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去る4月23日に発生した知床半島を巡る観光船の遭難事故。事故そのものも衝撃的ですが、よそ者ながら北海道を愛する人間として、いたたまれない気持ちになっています。 行方不明者が全員発見されていない現段階で、声を大にして言うべき時ではありませんが、あらゆる交通機関について、安全の確保、それも実質的に安全を担保できる仕組みの構築を、していかなければならないと感じます。当事者を非難するだけなら簡単です。しかし、非難される人間なり状況なりを作ってしまったルールや運用に問題はなかったか。そこにスポットを当てないことには、再び同様な惨事が起きないとも限りません。 亡くなられた方に心から哀悼の意を表するとともに、行方不明の方の一刻も早い救助を願っています。
2022/04/30
こんにちは。 去る4月11日、JR西日本が自社路線のうち、輸送密度2000人未満の線区について、その収支率と営業係数を公開しました。https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220411_02_local.pdf マスコミはこぞって、大きく取り上げているようです。 この「情報開示」は、ずいぶん前から予告されていたものであり、公開された線区、そして公開されたデータも、概ね予想通りのものでした。 皆様覚えていらっしゃるでしょうか。かつて「日本一の赤字線」として有名になり、それを逆手にとって地元の町長を中心に積極的に存続運動を展開した、北海道の美幸線を。宗谷本線の美深と仁宇布の間21.2kmを結んでいました。その美幸線の営業係数が、1984年度(昭和59年度)で4,731とのこと。今回発表された線区の営業係数の中には、2万台に乗るものもあるとのことで、それも含めてショッキングに捉えられているようです。 営業係数に関しては、かつて国鉄の赤字ローカル線を整理する際に利用されました。しかし、1つの企業でいくつもの線区を抱えている場合、収入も支出もある意味「恣意的に」操作可能であること、そして単純に当該線区の収支を見るのではなく、鉄道を取り囲む地域全体での費用便益を見て検討するべきであることから、当該線区の価値を判断する場合、この数値に重きを置いた議論は議論はするべきではないと考えます。本稿ではこれ以上営業係数については述べませんが、営業係数2万台になった区間は、有人駅が起点駅1か所のみであること(それも隣の区間とつながっている)から、他の区間で購入し利用された企画券(お得なきっぷ)、あるいはイベント等で発注した団体乗車券などの収入実績を、正当に反映していない可能性があることを指摘しておきます。 話を戻しまして、今回のJR西日本の収支発表に関して、注目した記事があります。 ひとつは、この記事です。JR西日本が「不採算17路線の収支」を初発表した本当の理由とはhttps://news.yahoo.co.jp/articles/0ed85bee651e521c8cf8f88fd51c4c358d3d1257https://diamond.jp/articles/-/301718 記事の前半は発表された数値の分析ですが、後半に筆者の独自取材の結果として、JR西日本の真意は廃止による赤字額の削除ではなく、現状より利用しやすい交通機関に転換するための、前向きな議論のための出発点にしたいことであった。しかしそれが、今回の収支発表で「赤字」「不採算路線からの撤退」に論点が絞り込まれてしまった。このように説いています。 私はこの記事を、複雑な思いで捉えています。利用者が少ないという意味で、現状、当該線区が地域にとって、あるいはネットワークとしての鉄道としても、十分活用されていない事実はあると思います。地域のニーズをとらえた、きめ細かく機動性のある交通手段に変化していけば、そのほうが利便性も高まる。一見、的を得た主張に聞こえます。しかし、地方鉄道の存廃議論の中では、交通事業者の収支状況が、判断材料として過剰に重視されていて、その金額の大小から、結局バス(デマンド交通まで含む)への転換一択で進んでしまう例が、非常に多いのではないでしょうか。 例えば、鉄道に集中投資して「幹」となる部分の利便性を向上し、そこから多様な手段の二次交通できめ細かく地域を結ぶ。