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(注:吸血鬼のオトコの子です)去年の残暑お見舞い絵(レムリア)のオトコの娘verです。当時、遊び半分で作成したモノです。お蔵入りしていたのですが、某アニメを見ていたら、むしょーにUPしたくなりました(∀`*ゞ)テヘッちなみに、月ノ章では4章or5章で女装ネタがある予定です。
2011/03/31
帰宅したらメインPCのディスプレイが落下していたり、酷いことになってました(´;ω;`)ウッ…
2011/03/11

※続きです※推敲はフリーページ内で致します『†Princesse du sang†』 月ノ章 3-11【凶刃】月ノ章 3-11【凶刃】―ミュークSIDE― 「ああー! ミュクミュク!?」 拍子抜けする程、緊張感に欠けた声。 その場の視線が唐突に登場した人族の少女に集中する。 「また、ややこしいところに現れおってからに……」 ミュークが慢性疾患となった溜息をつく。 そんな気苦労も何処吹く風、当のプルミエールはおでこに手を当てて、石室内を物珍しげにキョロキョロと見渡していた。 一人で現れたところを見ると、護衛兵を撒いてきたらしい。 「見なれない顔がひとつ、ふたつ―――むむ、あれは!?」 と、何かに気がついたプルミエールが不用意極まりなく走り出した。 そして、止める間も無く、台座をよじ登り、オルカザードの血脈者たちの目前で立ち止まる。 「な、なに、この子?」 「やっぱりシャル姉さまの首輪です」 ラールゥエアの首元で輝く装飾具をまじまじと観察してプルミエールが一言。 「なんじゃと!? あれが聖霊環なのかや」 ミュークが驚きの声をあげる。 聖霊環―――霊環アシュタリータは女神メナディルの祝福を授かりし三神具のひとつであり、アルジャベータの遠き子孫でもあるリュズレイ家に代々伝わる秘宝である。 他の二神具とは違い、呪具としての側面もあり、一度、聖女の資質を持つ者が身に着けると、一定の因果を踏まない限り、決して外すことが適わないという。 つまり、この場にアシュタリータが在るということは三つの可能性を暗示していた。 一つ目は、シャルロットが既に存命していない可能性。 二つ目は、霊環に関する伝承が偽りである可能性。 そして最期は、明かされた真相を裏付ける通り、シャルロットに聖女足る資格が無かった場合である。 どちらにしても、ミュークにとっては甚だ都合が悪く、オルカザード家がシャルロットに接触しているのらば、一つ目と三つ目は同時に満たされている公算が高い。 「もしかして、この子って、シャルロットちゃんの妹なのかな?」 「うにゅ、プルとシャル姉さまはタダならぬカンケーなのです」 ラールウェアの疑問に、プルミエールが只ならぬ程、平らな胸を反らして答える。 「ははははははっ、こいつはいい。 アダマストルの王族が向こうからやってきてくれるとは傑作だ。 俺と同じく運命を狂わされた第一王女は見逃したが、それ以外の奴等は容赦しない。 じっくり嬲り犯して、生きながら八つ裂きにしてやる」 ラグナウェルの顔から理性という名の皮相が滑り落ちて、壮絶な哄笑が放たれる。 蒼白い顔には、淫靡で昏い影が浮かび上がっていた。 「うにゃ!? なんですかっ!!」 蛇のように伸びてきたラグナウェルの手指を、プルミエールは寸でのところで飛び退って躱す。 少女の幼い肌が悪寒から粟立っていた。 「如何な」 ミュークがルムファムに目配せして、状況の打破を試みようとする。 「邪魔はさせないよ」 ―――氷蔦縛鎖 ラールウェアが術式を紡ぎ放つ。 台座へと駆け寄ろうとしたルムファムの足元から無数の氷の蔦が蠢き行く手を阻む。 「お子様はそこで見学だよ♪」 「無念」 動きを封じられルムファムが下唇を噛む。 その間にも台座の上では、ラグナウェルが逃げ回るプルミエールを弄ぶように追詰めていく。 「プルミエール嬢は其方が慕うラグナウェルの義理の妹ぞ。 手荒な真似は止めさせるのじゃ」 「それはラグナウェルお義兄さまが決めること。 アタシやミュークお姉さまがどーこー言う問題じゃないよ」 切羽詰ったミュークの訴えを軽く受け流して、ラールウェアはあっさりと首を横に振った。 そして、小さく舌打したミュークが台座を見上げた時、 「ガキを甚振るのは好みじゃないんだがな。 