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ふた月ほど前のある日、レイトは帝王学を身に着けるため日課として基礎知識を学んでいた。時間も終わりを迎えたころ、レイトは疑問を口にする。「叔父上のなさっていることは本当に正しいのですか?」「どうしたのです?何か気になることがおありですか?」「はい。皆が豊かに暮らせているのか、少し気になったので・・・」教育係がなぜそう感じたのか尋ねると、「日々、窓の外を見ていると確かに華やかになった街並みがあります。 その一方で遠くの方では色がなくなってきています」その答えに教育係は感心する。「よく観察なされていますね。ですが、皆を一気に豊かにすることなどできません。 歯がゆいことではありますが、どうしても順番をつけねばならないのです」それに対して、レイトはさらに付け加える。「・・・昔から眺めていますが、くすんだ町が華やかになったところはありません」「街を豊かにするということはそうそう容易いものではないのです。 時間をかけてゆっくりと根付かせなければならないものですから」そして、このことがアルケデニックにも伝えられる。「なるほどな、やはり兄の子。というわけか」「どうやら最近は父王様の思考に似始めてきているように思われます」「ふふふふ・・・、そんなに外が気になるなら、行かせてやるとするか」その言葉に部下は再確認を求める。「外、に準備させろ。失敗は許されん、とな」部下が出ていったあとひとり呟く。「今更この国をくれてやる馬鹿がどこにいる」外出許可が出たことにレイトは驚き、「本当に外に出られるのですか?」「はい。いつも外を見られておられることを申し上げたところ、許可を頂きました」レイトは喜んでいたが、同時に不安にも駆られる。「日にちがあまりないように思われるのですが・・・」「準備には問題ないかと。もちろん護衛も付き従います」レイトの不安はそれだけではなかった。もともとの予定で3か月後には同盟国での懇親会が数日開催される。そのとき外出するだけに、今回の急な外出が違和感を漂わせる。(何もなければよいが・・・)という思いが無残にも打ち砕かれたのは言うまでもない。
2017/04/30
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レイトについての審議が始まる。情状酌量の意見が多く出る中、疑問を唱える者がいる。「状況は聞いたものの、それが本当に事実であると言い切れますか?」「証拠がほしいというが、あの部屋での状況が確かな証拠と言えるであろう」「しかし、人一人が死んでいるという事実がある以上、 無罪となれば国の法律が根本から揺らぐ可能性があるのでは?」議論を尽くしても結論が出ず、混沌とし始めたころ、アルケデニックの一声により、無罪へと舵が切られようとする。「そもそもは私の人選ミスから事が起きている。これをもって無罪としてはもらえぬか?」だがそれに対して、「恐れながら・・・」と意見する者が出る。「誠に恐れながら、罪を罪で相殺なさるのはいかがなものかと・・・」「確かにそれはもっともなことですね。であれば、同等の罪で手打ちとなさるのがよろしいかと」これにより判決の大枠が固まり、詳細が決められていった。そして、判決は直にレイトに届けられる。「レイト様、判決は二週間の謹慎と相成り、安心いたしました」「謹慎、か。どういう経緯で決まったか聞いてるか?」「はい。ガディーバ殿の進言が契機になった、と」レイトはそうか、と小さくつぶやいた。ガディーバは数日前から任務に携わっており、すぐには帰ってこられる状況ではなかった。だが、それでもなお帰ってきたということはかなり無理をして終わらせた、ということだ。「隊長には礼を言わなければならないことばかりだ」「此度のことをよほど気になされていたようで、謹慎を終えた時には改めて謝罪申し上げたい、と」まったく、あの者らしいな。とレイトは少しだけ笑った。「レイト様、このような時にあれなのですが・・・」「あぁ、そのことについては任せる」わかりました、では失礼いたします。と執事は出ていく。一人残ったレイトは思案に身をうずめる。(正直、謹慎で済むとは思ってもみなかったな。 この件で王位継承権の剥奪もあるかと思ったが・・・、そもそも思い違いなのか?)(いや、そんなことはないはず。今まで感じてきた違和感からしても、 このままで終わるとは思えない・・・)レイトは静かに目を開いた。
2017/04/23
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ヨーディは門番と別れ、家へと戻っていく。その途中、報告しようと思い方向を変える。景色を思い出しながら少しずつ進んでいくが、近づくにつれ、人が増えて騒がしくなる。記憶とは違う雰囲気に不安を覚えながら歩いていくと、騒がしい音の発信源が見えてくる。この近くで誰かが争い事を起こしている。それも一人二人ではなく、大人数の声が聞こえる。武器が交わる音があちこちから聞こえ、物の壊れる音も激しくなる。そこはまさに目的地で起きている出来事だった。目の前の光景に愕然と立ち尽くす。それを解放したのは・・・、「お主、なぜここに・・・?いや、それよりここは危ない」安全なところまで下がっていくと少し気が落ち着いた。「いったいこんなところへ何をしに来た?」「あ、いや。なんだか騒がしいと思って・・・。ところで、た、隊長こそここで何を・・・?」ヨーディはできるだけごまかす。ガディーバは追究することないまま、聞かれたことを答える。「ここはあの襲撃事件を引き起こした連中のアジトになっている。 取り押さえるため、こうして強硬手段に打って出た」(あいつらが襲撃事件の犯人?だまされたのか・・・?)ヨーディがどうして犯人の居場所が分かったのか聞くと、「民からの情報」と返ってきた。あまり聞きすぎるとさすがに追及されるだろうと思い、詮索をあきらめ退散することにした。「わかっているとは思うが、気をつけて帰るのだぞ」ヨーディは会釈で返してその場から離れる。凄惨な光景が目から離れないまま、気もそぞろに家へと帰る。いつもと変わらない荒れた家に着く。一息つかせて中に入ろうとしたところで、「お前も生きてたのか、無事で何より、だな」「ビルク・・・。お前らだましてたのか?」そうなるな、と覇気なく答える。そのあと袋をぽんと投げ渡してくる。「取引は中止だ。換金した後だから現物はもうない、勘弁してくれ」袋の中には金貨が入っているが、思っていたよりも少し多いような気がした。「じゃあな、用はそれだけだ」立ち去ろうとするビルクを呼び止め、どこに行くのか聞くと、「ま、どうにでもなるだろ。生きてさえいればな」ヨーディはビルクが見えなくなった後もその場にとどまっていた。ふと我に返り、家に入る。家の中でもぼんやりとした状況は続く。
