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茜夜さんとのリレー作品、サンセツキとうとう本編のバトンが回ってきたので、本編をこれから上げていきます更新速度、遅くなっていますがのんびりと待っていてくれたらなぁ、と思ってます今後の予定1,本編をさっさと茜夜さんに押し付ける(笑)2,紅の邂逅も、さかさか上げないと。本編1と3の繋ぎだから。3,紅の雪も、いい加減終わらせないと……4,後、至急上げないと話がおかしくなるのが、数話…………大丈夫なのだろうか?……………が、頑張りますので良かったら読んでやってください
2006年05月22日
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淡く優しい光を灯した岩が、洞窟の暗闇をぼんやりと照らし、幻想的な世界を醸し出している。(ここ、どこ?) 朔夜はあまり夢を見たことがなかった。眠りはいつも朔夜を深く深く誘うくせに、体は、本能は他者に敏感だった。夢を見ぬほど深い深い、居心地の良すぎる眠り海にたゆたっている最中、何度、何十度跳ね起き、強制的に覚醒しただろう。悪意を持たぬ人間の気配にさえ、怯えて。 朔夜はしばらく困惑していたが、夢だとようやく分かり、肩の力を抜き、辺りを見回した。「なんでだろう………ここ、は、とても」 懐かしい。 何故か郷愁にも似た切なさは、胸の奥深くを締め付けるようだ。何がそんなに懐かしく、恋しいか、朔夜自身にも分からない。帰りたいと、思う気持ちさえあることに、戸惑いすら感じた。「帰りたい?………どこ、に?」 帰れる場所など、ない。帰っていい場所など、ありはしないと言うのに。 『あの人』のところにも、優しい人達のところにも、いくら居場所を用意してくれようと、居ていいはずがないのだから。(だ、め………駄目………絶対、駄目………望んじゃ……) 言い聞かせるように、誓うように、祈るように、心で何度も呟いた。 忘れるな、と強く思う。 胡家の惨劇の光景が、強く蘇る。血と雨の混じった川が流れる廊下、人形のように転がっていた遺体、壊された胡家の美しい家、遠くから聞こえた大切な人の慟哭。脳裏に過ぎった光景に、呼吸が狂いそうになる。 その酷い光景と連動するように、『あの人』の顔が蘇った。一瞬、白く思考が塗りつぶされ、息が止まった。気づけば胸のあたりに朔夜の指先は惑い、いつの間にか握り締めて服はしわになっていた。気を抜けば、ぽろぽろと流れ出しそうな涙をぐっ、ときつく瞳を閉じて堪える。 涙を零さぬよう、上を向いていると、優しい光がふわりと視界を過ぎった。一瞬瞳に入ってくる光の量が変わったことで、瞳孔が閉じ開きした。 驚き、きょとりとして視線を前に戻すと、ふわりふわりとあたりを生き物のように飛ぶ光の珠が目の前を過ぎさっていた。何だろう、と思い周りを見渡すと、数多の淡い光の珠が蛍の様に漂っていた。幻想的な光景が、更に現実味を失い、美しかった。 蛍のような光に、触ってみたいと心が動いた。(触っても、いいの、か、な) これは、触っても、壊れないのかな。 夢ならば、自分のせいで、壊れたりするものは、ないのかな。 そうであって欲しい、と期待にも似た感情に支配され、恐る恐る朔夜は手を伸ばした。 指先が光に届いた瞬間、温もりだけは指先に伝わったが、触れることは叶わなかった。残念だと思う気持ちもあったが、指先に淡い温もりを感じられたことだけで妙に満足感を覚え、触れられなかったことに、安堵もした。 砕けなかった。消えなかった。壊れなかった。 それだけで充分すぎた。 触れられない、と分かったが、それでも、朔夜は光の珠に近づいた。いや、触れられないことが、近づいても壊れないことが分かったことで、尚更傍に寄って見たいと思ったのだ。許された、気がしたのだ。 柔らかく温かい光をそっと覗き込んでみて、朔夜は目を見張った。 淡い色の長い髪の女性。白い肌のその美しい女性を昨夜はよく知っていた。とても淡いが微かに桃色の光に映っているのその姿は、見間違いようがない。「櫻妃様……」 朔夜は呆然と彼女の名前を呟いた。 浮かぶ優しい笑みの姿に、思わず手を伸ばしたが、寸前で留まった。