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「そうだ、わしも挨拶せねばな」だが、ヨーディはいつの間にか寝入っている。「む、今日のところはそっとしておいてやるか。お前らしっかりと言伝を頼むぞ」二人が気の抜けた返事をすると、ガミガミしながら立ち去っていく。「さて、と。何とか切り抜けられたか。問題は次だけど」「あぁ。でも、その前にやれることはやっておきたいな」やれることとは基礎能力の向上、だ。クイントは学習能力、トワールが身体能力をそれぞれ面倒を見ることになる。「明日は城内の案内もするが、軽くやり始めよう」ある部屋ではそのあとの片づけ作業が続いていた。「認めるという結果になりましたが、これでよかったのでしょうか?」「まぁ、問題ないだろう。向こうもそこまで馬鹿でもないだろうしな」「自分たちの害となる者をわざわざ招き入れるわけがない、ということですか。 では、引き続き注視しておきます」「毒を食らう覚悟があるなら、それはそれで面白そうだが・・・」その言葉に相手は少し面食らうが、「少しは遊びがないと面白くない、という御意思だ。それよりも例の件は進んでいるか?」「はっ、滞りなく」翌日、ヨーディにとって新たな生活が城内で始まった。「オルディック、そろそろ行くぞ」沈黙が続いたあと、ようやく呼ばれたことに気付く。「あぁ、そうか。俺か」「やっぱ、『ヨーディ』のままでいくか。せっかくそう呼べるように工夫したんだからな」「意識して覚えることだな。トワールも苦労してたよな?」そうだっけ?と首をかしげながら、「昔の名前とは全然違ってたからな。だからお前のは馴染みやすくしてもらったんだぞ」そして、三人は部屋を出る。だが、方向は別々のようだ。「トワール、案内は任せたぞ。また、あとでな」二人は見送ってから歩き始める。「よく行くところだけでいいだろ。覚えるのが目的だからな」歩きながら話を聞いていると、誰かとぶつかりそうになる。「うわっと。あぶね。あ、悪い・・・」しかし、向こうは気に留めることもなくいきなり、「お菓子、もってるでしょ?」と聞いてくる。突拍子もない質問で驚いたが、心当たりなんてなく「ない」と答える。が、相手はさらに強気になる。ある、ない。の問答では埒が明かず、ついには強行。「おおおい、やめろ」
2017/06/25
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「このくらいのハンデは必要だな。さぁ、仕切り直すとするか」それでもヨーディは動き出せずに、気迫と躊躇いに気圧され続けている。「ガキだからといってハンパに終わらせるつもりなどない。 どちらかの死をもって勝負をつけよう」再びリーダーに詰め寄られ、後ろへと押し込まれていく。その度に周りを囲む者たちにとっても緊迫感が高まってくる。ついにヨーディの退路がなくなり、思わず近くに転がっていた椅子を放り投げる。その椅子はいとも簡単に飛ばされ、派手な音をはじき出した。一方で違う音が耳元に流れる。「悪かったな、あとは頼む」感覚を取り戻したころにはすでに勝負は終わっていた。ヨーディはリーダーの命と引き換えに新たな道へと進み始める。ようやく確認作業が終わり、解放された。「どうしたんだ、その血は!?」「養子として認められましたので、今後はその振る舞いにも気をつけるよう」ヨーディはまだ呆然としていたが、「怪我はしてない」と言うと、安堵した顔を見せる。「それならよいが・・・、まずは着替えよう」着替え直すと改めて四人で話を始める。「っていうことは、作戦通りに進んだものの、その流れで仕合までやらされたのか」「まさか、殺し合いまでさせるとは・・・。そこまでは読めなかった、すまない」「それにしてもよく倒したな。どうやったんだ?」ヨーディはうん、とだけ答えてごまかした。「でもこれで認められたわけだし、もう疑われることもないんだろ?」「だといいがな、お前はどう思う?」「そうですね、もう心配するほどではないかと」それを聞いて、よし、と手を叩き姿勢を正す。「これからよろしくな。まぁ、会えることはあんまりねぇかもしれねぇが」「ん?そういや、まだ名乗ってなかったよな? 俺はバーデル・クイント。よろしく頼む。こっちは・・・」「俺はコラタ・E・トワール。俺も養子なんだよ、気楽にいこうぜ」「お前は気楽にしすぎだ。もう少し言動には気をつけろ。 レイト様にもその言動がうつっているのだ。嘆かわしい・・・」「レイト様にはいろいろな人がいると分かってもらえるように接してきた。 この結果になったのはその成果だと思うけどね」
2017/06/18
