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妊娠した主人公を気遣う風も無く、好き放題に振舞った挙句、出張と偽って女と旅行へ行ってしまった夫に愛想を尽かし、夫の後輩と浮気を始めるが・・・という表題作の他、男を次々と変えてゆく主人公からの電話「勃たなかった男」、足を食べる夢を見続ける主人公の心理「夜の足音」など、男女間の機微を描いた短編集です。この作者は初めて読んだのですが、理屈では説明出来ないけれど、何故か納得出来てしまう男女の微妙なやりとりが興味深く読めました。 やや沈んだ感じながら穏やかな雰囲気が内容とも良く合っていて不思議な読み心地です。ページ数の割に少し重いけど独特の味がある一殺。
2002年09月30日
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眠狂四郎を代表とする時代小説の重鎮として知られる著者にしては珍しく、現代を描いた長編です。日本初のボクシング世界チャンピオンとなった芝雄吉、しかし彼はその強烈なパンチによって、対戦相手を二人も死に至らしめてしまった。 不幸な事故とは言え、これ以上ボクシングを続ける意志を失った雄吉は都会を離れ、北海道の山奥へ篭もることを決意した。そんな彼が旅立つ前夜を共にした女性の祖父が北海道で砂金採りを続けていることを知り、“百年亡者”と呼ばれるその老人を探してみようと思い立つ。自分であらすじ書いてて強引としか思えないのですが(笑)、何を描きたかったのか今いち掴めませんでした。題材としては雄吉と“百年亡者”の過酷な流浪の旅が中心になっているようですが、なぜそういう展開になるのかが理解できません。 短いスパンで見れば違和感は無いらしく、読んでいて途中で投げ出したくなる程ではないので、面白くないとは言いませんが、読み終わっても疑問符だけが頭の中に残ってしまう一殺。
2002年09月29日
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朝食の大切さ、日本人の食事のマナー、兵隊に貰った一俵のじゃがいも、子供の頃に行った様々な名店など、美食家の父を持ち、取材や講演で世界中を飛び回る著者が食べ物にまつわる体験や思い出、耳にした話やそれに対する感想などを綴った短編集です。グルメという程に食べ物偏重ではなく、もっと大きな食と人間の関わりや文化というものに焦点を当てた内容は興味深く読むことができました。 刊行されたのが約10年前で、著者もかなり年配の方なため、やや古いと感じるネタもありますが、まずまず楽しく読める一殺。
2002年09月28日
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身体障碍者の子を殺す親、先住民を駆逐する侵略者、強大な兵力や非人道的な兵器で一方的な殺戮が行われる近代戦など、弱者、少数者を多数の幸福の前に犠牲にするという強者側の論理ばかりが横行する中、虐げられる側の視点に立って殺戮の底に流れるものを描いた作品です。アイヌに対する和人、有色人種に対する欧米人、ユダヤ人に対するドイツ人など、相手を人間以下と見なし、自分達の利益や正義の為ならまるで虫でも殺すような感覚で平然と差別や虐殺を行い、許容する“善良な市民”や“有能な為政者”の無意識の罪を指摘する内容はかなり苛烈ながら納得させられるものがありました。人によっては反発を感じる部分も多いかも知れませんが、殺す側、殺される側の絶対に相容れない考え方が浮き彫りにされており、読み応えがあります。これも一面と割り切って読める人にはお薦めの一殺。
2002年09月27日
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元レディースをやっていた姉が妊娠し、しかも男が逃げたことで悩んでいた友人と、何の不自由も無い平穏な家族を持つ主人公の交流「シコちゃんの夏休み」、ずるずると流れに任せて生きる自分を嫌悪していた主人公が、過去に強い印象を受けた男に再会することで自分を見つめ直す「最後の一枚」、優秀だったが故に上司に憎まれて退職させられ、新しい会社はとにかく頭を下げて駆け回り、不定期な勤務時間のため恋人を失った主人公が周囲の人々に触れて立ち直る「重たい色のコートを脱いで」など、副題の「落第生」のような女性を描いた短編集です。何かに落第したからと言って、それでどうしようもなくなるわけではないというメッセージを感じました。苦労すれば報われる、というような在り来りの展開ではなくとにかく一所懸命に生きる主人公達の描写に好感が持てます。明るくはないけど優しい雰囲気の一殺。
