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キューバ危機に揺れる1962年、落ちぶれ天才数学者が米国政府から命じられたソ連相手のチェス対決。だがその実体は、2国の運命をかけたスパイゲームだった。キューバ危機とかチェスとかあんまり関係なくない!?これはNetflixオリジナル映画。まあね、 Netflixオリジナルに当たり外れがあるのはわかってるけど、個人的にはあたりではない(ハズレとも言っていない)はっきり言って、キューバ危機の歴史的背景やその中に蠢いていた陰謀は全然わからない。ソ連のスパイが二重スパイで、実際はアメリカ側についてて、その人がアメリカにソ連の核弾頭は思っているより少ない、みたいな有益な情報を流したから、アメリカが強気で行けて最終的にソ連が譲歩したとか、、だったかな?歴史を知っていればこの作品を楽しめたかもしれない。だけど、たとえ歴史を理解してても、もう一つこの作品であれ?ってなった部分がある。これってチェス関係なくない?あらすじでは、「チェス対決が両国の命運を握る!」みたいだったけど、チェスの勝敗は実際あまり関係なかった。最終的にはアメリカ代表のビル・プルマン(役名忘れた)も負けて終わる。不戦勝だったけど。チェス大会にソ連スパイが有益な情報を持って現れるけど、スパイ的にはアメリカ側の人間も信用できないから、一番無関係っぽいパンピーのビル・プルマンが仲介役になるよ!だからチェスに参加してね!って感じ。なかなかぶっ飛んだ映画だ。パンピー信用してええんか、ソ連スパイ、、ただ、このチェス大会が行われる場所がポーランドっていうところが、この作品最大のキモだと思う。冷戦下のポーランドは西側ではなく、ソ連共産党の支配する場所。ビルプルマンが宿泊しているホテル(宮殿だったかな?)の支配人もソ連に言われるがままソ連選手が有利になるように働きかけるのだが、実際ポーランド人はソ連を好意的に思っておらず、支配人は次第にビルプルマンに協力的になる。なぜソ連を嫌うのか、その理由も作中で描かれている。スパイ映画としては二転三転してよき。誰が敵で誰が味方?的な感じ。けど、やっぱりアメリカ側諜報員の女性はしょっぱなから絶対怪しいと思ってた笑で、その彼女が死んでからの展開も良かったと思う。すごく好意的なポーランド人支配人が犠牲になったのはちょっと、、だけど。チェスシーンもそれほど重要には描かれてないし、チェスをなくして純粋なスパイ映画にしたら分かりやすかったかも。結局ソ連スパイが持ち出した情報が、核弾頭関係の機密だったのか、、よくわからない。そしてこの作品、なにかとポーランドがフューチャーされがちだけど、それもそのはずこれはポーランド映画。だからソ連が殊更悪に描かれ、アメリカが割とよく描かれ、ポーランドはすごくよく描かれている笑でもいいと思う。ポーランド人がポーランド映画で何をどう描こうが勝手だし。ソ連スパイが扉の下からにゅって顔出したのが怖かったのと、アメリカ諜報員の男が暗殺された時に吐き出したのがどう見てもトマトジュースだったのが振り幅として最高に不思議で、なんだかよくわからない映画だった笑俳優陣的には主演の、酒に溺れた数学者だけどチェスの腕は天才的な男を演じたのはビル・プルマン。インディペンデンスデイの大統領。キャスパーのお父さん役でもある。髭はやしてるし別にビルプルマンじゃなくても良くない?の典型的な見た目だった。ポーランド映画だから、知ってるのは彼くらいかな。アメリカ側の諜報員の一人にロッテ・ファービックという女優さん。顔の造形が好き。だけど怪しすぎた。死に様にちょっとびっくり。
2021.06.30

『セブン』『ドラゴン・タトゥーの女』の鬼才デヴィッド・フィンチャーが描く男と女の刺激的サイコロジカル・スリラーあなたはこの衝撃の展開に耐えられますか!?5回目の結婚記念日に姿を消した妻ダイニング居間の大量の血痕 妻の日記 結婚記念日の宝探しのメッセージ エイミーに何が起きたのか―夫のニック役には監督作『アルゴ』でアカデミー賞作品賞を受賞したベン・アフレック。ミステリアスな美しさを持つ妻のエイミーには、『アウトロー』の英国女優ロザムンド・パイクが扮している。誰よりも長い時間を一緒に過ごしてきたパートナーの知られざる秘密が次々と暴かれていく。鬼才デヴィッド・フィンチャーが仕掛ける衝撃の展開にあなたは耐えられるか―結局幽霊よりもヒロイン症候群のメンヘラ女が1番恐ろしい!ベンアフレック対メンヘラ妻の身の毛もよだつ心理戦を描いたサイコスリラー。そこら辺の幽霊映画よりも何倍も怖い、人間のおどろおどろした恐ろしさをこれでもかと表現している。自分が幸せに見えていなければ耐えられない女の最終進化系。映画で外から見ている分にはいいけどこれが現実に周りにいたらものすごく嫌。周囲が不幸になろうが人が死のうが私が幸せであればそれでいいてな感じのメンヘラ女が、これまたあまり美人じゃないのもなんかリアリティーがある笑(女優さんは好きよ)物語は結婚5周年記念の最中、ニックの妻エイミーが失踪したところからはじまる。エイミーは自身をモデルにした父親作の児童文学で名の知れた有名人であり、そんなエイミーの失踪はマスコミの格好のネタ。幸せいっぱいのエイミーが自分から失踪するはずないと周囲の人間や警察までもが不審に思い、死亡説まで流れる中、その疑惑の目は逆玉旦那のニックに向けられる。だが、実はエイミーは生きており、これは彼女のニックに対する壮絶な復讐の序章に過ぎなかった、、メンヘラ女は世間に数あれど、エイミーはその誰よりもタチが悪い。