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さきちゃんのお母さんは、お話を作る人です。小学生のさきちゃんと、作家であるその母の日常の小さな出来事ややりとりを独特の視点で描いた短編連作集です。北村薫らしい、柔らかくて優しい雰囲気の文体とおーなり由子の手による挿絵が非常に合っていて、まるで童話や絵本のような味わいがありました。子供というキャラクタは使い方によっては嫌らしくなってしまうのですが、そういう面を全く感じさせず、しかも重みのある内容は流石です。 オススメ。
2002年08月31日
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主家である三好義興の妻である右京太夫に激しい慕情を抱く松永弾正久秀、彼を訪れた稀代の魔人・果心居士は恐ろしい技を持つ7人の法師を彼に貸し与え、右京太夫を物にする秘術を授けた。 それは美しい女人を犯して愛液を集め、それを煮詰めて“淫石”という媚薬を作るというものであった。主君を裏切ってでも手に入れたいと思い詰めた松永弾正はそれを認め、かくして7人の法師の暗躍が始まった。一方、将来を嘱望されながら掟を破って外界の女と恋仲になった伊賀忍者・笛吹城太郎は一族の首領へ許しを請うためその女と共に一族の谷へと向かっていた。ところが2人の前に7人の法師が現れ・・・講談物を書かせたら天下一品な山田風太郎の忍法帖シリーズ第3弾です。 この世ならぬ技の飛び交う闘いの様子がおどろしく描かれていて引き込まれました。一癖も二癖もある登場人物も好みは分かれるものの、それぞれに味があって良かったです。内容で引かなければお薦め。
2002年08月30日
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仕事にレジャーにと、年に数度は海外へ行くという筆者が海外で体験した出来事や海外旅行のコツ、好きな土地、食べ物などについて綴ったエッセイ集です。動物好きということでマナティやクジラとの触れ合い、旅先で出会った犬達という心温まる体験から、旅先に持っていく靴や荷物に関する考察、どこの朝食や軽食が美味いかという紹介に旅の心構えなど盛り沢山な内容で興味深く、楽しみながら読めました。情報的にも古くなく、彼なりの旅行観みたいなものがきちんと感じられて読み心地の良い一殺です。
2002年08月29日
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15世紀前後の中世期~ルネサンス期の頃のヨーロッパの栄枯盛衰を主に描いている著者の本領発揮な作品です。東ローマ-ビザンチン帝国の首都として千年以上に渡って栄華を誇り、難攻不落と言われた三重の城壁に囲まれるコンスタンティノープルがマホメッド二世率いるトルコ軍によって陥落させられるまでの激しい攻防を様々な当事者の視点で綴っており、非常に興味深く読めました。このようなジャンル、時代の作品は少ないので評価は難しいですが、多くの資料をもとにしたらしい細かな描写は世界観が良く出ていて読み応えがありました。学術的にはわかりませんが、小説として面白い一殺。
2002年08月28日
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暴力、貧乏、失恋、死・・・様々な人生の不安から逃げず、何とか折り合いをつけて全てを「これでいーのだ」と肯定する。そんな、“のほほん”状態を目指して生きる著者ののほほん生活やのほほん人間、のほほん流読書に音楽と多岐に渡るのほほんっぷりを描いたエッセイ集です。そのタイトルに恥じない妙なテンションながら、不思議と暖かい内容が楽しく読めました。 特筆すべきは読書のすすめ。 意外と言っては失礼だけど、なにげに読書家な著者のレビューが私とはかなり方向性が違って興味深かったです。 こういう読書録が書けたらいい・・・いや、微妙かも(笑) とにかく面白い一殺。
2002年08月27日