2002年09月26日
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開発途上国に対する日本資本の上陸に反発したゲリラがタンカーを沈め、自衛隊の武装強化を非難する反戦派が東京の電力供給を絶つことで戦時中の忌まわしい記憶を呼び起こそうとし、それに加えて異常気象や様々な自然災害が続発したことで人々、特に戦争を知らない世代は軍隊の必要性を感じ始め、遂に徴兵制度が復活してしまう。一歩間違えると本当に起こり得るような不気味さを孕んだ短編連作集です。最近はあまり聞きませんが、攻撃は最大の防御、だとか防御するためには攻撃側より大きな兵力が必要という考えや派兵問題など、自衛隊をどの程度の力として保有し、行使するかについては未だ適切なガイドラインは存在せず、状況に依っては軍隊となる可能性を考えさせられました。設定としてはやや強引だけど興味深い一殺。
2002年09月25日
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御宿かわせみシリーズの第2弾です。 幼い子を残し、宿から消えてしまった夫婦者の行方を追ううちに判明したある呉服屋の内情を描く表題作の他、掏摸の知り合いと間違われた主人公が本物の掏摸と協力して事件を解決する「お役者松」、兇悪な盗賊の殺しの手口に道場仲間だった男の影がちらつく「宵節句」など、主に庶民的な事件を題材とした短編集です。勧善懲悪のような爽快さはありませんが、下町の人情が伝わってくるような内容は藤沢周平の作品に通じるものを感じました。 明るい、とは言わないまでも全体的に落ち着いた結末が多く、読み易い一殺。
2002年09月24日
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タイトルで分かる通り、相撲を題材にした短編集です。若くして相撲の極意である“後の先”を掴み、破竹の昇進を遂げながら、女性問題と盗癖のせいで角界を去ってしまった主人公の出自「一瞬の栄光」、足腰が良く駿足だったのが逆に災いし、八百長打ち合わせの使い走りとして使われ、心労から廃業してしまう「走れ幕下」、殺された親方の右腕に釘が打ち込まれていたことから現役時代、彼の右腕によって力士としての道を閉ざされた犯人を追う「恩讐の右腕」など、どちらかと言えば角界や力士の暗い部分を描いているのが特徴的です。相撲を描いた作品自体、かなり珍しいので何となく買ってみたのですが・・・まぁ、普通かな。素材は悪くないのだけど展開や纏め方がちょっと甘く、最後が強引だったり納得のいかない部分がありました。情報的にも興味深いものがあるだけに惜しいところ。相撲好きなら読んでみるのも良いかとは思います。
2002年09月23日
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黒人の夫を持ち、性や体の触れ合いを通した恋愛の形を描いた小説を出したというだけで様々な差別や偏見を受けた著者の体験と怒り、信念や、何の意識も無しに差別を行えてしまう人々を描いたエッセイ集です。読んでいて胸糞悪くなってくるような人々が出てきますが、私も気付かずに誰かに対してそういう感情を抱かれるような言動をしているかも知れないと思うと、何事にも敏感で広い視野を持てるようになりたいです。著者が暗くならないので内容の割に気持ちの良い一殺。
2002年09月22日
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男女の違いや仕事の意義について独自の理論をぶち上げる「なまけもの論」に始まり、彼の妄想が冴え渡るエッセイや、ホラを売ろうと思い付き、会社を設立した著者の顛末「第三惑星ホラ株式会社」、全く新しい視点から描いた童話(?)「少年と狼」など、様々な方向性が楽しめる作品集です。相変わらず大真面目にどうしようもないことをやってしまう著者の考え方や味のある文体が気持ち良く読めました。マンボウシリーズのような統一性が無い代わりにエッセイも短編も読める、北杜夫入門向けの一殺。