なぜなら、彼女は誰もが知る有名人であり、影響力がそこらへんのアマチュアメンヘラとは比べものにならないからです。エイミーは子供の頃からショウビズの世界にいた人物。どう振る舞ったら好印象をもたれるか、世間を味方につけられるか、同情を得られて自分の思い通りにできるかをちゃんと知ってる。まさにプロのメンヘラ。彼女はリックが若い女子高生と浮気していたのが許せず、リックの社会的地位を落とし、そして最終的には彼を自分殺しの凶悪犯として死刑にしようと目論んでいた。まじ厄介。自分の手を直接汚さず、同情を集めつつ相手を滅するのが本当に得意なエイミーです。エイミーは幸せになるべき自分が世間的に浮気された不幸せな女となるのが耐えられないんだろうな、、子供の頃から注目される存在で、誰よりも幸せの位置にいる自分が、旦那選びを間違えたなんてね、、方やパンピーの旦那であるニックはこのエイミーの策略に終始踊らされる。最初はエイミーの意図がわからず、解ってからもなかなか先手を取れない。そんな彼がエイミーに勝つ手段は、エイミーの思い通りにすること!エイミーは複雑なようで単純な女なので、リックがちゃんと「美しい妻エイミーは誰よりも優しく思いやりがあり、最高の女性だが、自分が不甲斐ないばかりに彼女を傷つけた。エイミーは何一つ悪くない!」と、メディアを通じて熱っぽい演技をしたら、ちゃんとグッとくるんです笑そして自分がか弱いヒロインになるようにしっかり小細工をして、リックの元に舞い戻ってきます。自分を匿ってくれてた男を当たり前のように殺してからね。まあ、ここまで書いてたら極悪非道の悪女に見えるエイミーも、実は万能ではないところがちゃんと描かれてる。それはエイミーが行方を晦ませている最中、安いモーテル?でもないような所に宿泊した時のこと。そこで偶々知り合った男女に、ひょんなことから大金を持っているのがバレて恫喝される場面がある。それまでエイミーは自分の正体を隠してDV旦那から逃げている不幸な女性として振る舞っていたが、ここで初めてエイミーは本当の暴力を目の当たりにする。お芝居ではない、世の中には出会って間もない人間を当然のように脅す男と、それまで親しくしていたのにお金のために突然豹変する女がいる。この二人が部屋から出てったとき、エイミーが枕に悲鳴のような雄叫びのようなものを上げてて、多分驚きとか憤りとか苛立ちがあるんだろうけど、その中の感情には言いようのない恐怖もあったんじゃないかと思う。結局、エイミーが周りをコントロールできるのは、彼女がエイミーだと知ってる人までってことかな。エイミーが誰だか知らない、見た目みすぼらしいのに大金を持ち歩いている女、としか認識できない人たちを、エイミーは世間やリックほどコントロールできない。まあそれは当たり前っちゃ当たり前なことなのかな。でも、このシーンはエイミーの弱さが伝わってくる。彼女は別に自分から有名になろうとしたわけじゃない。父親が自身をモデルに小説を書いて、それが当たって「あの有名小説のモデルの子」となっただけで、彼女は何もしてないのに名声やら知名度やらを手に入れた。世間も彼女の意志とは裏腹なエイミー像を勝手に作っていく。幸せなエイミー、素敵なエイミー。それは彼女がこうなった要因でもある。闇が深い。まあ最後はエイミーの正体を知ったリックを、エイミーがそう簡単に手放すわけないよねって感じのラストだったけど、倫理観ぶっ飛んだメンヘラがすることだから、もうリックには生涯彼女とともに生きる道しかないんだから諦めよう笑俳優陣はメンヘラの生贄となったリックを演じるのはベン・アフレック。個人的にはベンアフレックの困り顔がツボ。どの映画でもツボ。エイミー役にはロザムンド・パイクというイギリスの女優さん。顔好き。圧倒的美人じゃないけど、だからこそ説得力がある笑この作品でアカデミー賞主演女優にノミネート。良き。あとは最後の最後にエイミーの正体に気付きかけて追い詰めるけど返り討ちにされる警察役がキム・ディケンズで、インビジブルに出てた人!ってなった。
2021.06.29
リック・ダルトンはピークを過ぎたTV俳優。スターへの道が拓けず焦る日々が続いていた。そんな彼を支えるクリフ・ブースは彼に雇われた付き人でスタントマン、親友でもある。エンタテインメント業界に精神をすり減らし情緒不安定なリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と女優シャロン・テート夫妻が越してくる。自分たちとは対照的な二人の輝きに触れたリックは、俳優としての光明を求めイタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが—。これはなぜか全然ハマらなかったよタランティーノさん!タランティーノ監督は嫌いじゃない。キルビルも2作品ちゃんと観たし、デスプルーフも観た。ジャンゴとかイングロリアス・バスターズはまだ観てないけど、、あ、ヘイトフル・エイトは良かったよ!でも、この作品は全然ハマらなかった。タランティーノ好きな人には申し訳ない。でも正直、飛ばし飛ばし観てた。なんでだろ?手法とか見せ方とか、無駄に長いのが正にタランティーノっぽいはずなのにびっくりするほど退屈だった。まじなんで?アカデミー受賞作だから?あらすじはよく観てないから語るに値しないと思う。物語の全貌を知りたい方はあらすじをちゃんと書いてるちゃんとしたブログに行くことを強くオススメします。以下は飛ばし飛ばし観た人間の感想です。主人公は落ち目のTV俳優のリック。