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朴訥で裏表のない恋人を捨て、スマートで都会的な今の夫を選んだ主人公だったが、彼は外に恋人を作って碌に家に戻らず、主人公も手頃な男を見つけて遊んではみたものの、どこか満たされず暮らしていた。そんなある日、主人公は旅行先で捨てた恋人を見掛けた。しかも彼の隣には主人公と全く同じ容貌の女性が連れ添っていた。 彼女と接触した結果、どうやら恋人と今の夫の大きな選択を迫られた主人公の苦悩がドッペルゲンガーを生み出し、分岐点までの記憶を共有したまま2つの道へ分かれたらしいと判明した。半信半疑ながらも今の生活に不満を持っていた主人公は一ヶ月だけ交代しないかと彼女に持ちかけた。彼女も承知し、暖かい家庭に幸せを感じる主人公だったが・・・“隣の花は赤い”という人間の心理が鋭く綴られていて考えさせられながら読めました。 人生に「もし・・・」ということは有り得ないし、仮にやり直せたとしても結局は自分の心がけ次第で良くも悪くもなってしまうという、きっぱりした流れが感じられて心地良いです。幸せや生き方について見つめ直したくなる一殺。
2002年08月26日
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新しく赴任してきた警察署長はいかにも鈍重そうな、牛にも似た外見に相応しく、署でも官舎でも寝てばかり。みんなに“寝ぼけ署長”などと陰口を叩かれていた彼だったが、実は彼の在任中、犯罪事件はその前後の数分の一にまで減っていた。 表だった活躍はせず、犯罪者にも思いやりを持ち、ただ罰するだけでなく当事者達にとって最も良い形で事件を解決していた署長の手腕を描いた短編集です。山本周五郎にしては珍しい推理物で、トリックよりも人間描写に重点を置いた内容は、時代設定は昭和初期であるものの、人情系時代物の雰囲気があって今までにない読み心地が楽しめました。 寝ぼけの割に、ちゃんと捜査している署長がやや設定倒れな感はありますが、読み易く、読後感も良い無難な一殺。
2002年08月25日
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がめつくてしたたか、主食はけつねうどんとたこやきで「もうかりまっか」「ぼちぼちでんな」が挨拶だというくらいしか判明していない、関西人の知られざる生態を様々な例を挙げて綴ったエッセイ集です。面白そうだと思ったら採算や後先を考えず実行に移すエネルギッシュな面と、どうしても東京に対する気後れを払拭できず、うどんのつゆに代表されるような過去に優位だったものにしがみ付く保守的な面を併せ持つ関西人の心理や背景が興味深く読めました。オモシロ看板集などを間に挟む雑多な作りも関西らしい雰囲気で良いです。 ネタをネタとして笑える人向き。
2002年08月24日
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タイトルに惹かれて買ってみました(笑)地方都市の戸籍係として冴えない日々を送っていた主人公にギタリストを目指しながら菓子問屋の営業をやっている友人から1本の電話があった。 八戸で高校時代の悪友らしき覆面レスラーのポスターを見たというのである。“オソマキ仮面”と名乗るその男は本当に友人なのか真相を知るため八戸へと向かった主人公だったが、その道中、ひょんなことからハリマオや自衛隊員、ゲバラの息子など良くわからない面々が加わり、さらに舞台を上海へと移しての珍騒動となる。「自由への闘い」を意味するルチャリブレのように、世間に縛られず生きようとする登場人物達のエネルギーが感じられるような豪快な内容が楽しく読めました。ただ、無茶やりすぎて支離滅裂になった感も・・・好みは分かれるけど気軽に読める作品ではあります。
2002年08月23日
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日本を代表する十人の剣客を、日本を代表する十人の歴史小説家に書かせるというシリーズの第2巻は司馬遼太郎による宮本武蔵と、柴田練三郎による小野次郎衛門です。1巻が戦乱の世の剣客だったの対し、今回は徳川家の地盤が固まり始め、剣術というものが武家の嗜みに変化しつつある江戸時代初期の剣客を取り上げており、剣の腕だけではなく処世術のようなものも必要とされる中で、その望みの高さや狷介な性格故に、その強さや名声と比べて恵まれなかった2人の生涯がそれぞれの著者の持ち味の生きた文章で描かれていて、興味深く読めました。長さ的にも手頃だし、執筆陣も豪華でお薦めの一殺。
2002年08月22日