怯えで、指先が固まったのだ。 その眩すぎる光に、触れたいと言う、沸き上がる望みを押し殺さなくてはと思い、無理矢理目を背けた。見ていたら、甘く優しい誘惑に負けてしまいそうだったからだ。(……だめ………幻であっても、櫻妃様に、触れては、だめ………頼っちゃ、縋っちゃ、駄目だよ) だが、視線を動かしたことを朔夜は後悔した。目眩すらしそうだった。 よくよく見てみれば、全ての光には、人の姿が見えたのだ。それも、他人ではなく、朔夜と浅からぬ繋がりがある人物ばかりだ。「………っ、………ぁ、っっ!」 気を抜けば、名を呼び、駆け寄ってしまいそうだった。それほどに、ただの幻でもここまで心を揺さぶる者達ばかりだった。 朔夜は自戒するように、自身の身体を抱きしめ蹲った。 だか、そんな朔夜の必死の抵抗を無視するように、光の珠は擦り寄ってきた。 そんなことをされたら、反抗し続ける辛い。だが、それ以上に喜びを感じてしまった。 見捨てられてない、と。こんなに優しく、温かな人々が手を差しのべてくれている現実を思い起こさせ、なんて、自分は幸せなのだろうと、感慨の波が体中を駆けめぐる。 朔夜はそっと、無意識に両手を重ね合わせていた。この奇跡のような幸せを、誰かに感謝するように。「だから…………だから……………」 近づいてはいけない。遠くから、見ているだけでいい。 朔夜は、そう強く思い、光の渦から抜け出した。光が戸惑うように、動きを止めていた。 それにほっ、として朔夜は淡く微笑んだ。 目が潤むが、愛おしい人々の姿が滲むが温かなその光を纏った姿が消えることはない。それが、とても嬉しくて、切ない。「綺麗………」 よく見れば光の珠はそれぞれの色を纏って、お互いを更に引き立てるという相乗効果を起こしている。とてもその光景は美しく、永遠にこの輝きを見てみたいと朔夜は思った。 と、同時に何があっても壊してはならないのだと。 朔夜は恐かった。己の存在で、傷つけてしまうことが。朔夜は、自身が危険な存在だと嫌というほど理解していた。台風のような叩きつける豪雨と切り裂くような風が纏わりつき、近づいてきた人を止める間もなく傷つける。自身などいくら傷ついても構わないと言うのに、いつも被害にあうのは周りで。そのことがいつもいつも朔夜の喉元を締め付け、言葉を奪っていった。 だが、傷つくだけなのに、手を伸ばしてくれる人達がいた。 そのことは、朔夜のボロボロの心を優しく包み、癒してくれる。だが、同時に不安も積もっていった。傷ついて、なお手を差し伸べてくれる人の好意に依存してしまうのではないかと。「私は…………弱、い」 温かな手を振り払らえる強さも、傍に寄って依存してしまわない強さもない。相手を守る術も、強さもないといやというほど思い知らされたというのに。 それでも、分かっていても、手を握ってしまう自分が、とても嫌いだった。
2006年05月22日
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はらはらと今も眼前を舞い降り続けている新雪が降り積もった足場は、少し体重をかけるだけで脆く姿を変える。戦うには、特に武器はこの身だけの戦い方をする自分には最悪の条件と言える。 身体の隅々まで神経を過敏に張りつめさせ、すぐに戦闘になっても良いよう体勢を整えた。 背後にか細い息が聞こえるだけが、朔夜の存在を教えていた。気配が限りなく薄くなっている。急がなくては、と焦る心を冷静であれ、と必死に鎮める。「おいおい……大丈夫か?」 低く響く声に視線だけをすっと向けた。厚みのある声は、己のものとは違う大人の男で憧れるものがある。声変わりも終わり、声を響かせるだけのしっかりとした身体。今すぐにでも欲しくてたまらないが、決して手を伸ばしてもまだ届かないものだ。 だが、憧れるものがあるはずなのに、どうしてこの耳に残った声は《あいつ》へ感じていた燻っていた怒りを煽るのだろうか。一瞬、決して手に入らないものを持っていることに対する反発だろうかと思ったが、違う。絶対違う。生理的に合わないのだ。視界に相手の姿を捉えた瞬間、それを確信した。 目が痛くなるほど鮮やかな赤に、何を考えているのか金糸の刺繍がふんだんに施されている。