TV俳優から映画スターを目指して欲を出した彼は、他の例に漏れずに人気が凋落し、今はもうかつての名声を食いつぶす日々を送っていた。彼の横にはリックのスタンドダブルであるクリフ。リックが這い上がれなければ、クリフも這い上がれない。二人は落ち行くだけの人生をもがきながら(クリフはかなり楽観的だけど)生きていたが、ある日リックのとなりに有名監督とその妻シャロンテートが越してくる。話がシャロンテート事件をずっと追わず、落ち目の二人とシャロンテートの日常が交互に描かれてる感じ。シャロンとリックたちには接点はない。そして時々、タランティーノっぽい橋田壽賀子先生並みに長いシーンが入る。ブルースリーとかのくだりはなにか意味あったのかな?飛ばしてたからわからない。あと、リックがウェスタン俳優だから西部劇が色々差し込まれるけど、うーん、、好きな人にはウケるんだろうけど、、西部劇よく分からない。実在する映画なの?タランティーノの創作?それさえも分からないからどうしようもないわ。大脱出のシーンは笑った。数少ない見たことある映画だった。リックの苦悩は分かるよ。子役の女の子との会話もよかった。誰よりも自分が一番、自分が至らない事を理解してる。若い頃はなんでもできる気でいて、実際なんでも器用にこなすんだけど、歳を重ねると威勢と気持ちだけでは何でも出来なくなってきて、そんな自分に嫌気がさすことなんか誰にだってある。せっかくの撮影を深酒でNG出した時、鏡に向かって自分を叱咤するリックが泣ける。そこからの迫真の演技は彼を馬鹿にしてた人たちを見返すには十分だと思う。リックも褒められて自信を取り戻したみたいだし。やっぱり褒められないと人間卑屈になっちゃうよね。嫌がってたイタリア作のマカロニウェスタンにも出演を決める。いい流れ。で、クリフはなにがしたかったの?まじ女の子ひっかけてヒッピーの溜まり場みたいな場面は、、飛ばし飛ばしだった。でもここで恨みを買ったんだよね。ヒッピーの親玉みたいなのから。違うかな?実際、シャロンテートはこのヒッピーの親玉みたいな人を筆頭とするカルト的なグループに殺害されたらしい。でもそれは結局は人違いで、シャロン達が越して来た家に以前住んでた人物が本来の標的で、シャロンたちは言わば巻き込まれただけの被害者。ここで歴史が変わってて、家を襲撃されるのはクリフたちになる。リックがたまたま私道に入ってきたヒッピーを一喝して、なぜかヒッピーは「TVで俺たちに残虐な殺し方を見せつけてきたアイツらを殺そうぜ!」ってなる。(なんで?)でもクリフはスタントとして身につけた殺人術で、リックは昔撮影で使用した火炎放射器で応戦してヒッピーたちを返り討ちにする(なんで?)結果的にシャロンテートは死なず、様子を見にきた監督(シャロンテートの夫)とリックが出会い、彼がシャロン邸に招かれて物語は終わる。シャロンテート事件の被害者はシャロンを含めて家にいた4人のほか、通りすがりの一人も巻き込まれたらしい。本来だったら、その一人がリックだったってこと?わからない。ただ、リックに光明が見えるラストなのは良かった。多分、監督と知り合うことでリックの俳優人生も良い方に転ぶと思うし。リックが上がればクリフも自然と上がるし。ハッピーエンド、、なのか?出演者はこれまた無駄に豪華。リック役のレオナルドディカプリオは言わずもがな、スタントダブルはブラッドピッド。体格似てるのかこの二人?シャロンテートはマーゴットロビー。アルパチーノも出てるしカートラッセルも出てる。あとダミアンルイスとか色々。個人的にはダコタファニングが出てるのにびっくり。
2021.06.17

時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。 異なる環境にいても互いを理解しあえれば一歩踏み出せる! 黒人と白人の交流を描いた、いわゆる感動作品と名のつく映画はこれまで何作もあったと思う。最強のふたりとか、前に感想をかいたベスト・オブ・エネミーズもそのひとつ。だけど、この作品がほかと決定的に違うところは、たぶん黒人のドクがお金持ちで、白人のトニーが労働者階級の貧困層に位置しているっていう点じゃないかな?とくにドクという存在がこの映画を唯一無二のものにしてる。複雑な彼の心にちょっと触れる度に、この作品は深みが増していく。実話であるのもまた良き。 お話は黒人差別が公然と行われていた時代、イタリア移民のチンピラみたいなトニーが、ひょんなことから才能あふれる黒人ピアニスト、ドン・シャーリーの運転手に抜擢されたところからはじまる。白人であるトニーは黒人のドクの小間使いみたいになるのが気に食わない、だけど沢山いる家族を養わなければならないということでしぶしぶ、南部ツアーにドライバーとして帯同することに。 出発前、ドクの演奏家仲間が「ここにいればチヤホヤされて簡単に稼げるのに、どうしてドクは南部に行くのだと思う?」と、トニーに問いかける。この時点で、この旅路が容易な演奏ツアーじゃないことがわかってくる。 そして暫くするとなぜ、ガサツなトニーに白羽の矢が立ったのかも理解できてくる。 ドクたちが住んでるニューヨークは多様性に寛容で黒人差別はあまりない。(トニーたちみたいな移民労働者たちは黒人に仕事を取られたと思っているからよく思ってないけど)でも、南部に行けば行くほど差別が色濃くなってくる。トニーみたいな用心棒的な人物がいないとドクを守れないほど。本作のタイトル、グリーンブックはその最たるもの。黒人専用宿泊所が書かれた本が、グリーンブックというらしい。