、感覚の次元に属するもの」を呼び覚まし、「無意識の周縁にある、意識のもっとも深いレベル」を表わすことを目指したと述べている。たしかにページを操る読者は、無音の世界という夢幻的な感覚を抱くだろう。悪夢の魅惑というべきか、翼竜に跨って空を飛ぶ主人公アルザックが目にするのは、化け物の顔に変貌する女であり、わけもなく襲ってくる怪物だ。夢ほど脈絡のないイメージが続くわけではないが、一般的にマンガの読者が期待しているようなわかりやすさはなく、肩すかしをくらうような結末で物語は断ち切られる。もっともそれこそが幻想文学の短篇の余韻であり醍醐味と言うべきであろう。 そもそも「アルザック」とはいったい何者なのか。《ARZACH》、《ARZAK》、《HARZACK》、《HARZAK》、《HARZAC》、《HARZACKC》と目まぐるしく変わる表記は、メビウスが影響を受けたと公言するレーモン・ルーセルの言語遊戯を感じさせると同時に、キャラクターの自己同一性が保たれていないことがわかる。 こうした言語遊戯は、混沌とした複数の自我を固有名詞へと束ねた主体によって構成される世界とは異なる時空を描くうえで、表現上のアクセントになる。フリージャズの演奏が技術と形式に裏打ちされてはじめて威力を発揮するように、錯乱した世界もメビウスの卓越した画力によって生々しく視覚化されるのだ。『Inside Moebius』和訳より<物語表現>p228~230より 日本ではボードワンは過小評価されている感があるが、メビウスは高い評価を受けている。メビウスの描く絵や線の魅力については言をまたない。あるいは百言を費やさねばならない。他方でメビウスには語り口の魅力というものもある。それが自伝的BDにも生かされている。 実際に話すという意味での語り口は、2009年5月6日に京都国際マンガミュージアムで行われたイラストレーター村田蓮爾との対談で堪能することができた。自伝的マンガ『インサイド・メビウス』から抜け出てきたかのような黄色いTシャツ姿のメビウスは、ユーモアと誠実さを兼ね備えた飄々としたトークを繰り広げ、ペンを片手に実際に目の前で描いてみせた。 講演では何度か「物語表現」という言葉を口にされていたが、このことは物語をいかにして造形するかというメビウスの問題意識を再認識させるものだった。また現代のBDでは珍しくないイラストブック的な形態も、自らがパイオニアだという自負を語っていたのも印象深かった。つまりメビウスは魅力的な絵を描くだけでなくマンガの可能性を追求する革新者でもあるということだ。 すでに触れたようにメビウスは『巨根男』で左右別々のストーリーを同時進行させるという実験的な形式に取り組んだ。話の断片を並べていく作風は『アルザック』では幻想的に、『密封されたガレージ』ではユーモラスに生かされていた。だが残念ながら日本ではメビウスの卓越した画力ばかりが注目され、物語の技法に自覚的な漫画家だということはあまり認識されていない。 ここで取りあげてみたいのは、メビウスの物語る語り口の魅力について、ジャン・ジロー・メビウス名義で描かれた『インサイド・メビウス』(2004-10)という不思議な作品についてである。全貌が明らかにならぬまま現在も続いているシリーズについて論じる難しさはあるが、ほとんど邦訳されていない現状に鑑みれば今のメビウスを紹介できるという利点はあるかと思う。 とりあえず「自伝的マンガ」と記したが、一読すれば一筋縄にはいかない作品だということがわかる。メビウス本人がキャラクターとして登場して、実生活とも重なる【BD 第九の芸術】古永真一著、未知谷、2010年刊<「BOOK」データベース>よりコマの否定、吹き出しのみの構成、メタレベルのストーリー、ダンスとのコラボレーション…ほとんど分類不能、クールジャパンの対極のアヴァンギャルド―古くはバタイユがBDのアーナキーさに注目し、70年代に前衛集団「バズーカ」、90年代に前衛漫画集団「ウバポ」、大御所メビウス、ポードワンなどを紹介しながら、第九の芸術と言われるBDの歴史的背景と表現媒体の可能性を見る、待望のBDアヴァンギャルド論。<読む前の大使寸評>BDという言葉より先に、大御所メビウスを知り、その圧倒的な技量に驚いたわけです。ということで・・・BD(フランス漫画)の中でメビウスが占める位置とか、影響力を知りたいわけです。AmazonBD 第九の芸術
2014.05.22
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<中国のレアアース統制8> H25.10.27~~ 中国のレアアース統制に中華の特質が見えるのではないかということで、フォローしています。このたび、この件に関してWTOのクロ裁定が出され、中国完敗の目処が立ったのです(笑)♪思えば、苦節16年にもわたり、日本主導の地道な対抗策が実を結んだのでしょうね。今後、危惧されるのはWTOの機能不全である。(だいたい、中華思想と国際的規制とは水と油みたいなもんだろうね)焼結磁石の最大エネルギ積と保磁力の関係・レアアース関連ニュース6********************************************************************<中国のレアアース統制7>目次・レアアース関連ニュース5・日中経済摩擦のまとめ********************************************************************<中国のレアアース統制6>目次・レアアース関連ニュース4・中華の謀略には、実力で押し返すしかない********************************************************************<中国のレアアース統制5 >目次・レアアース関連ニュース3・資源保護関連ニュース・急変するレアアース市場********************************************************************<中国のレアアース統制4 >目次・レアアース関連ニュース2・資源戦略について・海底資源争奪戦で中国を甘く見てはあかんで!・レアメタル専門商社社長より********************************************************************<中国のレアアース統制3>目次・レアアース関連ニュース1・原発とレアアース・チャイナフリーの正念場・脱・レアメタルのお勉強********************************************************************<中国のレアアース統制2>目次・WTOがやっと認めた・海底のレアアース争奪戦・しつこくテクノ・ナショナリズム・中華の「やらずぶったくり」・電気自動車の覇権争い・中国製電気自動車ってどんなかな?********************************************************************<中国のレアアース統制1>目次・チャイナフリーを目指すのがベスト・中国のレアアース輸出停止・チャイナフリーの物作り・環境を収奪する中国の経済成長・レアアースとシェールガス・中国のレアアース囲い込みに対して、どうすればいいの?レアメタル・レアアース/Yahoo!レアアース問題/サーチナ<レアアース関連ニュース6>5/21中国のレアアース輸出割当制度、終了迫られる?WTOの判断次第で―中国より 中国メディア・中国網は20日、世界貿易機関(WTO)の判断次第で、中国が1998年から実施してきたレアアースの輸出割当制度が、終了を迫られる可能性があると報じた。 中国の輸出規制をめぐっては米国と欧州連合(EU)、日本がレアアース、タングステン、モリブデンの輸出管理措置がWTOの規則に違反すると訴え、WTOは3月に違反と認定した。中国経済週刊の報道によれば、中国は4月17日、この判断を不服としてWTOの上級委員会に上訴の文書を提出した。 米国側も4月8日、中国に先回りする形でWTOの一部判断に不満があるとして、上訴している。 中国網は「現在、中国にできるのは上訴の結果を待つことだけだ。もしもWTOが再び中国の手法はWTOの規則に違反すると認定すれば、中国は1998年から実施してきたレアアースの輸出割当制度の終了を迫られる可能性があり、関連政策も調整が必要だ」と指摘する一方、中国レアアース産業協会の陳占恒副秘書長の「割当制度と関税がなくなれば国際市場でレアアースの価格が下がり、競争が激化して外国企業にとっても不利になる」というコメントも紹介している。ああ言えばこう言う中国人と論争するのは、精神衛生上、良くないと思うのだ。4/08レアアース輸出規制の協定違反に、「WTOを脱退すべきか否か」・・・意見分かれる=中国版ツイッターより 世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)が3月26日、中国のレアアース(希土類)輸出規制はWTO協定に違反していると判断したことについて、中国メディアの中研網は4月30日、「WTOはレアアース供給量を減少させることが環境破壊を軽減し、現代の“工業技術革新”を促進させることについて見逃している」などと主張した。 