もっとも―――」 地を這うように追いすがったラグナウェルの左足が振り上げられて、プルミエールを顎下から打ち抜く。 少女の身体が宙を舞い、台座の上で数回弾み動かなくなる。 「俺という存在を生み出す因となった血族が相手なら話は別だ」 ラグナウェルはプルミエールの双結いされた髪束の一方を掴み無造作に引き吊りあげる。 「プルミエール嬢……」 その様子を視界の端に捉えたミュークが血を吐くような声音を漏らした。 「さて、お愉しみは後にとっておくとして、残りは」 ラグナウェルの嗜虐に彩られた狂眼がミュークを射抜く。 「ウィズイッド家に関しては、没落したまま無様に生き恥を晒すことも報復の一環だと考えていたが、気が変わった。 俺の復讐の障害と成り得る芽は早めに摘んでおくとしよう。 アーネル、お前の刃で禍根の根を絶て」 「はい」 その声は、ミュークと双子の背後から聞こえた。 「レム、後ろじゃ!!」 「へっ?」 最後尾に呆然と佇んでいたレムリアの背後に燃えるような赤髪の娘が立っていた。 右手に握られた漆黒の刃が振り上げられ、 「貴女方に恨みはありませんが、我が主の為に滅んで戴きます」 血飛沫が跳ね―――続けて、重たいものが石床の上に落ちる。 それは鮮血に塗れた左腕だった。 ==============================================急に血生臭くなりましたが、元々この手の物語です(汗)あと、造語っぽくない造語が多用されていてスイマセン。
2011/03/09

※文字数制限を超えたので二つに分けます※推敲はフリーページ内で致します『†Princesse du sang†』 月ノ章 3-11【凶刃】月ノ章 3-11【凶刃】―ミュークSIDE― 「あの派手な歓迎は貴殿の趣向かや?」 「その通りだ」 ミュークの問いかけに銀髪紅眼の青年が口を開く。 「貴殿は何者じゃ? 恐らく先程の術式はインフェルノ第六圏の強化術式“炎渦呪波”じゃろう。 一端の術者に操れるシロモノではない筈じゃ」 世界広しと云えど、第五圏より深層域の屍霊術を操れる術者は数えるほどしかいない。 ミュークの知る限りでは、前ウィズイッド家当主であった母アルフォンヌと、女帝クリスティーナ・ヴァーサ。 そして、血統アルカナ“魔術師”の現継承者ルドルフ・オルカザードの三人である。 「俺はラグナウェル・オルカザード―――いや、アンタがアルフォンヌの娘なら、家名はリュズレイと名乗ったほうが理解し易いかな?」 「なにを云っておる? いや、まさか……、あの時の人族の娘がエレシアム・リュズレイだったのかや」 ミュークの裡で絡まっていた記憶の糸が解れていく。 ルドルフは正妻を亡くして以来、数百年に亘り独り身であったが、十六年前、ひとりの人族の少女を寵愛し、その間に御子を儲けていた。 ウィズイッド家とも因縁浅からぬ出来事であった為、人族の世に関心が薄かったミュークですら記憶に残っていたのだ。 「どうやら何も知らなかったらしいな」 「じゃが、その話が真実ならば、シャルロット・リュズレイは……」 聖女ではない―――そう続けようとして、ミュークは言葉を呑み込んだ。 「察しの通りさ。 先代の聖女が屍族の赤子を身篭った事実を、隠蔽する為の替玉ってわけだ」 ラグナウェルが嫌悪と侮蔑の感情を吐き出す。 「ちょっと、ちょっと、ふたりだけで盛り上がらないでくれるかな」 紅ドレスの少女屍族が不満を顕に頬を膨らませて、会話に割って入る。 「其方とは話とうない」 ミュークが身も蓋も無く拒絶する。 どうやら、この少女屍族とは旧知の間柄であるようだ。 「随分と他人行儀だなー。 知らない仲じゃないでしょう?」 「できれば忘れ去りたい過去なのじゃがな、ラールウェア嬢よ」 ミュークは何処かばつが悪そうに後頭部を掻いた。 ラールウェアはオルカザード家十七代目当主ルドルフと彼の実姉アルカの一粒種である。 所謂、近親婚であるが、人族の社会では、禁忌とされる交姦も、血の純血性を尊ぶ大屍族の間では慣例化されたものだった。 それはウィズイッド家とて例外ではない。 「えー、つれないな。 何も知らなかったアタシに手を出したのはミュークお姉さまだよ。 あんなにエッチな悪戯しておいて、今更知らん顔する気?」 ラールウェアは、首元で鈍い輝きを放つ翡翠玉と同色の瞳でミュークに微笑みかける。 