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重みのある扉が開かれ、その奥には見慣れた姿があった。「エインテル・Y・オルディックを連れて参りました」レイトは表情を変えることなく、よろしく頼む。とだけで挨拶を済ませる。「ウェントソン、時間がないんだ。すぐ手伝ってくれ」ウェントソンは返事をしたあと、ヨーディに「お前は部屋に戻ってくれ。仔細は追って伝える。ご苦労であった」来たばかりのヨーディはにべもなく追い返される。だが、部屋の中ではもう少し話が続いた。「あれだけでよろしかったのですか?」「これから嫌でも顔を合わせる時はあるだろ?問題ない」「まぁ、そう言われると思い、説明はあらかじめしてはおきましたが・・・」「さすがだな。それに、余計な疑いをかけられるのは今後に影響するからな」後日、再び呼び出される。だが、そこには見たこともない人がいた。ウェントソンの口から用件が語られる。「この者は親衛隊長・ディエイズ殿である」ディエイズと呼ばれた者は軽く首を動かしただけで、腕組みしたまま立っている。(親衛隊長?そんな人がいるのか?)と思っていると、「実はな、この前の襲撃を受けて急遽設けられたところでな。今しがた選任されたのだ」「そこで、お前は今後どうしていきたいのか?それを聞いておこうと思ってな」「どうしたい、か・・・。と言われてもレイト、さまをお守りしたいとしか・・・」ヨーディは奥に座っているレイトをちらりと見たが、レイトは何かを一心に見ている。「そうか。で、あるならば、ディエイズ殿にお願いするしかあるまい」ヨーディの今後を考えるならば、この方針が一番近い道だという。そのとき奥からレイトの声が聞こえる。「5年後、お前が望むなら親衛隊の入隊を目指せ」5年後とは成人する年である。それを聞いたディエイズは、そこにあった紙に何かを書いて手渡し、「一日でこれらをこなせるようにしろ。まずはそれからだ。 ただし、いちいち監視するつもりはない。やろうがやらまいがお前の勝手だ」そこには果てしないと思うほどの運動量が簡単に書き連なっている。固まっているヨーディに対して、「お前がやることはここにはない。いつまでも邪魔をするな」ヨーディは慌てて部屋を出てとぼとぼと歩き始める。何かと頼りにしてきたトワールとクイントももうそれぞれの任務に携わっている。「しっかりやってくれよ。お前の出来が悪いと、選んだ俺たちも足元みられるんだからな?」最後にかけられた言葉がヨーディを走らせ始めた。(ここまで来てるんだ。前に進むしかねぇよな)
2017/07/30
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しばらく経っても誰もしゃべらず、動かない時間が続く。ヨーディも余計なことはするなと釘を刺されているため、じっと我慢している。そんな時おもむろに扉が開き、ひとり呼びつける。そしてまた、扉が開いてひとり呼ばれるが前に出ていった者は戻っては来ない。それからついに「次はそこの者」、ヨーディが呼ばれる。部屋の外に出ると、もう一人いて同じように顔を隠し、風貌は全くわからなかった。ヨーディを挟むようにして歩いていくが、どこへ向かっているのか見当もつかない。それでもどこでレイトが見ているかもわからず、歩いているだけでも疲れてくる。散々歩き回ったように感じたが、それほど時間も経っていないし、結局どこにレイトがいるのか見つけることができなかった。「では以上だ。そこの部屋に連れの者が待っている」言われた部屋に行くと、ウェントソンがいた。どうであった?と聞かれたが、わからないと返事をして状況も伝えた。それを聞いたウェントソンは、「うしろの者についてなにか感じる者はなかったか?」ヨーディにとっては見慣れないところを歩いていたこともあり、うしろについての印象は最初の時だけだった。「わしの個人的な予測だが、そのうしろの者がレイト様であるだろう」ヨーディははじめ驚いたが、考えれば考えるほど納得できるようになった。なにはともあれ、結果を待つしかない。一方で当事者たるレイトは、ひとり悩んでいた。