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俺の役目は「独り身の子供を捜して様子を見守ること」だった。相手が心を許し始めてから次々に仲間に引き入れる、というのが狙いだ。ある日、いつものように見回っていると、見かけない子供がうろうろしている。ビルクは慣れたように「お前、迷子か?どこから来た?親は?」と話しかける。「・・・んなもん、いねぇ」と弱弱しい声が聞こえる。全身はボロボロになっているだけに、余計に眼光の鋭さだけが際立っている。「食いもんが欲しいなら、ついて来い」ビルクは返事を聞かないまま歩き始める。子供はそろそろとついてくる。それでもかなり警戒はしているようで、何も聞いてはこないし、話すこともしない。かろうじて名前だけは答えた。「ヨーディ」と。それから5年が経つ頃、事態は慌ただしくなる。「ついに計画を実行に移す。捕まえられないと判断したときは逃がしても構わん。 その場合は護衛の奴らからできるだけ遠ざけろ。土地勘ならこっちが有利だ」奇襲は成功。あらかじめ準備しておいた痺れ薬を使って、護衛の動きを封じた。それでも身を挺した抵抗により、レイトは逃げていく。「順調だな、もう少し時間を稼いでから王子を追うぞ」地に伏した護衛たちは悔し涙を浮かべる。「命ある限りなんとしても、お守りせねばならぬのに・・・」次第に痺れがなくなり、立てるようになるが、まだ膝に手をついている状態だ。そのとき誰にも知り得ぬ出来事が起き始める。「そう慌てるな。まだ寝ておけ」上からふっと聞こえたかと思えば、再び地面に体を委ねていく。ただ違うのは、もう二度と動くことができないということだった。想定内の結果に終わり、一同は安堵する。「計画とは違う流れにはなったが、これはこれで悪くはないだろう」そして、「間違いなく奴らも動く。警戒は怠るなよ」満を持してそのときは訪れる。偵察からの連絡により、間もなく行軍が始まる。「敵は我が護衛部隊を抹殺するほどの力を持っている。 数で押し切れると思うな、全力をもって我が国の威信を示せ!」リーダーは改めて指示を出す。「来たか。では、皆それぞれ動いてくれ。 そうだ、ビルク。お前には別件を頼みたい、詳しくはあっちで話す」だが、聞いていたこととは全く別の現実が待ち構えていた。アジトを移すというのは嘘で、死を覚悟で迎え撃っていた。現実を知ったビルクは放心状態で制圧されたアジトを遠くから見ていた。ひとり残された意味を見つけようと頭がいっぱいになる。ふとよぎったことはヨーディだった。(ひとりじゃない?のかもな)
2017/09/24
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ヨーディは慌てて方向転換して菓子泥棒の後を追う。(ただ飯、ただ飯・・・。ただ飯っていうことだよな?)一抹の不安を抱えながら、最後の最後には抜き去って食堂に駆け込む。「なんだい。走ってこなくたってよかったのに」「いや。喰われちまうし・・・」「死にそうな顔してたくせに、まだ走れるじゃん」この日以来、ときたま現れては邪魔され続けた。ヨーディは思い出してみたが結局、印象は変わらないままだ。そこへウェントソンが現れ、「まだ部屋の外にいるのか。ん、もう終わったのか?」とりあえず中に入ると開口一番、「孫ではあるが、見立ては間違えておらぬはずだ」「あ?孫?」「ちょっと、おじいちゃん」とそれぞれ反応を示す。「なんだ?そのことすら話してないのか!?とにかく、ミリィ。あとは頼んだぞ」ひとりで話を進めて、勝手に出ていく。「で、お前が軍略ってやつを教えてくれんのか?」「うーん?教えてもらうには、それなりの礼儀がいるはずだけど?」ヨーディは素直に教えを乞う。不毛な言い合いよりも話の先を優先する。ミリィは5×5に区切られた紙を取り出し、その上に白と黒の石を5個ずつ転がす。「5ならべ」というルールを説明すると、「軍略なんて固い説明するより、実際に感じた方が分かりやすいでしょ?」何回かやってみるが、案の定、全く勝てない。「くそっ、ナナメばっか狙いやがって」ヨーディの愚痴が止まらなくなったところで、ミリィにも飽きが来る。「一人でやれば勝てるでしょ」ヨーディは一人で石を動かし始める。向こう側から自分を見てみることで、自分の手を塞ぐ一手が見え隠れする。(なんか、俺のやり方ってわかりやすい?)「ビルクと言ったか、面識はないと思うが、なにゆえわしを探している?」「エインテルという人から探してくれと頼まれました。これに見覚えはありませんか?」例の鍵をアロギラの前に差し出す。「わかった。向こうで話そう」場所を移して改めて話をし始める。「エインテルは今どうしておる?」「亡くなりました。2年前の襲撃犯制圧・・・」ビルクは声を詰まらせる。「もしやと思うたが・・・。かようなことを起こすとは」「なぜあの人は自分の命を捨ててまであんなことを?」「その前に今までの経緯を教えてくれぬか?」そう言われてビルクは「師匠と出会ったのは、7年ほど前に拾われたときです」借金を理由に一家離散した、とだけ言って話を進める。「死にたくなかったら、俺の役に立て」それが最初の言葉だった。