2002年09月21日
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「兎の眼」と並ぶ灰谷健次郎の代表作です。小さな琉球料理屋の娘である主人公は、生まれは神戸ながら沖縄出身者の両親や客との触れ合いから沖縄の美しさや優しさを感じ取っていた。 しかし、本土からいいように利用された挙句に見捨てられ、返還後も差別や偏見の眼差しで見られがちな沖縄出身者の辛さや、戦争の悲惨な思い出から主人公の父は心を病んでしまう。それでも明るく健気に生きる主人公だったが・・・今でこそリゾート地として明るいイメージの沖縄ですが、唯一のアメリカ軍上陸地として非戦闘員も含めた住民の1/3が戦死し、ほんの30年前まで日本ですらなかったという事実、そして苦難の末に返還された後も日本がどれだけ沖縄に報い、償ったかということを考えさせられました。どんな状況でも優しさを失わない人々の描写が悲しくも暖かい気持ちで読めます。 人によっては多少鼻につくかも知れませんが、灰谷健次郎らしい一殺です。
2002年09月20日
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仮眠施設の“起こし屋”として、利用者の頼んだ時間に気持ち良く目覚めさせる仕事をしている主人公だったが施設にも機械化の波が押し寄せ、音を鳴らさず確実に起こすという“自動起床装置”が開発され、試用運転を行うことになった。 眠りというのは起きているのと同じくらい大切なことだと感じている主人公の同僚は装置の導入を阻止しようと躍起になるが・・・という芥川賞受賞の表題作の他、カンボジアでの不思議な「迷い旅」の2作を収録した作品集です。眠りというのは起きている時間のための疲労回復としてあるのではないという考えに基づいた設定が興味深く読めました。意識が無く、記憶も殆ど残らないため蔑ろにされがちだけど、眠りは眠りとして起きている時間とは別に存在するというのは納得出来るような気もします。 それを通して何か他のことを伝えたかったのかまではわかりませんが。独特の読み心地のある一殺です。
2002年09月19日
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犬に噛まれたことで自分は狂犬病になったと思い込み、残された半年を精一杯生きようとする小学生の心理を描いた表題作の他、自力で何かするという才能を自分の中に認められず、運命に逆らわないように生きようとする「堤防」、死と向き合う不思議な目に惹かれる「ひよこの眼」など、子供の心の動きを中心とした短編集です。表題作の設定にいきなり引き込まれました。子供心にも死を純粋に受け止め、今までの行動や死んだ後のことを考える過程が上手く描けていると思います。他の作品もそれぞれ独特の設定やキャラクタが生きていて山田詠美の作品の割に(?)内容がストレートに入ってきて読み易く、女流作家が苦手とかでなければお薦めの一殺。
2002年09月18日
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オオサンショウウオに始まりカブトガニ、ニホンザル、アマミノクロウサギ、ホタルイカなど、動物というより生物たちの生態や、著者が実際に現地へ赴いて触れた体験、感想などを綴った作品集です。今でこそ元気だけど貧相なじいさん、といった外見の著者ですが、昔は潜水や山歩きなどタフにこなしていたらしく、実際に接した者ならではのリアルな描写が楽しめました。ただ天然記念物の紹介をしているだけでなく、乱獲や自然破壊という人間の私利私欲によって追い詰められ、数が減ると今度はノウハウも無いままにとにかく保護され自然とは異なる姿になってしまった動物たちの悲しさや著者の想いが感じられるのも良いですね。文章的にもなかなか読み易く、動物好きにはオススメ。
2002年09月17日