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笑い声が狭い部屋に響き渡る。「ガキに殺させるのか。この国も堕ちたものだな」「黙れ」と口を押えられる。今度はヨーディが口を開いた。「なぜこんなことをした!?」「我々の目的のためだ。それ以外に何があるというのだ? もっとも、王子に逃げられた時点で失敗に終わったがな。結局捕まえられなかったし・・・」「・・・じゃあ、エインテルって名乗ってるのは?」仕方ない教えてやる、と言って昔を語り始めた。昔、飲み屋で知り合ったやつがいてな。次第に仲良くなっていったんだが、ふとある日、「名前を預かってくれないか?」と言われた。もちろん、名前を変えるような状況などロクなもんじゃない。預けるぐらいなら捨てればいい、と言ってやったがそれでもあいつは引かなかった。「まぁまぁ、使いたければ使ってくれればいいから」「おいおい、それ名乗った日にはあぶねぇやつが飛んで来るだけだろ」その後、やつは名を変え、どこかへ行っちまった。それで、使ってみたらこうなった、というわけだ。「とんでもねぇ名前だな」「なら、その知り合いが本物のエインテルっていうことか?」「おそらくそういうことなんだろ?これ以上のことはなんも知らねぇが」話を一通り終えて、ヨーディは城内の者に確認する。「エインテルについて何かと知っているようですが・・・」「確かにエインテルが裏で糸を引いている、という可能性もなくはないが・・・。 賊を討って国の威信を示す。この方針を変えるつもりはない」ヨーディは決意を固めるしかなかった。「では、この手で賊を討ち、王家とエインテル姓の誇りを取り戻させていただきます」そしてさらに、それでひとつお願いがあるのですが・・・。と付け加え、「縛られた相手を討っても意味がありません。真っ向勝負をさせてください」その言葉に周りは騒然とする。「待て。意欲は買うが、そこまでは求めていない」「わはは、おもしれぇじゃねぇか。最後に楽しませてくれよ」ヨーディは改めて願い出る。そこで、周りの者たちが話し合い、「わかった、危ないと感じた時にはこちらで討つことになるが、それでよいな?」ヨーディが同意すると、リーダーの縛が解かれ、剣を渡される。「なるほど。自由とはいいものだな、よい経験をさせてもらった」ヨーディは押し黙って剣を構える。「そんな構えで俺を倒そうとはな、少し期待しすぎたようだ」なかなか動き出さないヨーディにしびれを切らして斬りかかってくる。寸前のところで何とか躱すものの、その攻撃はまだ全力ではないように感じた。「仕方ないな。どれ、攻撃する姿勢を見てやろう」細心の注意を払いながら、攻撃に転じる。「だめだな、脇が甘い。剣というのはこうやって・・・お?」反撃に出ようとして体勢を崩した。さすがに疲れが来ているようだ。
2017/06/11
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取調室ではいつもにも増して重苦しい雰囲気が流れている。「貴様、何故エインテルと名乗っている?」「なにゆえ、と言われてもな。こういう名前なんだからどうしようもねぇ」「嘘をつくな。その名を持つ者は限られている。まさか、本当にあの・・・」「おい、動じるな。こいつが何者であれ、今はただの犯罪者だ」エインテルと名乗る男は「犯罪者」という言葉に反応する。「犯罪者、か。ホンモノの犯罪者はいったい誰なんだろうな?」進まない聴取が続く一方で、別のところでは話し合いが行われている。「今回の件ですが、もう少し様子を見てはいかかですか?」「それでは間に合わぬではないか!そもそも疑われるような関係性はない」「関係ないとは言えないでしょう。あの名を口にしている以上、 今後、使用禁止にするかどうかも含めて考えざるを得ないと思いますが?」「まわりくどいやり方では納得できない者もおりましょう、であるならば・・・」ある提案が広げられる。だがそれはあまりに厳しいようにも感じられる。「相手は子供です!そのようなことさせてはなりません」「ただの子供ではない。名家へ養子に入るということはそれだけの資質を持っておらねばならん」「名を貶められてそのまま黙っているなど、名家を名乗る資格なし、か」翌日、ヨーディはある部屋へと連れていかれる。その中には数人の大人が椅子に腰かけて待ち構えていた。「連れて参りました、この者です」と言うなり、すぐさま質問が飛んでくる。「早速聞くが、襲撃犯が捕まったことは知ってるな?」「その襲撃犯の頭がエインテル姓を名乗っている。で、この者との関係は?」それに対してヨーディはありません、とだけ答える。「聞いといて悪いが、その言葉をそのまま受け入れることはできない。 よって、行動で示してもらうことにした」「処分でいえば処刑ということが決している。これからその手伝いをしてもらう。ここでの話は以上だ」再び、部屋を移動させられる。奥へと進むにつれ、湿った空気に包まれていく。重い扉が開かれると、声が漏れてくる。「話すことなどもうない。さっさと処刑しろ」そこにはやつれてはいるが目をギラつかせているリーダーがまぎれもなくいた。「なんだ?こんなところにガキ連れてきて何考えてやがる。悪趣味が過ぎるぞ」ヨーディは不意に剣を手渡され、「こいつはレイト様を襲撃した上、さらにエインテル姓を穢した重罪人である。 お前の手によってその穢れを打ち払ってみせよ。さすれば、我々も安心して認めることができる」ヨーディの手に汗がにじみ、思わず剣を滑り落としそうになった。(俺がリーダーを殺す・・・)
2017/06/04
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