流亡に身を窶す以前のミュークは、気に入った美童美少女を古城に侍らせ、怠惰且つ享楽的な日々に耽溺していた。 そんな倒錯した性癖は数百年前も同様で、子供ながらに見目麗しいラールウェアにも密かに食指を伸ばしていたのだ。 「ミュークさま……」 背中に突き刺さる双子の視線が痛い。 「な、なんじゃ、その蔑むような目は? 最初は嫌がっておっても、最終的には合意の下での睦言じゃ。 疚しいことなどこれっぽっちもないぞよ」 「いえ、言い訳はいいです。 今も昔もお変わりないと思っただけですから」 レムリアが盛大に肩を落としている。 そうあっさり諦められては、ミュークも立つ瀬が無い。 「くっ、その件については、後回しじゃ。 ところでラールウェア嬢よ、そこの青年は本当にルドルフとエレシアムの?」 「うん、そうだよ」 ラールウェアは明快に断言してのける。 「そうか」 ミュークは重く深い溜息をつく。 運命とは皮肉なものだ。 体裁を重んじた教会や王国から存在を排他された忌み子が、これまで生き永らえていたことも驚嘆に値するが、まさか、人族の世を離れ、オルカザード家に身を寄せていたとは、想像だにしなかった。 屍族が異端視されるこの西大陸で、忌憚ともされる出生を背負った苦悩は察するに余りあるものであるだろう。 彼は己が人として生きることを疎外される因となった屍族の血を受け入れたのだろうか? 「それと、ラグナウェルお義兄さまは、アタシのモノなんだから、勝手に話さないでね♪」 そう言ってラールウェアは、飼い主に甘える子猫のようにラグナウェルの胸元に頭を擦りつける。 「これは奇異なことを、その青年が件の御子であるならば、其方の方が随分と年上―――」 「うるさーい!! 人族の外見年齢的な見地からアタシが妹って設定なの!」 ラールウェアの怒気と共に、高速構成された術式が発動して、紅い波濤が扇状に拡散する。 「くっ」 ミュークは両腕で顔を覆うようにして、インフェルノ第二圏の下級術式“赤熱衝扇”の放射熱をやり過ごす。 前髪と衣服の焼け焦げた臭いが鼻を突く。 術者の精神集中が十分でなかったことが幸いして、本来の威力の半分も発現していなかったようだ。 「相変わらずも癇癪持ちじゃな。 じゃが、なぜオルカザード家の血族が、このような場所におる?」 もはや件の襲撃がオルカザード家の犯行である事は十中八九間違いなかった。 そして、この遭遇は同家の総意を確かめる絶好の機会であると、ミュークも考えた上での問い掛けだろう。 「とんでもなく厄介な奴に命を狙われていてね。 そいつを斃す為には、特別なチカラが必要なのさ」 口を開いたのはラグナウェルだった。 端麗な唇から漏れた言葉は自嘲気に歪んでいた。 「なるほど、その“チカラ”とやらがこの遺跡に眠っておるというわけじゃな」 「そんなところだ。 だが、この玄室の封印は俺たちの手に余るシロモノだったらしい。 そこで、こうして待っていたのさ、この封印を解ける存在をな」 ラグナウェルは背後を振り返ると、黒色の直方体を忌々しげに見上げる。 「ならば、待ち人を害するような持て成しでは、元も子もないじゃろう」 ミュークがラグナウェルの不条理な行いを指摘する。 現に彼の出会い頭の焔術で数人の兵士がこの世の人ではなくなっているのだ。 「単なるふるい分けさ。 言っただろう、この封印は人族には勿論、屍族の手にすら余るシロモノだと」 「それ程の封印を解呪できる者が、このアルル=モアに居るというのかえ?」 ミュークは半信半疑で言葉を返す。 そのような存在は、西大陸中を探し回っても、見つけ出すのは至難の業だろう。 知的種族に限定するならば、既に滅び去ったとされる巨人族か、世界から隔絶された楽園に住まう妖精族の二種族しか該当しないのだから。 「居るはずさ。 この遺跡の外壁に施されていた封を破った者が存在するのだからな。 そして、アルル=モアの調査団が、玄室の扉を開こうとするならば、必ずそいつのチカラを再び頼ることに―――ん?」 不意に口を閉ざしたラグナウェルの視線が、警戒するように石室の西這入口に向けられる。 ==============================================
2011/03/09