どうやら金糸で表されているのは、優美な鶴のようだ。その上に羽織られた新雪に溶け込みそうなほどの純白の着物には、銀糸でよく分からないが多種の華が施されている。 何なんだろ、この目を痛めつけることを目的としたと言わんばかりの対照的な色使いは。「何だって、こんなとこにガキが……」 視界に姿を、聴覚に声を捉えるだけで、苛々としてくるのは、決して目の前の人物が敵だからだけではない。冷静さがこのままだとすり減る一方だ、と気づきなるべく視界に入れないようにする。だが、いつ襲ってくるか分からないので、完全に見ないわけにはいかない。隅の方に、と視界を調整すると、派手な男の横にもう一人いることに気付いた。 完全に、分からなかった。男の方は、気配はほんの微かで、緋深が普段より過敏なほどに神経を張り巡らせていたので辛うじて分かった。だが、派手な男とは対照的な全身を黒い外来風の装束で纏めて静かな印象を受ける女性の存在は、このような状態でも気付けなかった。(-------強い、この二人) 巫山戯た恰好をしている男も、静謐な空気を纏った女性も見かけ以上、いや驚異的なほど強いと本能が教えようと警鐘を鳴らし続けている。彼らがしている、あいつらしくない、など緋深には意味の理解できない会話が、神経をとぎすまさないと聞こえないほど、危機を告げる音は痛いほど五月蠅い。 倒すのではなく、殺すつもりでいかなくてはならない。最初から全力でいかなければ、微かでしかない勝機が完全に消え去ってしまう。完全な体調でないという不利を緋深は負っているのだから。(----いや、完全な体調でも、勝てるかどうか) 弱気ではない。相手と自身の力の差を見極められない愚を犯したくないだけだ。実力に差があろうとも、勝敗がそれだけで決まるわけではないのだ。見極め、どう行動するかが勝敗を定める。「うおっ」 一撃で仕留めようと、急所を狙い、力があまり入らない代わり、速度を付けた拳を男は軽々とかわした。緋深は小さく舌打ちをうち、後ろに飛んで男との距離を置いて、体勢を整え直す。「おいおい」「それ以上……近寄るな」 呆れたように呟く声は、緊張が含まれていないどころか余裕で溢れ満ちていた。その証拠に巫山戯たように両手をあげ、こちらに近寄ろうとしている。 鋭く声で制すると、男はにやにやと笑う。睨み付けると、更にその笑みは深く、楽しげになり、更に怒りを煽る。「別に、取って食いはしないぜ?」「うるせぇ」「人の親切は、素直に受け取っておくべきだぜ。子供は」 子供、と言う言葉に過剰反応しそうになるのを、緋深はぐっと堪えた。まだ、自身が心身ともに未熟と嫌というほど分かっているが、それを目の前のこの男だけには言われたくない。 苛立ちは冷静さを浸食していくのを感じながらも、怒りに飲み込まれぬように、と相手をぎっと睨みつけた。「親切?……はっ、親切ってのは、いつから人さらいを指すことになったんだ」「言うに事欠いて、人さらいかよ」 緋深はだんだんと目が据わっているのを妙に冷静に感じた。人さらいではない、とどの口が言うのか。あの女性だけならばここまで確信しなかっただろうが、この男の存在は胡散臭すぎる。この胡散臭すぎさは裏街に通じるものがある。 緋深達、いや朔夜を追ってきたあの連中は裏街の人間だった。幾人か返り討ちにし、聞き出したのだから間違いはない。「……金、掴まされて、頼まれたくちだろうがっ!てめぇもっ」「人間不信だねぇ。善良な一般市民をつかまえて」 ぷちり、と何かが切れる音が脳裏に聞こえた。わなわなと震える口と拳をぐっと握りしめ、緋深は男の懐に飛び込み殴りかかった。 「そんな趣味の悪い着物なんか着ておいて、一般人と言い張るのかっ?!」 緋深の絶叫にまだ嫌な笑いを更に深めた男は、やはり強かった。間髪いれず繰り出す技を尽く、軽々と言うよりひょうひょうと男は避けていく。肉体を限界まで酷使しての攻撃は決して弱いものではないはずだ。(くやしい) 負けるわけには、いかなかった。負け、倒れ、朔夜が連れて行かれる結果だけは何があっても避けなければならない。 朔夜を、緋深の腕の中から奪い取られるのも、もちろん我慢ならない。 けれども、奪われたら取り戻せばいい。ちょっかいを出してくるならば、完膚無きまでに叩きつぶす方法を考えるだけだ。