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食べることに生活のかなりの重点を置く中国の中でもひときわ食にこだわりのある広東こと広州、その実態や多彩な食文化、食べ物にまつわる様々な話や著者の体験を綴った短編集です。台湾に生まれ、美食家の父の影響もあってか美味珍味に接する機会が多く、更に自らも包丁を握ることのある著者ならではの造詣の深さが感じられました。中国という素材も知っているようで知らないことが意外に多く、興味深いものがあります。 幾つかは料理のレシピも載っており、自分で作ってみたくなります。おなかのすく一殺。
2002年09月16日
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初めて読む作家です。 鳴海章と間違えたのは秘密(汗)格上の家から子種を望まれて婿入りしたものの、いざ子が生まれるとお役御免とばかりに離縁され、浪人となって諸国を流れ歩いていた主人公が十数年の後に江戸へ戻って様々な事件に巻き込まれるという短編連作集です。箪笥のようにごつくて大きな体と優れた剣技を持ち、何事にもやる気の無い風だが、強い者いじめだけは大好きという主人公が暴れ回る様が気持ち良く読めました。内容的にはお約束すぎるくらいの勧善懲悪物ですが、開き直ったような痛快さが悪くないですね。爽快感を求めるには程好い一殺。
2002年09月15日
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ま、何も言うことはないですね(笑)ラーメンの起源に始まり、麺、スープ、具の研究、全国のご当地ラーメン紹介、油そばや冷やし中華など異端派に関する考察、ラーメンの栄養学に正しいラーメン店やオヤジのあり方など、まさに大全の名に恥じない様々な情報を詰め込んだ作品です。ラーメン好きとは言っても、私の場合はただ食べ歩くだけなのでこういう情報は持っておらず、興味深く読めました。文章は垢抜けない部分もあるし、ラーメン店の紹介なんかは少し古い部分もありますが、それでも情報的価値は高く、好きな人にとってはなかなか勉強になる一殺です。
2002年09月14日
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破綻寸前の町の財政状況を立て直すため、町長が考え出したアイディアは、クジラの来る島というデッチ上げだった。違う所で撮った映像を流し、自然ブームのせいで大量の観光客を獲得できた町だったが、環境庁と水産庁が調査に来ることになり・・・という表題作の他、向上心に欠け、犬として何度も転生を繰り返していた主人公が人間になりたいという意識に目覚めた「犬と神様」、社内と家庭でのコンプレックスから超能力を得る「悲しきサイキック」など、どちらかと言えば浮かばれない題材を使った短編集です。そういう人々の滑稽さと微かな悲哀は感じるものの、正直、内容としてはぱっとしたものが無く、何を描きたかったのか良くわからない作品でした。アイディアは面白いのだけど上手く味付け出来なかった印象が強いですね。 まあ、手軽な読み心地ではあります。
2002年09月13日
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北方謙三のハードボイルド作品のかなりの数に登場する名物刑事“老いぼれ犬”の少年、壮年、老年時代を描いた「傷痕」、「風葬」、「望郷」の3殺からなるシリーズです。彼の代名詞とも言える老犬トレーの鼻歌やゴロワーズ、ロンソンのオイルライターなどのアイテムの由来、その性格を形成する出来事などが綴られているため先日紹介した挑戦シリーズと同じく、北方作品を十分に堪能してから読むと味わいが増すと思います。“老いぼれ犬”の登場する作品を読むたびにまた読み直したくなる三殺。
2002年09月12日
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華やかで可愛らしく、常に世界の中心であった友人の陰で彼女を引き立てるためだけに存在していた主人公が、そこから脱出しようともがき、男や酒を知るという手段で離れた後に気付いたこと「蝶々の纏足」、学級委員の子が惚れている先生に目をかけられたことでいじめにあった主人公があるきっかけで見出した解決法「風葬の教室」、幸福や愛情を知ったが故に、それを失うことに怯える「こぎつねこん」の3編を収めた作品集です。形は違えど3編とも“孤独”というものが題材の軸になっており、人と人との在り方を考えさせられました。私も孤独というのは苦手なのですが、周りに友達が多ければそれで孤独じゃなくなるとというわけでもない。どこかで読んだ「日本人は孤独を感じたくなると人気のないところへ行くが、アメリカ人は人込みの中へ行く」という言葉を思い出しました。 オススメ。