そんな選択肢もあっていいはずですが、鉄道、赤字、前世紀の遺物のイメージが強すぎて、発想の転換はなかなか起こりません。 そして「一択」で選んだバスは、地域内交通の維持を建前としていることから、広域を結ぶ交通としては弱くなってしまいます。なるほど、集落から病院に通う高齢者、通学する高校生にとっては、家の近くで止まるバス、家の前まで来てくれるデマンド交通は、便利に感じるでしょう。しかし、地域内交通の維持に絞った運用は、事実上「病院バス」「スクールバス」と同じ実態となり、広域での利用、あるいは地域外からのアプローチには、使いにくいものとなってしまいます。そして今バスに乗る高齢者が、高校生が集落を離れてしまえば、それこそ少子化の影響で、乗客は減る一方でしょう。 また、この記事の中では、線区別の収支について、JR西日本が今回発表の線区以外の計算をしていないと言っていること、その理由を「鉄道はネットワークとして考えるのが前提」と説明していることに触れています。不採算線区「見直し」を主張する理論的根拠として、ネットワークとしての鉄道を否定することが大前提としてあり、その根拠を基に線区別のデータを公表したと私は考えます。この点に関して、JRは理論構築に大きな矛盾を抱えていると言わざるを得ません。 もうひとつの記事は、これです。自治体へ負担を求めるのは筋違い…丸山島根県知事 JR西日本の不採算線区問題https://news.yahoo.co.jp/articles/0ab8f881f1ce5f7ccbda3c041c972acdc1dd23e8https://response.jp/article/2022/04/14/356255.html 今回収支を発表された線区を抱える、島根県の丸山知事の発言です。島根県は、4年前に県内を走るJR三江線の廃止を経験しています。 この発言のポイントは2つあります。 1点目は、今回の問題は広域的に(県を超えて)対処する問題であること。2点目はJRが「国鉄改革」の結果として国鉄債務の負担を削減された上で発足したことから、今回の問題を地方の個別問題にするのは「筋違い」であり、まず「国鉄改革」を行った国がどう考えるか示すべきとしたことです。 今回発表された路線で、いわゆる「行き止まり」区間を持つ線区は2つのみです。他はいずれも他線区と両端でつながっています。つまり、現状はともかく、広域的なネットワークとしての鉄道の機能を発揮できる可能性を持っているといえます。また、県をまたぐ線区も多く、広域的な捉え方が必要な問題だという指摘は、まさにその通りです。 そしてJR発足の際、民間企業でありながら公共性を担保し地方線区を維持する仕組みとして、本州3社ならば旧国鉄債務の引継ぎ額を抑え、かつ黒字事業からの「内部補填」を行うことにしたのです。この「国鉄改革」のスキームが崩壊しつつあるならば、それをどのように変えるかは、まず国がイニシアチブを取らなければならないのではないか。 30年前と時代が変わった。いつまでも国とJRのせいにするのはおかしいと仰る方もいるでしょう。また、自治体が今まで対策を何も講じてこなかったのもいけない、という意見もあると思います。これらの意見を否定はしません。しかし、国鉄改革から30年以上経過し、今、日本の鉄道全体を支える仕組みが大きな転換点を迎えていると考えれば、国がもっと動かなければならないことは、自明だと思います。また、鉄路存続に係る地元自治体の負担についても、島根県は実績があり、全否定しているわけではありません。JR西日本の「経営上の判断」も一定程度受け止めています。(記事の見出しは、ややミスリードだと思います。) 島根県をはじめ中国地方5県は、昨年「地方の鉄道ネットワークを守る緊急提言」の呼びかけ人になるなど、この問題に対し連携しての動きを活発化させています。さらに鳥取県は、当該線区存続に向けた「県民運動」を展開すると宣言。兵庫県知事とも協議を行うなど、県単位の取り組みも始まっています。https://news.yahoo.co.jp/articles/ac98b67f6029549b620fe373bc3d4e64714acb63 今回の当該線区に限らず、これからの地方鉄道の存続は、地域住民、自治体、鉄道事業者の間で、鉄道の持つ価値と将来へ向けての可能性をより具体的に認識し、それらを引き出すための議論と実践ができるかにかかっていると思います。赤字を生み出す鉄道というイメージで語るのではなく、広くステークホルダーに対し価値を生み出す鉄道なのかどうか。そこを考えていくべきです。その考えを突き詰めていけば、「人が乗らない鉄道は車よりエコじゃない」などという議論を、鉄道存廃のメインの物差しに持ってくるような馬鹿げた議論も、しないで済むようになると思います。