つまり、黒人と白人が寝屋を共にすることさえ忌み嫌われてる土地に行くんです。 最初こそ差別的だったトニーも、割と序盤からドクに対するわだかまりは溶けているようにみえる。それはドクが並外れた才能を有した天才だから、かな?ドクがスタインウェイを用意しろと言ったら、絶対にその通りにする。ゴミのポイ捨てを注意されたら取りに戻る、ドクが後部座席に座っているのを怪訝な目で見る白人たちには中指たてる!見た目いかついけど、トニーはいい奴なんです笑 むしろ複雑なのがドクター・シャーリーの方。いや、まじ難しい人物。 まず、ドクはこの時代には珍しく裕福な黒人。カーネギーホールの上階の豪華絢爛な部屋に執事付きで住み、身に纏うものもぱりっとした上物のスーツ。気位が高く、常に高潔に、常に品位を保とうとしている。ドクは人からの視線にとにかく敏感です。自分がどうみられているか、品性のある人間として見られているかを異常なまでに気にしてるし、それを周囲やトニーにも強要します。正反対のトニーが受け入れられるはずもなく、まるで母親と子供のような問答を旅の中で幾度となく繰り返す。 ここまでドクが高潔さを求めるのは、彼が自分が黒人である、ということを痛いほど理解しているからなんだと思う。でも、いわゆる普通の労働者階級の黒人とは違うということも理解している。だからと言って人々の彼に対する扱いが変わらないのも理解している。ドクはその才能で幾度となく喝采を浴びます。南部でもそれは変わらない。だけど、コンサートが終わってトイレに行こうとすると、それまでニコニコしていた主催者にとめられ、外にある『黒人専用』の薄汚い納屋みたいなトイレを使うように促される。さっきまで煌びやかな世界にいたのに、一歩壇上から降りると、扱いは他の黒人たちと変わらない。この矛盾がドクを苦しめる。 方や白人のトニーは?彼は車からゴミを投げ捨てたって警官に悪態ついたって、汚い言葉を使ったって石を盗もうとしたってなにも気にしない。でも誰も彼に、ここは君が使うトイレじゃない、汚い外のトイレに行け!とは言わない。南部のテーラーでもそう。上等なスーツを着た黒人のドクの試着は拒否されても、みすぼらしい格好のトニーは試着できます。それは彼が白人だから。 どれだけ絢爛豪華な住まいであっても、時の大統領に直電できる人脈があっても、ガサツで無骨な白人のトニーの方が、黒人のドクよりも『人間的」に扱われるんです。(こんな書き方、本当はしたくないんだけどね、、) このたった2時間の映画でもすっごいもやもやが貯まるのに、こんな扱いをこれまでずっと経験してきたドクは想像を絶するレベルにつらいはず。うきうきテーラーに入って行って試着を拒否された時のドクの顔がほんとに可哀想、、テーラーのおっさんをぶん殴りたくなる! ドクはこの時代では一番マイノリティーな存在だったんだと思う。裕福な黒人は少数だったと思うし、でも裕福な白人たちの仲間にはなれない。裕福すぎるから他の黒人とは相容れない。(家族とも疎遠であることが示唆されてたし、、)労働者階級の白人からは忌み嫌われてる。 まじ酒に溺れるのもわかるよ、、わからなくなるよね、、自分が、、 「黒人でもなく白人でもない自分は誰なんだ!」って、ドクの悲痛な叫びに泣きそうになる。 そしてドクのセクシャルな部分として同性愛的なものを匂わせているのもまた、、分かり合える人がいないことが、より一層彼を孤独にさせてるんだろうな。 ツアーの最後、ホテルのレストランが白人専用で、トニーがどれだけ説得しても支配人が折れなかったから、ドクも堪忍袋の尾が切れてコンサートそのものをキャンセル!そうそう、そうしていいんだよドク!自分を押し殺さずに感情を露わにしていいんだよ!二人は黒人ばかりが集うパブに飲みに出て、そこで決して年代物でも名品でもないピアノを楽しそうに演奏するドクが、そんなドクを微笑ましく見守るトニーがほんとに良き。 結局、南部はドクが思ってた以上に差別が根強く、彼一人で変えられる事はなかったけど、旅なんて結果より過程が大事だからね。もっとも相入れることのなかった場所にいた、トニーとドクが分かり合えたのは、この旅でも一番の収穫だよ。 ラストに旅から戻ってそれぞれの家に帰っていくのもすごく対照的。トニーには沢山のファミリーと愛する妻と子供がいる、貧しくも幸せで暖かな家があるのに引き換え、ドクター・シャーリーは豪華な家にひとりきり。二人が帰ってきた日はクリスマスイブ(だったかな?)ドクは家族に紹介したいとトニーに誘われるが一度断わっている。だけど、ここで一歩踏み出してドクは自分からトニーの家の扉の前に立つ。この場面、すごくいいと思う。 最初、どうせトニーが仲間を連れて寂しいクリスマスを過ごしてるドクの家に行くんじゃないかと思ったけど、それじゃ意味ないんだよね。ドクからトニーの家に行った事に意味がある。それまで黒人に差別的だったファミリーも、ドクを前に少しかしこまる。知らないから差別するのであって、人間的に相手を理解したら差別なんて出来ない。あと、ドクとトニーの嫁ドロレスとの会話もね、本当にいいラストだったなー 実在の二人の友情は死ぬまで続いたらしい。亡くなった日も近く、最後の最後までいい関係だったのならいいなー 主演はウィゴモーテンセン。アラゴルンですね。中世の甲冑や剣と魔法の世界がめちゃくちゃ似合うけど、粗暴だけど心優しいトニーもよかった!シャーリーは、この作品でアカデミー助演男優賞受賞したマハーシャラ・アリ。シャーリーの苦悩が痛いほど感じられ、この映画の大事な部分をしっかり固めていました。受賞も納得!
