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将棋の勝負を通して強いものが強く、勝つべくして勝つのが当たり前のところに風格だの精神論だのを持ち込む愚を説き、太平洋戦争の敗北と共にその流れが断たれることを願う表題作の他、ファルス-道化-の意味や価値を考察する「FARCEに就て」、死をも恐れなかった切支丹が、飢餓に耐え切れず転んだ史実と、戦争中の食糧事情を比較する「二合五勺に関する愛国的考察」など、彼独自の論法で文学や生や日本をやっつけるエッセイ集です。文章は乱暴でやや解りにくいものの、彼なりの考えを論理的、理知的に綴った内容は非常に興味深く読めました。考えていることをずけずけと吐き出す様は人によってはとっつきが悪いかも知れませんが、頷かされることも多く、独特の雰囲気も爽快ですらあります。 私の裏裏日記もこういう味が出せるようになりたいですね(謎)
2002年12月31日
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特に親しかったわけでもない大学の友人から預かった荷物に体を張ることで、自分の中だけにある昔のこだわりを確かめようとする表題作の他、偶然スクープをものにした写真に偶然以外の何かを感じた結末「鏡」、観ようと思いつつなぜか理由をつけて観ないことになってしまう映画「夜よ静かに」など、過去に対する主人公の想いや若さに対する感情を描いた短編集です。他人から見れば瑣末な何かにこだわってしまう主人公の描写と、カメラマンという設定が良く合っていて、短編が多い北方謙三の作品の中では異色ながら存在感があります。ただ、女性の描写が独特なので好みは分かれそうな一殺。
2002年12月30日
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北杜夫にしては珍しい植物に関するエッセイ、「宗谷」で行った氷海の記録や様々な島への旅行記、女性に対する考察、そしてSF色の強いショートショートという4部構成の、脈絡はないものの盛り沢山の内容が楽しめる作品集です。どういう意図のもとに作られた本なのかは知りませんが、エッセイ、旅行記、短編と、シリーズものや長編を除く彼の作風の多くのパターンに触れられ、全体的なレベルもかなり高いので北杜夫がどんなものか読んでみたいという人に読み勝手の良い一殺です。 勿論、北杜夫好きにもお薦め。
2002年12月29日
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アメリカ人を接待するうちに思い出す戦時中の苦しさや屈辱感「アメリカひじき」、栄養失調で死んだ兄妹の短い生涯「火垂るの墓」の直木賞受賞の二作を中心に戦時中、戦後の世界を自らの体験を交えて描いた作品集です。あまりにも有名なので説明の必要も無いくらいですが、一人称ながら淡々としてちぎるような文体が逆に迫ってくるものがあって、重い読み心地でした。 CMや作詞に関わっていたせいか、短いセンテンスでもパンチ力があります。 読み易くはないけど苦労する価値のある一殺。
2002年12月28日
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「仕掛人・藤枝梅安」シリーズの2作目です。殺しの相手と間違われ、襲われた梅安だったが誤解は解け、しかも間違われた相手が自分の仕掛の相手と密接な関係があることが判明し、協力して仕事に当たる表題作の他、断った仕掛の相手を違う事情から知らずに殺してしまう「春雪仕掛針」、権力によって揉み消されてしまった殺しの仇を討つ「闇の大川橋」など、複雑な背景を持つ仕掛を多く扱った短編集です。仕掛そのものよりも心理や人間模様の描写に力が入っており、爽快感に欠ける代わり、重く考えさせられる内容が多いような気がしました。 梅安というキャラ自体、あまり勧善懲悪とは縁の無い設定だけに雰囲気とは合っています。シリーズが好きならどうぞ。
2002年12月27日
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桐箱入りの高級マスクメロン、ほのかな優越感の味わえるブルーマウンテン、安さより多機能で選んだ空気入れ、雨の日も安心なフロントガラスのくもり止め、初めて買った自分の小説など、買ったものとそれにまつわる背景や心情を綴ったエッセイ集です。相変わらずと言うか、著者の妄想ばかりが先走った末のトホホな結末が多く、気軽に楽しみながら読めました。どれを読んでもそういう感想になってしまうのですが(笑)それぞれ微妙に味わいが違い、短いスパンで読んでも飽きのこないところが流石です。 おっちょこちょいな買い物をしては後悔する人は特に共感を覚えそうな一殺。