記事はまず、中国ではレアアース採掘によって環境破壊が進んでおり、人びとの健康にとってリスクとなっていると指摘、「環境破壊を改善するためには大量の資金と長い時間が必要だ」とし、「わが国がレアアースの“盲目的”な開発を抑制することは必要なこと」と論じた。 さらに記事は、トヨタや三菱電機などがレアアースを使わないモーター用磁石を開発したことや、日立製作所が同じくレアアースを使わない永久磁石同期モーターの開発に成功したこと、ホンダが日本重化学工業株式会社と共同で、使用済みのハイブリッド車用ニッケル水素バッテリーから必要とする原材料を抽出・回収する新技術を開発したことを挙げ、中国がレアアースの輸出を制限したことが「結果的に工業技術の躍進をもたらした」と主張した。 続けて記事は、「中国がレアアースの輸出を制限したことは、現実的には中国の環境保護と技術革新をもたらすという“功利”があった」と主張。日本や欧米ならびにWTOが「こうした“功利”の存在に目を向けようとしないのは非常に残念だ」と論じた。(編集担当:村山健二)3/27中国のレアアース輸出規制、WTOが違反認定より[ジュネーブ/ワシントン 26日 ロイター] -中国のレアアース輸出規制をめぐる通商紛争で、世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は26日、中国敗訴の判断を下した。輸出税や輸出枠設定などを通じた中国のレアアース輸出規制をめぐっては、中国が国内の主要ハイテク産業を不当に優遇しているとして、米国、欧州、日本がWTOに提訴していた。米通商代表部(USTR)の声明によると、レアアース、タングステン、モリブデンの3品目について、中国の輸出規制は協定違反と認定された。欧州委のデフフト委員(通商担当)は「今回の決定は、いかなる国も他のWTO加盟国を犠牲として世界市場の原材料をため込むことはできないことを示すもの」と述べた。これに対し、 中国商務省は声明で「当該規制措置がWTOの推進する持続的開発目標と完全に合致するものと確信している」とし、当局としてWTOの報告を現在精査中とした。10/26<レアアース>WTOは中国敗訴の判断へ、日本閣僚はにんまり笑顔で有利をアピールより 2013年10月25日、網易は記事「日本メディア:レアアース訴訟でWTOは中国敗訴の判断へ」を掲載した。 25日、日本メディア各社は、世界貿易機関(WTO)が日米欧の訴えを認め、中国のレアアース輸出規制が規約違反との中間報告案をまとめたと報じた。茂木敏充経産相は25日朝の閣議後の記者会見でWTOの中間報告書が配布されたことを認めた。内容は極秘のため明かせないが、「表情をご覧いただければと思います」とコメント。日本に有利な内容であることを示唆した。 2012年6月、日米欧は中国のレアアース、モリブデン、タングステンの輸出規制がWTOルールに違反しているとして提訴した。紛争処理小委員会で審理されてきたが、このたび中間報告書がまとめられた。さらに関係国からの聴取を経た上で12月にも最終報告が発表される見通しだ。(翻訳・編集/KT)10/26中国の輸出規制「完全に失敗」…希土類需要急減:読売新聞 より 世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会が、中国のレアアース(希土類)輸出規制に反対する日米欧の主張を大筋で認める中間報告を出したことが分かった。 レアアースを戦略資源と位置づける中国の手法は曲がり角に来ている。 日本など各国は、レアアースの使用量を減らす技術や代替品の開発を進めている。新金属協会によると、日本でのレアアースの需要は、2007年の約3万2000トンから12年には約1万4000トンまで減少。価格はピークだった11年の10分の1近くまで下落した。 10年9月、沖縄県尖閣諸島付近の領海に侵入した中国人船員の逮捕で日中関係が緊迫した際、中国産レアアースの日本への輸出が事実上止まって大きな影響が出たが、今や輸出国としての中国の地位は低下している。 中国は10年にレアアースの輸出枠を大幅に減らしているが、12年の輸出量は枠の4割前後にとどまったとみられる。今回の中間報告で、輸出規制が「クロ」判定される公算が大きくなり、「中国の戦略は完全に失敗した」(外交筋)との見方が強まっている。10/21ジスプロシウム不要の磁石合金 昭和電工、中国の地下水汚染対策に一役より 文字数制限により省略、全文はここ)10/16【中国BBS】日本を経済封鎖せよ…子どもじみた主張に反論殺到より文字数制限により省略、全文はここ)
2014.05.21
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『「間取り」の世界地図』という本を図書館で借りて読んだのだが・・・「間取り」と聞いて思いつく言葉は、2DKと京町屋なんですね、大使の場合。そのあたりを、この本から紹介します。建築設計者もある種の職人であるが、「はじめに」の文章にも著者の建築設計者としての慎ましさが表れているのです。<はじめに>p3~5より マイホームを新たにつくろうとするとき、あるいは、マンションを購入したり借りたりするとき、まず気になるのが、「間取り」ではなかろうか。 住まいの「間取り」を見ることで、そこで暮らす家族の関係性や日々の生活のありかたが、ある程度想像できるといっていい。 「間取り」は単なる平面図に過ぎない。 しかし、そこに描かれた四角や三角の図形、その線や曲線からは、まるでのように、その時代、その土地の人びとの生活観や家族観、価値観などをうかがい知ることができる。 本書では、そうした変遷する「間取り」をひも解いてみた。そうすることで、過去と現在、日本と世界の人びとの暮らしの様子や生活の知恵が浮かび上がってくる。と同時に、「間取り」に込められた設計者たちの隠れた工夫も見えてくる。それを感じ取ってもらえたら、建築にたずさわる者としてこんなにうれしいことはない。カマボコと51C型のすばらしさより<都市生活者が団地住まいに憧れた理由>p22~24より それでは公営住宅の「51-C型」の間取りをみてみよう。 玄関の間は、半畳のたたきの踏み込みとして工夫され、入口から入るとすぐに板の間のDKになる。ここにキッチンセットが置かれた。ステンレスの流し台が近代化のシンボルとして鎮座することになる場所である。このDKこそが、やがてはちゃぶ台からイス座のテーブルセットへと進化していった現場である。 そして、四畳半と六畳の二部屋が、ややズレたかたちでDKと隣接している。DK横の四畳半の和室は、食寝分離のための部屋である。二つの和室の区切りも襖1枚で開放できるものであったが、いささかのプライバシーが確保されるよう配慮されていた。トイレは水洗式の男女共用便器で、行水や洗濯のため、床に水を流せる場所が設けられている。また、バルコニーでは堂々と洗濯物を干せるだけの広さを確保し、入口の横には物置のスペースがあった。 この「51-C型」というDKを持つ間取りをさらに普及させるきっかけとなったのが、1955年に発足した日本住宅公団の団地建設だった。 住宅公団はこの間取りを標準化し、四畳半と六畳の二部屋、そしてステンレスの流し台がついたダイニング・キッチン、そして、当時はまだ珍しかった内風呂を組み合わせて、13坪(約43m2)の2DK住宅を誕生させたのだ。 当時の主婦にとって、DKでピカピカと光り輝くステンレス流し台は、なんとも魅力的だったにちがいない。それまでの流し台といえば、せいぜいコンクリートに御影石のかけらを入れて磨き上げた研ぎ流しの流し台か、あるいはタイル張りか、トタンだったからだ。 さらに、それまでキッチンといえば、家の裏側にあって、あくまで裏方であり、ある地味で目立たない存在だった。それがダイニングと並んで、明るい位置に配置されたのである。ダイニング・キッチンの登場は、台所が生活の表舞台に登場する歴史的な出来事でもあったのだ。坪庭ゲストハウス楽座より<通り庭を生かした町屋の工夫>p90~91より 日本の家では必ず下足を脱ぐというのが基本だが、かつては家の中でも下足のまま移動する空間が確保されていた。土間とそれに続く「通り庭」である。 この土間とも通り庭も、かつての日本の庶民住宅がもっていた大きな特徴である。 農家や町屋には必ずあった土間は、家の表から裏の中庭まで通り抜けることができる空間であり、通り庭の奥には炊事や煮炊きなどをする台所、水回りがあった。農家住宅にあっては作業場も兼ねていた。 映画「男はつらいよ」の寅さんが、故郷の葛飾柴又にひょっこり帰ってくると、オイちゃんオバちゃんの団子屋の店内を抜け、裏庭にまで出て、タコ社長が経営する印刷工場に声をかける。 「労働者諸君!」 もちろん、寅さんはいつもの雪駄を履いたままだ。