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英語の教科書でお馴染みのジャックとベティの2人が50歳になって再開し、あの非口語的な言い回しでお互いの30数年を回想する表題作の他、日記という形で老人の性に対する意識の変化を描く「冴子」、何だかわからないけど凄そうな「インパクトの瞬間」など、清水義範らしい(?)庶民的些事を題材にした短編集です。相変わらずの着眼点と、どうでもよさげなことを大真面目に取り扱う展開が面白く読めました。それぞれの短編で文体も違い、日記風、論文風、時代劇風、果ては映画のパンフレット風と多彩な作品が楽しめます。多彩ということは好みが分かれるものもあるということになりますが、その分、気に入ったものに出会える可能性も高くなるので著者の色んな作風を読み比べてみたい人や、初めて読んでみる人向きの一殺。
2002年08月21日
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新鮮な海の幸を食べまくる「ああ八丈島のタコの丸焼き」、何を食べても「おいしい」としか言わないタレントへ怒りをぶつける「「おいしい」ってどんな味?」、とうもろこしの食べ方考察「とうもろこしは律儀である」、中身や雰囲気とのバランスを間違えると大変(?)なことになってしまう「プラスチック丼世に氾濫す」など、食べ物とその周辺にまつわる体験や考えを綴ったエッセイ集です。東海林さだおと言うと、どっかの新聞で4コマ描いてたなー、程度の認識しか無かったのですが、エッセイストとしても有名だったようです(無知) で、感想ですが・・・方向性やターゲットは漫画と同じくらいですね。所謂、“おじさん”と呼ばれる世代が喜びそうなネタが多く、こじーん的にはちょっとあざとい印象を受けました。私のナイスジョークと似たようなものかな。←それは酷い内容的には面白いものもあるので好き好きでしょう。
2002年08月20日
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出世、褒賞主義の戦国時代において土着、忠誠心の要素が強い三河という特異な土壌でひたすら自分の領地を守り続けるうちに着実に力を蓄え、期せずして天下の目が見えてきたという、およそ古今東西の英雄の中でも最も英雄らしからぬ、それでいて最も強固な幕府を築き上げた徳川家康という人物の考え方や行動に焦点を当てた長編です。一般的に、時代物は主人公に多少の脚色を加えて取るべくして天下を取ったような描写が多い中で、とにかく家康の性格の分析やそれによる状況の推移を冷静な筆で描いたという感が強く、興味深く読めました。読んでいてなぜこんな人物が?という気もしますが(笑)激烈な信長や利発な秀吉には無い強さの素地が納得出来るような気がします。 従来の時代物に飽きた人にオススメ。
2002年08月19日
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未婚、そして完璧に避妊したという母から生まれた主人公が自分の存在というものを考える表題作の他、同僚に頼まれて謎の荷物を北海道まで運ぶ破目になった「UFOが釧路に降りる」、タイトルそのままの「かえるくん、東京を救う」など、独特の雰囲気が楽しめ(?)る短編集です。村上春樹らしい、不思議な世界観と茫洋としたキャラクタがいい味を出しており、しかも短編ということで読み易く様々な作品に触れられるので割と人を選ばずお薦め。
2002年08月18日
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就職のために沖縄から金沢へ上京(?)したコック見習いの吃りの少年が、華やかで奔放なホテルの社長の娘に抱いた想いの果てを描いた表題作の他、1人の男性にまつわる姉妹の思い出「猫の家」、ある神父の心中を描いた「宇宙に浮游する」など、不思議な暗さの漂う短編集です。重いわけではないけど、どこか暗い。 何故か人生の運の悪い部分ばかり引き受けてしまうような登場人物の描写が健気なようで物悲しく、微妙な読後感がありました。悪くはないけど気分が乗らない時はオススメできません(笑)
2002年08月17日