※推敲はフリーページ内で致します『†Princesse du sang†』 月ノ章 3-10【凶刃】月ノ章 3-10【凶刃】―ミュークSIDE― 「いっちば~ん♪」 プルミエールが岸壁に設けられた発掘口へと姿を消す。 「お、お待ちくださいっ」 数人の兵士たちが慌ててお転婆姫の後姿を追いかけていった。 騒々しいやり取りに、取り残された一同が呆れ返っていると、場を取り成すようにユイリーンが空咳をひとつする。 「巨人族の遺産と思しき墓地遺跡はロア湖の湖底で発見されました。 調査した限り、入り口らしきものは発見されていない為、人工的に掘削した洞穴を遺跡内部と連結させています」 そして、姉姫が消えた洞口の前で、ミュークと双子に墓地遺跡の概略を説明する。 この少女、先の失態を取り戻す為、カタリナ公に直談判して、件の襲撃があった玄室までの案内役を買ってでたそうだ。 思いの外、感心な性格である。 「そ、その、本当に大丈夫なのですか?」 「大丈夫とは?」 心許なげに眉を曇らすレムリアにユイリーンが真意を尋ね返す。 「遺跡は湖底にあるんですよね? ボ、ボク……全然泳げないので」 レムリアの危惧は当然だ。 屍族とは生来、水に浮く事ができず、流れる水を越える事ができないのである。 「その点は心配要りません。 どのような技法を用いたのかは未解明ですが、遺跡内部に浸水の跡は確認されておりませんわ」 ユイリーンが即座にレムリアの不安を払拭した。 「ふむ、遺跡全体に霊的な保護が施されているというわけか」 ミュークは言いながら、頭を打たないよう身を屈めて洞口を潜り抜ける。 薄暗い洞穴は垂直に近い下り坂で、木材で組まれた足掛かりが遥か下方へと連なっていた。 「あっ、お待ちください。 ここから先はわたくしが先導致しますわ」 ユイリーンは足早にミュークを追い抜いて、一行の先頭に立つ。 危険を顧みない責任感は見上げたものだが、その遥か前方をプルミエールが闊歩している為、あまり意味がない行為である。 「それにしても、怪談・鬼譚の類が苦手な癖に、よくついて来きたの」 ミュークが傍らで恐々と歩を進めるレムリアに耳打ちをする。 「ミュークさまの暴走を止められるのはボクだけですから。 それに、アルル=モア正規兵の方々が護衛に付いてくれているから心強いです。 これなら、きっとオバケも出てこれないと思いますし……」 「ま、何も出てきて欲しくないという点にだけは同意見じゃ。 平和ボケした軍人ほど役に立たぬものはないからの」 ミュークは小さく独り言つと、周囲を取り巻く完全武装の兵士たちを、うんざりしたように見渡した。 カタリナ公の計らいで、かなりの数の護衛兵がふたりの王女に付き従っている。 しかし、紛争や内乱とは無縁なアルル=モアの軍隊が、実戦で役に立つとは到底思えなかった。 もっとも、彼らには別の役割もあるようで、ミュークたちの動きに逐一目を光らせているようだった。 要するに、貴賓の護衛とは別に、ウィズイッド家の監視役を兼ねているのだ。 「そもそも、オバケなんて非科学的なモノはこの世に存在しませんわ」 先を進むユイリーンが不謹慎な内緒話を問答無用で斬って捨てた。 かなりの地獄耳振りである。 「ボクもそうあって欲しいです」 レムリアが心から賛同の意を示して相槌を打つ。 それから暫く進むと、次第に傾斜が緩やかになり、目前に破壊された巨大な石組が現れた。 「コレは其方たちが空けたのか?」 ミュークは巨石に穿たれた大穴と、足元に降り積もる瓦礫と土砂を交互に眺めてから、訝しげに尋ねる。 到底、人族のなせる業とは思えなかったようだ。 「ええ、第一次調査隊に同行していたラヴリー・ポウ技師の手腕だとお聴きしていますわ」 「一度、その技師殿に会ってみたいものじゃな」 「宜しくってよ。 でも、それならプルミエールお姉さまにお頼みになった方がきっと早いですわ。 ―――って、お姉さま!? また、ちょこまかと……」 気が付くと、つい先程まで前方でうろちょろしていたプルミエールの背中が、完全に見えなくなっていた。 「目的地にいなければ、所用後に拾って帰るしかあるまい」 「そうですわね」 ミュークの提案にユイリーンは溜息混じりに頷く。 優先して探し出しても、直ぐにまた迷子になる可能性が大きいので、効率化を図ったようである。 「玄室を囲む石室には東西南北に其々這入口があり、わたくしたちはその内のひとつ南口に向かいます」 ユイリーンはそう言うと、再び先に立って誘導をはじめた。 