いわば、あの通り道が「通り庭」なのである。 かつては、通り庭を通って裏庭に出ると、隣家との境界に沿って、湯殿、雪隠、小便所などが一列につくられていた。そのため、通り庭は、人糞の汲み取りのために天秤棒で肥溜めを担ぐ人が通れる道でもあった。この通り庭を通って、秤棒で肥溜めを担ぐ人が通れる道でもあった。この通り庭を通って、貴重な肥溜めが百姓に売られるという仕組みになっていたのだ。 もちろん、家の人は通り庭を通って、敷地の奥にある土蔵や便所に行き来していたし、商売を営んでいるような町屋には必ずあった。通り庭を持つ町屋は、わが国の都市住宅の原型の一つといっていいだろう。 町屋は、もともと職人や町人の住居の総称だが、中世から近世にかけて、京都において発展し、江戸時代には日本各地で独自の発展を遂げている。<日本人の「内」と「外」の感覚>p115~116より 日本人は靴を脱ぐという行為によって「内」を感じる。上がり框を上がったとたん、あるいは玄関で靴を脱ぎ捨てたとたん、リラックスできるようで、靴を脱ぐと同時に上着をとり、ネクタイを外し、蒸し暑い夏となれば、ズボンも脱いでステテコ姿で部屋を闊歩するといった具合だ。 もちろん、妻や娘たちからは嫌われるが、世の男性諸氏の一断面であることは確かであろう。もう「内」にいるのだから、どんな格好をしていても許されるはずというわけだ。 そう考えても、私たちが帰宅して気楽になるきっかけは、どうも靴を脱ぐという行為からはじまっていることは確かであろう。 それでは欧米ではどうであろうか。ドアから一歩家に入ると、服を着替えていきなり下着姿というのはちょっとお目にかからない。なにせ靴は履いたままなのだから、着替えもままならないだろう。 彼らにとって靴が脱げる部屋、寝室に入ったときこそ、本当のリラックスできる場所になるようである。寝室こそが何でも許され、開放感を味わえる空間なのだ。そうすると、ゴロゴロとどこでも寝転べる日本の畳の部屋は、すべてベッドの代わりであるともいえる。 こうして和室がもつ特性については、明治期に来日し、大森貝塚を発見したことで知られるエドワード・モースがすでに指摘しており、その効用を高く評価している。 その点、欧米の住宅の居間や食堂は、日本の住宅と比べて何でも許されるという気楽さはなく、むしろ一種の公共性を有しているように思える。それは家族がともに過ごすことへの考え方のちがいが反映されているようだ。 また、日本人の特性として、個人のプライバシーを主張するより、互いの雰囲気を大切にするところがあり、それは地域社会にあっても、近所の人たちと縁側や井戸端で気楽に交流するといった融和的な関係の中で育まれていったのである。【「間取り」の世界地図】服部岑生著、青春出版、2006年刊<「BOOK」データベース>より東京・NY・パリ…のアパートの間取りの違い。続き間・縁側・通り庭…狭い日本ならではの工夫。比べてわかる住まいの人間関係学。【目次】1 日本の「間取り」とその変遷(マンション、団地…集合住宅に見る、日本人の暮らしの変化/江戸の武士住宅からつづく、日本住宅の古きよき伝統/間取りから浮かび上がる、暮らしの知恵としきたり)/2 「間取り」の世界地図(比べてわかる、世界の家族観、生活観…のちがい/日・米・英…大富豪の邸宅の間取り)<読む前の大使寸評>手にした時の斜め読みから・・・・著者のかもす民俗学的なセンス、職人の慎ましさが感じられたので、借りたわけです。rakuten「間取り」の世界地図
2014.05.20
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<H26マラソン参加計画見直し> 5/25の浜坂ハーフマラソンが迫ってきたが、父の葬儀や花粉症があったりで、練習を再開したのが、つい4日前くらいなので・・・楽しく走るために体調を整えておくのが、ギリギリ間に合う準備になります。まあ、市民ランナーの常で、よくあるパターンなんですけどね(泣) 右足受傷とか、父の葬儀があったりで練習計画に狂いが生じたので(3ヶ月ほどのブランクか)、今年のマラソン参加を、次のように見直ししました。 えらいこっちゃ、神戸マラソンの募集期限が明日になってるがな。(→5/20 神戸マラソンの初出場枠でエントリーしました。当りますように♪)*******************************************************************************<H26マラソン参加計画見直し>・5/25浜坂ハーフ(2/27エントリー済み)・9/末 大阪30K・11/2淀川ハーフ(募集期限:7/31)・11/23神戸マラソン(募集期限:5/20の17時)・12/中旬 三田ハーフ******************************************************************************<H25のエントリー実績>・3/17 宿毛花へんろマラソン:パス・4/14 芦屋ハーフ・5/26 浜坂ハーフ・定期診断:5月末、8/末、11/末・9/8 烏原駅伝(雨天中止)・9/28 大阪30K(7/7エントリー済み―コース不良で中止)・11/3淀川ハーフ(6/10エントリー済み)・11/17神戸マラソン(落選)・11/24瀬戸内ハーフマラソン(7/11エントリー済み、エントリー3500円)・12/15三田ハーフ(9/16エントリー済み、右足受傷で出走キャンセル) ********************************************************************************<H25のレース結果>・5/26 浜坂ハーフ 浜坂ハーフマラソン結果2013 ・11/3淀川ハーフ H25淀川ハーフ結果速報・11/24瀬戸内ハーフ 小豆島ハーフ結果********************************************************************************<マラソン練習計画>6月 130K 10×10、15×2、20×07月 130K 10×10、15×2、20×0 8月 150K 10×10、15×2、20×1・・・・9月 150K 10×10、15×2、20×1・・・・10月 150K 10×10、15×2、20×1・・・・********************************************************************************<RUNNET情報・ネット情報>2013芦屋国際ファンラン4/22志摩ロードパーティハーフマラソン神戸マラソン2014大阪30K第25回三田国際マスターズマラソンHP27回浜坂ハーフ大会PDF
2014.05.19
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散歩道の雑草群が、3日見ぬ間の様変わりをとげています。やや、霞みがかっているがクモの巣か?と思ったら・・・よく見るとカスミソウのような雑草でした。雑草たちの体内時計がシンクロしているのか、それともフェロモンを放って同調しているのか♪アカツメグサも見頃です。ノイバラやヤマボウシも見頃でおま♪
2014.05.18
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安部さんが集団的自衛権に前のめりで入れ込んでいます。確かに中国の軍拡は脅威であるが・・・即、憲法解釈を変えて、集団的自衛権に結びつけるのは、ちょっと論理が狂っているのではないか?前のめりの安部さんに対して悠長かもしれないが、歴史をさかのぼり・・・日中間でいつか来た道でもある日清戦争について、知っておきたいわけです。先ず、NHKの高校生向け歴史資料を見てみましょう。高校講座、日清戦争より<開戦の経緯>1860年代半ば以降、フランスやアメリカは、朝鮮半島を支配していた朝鮮王朝に開国を迫っていました。日本も、朝鮮に対して条約締結と開国を迫り、1876年に日朝修好条規を結んで朝鮮を開国させました。しかしその一方で、清国も朝鮮への介入を強めていきました。朝鮮国内では清国を支持する勢力と日本を支持する勢力が対立しました。1884年、日本の協力を得て国内を改革しようとする金玉均らのグループがクーデターを起こします。「甲申事変」です。これに対し清国は朝鮮に軍隊を送り、鎮圧しました。翌1885年、日本は清との関係を修復するため伊藤博文を清に送り「天津条約」を結びました。この条約で、今後、朝鮮に重大な事件が起きて出兵する場合には互いに連絡しあうことを決めました。1894年春、朝鮮南部で大規模な農民の反乱が起こりました。「甲午農民戦争」です。役人による不当な課税などに対して民衆が怒り、そのころ朝鮮で広まっていた新興宗教「東学」の指導者を中心に武力蜂起したのです。朝鮮政府はこの鎮圧のため、清国に出兵を要請。清国からは2000人余りの軍隊が派兵されました。