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前回、内外の代表的な株価指数を構成する株式に投資する二つのETFを使って、リスク資産部分を運用すれば、プロの機関投資並みの資産運用が簡単且つ安価に(ここが肝心!)できると紹介した。 別のETFを使ったり、個別銘柄への投資を使ったりしても、上記のポートフォリオに勝る運用成績が得られるとは限らないのだが、「二種類のETFにだけ投資するのでは退屈だ」という方もいらっしゃるかもしれない。 そこで、今回は、幾つかの主に海外株式に投資するETFを、特に外国株運用部分に使うとどんなリスク特性になるかについて基礎的なデータをご紹介する。 ■個々のETFのリスク 前回と異なり、今回は、過去3年のデータでリスクのデータ(標準偏差と相関係数)を推定してみることにした。運用の論理では、あくまでも「将来のリスク」が得られたとして資産選択を行う。この「将来のリスク」の推定に使うデータを、いつの期間のものを利用して推定すべきかについては個々の投資家に委ねられており、何年がいいとか、長い方がいいといった、決定的なセオリーはない。要は、分析者が何年を適切と思うかにかかっている。 大まかに言うと、時間が経っても市場の構造・環境が変わらないと考えるなら長い期間のデータを採る方がサンプル数が増えるのでより正確な推定ができると期待できるし、市場の構造・環境が変わっているので遠い過去のデータは役に立たないと考えるなら、最近のデータを重視すべきだ。どちらがいいとも言えないが、実務的には、10年を超えるようなデータからリスクを推計するのは疑問な場合が多いと、個人的に思っているが、場合による。 今回は、楽天証券が扱っているETFで、過去3年以上の運用レコードがあるものから、主なものを選んで、リスクを計算してみた。その結果が、<表1>だ。 海外に上場されているETFについては、米ドルなり、香港ドルなりの、当時の対円の為替レートをかけて基準価額を円換算して、円から投資すると考えたリスクを計算した。2005年1月~2007年12月の3年間の収益率のデータを作って、ここから年率の標準偏差を推計した。 なお、個々のETFの内容については弊社のホームページ「投信スーパーステーション」などをご参照いただきたい。<表1> 昨年前半までは先進国の株式市場の値動きが比較的小さかったので、特にアメリカだがS&P500 も中小型株が多く含まれるRussell2000もあまり大きな値動きがなかった事が分かるし、日本のTOPIXのリスクも小さく出ている。 過去34年のデータから推計した前回のリスクとはかなり異なるリスクの数値になっていて、推計に使うデータの期間による差が実感できる。 これに対して、ブラジル、南アフリカ、中国の株式に投資するファンドの値動きは、相対的にかなり大きい。発展途上国の株価の変動の大きさは、先進国と較べて1日単位で見ても大きいと実感している投資家が多いだろうが、個々のリスクはかなり大きいと覚悟しなければならないことが分かっていただけると思う。 ■ファンド間の相関係数 ファンドの組み合わせを考える上で重要な相関係数を計算してみた。<表2> 欄外にはドル/円の為替レートとの相関係数も載せてみた。 日本株との組み合わせでいうと、中国株に投資する二ファンドを除くと、相関係数が0.5以上あって、かなり「同方向に動いている」ことが分かる。また、この期間に関しては、ドル/円の為替レートとの相関も大きく「円安→日本株高」という相関が見られる。 また、共にアメリカに投資するSPYとIWMの相関係数が約0.91と高い。個人が分散投資を考える上ではどちらか一方でいいだろう。 ■組み合わせ例 ポートフォリオを二通り作ってみたので、そのリスク値をご紹介する。<表3>は、日本株を40%、外国株を60%として、外国株を5ファンド各12%の投資ウェイトとして、リスク値を計算してみた。なお、表の中に期待リターンとして7.465%という数字がいずれのファンドにも入っているが、これは計算時の長期金利(1.465%)にリスクプレミアムを6%乗せたもので、「どの国の株式市場についても円ベースでは同程度の期待リターン」を考えているという意味であって、作業上の仮定だ(筆者の予想というわけではない)。 <表3> 組み合わせたポートフォリオのリスク推計値は、日本株と米国株のリスク値が小さいことが功を奏して約14.5%とかなり抑えられたものになっている。 次の<表4>は、全てのファンドに均等の期待リターンを与えて、ポートフォリオのリスクが最小になるようなウェイトを求めてみたものだ(マイクロソフト・エクセルのソルバー機能を使って最適化計算ができる)。 <表4> 大まかな数字でいうと、日本株40%、アメリカ株(S&P500)53%、中国株7%という結果になった。この組み合わせでの投資を推奨するものでは更々ないが、日本株の最適ウェイトはどうも40%近辺にあるらしいという印象を持った。 個々の国の株式市場に投資するETFは、現在、かなりの数が利用可能だ。率直に言って、各国の株式の期待リターンについて意味のある意見(予想)を持つことは容易ではないが、自分の意思で投資対象国を選んでみることが面白いという投資家もすくなからずいることだろう。 その場合にも、一般論として分散投資が重要であることと、自分の投資している組み合わせのリスクを把握しておくことが大切だ、ということは強調しておきたい。
2008年02月15日
(4)個々の資産分類(アセット・クラス)毎の商品選択 個々のアセット・クラス、たとえば「国内株式」に対応するファンドを選ぶポイントは、(A)中身が明快で投資に無駄がないか(常に100%近く一つの資産クラスないしその一部に投資しているファンドがいい)、(B)手数料コストは小さいか、(C)残高がごく少なく償還されそうだといったネガティブな特殊事情はないか、という三点だ。随分単純だと思われるかも知れないが、むしろ、これらの三点以外の余計なことに気を取られると運用効率を下げかねないので、注意して欲しい。 たとえば、過去の運用成績は基本的に将来の運用成績とは無関係なので、運用方針と運用プロセスの一致を確認するといった目的以上に使えるものではない。また、後述のように「将来の運用成績が」相対的にいいアクティブ・ファンドを事前に選ぶスキルがないことは、一般投資家も、投資信託の販売会社、あるいは投資信託の評価機関といったプロについても同様なので、将来のより良いパフォーマンスを求めて外部の情報を頼ることも、基本的には無駄である。 加えて、一点注意しておくと、債券と株式など複数の資産クラスに投資する「バランス・ファンド」(近年「資産分散型」という呼び方もある)は、いつ何に投資しているかの把握が難しく、また、個々の資産クラスに別々に投資するよりも手数料が割高になりがちなので、個人投資家の投資に適した商品になる可能性は小さい。 バランス・ファンドでは「プロが資産配分(アセット・アロケーション)を行います」と謳うことが多いが、残念ながら、資産配分に於いてプロが有効なスキルを持っているか否かという点に関しては、否定的な研究結果や意見が多い。プロのアセット・アロケーション・スキルについては過大な期待を持たない方がいい。 投資信託の売り手側は強調しないことが多いが、手数料の影響は大きい。特に、信託報酬は、運用期間の全てにわたってパフォーマンスにマイナスの影響を与えるので、多くの場合最重要の比較項目だ。 動かし難い傾向性として、一つには「アクティブファンドの平均はベンチマークに負けていることが多く」、もう一つには「相対的にパフォーマンスの良いアクティブ・ファンドを事前に選ぶことはできない」。この両者と、インデックス・ファンドの方が手数料(特に信託報酬)が低いことを考えると、個々のアセット・クラスそのもの、ないしは重要な部品(外国株式における個別国の株価指数に連動するインデックス・ファンドのようなもの)となるようなインデックス・ファンドが有力な候補となる場合が多いだろう。 現時点では、内外の株式共に、ETF(上場型投資信託)の信託報酬の安さが圧倒的なメリットである場合が多いが、投資単位(ETFはある程度まとまった金額で売り買いされる)や売買の手数料なども総合的に勘案して、最も有利なファンドを選択したい。(5)商品の購入場所の選定 前述のように、現在、投資信託は、全く同じ商品でも、購入窓口によって実質的な手数料が異なる場合がしばしばある。