2021.06.14

世界No.1のシェアを誇る超巨大SNS企業〈サークル〉。憧れの企業に採用され、奮起する新人のメイ(エマ・ワトソン)は、ある事件をきっかけに、創始者でありカリスマ経営者のイーモン(トム・ハンクス)の目に留まり、自らの24時間をすべて公開するという新サービス〈シーチェンジ〉のモデルケースに大抜擢される。瞬く間に1000万人超のフォロワーを得て、アイドル的な存在になるのだが―― 出演者は豪華だけど内容はシンプルすぎるかも! 昨今のSNSの発達はいい面もあるけど、みんなが普段から気にしてる個人情報がだだもれる危険性もあるし、使い方によっては人々を監視し、支配する道具になるんだよ、、っていう感じの警鐘を鳴らしてくれる映画。でもこういった類の映画って、割とよくあるような?はっきり言って目新しさはない。1時間くらいのドラマで終わる内容を、豪華な出演者を使って映画サイズに引き伸ばした感じ! 物語はエマ・ワトソン演じるメイが世界でも有数のソーシャルネットワーク企業に就職面接をするところからはじまる。まあなんていうか、絵に描いたような先進企業で、IT関係っていかにもこういう質問しそうだよね、のテンプレ。意識高い系っていうのかな?メイは真面目に受け答えて見事合格し、晴れて誰もが憧れる企業に就職する。この会社、企業風土がものすごく自由。敷地内はさながら大学のキャンパスのようで、ヨガをやったり芝生でだべったり、時には有名バンドを招いてパーティを開いたりと楽しいことばかり。 社長はトム・ハンクス。茶目っ気があって自由な会社にふさわしい、柔らかい観点と鋭い感覚をもっているが、個人的には彼が壇上に上がって新作を披露するシーンはなんか宗教っぽくみえたよ、、まあ企業もある意味洗脳だよね。自由に見えても同調圧力ありそうだわ、こういうところ、と思わずにはいられない。 あと、至る所に監視カメラを無断でつけるって、、どうなの?独裁政権がーとか革命がーとか言ってたけど、実際のところどうなん?かなり胡散臭い。 メイが会社が開発した小型カメラを自身に装着し、自分の一挙手一投足を全世界に配信し始めたところから話は動き出す。(それまでは正直、単調だった。かなり) メイは透明性を求めてトイレや風呂以外を全て晒し始め、トム・ハンクス(役名忘れた)もそれを後押し。このアイデアは大当たりし、どこにでもいる普通の女性だったメイが、瞬く間に爆発的なフォロワーを要するインフルエンサー的な立場となる。だが、彼女が世界から注目されるにつれて、恋人のマーサーとは不仲に、そして両親の性生活を誤って世界に配信してしまうなどのトラブルも出てくる。 中盤あたりまで観てると、トラブルの規模小さくない?って思った。 世界的なシェアを獲得した影響力のある企業に居て、その中でもとくに広く名の知れたメイなのに、なんかトラブルが、、しょぼい。まあそういう小さなところに目をつけて鬼の首とったみたいに叩いてくる人はリアルにありそうだけど、もうちょっと脚色してほしい。 開発者が「会社はこの機能をおれの意図とは違う使い方をしてるんだ!」みたいに警告されてもうーん。そんなもん最初からわかってるよ。 メイ自身も別に人々に注目されて特段舞い上がってるわけでもないし。あくまで理性的な感じ。だから劇的に乱れるところがなくて、波がない。全体的にここまで単調。 でもついに犠牲者が出る。 トム・ハンクスが新たに導入した、カメラを持った人がリアルタイムで人を探す、という機能を試すことに。ここまでくるとメイはすでに会社内での存在感は高くなっており、発言はもとより、この発表の段にはトム・ハンクスではなく彼女が立つほどになっていた。この新機能を使って、一人目は逃亡中の凶悪犯を発見するのに成功する。場内からは喝采が巻き起こるが、お話はここから。なんとメイの彼氏(元彼?)のマーサーを探せ、というお題が出て、その場の空気に飲まれたメイはしぶしぶマーサーを探すようにユーザーたちに求めてしまう。 まじでマーサーとばっちりすぎるだろ。 マーサーはメイが配信する世界に自分を晒したくない、というまったくもって健全な理由から彼女とは離れて静かに暮らしていたのに、メイの求めに触発されたユーザーたちがカメラを持ってマーサー家に凸。マーサーはもちろん、こんな連中には関わりたくないから逃げ出す。するとみんな躍起になって彼の後を追いかける。車で追いかけ、ドローンが追いかけ、はたまたヘリまで出てくる始末。 大盛り上がりの会場がまじ胸糞だったわ。 メイは「彼ら(追いかけてるユーザー)は友達なの!」とかいうけど、いや、お前にとってはそうかもしれないけど、マーサーにとっては友達でもなんでもないからね?ただの不審者たちが自分にカメラ向けて追いかけてきたら、そりゃ逃げるでしょ。 この追いかけっこはマーサーの車を無理やりとめようとドローンが前に出て、それを避けようとしたマーサーが車ごと橋から転落するという最悪の結果で終わる、、 この一件で、メイはさすがに凹む。(そりゃね) でも、この悲劇のヒロイン感が苦手。巻き込まれたマーサーがひたすらかわいそう。 で、メイはいろいろ考えてトム・ハンクスたち会社の上層部に下克上をしようと思い立つ。上層部は人々には透明性を求めているけど、本人たちはそうじゃない!裏で行われている悪事を暴いてやる!といった感じなんだけど、、なんか弱くないか? もっとメイが狂っていく感じなのかと思ったら、アンタが次の教祖なんかい!?的な感じで終わるし。結局、犠牲者はマーサーだけ。もっとなんかメイの先輩だったアニーが狂っていくとか、なんかなかったのかな? どんでん返しがなくて終わり方があっけなさすぎる。 主演はみんな大好きエマ・ワトソン。ハリーポッターのハーマイオニーから、美女と野獣の大人の女性へと成長した彼女。正しく可愛いから綺麗に。エマは好きだけど、メイがエマのように常識的すぎたから、この映画は単調で面白みがなかったのかも、、とも思ってしまう。裏がある大企業の創始者はトム・ハンクス。社長役珍しくない?くらいの印象しかない。そして何気に人間味があって好きなアニー役はカレン・ギラムという女優さん。もっと狂ってかき回してほしかった。競争社会に疲れて大人しく退社っていうのも、まあ現実的ではあるけど。あと、ビル・パクストンがメイの父親役っていうのがちょっと勿体無い気もする。ただ性生活を晒されただけっていうね、、全体的になんか消化不良。 ソーシャルネットワークに関係する警鐘的映画は沢山あるし、綺麗で素敵なエマ・ワトソンを観る映画ってかんじかな。