これに対して日本は、朝鮮にいる日本人を保護するためとして、朝鮮への出兵を決定、およそ4000人を送りました。ところが、日清両国軍の介入に危機感をもった朝鮮政府と農民軍は和約を結び、反乱はいったん収まります。そこで、日本政府は清国に共同で朝鮮の内政改革を行なうことを提案しましたが、清国はこれを拒否しました。日本政府は独力で朝鮮の内政改革にあたるとして、そのまま兵を置くことを決めました。そして、朝鮮王宮を占領。清国寄りの政権を倒し、国王の父で日本を支持していた大院君(テウォングン)を政権の座につけました。そして、清国軍を追放をしてほしいと、朝鮮王朝から日本に依頼させたのです。その2日後の1894年7月25日、プンド(豊島)沖で遂に日清両軍の艦隊が戦いに突入、日清戦争が始まったのです。<19世紀末の東アジア情勢と戦争の原因・目的>なぜ日本は清と対立してまで朝鮮半島にこだわったのでしょうか。それを考えるためにこのころの東アジアの状況を整理してみましょう。 中国は清王朝が支配していました。19世紀末、世界の強国としてイギリスと対立するロシアが東アジアにも勢力を伸ばしていました。こうした対立に拍車をかけたのが、1891年に始まった、ロシアによるシベリア鉄道建設です。この鉄道の終点はウラジオストクです。当時日本政府の要職にいた山県有朋は、シベリア鉄道が完成すれば、ロシアの朝鮮進出が容易になると危機感を募らせました。そして、日本の安全を守るためには国境を守るだけでなく、その外側(周囲)、つまり朝鮮の安全を確保する必要があると考えました。一方、甲申事変後、朝鮮への影響力を強めるには清国を討たなければという主張もメディアに出てきました。こういう状況で1894年に起きた「甲午農民戦争」が引き金となって日清戦争が始まったのです。日本が戦争に進んだ背景は2つあります。一つは、国内の事情です。開戦前の1894年には政府は衆議院の政党勢力と対立して追い詰められ、衆議院を2回も解散するほどでした。国内的には、もう一つ、清国と戦える軍事力がこの時期になって整備されたということがあります。また対外的には、イギリスとの関係です。1894年7月16日、開戦の直前に、イギリスと日英通商航海条約が結ばれました。これによって、清と戦争になっても最強の国イギリスが戦争に介入するおそれがなくなりました。日清戦争に関しては「きままに歴史資料」というサイトの資料が充実しています。(若干、右寄りスタンスかもしれないが)明治開化期の日本と朝鮮(1)より<儒教の差別思想・・・華夷秩序> 朝鮮は、徳川時代には徳川将軍に書を送る際に「日本国王」宛てとしていた。すべてに貴賎上下の価値観を当てはめる儒教による中華思想・華夷秩序に生きる朝鮮は、国家間にも中国>朝鮮>日本という上下関係を観念として持ち、さらに、朝鮮は清国の属国の立場にあることから、朝鮮の首領は清国皇帝から任じられた朝鮮国王ということになる(世子―後継者となる王子を認許、すなわち実質的に国王の選任である。またその妃も清の認許が要る。朝鮮は、その華夷秩序に従って日本の徳川代々の将軍にも「日本国王」として書を送っていたのである。 しかし、日本は明治維新によって「将軍である日本国王」は退き「天皇による親政」となった。したがって、明治以降は他国に対しては政府書簡の中で「皇帝」の意味である「天皇」や「皇上」「皇勅」という字を使うことになる。しかし朝鮮はこれが気に食わなかった。それでは今まで国王同士で一応対等だったのが、皇帝>国王という上下関係から言えば、朝鮮は日本の下位の国となる。つまり旧来の礼義に反するというわけである。ましてや中華思想から言って、より外側の国が中華に近い国よりも上位に立つことがあってよかろうはずがない、というのである。 これは日本側からすれば全くのナンセンスであった。日本は別に中国の属国でもなければ、華夷秩序の中にいるわけでもない。独立した自主の国であり、国の首領にどういう地位名を付けようが勝手である。しかし、それが気に食わないというのならと、先に述べたように、様々に手直しをするという譲歩をしたが、それでも朝鮮側は受け取ろうとしないのである。 これでは当時の日本人としては怒らずにはおれなかったろう。<人道無視と日本への貿易制限と誹謗中傷> さらには従来人道上から当たり前のこととしてなされていた海難事故による漂流民を相互に救助し保護することについても、それを無視して日本人の漂流民数人を釜山草梁の海岸に放置するなどした。また対馬との貿易も制限したため対馬は経済的に立ち行かなくなった。つまり事実上の経済制裁である。 更にその上、公館の門には次のような文書が貼り付けられるという事態に至った。 「無法の国、恥知らず、衣服容貌とも日本人にあらず(洋装洋服のことらしい)、(明治維新など)天下の笑うところなるを平然としている恥知らずである」と。 朝鮮官吏から草梁公館の門番兵宛の達示文であったが、日本に対するその露骨な誹謗中傷の内容と、また何度も繰り返したことや、文書が東莱府使によるものであったことから、日本への宣戦布告の公示とも解釈できる代物であった。 当然「征韓の議論」も激しくなる。西郷隆盛が、自分が単身朝鮮に渡って宮廷で直談判して説き伏せる、それがかなわねば戦争だ、などという物騒なことを言い出したのは、この誹謗中傷の報告を受けてのことであった。日清戦争下の日本と朝鮮(14)より<日清戦争原因の理解ポイント> 日清戦争開戦を招くことになった日清両国による朝鮮派兵であるが、清国が派兵したことに対し、なぜ日本もまた派兵したのかという理由をはっきりとさせておかねばならない。 先ず、朝鮮の支配権云々という推論以前に、実際に日清間でおきた歴史上の事件を確認しておきたい。 第一に、明治15年朝鮮事変(壬午事変)である。この軍民の乱によって朝鮮政府要人が殺害されたのみならず、被害は日本公使館や館員などの身にも及んだことから、日本政府は朝鮮軍による公使館護衛を求めた。しかし朝鮮政府は軍の統率を失っていることから、やむを得ず日本軍による護衛となり、日朝間の条約、済物浦条約によってそれが規定された。つまりは日本兵の朝鮮駐屯は条約上の権利であった。 次に、明治17年朝鮮事変(甲申事変)が発生する。当時、朝鮮国王からの依頼により王宮で国王護衛の任に就いていた日本公使と日本兵およそ130人に対し、1000人を超える清軍が突然王宮に攻め入って攻撃をしかけ、日本公使館をも襲撃した。更にこの時に清兵は、何の関係もない京城居留の日本民間人を殺害し婦女を陵辱し(婦人1人を含む死者36人、拉致被害婦人12人)、また財産も掠奪した。 このことに対し、清国政府は遂にその非を認めず、謝罪もせず、賠償にも応じなかった。これでは、もし再び朝鮮に清兵が派遣されれば、日本としても公使館と居留民保護のために充分な兵力を派遣せざるを得ないだろう。天津談判によって日清両軍の朝鮮からの一時撤退が決ったが、日本が朝鮮に派兵する権利を有する済物浦条約は依然として有効であった。 明治19年には、清国は巨大戦艦を長崎に派遣して威嚇し、そのうえ上陸した清国水兵数百人が暴れまわるという大事件(長崎事件)が発生する。 この時も清国政府は、清兵の乱暴を鎮圧せんとしたおそよ30人の日本巡査の行動を、治安取締りの行為と認めず、清兵と巡査の喧嘩であると主張し、最後までそれを押し通した。互いの国民の犯罪行為を現地国の法で取り締まることを規定した日清条約があったにもかかわらずである。 当時の日本人が猛烈に怒ったのはこれらの点である。また、清国をはっきりと敵国と意識するようになったのも。 しかし今日それにふれる解説は皆無と言ってよい。おかしなことである。それぞれが日清戦争にいたる重要なファクターなのであるが、日中の近代史からはすっぽりと抜け落ちている。 どうも、今日流布する近代史はまことに異常なものが少なくないと、考え込んでしまうことがある。そこで、巷に氾濫する浅薄な解説などに惑わされず、自ら資料を読まれることを勧めたいのだが、これも実際には難しいことであろう。
2014.05.17