「どこで買うのが有利か」というポイントは常に気にしておきたい。(6)運用のモニタリングと(必要があれば)修正 もともとの投資配分が適切であれば、投資信託で投資する場合、個別株で投資する場合よりも、運用期間中に手を加える必要性が発生する頻度は小さいはずだ。しかし、投資したファンドの価値がどのように変動しているかは、時に重要な情報となることがあるのでなるべく頻繁に見ておきたい(たとえばベンチマークと不自然に乖離していないか等を見る)。個々のファンド毎にベンチマークと比較して見ておくことが重要だ。 また、たとえば、国内株式と外国株式の運用パフォーマンスが大きく異なった場合などに、資産配分のバランスが不適切に歪むことがある。あまり神経質になる必要はないが、年に一度程度は、改めて資産配分が適切かどうか、前提条件も含めてチェックしておきたい。(補足)楽しみとしてのアクティブ・ファンド投資について 投資家に可能な判断と、投資家の損得を厳密に考えると、信託報酬に大きな差がある現在、手数料が相対的に高いアクティブ・ファンドに投資することは経済合理的とは言い難い。 しかし、運用者の投資哲学やファンドのコンセプトなどに共感して、多少手数料が高くてもアクティブ・ファンドに投資することは、「楽しみ」の一つとして肯定できる場合があるだろう。どの程度の手数料差までを許容するかは、投資家個人の価値判断によるものなので、一概に決めることはできない。あくまでも「楽しみ」にコストを払っているのだという認識があれば、構わないだろう。 特に、今後、手数料が安いアクティブ・ファンドが多数登場した場合、現在よりも多くの人が、低廉なコストでアクティブ・ファンドへの投資を楽しむことができるようになるだろう。
2008年02月01日
今回は、もっぱら投資信託を使って資産を運用しようと考える場合の、資産運用の基本的な手順をご説明する。なお、投資信託の基本的な知識については、弊社の「投信スーパーステーション」の中で筆者が監修している「投資信託入門」も、ご参照頂けると幸いだ。 投資信託で資産を運用することの意味だが、(1)少額の投資資金でも分散投資の行き届いたポートフォリオを、(2)自分で手間をかけずに運用でき、(3)分かりやすい形で管理できる(投資信託は毎日基準価額が発表される)ことが主なメリットだと筆者は思っている。他方、デメリットは、(1)投資信託のコスト(各種の手数料)と、場合によっては(2)商品が複雑であったり、運用上の無駄があったりすることだ。 運用に自分で手間をかけないことについては、これを退屈とか勿体ないとか思う人もいるだろうし、他方、気楽だと思う人もいるだろう。一つの分かれ目は、投資信託の運用結果が悪かった場合に「自分で運用したのなら納得できるのに」と後悔するか、「失敗が他人のせいである方が、正直なところ気楽だ」と思うかだろう。性格的に投資に向いていると思うのは前者だが、実は後者のように思う人が少なくないのも事実だし、運用結果が性格で決まる訳ではないので、どちらであっても良い。ただ、後者の人には投資信託での運用が特にフィットするだろうと推測する。 また、国内株式については自分で個別に銘柄を選んで投資したいが、外国株式については手間やコストの問題もあり、投資信託で運用したいと思う方もいるだろう。確定拠出年金のような資金の運用も含めて、投資信託の利用の仕方・選び方を知っておくことは、ほとんどの人にとって有用だ。 ■運用の手順 投資信託を使うからといって、運用の基本的な手順は変わらない。作業を順番に挙げると、以下の通りだ。 1. 家計の分析 2. リスク資産への投資額の決定 3. リスク資産への投資配分の決定 4. 個々の資産分類(アセット・クラス)毎の商品選択 5. 商品の購入場所の選択 6. 運用のモニタリングと(必要があれば)修正 個々の作業について補足する前に、よくある誤りについて説明すると、(3)→(4)→(5)であるべき手順が逆になることが多い。つまり、最初にどこの金融機関で投資信託を買うかを決めていて、その金融機関の扱い商品の中からセールスマンの勧めなどを聞いて投資対象を選び、結果的に資産配分が決まった、というような運用の手順だ。 