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2014.12.04
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カテゴリ: ドラマ
あなたへ1



監督 降旗康男
出演 高倉健 田中裕子 佐藤浩市 余貴美子 草なぎ剛 ビートたけし
   大滝秀治 綾瀬はるか 浅野忠信 岡村隆史 長塚京三

 高倉健さん、菅原文太さんと、日本映画界を支える重鎮が相次いで亡くなりました。ともに80代、まあ仕方がないことかもしれませんが、非常に口惜しい限りです。
 思い返してみれば、映画ファンを自称していながら僕は、この2人の偉大な俳優の映画をあまり見ていないことに気が付きました。2人が盛んに東映任侠映画に出ていた時代は、まだ子どもだったので仕方がないのですが、けっこう日本映画を毛嫌いしていた時期があったからでしょうかね。
 でも、「幸せの黄色いハンカチ」や「ミスター・ベースボール」「ブラック・レイン」は観ていて、寡黙で男気のある男を演じる健さんはすごいと思っておりましたし、文太さんは、大河ドラマ「徳川慶喜」(幕末物は必ず見るようにしています。好きだから。来年はやっと長州側からの幕末ですね。1977年の大村益次郎を主人公とした「花神」以来です。)での慶喜の父親斉昭役や、最近の「千と千尋の神隠し」や「ゲド戦記」での声優で、さすがの存在感には圧倒されておりました。
 このほど、健さんの追悼企画として、遺作となった最後の主演作「あなたへ」をTV放映しておりましたので、観賞させていただきました。

 富山の刑務所で指導教官を務める倉島英二(高倉健)のもとに、亡くなった妻・洋子(田中裕子)から絵手紙が届きます。そこには今まで知らされることの無かった“故郷の海に散骨して欲しい”という洋子の想いが記されていました。

 富山から始まり飛騨高山、京都、大阪、竹田城、瀬戸内、下関、門司、そして洋子の故郷・薄香へと続く旅の中、風光明媚な地で出会う様々な人々と、様々な人生、出会いと別れを繰り返し、倉橋は洋子の深い愛情に改めて気付かされるのでした。

あなたへ2

 まずやっぱり、健さんです。相変わらずの寡黙で無骨な男、まさに、かつて彼自身がCMで語っていた“不器用な男”そのものでした。やっぱり高倉健の高倉健たるところでしょう。さすがです。
 でも、旅の途中で挿入される倉島が回想する亡き妻との思い出の場面では、意外にも結構饒舌で、表情豊かな姿を見せており、いかに無骨な男倉島が中年になってから見つけた生涯の伴侶を愛していたかを表現しており、物語の深みを出していました。さすがです。(すっごいラブラブでうらやましい限りです。)

 脇役も芸達者な役者の皆さんをそろえ、大スター健さんの6年ぶりの主演を彩っています。(ただ、警官役の浅野忠信さんと、うるさい阪神ファン役の岡村隆史さんは余分でしたね。無名の人で充分です。浅野さんなんて、まったくチョイ役過ぎて全く気が付きませんでした。)
 中途採用で年下の上司の下きつい仕事を頑張る訳ありな男南原役の佐藤浩市さんは、あのナイフをなめていた男(「ザ・マジックアワー」参照)と同じ人とは思えない非常に抑えた渋い演技でした。明るくふるまっているが実は訳ありの実演販売員田宮役の草なぎ剛さんも、その明るさのわざとらしさをうまく表現していました。若く明るい漁村の食堂の看板娘奈緒子役の綾瀬はるかさんも、ずいぶん年上の倉島にもきちんと自分の主張ができるしっかり者(大河ドラマ「八重の桜」後半の怖いおばさんの八重が見えて、ちょっといやだったけど。)を巧みに演じていました。わざとらしく山頭火の句を引用する自称国語教師杉野役のビートたけしさんは、さすがの怪しさでした。頑固な超ベテラン漁師大浦吾郎役の大滝秀治さん(健さんと同じく遺作になります。)は、出番が非常に少ないにもかかわらず、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞受賞も納得の存在感でした。

 しかし、僕がここで取り上げたいのは、2人の女優さんです。
 まず、漁村の食堂のおかみ濱崎多恵子役の余貴美子さんです。女手ひとつで食堂を切り盛りするしっかり者ですが、ちょっとした表情からその秘められた思いが見え隠れします。詳しくは秘密にしておきますが、最後の場面を正しく理解するためには、彼女のちょっとした動きを見逃さないことが大事です。僕はよくわからなくて、巻き戻して見直してしまいました。
 彼女はここで日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を受賞しますが、前々から尋常じゃない眼力で怪しい演技でいつも存在感のある女優さんだなあと思っていました。大河ドラマ「篤姫」では、薩摩城主島津斉彬の正室英姫を、「八日目の蝉」では“エンジェル・ホ-ム”の教祖を、どちらも怪しさたっぷりで好演していました。
 もうひとりは、主人公倉島の亡き妻洋子役の田中裕子さんです。童謡歌手として刑務所の慰問にやって来た倉島との出会いから、2人で旅する様子、ちょっとした日常の場面や、晩年の入院生活など、倉島が旅の中で回想しているので順不同ですが、彼女の表情・態度から倉島との関係性の変化が手に取るようにわかります。とりわけ、夫婦でラブラブな場面での、笑顔は最高です。あの大ヒットしたNHKの朝のテレビ小説「おしん」の主演で注目を浴びた時から、その演技力には定評のあった演技派女優さんですが、こんな可愛らしい人だったんだ、と倉島の同僚塚本(長塚京三)曰く、“カタブツの倉さんを落とした女”も納得です。僕も落ちてしまったかもしれません。

あなたへ3

 ということで、久々に素直に感動できるいい作品に出合いました。僕は古い写真館の場面で、涙があふれてきてしまいました。
 洋子の遺言の意味、よーく考えてくださいね。ヒントは『千の風』です。

 ところで、洋子が歌っていた歌、宮沢賢治作詞・作曲『星めぐりの歌』というんですね。すごい気になりました。





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Last updated  2014.12.04 22:41:14
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