2002年12月26日
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チャンドラーの生み出した中でも最も有名な主人公の一人である私立探偵フィリップ・マーロウの活躍を描いた作品です。ある富豪からの依頼で娘に対する脅迫の処理を任された主人公だったが、調査を始めて間も無く脅迫者が殺害される現場に出くわした。 仕事としてはそこで一件落着に見えたが、新たな脅迫状が舞い込んだことで主人公は事件の根の深さを感じ、依頼を越えてでも真相を探ろうと決意する。ミステリィにしては人物描写や展開がハードボイルド的で、ハードボイルドにしては内容や題材がミステリィ的という、どちらの部分の水準も高く、読み応えがあるのですが、それだけにどっちつかずの印象が強いような気がしました。好みの問題でしょうが、私はこてこてのハードボイルドやこてこてのミステリィの方が読んでいて落ち着きます。洋書というせいもあるのか微妙な違和感のある一殺。
2002年12月25日
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タイトル通りです(笑) 時間的金銭的その他的に余裕がある時に、皆で集まってエイヤッと離れ島へ出かけて何かしようという、「東日本何でもケトばす会」の隊長である著者が結成初期に訪れた様々な場所での体験や騒ぎなどを綴った「怪しい探検隊」シリーズの第一作です。とにかく勢いで決めて実行に移し、後は何とかなるだろう的な強引さが逆に会の活動と合っていて楽しく読めました。中年のおっさんから下は小学生まで、何だか良くわからない集団で自然を満喫する様が怪しげながらも魅力的です。自分でやりたいかと聞かれると微妙ですが(笑)気持ちの良い一殺。
2002年12月24日
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中学生時代に読んで衝撃を受けた本が二殺あります。一殺はアンデス山中に飛行機が墜落し、雪中に2ヶ月余も閉じ込められた人々が、死んだ人間の肉を食べて生き延びるという、P.P.リードの「ALIVE(邦題:生存者)」、そしてもう一殺がこの「聖職の碑」です。大正2年8月、心身の鍛錬を目的として駒ケ岳登山を行っていた高等小学校の教員、生徒ら37名が予想を超えた速度の台風上陸によって遭難し、校長を含む11名が死亡するという惨事の背景にあった、当時長野の教育界に大きな波を起こしていた白樺派の理想主義教育と古来の実践主義教育の確執や人間関係、そして遭難へ至った経緯と当事者の心境が克明に綴られ、小説とは言え実際に起きた出来事をもとに納得のゆくまで取材を続け、自分なりにこの事件の意味するものを掴もうという著者の気迫が伝わってくる長編です。内容の重さもさることながら、臨場感のある心理描写が見事で読んでいて感情移入する場面が多々ありました。今も駒ケ岳の尾根に蹲る“遭難記念碑”の慰霊と言うよりも遭難の事実を後世に伝えるだけのような碑文が逆に、そこに込められたものの大きさを感じさせます。 小説ならではの創作性と表現力を活かし切った出色の一殺です。
2002年12月23日
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地下鉄の複雑さ、シラミにたかられた衝撃、科学する心、女と男の生命力、旅行小切手のサインの苦労、数学による考える力、南極やオホーツク海の氷、春の訪れなど、著者の知識(?)や体験を活かした科学、生物学及び旅に関する題材を多く描いたエッセイ集です。時代の差もあるのかも知れないけど、まず余所ではお目にかかれないような独特の表現や堅苦しげな文体が、妙な滑稽さを伴っていて、少しクセはあるけど楽しく読めました。真面目なつもりで憮然たる結果を招いてしまう著者のキャラクタが、味があってとても良いです。 オススメ。
2002年12月22日