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今回借りた4冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「フランス漫画」でしょうか。<市立図書館>・BD 第九の芸術・ビゴーの150年<大学図書館>・「間取り」の世界地図・「超」文章法図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)*************************************************************【BD 第九の芸術】古永真一著、未知谷、2010年刊<「BOOK」データベース>よりコマの否定、吹き出しのみの構成、メタレベルのストーリー、ダンスとのコラボレーション…ほとんど分類不能、クールジャパンの対極のアヴァンギャルド―古くはバタイユがBDのアーナキーさに注目し、70年代に前衛集団「バズーカ」、90年代に前衛漫画集団「ウバポ」、大御所メビウス、ポードワンなどを紹介しながら、第九の芸術と言われるBDの歴史的背景と表現媒体の可能性を見る、待望のBDアヴァンギャルド論。<読む前の大使寸評>BDという言葉より先に、大御所メビウスを知り、その圧倒的な技量に驚いたわけです。ということで・・・BD(フランス漫画)の中でメビウスが占める位置とか、大きさを知りたいわけです。AmazonBD 第九の芸術【ビゴーの150年】清水勲著、臨川書店、2011年刊<内容紹介>より フランス人画家ジョルジュ・フェルディナン・ビゴー(1860~1927)は、明治15年から17年余り日本に滞在し、膨大な量の作品を残した。欧化政策を推し進める日本政府、日清戦争、自然災害、そして近代化の渦中を生き抜く人々の姿......激動の時代にあった明治20年代の日本社会を、彼の眼はいかに捉え描写したのか? 歴史教科書の諷刺画で有名なビゴーと日本との関わりを、150年にわたる年表と豊富な図版を交えて明らかにするビゴー資料の決定版! <大使寸評>画像数、時事年表、ビゴー自身の年表、ビゴーの親族の近況、索引など、どれをとっても圧倒的な情報量であり・・・観て面白い辞典的な本になっています。4700円という価格もすごいが、図書館で借りる際の有りがたさに感じいります♪Amazonビゴーの150年ビゴーの風刺画のなかでも日清戦争従軍のものが報道として優れていると思うので、ビゴー画像から、ランダムにピックアップしてみます。ビゴー画像より【「間取り」の世界地図】服部岑生著、青春出版、2006年刊<「BOOK」データベース>より東京・NY・パリ…のアパートの間取りの違い。続き間・縁側・通り庭…狭い日本ならではの工夫。比べてわかる住まいの人間関係学。【目次】1 日本の「間取り」とその変遷(マンション、団地…集合住宅に見る、日本人の暮らしの変化/江戸の武士住宅からつづく、日本住宅の古きよき伝統/間取りから浮かび上がる、暮らしの知恵としきたり)/2 「間取り」の世界地図(比べてわかる、世界の家族観、生活観…のちがい/日・米・英…大富豪の邸宅の間取り)<読む前の大使寸評>手にした時の斜め読みから・・・・著者のかもす民俗学的なセンス、職人の慎ましさが感じられたので、借りたわけです。rakuten「間取り」の世界地図建築設計者もある種の職人であるが、「はじめに」の文章にも著者の建築設計者としての慎ましさが表れているのです。<はじめに>p3~5より マイホームを新たにつくろうとするとき、あるいは、マンションを購入したり借りたりするとき、まず気になるのが、「間取り」ではなかろうか。 住まいの「間取り」を見ることで、そこで暮らす家族の関係性や日々の生活のありかたが、ある程度想像できるといっていい。 「間取り」は単なる平面図に過ぎない。 しかし、そこに描かれた四角や三角の図形、その線や曲線からは、まるでのように、その時代、その土地の人びとの生活観や家族観、価値観などをうかがい知ることができる。 本書では、そうした変遷する「間取り」をひも解いてみた。そうすることで、過去と現在、日本と世界の人びとの暮らしの様子や生活の知恵が浮かび上がってくる。と同時に、「間取り」に込められた設計者たちの隠れた工夫も見えてくる。それを感じ取ってもらえたら、建築にたずさわる者としてこんなにうれしいことはない。【「超」文章法】 野口悠紀雄著、中央公論新社、2002年刊<商品説明>より ベストセラー『「超」整理法』をはじめ、数々の著書で知られる野口悠紀雄が、読者を引き付け、自らのメッセージを印象的に伝えるための文章術をまとめた1冊。 ほかの著書と同様、今回も構成や内容がじつに詳細に吟味されており、文章において「八割の重要性をもつ」というメッセージの探し方・磨き方から、文章の「骨組み」の作り方、比喩や引用・具体例などの「筋肉増強」法、わかりにくさを排し、読み手の心理に配慮するための「化粧」の仕方までが、じつに上手にまとめられている。とくに、反対概念や対立概念を示すことによって元の概念の性格を明らかにする、といった工夫や、1文1意主義(著者は1パラグラフ1意主義を説く)、「ドラマチックに始め、印象深く終えよ」といった教訓などは、文章を書く際に常に意識しておきたいところだ。テクニック面においても、抽象的な概念を伝えるために名前をつける、さまざまな事象を人の身体や自動車などにたとえる、引用句辞典を使って巧みな引用をする、といった豊富な内容が盛り込まれている。 <読む前の大使寸評>著者の経済論は、あまり信用していないのだが・・・・手帳とか、情報整理に関しては一目置いています(笑)Amazon「超」文章法*************************************************************とまあ・・・・抜き打ちのように、関心の切り口を残しておくことも自分史的には有意義ではないかと思ったわけです。図書館大好き60図書館大好き(目録)
2014.05.16
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ハリウッド映画を見なくなって久しいが・・・・見逃していた「ゼロ・グラビティ」のDVDを、大学図書館で観たのです。ソユーズのカプセルが、摩擦熱で火の玉状態となって大気圏を突き切るシーンがすごいですね。奇しくも、若田さんがそのカプセルでカザフスタンの草原に帰還した実況報道を、午前中に観ていたので・・・・この映画の帰還シーンが、よりリアルに感じられたのです。そして、この実況報道と映画を観て思うことなんですが・・・・ハリウッド映画の描くアメリカン・ドリームは宇宙にしか残っていないことと、中国の傲慢な振る舞いである。地球の回りを飛び回るデブリ(宇宙ゴミ)は人工衛星の脅威となっているが、中国の衛星破壊実験でその脅威が倍加した事実があるわけです。つまり、宇宙を国威発揚と軍拡の場としか見ない中華思想が見えるのです(大使の場合)なんか、つい米中に対する愚痴に落ち着いたが(笑)、それはともかく・・・・ジョージ・クルーニーが命綱となっているロープを、自ら断ち切るシーンがかっこよかったでぇ♪過去の日記から、沢木耕太郎の「ゼロ・グラビティ」レビューを紹介します。ゼロ・グラビティより<無重力、究極の「漂流」を体験:沢木耕太郎> 偶然、先月に続き、この「ゼロ・グラビティ」もまた、私にヤン・デボンの「スピード」を思い出させることになった。 それは何と言っても、女主人公がサンドラ・ブロックだったことが大きい。しかも、その女主人公は、「スピード」と同じように、乗り物を操って絶対の危機を脱しようとするのだ。 ただし、秀れた能力を持つ男性からの指示を受けつつ、彼女がパニックを起こしそうになりながら操るのが、「スピード」のような「乗り合いバス」ではなく、「スペースシャトル」だという違いはあったのだが。 シャトルの船外に出て、ハッブル望遠鏡の改修作業をしている最中、遠くで爆破された衛星の宇宙ゴミが、連鎖的に他の衛星を破壊しながら近づいてくるという異常事態が発生する。そのため、ヒューストンから、すべての作業を中止して、地球に帰還せよという命令が出る。 だが、女性で、医学実験をするため乗り込んでいたストーンの一瞬の判断の遅れが、シャトルを危機に陥れてしまう。当のストーンも、凄まじい勢いで飛んできた宇宙ゴミに激突され、自分を繋ぎ留めてくれているアームのコントロールがきかなくなる。なんとかそのアームから離れることができたものの、それは暗黒の宇宙空間にひとり放り出され、漂いつづけるということでしかなかった……。 そう、これは一種の「漂流記」なのだ。 しかし、ロビンソン・クルーソーのように海ではなく、空だということが、私たちに言い知れない恐怖をもたらす。なぜなら、海を漂流するということに関しては、その本質的な恐ろしさとは別に、書物や映像、あるいは実際の知見などによって、あるていど想像がつくところがある。荒れ狂う海、照りつける陽光、飢えや渇き、陸地が見えないことの絶望。だが、大海原以上に広大な宇宙空間に放り出された人間にどのようなことが起きるのか、私たちにはほとんど想像がつかない。 ◇アルフォンソ・キュアロン監督、2013年米制作<観る前の大使寸評>12/13公開予定の映画だが、これほどネタバレの映画評となっていいのかと、あるブロガーが怒っていたが…うーむ どうなんでしょうね。 面白そうな映画であることは良くわかりました。movie.walkerゼロ・グラビティ
2014.05.15