2017/04/16
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一方的に話を進められてガディーバは言うことがなくなる。「実際に審議してみなければどうなるかわからんがな」と言い終えたところで、思い出したように付け加える。「襲撃してきた奴等のアジトが分かった。準備が整い次第、制圧に向かわせる。 貴殿にも同行願えぬか?」「承知仕りました。では、直ちに準備いたします」部屋を出たヨーディたちは城内を歩いていた。結局は隊長一人に任せてしまったことに不安は残るが、後は判決を待つしかなかった。そのとき、「おい、そこのお前」と呼びかけられる。聞こえてきた方を見ると、二人組の男が立っている。その片方が手招きをしながら、「お前が例の・・・」と覗き込んでくる。なぜわかるのか、と疑問に思ったが、城内では噂話が広まっていた。「あーあ。どうせ来るなら、最低限の役割はしてくれねぇと・・・」「おい、やめとけ」「んだよ、このままでいいと思ってるのか?」「そう言ったって、そんなこと民にさせるものじゃない」「でもおかしいんだよな、情報局ならそのくらいやりかねないと思ったんだけど」「それについては情報を得ている。護衛隊長が持って行ったんだろ、な?」と話を振られてうなずく。「あの人、頭の切れるタイプには見えねぇんだけど・・・。丸め込まれて終わりだな」「まぁまぁ、レイト様の無事が第一、そうだろ?」「それじゃ甘ぇって!こんなチャンスめったにあるもんか」「だから、それを民に押し付けるなって。もう行くぞ、引き止めて悪かったな」そう言い残して引っ張りながら遠のいていく。ヨーディはただ黙って見送っていたが、さっきの二人組の話を繰り返し思い返している。レイトが無事というだけでは満足とは言えない。さらに罪を認めることで、同時にアルケデニックの任命責任を問うことができる。だが、門番もそのことに感づいたのか、こっちを向いて説得し始める。「ならんぞ。事実を捻じ曲げてまで罪を被ってはならん。 そのようなことをして、レイト様がお喜びになると思っているのか? それに、罪を着るようなことになれば、所持品は没収だぞ」せっかくいただいたものを使わず、手放してしまうということを考えろ、と付け加えた。それを聞いてハッとする。思わず剣を握りしめ、思いを整理する。「今日はおっさんに助けられてばっかだな。ありがとう」「礼など要らん。判決はすぐに出るものじゃない、もう帰ろう」
2017/04/09
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用が済んだのであればお引き取りください、と調査官は退室を促す。だが、「なぜこういう事態になってしまったのか、しっておかねばならん。 任務における人選は考えたうえでのものだった。 それを破られたとあっては、私の責任であり、原因を探る必要がある」調査官はガディーバを早く退室させようとして思わず口を滑らせる。「この者は現場にいたわけではありません。お役には立てないでしょう」「そうなのか?では、何を聞いているのだ?」調査官は、もちろんその後のことです。とごまかしてももう通用しない。代わりに返答を求められたヨーディが成り行きを全て話すと、怒りで震え上る。「このような大事を隠すとは何事か!もうよい、この件については任せておけん。 ・・・お主にはまた礼を言わなければならないな、感謝する」そう言い残して勢いよく出ていく。ヨーディは明け放たれたままの扉を見ていたが、そこから門番が現れ、一緒に出ることになった。それからしばらくして、気を取り戻した調査官たちは、「確か隊長殿は任務に赴いていたのではなかったか?」「あぁ、国境沿いまで行っていたはず。こうも早く帰ってこられるものなのか?」「一報を聞いてから、すぐさま任務を終えて飛んで帰ってきたらしい」ガディーバはある部屋へと入っていく。「隊長殿、もうご帰還なされているとは」挨拶もそこそこに中へと進んでいく。「おっと護衛隊長殿、任務達成のご報告であれば順番を待っていただきたい」「何をのんきなことを申される?襲撃事件のことは知らぬのか!?」「これはご無礼を申しました。ご容赦を」そこへ奥の方から声がかかる。「お前は戻れ」「ガディーバ護衛隊長、貴殿のおかげでレイトの命は守られた。 犠牲となった者たちには感謝の言葉が尽きぬ」「そう思っていただけるのであれば、何故にこのような事態になっておられるのか?」「私も今回のことには驚かされた。しかし、人の命を奪ってしまっては・・・」「そこが解せぬと申しているのです!あの者を遣わしたのはまさにあなた様でしょう!」ガディーバは勢い良く言い放つとアルケデニックは立ち上がる。「よくぞ申してくれた。それでこそ、真の忠臣!」ガディーバは不意を突かれて呆然となるが、アルケデニックはさらに続ける。「これは私の任命責任であることは明らか。だが、誰一人として指摘する者がいなかった。 これではこの国をよくすることができぬ!」アルケデニックはこの件についての意見を述べる。「あくまで私個人の考えだが、この件についてのすべての罪を不問としたい」
2017/04/02
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