2022/04/30
引き続き。 しばらくお伝えしそびれていましたが、ふるさと銀河線りくべつ鉄道についてです。今年度は4月23日から営業を開始します。https://rikubetsu-railway.jimdofree.com/ 運転体験を中心に、メニューが増えています。何よりも、日本最長5.6㎞の運転体験区間は、やはり大きな魅力でしょう。 営業予定表は、以下の通りです。http://www.shibare.or.jp/download/2022schedule_0222.pdf?ver=20220222 皆様のお越しをお待ちしております。
2022/04/13
こんばんは。 北海道沼田町は、空知総合振興局の中でも北部に位置し、米をはじめとする農産物の生産が盛んな場所です。そして、現在存廃議論がなされている留萌本線が町内を通っています。 昨年9月、この沼田町からユニークな提案が発表されました。鉄道ルネサンス構想https://www.town.numata.hokkaido.jp/section/sangyou/jr/h0opp2000000ffk4.html 構想の概要は、「鉄道会員」を道民から募集し、一定額の「会費」を募る見返りとして、道内JR線全線乗車の権利を与えるものです。JRを利用できる権利には、期間、年齢等でいくつかの選択肢を用意します。 鉄道の上下分離だけでは利用者は増えないから、住民や自治体を巻き込み利用者を増やす方策として提案したとあります。 この提案に注目すべきと感じた点は、まず基礎的自治体から提案されたということです。 沼田町は、存廃の危機を抱える線区を町内に抱えているわけですが、提案内容は、全道を視野に入れたスケール感のあるものです。 そのスケール感とは、鉄道ネットワークの価値を認識し、ネットワークの維持こそが個別線区の維持につながると説いていることです。 基礎的自治体が、地元のことを中心に考えるのは当然です。しかし、地元のことだけしか顧みず、隣の自治体は関係ないという態度では、特に複数の自治体にまたがる課題には、対応できなくなります。鉄道であれば、地元はいいと思っても、地元以外の利用者が不利益をこうむり、それはやがて地元に影響が返ってきます。そのことに気づいた沼田町の発信は、評価に値すると思います。 次に、この提案が鉄道ネットワークの価値を積極的に評価していることです。今までの鉄路の存廃議論は、意図的に区切られた区間内の乗車人員、収入と支出のみで行われ、「だから金がかかる」「だから人が乗っていない」という話に終始しています。 「鉄道ネットワークなど机上の空論」あるいは「マニアの戯言」とまで言い、ネットワークの価値を認めない人も多くいます。現在、ネットワークとしての鉄道が機能していない事実もあります。しかし、敢えて申し上げれば、現在の鉄道の衰退は、大量輸送にこそ鉄道の特性があるという教科書的な発想から脱却できず、ネットワークを機能させることにより生み出される価値を軽んじたことが、一因にあると考えます。仮に「鉄道特性を発揮できる」線区のみ維持し、他を切り捨てるとすれば、同じ交通体系の中での移動可能距離が一気に短くなります。「鉄道特性を発揮できる」輸送は通学、通勤のみとなり、これこそ少子化の影響をまともに受けますので、今、幹線と呼ばれる区間でもいずれ先細りになり、廃止の連鎖は止まらなくなるでしょう。そこまで見通しての沼田町の提案は、全道にとって重い意味を持つものです。 もちろん、実際の提案については、その実現のためには検討の余地があります。会費を集め乗り放題きっぷで乗ってもらうだけで、全道の鉄道ネットワークが維持できるわけではありません。しかし、現在のJR北海道の状況に心を痛め、何とか応援してあげたい。しかし、乗っていない鉄道に「税金を使え」と叫ぶのは躊躇してしまう。そして個人の力にも限界がある。そう考える人たちは、実は多いのではないでしょうか。そんな人たちの受け皿となり、力を結集できる仕組みを作れるとすれば、JR北海道が「道民鉄道」に変身できる大きなチャンスになると思います。 沼田町の提案は、週刊誌のネット記事にも取り上げられました。以下に紹介します。https://www.news-postseven.com/archives/20220212_1725810.html?DETAILそして実現に向けて、関係者が努力すべきだと考えています。