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神戸に帰ってからも、ホットスポット調査を続けています。調査を続けていて、つくづく思うのだが、1万円を追加してSIMフリーのタブレットを買っておくべきだったかも・・・・ということです。*********************************************************************【調査結果】1.駅前喫茶店 「設定」バー内のアンテナアイコンをタップしたら、即、ファミリマートWi-Fiサービス画面が現れ、利用規約等に同意するとブラウザ選定画面が続いたので、見慣れたMSN選び・・・好きなサイトにつながったのです。ややこしい初回アクセス時のパスワード設定を省略しているのが、手間がはぶけて、ええでぇ♪ただし、1日の利用は20分×3回という制限があるので、長居をしても1時間までになります。ファミリマートのWi-Fi無料インターネット接続2.ケンタッキーフライドチキン 店の前のベンチに座って試したんですが、「設定」バー内のアンテナアイコンをタップし、現れた回線のうちで一番強い分をクリックしたら・・・何の手続きもなしにネットにつながったのです。店の前でつながるなんて、簡単過ぎてなんだか恐いでぇ♪(これは、何かの間違いだと思うけど、つながったから、まあ いいか)3.西神中央ファミリーマートの前ファミリーマート店の前でトライしたが、快調につながった。4.駅前のマクドナルド公衆無線LAN、Wi2の回線強度がアンテナ表示2本と弱いためか、接続は不調であった。5.神戸のau店内公衆無線LAN、Wi2の回線強度が弱いためか、接続は不調であった。6.田舎のスーパー店内公衆無線LAN、Wi2の回線強度が弱いためか、接続は不調であった。7.中村駅構内初回アクセス時のパスワード認証およびネット接続にはじめて成功したのです♪(タブレット入手後、苦節2週間を経て、4/14にやっとタブレットの本領を発揮したのですー汗)8.中村駅構内2回目にアクセスしたら不調なので、再度パスワード認証をトライし、ネット接続が183日有効となったのです♪溜まっていた50通ほどのメールをチェック。9.神戸市図書館 図書館でFree Spot接続をトライしたら、初回アクセス時のパスワード認証もしないのにつながった。まあ、いいけど・・・どうなっているんだ? なおタブレットのこれまでの導入実績、今後の予定は以下のとおりです(汗)。*********************************************************************【タブレット導入実績、今後の予定】・オフラインで作動確認、説明書確認(4/2)・4/2、4/3中村や徳島道で、ホットスポット接続確認を行ったが作動せず→後日再チャレンジ・自宅ルーターでWIFI設定(4/5済み)・自宅ネットで楽天ブログ管理画面確認(4/5済み)・自宅ネットでウェブリブログ管理画面確認(4/5済み)・自宅ネットでツイッター画面確認(4/5済み)・自宅でOutlook、カレンダー、ストア等のMSアカウントサイン(4/6済み)・Outlook2013のメーラーで電子メールのアカウント作成(4/6済み)・メール受発信テスト(4/6済み)・「青空文庫」から書籍を導入し、作動確認(4/6済み)・紀伊国屋書店Kinoppyに登録(4/7済み)・自宅ネットで楽天ブログのコメントに返事(4/8済み)・自宅ルーターの到達領域を探査(4/8済み) ・自宅ネットでツイッター書込み(4/8済み)・WinXPマシンとタブレットの自宅LAN構築(4/8済み)・WinXPマシンのデータを、タブレットでピン留め表示(4/8済み)・タブレット側のデータをLAN経由でWinXPマシンにコピー(4/8済み)・セキュリティソフトMcAfeeの契約、導入(4/9済み)・神戸でのホットスポット接続確認(4/9、10実施済み)・WinXPマシンの主要データをカードリーダー経由SDでタブレットにコピー(4/10済み)・タブレットに秀丸(エディター)導入(4/11済み)・マウスの作動確認(4/11済み)・ネットから縮専ソフト導入(4/11済み)・Wi2 300 公衆無線LANに契約・導入(4/11済み)・Wi2 300によるマクドナルド接続は不調(4/11済み)・中村駅構内で初回アクセス時のパスワード認証およびネット接続に成功(4/14済み)・中村駅構内で再度パスワード認証およびネット接続(4/20済み)・タブレットからブログ書込み(4/21済み)・父の逝去、葬式があり、調査を中断(4/22~5/11)・MicroSD(東芝製16GB:2660円)を購入し、タブレットに装着(5/12済み)・タブレット撮影動画をMicroSDに移動(5/12済み)・タブレットに現有プリンタのドライバー導入・印刷確認(5/12済み)・タブレットのブラウザをMS-IEとgoogleクロームを併用する(5/12済み)・神戸市の図書館でFree Spot接続確認(5/13済み)・神戸のホットスポットでネット接続テストを継続(5/13~)・フレッツ・スポット(NTT西日本:月額210円)を検討する。・WinXPマシンのブラウザをMS-IEからgoogleクロームに変える(5月下旬頃までに)・GPSアプリ(Google Search無料等)を導入・作動確認(5月下旬頃までに)・タブレットで電子書籍購入、作動確認(5月下旬頃までに)・タブレットで撮影した動画を、youtubeに投稿する(適宜)・各種ソフト・アプリを導入、作動確認(適宜)*********************************************************************【今後の運用及び課題】・メール送受信はタブレットとし、XPマシンでは極力受信しないように設定する。・ワイヤレスDVDドライブ購入検討・文書作成はWinXPマシンが主、タブレットを従とする。・インターネット閲覧はタブレットが主、XPマシンを従とする。(楽天ブログ・トップ画面をインターネット閲覧窓口にするのもいいかも)・タブレットの操作はマウスと画面キーボードの併用が最も快適である。・WinXPマシンのソフト整理&強化(神戸に帰って、息子に依頼)・Win7等の中古パソコンを購入して、現有WinXPマシンを乗りかえる。*********************************************************************【ホットスポット・無線サービスエリア】全国の無線スポット・無線サービスエリアは以下のとおりです。freespot四万十市(無料)・中村駅 、サンリバー四万十 freespot神戸市中央区(無料)・三宮図書館、中央図書館、神戸メリケンパークオリエンタルホテル、神戸空港ターミナルビル2F 、ファミリーマート、ケンタッキー etc.サービスエリア拡大競争に突入? 公衆無線LAN(Wi-Fi)の今公衆無線LANサービス徹底比較! “タダで使える”裏ワザとは?Wi2 300 公衆無線LAN(四万十市)ご参考までに、レノボMiix28導入の汗と涙の軌跡です。*********************************************************************【タブレット導入の軌跡】ホットスポット調査結果42014.04.21ホットスポット調査結果32014.04.15ホットスポット調査結果22014.04.11ホットスポット調査結果12014.04.10ホットスポット調査が昼酒に変わった2014.04.07タブレットの慣らし運転2014.04.05タブレットを買った2014.04.05タブレットにするか32014.03.15XPパソコンをどうするか2014.03.11電子書籍の正体2014.03.08タブレットにするか22014.03.04タブレットにするか12014.02.25電子書籍リーダーはどれ?2013.12.16電子書籍事情はどんなかな?2013.01.13*********************************************************************Windows 8タブレットのデスクトップ画面を指タッチで操作することは、どだい無理なので、大使はUSBマウスで操作しているが・・・次のような辛口批評がありました。Windowsタブレットはタッチでは使いづらい(前編)より1年近く前にWindows 8を搭載したタブレット(ThinkPad Tablet 2)を購入して使ってきた。正直に言ってしまうと、「なんか使いづらいなと」思っており、使用頻度が多くないのも事実だ。Windows 8には矛盾がたくさんあって、タブレットでは使いづらい場面が少なくないのだ。そこで、タブレットでもマウスとキーボードで使ってしまおうというのが本記事のテーマだ。特に、これからWindowsタブレットを購入する方は、ぜひ参考にしていただきたい。 使ってみると、キーボードより、マウスが欲しいわけだ。そこで、おすすめなのは、Bluetooth接続のマウスの利用だ。タブレットには、通常サイズのUSB端子がないので、Bluetoothが便利だ。 Windows8タブレットをマウスで操作すれば、要するにノートパソコンと同じであり・・・ウルトラブックなみに快適なんですよ♪まるごとタブレットWindows XPのサポートがついに終了! 残されたXPパソコンはどうする?