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小学生時代に視力が急低下した焦りと、初めてコンタクトを買った時の珍騒動に始まり、甘栗は大好きだけど栗は認めん!という理由、緊張の極限に達した初デート、医者運が悪い中でも指折りの体験、バイクにまつわる様々な思い出など、著者のトホホっぷりが存分に味わえるエッセイ集です。どうやったらそこまで想像力豊かに暴走出来るのかという程の感情の起伏や、お約束通りだけど面白過ぎるオチと、このシリーズはどれも同じ展開なのですが、それが全く気にならない小気味良い文体と多彩な体験は何度読んでもつい吹き出してしまいます。 気分転換に最適の一殺。
2002年12月21日
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表の顔は温厚で腕の良い鍼医者、しかしその裏では金を貰って殺しを請け負う仕掛人である梅安を主人公とするシリーズの第一作です。 因縁の相手も仕掛人になっており、それぞれの相棒を巻き込み死闘を繰り広げる表題作の他、殺しの標的が表の梅安に治療を依頼してくるが、手遅れで死んでしまい、しかも意外な真相の「後は知らない」など、それぞれ背景のある連作形式になっています。仕掛の勧善懲悪的な爽快感だけでなく、同じ手で人助けも人殺しもする梅安の心境が良く描けており、鬼平や剣客とはまた違った少し陰のある雰囲気が独特の味わいです。基本は押さえているので時代物の王道が好きな人でも、変わったものが読みたい人でも無難に読める一殺。
2002年12月20日
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探偵稼業から足を洗い、酒と女に溺れながら小説を書いて暮らしていた主人公の元に旧友が訪ねてきた。 彼は市の浄化委員会からの依頼で汚職の調査を行っており、主人公に協力を要請してきたのを断った直後に死体となって発見された。友人の復讐のために立ち上がった主人公だったが、事件の裏には恐るべき奸智が張り巡らされていた。’85推理作家協会アンケートで傑作ミステリィの1位に選ばれたそうですが、どう見てもハードボイルドです。だらしないけど芯の通っている主人公といい、危機一髪の連続の展開といい、ハードボイルドの典型と言えるでしょう。謎解き=ミステリィという意味では確かに練り込まれてはいるものの、そういう視点からの評価で1位を取れる作品だとはあまり思えません。 微妙な一殺。
2002年12月19日
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ソープ、ゲイバー、SMクラブから、包茎手術の先生に使用済み下着販売と、著者が取材した「あのころの風俗」、化粧品販売、奉仕活動、モデル、英会話などの勧誘に「呼びとめる人たち」、某アンミラ、ロボット寿司、合宿の「ふつうとヘンのはざまに」という三部構成のエッセイ集です。取材時期が15年ほど前ということで情報価値はあまり期待できませんが、様々な人間の欲望や愛すべき愚かしさのようなものが感じられて楽しく読めました。身近に起こりうるような(?)ネタが多いのも良いです。欠点は、その内容とイラスト入りのせいもあって、電車の中などで読むのが恥ずかしいことくらいでしょうか(笑)
2002年12月18日
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店先に置いてあった電動式の木馬が壊れたが本体はしっかりしているということで、酒屋の主人が幼稚園に寄付した。その木馬がある晩忽然と消滅し、しかも次の朝には元の場所に戻ってきていた。 誰が何の為に持ち去ったのか推理する表題作の他、3人の少女が喫茶店で大量の砂糖を飲み物に入れる目的「砂糖合戦」、鍵を掛け忘れた車からシートのカバーだけが盗まれていた「胡桃の中の鳥」など、日常のちょっとした事件に潜む謎を解くやや連作っぽい作品集です。“師匠と私”というシリーズで大学生である主人公と、謎解き訳の落語家の師匠との穏やかなやりとりと、人間の優しさが感じられるストーリーが醸し出す雰囲気がとても心地良く読めます。 推理とかミステリィというジャンルとはやや一線を画すきらいもあるけど、逆に素人さん(?)には本格物より読み易くていいかも知れません。 オススメ。
2002年12月17日