2002年09月11日
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日本唯一の公共放送機構であるKHKの年末の目玉番組・東西歌合戦を潰せ。 信じられないような依頼を受けた主人公はその背後に隠された大きな攻防を探り始めた。そして姿を現したのは、メディアという力を狙う世界規模のプロジェクトであった・・・題材の目の付け所とスケールの大きさは面白いのだけど、ちょっと類型的なキャラが多くて在り来りな印象を受けてしまいました。 内容的にも特に目を引くほどのものも無く、無難なバイオレンス&アクションという感じかな。 こじーん的に五木寛之の長編、特にアクション系はあまり評価の高いものが無いような気がします。
2002年09月10日
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「危険な夏」、「冬の狼」、「風の聖衣」、「風群の荒野」、「いつか友よ」の5巻からなる連作長編です。地図上でもまだ白いままのアンデスの奥地。 そこに自分の手で色を付けたいという夢を持っていた主人公はある危険な仕事の手伝いをしたのがきっかけで、自分の中に眠る獣に気付かされた。 血に染まってしまった手を自分の血で洗い流すため、闘いの中へ身を投じる少年の成長、そして獣同士の触れ合い、誇り。 名物キャラの“老いぼれ犬”を含め、「檻」、「牙」などの登場人物も絡む、著者の作品の中でも力の入ったシリーズです。心の中に獣を持ち、日本に居られなくなった男達が惹かれ合うように出会い、それぞれの想いを抱いて闘う様が心に迫ってくるような読み応えがありました。読み心地は重くないのだけど登場人物の言葉や行動の1つ1つが重い、何度読み返しても感じるものがある作品です。 内容前述のように他の作品からの登場人物も居るので北方作品を味わい尽くした締めに相応しい、ブラディ・ドールシリーズと並ぶオススメの五殺です。
2002年09月09日
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米軍相手のクラブで働く主人公と、脱走兵の黒人との間に紡がれる、濃密で不思議な恋を描いた作品です。心と体は切り離せないということを実感出来るような、体が求めることで心が求めていることに気付くという印象を受ける展開が独特で興味深く読めました。体で求め合うのが恥ずかしいような、場合に依っては汚れたような見方をすることが逆に恥ずかしくなる程の恋の在り方とでもいうのでしょうか。 ストレートな感情が伝わってくる一殺です。
2002年09月08日
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推理作家である主人公はある雑誌の企画として訪れた隠岐で覚えのない脅迫を受けた。 その男が落とした紙切れに書かれていた場所へ行ってみた主人公達が耳にしたのは、後醍醐天皇の幻の財宝と、それに絡む殺人事件の話であった。 話だけでは証拠も無く、警察へ持ち込むことも出来ないため、主人公は自分で事件の謎を追い、解決しようと試みるが・・・ちょーっと陳腐かなぁ。 キャラが軽いのと、話の都合の良さが気になりました。 南朝や後醍醐天皇の財宝という題材は悪くないのだけどこのトリック(?)はこじーん的にはあまり評価出来ません。まあ、重くないミステリィが好きならアリかも?
2002年09月07日
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著者の豊富(?)な経験をもとに、女の心理や性、男女間の機微について感じたことや体験を綴ったエッセイ集です。とても勉強になりました(笑) これが女性の標準なのかどうかはともかくとして、納得させられる点も多々あり、今までの自分を振り返って凹むことしきり・・・色々と考えさせられる一殺です。 ある意味オススメ!?