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著者の代表作の1つであるサイコダイバー・シリーズの外伝、カマキリの交尾のように、サナギからかえる時に男の精気を食べる「夢蜻蛉」、祖母が少女時代に不思議な男性に出会ったという金木犀にまつわる「木犀のひと」など、妖しい雰囲気の漂う短編集です。一編の書き下ろしを除くと、他は全て雑誌や別の短編集からの再録ということで、読んだことのある人にとっては物足りない感が強いかも知れませんが、そうでない人にとっては様々な短編がつまみ食いできるので悪くないと思われます。 獏さん初心者向けの一殺。
2002年08月16日
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何か困った事態にぶつかると、それを解決しようと試みるも何故か必ず悪化させてしまい、困惑の果てに陥ってしまう、そんな「トホホ」の達人である著者が様々なトホホ体験や日常のトホホな風景、トホホな思い出などを綴った短編集です。あまりのトホホっぷりにちょっと嫌らしさを感じるところも無きにしもですが、つい吹き出してしまうような内容や文体が楽しく読めました。 大人になってもこういう視点が持てるというのはとても良いことだと思います。あまりトホホな体験はしたくありませんが(笑)
2002年08月15日
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社長である父から強引に請われ、エリートとして順調に出世を続けていた商社から日本生命へと引き抜かれた主人公。 外部からのいきなり取締役としての移入人事に一部の役員や組合は反発し、決して歓迎されての就任というわけではなかったが、主人公は持ち前のバイタリティと勤勉さで直接外務員と触れ合える支社長職の委嘱を希望し、気さくな人柄と熱意で大きな支持を得るようになった。しかし、自分の体力と時間を削り、無理を押しての活動は徐々に主人公の命を蝕んでゆく・・・高杉良得意(?)のモデルのある実録小説です。同族経営と非難されながらも自分の息子が生保業界の大きな推進力となってくれると信じ、万難を排して取締役へと就任させた父、その期待に応え、命を賭けて業界へ新しい風を吹き込んだ子の様子が力強い筆で描かれており、読んでいて引き込まれました。どれも同じようなパターンと言ってしまえばそれまでですが、仕事に賭ける人間の輝きを感じられる一殺です。
2002年08月14日
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天使のように可愛らしく、純真無垢な外見で誰からも可愛がられ望むものを手にしてきた少年が母の情夫から連れて行かれた競馬場で覚えた不思議な趣味を描いた表題作の他、行きつけの居酒屋で知り合って遊ぶようになった店主夫婦の娘の中の女「三つ編み」、閉店間際にやって来て、ろくに料理に箸もつけず、一家揃って一時間以上も店内の漫画を読み耽るだけの家族の歪み「坂の上の家」など、子供を中心とした家族という関係に潜む危うさを描いた短編集です。私はあまり家族関係で悩んだという記憶はありませんが、やや類型的ながら説得力のある設定や人物描写が色々と考えさせられました。 子供ゆえの純真さ、残酷さ、孤独など、題材も多岐に渡っていて読み応えのある一殺。
2002年08月13日
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日本の歴史に残る各時代の剣豪を10人選び抜き、現代の歴史作家10人にそれぞれ描かせるという企画で作られた全5巻の作品集の1冊目です。鹿島七流の代表として御前試合で京八流の代表を破り、新當流を興した塚原卜伝の生涯を南條範夫氏が綴り、上杉、武田、北条の強豪に囲まれた上州の地で長野業政に従い、武将としても剣士としても鬼神の働きを見せた上泉伊勢守を池波正太郎氏が描き上げた2編が収録されています。1巻は所謂戦乱の世の剣豪という選択らしく、無骨ながら実戦的な強さが伝わってくる2人の兵法者が生き生きと描かれており、楽しく読めました。古本屋では2巻までしか売ってなかったので3巻以降も入手したいですね。
2002年08月12日