だから、ここで負けたとしてもまだ方法がある。 この男は《あいつ》に朔夜を渡し、金を貰い、それきりになる。これほど強い男はそうはいないだろう。《あいつ》の家来を相手にするほうがよほど勝機が高い。ならば、本来なら勝機の高い方を選び、更にその勝機を高めるために肉体を回復させるために撤退を選んだだろう。 最後には必ず勝つ。それが緋深の考え方だった。 だが、今回だけはそうも行かないのだ。連れて行かれたら、最後なのだ。 《あいつ》は朔夜を殺さない。傷つけさえしないだろう。だが、《あいつ》は間違いなく、肉体を傷つけないくても、朔夜と言う存在を殺すのだ。朔夜は連れて行かれたら、きっと抜け殻になり、朔夜と言う名の人形になってしまう。 冗談ではない。 朔夜は朔夜だからこそ、意味があるのだ。朔夜だからこそ、その存在が尊いのだ。(だから、守り通すっ!) いくら自身でも最高の技を繰り出しても、目の前の男に一掠りすらしない。悔しさと連れて行かれるかもしれない焦燥にじりじりと神経が焼き切れそうだ。目の前が真っ暗になりそうなのを、必死に耐える。追いつめられている、と実感しているが、どうしようもない。(だが、守り、きれるのか…守ることができるのか、俺にっ--) 一瞬顔を見せた弱気に、緋深は自嘲した。何を莫迦なことを、と思う。 守ることができる、できないではないの問題ではないのだ。どちらであってもやることに変わりない。できようが、できまいが何が何でも守っているだろう。 だが、それは守りたいからはない。胸の奥底から沸き上がる激情にも似た思いは、願望で終わらせるような生ぬるい感情ではない。守りたい、などでは終わらせやしない。それはもう息をするように当然なことだった。何を犠牲にしても、何があっても守る。それだけだった。(何故、俺はここまで朔夜を傷つけたくないと願うのだろうか) ふと、そう緋深は思った。えらく、妙に余裕があるなと思い笑いそうになる。(何があっても守る、か) 誓いと言うには、この感情は汚すぎるし、決意と言うには、この感情は脆いのではないか。(もし俺がつけた傷が一生朔夜に刻みつけられ、忘れられないとしたら…) 選んでしまいそうな自分がいた。他人からの傷は一切つけさせたくないと言うのに、己ならばいいのか、と緋深は己に自嘲する。 だが、そう願ってしまった自身の思いも切実なものなのだ。(朔夜は、理解してくれない、微塵も) 朔夜と共にありたいと、願う。 そう何度言葉を重ねても、朔夜は悲しげに笑うだけだ。共にあることだけが緋深の望みであり、生きている希望だと言うのに。なのに、緋深の痛切な願いを込めた言葉を朔夜は理解しないのだ。 朔夜は一言一句言葉を聞き逃さず、何一つ零さず受け止めてくれる。だが、自身を疫病神と、周りからの愛情を、その人の溢れような優しさと思い込んでいるのが朔夜だ。受け止めるくせに、理解はしてくれないのだ。いや、理解できないのだ。 莫迦だと緋深は思う。 朔夜を溺愛している面々のどこを見て、優しいと思えるのだ。あの一癖、二癖どころではない奴らのどこに溢れるような、普遍的な優しさがあると言う。思い込みが激しいと言う問題ではないのでは、と思うほどだ。(優しいから、朔夜を傍に置く?優しいから、朔夜の存在を許容する?) どこをどうしたらそう思えるのか、今でも朔夜の思考回路は不明だ。 朔夜は、共にいることを今は許容している。だが、それは細い蜘蛛の糸のようなもので辛うじて保たれていることが嫌というほど緋深は理解していた。 共に、傍にいることを選択したのは、緋深だと言うのに。何度怒鳴りそうになっただろう。自分が傍にいるのは、守っているのは優しいからではないのだと、どうして解らないと。 朔夜は《あいつ》が再び目の前に現れ、緋深を傷つけたら、姿を眩ますだろう。残酷で、憎らしい、朔夜らしい優しさだ。そして同時にそれはただの弱さでもある。だがそれすらも、憎らしい、と思うことさえも愛おしく思える自分は、末期だろう。 自嘲するように一瞬笑い、目の前の巫山戯た男に蹴りを繰り出した。
2006年05月14日
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