2002年09月06日
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小さな旅籠“かわせみ”の泊まり客や周囲の人間が巻き込まれた様々な事件とその結末を、旅籠の女主人とその恋人の同心を中心に描いた短編集です。庶民を中心とした設定は宮部みゆきや藤沢周平を思い出させたりもしますが、主人公2人の色恋を絡めているところと意外に重い結末の多いのが特徴的な印象を受けました。ただ、雰囲気は穏やかな感じで読み易く、時代物が好きならあまり人を選ばずお薦め出来る一殺です。
2002年09月05日
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アンチ・ミステリの先駆けであり、「黒死館殺人事件」、「ドグラ・マグラ」と並び3大奇書として名高い(?)ミステリィ長編です。 血縁の人間がが次々と死を遂げ、呪われた呼ばれる氷沼家。 そのどれもが間違い無く事故であり、偶然としか思えないが氷沼家の兄弟や先祖の業にまで遡り、殺人が起きる前に犯人を考えるというゲームを始めた矢先、兄弟の1人が死亡した。密室での心臓麻痺という、特に事件性の感じられない死ではあったが、探偵気取りの人々はそれを密室殺人と見立て、トリックや犯人探しに熱中していた。ところが次々に死者が増えてゆき・・・途中まで読んでいると風呂敷を広げすぎて無茶苦茶な印象を受けるのですが、終盤にかけての急展開であれよという間にしっかり纏まってしまうのが見事です。書かれた時代の感じられる雰囲気も良く出ていてページ数相応の読み応えもありながら、意外とテンポ良く読み進められました。 清涼院流水がもうちょっときちんと纏めてくれればなぁ、と思っている人にオススメ(笑)
2002年09月04日
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鉄砲伝来に続く火薬の技としてイギリス人の手によって日本に伝えられた花火。 徳川の支配も三代目にさしかかり、鉄砲を必要としなくなった太平の世で花火は大きな進化を遂げ、今や日本の花火は世界一の技と美しさを誇るようになった。一瞬の華と、その隣り合わせの危険に魅せられ、家業を放り出してまで花火作りにのめり込む父に苦労させられながらも、自分もまた花火に惹かれてゆく主人公の生涯を描いた実名小説です。花火という題材に少年の成長を絡ませるという珍しい内容ですが、両者が上手く融合していて非常に心地良く読み進めることが出来ました。 華やかな花火の陰の人間模様という対比が効果的に使われています。初めて読んだ作家さんですがお薦め。
2002年09月03日
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一番の友人を喪ったことで疲れ、ひたすら眠り続ける主人公、そして植物人間の妻を持つ男の不思議な触れ合いと眠りというものを絡めた表題作の他、死んだ兄を愛した二人の女性を描いた「夜と夜の旅人」、ある男を巡って激しく対立した女性の死に際の声「ある体験」の3作を収めた短~中編集です。眠りや死というものを主題に据えながらも重さや暗さは無く、不思議な・・・水底のような安らぎと静けさのある読み心地がこの作者ならではの味があって良かったです。こじーん的には「キッチン」や「サンクチュアリ」の方が好きですが、内容に興味があれば読んで損は無いでしょう。
2002年09月02日
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経営の逼迫により大幅なリストラを断行せざるを得なくなった東阪広告。 その幹部達は外部から出向している役員を新社長に据え、彼に汚れ役のリストラを押し付けた上でそのリストラの不備を理由に社長を退陣させようという計画を立てた。 それを気付きながらも拒否するわけにいかず、就任することになった新社長だったが、彼は“窓際の狼”と呼ばれ、普段はぐうたら社員だが、社内外の暗闘に大きく関わっている主人公に目をつけ、彼に手助けを依頼した。主人公は渋々ながらも依頼を受け、幹部派の悪事を暴くため調査に乗り出した。良くも悪くもお約束な企業型勧善懲悪物で、単純ながら気持ち良く読めました。 最終的に相手側がミスを重ねて自滅してゆくのがちょっと特徴的だけどまあ無難。こういう系統の作品が好きなら楽しめるでしょう。
2002年09月01日
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