現在、投資信託は、全く同じ商品(同じ運用会社で、同じ名前の、完全に同じファンド)でも、どこの窓口で購入するかで実質的な手数料が違うことがある。たとえば、同じファンドを1000万円買う場合でも、A社で買うと30万円(=3%)の手数料がかかるが、B社で買うと15万円(=1.5%)で済むといったことが頻繁に起こっている。加えて、たとえば「国内株式に投資するファンド」という具合に投資対象を決めても、一社の取り扱い商品の中に、そのカテゴリーでベストのファンドがあるとは限らない。資産クラスごとに投資額を決めて、広い範囲からファンドを選び、最も有利な窓口でそのファンドを購入することが大切だ。(1)家計の分析 家計の分析は、いかなる投資を行う場合でも重要だ。主な目的は、リスクを取った投資を行うことが適切かどうか判断し、幾らまでならリスクを取ることができるかを決めるための情報収集だ。詳しい方法については、たとえば、弊社のホームページの「山崎元のホンネの投資教室」第七回「投資家のための家計分析の簡便法」などをご参照されたい。個々の家計の経済的な事情は、所得や貯蓄額が同じでも大きく異なる場合があり、一つ一つ異なる。この点については、最も豊富に情報を持っているのは自分自身なので、ご自分で慎重に考えて欲しい。ファイナンシャル・プランナーなどのアドバイザーを利用してもいいが、商品の購入先になる可能性のある相手は、アドバイスの内容が客観的でなくなる可能性が大きいので、なるべく避けるべきだ。(2)リスク資産への投資額の決定 次にリスク資産への投資額を決定することになるが、より正確に言うと、取ることができるリスクの大きさ(の上限)を決めることになる。たとえば、同じく1年後に100万円まで損失を出しても大丈夫な場合でも、個別の株式一銘柄だけに投資する場合(せいぜい150万円くらいが上限だろう)と、投資信託のように実質的に分散投資された商品に投資する場合とでは、投資できる額が異なる。後者の場合、1年間の損失額は最大で投資金額の3、4割程度なので、同じ許容リスクに対して、250万円から300万円投資することができる。 よく、「無くなってもいいお金で投資しなさい」と言う人がいるが、たいていの場合は、文字通り無くなってもいい(大丈夫な)お金以上の金額に投資することが可能だ。もちろん、投資可能な金額の上限一杯まで必ず投資しなければならないというものではないが、取ってもいいリスクの上限を小さく見積もりすぎると、運用の効率が悪くなる。(3)リスク資産への投資配分の決定 資産配分はプロのファンドマネジャーや年金基金でも悩む資産運用の難所の一つだが、あまり投資金額が大きくない個人投資家の場合(せいぜい数億円までの場合、ほぼ間違いなく)、リスク資産部分の投資は、国内株式と外国株式を中心に考えていいだろう。 外国債券は、有効な分散投資が難しいことと、基本的に業者間の店頭取引であるため取引価格の妥当性に自信を持てない場合が多いことから、個別の債券で適切に投資することが難しいし、外国債券に投資する投資信託の場合、期待リターンに対して手数料が高いファンドが多いため、経済合理的には個人の資産運用の対象になりにくい。特に為替リスクを取る場合は、外国株式でも為替リスクを取ると、トータルで過大な為替リスクを持つことになりかねないので、外国株式への投資を優先する方がいいだろう(為替ヘッジを効果的に行う場合この限りではないが、個人投資家には難しい場合が多いだろう)。 ただし、外国株式については、一カ国の株式市場だけに大きな金額を投じると、リスクが大きくなりすぎる場合が多い。一般的には、特定の国の株式の有望性によほどの確信があるのでなければ、外国株式への投資にあっては、数カ国以上の株式に投資するか、iShares MSCI-KOKUSAI(22カ国の株式が含まれる)など、複数の国の株式への投資をベンチマークとするファンドに投資すると良い。(リスク資産の投資配分の決め方については「山崎元のホンネの投資教室」第七十回 「ETFを使った個人資産運用~簡便法~」などをご参照されたい。今後もこの分野については情報を提供していく予定だ)
2008年02月01日
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