(まさか、あの場所にヨーディがいるとはな・・・)ヨーディがいることをわかったうえで、どうするかを決めかねている。(このままあいつを巻き込んでいってもいいのか?)あの場になぜいたのか、その経緯を知らないレイトにとって、やはりヨーディの姿はレイトを勇気づけるものであった。(どういう経緯であれ、生半可なことではあの場にたどり着くことすらできない。 そう考えれば、もうすでにあいつはあいつなりの覚悟ができている、ということか)「決めたぞ。今回は一人だけでいい。その者は・・・」伝え聞いた使いが慌てて駆け出していく。その報せを受け取ったのは、ヨーディだった。大きく息を吐いたあとでよし、とつぶやいた。使いはヨーディが落ち着くのを確認してから、「それでは、レイト様のお部屋にご案内いたします」ヨーディはウェントソンとともにレイトの元へ向かった。
2017/07/23
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結局、クイントは課題には届かなかった。「んじゃ、行くか。もう少し体力面も考えた方がいいんじゃねぇか?」「そっちはお前に任せるわ。途中でへまして死ぬなよ」「そっちこそしくじんじゃねぇぞ」その先の話は食事中も続いた。「入隊してから配属されるとこっていったら、やっぱり国境隊になるのか?」「だろうな。最近は落ち着いているらしいけど」北国・バフタールとの国境沿いには最も多くの人員が割かれている。そののち数年が経てば他に移ることもあるようだが・・・。いつ起きるかわからない争いに危機感を感じながら、日々の訓練に汗水流すことは身体的にも精神的にも大変なことだ。だから、長年にわたって国境隊として務めることはそのあとの出世にも影響をもたらす。「ま、機を見て戻ってくるつもりだけど。お前はどこの支部だ?」「それはまだ決まってはないが、支部もいろいろあるからなぁ」ここで話が一区切りつくと、「そうだ、聞いておきたいことはねぇのか?」と言われたヨーディは、そもそもこのことはレイトも知っているのか?と聞いた。が、その答えは知らない、ということだった。理由として、現在謹慎中のレイトの傍らには、情報管理局の手の者が入っている。面会時の会話は常に聞き取られているし、たとえ謹慎が解かれた後でも、儀式が終わるまではそのことについての情報を得ることは、儀式そのものを中止させる可能性がある。「もとからお知らせするつもりはない。知っちまうと、逆に見失うかもしれないからな」数日後、レイトの謹慎が解かれ、ついに儀式の日程が決まる。ヨーディにとっては特に準備することもなく、決められた生活が当日まで続いた。「オルディック。準備はいいな?いや、その前に・・・。わしの名前は忘れてはおらぬだろうな?」「え?えーと・・・」と声を詰まらせるヨーディの後ろで二人が思い出したように顔を見合わせる。と同時に激怒の声が吹きあがる。「貴様らっ!」トワールたちに説教をぶつけ、それが静まったのち、「わしはレイト様の執事、レブア・ウェントソン。幸運を祈っている」この前と同じようにウェントソンに連れられて、とある部屋に入る。そこには白い布で覆われた三人が座っている。ヨーディも見よう見まねで掛けられている布に全身を包み椅子に座った。そのあと、二人が入ってきたところで全員が揃ったようだ。
2017/07/16
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クイントによる講習は始まったばかりだ。西側には山々に囲まれた小国・グラッカ王国、そして北方に好戦的なバフタール、直接国境は接していないものの、西海岸一帯を治める大国・イグリスがある。昔はバフタールとの戦いが激しかったこともあり、ゼリクトアと同盟によって、戦力を北側へ集中させることができた。そのとき以来、ゼリクトアとの交流が今も続いており、近々行われる懇親会もその一環となっている。「じゃあ、レイトもその国に行くってことか」「また延期になったっていう話は聞いてないな。予定通り行われるはずだ」「それって、俺も行くことになるのか?」