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好きな人に好きだという気持ちをストレートに出せる、町中でもさり気なくキス出来るような関係の素晴らしさを説いた表題作の他、幼き日の聞き間違いによる思い込み「キリンさんに連れられて」、ふと思い付いたことを書き留めておくメモに残っていた謎の言葉「ウナギで涙」など、著者の日常の体験や感じたことを綴ったエッセイ集です。かなり初期に書かれているせいか、文体に若々しさがあり、それでいてどこか落ち着いた印象が20代前半という微妙な年齢を感じさせて興味深かったです。でも実は20代後半くらいで書いたのかと思ってました(笑)甘ったるくはないけど女性らしい繊細さのある一殺。
2002年12月16日
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作家として幾許かの才能を認められながらもなかなか作品が書けず、どこか放り出したような生活を続ける主人公の恋人は純真で美しく儚げだが心の傷からか性的不能であった。その隙間を埋めるかのように倣岸で力強い男に欲望を感じ、肉体関係を結んでしまった主人公だったが恋人への愛情は変わらず、自分を持て余してゆく。主人公の感情の起伏や周囲の人々とのやりとりが、現実味のあるようなないような、不思議な距離感が面白いです。展開としては心と体で違うものを求めてしまう葛藤という、やや使い古された感のあるものですが、舞台が中国のせいか、あまりダレずに読めました。 内容よりも設定に興味があれば読んでみると良いでしょう。
2002年12月15日
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中国人や中国人の学校に関わる思い出を通して主人公の中の中国を描いた表題作の他、目立たず誰からも相手にされない「貧乏な叔母さんの話」、商品の苦情の手紙に心打たれ、仕事としては対応するわけにいかないが個人的な返事を書く「カンガルー通信」など、捉えどころのない短編集です。概念的と言うか抽象的と言うか、そのまま読んで文面通りに受け取ろうとすると頭がウニになるかも知れません(笑)が、論理とは程遠い内容なのにどこか論理的な印象が面白い読み心地で悪くないです。 かなり初期の作品ながら既にスタイルが確立されていて読み易い一殺。
2002年12月14日
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もう何度読んだかわからないくらいの北方謙三の代表作です。「さらば、荒野」、「碑銘」、「肉薄」、「秋霜」、「黒銹」、「黙約」、「残照」、「鳥影」、「聖域」、「ふたたびの、荒野」という10殺からなるシリーズで、ある架空の地方都市を舞台に繰り広げられる人間の欲望が渦巻く争い、そして大事なものを守るため、どうしようもなくそこに関わってしまう男達の生き様が描き上げられています。端から見るとどうでもいいようなことに時には命さえも投げ出しながら、悲壮さや感傷を感じさせない描写はまさに北方謙三の面目躍如と言ったところです。バーテン、殺し屋、画家、医師、教師などそれぞれの作品で中心となるキャラクタも強い個性があり、それぞれに魅力的です。人によっては馬鹿げているとしか思えないかも知れませんが、私は非常に好きです。 自分の臆病さが嫌いだからでしょうか。
2002年12月13日
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必ず戻ると言い残して消えた夫を絶対的に信じ、彼を待つためどこにも居着かず各地を転々とする母と、それを補うかのように成長する娘の交流を中心に、不思議な雰囲気の人間模様を描いた作品です。夢見がちという感じでもなく、精神に異常をきたしているという感じでもないのだけど、どこか微妙な歪みを感じさせる心理描写が穏やかな内容にそぐわない読み心地でした。非常に説明が難しいので実際に読んでみて下さい(笑)
2002年12月12日
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8年に一度、初夏になると現れて一定の速度で歩き過ぎる白い<巨人>。 唯一の身寄りであった姉を生贄として<巨人>に踏み殺され、復讐を誓いながら悉く失敗し、老人となってしまった主人公を描いた表題作の他、二つの村を結ぶ峠に出る物の怪「わらし」、十六時間ごとに過去に戻ってしまう男「千日手」など、SFらしい色と不思議な雰囲気の漂う短編集です。著者の初期作品ということで、多少洗練されていない部分もありますが、当時の良くも悪くも若々しい作風が今とはまた違った味わいがあります。 ただ。文庫化にあたって幾らか手直しが入っているとは言え、他の短編集に収録されている作品が数編入っているため、既に読んだものがあると損したような気分になるので注意(笑)