墓地遺跡の内部は数多の回廊が入り組んで巨大な木の幹を連想させた。 しかし、巨石壁には、事前の調査で備え付けたものであろう篝火が等間隔に並んでおり、目的地まで迷う心配はなさそうである。 もっとも、例外とは結構身近にあるもので断定はできない。 「ふたりとも気づいておるか?」 ミュークは手の平に滲む汗を袖口で拭うと、声を落として双子に尋ねる。 「はい」 小さく頷いたレムリアが不安に満ちた目でミュークを見上げている。 返事は無いが、ルムファムも何処か落ち着かない様子であった。 「なにをこそこそ話しているのですか?」 ユイリーンが僅かに歩を緩めて後ろを振り返る。 幼げな顔から読み取れる感情は、苛立ちと不審の念だ。 ミュークたちが、逃亡を計るとでも勘ぐったのかもしれない。 「嫌な予感がする。 この先に進んではならぬ」 ミュークがその場に立ち止まり制止を促す。 「何を今更、目的地はもう直ぐそこです。 この先の石室に―――」 ユイリーンが前方を指差した瞬間、 ―――鼓膜を揺さぶる轟音 石室と回廊の接合点で圧倒的な霊的因子が集束、そして展開する。 紅蓮と紫黒の焔が渦巻き、先頭を歩いていた二人の兵士が、瞬時に炭化して消し飛んでいた。 輻射熱の直撃を逃れた、ユイリーンと他の護衛の兵士たちも側壁に叩きつけられて、石床の上に薙ぎ倒されていく。 どうにか無事だったのは直前で立ち止まったミュークと双子を含む、数人の兵士だけだった。 「ひっ……どうなっているっ!?」 難を逃れた兵士のひとりが恐慌をきたしたように喚き散らす。 「木偶の坊共め、さっさと己の務めを果たさぬか」 「なっ、我らは栄えあるアルル=モア正規軍だ。 屍族如きに命令される謂れはない」 ミュークの叱咤に、隊長格と思しき壮年の男が逆上する。 名誉や肩書きに拘り無駄死にする典型的な堅物であるようだ。 「ならば、カタリナ公から与えられた使命を全うせよ。 ワチキの見立てではそこの小娘はまだ息がある。 手遅れにならぬ内に早々に連れ帰るがよい」 「えっ、あ……、ユ、ユイリーンさま」 隊長格の男は、ようやく本来の任務を思い出したようで、慌ててユイリーンの元に駆け寄る。 少女に脈があることを確認すると、動ける部下に命じて、まだ息がある兵士共々、後方に引き揚げていく。 「さて、ワチキ等の配役じゃが……。 正直、取り決めなど反故にして逃げ出したいところだが、そうもいくまいな」 ミュークは足元で腰を抜かしているレムリアに手を差し伸べて、立ち上がらせる。 「ミュークさま……。 こ、これって……」 「屍霊術に相違なかろう」 「で、でも、人体を金属の鎧ごと蒸発させるほどの熱量なんて、深層圏を統べる高位の術式でもなければ……」 レムリアも爆炎の正体に薄々気がついているようだ。 卓越した屍霊術の使い手であったアルフォンヌから直接、手解きを受けていたのだから当然である。 もっとも、アルフォンヌ曰く、「この子には、類稀なる才能はあるのだが、優しすぎる気質が邪魔をして、実践的な術式を学ぶに至らない」とのことだ。 「ならば、答えは簡単じゃ。 この先で、とびっきりの術者がお待ちかねというわけじゃ」 ミュークは乾いた口唇を舌先で舐めると、気怠そうに熱で融解した回廊を前進する。 その後を、つかつかとルムファムが続く。 「あ、あの、ミュークさま、どちらに行かれるのですか?」 「交渉相手を前にして逃げ帰るわけにもいかぬじゃろう。 それに、あ奴等がここを脱出するまでの時間稼ぎもせねばならぬ」 くすぶる炎塊と黒煙の淀みを抜けると、ミュークの視界が急速に開けた。 広大な石室の中央に鎮座する巨大な台座の頂点には、玄室と思しき黒色の直方体が目視できる。 「ようこそ、“死せざる王”の墓標へ」 透き通るような男の声。 玄室の膝元で、背徳的な官能美を追求する彫刻芸術のように、銀髪の美丈夫が血色のドレスを肌蹴た屍族の少女の肢体に手指を絡ませていた。 ==============================================物語の本流は血ノ章にあるので、光ノ章も月ノ章もラグナウェル君と絡んでナンボといった感じです。
2011/03/03
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