2021.06.13

名女優のメリル・ストリープが、音痴のソプラノ歌手として知られる実在の人物フローレンス・フォスター・ジェンキンスに扮し、1944年、音楽の殿堂カーネギーホールで行われ、伝説として今なお語り継がれるフローレンスの公演を題材に描いたドラマ。ニューヨークの社交界で名の知られたマダム・フローレンスは、ソプラノ歌手になる夢を追い続けていたが、自分の歌唱力に致命的な欠陥があることに気づいていない。夫のシンクレアは、愛する妻に夢を見続けさせるため、マスコミを買収して信奉者だけを集め、小さなリサイタルを開催するなどしていたが、ある日、フローレンスがカーネギーホールで歌うと言い出して……。夫シンクレア役にヒュー・グラント。監督は、「クィーン」「あなたを抱きしめる日まで」のスティーブン・フリアーズ。 メリル・ストリープは最高だけど笑い声に終始もやっとする! こちらも実話らしい。 まずメリル・ストリープが好きなんだよね笑 マディソン郡の橋ではぐずぐずになるほど泣けたのに永遠に美しくではゾッとするほど美に執着する文字通り怪物を演じたり。年を重ねてもまだ貪欲に演技するメリル・ストリープが本当に好き。コメディだとなお良き。 燦然と輝く立派なキャリアがあるのにこの年までコメディやってくれる名優は彼女くらいじゃないかな。勘違いでお金持ち老婦人マダムフローレンスをまったく嫌味もなく演じています。純粋そのもの。こんな純粋な人なら周りが箝口令を敷いて守ってあげだり、応援してあげたくなる気持ちもわかる。年下夫のシンクレアは愛人はいるけど、マダムの事を無下にすることは絶対にないしマダム優先だし、庇護欲?を掻き立てられるよ、こういう人は。 余談だけど生まれてこの方お金に苦労した事のない生粋のお金持ちってこんな感じだよね。お坊ちゃんもお嬢ちゃんも。お金に執着がないし、なにより純真。 でも、やっぱりマダムの歌を観客が笑ってるシーンは心苦しい感じがする。どれだけ繕っても(慰問の兵隊に啖呵切った女とか)マダムをバカにしてる感じがさ、マダムがヘタだけどひたすら素直で歌に対する情熱は人一倍あるから、裏で金コネありきで笑い者にされてるのを観るのはなんか辛いわ。マダムがピアニストの家に行って本当に歌が好きなんだって分かる場面を見せられるからなおさらマダムが可哀想ってなってしまう。結局努力よりは金って感じ。 歌に真摯に向き合って(金があれば)みんなの憧れカーネギーホールで歌えますよってことなんだろうし、マダムの珍妙な声が1944年という戦争末期の暗い時代を送る人たちの心を少しでも元気に楽しくしたよ!! とか、いい方向に解釈はできるけど、観客のばかにした笑いがねーいい物語とは言いがたくしてるんですよね、、 最後はシンクレアの必死の工作及ばずカーネギーホールで熱唱する自身を酷評した新聞を見てしまったマダムがショックのあまり寝込んでしまってそのまま、、な最後もなんかかわいそすぎる!せめて死ぬまで隠し通してやってくれ!マダムはカゴの中の鳥なんだから世間という冷たい風に晒してやるなよシンクレア! そんなシンクレア役はヒューグラント。清潔感ある老紳士だけどしっかり愛人を作ってるあたり流石。そして愛人役レベッカファーガソンはライフの印象ぐらいしかない。当たり前に美人。最&高。マダムをピアノで支えるコズメはビックバンセオリーでお馴染みサイモン・ヘルバーク。(ビックバンセオリーは一度も見たことないけど、この人の顔はなぜか印象に残ってるっていう笑) もっとコメディ色強めかと思ったらひたすらマダムが可哀想なお話でした。 夢見る二人の副題が皮肉すぎる。
2021.06.07

かつてリアリティー番組「グレイヴ・エンカウンターズ」は、本物の超常現象を扱うことで一世を風靡(ふうび)したが、実は全てが作り物だった。若手映像作家アレックス(リチャード・ハーモン)は、当時の番組スタッフらが廃虚の精神病院に潜入後、行方がわからなくなっていることを知る。映画監督を夢見る彼は、当時の関係者から情報を得ようとするが……。 怖かったあいつらがコメディになって帰ってきた! ご存知、 予告編だけで世界を恐怖に陥れたグレイヴ・エンカウンターズの待望の続編です。そう、近年稀に見るやらかし続編です。 本当にどうしてこうなった?を何万回と言っても足りないくらいの映画に仕上がっています。映画の続編に成功パターンが少ないのも事実。それにしたってこれはひどい。前作が必死に貯めた恐怖という貯金を惜しげもなく散財する二代目ドラ息子みたいです。 まずもってして導入が悪い。前作は序盤からすでに件の廃墟の病院にましたが、今作はかなり時間が経過してもまだ大学生のパリピノリを続けている。これがプロとアマチュアの差なの?これだったらもうジェイソンとフレディ系のやつ呼んでこればよくね?そういう映画よくあるよ。今から廃病院にいくの?遅くない?と、とりあえず舞台となる精神病院に行くまで全く恐怖を積むことが全くできなかったし、病院内でする動きも前作と酷似していて目新しくない。 でももしかしたらここから霊達が怖がらせてくれるかも! と、期待したはいいが、まあ霊たちもこういう手合いを相手するの二回目だからね、どうしても前作の恐怖を超えることはできない。ひとりひとり確実に滅していくけどうーん、、前も見たよそういうのとなってしまう。 何か他の展開はないのかな? と、思っていたら中盤に想像を絶する展開が待ってました。 前作の最後でロボトミーされて死んだと思われていたランスが生きていた!! 前作から凡そ3年(だったかな?)くらい経過しているはずなのに生きていたんです、あのプロデューサーのランスが!