2014.05.14
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日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。・・・・で、今回のお奨めです。・へるん先生の汽車旅行・アトミック・ボックス さっそく、図書館に借り出し予約するのもいいかもね。***************************************************************へるん先生の汽車旅行より<百年余前の風景を「歩く評伝」:保阪正康(ノンフィクション作家)> パトリック・ラフカディオ・ハーン(日本での英語教師契約書にヘルンとあった)は、1904年に54歳の一期を東京・西大久保の自宅で終えた。夕食時には子供たちと雑談を交わしていたのに、その後体調不良を訴え、寝床に横になったが、「間もなく、もうこの世の人でありませんでした」(妻節子の『想ひ出の記』)という。 1850年にギリシャのレフカダ島で生まれ、父の奔放な生活の犠牲で孤児同然で育ったためか、ハーンの生涯の「アングロサクソン嫌い、キリスト教嫌い、は自分を捨てた父親への反感」からという。青年期からロンドン、ニューヨーク、シンシナティ、フィラデルフィアなどに居を定めながら新聞記者、作家活動に精をだすが、しかしその生活態度が常に体制の枠組みから外れるのも彼自身の「西洋合理主義」への苛立ちに起因していた。 ただ人間的には憎めないところがあり、困窮、孤立の状態になると必ず支えになる人物があらわれる。40歳の年に、ある雑誌の依頼で日本探訪の記事を書くために来日する(1890年)。「放浪者、夢想家、独善家」の語があてはまるこの人物は、日本社会の伝承に関心を持ち、日本人の妻を求め、晩年には日本に帰化して幾多の作品(怪談が多い)を残す。著者は、「ハーンは出雲に来て変わった。(略)日本文化の神髄を知るに至り、日本定住を決意した」といった表現でその心情を明かしている。 本書は、ハーンが移り住んだ北米各地、松江、熊本、神戸など日本の各地を著者が丹念に歩き、ハーンの姿がどう刻まれているかを、今と百年余も前の風景を想起、対比させながら書き進める。その意味で本書は、「歩く評伝」というべきで、新しいジャンル確立を感じさせる。著者の祖父とハーンのふたりの像の中に、著者がこだわる近代の国家像が垣間見える。 ◇『へるん先生の汽車旅行』芦原伸著、集英社インターナショナル、2014年刊 <「BOOK」データベース>より小泉八雲は「元祖バックパッカー」だった。ニューヨークから松江までの旅でその人生を一変させた男がいた。文無しジャーナリスト、ラフカディオ・ハーンは、一八九〇年、ニューヨークから鉄道で大陸を横断し、横浜へと向かった。松江で「へるん先生」となった男は、熊本、神戸、そして東京へと生涯旅を重ねた。<読む前の大使寸評>ラフカディオ・ハーンのイメージとして、旅行カバンを下げたややうらぶれたシルエットが浮かびます。人生の長旅の最後に、日本にたどりつき…やっと安らぎを得たのかもしれません。そのへるん先生の汽車旅行とあれば、興味がわくのです。 rakutenへるん先生の汽車旅行アトミック・ボックスより<原発と原爆の違い:永江朗> サラリーマンを辞めて漁師になった父が、臨終にあたって娘に託したのは国家機密だった……。 池澤夏樹の『アトミック・ボックス』は、機密ファイルを持った娘が公安警察に追われながら、父の秘密と謎を解いていくという冒険小説である。 スピード感あふれる展開が気持ちいい。読んでいるうちにヒロインの美汐とともに自分も駆けたり泳いだりしている気分になる。 追われる者と追う者という古典的な枠組みのなかで、扱われていることは今日的かつ壮大だ。 美汐の父は大学で数学を専攻し、コンピューターの専門家になった。メーカーで設計の仕事をしていたが、上司からの命令である極秘プロジェクトに参加する。それは国産の原爆をつくるシミュレーションだった。ところがプロジェクトは突然中止、チームも解散する。前後して父は自分が胎内にいるとき広島の原爆で被爆していることを知る。被爆者である自分が新たな原爆をつくろうとしていたという事実にショックを受けた父は、故郷に戻って漁師になっていた。やがて福島で原発事故が起き、父は癌になった。そして、原爆開発計画の証拠ファイルを、娘に託す決意をする。 登場人物たちの口を通じて語られる、核に関する情報や見解が、「考えろ」とぼくたち読者の背中を押す。「ずっと運転しつづける発電所に比べたら、出番を待って眠ったままの爆弾の方が作る方が気が楽さ」と極秘計画のスタッフがいう。核の連鎖反応をずっと続ける原発の方がコントロールが難しいのだ。 アメリカのスリーマイル島原発事故が1979年、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故が86年、そして東電福島第一原発事故が3年前。大きな事故だけでも、すでにこんなに起きている。「安全が確認されたものから再稼働」という言葉がいかに無意味であるか、ちょっと考えただけでもわかる。それなのに……。 ◇『アトミック・ボックス』池澤夏樹著、毎日新聞社、2014年刊 <「BOOK」データベースより>28年前の父の罪を負って娘は逃げる、逃げる…「核」をめぐる究極のポリティカル・サスペンス!<大使寸評>池澤夏樹が、これほど面白く読める活劇をものにするとは、意外でした。ほぼ同時期に読んだ「コラプティオ」、「やっちゃれ、やっちゃれ!」と比べてみると、この本がいちばん面白く読めたのです。この3作品の優劣を比較するのはどうかとも思うが(笑)、ストリーテラーとしては池澤夏樹が優れているということでしょうね。rakutenアトミック・ボックス**************************************************************<asahi.comのインデックス>最新の書評を読むベストセラー解読売れてる本(新聞紙面のデジタル版はだいたい2~3日後にUPされています。)朝日デジタルの書評から39朝日デジタルの書評から(目録)
2014.05.13
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鄙の地の喫茶店で阿部夜郎さん原画展というのがあり、見に行ったのです。あの人が阿部夜郎さんなんだろう。「深夜食堂」の原画が、何点か飾ってあります。私の甥は、安部さんの親友であること、それから安部さんの叔父は私の親友であることを強調して、サインをおねだりしたところ・・・特製コースターに、丁寧なマンガを描いてサインしてくれました。ほんとうに腰の低い人で、恐縮した次第でおま♪中国、台湾、韓国でも安部さんのマンガが出版されているそうで、けっこうメジャーと言えるんじゃないでしょうか。安部さん曰く「マンガは儲からないが単行本を出せば、かなり潤う」とのことです。小さな町の出身なので、作者と我々読者は、なんらかのつながりがあるわけです♪
2014.05.12
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お天気良~し♪ こういうのを五月晴れと言うんでしょうね。ドングリ国の初夏をレポートします。裏山沿いのケヤキ並木の若葉がきれいです。大使公邸のセイヨウジュウニヒトエが見頃をむかえています。大使公邸の玄関脇です。庭造りのコンセプトは落葉広葉樹の葉っぱが見たいというかなりアバウトなものなので・・・このアングルでは、単なる荒れ庭に映るかも(笑)
2014.05.11