2022/04/12
こんばんは。 またしても、悔しいニュースが入ってきました。 北海道新幹線延伸にあたり「並行在来線」区間とされた内、函館本線の長万部~小樽間について、去る3月27日、沿線すべての自治体が廃止を容認し、この区間の廃止が事実上決定したとのことです。https://www.hokkaido-np.co.jp/article/661497https://www.hokkaido-np.co.jp/article/661904https://www.hokkaido-np.co.jp/article/662368 並行在来線については、その存廃の検討する枠組みが、いわゆる「赤線」区間と異なります。しかし、地元が廃止で意思一致した事実は重いものがあります。とりわけ、最後まで鉄道存続を模索していた余市~小樽間についても廃止同意がなされたことで、小樽市を除いた後志総合振興局管内から、在来線がすべてなくなることとなります。 今回の件に関しても、様々な視点があると思います。今回の並行在来線の議論で非常に気になったのは、「国が金を出さない」「道が金を出さない」という話が、頻繁に出ていることです。https://www.hokkaido-np.co.jp/article/662841 私は、誰が金を出すかという議論の前に、沿線地域、そして道全体にとって適切な公共交通機関が何なのか、それが議論された形跡が無い点を指摘したいと思います。根室本線富良野~新得間の存廃議論にも共通しますが、現状の安易な追認(今、不便にされてしまった列車に人が乗らない)ではなく、道内全体のグランドデザインとして鉄道は必要なのか。鉄道を利活用すればどの程度便益がもたらされるのか。もし鉄道が必要ならば、その負担は沿線自治体だけが背負うものなのか。その議論が全くと言っていいほどなされていない。それが「金を出さないから」の言葉に集約されていると思います。 以前から指摘していますが、バスが鉄道の「代役」となるとは限りません。バス転換によって利便性を上げたといわれる地域も、私は疑問を持っています。バス転換によって、本当にバス以外利用することができない人たちだけしか利用できない公共交通機関になってしまった場合、それは真の意味での「公共交通」なのか。広がらない利用客。そして「だったらクルマでいいじゃん」となると、本当にクルマでしか行けなくなる地域になってしまいます。それでいいのか。今、クルマを利用できる人たちは、それで問題無しと言うかもしれません。しかし「その先」に待っているものは… 今回「廃止容認」とされた区間には、新幹線の駅は3つしかありません。中間には1駅のみです。新幹線駅からのフィーダーバス、小樽近郊から小樽市内に向かう通学向けバス、そして廃止区間を忠実に結ぶ転換バス。鉄道と比べてきめ細かな路線設定ができる、と言う方もいますが、路線網の「幹」と「枝」を考えずに、単純に今あるニーズに対応するだけならば、それこそ過疎化少子化の影響をまともに受け、いずれ路線の本数は縮小していくでしょう。その先には、公共交通としての体をなさない、シビルミニマムとしてのデマンド交通が残るか残らないか。そしてその維持は、地域住民サービスの維持という「大義名分」以外に、拠り所がなくなります。 当該「廃止容認」区間の中で、新幹線の中間駅が設置される倶知安では、駅前整備の促進を名目に、以前から在来線の早期廃止を主張しています。自治体の浮足立った姿勢が、地域公共交通整備の議論だけでなく、地域の観光振興にも良からぬ影響が及ぼすのではないか。決してうがった見方ではないと私は考えます。 今回「廃止容認」された区間が、北海道の発展を支えたかつての幹線区間であること、このことの持つ歴史的意義は当然あるとして、それ以上に、道内全体の交通ネットワークの維持発展に、今回の「廃止容認」が大きくマイナスに作用することを、私は危惧しています。
2022/04/08
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