2002年12月11日
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平凡ながら特に不満も無く、結婚生活三年目を迎えた主人公は、子作りも視野に入れて広い部屋を探し始めた。そして、築40年とは言え、信じられない安さと広さの物件が見付かり、喜んで引っ越した主人公夫婦だったが転居祝いに来た友人や弟はそのマンションに嫌な気配を感じていた。 初めは気にしていなかった主人公も不気味な体験が続くにつれて様子がおかしくなり・・・ストレート過ぎるくらいストレートなホラー小説です。過去の因縁や徐々に侵食されてゆく日常の描写など、お約束ながらシンプルに恐さが伝わってきました。ただ、設定や登場人物に見るべき点は少なく、展開も平坦な印象で恐いという以外の感想がありません。ホラーが読みたい時に割り切って読むにはいいかな。
2002年12月10日
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クレオパトラの鼻がもう少し低ければ歴史は変わっていた、と言うけれど、それに負けず劣らず時代に大きな影響を及ぼした妲己、武后、西太后など中国の毒婦達の他、煬帝、袁世凱、そして魯迅幼年記などの作品が収められた柴練にしては珍しいジャンルの短編集です。どこまでが事実かは抜きにして、書物などに残された女達の所業は想像以上でしたが、不思議な味のある文体で暗さを感じずに読めました。 時代物とは書き分けているようで他の作品とはかなり印象が違います。 柴練らしさという意味では微妙だけどこれはこれで悪くないですね。
2002年12月09日
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ナポレオンに魅入られ、彼の関わった物は片端から集めないと気が済まない男。 そして、容貌や体躯がナポレオンそっくりで、自分はナポレオンの生まれ変わりだと信じている男。両者が出会った時に何が起こったか・・・という表題作の他、奇妙なほどに馴れ馴れしく、娘の世話を焼きたがる雑役婦の恐るべきな真意「来訪者」、事故で鞭打ちになって仕事ができず、治療代にも事欠く個人タクシーの運転手が体験した不思議な出来事「甲虫の遁走曲」など、分かってみると不気味な結末が多い短編集です。読んでいる間はさほど怖い要素は無いのですが、最後まで読むとそれまでの布石が一気に生きてくる展開は見事です。ノリの良さや鋭さはあまり感じないけど小技の光る内容は比較的誰でも楽しめるのではないでしょうか。彼の作品の中でもバランスが取れていてお薦めの一殺。
2002年12月08日
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謎の女からの電話をきっかけに主人公の周りで不思議な出来事が起こり始めた。 飼い猫が行方不明になり、様々な人間が現れ、妻が何の前触れもなく失踪し・・・その中で主人公は自分を、そしてこの世界を見つめ直してゆく。第1部の数編は初期の短編集で読んだ記憶があり、かなり昔から暖めていた作品だと思われます。相変わらず独特の雰囲気を持つ文体と主人公の描写が村上春樹ならではの読み心地です。 3殺構成は彼の作品の中では長い部類に属しますが、作品世界に入り込んでいるうちに気付くと読み終わっているという感じです。初心者には少ししんどいかも知れませんが、好きな人なら安定して読めるのではないでしょうか。
2002年12月07日
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著者の完全な創作である、卵を麻雀牌に見立てて10個並べ、積んだり戻したりするという技を実現してしまった青年、ツキにツイていたのが酒で玉砕したルーレットの豪傑、それぞれに得意分野を持つ博打一家、死の間際まで競輪の予想を続けた老作家など、ギャンブルの世界に生きる様々な人々の姿を描いた勝負師列伝です。まさに勝負師の名前に相応しい強烈な個性を持つキャラクタばかりで興味深く読めました。 堅気も筋者も男も女も問わず、いったんはまると抜け出せないギャンブルの魔力のようなものが伝わってきます。 私は臆病なので表面でうろうろしているだけですが、これを読むとますます深みへ行く気が起きなくなりました(笑)勝負事の世界が垣間見れる一殺。