さぁ、どうだろうな。と言いつつも、「おそらく留守番だろ」と予測する。その理由として、行ったところで何もすることがない、だろうと。懇親会は王家に生まれた子供が10才になった時に行われているもので、相手国に訪問して学習することを趣旨としている。この説明を終えたところで、トワールが帰ってきた。「どうだ、調子は?って、やっぱ苦戦してんな」あ、お前・・・。と言いかけるクイントを手で制し、「わかってるって。ほら」と何かをヨーディに投げてよこした。それはさっき奪われたあの桃華だ。トワールはそのときの状況をクイントに説明した。「ふーん。話はわかったけど。それとこれとは関係ねぇだろ」「だから、わかってるって。そう言うだろうと思ってたし。 晩飯はまとめて面倒見てやるよ。ただし・・・」ただし・・・、のあとにはこう続いた。「俺の課題をクリアできたらな」その課題とは、腹筋・腕立て・スクワットで、「10本ずつ10セットで手を打ってやる」わかった、仕方ないな。とやろうとするクイントに、「それはヨーディ用だ。お前は50セットな」「おい、軍隊訓練並みじゃねぇか」「そりゃ、当然だろ。もうすぐ入隊するんだから」その言葉にクイントは表情を変え、「お前にはまだ言ってなかったっけ?俺は通信部に行くことになった」「この前、学力検査しただろ?それで引き上げられたってわけだ」なんかむかつな、と言いながらも口元は笑っている。「課題は変えねぇぞ。はやくやり始めた方がいいんじゃねぇか?」二人はすぐに取り掛かるが、ヨーディは何とかすべてをこなした。「へぇ、思ったよりやるな。おーい、はやく飯行こうぜ」「うるせっ、すこし、だまってろ」
2017/07/09
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いきなり懐に手を突っ込まれ、身を引こうにも全くあきらめようとしない。くすぐられるようによじれていくが、ある時ふっと手が退いた。その手には袋が握られている。それは、レイトから渡されたあの袋だった。(そのなかにお菓子なんか入ってたっけ?)すかさず中身を漁り、お目当てのものが見つかった。引き上げられた手には小瓶が収まっている。「やっぱりあるじゃん。これ、桃華だよね?」「なんだお前、そんなものもレイト様からもらってたのか」桃華とは、この国で有名な砂糖菓子だという。「知らなかったんだから、もらってってもいいよね?」同意を得る前にひとつ口にする。甘いほほえみを浮かべて口の中で転がしている。(っていうか、なんで見つけられたんだ?匂いなんかしねぇだろ)「じゃぁね」と飛び去ろうとするのを慌てて止める。「おい、全部持ってくな!」「あ、ごめんね」と袋を放り投げる。しっかりと小瓶を左手に握り締めたまま。ヨーディが掴み取るころには遠ざかっている。「俺の菓子・・・」「菓子くらい自分で買えよ。ほら、行くぞ」ひと通り案内を終えると、食堂へ向かっていく。「今日はおごってやるよ。好きなもん、食え」ヨーディががっついて完食が近づいたとき、クイントが合流する。「そろそろ交代しよう」と言うと、トワールはあとよろしく、さっさと出ていく。「あれ、時間遅れたか?」と時計を見ると、わずかに超えている。食べ終えて出ようとしたとき、「そういや、ここの支払いは?」「おごってくれるって・・・」と言った途端、「あいつめ、ハナから払わせるつもりだったのか」愚痴をこぼしながら支払いを終えて戻る。「ところで、この国のことはどのくらいわかってる?」そう聞かれてもはっきりと答えられないヨーディに、この国の名は?・・・フューリッドここの都市の名は?・・・レクタこの国の同盟国は?・・・・・・・「とりあえず周辺国との関係からだな」この国、フューリッドは大陸の左端に位置している。首都・レクタは国の中心からやや南、国の大きさは大陸の6分の1を占めている。同盟国・ゼリクトアは南側にあり、国土はやや小さめである。「まだ寝るなよ。話は始まったばかりだぞ」
2017/07/02
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