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激しく愛し合い、共に堕ち、彼女が原因で腕を壊され、殺人を犯して服役した後、バーを経営して暮らす主人公の前に死んだ彼女の娘が姿を現した。 母親の面影と強烈な個性で主人公の心を掻き乱す少女だったが、彼女もまた愛と音楽に苦しみながら何かを掴もうとする。花村萬月得意(?)のブルースを中心とした生々しい人間の触れ合いを描いた作品です。 “届かぬ愛”だからこそ激しく、哀しく、そして美しい旋律が聞こえてきます。不思議な読み応えのある一殺。
2002年08月11日
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もともとはJR東日本の中吊り広告として連載(?)されていた様々な作家とイラストレータによる作品集です。掲載場所の性質上、1枚・・・文庫だと2頁前後に収まるショートショート的な作品にイラスト1点という構成で吉本ばなな、阿刀田高、椎名誠、曽野綾子、秋元康など短編やエッセイせ知られる作家を中心に、1人あたり5~10編の短編集乃至短編連作集の集(なんじゃそりゃ)という作りが面白いです。JRの広告とは言っても、題材は電車だけに限られず、新婚男性の心境、男女のかけひき、思い出の風景、怪我、留守電、駆け落ちなど多彩な内容で、それぞれの作家の持ち味が出ていると思いました。玉石混淆の感もありますが、楽しい一殺です。
2002年08月10日
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女性版原田宗典か、はたまた椎名誠かというような著者の庶民的、小市民的日常の珍体験や考えたことなどを綴ったエッセイ集です。様々な怪しげ健康法を試した結果や、何を買っても570円としか言わない食料品店のおばあさん、黒いおばさんと白いおばさんに関する考察、女性はなぜさつま芋が好きなのか?など、下らないのだけどつい笑ってしまうような内容で気軽に読めました。 かなりの数が収録されているのでずっと読み続けるのは微妙ですが、気分転換には手頃な一殺。
2002年08月09日
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77歳になった父が急に離婚を宣言した。しかも離婚後もこれまで通り母とは同居するし、書類上の関係以外は何も変わらないのだと言う。老人の思い付きの暴走か、ボケてしまったのか、体面や遺産のことを考えてとにかく止めようとする息子娘夫婦たちを振り切って離婚届を提出してしまった父だったが、彼にはある考えがあったのだ。突拍子もないドタバタ劇を通して親子というものの在り方や、一生というものについて考えさせられながらそれでいて、小市民的な登場人物が楽しく読めました。題材と人間臭さが相変わらずいい味を出している一殺。
2002年08月08日
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好き勝手に生きる父と、未だ結婚していない母との間に生まれた主人公はある日、兄が居ると聞かされた。しかも血が繋がっておらず、捨て子だと言うのである。ひょんなことから母が父を追ってネパールへ行くことになり、お互い助け合って暮らすことになった2人の出会いと精神の交流を描いた「うたかた」、旅先の海辺で毎晩号泣している女性に声をかけたことで始まった、大きな傷を抱える男女「サンクチュアリ」の2編を収録した作品集です。どちらも運命的な出会いと単なる(?)恋愛でない交流が哀しくて透明な筆で描かれていて不思議な読み心地でした。こじーん的には「サンクチュアリ」がかなりオススメ。
2002年08月07日
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山手線で置き引きをして生活している主人公。生きるだけなら特に不自由も無いし、期待して裏切られるような人間関係も無い。 それでも恋愛や怒りという感情に触れると戻れない昔に想いを馳せてしまう表題作の他、金さえ持って来れば他は何も構わなくていいと考えている父、その反動からか演歌歌手の追っかけにのめり込み、娘の金まで盗んで上京してしまった母の顛末を描いた「ママ・ドント・クライ」、自分がやったことも借りたことも驚くほど覚えていないが、同様にされたことも貸したことも覚えていない「ニワトリ」など、人間関係の不思議さ、面白さを感じさせる短編集です。恋愛が絡む作品は多いものの、その比重はかなり軽く、恋愛も感情や心理という題材の1つでしかないというスタンスは珍しく、興味深く読めました。寂しくて穏やかな雰囲気の一殺。