2002年12月06日
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吉本新喜劇、プロレス、宝塚、ボリショイサーカス、東武デパートに天王洲アイルと何の脈絡も無く思い付きで訪れた様々なスポットの感想や、縁の下、父の一言、渡せなかった映画の前売り券など若かりし日の思い出、芝居の良さや揚げ物ベストナイン、エロチラシの文章に対する考察など、幅広いネタが楽しめるエッセイ集です。タイトル通り彼の27冊目の本ということで文体もかなり完成されており、楽しいだけでなく巧いという印象です。作品数が多いため1本1本は短いのだけどそれぞれきちんと完結しているので薄さも感じません。 長編もいいけどやはり短編やエッセイの方が原田宗典らしさが出ています。特に短い作品が好きという人向きの一殺。
2002年12月05日
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独りの夜の寂しさを紛らわすため、無差別な番号に電話を掛けていた主人公はある晩、電話の向こうで助けを求める女性の悲鳴を聞いた。 しかし相手が誰なのかもわからず、電話を掛けた理由も説明出来ないため警察に連絡するわけにもいかず、思い余って友人に相談したところ、何と彼女の兄の妻が行方不明になっており、兄が疑われているその番号が主人公の掛けたものと一致することが判った。友人の頼みで電話の件を匿名で投書した主人公だったが・・・電話を使った独特のトリックと、話の展開の緊迫感がテンポ良く読めました。 今も通用するのかは知りませんが、電話の特性を上手く使っています。 解決までの流れが少しご都合主義っぽい部分もあるけど面白い一殺。
2002年12月04日
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TV台本やCM歌詞の仕事を中心にかなりの収入を得るも、終われば使い捨てられてしまう仕事内容に嫌気がさし、作品が形として残り収入も安定する出版の仕事を望んで様々な文壇バーを飲み歩きながら模索し、それでも徐々に作家として登りつめてゆく著者の実名自伝小説です。作詞やコピーの経験からか句点が極端に少なく、棒っきれのような不思議な文体と、自伝ながら第三者としてきちんと割り切れている視点が独特の読み心地でした。面白い、とか良い、よりも興味深い、という形容の似合う内容で「火垂るの墓」とは違った味のある一殺。
2002年12月03日
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あまりにも汚く、壊れたのか盗まれたのか便座すらないロシアのホテルの便所に直面した一行の様々な対処法を皮切りに世界各国のトイレにまつわる話を綴った表題作の他、子供の頃の思い出である花見川をカヌーで「はじめての川下り」、面白そうな祭りを取材(?)して歩いた「まつりはいいなあ」など、行動派の椎名誠らしい題材を中心としたエッセイ集(?)です。題材のせいもありますが、大らかでしみじみと味のある文体が気持ち良く読めました。 様々な突拍子も無い体験を通しての考察や感想に著者の人柄が出ています。似たようなタイプの文章を書く原田宗典の方が好きだと思っていましたが、そういう比較が出来るものではなくそれぞれに良いものですね。 オススメ。
2002年12月02日
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殺しの現場を見られてしまった小女を消そうと躍起になり、逆に泥沼にはまってしまう殺し屋を描く「おみよは見た」、浪人に乱暴されて殺された姉の記憶がちらつき、襲われている女性を見ると怒りで我を忘れてしまう「白痴」、妻が番頭と浮気をし、自分に殺し屋を差し向けたことを知ってそれを逆手に取る「殺」など、タイトル通り殺し屋を中心とした江戸の影の部分を描いた短編集です。全体的にやや陳腐な印象もありますが、その陳腐さが時代物の1つの型としてきちんと仕上がっている辺りはさすが池波正太郎といったところです。 目立って面白いわけではないけど安心して読める一殺。
2002年12月01日
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