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ほぼ1ヶ月ぶりに神戸に帰ってきました。父の看取り、葬儀の合間に、図書館で本を借りたわけです。<図書館大好き60>今回、四国の図書館で借りた5冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「原発あるいはポリティカル・サスペンス」でしょうか。<市立図書館>・アトミック・ボックス・コラプティオ・やっちゃれ、やっちゃれ!・言語学が好きになる本・小説家になる方法図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)*************************************************************【アトミック・ボックス】池澤夏樹著、毎日新聞社、2014年刊<「BOOK」データベースより>28年前の父の罪を負って娘は逃げる、逃げる…「核」をめぐる究極のポリティカル・サスペンス!<大使寸評>池澤夏樹が、これほど面白く読める活劇をものにするとは、意外でした。ほぼ同時期に読んだ「コラプティオ」、「やっちゃれ、やっちゃれ!」と比べてみると、この本がいちばん面白く読めたのです。この3作品の優劣を比較するのはどうかとも思うが(笑)、ストリーテラーとしては池澤夏樹が優れているということでしょうね。rakutenアトミック・ボックス【コラプティオ】真山仁著、文藝春秋、2011年刊<「BOOK」データベース>より「私には希望がある」-国民の圧倒的支持を受ける総理・宮藤隼人。「政治とは、約束」-宮藤を支える若き内閣調査官・白石望。「言葉とは、力」-巨大権力に食らいつく新聞記者・神林裕太。震災後の原子力政策をめぐって火花を散らす男たちが辿り着いた選択とは?『マグマ』で地熱発電に、『ベイジン』で原発メルトダウンに迫った真山仁が、この国の政治を問い直す。<大使寸評>この本のテーマが震災後の原子力政策となると、ジャンルとしては、ポリティカル小説になるんでしょう現実社会では、BWRメーカーでもある東芝が三菱重工をさしおいて、ウェスティング・ハウスを買収するというねじれ現象が生じています。この小説では、政府が東芝とおぼしきミドリ電機を通じて、ウェスティング・ハウスとおぼしきウィルバー・コムまで国有化して、更に三菱重工とおぼしき大亜重工と組ませて原発で経済大国を目指すという設定になっています。それから、後半の部分では、アフリカのウェステリアで資源開発事業団がウラン鉱脈を掘り当てた後、軍事クーデター発生し、日本贔屓の大統領が処刑されるというようにきな臭くなるのです。クーデター資金の出所を狙って、ルモンドと暁光新聞がスクープ合戦を広げることになり・・・最終章あたりで、資源獲得のため、日本にスパイを送り込む中、仏が暴露されるのが、怖いで!業界の裏を知り尽くした、真山さんのやや無理筋のポリティカル小説となっています。戦略的シュミレーション、政治的イシューとしては面白いが・・・文芸作品としては、エピソードてんこ盛りで、ちょっと雑ではないかと思った次第です。Amazonコラプティオ米国のPWRメーカーを日本政府が国有化するというストーリーは、大胆であるが…かの国のパワーポリティクスが許すことは実際にはあり得ないではないか。【やっちゃれ、やっちゃれ!】坂東眞砂子著、文藝春秋、2010年刊<「BOOK」データベース>よりこのまま衰弱死するがやったら、高知は日本から独立するしかないろうが!直木賞作家が本気で描いた、迫真の地方独立小説。 <大使寸評>住民投票で土佐黒潮共和国を誕生させる。それもキューバを参考にして自給自足をめざすという・・・明るくて大胆な構想が、いかにも土佐のはちきんなんですね♪50代で早世したが、惜しい人を亡くしたものである。沖縄県には独立の気運がなくはないが、その次に独立の話がもちあがっても不思議でないのが高知県である・・・・この小説のラストでは、貿易交渉のため小さな漁船でフィリピン目指して航行するシーンとなっています。いかにも現代版の海援隊であるが、地産地消というか明るくていいではないか♪単なる実験小説と笑っている場合でない面白さがあるなぁ(笑)amazonやっちゃれ、やっちゃれ!終盤近くで、留置場爆破やカラシニコフが出てくるあたりは、いかにもポリティカル・サスペンスである。p336~337爆破に驚いて、留置場の外に出てきた警官が、脱出した沢田を発見して、何か叫んだ。沢田は地面に達するや、カラシニコフを構えて、警官に向かって発泡した。慌てて警官が近くの駐輪場の外壁の内側に飛びこんだ。この騒ぎで、裏通りもすぐに警官でいっぱいになるだろう。「早くっ」悠斗が、寄田に声をかけた。寄田は震えるようにかぶりを振った。「ぼくは行かん。行かんというたら、行かん」まるできかん坊のようだ。「銃を棄てろ、抵抗すると、撃つぞっ」破壊された独房から、警官の警告の声が響いてきた。通路にも、独房にも、数人の警官が現れて、こちらに短銃を構えている。「時間がない。脱出する」悠斗がカラシニコフを片手に構えたまま、長谷に告げた。「寄田さんっ」長谷が唸るようにいった。(文字数制限により省略、全文はここ)【言語学が好きになる本】町田 健著、研究社出版、1999年刊<内容紹介>より「外国語」に日本語みたいな『敬語』はあるの?」など、身近にあるコトバにまつわる素朴な疑問を通して、言語学の基本が手にとるようにわかる。<大使寸評>漢字とか言語学が好きな大使であるが、つい、またこの種の本を借りたのです。amazon言語学が好きになる本【小説家になる方法】清水義範著、ビジネス社、2007年刊<おわりに>より小説家になりたいと希望している人のうち、実際になれる人の比率はどのくらいだろうか。それは調べようもないことだが、私の想像では、なりたいと一瞬でも思ったことのある人100人につき、なれる人が一人といったところではないだろうか。(中略)私は「書く仲間」を増やしたいのだ。そういう人は私と同類の、話の通じる人だと思うから。そんな思いを込めて、本書を書いた。さて、これを読んで本当に小説家になる人は、どれくらいいるだろうか。とても楽しみだ。<大使寸評>『SFマガジン』の新人発掘企画に応募し「カスリの清水くん」との異名を取った清水さんの著わした著書であるが…小説家未満時代の「汗と涙」を笑いにまぶして述懐しています。基本的には創作活動のススメが語られているわけで、たとえ小説家になれなくても、ブログを書く上でのヒントやノウハウが見つかることは、請け合いでしょうね♪amazon小説家になる方法清水義範さんは、西原理恵子と組んで文庫本を出したりしていて、その本からもユーモアの資質が感じられるが、次のくだりを読むと、なるほどと納得するわけです。p131~133 要するに、私には人間の営みを思いもかけない視点から見たり、裏返しにしてみたりして、意表を衝くおかしさを指摘する能力が、いつの間にか備わっていた。もともとの個性と、SFから学んだ思考法やユニークなユーモア精神から、人間を笑い、かつ愛する、というような異想の小説が書けるようになっていたのだ。 それが、私の書きたい小説だった。(中略) それにしても、自分のことはわからないものである。自分がどういう小説を書きたいのか、つまりそれは「自分とはどういう人間か」ということでもあるのだが、それを見つけるまでに、12年くらいの時間が必要だった。 もっとも、私の場合は見つけにくいのも無理はない、という事情もあった。なぜなら、私の書きたいものには前例がなかったからだ。まだ誰も書いていないものが、書きたかったのだから、それが何なのか、とても説明しにくかったのである。 パスティーシュというキャッチコピーをつけられた時、私はその言葉を知らなかった。つまり私は、私自身が名前を知らないものを書いたのだ。それでは、あらかじめ説明できないのも当然である。 しかし、名前がついてしまえばもう、それは私の手の中にしっかりと握られた。私の頭の中には、そういう小説でよければ、その材料はほとんど無尽蔵にあった。 『小説現代』に載せる3作目に、私は『蕎麦ときしめん』という小説を書いた。それは、イザヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』というベストセラー書をからかいたくて、発想したものだ。日本人は、外国人が日本の悪口を書き並べた本を、大喜びで読むという、とてもおかしい面がある。ちなみに、イザヤ・ベンダサンは、山本七平さんという日本人だが。 ならばと考え、東京から名古屋に転勤で来ている人が、名古屋人の悪口を書き並べる名古屋人論をやってみた。ギャグ満載のデタラメ名古屋人論である。 この小説が、思いがけないほど評判になった。*************************************************************とまあ・・・・抜き打ちのように、関心の切り口を残しておくことも自分史的には有意義ではないかと思ったわけです。図書館大好き59図書館大好き(目録)
2014.05.10
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久しぶりに、ネットカフェでブログを記入しています。4月27日に父が95歳で大往生したので、葬儀の手配から29日の葬儀、香典返しとかいろいろありました。それも・・・4月30日に福岡の親類(母の義妹)が亡くなったので、福岡の親類の後を追って4月30日~5月2日で船中2泊のとんぼ返りの葬儀(5月1日告別)出席があったのです。四国の我々もしんどかったが、九州の親類も同じようにしんどかったはずです。49日の段取りも決まったし・・・怒涛の葬儀期間が終わって、やっと日頃の生活に戻ったのです。
2014.05.06
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