2002年08月06日
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継母の声や香りから感じる媚に狂う「声の血」、愛する男が死んだ孤独から浮上しようともがく「顔色の悪い魚」、女に植物を感じ、美しいうちに手折る「草木の笑い」、金持ちの家に生まれ、出来の良い兄弟に囲まれ、そのうわべだけの家庭から抜け出す「埋葬のしあげ」など、どこか重い雰囲気の流れる短編集です。山田詠美独特の絡みつくような心理描写が短編ながら読み応えがありました。 暗い、というのではないけど息苦しくなってくるような印象がかなり好み分かれると思いますが、気力のある時には悪くないですね。それぞれの短編に対応した色のページが入る構成も面白い試みだと思いました。
2002年08月05日
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酔っ払って帰りはいつも午前様、スポーツもやらず、本も読まず、酒だけが楽しみという父に幻滅していた主人公はある日、クラリネットを吹いている父の写真を発見した。 しかもそのバンドはかなりの人気だったらしい。どうして楽器を置いたのか詰め寄る主人公に口を濁す父だったが・・・ という表題作の他、高校の合格祝いにギターが欲しいという息子に、大学の合格祝いでギターをねだった自分を重ね合わせる「青春フォークソング」、日本国籍を持ちながら、父母ともにハーフであるためイギリス人にしか見えない一家の太平洋戦争後期からの運命を描いた「チュウチュウ・トレイン」など、音楽と青春を題材にした短~中編集です。ちょっと青臭い印象があるものの、それが内容と良く合っており、全体的にも綺麗に纏まっていて爽やかな気持ちで読むことができました。 妬ましくなるくらいの若さが味わえる一殺です。 オススメ。
2002年08月04日
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憂国の志を持ちながら、単純な倒幕や尊皇攘夷に傾斜せず、自分のやるべきことを見つめる相楽総三、命さえも賭けで投げ出すように生きる博徒・清水の次郎長こと山本長五郎、動乱の世で自分が生き切ったと思える場を求める新選組副隊長土方歳三など、幕末の在野に生きた男達を描いた長編です。西郷隆盛や岩倉具視という巨大な力に翻弄されつつもその捨て石程度の小さな力が少しずつ世の中の流れを作っていく、そんな祈りのようなものを感じました。赤報隊も新選組も結末としては悲惨なものながら、何のために生きるのか、ということを考えさせられる一殺。
2002年08月03日
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「愛するとは、ゆるすことだ。」 感情に素直な、まるで子供のような良一に惹かれた奈緒美だったが、牧師である父と母は意外にも難色を示し、それを振り切って結婚しようとした彼女にそう言った。その忠告通り、我侭でだらしなく、本能や感情のみで生きる良一との結婚生活は上手くいかず、疲れ果てて教会へと戻った奈緒美を追ってきた良一は、そこで結核に倒れ療養するうちに、信仰に目覚め始める。しかし、一度閉じた奈緒美の心は開かず・・・愛、そして生きるということを考えさせられました。宗教色が強いので、愛とか結婚というものを非常に大きく捉えていることに関しては人それぞれに感じると思いますが、小説として話の展開、心理描写、題材とどれも高い水準で纏まっており、キリストの教義に特に抵抗が無ければオススメ。
2002年08月02日
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タイトル通り、著者マンボウ氏が脈絡の無い怒りを躁鬱の発作に合わせて好き放題に言い放ったり、相変わらずの珍妙な日常を描いたエッセイ集です。マンボウ本人の面白さもさることながら、その周囲の人々が独特で、しかもその描写、視点がまた面白い。古さを感じさせないセンスがあって、楽しく読むことができました。 マンボウシリーズが好きなら問答無用でオススメの一殺。
2002年08月01日
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