ずっと廃病院の中で生きてたんで当たり前のように人間卒業してますが、お前生きていたんかい!!とだれもが突っ込みたくなるような展開 ですがランスが生きてました!! もうここから先は立派なコメディ。大変に楽しく見れます。 ランスがこの場所で生きてたことがコメディです。だってそういう場所じゃないじゃない?人が一晩生きることが許されない場所に、ランスは3年?もいたとか。しかも何を食ってたのか知らないけど割と筋肉隆々で健康状態も良さそうな風貌でさ、、ネズミ食べる十八番芸も既出だよ、、他の芸を見せないと。 そしてこれで終わりかと思いきや、最後の最後にこれ以上に愉快な場面がありました。 ランスと今作の主人公アレックスがいろいろあって一騎打ちすることとなり、その様を誰が写しているのか。今作も前作と同じくモニュメントタッチの演出のため、絶対に誰かがその映像を撮らないといけません。 そこで生まれた手法が、霊たちに撮影してもらうというもの。 対峙した二人のまわりを突如として衛星のようにカメラが周り、しっかり撮影してくれてます。優しい霊達かなと思いきや、単純に自己顕示欲が強いだけ。自分たちの存在を世界に広めて欲しくてやってるんです。 最終的には今作のアレックスの方が拡散力高そう?ということで、霊達の計らいで外に逃してもらえるというオチ。 本当にどうしてこうなった、、 前作の霊たちもそんな気持ちで脅かしてたのかと思うと、途端に可愛く見えてくる不思議。 個人プレーで自滅したかと思いきや、前作の質までをもしっかり落とす圧巻の迷作っぷりがいっそ清々しいくらいでした。
2021.06.04

銀行に勤めるギョンミンは、都心の古びたマンションで一人暮らしをしていた。ある朝、ドアロックのナンバーキーに不審な粉が付いているのを見つけ、念のためパスワードを変更する。帰宅後に部屋で寛いでいると、突然誰かがドアロックを操作し、ドアノブを荒々しく回し始めた。もし、今朝パスワードを変更していなかったら…。恐怖に駆られたギョンミンは警察に通報するが、被害が無いために取り合ってくれない。それからというもの、ギョンミンの部屋で不審な痕跡が続々と見つかる。タバコの吸い殻、持ち上がった便座…。仕事も手につかず新たな引っ越し先を探し始める中、ギョンミンの部屋で変死体が発見され―。 韓国発のしっとりホラーだけど犯人が変質者すぎて思考がついていかない! 一人暮らしの賃貸を探すとき、何を一番の条件にするかは人によって違うと思う。私は3回引越ししたけど、不動産屋に行って提示する条件はほとんど変わらなかった。駅徒歩10分以内、築年数は15年以内、風呂トイレ独立洗面つきのいわゆるサンセパ。2階以上の部屋、フローリングである事、そしてオートロックが付いているか。多分、女性ならオートロック付きかどうかは結構重要な条件で、家賃もこれがあるかどうかでかなり変わってきます。でも安心を買うためには仕方がない。この映画の主人公もそんな思考の持ち主で、決して防犯に疎い女性ではありませんでした。 だけど、もしマンションに自由に出入りできる人間がストーカーになったら? そんなもの防ぎようがない。これの映画はそんな灯台下暗し的なホラーを描いている。怪しい人間が彼女の周りに様々あらわれるけど、結局彼女の部屋に出入りしていた犯人はマンションを管理する側の人間だった。まじどうしようもないわ。怖すぎる。 しかもこいつがかなりの変態。普通、意中の女性に執着して部屋に入って犯罪的行為をするのはまあ理解不能だけど変質者としては普遍的な部類に入ると思う。絶対ダメだけどね。だけどこの犯人は違う。深夜、女性が寝静まっている部屋に侵入し、何か嗅がせて彼女を深い睡眠状態にすると、自分は裸になってシャワーを浴び、そのまま裸で女性の隣になるという変態度がブチギレマックスにキモキモしい男だった。いや、まだ刃物を出すとかの方がわかりやすいわ。わかりたくないけど。こんな変態相手にどうすりゃいいんだよ、マジで。 このストーカー男の変態度に唖然としすぎて本当に内容が入ってこなくなるところだった。危ない。 だけど個人的にこの映画で一番怖かったのは、この男と邂逅するシーンじゃなかったんだよ、、 一番怖いのは序盤のドアガチャ!! 深夜に自分の部屋のドアノブが乱暴にガチャガチャされたら、私だったらベッドから飛び上がるくらいに驚くし普通に怖い!友達に連絡する?警察に通報する?そんなの多分できない。心臓がドキドキしすぎてそれどころじゃないと思います。この映画の中で唯一、自分にも起こりうるホラーシチュエーションだったから余計に怖さが倍増する。ホラー御用達の閉鎖された精神病院とか、深夜の学校とかって絶対自分では行かないから。近寄りもしないから。自分の部屋で知り合いが首を括って死んだこともないし、友人が誘拐されて残虐動画がおくられてきたこともない。 でもこのドアガチャはリアル。怖すぎる。 部屋に誰か不法侵入しているかも思って防犯カメラを仕掛けて、帰宅後にそのカメラを確認したらやっぱり侵入者がバッチリ写ってた!通報する前に最後まで動画を見ると、犯人はベッドの下に隠れ、こわーと思ってたら動画の中のドアがガチャガチャ。なにごと?と思うと自分の帰宅シーンが流れ、だとするとまだこの部屋に、自分が座っているベッドの下に犯人が、、、?のシチュエーションはホラー表現としてはありがちで、彼女がカメラを仕掛けた時からこうなるって想像ついたよ、、都市伝説的なあれね。 韓国のホラーって日本に近くて、静かに淡々としているけど要所要所がちゃんと怖い。 確かにオートロックってそんなに万能ではないのかも?と思った映画でした。
2021.06.03

