武蔵野航海記

武蔵野航海記

2010年02月01日
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プロが狭い分野で積んだ経験を信用せず、それよりも自分の直観を信用するのです。

こういうタイプはえてして大衆の熱狂的な支持を獲得します。

例えば、ヒットラーです。

第一次世界大戦での敗戦とその後のアメリカから波及した大恐慌によってドイツがひどい不況に陥った時、ヒットラーはアウトバーンの建設など大規模な公共投資を行いました。

このとき首相だったヒットラーに対し、経済の専門家はこぞって反対しました。

「借金をしてこんな莫大な投資をしたら、ドイツは破産してしまう」というのです。

しかしヒットラーは自分の直観を信用して、公共事業を行い、大規模な需要の創出によって見事にドイツ経済を立て直しました。

これによってドイツの国民はヒットラーを完全に信用しました。

当時、世界中はドイツの経済復興に眼を見張り、イギリスやアメリカでも「今世紀最大の指導者だ」と賞賛したのです。

今の経済学では不況時の公共事業による需要の喚起策を、アメリカのルーズベルト大統領の創案だということになっていますが、これはすっかり悪党になってしまったヒットラーを有能な政治家だと認めたくないからです。

またドイツが戦争を始めるに当たり、プロの将軍たちは昔ながらの歩兵と大砲による進撃を進言しました。

しかしここでもヒットラーは自分の直観を信用し、航空機による空からの攻撃を行いました。

これが「電撃作戦」で大成功し、フランスなどはあっさり降伏してしまいました。

自分の直観を信用しプロの進言に従わないということは、当然ながら初歩的なミスを犯すことにもつながります。

何年か前にマイケル・ジャクソンは、ネバーランドに遊びに来た少年にわいせつ行為をしたとして訴えられました。

そのとき彼は、20億円以上の金を少年に払い和解しました。

この当時私は、整形し漂白して奇怪な顔になったマイケルをただのチンピラとしか思わず、少年へのわいせつ行為をやりかねないと思いました。

大部分のアメリカ人もそう思ったでしょう。

ところが、彼の死後、色々な報道を見聞きしているうちに、彼はそんなに変な男では無いのではないか、と思うようになりました。

彼の発言や態度が意外とまともなのです。

この件に関し、マイケルは一貫して犯行を否定していますが、和解金を払ったことについてはこう説明しています。

「このいやな事件に時間を浪費したくなかった。私には他にやるべきことがあった。だから和解金を払ったがこれは失敗だった」

「彼が実際に猥褻行為を行ったから20億円もの大金を払ったに違いない。無実ならそんな金を払うはずが無い」と誰でもが思います。

こんな初歩中の初歩はどんなアホーな弁護士でも当然進言します。

マイケル・ジャクソンはプロの進言を無視して、ミスをしたのです。

彼がわいせつ行為をしたかどうか本当のところは、私には分かりません。

しかし今の私には、彼がそんなに変な男だったとは思えません。





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最終更新日  2010年02月01日 10時04分00秒
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