2017/09/17
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とある、隠された場所ではリグラーの声が響いている。「おいおい、足止め役が早々と帰って来てるっていうのは、どういうことだよ?」「予想以上に敵が多かったんだからしょうがねぇだろ。そもそも指示通りには変わりねぇし」「ちっ。おかげで中途半端に終わったじゃねぇか」「十分時間は稼いだ。どーせ、遊んでただけだろ」図星を指されてリグラーは余計に喚いた。「うるさいぞ。で、他の部隊はどうなってる?」「ほとんどは退却を始めております。ただ、セルドモーデからの連絡がまだではありますが」「あいつは慎重すぎるからな、判断が遅れてんじゃね?」「兵力を失うわけにはいきません。念のためであっても救援は送るべきかと」「ここからの方が早いな。動ける者は救援に向かえ」すぐさま準備が始まる中で、終始言い合いをしている二人に指示が飛ぶ。「お前らが揃うとロクなことにならんな。これからは別々の任務を与える」「これが先日起きた戦いの概要だ」「結局、守り切ったっていう話っすよね?」「そういうことにはなるがな・・・。お前にもやってもらわねばならんことが増えた」その内容とは、軍略を学ぶことであると。「戦場に赴けば、一瞬の判断で状況が変わることが多々ある。 間違えない選択をするためにも、必要なことだ。早いことに越したことはないからな」ヨーディは戸惑う。何しろ今でもまだ課題に追われている状態だからだ。「まぁ、そこのところはお前次第。でも、全くないというわけでもないだろ?」「そのうち人を寄越すからな」と言ってウェントソンは出ていく。後日、ヨーディが部屋に戻ってみると、誰かが立っている。「なんだ、お前かよ。また邪魔しに来たのか?」「邪魔・・・。こんなんじゃやる意味あるのかな?」「どういう意味だよ?」と聞けば、「最初から思い出してみれば?」と返ってくる始末。最初からと言われて仕方なく思い出してみる。最初とはあの菓子泥棒事件だ。次の出会いは懇親会が行われていた頃になる。「おーい、お昼ご飯できたって」ヨーディは何を言われたか聞き取れなかった。しかも相手はあの菓子泥棒、たいした話ではないだろうと素通りしようとする。「じゃぁ、いらないってことで。全部食べちゃおっと」「食べる」という言葉だけが耳に引っかかった。「待て、食いもんがあるのか?」「食堂に準備してあるって。早い者勝ちでいいよね?」そう言い終える前に駆け出していく。
2017/09/10
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リグラーは傷口から流れる血を見ながら、「なんでわかった?結構うまくいってたと思ったのに」「気づけなかったことに腹立つくらいだ。近づいて来てるはずなのに気迫が感じられなかった。 そんなときに敵に背を向けて手を差し伸べてくるバカがいりゃ、さすがに気付く」「ん~。意外と冷静なんだな。じゃあ、もっと楽しませてくれねぇとな」リグラーがニヤニヤしながら剣を振り回してくる。荒々しい剣が無差別に襲い掛かる。(イキがってるだけあって、手抜きの状態でこの強さかよ・・・)「あー、もうダメだな。疲れ切ってやがる」そのとき、別のところで喚声が上がり始める。「なんだ、どうした?」「敵に老将が現れ、味方がやられています。どうか、ご助力を」「老将?もう少し遊べるといいなぁ」リグラーが踵を返す。その瞬間を見逃すまいとビルクは狙いを定める。「代わりにこいつを殺っとけ。それぐらいできるだろ?」リグラーはビルクを目で制してその場から離れていく。リグラーの進んでいく先に問題の老将が見えてくる。老将は鎧を身にまとっているが、その鎧もまた随分と年季が入っている。「あれ、か。正規軍じゃねぇな。引退じじいの道楽ってとこか」老将の一振りは重みがあり、的確に敵を薙ぎ払っていく。しかし、疲れによって少しずつ身体と気持ちにズレが生じ始めていく。その様子を観察していたリグラーのもとに別の情報が飛び込む。「敵増援・500人、こちらに向かっているとのこと。あと10分程かと」「おいおい。予定よりずいぶんとはぇーじゃねぇか。しゃーねー、捨てる」迫り来る波が一気に引き返すように戦場が静まり返っていく。そのあと、向こうのほうで人の波がぶつかり合う気配がする。それによって、ようやく安堵感を得られた。あちこちで歓喜の声が上がっていく。「あんた、この町に何の縁もないのに、よくやってくれたな」「まぁ、ちょっと聞きたい用があったもんで・・・」「あぁ、なんか言ってたな。だれか探してたんだっけか?」話をしているところで向こうの老将たちの話が聞こえる。「おー、アロギラさん!まさかこんなにすごいとは思っておりませんでしたよ」ビルクはすぐさま反応して探し始める。「探してるのはあの人やったんか。ってあの人そんな名前やったんか」
2017/09/03
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