超常現象を調査しているリアリティー番組「グレイヴ・エンカウンターズ」のプロデューサー、ランス・プレストン(ショーン・ロジャーソン)と撮影チームは、1960年に閉鎖されたコリンウッド精神科病院にやって来る。実はこの番組はただのヤラセ番組で、一行は誰も霊の存在など信じていなかった。視聴者を怖がらせる映像を撮るためいつも通りに演出するが、そのうち本当の超常現象と思われる出来事が発生し……。怖いものを見たい時にしっかり怖いホラー!この映画って多分、予告編が有名なホラーの金字塔的な位置にいると思います。あの、壁を向いている女性が唐突に振り返ってぐわっとなる、いわゆるジャケットのシーンは実に有名。有名のはずなのに、ちゃんと身構えてたはずなのにしっかりこのシーンでビクってなりました笑怖いものはどうあがいても怖い。ただ、個人的にこの手のモニュメント映画は撮影手法としては苦手。臨場感を出すためか画面がうろうろするし見にくい。その上、終盤になればなるほど、「お前たちのプロ意識すごくね?」と思わずにはいられない極限状態にあるはずの演者たちが果敢にカメラを回しているので、むしろリアリティが薄れるというか、、この手法を維持するために齟齬が生まれてそれがまた緊張感を損なうというループがもったいない。どの映画とは言わないけど、一転コメディになってしまうこともあり、、(意味深)物語は冒頭から、リアリティー番組「グレイヴ・エンカウンターズ」の撮影と銘打って始まります。しかしこの心霊番組はプロデューサーのランスが演出を主導するやらせ番組。小さな事実を大きな恐怖のように装い、偽の証言やら霊媒師で呪われた精神病院を作り出すとんでもないクルーたち。しかし実際は彼らが思っていた以上に、この場所は恐怖の巣窟であり、最初は遊び半分だった彼らも現実に起こる恐怖の数々に戦慄するのであった、、実話のように綴られていますが、もちろん実話ではありません。まあ霊達からしたら、あんな煽られ方したら絶対生かして帰すものか!と意気込んでしまうのもわかります笑とことん怖がらせてやる、と言った連帯感が本当に凄まじい。あの手この手でクルーたちを恐怖のどん底に突き落としていく様はお見事。偽霊媒師のリクエスト通りにしてあげたり、霊たちにも優しい一面があるんですね(棒読み)ホラーは理不尽であればあるほど恐怖が増すのですが、ランスをはじめとするクルーたちに同情はできないので、全編を通してこれは仕方ないよなーといった気持ちで観れました。感情的な恐怖ではなく、表現的な恐怖が多いです。脅かしパターンが多い。ランスたちがもう少し霊たちに敬意を払っていたら、こんなことにはならなかったかも?扉を叩いたのは彼らで、霊たちはそれに答えただけです。少し手荒ですけど売られた喧嘩は買わないとね!ちなみに続編もあるみたい。そちらもさぞ恐ろしいホラーなんだろうな(意味深)
2021.06.02

舞台は山の上のロッジ、登場人物はワケありの7人の男と1人の女。人種も境遇もバラバラの8人、わかっているのは全員が嘘をついているということだけ。犯人は? 動機は? 8人の本当の関係とは? 実はオープニングから、すべての会話と視線、何気ない身振りに、巧妙かつ緻密な伏線が仕掛けられている。タランティーノ印のブラックな笑いと過剰なアクション満載の謎解きに挑め! 無駄に長いけどそこもある意味タランティーノ節の密室劇! こちらもNetflixで偶然観た映画。無駄に長いし時代背景からそれぞれの身なりは映えるものではないし、映画の半分以上が密室で代わり映えがない。しかも現代だったら顰蹙買いまくりの差別のオンパレード。でもこれがこの時代の本音なんだから、下手に隠したりオブラートに包むよりかは意欲が感じられて嫌いじゃない。 物語は賞金稼ぎの黒人と同じく賞金稼ぎの白人が雪の中で出会ったところからはじまる。吹雪を避けるために立ち寄った紳士服店にはすでに先客がおり、どうやらその中の誰かが二人が連れてきた賞金首の女を逃がそうと企んでるらしく、、といった内容。前情報なしでみたから、紳士服店にはちょっと立ち寄るくらいかなと思ってた。ここが舞台なのに笑 ウォーレンが撃たれて場面転換し、日付が遡って実はこんなことがありました、、の切り替え部分が良き。ウォーレンたちが来る前にこのお店でなにがあったのか、誰が犯人で目的はなんなののかがこれでもかと明確になります。分かりやすい。 各章で分けられたベイブモデル(と勝手に命名してる)を採用し、途中タランティーノのナレーションまで入る謎っぷり。スプラッター多めで女賞金首は常に血を出してるし、盛大に血反吐を吐いて死ぬシーンも顔面が吹っ飛ぶシーンもあり。(タランティーノだから仕方ないね)映画のタイトル通りで出てる8人全員が悪!ヘイトたまりまくってて笑えるくらいです。でも嫌いじゃない。 全員死んで物語が終わるあたりも潔くていいと思う。直接的な描写はないけど、手負いのウォーレンとマニックスはたぶん生き残れないんじゃないかな。互いを差別し合って反目してた黒人と白人が最後に残って協力し合う。でもその協力の内容が賞金首の処刑っていうバイオレンスマックスで誰もが羨望してたリンカーンの手紙とは程遠い感じがああ無常。まあ二人がそれでいいならいいのか笑 ただ唯一、この映画の良心というべき御者のOBが、死んだのがねー ジョンルースに無茶ぶりされてもいうことを聞き、みんなのために紳士服店からトイレまで縄を張り、人種差別もしない。作中マニックスにして「お前たちの10倍いい奴だった」と言わしめたOBがある意味、映画の癒しだったよ。 ほとんど悪のなか、その内訳に入らない数少ない一人が彼。 俳優陣は安定のサミュエルL・ジャクソンが黒人の賞金稼ぎ。憎たらしいけど人の心理を理解してる賢い奴。差別する白人もそうでない人も、唯一共通しているのが奴隷解放宣言をしたリンカーンに一目置いているということ。ここを突いてくる心理が巧みです。対して白人の賞金稼ぎはカートラッセル。見た目に反して作中一番純粋だったんじゃないかな?殴られまくる賞金首はジェニファー・ジェイソン・リーというあまり知らない(個人的にはね)女優さん。事あるごとにジョンルースに鼻を折られてもめげずに憎まれ口を叩く体当たりっぷりがお見事。あとはライ・トゥ・ミーのティムロスも、ここに出てるんかい!ってなった。 人によっては差別や表現に嫌悪感を抱くかも知れないけど、これはあくまでフィクションですってことで
2021.06.01
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